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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1355847
審判番号 不服2018-15366  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-20 
確定日 2019-10-10 
事件の表示 特願2016-158835号「車載機器制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年2月15日出願公開、特開2018-24395号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月12日の出願であって、平成30年7月12日付けで拒絶理由が通知され、同年9月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月27日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成30年11月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年11月20日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成30年11月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
車両の天井よりも車両下方側に搭載された電源に接続し、車体のピラーに沿って前記車両下方側から前記天井まで配策したワイヤハーネスと、
前記天井に設置された複数の機器と前記車両下方側に設置された機器とを制御対象とする制御装置であり、前記天井に設置し、前記電源の電力が前記ピラーを経た前記ワイヤハーネスを介して供給される天井側制御装置と、
を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記電源から出力された電力を前記天井側制御装置に供給する電源線と、前記天井側制御装置が前記機器を制御する際に使用する情報信号を前記車両下方側と前記天井との間で前記ピラーに沿って複数伝送することが可能な少なくとも1本の共用伝送路と、を備え、
前記天井側制御装置は、前記電源線から供給された前記電力に基づいて制御対象となる複数の前記機器に対応させた電源を生成し、その電源による電力と前記共用伝送路から受信した前記車両下方側の下方側制御装置が持つ前記情報信号とを用いて制御対象となる前記機器を制御することを特徴とした車載機器制御システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成30年9月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
車両の天井よりも車両下方側に搭載された電源に接続し、車体のピラーに沿って前記車両下方側から前記天井まで配策したワイヤハーネスと、
少なくとも前記天井に設置された複数の機器を制御対象とする制御装置であり、前記天井に設置し、前記電源の電力が前記ピラーを経た前記ワイヤハーネスを介して供給される天井側制御装置と、
を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記電源から出力された電力を前記天井側制御装置に供給する電源線と、前記天井側制御装置が前記機器を制御する際に使用する情報信号を前記車両下方側と前記天井との間で前記ピラーに沿って複数伝送することが可能な少なくとも1本の共用伝送路と、を備え、
前記天井側制御装置は、前記電源線から供給された前記電力に基づいて制御対象となる複数の前記機器に対応させた電源を生成し、その電源による電力と前記共用伝送路から受信した前記車両下方側の下方側制御装置が持つ前記情報信号とを用いて制御対象となる前記機器を制御することを特徴とした車載機器制御システム。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「少なくとも天井に設置された複数の機器を制御対象とする制御装置」について、制御対象として、「前記車両下方側に設置された機器」という限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項及び発明
1:特開平9-169248号公報
2:特開平9-11822号公報
以下、それぞれ、「引用文献1」及び「引用文献2」という。

(2-1)引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。以下、同様である。)。
(1a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の車体に取り付ける種々の室内装備品や電装品および電装品の制御ユニット並びにそれらの配線を集約して成形基板に配設し、車室の運転席側天井の前部に組付けるようにした自動車用ルーフモジュールおよびその組付け構造に関する。
・・・
【0003】組付けモジュールbは、合成樹脂製の成形天井cに、ルームランプやマップランプ等の種々の電装品を取付けると共に、それらに接続する複数の電線dを両面テープで貼付けて形成されたものである。組付けモジュールbは、外部の工場などで作製することができるので、自動車の狭い車室内での作業は組付けモジュールbを車体aの天井に取り付ける作業のみとして、電装品の装着および配線作業の簡素化を図っている。
・・・
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題点に着目してなされたもので、種々の電装品や制御回路を集約したモジュールを形成して、車室の運転席側天井の前部に組付けることにより、サンルーフのような機能的電装品の取付けとその制御回路の装着が簡素化されると共に、制御回路の追加や変更が容易で多種類のオプションの電装品に対する適応性が優れ、組付け作業の作業性の良好な自動車用ルーフモジュールを提供することを課題とする。」
(1b)
「【0012】以下、本発明の実施例について説明する。図1は、請求項1に記載した発明の実施例に係わる自動車用ルーフモジュールAを示す分解斜視図である。ルーフモジュールAは、合成樹脂材の成形加工により形成された成形基板1に各種電装品として、アンテナ2、制御ユニット3、制御ユニット3や電装品等を接続する回路導体としてのモジュラ回路体4などの配線類を着設した構造を有するものである。
【0013】成形基板1は、運転席側の天井、すなわち、車室の天井の前部を構成するものであり、長手方向を車体の天井の幅に適合するように、奥行き方向は、車室の天井全体の長さの数分の1ないし十数分の1に形成された細幅の板状体である。アンテナ2は、ラジオやカーナビゲーションのGPS受信用に用いられるアンテナである。
【0014】制御ユニット3は、ユニット基板3a上にキーレスエントリの受信部5、ランプ6、スイッチアッセンブリ7、ランプ6やルームミラー10を制御する多重制御基板8を備えており、成形基板1の中央部に開設された操作窓1aに取り付けられ、上側からケース3bを被せ、下側からランプカバー9を被着して一体化した状態でネジ等を用いて成形基板1に固定するようにしてある。制御ユニット3のスイッチアッセンブリ7を操作することによって、各種の電装品の操作を行うことができるようにしてある。
【0015】また、車内装備品として、ルームミラー10、サンバイザ11が、固定具10aおよび11aを介してそれぞれ装着されている。ルームミラー10は、その角度の調節をモータの回転によって行うようにした電動式のものであり、サンバイザ11には、バニティミラー12およびバニティランプ12aが取付けられている。
【0016】モジュラ回路体4は固定具10aおよび11aに対する固定部に設けたコネクタに接続されているので、ルームミラー10、サンバイザ11の取付けと同時にルームミラー10を駆動するモータや、バニティランプ12aの回路接続を可能としている。成形基板1の一端には、モジュラ回路体4に接続されたコネクタ13が付設されており、車体のフロントピラー14内に収容されているワイヤハーネス15と接続するようにしてある。
【0017】ルーフモジュールAの装着は、図2に示すように、成形天井16の前端部と突き合わせて車体の天井にネジ等を用いて固定するようにしている。成形基板1の車室側の表面1bには、成形天井16とほぼ同様の不織布が貼付けられており、そのまま車室の天井を構成することができる。図3は、ルーフモジュールAを車体に組付けた状態のシステムブロック図である。」
(1c)
「【0018】図4は、請求項4に記載した発明の実施例に係わる自動車用ルーフモジュール組付体Bを示す分解斜視図である。ルーフモジュールBは、前記ルーフモジュールAと同様の成形基板1に、車体の天井の全面に取り付ける成形天井17を添装して、電装品や室内装備品などを着設した構造を有するものである。
【0019】すなわち、成形天井17の前端部に形成したモジュール装着凹部17aに、成形基板1を重ね合わせて固定すると共に、前記ルーフモジュールAと同様に、ラジオやカーナビゲーション用GPSのアンテナ2、制御ユニット3、制御ユニット3や電装品等を接続する回路導体としてのモジュラ回路体4などの配線類を着設した構造を有するものである。
【0020】そして、モジュール装着凹部17aの下側から、前記ルーフモジュールAと同様の車内装備品として、ルームミラー10、サンバイザ11が、固定具10aおよび11aを介してそれぞれ装着するようにしている。モジュラ回路体4は固定具10aおよび11aに対する固定部に設けたコネクタに接続されているので、ルームミラー10の操作回路およびサンバイザ11に内蔵するバニティランプ12aの電気回路も、ルームミラー10、サンバイザ11の取付けと同時に回路接続される。成形基板1の一端には、モジュラ回路体4に接続されたコネクタ13が付設されており、車体のフロントピラー14内に収容されているワイヤハーネス15と接続するようにしてある。
【0021】成形天井17の両側縁部には、リヤパーソナルランプ18に接続する電線19が添設されており、電線19の他端にはコネクタ20がモジュール装着凹部17aにそれぞれ着設されている。コネクタ20は、成形基板1に着設した回路導体としてのモジュラ回路体4に接続したコネクタ21と嵌合して、成形基板1の回路と、リヤパーソナルランプ18の電線19とを接続するようにしている。なお、オプションとして車体の天井にサンルーフを設けた場合は、成形天井17にサンルーフを開閉するための回路を組み込むこともでき、この場合もリヤパーソナルランプ18と同様にコネクタを介して成形基板1に接続すればよい。」
【0022】図5は、車体の天井にルーフモジュール組付け体Bを装着した状態を示す斜視図である。ただし、構造を明確に示すため車体の天井の図示は省略してある。図6は、ルーフモジュール組付け体Bを車体に組付けた状態のシステムブロック図である。ルーフモジュール組付け体Bの車体に対する取付け作業は、車体の天井へのネジ止めなどの取付け作業と、フロントピラーのコネクタとの接続のみで完了する。」
(1d)
「【0035】そのため、モジュールの構造を変えることなく車体の天井にサンルーフを取り付けることも可能となり、車体の天井に取り付けるオプションの電装品の種類に左右されることなく予めモジュールを作製しておくことができる。したがって、車種やグレードによる電装品の変更や追加に対する対応が容易となる。また、電装品を制御する制御ユニットを配設しているため、天井に配備する電装品は勿論、天井以外に装着する電装品、たとえばドアに組み込まれた電装品(ドアロックなど)の操作を行うようにすることができ、しかも、運転者の手が届きやすい位置に設けることが可能である。」
(1e)
図5?7は、以下のとおりである。

【図6】


イ 引用文献1に記載された発明
(ア)
摘記(1c)には、「自動車用ルーフモジュール組付体B」に係る実施例が記載されていること(特に、摘記(1c)の段落【0018】の記載内容)等に照らすと、段落【0018】の「図4」は、「図7」の誤記であることが明らかである。
(イ)
摘記(1c)の段落【0018】の「自動車用ルーフモジュール組付体B」は、摘記(1a)の段落【0001】の「組付け構造」を備えるものと認められる。
(ウ)
図7(合議体注:上記(ア))を参照すると、摘記(1c)の段落【0019】の「ラジオやカーナビゲーション用GPSのアンテナ2、制御ユニット3、制御ユニット3や電装品等を接続する回路導体としてのモジュラ回路体4などの配線類を着設した構造」は、成形基板1に、「ラジオやカーナビゲーション用GPSのアンテナ2、制御ユニット3、制御ユニット3や電装品等を接続する回路導体としてのモジュラ回路体4などの配線類を着設した構造」であることが、明らかである。
(エ)
図1、7(合議体注:上記(ア))及び摘記(1c)の段落【0019】の記載内容を参照すると、「自動車用ルーフモジュール組付体B」の「制御ユニット3」に係る構成は、「ルーフモジュールA同様」の構成、すなわち、摘記(1b)の段落【0014】の「制御ユニット3」に係る構成と同様であると認められる。
また、同様に、「自動車用ルーフモジュール組付体B」の「ルームミラー10」及び「バニティランプ12a」に係る構成も、摘記(1b)の段落【0015】のそれらの部品に係る構成と同様であると認められる。
(オ)
図5及び7(合議体注:上記(ア))から、「成形天井17に取り付けられたリヤパーソナルランプ18」が看取できる。
(カ)
上記(ア)?(オ)、摘記(1a)?(1c)及び図5?7(合議体注:上記(ア)、摘記(1e))から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(なお、摘記した段落番号を、参考情報として記載した。)。

[引用発明]
「種々の電装品および電装品の制御ユニット3並びにそれらの配線を集約して成形基板1に配設し、車室の運転席側天井の前部に組付けた自動車用ルーフモジュール組付体Bであって(【0001】、【0018】)、
成形天井17の前端部に形成したモジュール装着凹部17aに、成形基板1を重ね合わせて固定すると共に、成形基板1に、ラジオやカーナビゲーション用GPSのアンテナ2、制御ユニット3、制御ユニット3や電装品等を接続する回路導体としてのモジュラ回路体4などの配線類を着設し(【0019】)、
成形基板1の一端には、モジュラ回路体4に接続されたコネクタ13が付設されており、車体のフロントピラー14内に収容されているワイヤハーネス15と接続するようにしてあり(【0020】)、
制御ユニット3は、ユニット基板3a上にキーレスエントリの受信部5、ランプ6、スイッチアッセンブリ7、ランプ6やルームミラー10を制御する多重制御基板8を備えており、成形基板1の中央部に開設された操作窓1aに取り付けられ、制御ユニット3のスイッチアッセンブリ7を操作することによって、各種の電装品の操作を行うことができ(【0014】)、
モジュール装着凹部17aの下側から、角度の調節をモータの回転によって行うようにした電動式のルームミラー10、バニティランプ12aが取付けられたサンバイザ11が、固定具10aおよび固定具11aを介してそれぞれ装着するようにし、モジュラ回路体4は固定具10aおよび11aに対する固定部に設けたコネクタに接続されているので、ルームミラー10の操作回路およびサンバイザ11に内蔵するバニティランプ12aの電気回路も、回路接続され(【0015】、【0020】)、
成形天井17の両側縁部には、成形天井17に取り付けられたリヤパーソナルランプ18に接続する電線19が添設されており、電線19の他端にはコネクタ20がモジュール装着凹部17aにそれぞれ着設され、コネクタ20は、成形基板1に着設した回路導体としてのモジュラ回路体4に接続したコネクタ21と嵌合して、成形基板1の回路と、リヤパーソナルランプ18の電線19とを接続するようにし(【0021】)、
車体の天井にサンルーフを設け、成形天井17にサンルーフを開閉するための回路を組み込み、リヤパーソナルランプ18と同様にコネクタを介して成形基板1に接続する(【0021】)、
車両用ルーフモジュール組付体B。」

(2-2)引用文献2について
ア 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(2a)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両用多重通信システムに係り、特に、車両に搭載した多数の負荷を複数のユニットに集約し、それらの間を多重化することによって省線化を図った車両用多重通信システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、車両には、各種のランプ、モータなどの負荷が車体の各部に分散して配置されると共に、これらの負荷を操作するための操作スイッチが運転席の周辺に配設され、そして互いに対応する操作スイッチと負荷とを信号線によって相互接続していた。また、最近の車両では負荷の数が多いため、信号線の数が増えて信号線や電力線を束ねたワイヤーハーネス(WH)の径や重量が大きくなり、これを車体内に配索するための作業が極めて面倒になる他、車体の重量が大きくなる。
【0003】そこで、従来、運転席の周辺に配設された操作スイッチを運転席の近傍に配設した1つのスイッチユニットに集約して接続し、また車体の各部に分散して配置された負荷を車体の前方と後方の2つのグループに分け、2グループの負荷を車体床側に配置された各1つの負荷駆動ユニットに集約して接続し、これらのユニット間を多重ラインにて相互接続した多重通信システムを採用することが提案されている。この提案のシステムでは、多重ラインを通じてユニット間で通信を行い、特定の操作スイッチからの入力信号に応じて対応する負荷を作動することができるので、操作スイッチと負荷を接続するために配索しなければならないワイヤーハーネスの線数が大幅に削減される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】なお、各負荷駆動ユニットには、このユニットに集約されている負荷が電力線と信号線とを介して接続されるが、上述した提案のシステムでは、負荷のグループ分けが車体の前方と後方とで行われ、グループ分けした負荷を集約して接続するための負荷駆動ユニットが共に車両床側に配置されている。
【0005】このため、特に天井に各種の照明灯などが多数配設されているバス車両においては、天井の前方と後方に配設された多数の負荷を各負荷駆動ユニットに接続するための電力線と信号線を束ねたワイヤハーネスの線数が非常に多く肥大化し、しかもこのワイヤハーネスを天井と床との間に配索しなければならない。
【0006】しかし、ワイヤハーネスを天井と床との間に配索するための場所としては、車体の壁面などの特定の場所に限られ、特にバスの場合、車体の壁面には大きなガラス窓が多数形成された構造となっているため、車体の前方と後方で分けた天井負荷と床に配設したユニットとの間に配索するワイヤハーネスを組み付け性良く或いは生産性良く構成することが困難であるという問題があった。
【0007】よって本発明は、上述した従来の問題に鑑み、天井に配置される負荷の数が多いバス車両において、ワイヤハーネスを組み付け性良く或いは生産性良く構成できるようにした車両用多重通信システムを提供することを目的としている。」
(2b)
「【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明による車両用多重通信システムの構成を示す図であり、同図において、多重通信システムはスイッチユニット10、負荷駆動ユニットA20及び負荷駆動ユニットB30からなる3つのユニットと、これらユニットを相互接続し、ユニット相互間の通信を行うための多重ライン40a及び40bと、各ユニット10、20及び30に電力を供給するためのバッテリ50と、バッテリ50及び負荷駆動ユニットA20間、負荷駆動ユニットA20及びスイッチユニット10間、負荷駆動ユニットA20及び負荷駆動ユニットB30間に配索された電力線60a?60cとからなる。電力線60aのバッテリ50側にはバッテリリレースイッチ70によってオン・オフされるバッテリリレー80とフュージブルリンク(FL)90が挿入されている。
【0014】スイッチユニット10は、これに各種操作スイッチ11_(1) ?11nや調光用ボリューム11aなどの操作入力手段11が接続されており、これらの操作入力手段11の操作信号を入力し、多重通信データに変換した後、負荷駆動ユニットA20及び負荷駆動ユニットB30に通信を行う。
【0015】負荷駆動ユニットA20は、バス車体の床回りの電装品である負荷21_(1) ?21nがそれぞれ接続されるスイッチング手段20a_(1) ?20anを有し、このスイッチング手段20a_(1) ?20anを介して負荷21_(1) ?21nが電力線60aに接続されている。スイッチング手段20a_(1) ?20anは、スイッチユニット10からのスイッチ信号データによりオン・オフ制御され、このことによって関連する負荷の動作を制御する。負荷駆動ユニットA20には、制御に必要な図示しない制御用各種スイッチの状態が入力される。負荷駆動ユニットA20はまた、電力線60bと電力線60aとの間に挿入されたフューズ20bと、電力線60cと電力線60aとの間に挿入されたフューズ20cとを有する。
(2c)
「【0016】負荷駆動ユニットB30は、天井周辺の電装品である負荷311 ?31nと調光可能な例えば蛍光灯31aがそれぞれ接続されるスイッチング手段30a_(1 )?30anと調光制御回路30bとを有し、このスイッチング手段30a_(1) ?30an及び調光制御回路30bを介して負荷31_(1) ?31n及び蛍光灯31aが電力線60aに接続されている。スイッチング手段30a_(1 )?30an及び調光回路30bはスイッチユニット10及び負荷駆動ユニットA20から受信する多重信号によりそれぞれオン・オフ制御及び調光制御されて関連する負荷の動作を制御する。」
(2d)
「【0021】上述したシステムは、図2に示すように、バス運転席横のスイッチボックス100に集約される各種操作スイッチSWをスイッチユニット10により入力し、多重通信を用いてボックス100内に設けられた負荷駆動ユニットA20と天井に設けられた負荷駆動ユニットB30により、対応する負荷を制御するものである。スイッチユニット10は運転席右のスイッチボックス100内に取り付けられ、スイッチパネルSPに配された各種スイッチ及びボリュームの操作による外部スイッチ信号を入力し、負荷駆動ユニットA20及び負荷駆動ユニットB30に多重通信にてデータを送信する。
【0022】負荷駆動ユニットA20はスイッチユニット10と同様に運転席右のスイッチボックス100内に取り付けられ、スイッチユニット10からの受信データにより、図3に示すように主に床側に配置され一般のワイヤハーネスWHにより接続された負荷21_(1 )?21nを制御する。負荷駆動ユニットB30は運転席後方の天井部位に取り付けられ、スイッチユニット10及び負荷駆動ユニットB30から受信した多重データにより、同図に示すように主に天井側に配置され一般のワイヤハーネスWHにより接続された負荷31_(1 )?31nを制御し、白熱灯や蛍光灯の調光回路を内蔵し、スイッチパネルSPに配されたボリュームの操作に応じた調光制御を行う。
【0023】なお、スイッチボックス100内に取り付けられた負荷駆動ユニットA20と運転席後方の天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30との間を接続する多重ライン40bは、好ましくは、運転席の後部側方において床面と天井との間に設けられるパイプ状の中空柱内に通されるが、負荷駆動ユニットB30が主に天井側に配置され一般のワイヤハーネスWHにより接続された負荷31_(1) ?31nを制御し、床側に配置される負荷駆動ユニットA20と天井部位に取り付けられた負荷31_(1 )?31nとの間を接続するワイヤハーネスWHが必要ないので、パイプ状の中空柱内に通す必要のある線数が少なく、配索作業が極めて容易である。」
(2e)
図1?3は、以下のとおりである。
【図1】


イ 引用文献2に記載された技術事項
(ア)
摘記(2c)の「多重信号」に関して、摘記(2b)?(2d)及び図1を参照すると、以下の事項が認められる。
「天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30」が、「天井側に配置された」複数の「負荷311 ?31n」を「制御する」際に使用する「多重信号」であって、「負荷駆動ユニットA20から」の「多重信号」である。
また、「運転席右のスイッチボックス100内に取り付けられた負荷駆動ユニットA20と天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30との間を接続する多重ライン40b」が、「負荷駆動ユニットA20から」の「多重信号」を、車両の下方側と天井との間で「通信」することは、明らかである(特に、摘記(2b)の段落【0013】、摘記(2d)の段落【0021】、【0023】及び摘記(2e)の図1、3を参照。)。
(イ)
摘記(2c)の「負荷駆動ユニットB30」に関して、摘記(2c)、(2d)及び図1(特に、摘記(2c)の「スイッチング手段30a_(1 )?30an」に係る構成)を参照すると、以下の事項が認められる。
「天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30」は、「電力線60c」から供給された電力に基づいて制御対象となる複数の「負荷31_(1) ?31n」に対応させた電源を生成している。
また、「天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30」は、上記の電源による電力と、「負荷駆動ユニットA20から」の「多重信号」とを用いて制御対象となる「天井側に配置された」複数の「負荷31_(1 )?31n」を「制御」する。
(ウ)
上記(ア)、(イ)及び摘記(2c)、(2d)から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2に記載された技術事項]
「床面と天井との間に設けられるパイプ状の中空柱内に通され、天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30が、天井側に配置された複数の負荷31_(1) ?31nを制御する際に使用する、負荷駆動ユニットA20からの多重信号を、車両の下方側と天井との間で、通信する、運転席右のスイッチボックス100内に取り付けられた負荷駆動ユニットA20と天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30との間を接続する多重ライン40bと、
負荷駆動ユニットA20及び負荷駆動ユニットB30間に配索された電力線60cと、を備え、
天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30は、電力線60cから供給された電力に基づいて制御対象となる天井側に配置された複数の負荷31_(1) ?31nに対応させた電源を生成し、
その電源による電力と、負荷駆動ユニットA20からの多重信号とを用いて制御対象となる複数の負荷31_(1 )?31nを制御する、車両用多重通信システム。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明において、「成形天井17」は、「車体の天井」の一部であることが明らかであり、引用発明の「車体の天井」及び「成形天井17」は、いずれも、本件補正発明の「車両の天井」に相当する。

(ア)
引用発明の「ワイヤハーネス15」は、「車体のフロントピラー14内に収容され」ており、「成形天井17」に「固定」されている「成形基板1の一端」に「付設され」た「モジュラ回路体4に接続されたコネクタ13」に「接続する」から、車体のピラーに沿って、車両下方側から、天井(上記ア参照)まで配策されているといえる。
(イ)
引用発明は、「成形天井17の両側縁部には、成形天井17に取り付けられたリヤパーソナルランプ18に接続する電線19が添設されており、電線19の他端にはコネクタ20がモジュール装着凹部17aにそれぞれ着設され、コネクタ20は、成形基板1に着設した回路導体としてのモジュラ回路体4に接続したコネクタ21と嵌合して、成形基板1の回路と、リヤパーソナルランプ18の電線19とを接続するようにし」ている構成を備えることから、当該「電線19」に、電力が、「成形基板1の一端」に「付設され」た「モジュラ回路体4に接続されたコネクタ13」に「接続する」、「車体のフロントピラー14内に収容されているワイヤハーネス15」を介して供給されることは明らかであり、そのために、引用発明の「ワイヤハーネス15」が、電源に接続されていることは明らかである。
(ウ)
上記(ア)、(イ)を踏まえると、引用発明の「成形基板1の一端には、モジュラ回路体4に接続されたコネクタ13が付設されており、車体のフロントピラー14内に収容されているワイヤハーネス15と接続するようにしてあ」る構成と、本件補正発明の「車両の天井よりも車両下方側に搭載された電源に接続し、車体のピラーに沿って前記車両下方側から前記天井まで配策したワイヤハーネス」の構成とは、「電源に接続し、車体のピラーに沿って車両下方側から前記天井まで配策したワイヤハーネス」の構成の限りで共通している。

(ア)
引用発明の「ランプ6」は、「制御ユニット3」が「備え」る「電装品」であり、「制御ユニット3」は、「成形基板1」に「取り付けられ」、「成形基板1」は、「成形天井17」に「固定」されているから、引用発明の「ランプ6」は、「成形天井17」に設置された機器といえる。
(イ)
引用発明の「電動式のルームミラー10」は、「成形天井17の前端部に形成した」「モジュール装着凹部17a」の「下側から」、「装着」されているから、引用発明の「電動式のルームミラー10」は、「成形天井17」に設置された機器といえる。
(ウ)
引用発明の「バニティランプ12a」は、「サンバイザ11」に「取付けられ」、「サンバイザ11」は、「成形天井17の前端部に形成した」「モジュール装着凹部17a」の「下側から」、「装着」されているから、引用発明の「バニティランプ12a」は、「成形天井17」に設置された機器といえる。
(エ)
引用発明の「リヤパーソナルランプ18」は、「成形天井17に取り付けられた」ものであるから、引用発明の「リヤパーソナルランプ18」は、「成形天井17」に設置された機器といえる。
(オ)
引用発明の「サンルーフ」は、「車体の天井に」、「設け」られているから、引用発明の「サンルーフ」は、「車体の天井」に設置された機器といえる。
(カ)
したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「ランプ6」、「電動式のルームミラー10」、「バニティランプ12a」、「リヤパーソナルランプ18」及び「サンルーフ」は、本件補正発明の「車両の天井に設置された複数の機器」に相当する。

(ア)
引用発明の「制御ユニット3」は、「成形基板1」に「取り付けられ」、「成形基板1」は、「成形天井17」に「固定」されているから、引用発明の「制御ユニット3」は、「成形天井17」すなわち車両の天井(上記ア参照)に設置されているといえる。
(イ)
引用発明の「制御ユニット3」は、「ランプ6やルームミラー10を制御する多重制御基板8を備えており」、「各種の電装品の操作を行うことができ」、「制御ユニット3や電装品等を接続する回路導体としてのモジュラ回路体4」に接続されている。
また、引用発明は、「モジュラ回路体4」の接続に関して、「成形基板1の一端には、モジュラ回路体4に接続されたコネクタ13が付設されており、車体のフロントピラー14内に収容されているワイヤハーネス15と接続するようにしてあ」る構成、「モジュール装着凹部17aの下側から、角度の調節をモータの回転によって行うようにした電動式のルームミラー10、バニティランプ12aが取付けられたサンバイザ11が、固定具10aおよび固定具11aを介してそれぞれ装着するようにし、モジュラ回路体4は固定具10aおよび11aに対する固定部に設けたコネクタに接続されているので、ルームミラー10の操作回路およびサンバイザ11に内蔵するバニティランプ12aの電気回路も、回路接続され」る構成、「成形天井17の両側縁部には、成形天井17に取り付けられたリヤパーソナルランプ18に接続する電線19が添設されており、電線19の他端にはコネクタ20がモジュール装着凹部17aにそれぞれ着設され、コネクタ20は、成形基板1に着設した回路導体としてのモジュラ回路体4に接続したコネクタ21と嵌合して、成形基板1の回路と、リヤパーソナルランプ18の電線19とを接続するようにし」てある構成、及び、「車体の天井にサンルーフを設け、成形天井17にサンルーフを開閉するための回路を組み込み、リヤパーソナルランプ18と同様にコネクタを介して成形基板1に接続する」構成を備えている。
これらのことから、引用発明の「制御ユニット3」は、「モジュラ回路体4」や「電線19」等を介して、「ランプ6」、「電動式のルームミラー10」、「バニティランプ12a」、「リヤパーソナルランプ18」及び「サンルーフ」すなわち車両の天井に設置された複数の機器(上記ウ(カ)参照)と電気的に接続され、「モジュラ回路体4」を介して「ワイヤハーネス15」とも電気的に接続されており(上記イ(ア)参照)、「各種の電装品の操作を行うことができ」るものであるから、車両の天井に設置された複数の機器を制御対象とし、電源の電力がピラーを経たワイヤハーネスを介して供給する(上記イ(ウ)参照)、装置であるといえる。
(ウ)
上記(ア)、(イ)を踏まえると、引用発明の
「種々の電装品および電装品の制御ユニット3並びにそれらの配線を集約して成形基板1に配設し、車室の運転席側天井の前部に組付けた自動車用ルーフモジュール組付体Bであって、
成形天井17の前端部に形成したモジュール装着凹部17aに、成形基板1を重ね合わせて固定すると共に、成形基板1に、ラジオやカーナビゲーション用GPSのアンテナ2、制御ユニット3、制御ユニット3や電装品等を接続する回路導体としてのモジュラ回路体4などの配線類を着設し、
成形基板1の一端には、モジュラ回路体4に接続されたコネクタ13が付設されており、車体のフロントピラー14内に収容されているワイヤハーネス15と接続するようにしてあり、
制御ユニット3は、ユニット基板3a上にキーレスエントリの受信部5、ランプ6、スイッチアッセンブリ7、ランプ6やルームミラー10を制御する多重制御基板8を備えており、成形基板1の中央部に開設された操作窓1aに取り付けられ、制御ユニット3のスイッチアッセンブリ7を操作することによって、各種の電装品の操作を行うことができ」る構成(以下「構成A」という。)の「制御ユニット3」と、
本件補正発明の「前記天井に設置された複数の機器と前記車両下方側に設置された機器とを制御対象とする制御装置であり、前記天井に設置し、前記電源の電力が前記ピラーを経た前記ワイヤハーネスを介して供給される天井側制御装置」とは、
「前記天井に設置された複数の機器を制御対象とする制御装置であり、前記天井に設置し、前記電源の電力が前記ピラーを経た前記ワイヤハーネスを介して供給される天井側制御装置」の限りで共通している。

上記エ(イ)で述べた事項(特に、「制御ユニット3」と電気的に接続される「角度の調節をモータの回転によって行うようにした電動式のルームミラー10」、「リヤパーソナルランプ18の電線19」、「サンルーフを開閉するための回路」等の構成)、及び、上記エ(ウ)で述べた共通する構成を踏まえると、引用発明の「構成A」の「ワイヤハーネス15」が、電源から出力された電力を天井側制御装置である「制御ユニット3」に供給する電源線を備えること、及び、引用発明の「構成A」の天井側制御装置である「制御ユニット3」が、電源線から供給された電力に基づいて制御対象となる複数の機器に対応させた電源を生成していることは、いずれも、明らかである。
したがって、引用発明の「構成A」の「ワイヤハーネス15」及び「制御ユニット3」が備える構成と、本件補正発明の「前記ワイヤハーネスは、前記電源から出力された電力を前記天井側制御装置に供給する電源線と、前記天井側制御装置が前記機器を制御する際に使用する情報信号を前記車両下方側と前記天井との間で前記ピラーに沿って複数伝送することが可能な少なくとも1本の共用伝送路と、を備え、前記天井側制御装置は、前記電源線から供給された前記電力に基づいて制御対象となる複数の前記機器に対応させた電源を生成し、その電源による電力と前記共用伝送路から受信した前記車両下方側の下方側制御装置が持つ前記情報信号とを用いて制御対象となる前記機器を制御すること」の構成とは、「前記ワイヤハーネスは、前記電源から出力された電力を前記天井側制御装置に供給する電源線とを備え、前記天井側制御装置は、前記電源線から供給された前記電力に基づいて制御対象となる複数の前記機器に対応させた電源を生成すること」の構成の限りで共通している。

引用発明の「車両用ルーフモジュール組付体B」は、「制御ユニット3」を備え、この「制御ユニット3」が、複数の機器に対応させた電源を生成しているから(上記オ参照)、複数の機器を制御しているといえる。
したがって、引用発明の「車両用ルーフモジュール組付体B」は、本件補正発明の「車載機器制御システム」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「電源に接続し、車体のピラーに沿って車両下方側から天井まで配策したワイヤハーネスと、
前記天井に設置された複数の機器を制御対象とする制御装置であり、前記天井に設置し、前記電源の電力が前記ピラーを経た前記ワイヤハーネスを介して供給される天井側制御装置と、
を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記電源から出力された電力を前記天井側制御装置に供給する電源線を備え、
前記天井側制御装置は、前記電源線から供給された前記電力に基づいて制御対象となる複数の前記機器に対応させた電源を生成する車載機器制御システム。」
<相違点1>
「電源」に関して、本件補正発明は、「車両の天井よりも車両下方側に搭載された」電源であるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「制御対象」に関して、本件補正発明は、前記天井に設置された複数の機器と「前記車両下方側に設置された機器」とを制御対象とするのに対して、引用発明は、前記天井に設置された複数の機器を制御対象とするものの、それ以上の機器を制御対象とすることは、特定されていない点。
<相違点3>
「ワイヤハーネス」及び「天井側制御装置」に関して、本件補正発明は、前記電源から出力された電力を前記天井側制御装置に供給する電源線「と、前記天井側制御装置が前記機器を制御する際に使用する情報信号を前記車両下方側と前記天井との間で前記ピラーに沿って複数伝送することが可能な少なくとも1本の共用伝送路と、」を備える構成、及び、前記電源線から供給された前記電力に基づいて制御対象となる複数の前記機器に対応させた電源を生成し、「その電源による電力と前記共用伝送路から受信した前記車両下方側の下方側制御装置が持つ前記情報信号とを用いて制御対象となる前記機器を制御する」構成を、備えるのに対して、引用発明は、前記電源から出力された電力を前記天井側制御装置に供給する電源線、及び、前記電源線から供給された前記電力に基づいて制御対象となる複数の前記機器に対応させた電源を生成する構成を備えるが、それ以上の特定はされていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)
引用発明は、「車体のフロントピラー14内に収容されているワイヤハーネス15」が電源に接続されているところ(上記(3)イ(イ))、「ワイヤハーネス15」の一方側である「成形天井17」に電源を備えるものではなく、「成形天井17」よりも上側に電源を備えるものでもなく、また、車両の主電源などの電源が、天井よりも車両下方側に搭載されていることは、技術常識であることから、引用発明の電源は、「成形天井17」すなわち車両の天井よりも、車両下方側に搭載された電源であるといえる。
したがって、相違点1は相違点ではない。
(イ)
仮に、相違点1が実質的な相違点であったとしても、上記の技術常識を参照することで、上記相違点1に係る本件補正発明の構成を想到することは、当業者にとって格別に困難なことではない。

イ 相違点2について
本願の図2の、車両の下方側を示す符号であるAM2の範囲などを参照すると、本件補正発明の「車両下方側」には、車両の天井よりも下方側のドア部分も該当することが明らかである。
引用文献1(摘記(1d))には、「電装品を制御する制御ユニットを配設しているため、天井に配備する電装品は勿論、天井以外に装着する電装品、たとえばドアに組み込まれた電装品(ドアロックなど)の操作を行うようにすることができ」るという技術事項が記載されている。
この技術事項を引用発明に適用し、引用発明において、車両の天井よりも車両下方側に設置された機器である、ドアに組み込まれた電装品(ドアロックなど)を設けて、車両下方側に設置された機器(ドアロックなど)をも、引用発明の「制御対象」とすることで、上記相違点2に係る本件補正発明の構成を想到することは、当業者にとって格別に困難なことではない。

ウ 相違点3について
(ア)
本件補正発明と引用文献2に記載された技術事項とを対比する。
a
引用文献2に記載された技術事項の「天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30」及び「天井側に配置された複数の負荷31_(1 )?31n」は、それぞれ、本件補正発明の「天井側制御装置」及び「天井に設置された複数の機器」に相当する。
b
引用文献2に記載された技術事項の「負荷駆動ユニットA20からの多重信号」は、本件補正発明の「情報信号」及び「車両下方側の下方側制御装置が持つ情報信号」のそれぞれに相当する。
引用文献2に記載された技術事項の「負荷駆動ユニットA20からの多重信号を、車両の下方側と天井との間で、通信する」構成は、本件補正発明の「情報信号を車両の下方側と天井との間で」「複数伝送する」構成に相当する。
c
引用文献2に記載された技術事項の「運転席右のスイッチボックス100内に取り付けられた負荷駆動ユニットA20と天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30との間を接続する多重ライン40b」は、本件補正発明の「共用伝送路」に相当する。
d
引用文献2に記載された技術事項の「負荷駆動ユニットA20及び負荷駆動ユニットB30間に配索された電力線60c」は、本件補正発明の「電源線」に相当する。
e
したがって、引用文献2に記載された技術事項を、本件補正発明の用語を用いて示すと、次のとおりである(なお、( )内の用語は、引用文献2に記載された技術事項の用語である。)。
[引用文献2に記載された技術事項]
「床面と天井との間に設けられるパイプ状の中空柱内に通され、天井側制御装置(天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30)が、天井に設置された複数の機器(天井側に配置された複数の負荷31_(1) ?31n)を制御する際に使用する、情報信号(負荷駆動ユニットA20からの多重信号)を、車両の下方側と天井との間で、複数伝送する(車両の下方側と天井との間で、通信する)、共用伝送路(運転席右のスイッチボックス100内に取り付けられた負荷駆動ユニットA20と天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30との間を接続する多重ライン40b)と、
電源線(負荷駆動ユニットA20及び負荷駆動ユニットB30間に配索された電力線60c)と、を備え、
天井側制御装置(天井部位に取り付けられた負荷駆動ユニットB30)は、電源線(電力線60c)から供給された電力に基づいて制御対象となる天井側に配置された天井に設置された複数の機器(複数の負荷31_(1) ?31n)に対応させた電源を生成し、
その電源による電力と、車両下方側の下方側制御装置が持つ情報信号(負荷駆動ユニットA20からの多重信号)とを用いて制御対象となる天井に設置された複数の機器(複数の負荷31_(1 )?31n)を制御する、車両用多重通信システム。」
(イ)
引用発明と引用文献2に記載された技術事項とは、「配線」等に関して「組付け作業を良くすることを目的とする」という課題が共通し(摘記(1a)の段落【0006】及び摘記(2a)の段落【0007】参照)、「天井に設置された複数の機器を制御対象とする制御装置であり、天井に設置し、電源の電力が供給される天井側制御装置」という主たる構成も共通し、さらに、引用文献1には、「図6は、ルーフモジュール組付け体Bを車体に組付けた状態のシステムブロック図である。」(摘記(1c)の段落【0022】参照)と記載され、その図6(摘記(1e))を参照すると、「車両W/H 多重通信線 電源線」との記載が有り、W/H(ワイヤハーネス)が、電源線と、多重通信線すなわち共用伝送路の両方を備えることも示唆されているから、引用文献2に記載された技術事項(特に、多重ライン40bすなわち共用伝送路に係る技術事項)を引用発明に適用する動機付けは充分にあるといえる。
(ウ)
したがって、引用文献2に記載された技術事項を引用発明に適用することで、引用発明において、ワイヤハーネス15が、天井側制御装置が機器を制御する際に使用する情報信号を車両下方側と前記天井との間でフロントピラー14に沿って複数伝送することが可能な少なくとも1本の共用伝送路を備えるようにし、制御ユニット3が、電源線から供給された電力に基づいて制御対象となる複数の機器に対応させた電源を生成し、その電源による電力と共用伝送路から受信した車両下方側の下方側制御装置が持つ情報信号とを用いて制御対象となる機器を制御するように構成することで、上記相違点3に係る本件補正発明の構成を想到することは、当業者にとって格別に困難なことではない。

エ 作用効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず(摘記(2c)の段落【0023】も参照)、格別顕著なものということはできない。

オ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、「一方、新たな補正後の本願請求項1-5に係る発明では、下方側制御装置から情報信号を受け取った天井側制御装置が、天井に設置された複数の機器と車両下方側に設置された機器の双方を制御対象にしています。この点については、引用文献1及び2だけでなく、引用文献3(特開2007-320467号公報)、引用文献4(特開平5-146081号公報)、引用文献5(国際公開第2015/163312号)及び引用文献6(特開2008-74167号公報)にも開示されておりません。そして、引用文献1-6には、その点を示唆する記載もありません。このため、新たな補正後の本願請求項1-5に係る発明は当業者であっても引用文献1-6の記載に基づいて容易になし得るものではない、と判断します。」と主張する。
しかしながら、上記相違点2について述べたとおり、引用文献1(摘記(1d))には、車両下方側に設置された機器(ドアロックなど)をも制御対象とすることが示唆されているから、上記主張は採用できない。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記の補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年11月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成30年9月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?5に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開平9-169248号公報
引用文献2:特開平9-11822号公報
引用文献3:特開2007-320467号公報
引用文献4:特開平5-146081号公報
(周知技術を示す文献)
引用文献5:国際公開第2015/163312号
(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開2008-74167号公報
(周知技術を示す文献)

3 引用文献に記載された事項等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項等は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記天井に設置された複数の機器と前記車両下方側に設置された機器とを制御対象とする制御装置」について、制御対象として、「前記車両下方側に設置された機器」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)、(5)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-31 
結審通知日 2019-08-06 
審決日 2019-08-27 
出願番号 特願2016-158835(P2016-158835)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60R)
P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高島 壮基  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 出口 昌哉
一ノ瀬 覚
発明の名称 車載機器制御システム  
代理人 特許業務法人虎ノ門知的財産事務所  
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