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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S
管理番号 1355845
審判番号 不服2018-10677  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-03 
確定日 2019-10-10 
事件の表示 特願2014-266928号「蛍光LEDランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月11日出願公開、特開2016-126915号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月28日の出願であって、平成29年10月30日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月28日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年1月29日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年3月30日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月26日付けで同年3月30日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年8月3日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 平成30年8月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年8月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5のうちの請求項1の記載は、次のとおりである(下線は、補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
内面に紫外線で光る蛍光物質を塗布した長尺ガラス管と、
長尺ガラス管の両管端に備えられ光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子と、
前記非平行紫外線LED素子を設置する台座と、
前記台座の周囲に設けられた反射材と、
からなり、
対向する非平行紫外線LED素子の光軸は相互に一致しないように構成するとともに、非平行紫外線LED素子から放射される紫外線を前記反射材により反射することで紫外線を効率よく利用して蛍光物質からの発光を得るように構成した
蛍光LEDランプ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年12月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12のうちの請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
内面に紫外線で光る蛍光物質を塗布した長尺ガラス管と、
長尺ガラス管の横断面部に備えられ光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子と、
前記非平行紫外線LED素子を設置する台座と、
前記台座の周囲に設けられた紫外線反射材と、
からなる蛍光LEDランプ。」

(3)まとめ
本件補正により、請求項1において、「長尺ガラス管の横断面部に備えられ」という記載が「長尺ガラス管の両管端に備えられ」という記載に変更され(以下「補正事項1」という。)、また「対向する非平行紫外線LED素子の光軸は相互に一致しないように構成する」という記載が追加され(以下「補正事項2」という。)、さらに「紫外線反射材」という記載が「反射材」という記載に変更されるとともに「非平行紫外線LED素子から放射される紫外線を前記反射材により反射することで紫外線を効率よく利用して蛍光物質からの発光を得るように構成した」という記載が追加された(以下「補正事項3」という。)。

2 補正の適否
2-1 新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について
(1)当初明細書等に記載された事項
願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面を含めて「当初明細書等」という。)、特許請求の範囲及び図面には、補正事項1?3に関して以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1A)「【請求項1】
内面に紫外線で光る蛍光物質を塗布した長尺ガラス管と、
長尺ガラス管の横断面部に備えられ光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子と、
からなる蛍光LEDランプ。
・・・
【請求項5】
非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子は長尺ガラス管の管端に備えられている請求項1から4のいずれか一に記載の蛍光LEDランプ。」
・・・
【請求項11】
非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子は、長尺ガラス管の両管端に備えられている請求項5又は請求項5に従属する請求項6から10のいずれか一に記載の蛍光LEDランプ。
【請求項12】
対向する非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子の光軸は相互に一致しない請求項11に記載の蛍光LEDランプ。」

(1B)「【0034】
なお、長尺ガラス管は管長が2メートル以上であっても良い。例えばトンネル内に設置される蛍光灯には、管長が長いものが用いられる。従来のLEDランプの場合、管内に支持板やヒートシンクを設ける構成であったために、管長が増大するとLEDランプの重量も大きく増加してしまい、管端の2点のみではLEDランプを支えることができず従来の蛍光灯灯具に接続できない、もしくはLEDランプを支える管端部分に不具合が生じやすいという問題点があった。しかしながら、本件発明において非平行紫外線LED素子は主に管端又は管央の横断面部に設置されるため、支持板やヒートシンクも管端又は管央の横断面部に設置される。すると、管長が長尺であったとしても蛍光LEDランプの重量が大きく増加することはなく、すなわち従来の蛍光灯灯具にも問題なく接続することができる。
・・・
【0037】
図4はLED素子の配置とLEDランプの発光の関係について示す。
・・・
【0040】
本件発明において、非平行紫外線LED素子0431は(c)に示すように、長尺ガラス管の横断面部に備えられ光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされている。すると、直管内面の蛍光物質全てに非平行紫外線LED素子の発光を照射することが可能となり、(b)に示す非照射面の発生を防止し、すなわち長尺ガラス管の側面全体から発光を得られる蛍光LEDランプを提供することが可能となる。なお、通常「長尺ガラス管の横断面」とは、長尺ガラス管の長手方向に対して垂直な平面について示すものであるが、本件発明における「長尺ガラス管の横断面部」は、長尺ガラス管の長手方向に対しておよそ垂直な平面(例えば60度ないし90度)も含むものである。
【0041】
また、本件発明の蛍光LEDランプは、対向する非平行紫外線LED素子又は/及び後述する平行紫外線LED素子の光軸は相互に一致しないように構成することが好ましい。本構成をとることにより、それぞれの非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子から放射される紫外線の照射領域が重なるのを最小限にすることができ、すなわち非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子から放射される紫外線を効率よく蛍光LEDランプの発光に作用させることが可能となる。また、一方の非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子から放射された紫外線により、当該素子と対向する非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子が劣化する事態を防止することができる。
・・・
【0046】
図6は非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子の長尺ガラス管内における配置の一例を示す図である。非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子は長尺ガラス管の横断面部に備えられ、長尺ガラス管の管端に備えられていても(図6(a))、管央に備えられていても良い(図6(b)、(c))。その際に、長尺ガラス管の長手方向中央の横断面に対して左右対称となるように非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子を配置するように構成すると、当該横断面に対して左右対称の発光を得られる蛍光LEDランプとなるため好ましい。
【0047】
非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子が長尺ガラス管の両管端に備えられる構成とする場合、本件発明の蛍光LEDランプを従来の蛍光灯灯具に接続する際に蛍光灯灯具は長尺ガラス管の両管端で蛍光LEDランプを支持することとなり、蛍光LEDランプの支持点付近で非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子を支えることができるため好ましい。
【0048】
また、非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子が長尺ガラス管の両管端に備えられる構成とする場合、「管央」とは長尺ガラス管の管端を除く全てについて示しており、非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子は長尺ガラス管の長尺方向の中心の横断面部に設けられる構成としても良いし(図6(b))、複数の横断面部に設けられる構成としても良い(図6(c))。その際には、例えば長尺ガラス管の横断面部に支持板0601を設け、支持板上に台座を設置する構成としても良い。また、複数の横断面部が設けられる場合には、各横断面部間の長尺ガラス管の側面の発光を全て均一にするために、それぞれの横断面部間の距離を一定とすることが好ましい。
・・・
【0054】
また、図9に本件発明の蛍光LEDランプの別の一例を示す。(a)は長尺ガラス管の長手方向中心軸に対して垂直方向から見た図を、(b)は平行方向から見た図を示している。図9に示す蛍光LEDランプは、台座0901の周囲に反射材0902を設けている。本構成をとることにより、非平行紫外線LED素子0903から放射される紫外線を反射材により反射することで効率よく利用して蛍光LEDランプの発光を得ることができる。」

(1C)図3?4,6,9には以下の図が示されている。

(2)補正事項1に関して
本件補正後の請求項1に係る発明の「長尺ガラス管の両管端に備えられ」は、本件補正前の「長尺ガラス管の横断面部に備えられ」という特定がなくなったことで「長尺ガラス管の横断面部に備え」ていない場合(例えば非平行紫外線LED素子を長尺ガラス管の両管端において長尺ガラス管の内面や縦断面部に備えた場合)を含むことになる。
しかし、当初明細書等には「長尺ガラス管の横断面部に備えられ・・・た非平行紫外線LED素子・・・からなる蛍光LEDランプ。」(請求項1)を引用した「非平行紫外線LED素子・・・は、長尺ガラス管の両管端に備えられている」(請求項11)ことの記載はあっても、非平行紫外線LED素子が「長尺ガラス管の横断面部に備え」ていない場合の「長尺ガラス管の両管端に備えられ」る非平行紫外線LED素子は当初明細書等に記載や示唆はなく、技術常識を踏まえてみても当初明細書等から自明な事項でもない。
ここで審判請求書には、請求項1の補正の根拠について、「当該補正は出願当初明細書の段落[0041]及び、段落[0054]の記載に基づくものですので、新規事項の追加には当たりません。」(「3.同時にする手続き補正の内容」の項)と記載されているが、その段落【0041】及び【0054】(摘示(1B))の記載をみても「長尺ガラス管の横断面部に備え」ていない場合の「長尺ガラス管の両管端に備えられ」る非平行紫外線LED素子は記載されていない。
よって、補正事項1による補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項の規定を満たさない。
さらに、補正事項1による補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明に比べ、「非平行紫外線LED素子」を「長尺ガラス管の横断面部に備え」ていない場合を含み得るようになった点では拡張されているので、補正事項1による補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものでなく、また明らかに同第1号の請求項の削除、同第3号の誤記の訂正及び同第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもないから、特許法17条の2第5項の規定を満たさない。

(3)補正事項2に関して
補正事項2による補正は、審判請求書において補正の根拠として示された当初明細書等の段落【0041】の「本件発明の蛍光LEDランプは、対向する非平行紫外線LED素子又は/及び後述する平行紫外線LED素子の光軸は相互に一致しないように構成することが好ましい。」という記載(摘示(1B))や請求項12(摘示(1A))を根拠になされたものと理解されるので、特許法17条の2第3項の規定を満たすものである。
また補正事項2による補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「非平行紫外線LED素子」についての構成を限定するものである。そして補正事項2による補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一といえる。よって、補正事項2による補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、特許法17条の2第5項の規定を満たすものである。

(4)補正事項3に関して
補正事項3による補正は、審判請求書において補正の根拠として示された当初明細書の段落【0054】の「台座0901の周囲に反射材0902を設けている。本構成をとることにより、非平行紫外線LED素子0903から放射される紫外線を反射材により反射することで効率よく利用して蛍光LEDランプの発光を得ることができる。」という記載(摘示(1B))を根拠になされたものと理解されるので、特許法17条の2第3項の規定を満たすものである。
また補正事項3による補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「紫外線反射材」に関して、「紫外線反射材」から単なる「反射材」に変更するものの、「非平行紫外線LED素子から放射される紫外線を前記反射材により反射することで紫外線を効率よく利用して蛍光物質からの発光を得るように構成した」という記載を追加したことで、補正後の「反射材」は紫外線を反射するものであるので実質的に補正前の「紫外線反射材」から拡張されたものでないとともにその「反射材」についての作用を限定している。そして補正事項3による補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一といえる。よって、補正事項3による補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、特許法17条の2第5項の規定を満たすものである。

(5)小括
以上のとおりであるから、補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条
の2第3項及び同条第5項の規定を満たさないことから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2-2 独立特許要件
仮に、補正事項1による補正が、特許法第17条の2第3項の規定に適合するとともに、「長尺ガラス管の両管端に備えられ」と特定する点で補正事項2?3と同じく同法第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであったとしてみた場合、さらに同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)に適合する必要があるので、以下独立特許要件について検討する。
(1)本件補正発明1
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明1」という。)は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献1の記載事項等
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献1として示された本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された特開2006-40850号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

(1a)「【請求項1】
蛍光物質を内面に設けた管体を設け、該管体内に支台を位置させるとともに、該支台に複数個の紫外線発光ダイオードをその取り付け角度を互いに変えて設けたことを特徴とする紫外線発光ダイオードを用いた照明装置。」

(1b)「【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外線発光ダイオードを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、白熱電灯、蛍光灯、EL(エレクトロルミネッセンス)など種々の照明装置が利用されているが、本発明にて示すように紫外線発光ダイオードを用いた照明装置は現在のところ見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した照明装置の中で、ELはその明るさが低く、一般照明としては用いられていない。白熱電灯はその手軽さから多用されているが、電球への通電によるフィラメント加熱発光を光源としているため、消費電力が大きく、その寿命も短いという問題がある。
また、蛍光灯はフィラメントから放出される熱電子に起因する放電にて紫外線が発生し、この紫外線が管内面に設けられた蛍光物質層に照射されて可視光線に変化する原理を用いたものであり、白熱電灯に比べて消費電力が少なく、その寿命も長いという特徴がある。
しかしながら、近年注目されている可視光線発光ダイオードに比べると、その消費電力および寿命とも劣っている。
この可視光線発光ダイオード利用の照明装置は、ダイオードへの通電にて可視光線を発するダイオードを多数個用いた照明装置であり、蛍光灯に比べてさらに消費電力が少なく、その寿命も長いという利点がある。しかし、この可視光線発光ダイオードは小面積の発光部分から可視光線を発光するため、発光が直進してその照射面積が少ないという問題があり、そのため多数個を用いるのであるが、白熱電球や蛍光灯のようなやわらかな光りは得られない。
本発明は以上のような従来からの照明装置に関わる課題を解決するために発明されたもので、紫外線発光ダイオードと蛍光物質を組み合わせることにより、消費電力が少なく長寿命であるとともに、その照明面積を大きくすることができ、従来照明装置のようなやわらかな光を発することのできる新規かつ有用なる照明装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決する手段として本発明は、蛍光物質を内面に有する管体と紫外線発光ダイオードを組み合わせてその主要部を構成した。
すなわち、蛍光物質を内面に設けた管体を設け、該管体内に支台を位置させるとともに、該支台に複数個の紫外線発光ダイオードをその取り付け角度を互いに変えて設ける。
本発明は以上の構成よりなる紫外線発光ダイオードを用いた照明装置である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、蛍光物質を内面に有する透明管体内に紫外線発光ダイオードを、支台を用いてその取り付け角度を互いに変えて位置させることにより、直進性の強い紫外線を管内のほぼ全域に照射するよう構成したので、従来の蛍光灯と同様に管全体を発光させて室内を照らすことができる。また、フィラメントを用いない発光方式のため、省電力であるとともにその寿命を長く保つことができる。さらに、管内に電源部を設けることにより、従来の蛍光灯装置に装着してそのまま使用することのできる、有用なる照明装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図において、1は透明ガラス製の管体で、内部全面に蛍光物質層2が塗布形成される。
この管体の両端には口金3が固着され、口金端面にはピン4が設けられる。
5は支台で、段部を有する変形中空円筒体であり、管体の両端部近傍内部に適宜支持部材(図示略)にて取り付けられる。この支台先端の頂部6は緩やかな円錐形状であり、後部に向けて小径となる円錐面を有するとともに、この円錐面にほぼ直交する円錐形状の段部7を有している。
8は紫外線発光ダイオードで、通電にて紫外線を発する性質を有し、透明半球状の頂部に円柱状の胴部が連続形成され、その内部に発光面が位置し、胴部下面に2本のリード線が設けられた構成である。この紫外線発光ダイオードは、図3にて示すように、前記頂部面に4等配、段部面に4等配にて取り付けられる。支台の頂部と段部は支台の軸芯に対しその角度を違えて形成され、従って紫外線発光ダイオードから発した紫外線の照射方向は互いに異なるため、前記管体内面のほぼ全域に向けて紫外線照射が行われ、この紫外線にて管内の蛍光物質が蛍光を発して室内を照らすことができる。
9は電源部であり、抵抗10、ダイオードブリッジ11、ツェナーダイオード12を主要部品として構成され、この電源部は支台内部に設けられる。以上の電源部各部品は結線接続され、また紫外線発光ダイオードへも接続される。
以上が本発明の第1実施形態である。
【0007】
本発明を使用するには、交流100ボルト提供可能なソケットに管体をはめ込み、通電する。この通電にて電源部に交流100ボルトが印加されるが、ダイオードブリッジにて整流された後に抵抗とツェナーダイオードにて数ボルトの直流電圧に降下され、支台に取り付けられている紫外線発光ダイオードに印加される。この印加にて紫外線発光ダイオードは紫外線を管体内面に向けて照射し、この照射にて蛍光物質層が反応して可視光線を発して室内を照らすことができる。この紫外線発光ダイオードは、その取り付け角度を違えて複数個配置されているので、管体内面のほぼ全域を発光させることができる。
図4?図5は本発明の第2実施形態を示すものである。
図において、8は紫外線発光ダイオード、13は口金、14は短管体、15は蛍光物質層、16は略台形中空状の支台である。本例は、白熱電球と同様の使用ができるように構成したもので、上部にねじ込み式の口金を設け、短管の下部を略半球状としたもので、中央の紫外線発光ダイオードに対しその外周に位置する紫外線発光ダイオードはやや傾斜して位置し、さらに外周の紫外線発光ダイオードはさらに大きな傾斜角を有して位置し、短管体の上部を除くほぼ全域に紫外線が照射されるよう構成されている。
また、前例と同様に管体内面には蛍光物質層が形成されており、紫外線発光ダイオードからの紫外線照射にて短管体から可視光線が放射されて室内を照らすことができる。なお、支台内には前例同様の電源部が設けられる。
【0008】
本発明の内容については既述したが、本発明は可視光線発光ダイオードを用いた従来の照明装置とは異なり、紫外線を発する発光ダイオードを用い、管体内面の蛍光物質にその紫外線を照射して蛍光物質の可視光線発光を促すところにその特徴がある。
可視光線発光ダイオードによる発光は直進性が高く、広範囲を照らすには多数個の発光ダイオードが必要であり、蛍光灯のようなやわらかな光は得られない。
しかるに本発明では既述のように、紫外線を蛍光物質に当てて可視光線を発光させる方式のため、従来の蛍光灯と同様の発光が可能となり、やわらかな光にて広範囲を照らすことができるのである。
なお、実施形態で示した紫外線発光ダイオードの配置は実施の一例であり、管体内径と長さおよび紫外線発光ダイオードのサイズとの関係にて他の配置も可能である。また、以上の実施形態においては口金に交流100ボルトが印加される前提での電源部構成であり従来の蛍光管用ソケットには異なる電流・電圧が印加されているため、この従来の蛍光管用ソケット・器具を用いる場合は、管体に交流100ボルトが印加されるよう器具内の配線を変えるもしくは既述の電源部構成を変えるなどの配慮が必要である。
以上のごとく、本発明にて省電力・長寿命であるとともに、やわらかな光にて広範囲を照らすことのできる照明装置を得ることができる。」

(1c)引用文献1には以下の図が示されている。


イ 認定事項
摘示(1a)?(1b)の記載事項及び摘示(1c)の図示内容から、照明装置に関して以下の事項が認定できる。

a 蛍光物質を内面に設けた管体を設け、該管体内に支台を位置させるとともに、該支台に複数個の紫外線発光ダイオードをその取り付け角度を互いに変えて設けた、紫外線発光ダイオードを用いた照明装置であること(請求項1)。

b 上記「a」における「蛍光物質を内面に設けた管体」は、第1実施形態(段落【0006】?【0007】、図1?3)において、内部全面に蛍光物質層2が塗布形成される透明ガラス製の管体1として構成されること(段落【0006】、図1?3)。そしてその管体1は、図1の図示内容から、長尺状といえること。

c 上記「a」における「支台」は、第1実施形態において支台5として構成され、同じく「複数個の紫外線発光ダイオード」は8個の紫外線発光ダイオード8として構成されること(段落【0006】、図1?3)。

d 管体1の両端には口金3が固着され、口金端面にはピン4が設けられること(段落【0006】、図1?2)。

e 支台5は、段部7を有する変形中空円筒体であり、管体1の両端部近傍内部に支持部材にて取り付けられ、この支台5先端の頂部6は緩やかな円錐形状であり、後部に向けて小径となる円錐面を有するとともに、この円錐面にほぼ直交する円錐形状の段部7を有しているものであること(段落【0006】、図1?3)。

f 紫外線発光ダイオード8は、支台5の頂部6の面に4等配、段部7の面に4等配にて取り付けられ、支台5の頂部6と段部7は支台5の軸芯に対しその角度を違えて形成され、従って紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の照射方向は互いに異なるため、前記管体内面のほぼ全域に向けて紫外線照射が行われ、この紫外線にて管内の蛍光物質が蛍光を発して室内を照らすことができること(段落【0006】、図1?3)。

g 上記「f」における、紫外線発光ダイオード8をそれぞれ4等配にて取り付けられる支台5における頂部6の面及び段部7の面は上記「e」で述べたように円錐形状であること、並びに図1?3の図示内容から、紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の照射方向が管体1の軸芯に対して管体の径方向外方に傾いていることは明らかである。そしてこのことも上記「f」における「管体内面のほぼ全域に向けて紫外線照射が行われ、この紫外線にて管内の蛍光物質が蛍光を発して室内を照らすことができること」に寄与していることは物理的に明らかである。
してみると、上記「f」は、紫外線発光ダイオード8は、支台5の頂部6の面に4等配、段部7の面に4等配にて取り付けられ、支台5の頂部6と段部7は支台5の軸芯に対しその角度を違えて形成され、従って紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の照射方向は互いに異なるとともに管体1の軸芯に対して管体の径方向外方に傾いているため、管体内面のほぼ全域に向けて紫外線照射が行われ、この紫外線にて管内の蛍光物質が蛍光を発して室内を照らすことができることといえる。

h 支台5の内部に電源部9が設けられること(段落【0006】、図1?2)。

ウ 引用発明
上記「イ」の認定事項を整理すると、引用文献1には第一実施形態について次の発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「内部全面に蛍光物質層2が塗布形成される透明ガラス製の長尺状の管体1を設け、該管体1内に支台5を位置させるとともに、該支台5に8個の紫外線発光ダイオード8をその取り付け角度を互いに変えて設けた、紫外線発光ダイオード8を用いた照明装置であって、
管体1の両端には口金3が固着され、口金端面にはピン4が設けられ、
支台5は、段部7を有する変形中空円筒体であり、管体1の両端部近傍内部に支持部材にて取り付けられ、この支台5先端の頂部6は緩やかな円錐形状であり、後部に向けて小径となる円錐面を有するとともに、この円錐面にほぼ直交する円錐形状の段部7を有しているものであり、
紫外線発光ダイオード8は、支台5の頂部6の面に4等配、段部7の面に4等配にて取り付けられ、支台5の頂部6と段部7は支台5の軸芯に対しその角度を違えて形成され、従って紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の照射方向は互いに異なるとともに管体1の軸芯に対して管体の径方向外方に傾いているため、管体内面のほぼ全域に向けて紫外線照射が行われ、この紫外線にて管内の蛍光物質が蛍光を発して室内を照らすことができ、
支台5の内部に電源部9が設けられた、
紫外線発光ダイオード8を用いた照明装置。」

(3)対比
本件補正発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「内部全面に蛍光物質層2が塗布形成される透明ガラス製の長尺状の管体1」及び「管体1の軸芯」は、その「蛍光物質層2」により「紫外線にて管内の蛍光物質が蛍光を発して室内を照らすことができ」ることを踏まえると、本件補正発明1の「内面に紫外線で光る蛍光物質を塗布した長尺ガラス管」及び「長尺ガラス管の長手方向中心軸」のそれぞれに相当する。

イ 引用発明において「紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の照射方向は互いに異なるとともに管体1の軸芯に対して管体の径方向外方に傾いている」ことから、紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の光軸が管体1の軸芯と非平行であることは明らかである。
してみると、かかる「紫外線発光ダイオード8」は、上記「ア」をも踏まえると、本件補正発明1の「光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子」に相当する。

ウ 引用発明において「該支台5に8個の紫外線発光ダイオード8をその取り付け角度を互いに変えて設け」るのであるから、かかる「支台5」は、上記「イ」をも踏まえると、本件補正発明1の「前記非平行紫外線LED素子を設置する台座」に相当する。

エ 引用発明において「支台5」は「管体1の両端部近傍内部に支持部材にて取り付けられ」るものであること、及び「支台5に8個の紫外線発光ダイオード8をその取り付け角度を互いに変えて設け」ることから、「紫外線発光ダイオード8」は管体1の両端部近傍内部に備えられるものといえる。そうすると、かかる「紫外線発光ダイオード8」と、本件補正発明1の「長尺ガラス管の両管端に備えられ光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子」とは、上記「ア」?「イ」をも踏まえると、「長尺ガラス管に備えられ光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子」という限りにおいて共通するものといえる。

オ 引用発明において「紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の照射方向は互いに異なるとともに管体1の軸芯に対して管体の径方向外方に傾いている」こと、また「管体1の両端部近傍内部に支持部材にて取り付けられ」る「支台5に8個の紫外線発光ダイオード8をその取り付け角度を互いに変えて設け」ることを踏まえると、「紫外線発光ダイオード8」は両端部近傍内部に対向させて備えられるものであって、双方の光軸が相互に一致しないように構成されていることは明らかである。
してみると、かかる「紫外線発光ダイオード8」についての構成は、上記「ア」?「イ」,「エ」をも踏まえると、本件補正発明1の「非平行紫外線LED素子」についての「対向する非平行紫外線LED素子の光軸は相互に一致しないように構成」した構成に相当するものといえる。
ここで、審判請求書において「4.本願発明が特許されるべき理由」の「<独立特許要件違反と判断した理由の要点:本願構成の光軸が相互に一致しない点>」の題目において、要するに、引用文献1の技術に対して例えば以下の参考図1のような場合があり得ることを理由に引用文献1の図1から「光軸が相互に一致しない」という技術的思想が現れている、と確定することはできない旨の主張をしている。


該主張について検討するに、引用文献1の第一実施形態(段落【0006】?【0007】、図1?3)に基づく引用発明は「紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の照射方向は互いに異なるとともに管体1の軸芯に対して管体の径方向外方に傾いている」という構成を有するから、参考図1のような紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の照射方向が管体1の軸芯に対して管体の径方向内方に傾いて双方の光軸が一致するような場合になり得ない。よって、請求人の該主張は理由がない。

カ 引用発明の「照明装置」は、「紫外線発光ダイオード8」による「紫外線にて管内の蛍光物質が蛍光を発して室内を照らすことができ」るものであるから、本件補正発明1の「蛍光LEDランプ」に相当する。

以上のことから、本件補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点1>
「内面に紫外線で光る蛍光物質を塗布した長尺ガラス管と、
長尺ガラス管に備えられ光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子と、
前記非平行紫外線LED素子を設置する台座と、
からなり、
対向する非平行紫外線LED素子の光軸は相互に一致しないように構成した
蛍光LEDランプ。」

<相違点1>
本件補正発明1は「非平行紫外線LED素子」を「長尺ガラス管の両管端に備え」るのに対し、引用発明は「支台5」を「管体1の両端部近傍内部に支持部材にて取り付け」、「紫外線発光ダイオード8」をその「支台5の頂部6の面に4等配、段部7の面に4等配にて取り付け」る点。

<相違点2>
本件補正発明1は「前記台座の周囲に設けられた反射材」を備え、「非平行紫外線LED素子から放射される紫外線を前記反射材により反射することで紫外線を効率よく利用して蛍光物質からの発光を得るように構成した」ものであるのに対し、引用発明は該「反射材」を備えていない点。

(4)判断
ア 相違点1について
(ア)検討
本件補正発明1の「長尺ガラス管の両管端」における「端(はし)」はその字義のとおり「物の末の部分。先端。」や「中心から遠い、外に近い所。へり。ふち。」(広辞苑第六版)を意味するものと理解される。
そして引用発明の「紫外線発光ダイオード8」(本件補正発明1の「非平行紫外線LED素子」に相当する。以下括弧内に本件補正発明1の相当する構成を記す。)は管体1(「長尺ガラス管」)の両端部近傍内部に備えられるものであるところ、「端(はし)」の字義を踏まえつつ引用文献1の図1?2をみるに、「紫外線発光ダイオード8」(「非平行紫外線LED素子」)は管体1(「長尺ガラス管」)の長手方向の中心から両側において遠く、外に近い所にあることが看取されることから、「紫外線発光ダイオード8」(「非平行紫外線LED素子」)は管体1(「長尺ガラス管」)の両管端にあるものといえる。そうすると相違点1は実質的な相違点でない。
仮に本件補正発明1の「長尺ガラス管の両管端」が引用発明における「管体1の両端部近傍内部」のような位置を含むものでなく、相違点1が実質的な相違点であったとしてみても、引用発明において管体1(「長尺ガラス管」)に対する「紫外線発光ダイオード8」(「非平行紫外線LED素子」)の配置は、管体1(「長尺ガラス管」)と口金3との接続構造や支台5(「台座」)の取り付け方等に応じて当業者が適宜設計変更可能な事項であって、相違点1に係る本件補正発明1の構成に想到することに格別な困難性は認められない。

(イ)作用効果について
本件補正発明1における「非平行紫外線LED素子」を「長尺ガラス管の両管端に備え」る構成の作用効果は、明細書の段落【0047】の「非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子が長尺ガラス管の両管端に備えられる構成とする場合、本件発明の蛍光LEDランプを従来の蛍光灯灯具に接続する際に蛍光灯灯具は長尺ガラス管の両管端で蛍光LEDランプを支持することとなり、蛍光LEDランプの支持点付近で非平行紫外線LED素子又は/及び平行紫外線LED素子を支えることができるため好ましい。」(摘示(1B))という記載等から、蛍光LEDランプの支持点付近で非平行紫外線LED素子を支えることと理解される。
一方、引用発明における「紫外線発光ダイオード8」(「非平行紫外線LED素子」)も照明装置(「蛍光LEDランプ」)の支持のための構成といえる口金3に設けられたピン4の付近で支えられることは図2の図示内容等から明らかであることから、本件補正発明1の該作用効果は、引用発明の作用効果に基づいて当業者が予測し得なかったというような格別な作用効果とは認められない。

イ 相違点2について
(ア)検討
照明装置の技術分野において、光を有効利用するためにLEDを含む発光素子の周囲に反射材を配設することは、例えば原査定の拒絶の理由において周知技術を示す引用文献7として示された特開2006-324448号公報(請求項1?3、段落【0013】,【0021】,【0026】?【0027】における「LED」に対する「反射材」参照)、特開2002-202739号公報(段落【0026】、図2?3における「LED光源体2」に対する「反射鏡6」参照)、登録実用新案第3172806号公報(段落【0015】、図1?2における「LEDの光源2」に対する「リフレクタ3」参照)に開示されているように、本願の出願前に周知技術といえる。
そして引用発明は該周知技術と同じく照明装置の技術分野に属するものであり、また該技術分野において、光を有効利用することは基本的な課題であって、引用発明における照明装置(「蛍光LEDランプ」)においても内在する課題といえる。してみると、引用発明において該課題を解決するために該周知技術を適用し、紫外線発光ダイオード8(「非平行紫外線LED素子」)の周囲に反射材を設けることは、当業者が容易になし得たことである。その際、紫外線発光ダイオード8の周囲に反射材をどのように設けるかは、構成を具体化する際に反射材の反射機能を奏する範囲で当業者が適宜設計変更可能な事項であって、紫外線発光ダイオード8(「非平行紫外線LED素子」)を取り付ける支台5(「台座」)の周囲に設けるようにすることで、相違点2に係る本件補正発明1の構成に想到することに格別な困難性は認められない。

(イ)作用効果について
相違点2に係る本件補正発明1の「反射材」の構成についての作用効果は、明細書の段落【0054】の「非平行紫外線LED素子0903から放射される紫外線を反射材により反射することで効率よく利用して蛍光LEDランプの発光を得ることができる。」(摘示(1B))という記載のとおりと理解される。そしてそのような作用効果は、引用発明の作用効果及び該周知技術の効果の総和に基づいて当業者が予測し得なかったというような格別な作用効果とは認められない。

(ウ)請求人の主張について
審判請求書における「4.本願発明が特許されるべき理由」の「<独立特許要件違反と判断した理由の要点:本願構成の反射材を設ける点>」の題目において、請求人は以下の主張をしている。
「しかし、引用文献7の反射材の作用は引用文献7の段落[0027]にあるように、広角LEDからの光を上方に収束させる作用です。これに対して、本願発明の反射材の作用は、本願段落[0054]に記載されているように、「非平行紫外線LED素子から放射される紫外線を反射材により反射することで効率よく利用して蛍光LEDランプの発光を得ること」にあります。つまり、この記載から明らかなように本願発明の反射材はLEDからの光を収束することでなく、逆に広い範囲に拡散するように作用することを目的としています。名づけ(反射材)がたまたま同じであったとしても期待される作用は全く逆であり、たとえこれが周知技術であったとしても本願発明の創作のために適用されることはありません。」
該主張について検討するに、上記「(ア)」で述べたように、引用文献7としての特開2006-324448号公報は、あくまで照明装置の技術分野において光を有効利用するためにLEDを含む発光素子の周囲に反射材を配設することが周知技術であることを示す一例に過ぎない。また、該主張のように引用文献7の反射材が光を上方に収束させる作用させるものであっても、そもそも本件補正発明1は「反射材」でどのように反射させるかを特定するものでなく、長尺ガラス管の内面に向く方向に収束するような「反射材」を排除するものでもないから、引用文献7の反射材の作用が収束させるものであるか否かは問題になり得ない。よって、請求人の該主張は理由がない。

ウ 小括
したがって、本件補正発明1は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、上記「2-1」で述べたように、特許法第17条の2第3項及び同条第5項の規定を満たさないことから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、仮に同法第17条の2第3項及び同条第5項の規定の規定を満たすものとしてみても、上記「2-2」で述べたように、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)を満たさないものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件発明について
1 本件発明1
平成30年8月3日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件の請求項に係る発明は、平成29年12月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1(2)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、請求項1?5に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献7に示される周知技術に基いて、請求項6?7に係る発明は、同引用文献1に記載された発明(引用発明)、引用文献2?3に示された技術的事項及び引用文献7に示される周知技術に基いて、請求項8に係る発明は、同引用文献1に記載された発明(引用発明)、引用文献2?3に示された技術的事項、引用文献4?5に示される周知技術及び引用文献7に示される周知技術に基いて、請求項9?12に係る発明は、同引用文献1に記載された発明(引用発明)、引用文献2?3に示された技術的事項、引用文献4?5に示される周知技術、引用文献6に示される周知技術及び引用文献7に示される周知技術に基いて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2006-40850号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2003/0102810号明細書
引用文献3:特開2011-54421号公報
引用文献4:特開2012-204162号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2014-232653号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6:登録実用新案第3176513号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7:特開2006-324448号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献の記載事項等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由]2 2-2(2)」に記載したとおりである。

4 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「内部全面に蛍光物質層2が塗布形成される透明ガラス製の長尺状の管体1」及び「管体1の軸芯」は、本件発明1の「内面に紫外線で光る蛍光物質を塗布した長尺ガラス管」及び「長尺ガラス管の長手方向中心軸」のそれぞれに相当する。

イ 引用発明において「紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の照射方向は互いに異なるとともに管体1の軸芯に対して管体の径方向外方に傾いている」ことから、紫外線発光ダイオード8から発した紫外線の光軸が管体1の軸芯と非平行であることは明らかである。
してみると、かかる「紫外線発光ダイオード8」は、上記「ア」をも踏まえると、本件発明1の「光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子」に相当する。

ウ 引用発明において「該支台5に8個の紫外線発光ダイオード8をその取り付け角度を互いに変えて設け」るのであるから、かかる「支台5」は、上記「イ」をも踏まえると、本件発明1の「前記非平行紫外線LED素子を設置する台座」に相当する。

エ 引用発明において「支台5」は「管体1の両端部近傍内部に支持部材にて取り付けられ」るものであること、及び「支台5に8個の紫外線発光ダイオード8をその取り付け角度を互いに変えて設け」ることから、「紫外線発光ダイオード8」は管体1の両端部近傍内部に備えられるものといえる。そうすると、かかる「紫外線発光ダイオード8」と、本件発明1の「長尺ガラス管の横断面部に備えられ光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子」とは、上記「ア」?「イ」をも踏まえると、「長尺ガラス管に備えられ光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子」という限りにおいて共通するものといえる。

オ 引用発明の「照明装置」は、「紫外線発光ダイオード8」による「紫外線にて管内の蛍光物質が蛍光を発して室内を照らすことができ」るものであるから、本件発明1の「蛍光LEDランプ」に相当する。

以上のことから、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点2>
「内面に紫外線で光る蛍光物質を塗布した長尺ガラス管と、
長尺ガラス管に備えられ光軸が長尺ガラス管の長手方向中心軸と非平行とされた非平行紫外線LED素子と、
前記非平行紫外線LED素子を設置する台座と、
からなる蛍光LEDランプ。」

<相違点3>
本件発明1は「非平行紫外線LED素子」を「長尺ガラス管の横断面部に備え」るのに対し、引用発明は「支台5」を「管体1の両端部近傍内部に支持部材にて取り付け」、「紫外線発光ダイオード8」をその「支台5の頂部6の面に4等配、段部7の面に4等配にて取り付け」る点。

<相違点4>
本件発明1は「前記台座の周囲に設けられた紫外線反射材」を備えるのに対し、引用発明は該「紫外線反射材」を備えていない点。

5 判断
ア 相違点3について
(ア)検討
本件発明1における「長尺ガラス管の横断面部」は、明細書の段落【0040】の「通常「長尺ガラス管の横断面」とは、長尺ガラス管の長手方向に対して垂直な平面について示すものであるが、本件発明1における「長尺ガラス管の横断面部」は、長尺ガラス管の長手方向に対しておよそ垂直な平面(例えば60度ないし90度)も含むものである。」(摘示(1B))という記載のとおりに理解される。そして、本件発明1において「非平行紫外線LED素子」が「長尺ガラス管の横断面部に備えられ」ることについて、本件発明1が「前記非平行紫外線LED素子を設置する台座」の構成を有すること、明細書の段落【0042】の「長尺ガラス管の横断面部に設けられた台座」という記載、段落【0048】の「例えば長尺ガラス管の横断面部に支持板0601を設け、支持板上に台座を設置する構成としても良い。」(摘示(1B))という記載及び図6(摘示(1C))の図示内容等を勘案すると、「非平行紫外線LED素子」が長尺ガラス管の長手方向に対しておよそ垂直な平面(例えば60度ないし90度)である「長尺ガラス管の横断面部」に「台座」を介して備えられることと理解される。
一方、引用発明において、「紫外線発光ダイオード8」(「非平行紫外線LED素子」)を取り付ける支台5(「台座」)について、明細書の段落【0006】の「5は支台で、段部を有する変形中空円筒体であり、管体の両端部近傍内部に適宜支持部材(図示略)にて取り付けられる。」(摘示(1b))という記載から、管体1(「長尺ガラス管」)の両端部近傍内部に支持部材によって取り付けられるものであるところ、引用文献1の図2から管体1(「長尺ガラス管」)の端面において口金3に面して支台5(「台座」)の基端側の端面が位置することが看取されるので、支台5(「台座」)はその基端側の端面を管体1(「長尺ガラス管」)の端面において位置するように支持部材によって取り付けられるものと理解される。
そうすると、引用発明における「紫外線発光ダイオード8」(「非平行紫外線LED素子」)は、管体1(「長尺ガラス管」)の端面すなわちその長手方向に対して垂直な平面である横断面部において、支台5(「台座」)を介して備えられるものといえるから、相違点3は実質的な相違点でない。
仮に引用発明における支台5(「台座」)が管体1(「長尺ガラス管」)の横断面部に位置するものでなく、相違点3が実質的な相違点であったとしてみても、引用発明において、支台5(「台座」)を支持部材によってどのように取り付けるかは、当業者が適宜設計変更可能な事項であって、管体1(「長尺ガラス管」)の端面すなわち横断面部において口金3に対して取り付けるようにすることで、支台5(「台座」)を管体1(「長尺ガラス管」)の横断面部に備え、その支台5(「台座」)を介して「紫外線発光ダイオード8」(「非平行紫外線LED素子」)を備えることにより相違点3に係る本件発明1の構成に想到することに格別な困難性は認められない。
(イ)作用効果について
相違点3に係る本件発明1の構成に基づく作用効果は、明細書の段落【0021】の「直管が長尺であっても軽量で、蛍光灯の代替品として使用可能であり、直管の長手方向中心軸に対して360度全面の発光を得られる蛍光LEDランプを提供することが可能となる。」ということと理解されるが、該作用効果が引用発明の作用効果に基づいて当業者が予測し得なかったというような格別な作用効果とは認められない。

イ 相違点4について
上記「第2[理由]2 2-2(4)イ 相違点2についての検討」でも述べたように、照明装置の技術分野において、光を有効利用するためにLEDを含む発光素子の周囲に反射材を配設することは、例えば原査定の拒絶の理由において周知技術を示す引用文献7として示された特開2006-324448号公報(請求項1?3、段落段落【0021】,【0026】?【0027】における「LED」に対する「反射材」参照)、特開2002-202739号公報(段落【0026】、図2?3における「LED光源体2」に対する「反射鏡6」参照)、登録実用新案第3172806号公報(段落【0015】、図1?2における「LEDの光源2」に対する「リフレクタ3」参照)に開示されているように、本願の出願前に周知技術である。
そして引用発明において、内在すると認められる、光を有効利用するという基本的な課題を解決するために該周知技術を適用し、紫外線発光ダイオード8(「非平行紫外線LED素子」)の周囲に反射材を設けることは、当業者が容易になし得たことである。その際、紫外線発光ダイオード8(「非平行紫外線LED素子」)の周囲に反射材をどのように設けるかは、構成を具体化する際に反射材の反射機能を奏する範囲で当業者が適宜設計変更可能な事項であって、紫外線発光ダイオード8(「非平行紫外線LED素子」)を取り付ける支台5(「台座」)の周囲に設けるようにすることで、相違点4に係る本件発明1の構成に想到することに格別な困難性は認められない。またその作用効果は、引用発明の作用効果及び該周知技術の作用効果の総和に基づいて当業者が予測し得なかったというような格別な作用効果とは認められない。

ウ 小括
したがって、本件発明1は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。


第4 むすび
以上のとおり、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-15 
結審通知日 2019-08-16 
審決日 2019-08-28 
出願番号 特願2014-266928(P2014-266928)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (F21S)
P 1 8・ 561- WZ (F21S)
P 1 8・ 572- WZ (F21S)
P 1 8・ 121- WZ (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 當間 庸裕鈴木 重幸  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 中村 泰二郎
一ノ瀬 覚
発明の名称 蛍光LEDランプ  
代理人 工藤 一郎  

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