ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
---|---|
管理番号 | 1355903 |
審判番号 | 不服2018-11566 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-28 |
確定日 | 2019-11-05 |
事件の表示 | 特願2017- 16662「樹脂成形体及び表面実装型発光装置並びにそれらの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日出願公開,特開2017- 76822,請求項の数(14)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は,平成16年11月30日を出願日とする特願2004-345195号(以下「原始出願」という。)の一部を,平成20年7月14日に新たな出願とした特願2008-182469号(以下「原々出願」という。)のそのまた一部を,平成27年3月25日に新たな出願とした特願2015-62590号(以下「原出願」という。)のそのまた一部を,平成29年2月1日に新たな出願としたものであって,以降の手続は次のとおりである。 平成29年 3月 1日 手続補正 同年11月29日 拒絶理由通知(同年12月5日発送) 平成30年 2月 5日 手続補正・意見書提出 同年 5月29日 拒絶査定(同年同月23日謄本送達) 同年 8月28日 審判請求 平成31年 3月 5日 拒絶理由通知(同年同月12日発送) 同年 5月13日 手続補正・意見書提出 2 本願発明 本願の請求項1?14に係る発明は,平成31年5月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 第1のインナーリード部と第1のアウターリード部とを有する平板状の第1のリードと,第2のインナーリード部と第2のアウターリード部とを有する平板状の第2のリードと,を備えるリードフレームと,底面方向から見て環状に繋がる凹みを持ち,底面方向から見て前記環状の凹みの内側の面と前記環状の凹みの外側の面とを持つ上金型と,前記上金型の前記環状の凹みの内側の面及び外側の面並びに前記凹みに相当する部分に平坦な面を持つ下金型と,を準備する工程と, 前記上金型における前記環状の凹みの内側の面と前記下金型における平坦な面とにより前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部とを挟み込み,かつ,前記上金型における前記環状の凹みの外側の面と前記下金型における平坦な面とにより前記第1のアウターリード部と前記第2のアウターリード部とを挟み込む工程と, 前記上金型の凹み及び前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部との間,及び,平面方向から見て前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部との外側に,フィラー,拡散材,顔料,蛍光物質,反射性物質,遮光性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されている溶融した第1の熱硬化性樹脂を流し込む工程と, 流し込まれた第1の熱硬化性樹脂を加熱し仮硬化する工程と, 前記第1の熱硬化性樹脂が仮硬化された後,前記上金型と前記下金型とを取り外す工程と, 前記第1の熱硬化性樹脂を加熱し,本硬化し,第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面及び裏面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面かつ同じ厚みを含む第1の樹脂成形体を形成する工程と,前記第1のインナーリード部に発光素子を載置する工程と, 前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部と前記第1の樹脂成形体とにより形成される底面と,前記環状の凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部内に,第2の樹脂成形体の表面が凹部の上面と一致するように第2の熱硬化性樹脂を配置する工程と, 前記第2の熱硬化性樹脂を加熱して硬化し第2の樹脂成形体を形成する工程と, を有し, 前記第1の樹脂成形体は,エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種であり,かつ,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質,遮光性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されている表面実装型発光装置の製造方法。」 なお,請求項2?14は,いずれも請求項1を直接または間接に引用する記載となっている。 3 当審拒絶理由及び原査定の理由の概要 ---<< 引用例等一覧 >>--------------- A 特開2004-111964号公報 1 特開2003-110145号公報 2 特開2004-274027号公報 3 特開2004-214436号公報(周知例として) 4 特開2002-368281号公報(周知例として) 5 特開2003-174200号公報(周知例として) 6 特開2002-16293号公報(周知例として) 7 特開2001-168398号公報(周知例として) 8 特開2003-218399号公報(周知例として) 9 特開2003-188420号公報(周知例として) 10 特開平11-340517号公報(周知例として) 11 特開平8-45972号公報(周知例として) 12 特開2002-232014号公報(周知例として) 13 特開2004-343059号公報(周知例として) 14 特開2001-15668号公報(周知例として) 15 特開平10-261821号公報(周知例として) ------------------------------ (1)平成31年3月5日付けで通知された拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。 ア 理由1 請求項1に係る発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである(以下「理由1」という。)。 イ 理由2 請求項1に係る発明は,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである(以下「理由2」という。)。 (2)原査定(平成30年5月29日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである(以下「理由A」という。)。 請求項1に係る発明は,引用例Aに記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである(以下「理由A」という。)。 4 引用例に記載された発明 (1)引用例1に記載された発明 ア 引用例1(特開2003-110145号公報)には以下の記載がある(下線は当審で付加。以下同様。)。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,発光ダイオード(LED)に係り,特に表面実装LEDパッケージに関する。 【0002】 【従来の技術】図1及び2に示され,台湾特許出願第089109999号及び同時係属米国特許出願第09/596,907号に開示された従来の表面実装LEDパッケージは,マザーボードに接触するように露出された底部金属のみを有する。この金属接触プレート11,12は,図2に示すように,その上面が接着剤15で覆われている。金属プレート11,12は,図1の上面図における垂直端に沿って窪み14を有する。また,図2に示すように,金属接触プレート11,12の水平底面に沿って窪み17を有する。これら窪みは,接着剤をシーリングし,該構造を引っ掛け,保持するためのものである。LED10は,第一の金属接触プレート11上にマウントされる。LED10の上部電極は,ワイヤ13によって,第二の金属接触プレート12へワイヤ・ボンディングされる。 【0003】図1のA-A’断面に沿った図2の断面に示すように,接着剤15は,このパッケージの底面における窪み17と,このパッケージの垂直側に沿った窪み14とを満たし,この構造を固める。この構造は,はんだ付け用の窪みによって占められていない金属接触プレート11,12の底面のみを露出する。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】このはんだ付けのための限定されたエリアは接触の信頼性を低減する。 【0005】本発明の目的は,表面実装LEDパッケージのマザーボードへのはんだ付けの信頼性を向上させることである。本発明の別の目的は,表面実装LEDパッケージのマザーボードへのはんだ付けエリアを増やすことである。」 (イ)「【0007】 【発明の実施の形態】図3は,本発明の基本構成を示す。下部電極を有するLED20は,第一端子として機能する接触金属プレート21上にマウントされる。LED20の上部電極は,第二の接触金属プレート22にワイヤ・ボンディングされる。接触金属プレート21,22は,窪み27を有する。LED20及び金属成分の上面の一部は,接着剤25で覆われ,シーリングされる。ここで,金属プレート21,22の拡張部分Bは覆われないまま残される。シーリング中,接着剤は,更に,窪み27を満たし,このシーリングされた構造を固める。拡張部分Bは,シーリングされたエリアの外へ延び,図4に示すように,マザーボードへの接触させるためのはんだ付けエリア26をより大きくする。したがって,マザーボードへの接触のはんだ性が向上する。」 (ウ)「【0008】図5は,本発明の第2の実施形態を示す。この構造は,接着剤25が金属プレート21,22の底面から深さCのところでシーリングすること以外は図4と同様である。したがって,この構造は,接着剤25によってより完全にシーリングされる。シーリングされたエリアを越えた拡張部分は,依然としてマザーボードへはんだ付けされることが可能である。」 (エ)「【0013】図10は,本発明の第7の実施形態を示す。この構造は,2つの貫通穴381が金属プレート321,311の上面から底部窪み27(図示せず)へ挿入されること以外は図3と同様である。この貫通穴は,接着剤25が貫通穴381内を流れ,この構造をさらに固めることを可能にする。」(1) (オ) 「【0015】図12は,本発明の第9の実施形態を示す。この構造は,金属プレート21,22の上面上の接着剤35がLED20を露出するためのカップ39を形成すること以外は図3と同様である。このカップ面は,LED20から発せられた光を集光するのに役立つ。」 (カ) 「【図面の簡単な説明】 ・・・(中略)・・・ 【図12】LEDからの光を集光するカップ状金属を示す図である。」 (キ)図12は以下のものである。 イ 引用発明1 (ア)引用例1の図1?3,5,10,12及び前記ア(ア)?(エ)の記載から,前記ア(オ)に記載された,図12に係るLED20を備える表面実装LEDパッケージにおいても,金属プレート21,22は,上面から見ての垂直端に沿ってプレート窪み24を有し,また,接着剤は,窪み24と窪み27を満たし,このシーリングされた構造を固めるものであり,また,拡張部分Bは,シーリングされたエリアの外へ延びるものであることがわかる。さらに,図12からは,金属プレート21,22の露出部分の底部と,接着剤35は同一平面上あることが見て取れる。 (イ)前記ア(オ),(カ)の記載から,図12に示されたものは,LED20を露出するためのカップ39のカップ面は,開口方向に向かって広がり,LED20から発せられた光を集光する,カップ状金属を備えることがわかる。 (ウ)以上から,引用例1には,図12に示された第9の実施形態について,以下の発明(以下「引用発明1」という。)が示されているものと認められる。 「LED20を備える表面実装LEDパッケージであって, 金属プレート21,22と,金属プレート21,22の上面を覆う接着剤35を有し, LED20は,第一の金属接触プレート21上にマウントされ,LED20の上部電極は,ワイヤによって,第二の金属接触プレート22へワイヤ・ボンディングされており, 金属プレート21は,LED20がマウントされた部分の反対側において露出された底部金属を有し, 金属プレート22は,前記ワイヤ・ボンディングされた部分の反対側において露出された底部金属を有し, 前記各露出された底部金属と,接着剤35は同一平面上にあり, 金属プレート21,22は,上面から見ての垂直端に沿って窪み24を有し,また,金属接触プレート21,22の水平底面に沿って窪み27を有し,これら窪み24,27は,接着剤35をシーリングし,該構造を引っ掛け,保持するためのものであり, 金属プレート21,22の拡張部分は,接着剤35によって覆われないまま残され,当該部分は,接着剤35によって覆われたエリアの外へ延びており, 金属プレート21,22の上面上の接着剤35がLED20を露出するためのカップ39を形成し,このカップ面は,LED20から発せられた光を集光するカップ状金属を備えるものである, LED20を備える表面実装LEDパッケージ。」 (2)引用例2に記載された発明 ア 引用例2(特開2004-274027号公報)には,以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 第1の領域と,前記第1の領域の周縁に沿って延在する第2の領域とが規定された主表面を有するリードフレームと, 前記第1の領域に設けられた半導体発光素子と, 前記半導体発光素子から発せられた光に対して第1の反射率を有し,前記半導体発光素子を完全に覆うように前記第1の領域に設けられた第1の樹脂部材と, 前記半導体発光素子から発せられた光に対して前記第1の反射率よりも大きい第2の反射率を有し,前記半導体発光素子を囲むように前記第2の領域に設けられた第2の樹脂部材とを備え, 前記第1の樹脂部材は,第1の頂面を含み, 前記第2の樹脂部材は,前記主表面からの距離が前記主表面から前記第1の頂面までの距離よりも大きい位置に設けられた第2の頂面と,前記半導体発光素子が位置する側において前記主表面から離隔する方向に延在し,前記第2の頂面に連なる内壁とを含む,半導体発光装置。 ・・・(中略)・・・ 【請求項7】 前記リードフレームは,スリット状の溝によって離間した部分を含み,前記部分は他の部分の厚みよりも小さい厚みで形成されている,請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体発光装置。 【請求項8】 前記リードフレームは,同一平面上に延在する板形状に形成されている,請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体発光装置。 【請求項9】 前記リードフレームは,前記主表面と反対側の面に形成され,かつ樹脂が充填される第1の凹部を含み,前記反対側の面には,前記第1の凹部の両側に位置して実装基板に電気的に接続される端子部が設けられている,請求項8に記載の半導体発光装置。 ・・・(中略)・・・ 【請求項12】 前記第2の樹脂部材は,前記主表面に平行な面上において前記内壁によって規定される形状の面積が,前記主表面から離れるに従って大きくなるように形成されている,請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体発光装置。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 半導体発光装置の高輝度化を図るにあたって,図16中の半導体発光装置では以下に説明する問題が生じた。 ・・・(中略)・・・ 【0021】 そこでこの発明の目的は,上記の課題を解決することであり,放熱性に優れるとともに,光の指向性を適切に制御することができる半導体発光装置,その製造方法および電子撮像装置を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0022】 この発明に従った半導体発光装置は,第1の領域と,第1の領域の周縁に沿って延在する第2の領域とが規定された主表面を有するリードフレームと,第1の領域に設けられた半導体発光素子と,半導体発光素子を完全に覆うように第1の領域に設けられた第1の樹脂部材と,半導体発光素子を囲むように第2の領域に設けられた第2の樹脂部材とを備え る。第1の樹脂部材は,半導体発光素子から発せられた光に対して第1の反射率を有する。第2の樹脂部材は,半導体発光素子から発せられた光に対して第1の反射率よりも大きい第2の反射率を有する。第1の樹脂部材は,第1の頂面を含む。第2の樹脂部材は,主表面からの距離が主表面から第1の頂面までの距離よりも大きい位置に設けられた第2の頂面と,半導体発光素子が位置する側において主表面から離隔する方向に延在し,第2の頂面に連なる内壁とを含む。 【0023】 このように構成された半導体発光装置によれば,半導体発光素子から発せられた光は,相対的に小さい反射率を有する第1の樹脂部材を透過し,第1の樹脂部材の第1の頂面から外部へと出射する。本発明では,第2の樹脂部材は,第1の頂面よりも高い位置に設けられた第2の頂面を有するため,第1の頂面上においても第2の樹脂部材の内壁が存在する。このため,第1の頂面から出射した光を相対的に大きい反射率を有する第2の樹脂部材の内壁によって反射させることができる。これにより,光の指向性を適切に制御することができ,さらには半導体発光装置から高輝度な光を取り出すことができる。また,第2の頂面よりも低い位置に第1の頂面を設けているため,半導体発光素子から発せられた光が第1の樹脂部材を透過する際に減衰することを抑制できる。このため,半導体発光装置からさらに高輝度な光を取り出すことができる。 ・・・(中略)・・・ 【発明を実施するための最良の形態】 【0043】 この発明の実施の形態について,図面を参照して説明する。 【0044】 (実施の形態1) 図1は,この発明の実施の形態1における半導体発光装置を示す断面図である。図1を参照して,半導体発光装置は,所定のパターン形状に形成され,主表面1aを有するリードフレーム1と,主表面1a上に設けられたLEDチップ4と,LEDチップ4を覆うように主表面1a上に設けられたエポキシ樹脂6と,エポキシ樹脂6の周囲に設けられた樹脂部3とを備える。 【0045】 リードフレーム1は,同一平面上において延在する板形状を有する。リードフレーム1には,所定のパターンニング加工を行なうことによって,主表面1aから主表面1aと反対側の面1bにまで達するスリット状の溝1mが形成されている。 【0046】 リードフレーム1の反対側の面1bには,スリット状の溝1mに連なる溝15が形成されている。これにより,リードフレーム1においてスリット状の溝1mが形成された部分1tは,他の部分の厚みよりも小さい厚みで形成されている。 【0047】 図2は,図1中の半導体発光装置を示す平面図である。図2では,リードフレーム1に形成されている一部の構造物が省略されている。図1および図2を参照して,主表面1aには,2点鎖線で描かれた円13の内部に位置する領域10と,円13の外部に位置し,領域10の周縁に沿って延在する領域20とが規定されている。円13の中心を通るように溝1mが形成されており,スリット状の溝1mによってリードフレーム1が離間している。 【0048】 LEDチップ4は,主表面1aの領域10に位置して設けられている。LEDチップ4は,銀(Ag)ペースト7を介して設けられている。LEDチップ4の頂面に設けられた図示しない電極と,領域10に位置し,LEDチップ4が設けられた主表面1aとはスリット状の溝1mによって離間している主表面1aとが,金線5によって接続されている。つまり,LEDチップ4は,銀ペースト7および金線5によって主表面1aに機械的および電気的に接続されている。 【0049】 LEDチップ4の電極に接続された金線5の一方端5pは,ボール状に形成されており,主表面1aに接続された金線5の他方端5qは,線状に形成されている。つまり,金線5を所定の位置に接続する際のワイヤボンディングは,まず金線5の一方端5pをLEDチップ4の電極にボールボンディングし,続いて金線5の他方端5qを主表面1aにウェッジボンディングすることによって行なわれている。 【0050】 LEDチップ4から光が発せられると熱が発生する。この熱はリードフレーム1に伝わり,リードフレーム1から外部に放熱される。本実施の形態では,リードフレーム1の部分1tを小さい厚みで形成することによって,スリット状の溝1mを,溝幅を小さくして加工することができる。このため,リードフレーム1の他の部分の厚みを大きくすることによって,リードフレーム1による放熱を効率良く行なうことができる。 【0051】 また,リードフレーム1から効率良く放熱を行うため,リードフレーム1は,熱伝導率が300(W/m・K)以上400(W/m・K)以下の金属によって形成されている。リードフレーム1を形成する金属の熱伝導率が300(W/m・K)よりも小さい場合,リードフレーム1による放熱の効果を十分に図ることができない。また,リードフレーム1を形成する金属の熱伝導率が400(W/m・K)よりも大きい場合,リードフレーム1を実装する際に発生する熱がLEDチップ4に伝わることによって,LEDチップ4の信頼性が低下するおそれが生じる。 【0052】 具体的には,主成分である銅(Cu)に対して,鉄(Fe),亜鉛(Ze),ニッケル(Ni),クロム(Cr),シリコン(Si),スズ(Sn),鉛(Pb)または銀(Ag)などの金属を適宜混ぜた合金によってリードフレーム1が形成されている。この場合,銅に加える金属の量を小さくするほど,リードフレーム1を形成する合金の熱伝導率を高くすることができる。 【0053】 また,本実施の形態では,リードフレーム1が折り曲げのない構造で形成されているため,リードフレーム1を形成する材料を選択する際に,その材料の折り曲げ加工性を考慮する必要がない。このため,幅広い種類の材料からリードフレーム1を形成するための材料を選択することができる。また,リードフレーム1は折り曲げのない構造で形成されているため,折り曲げ時に発生する割れおよびクラックなどを懸念する必要がない。 【0054】 リードフレーム1が,樹脂にインサート成型されることによって,主表面1a上には,領域20に位置する樹脂部3が設けられている。また,樹脂がリードフレーム1の反対側の面1bにまで回り込んで樹脂部8を形成している。樹脂部8は,スリット状の溝1mおよび溝15を充填するように設けられている。樹脂部3および8は,所定のパターン形状に形成されたリードフレーム1の形状を保持する役割を果たしている。特に,本実施の形態では,樹脂部8がリードフレーム1の反対側の面1bを広く覆っているため,リードフレーム1と樹脂部8との接着強度を増大させることができる。これにより,半導体発光装置の信頼性を向上させることができる。樹脂部8の両側に位置するリードフレーム1の反対側の面1bには,半導体発光装置を実装基板に接続するための端子部9が設けられている。 【0055】 樹脂部8の両側に位置する端子部9は,絶縁体である樹脂部8によって隔てられている。このため,端子部9を実装基板にはんだ付けする場合に,たとえば,アノード・カソード間,または複数のLEDチップ間などにおいて短絡が発生することを防止できる。 【0056】 樹脂部3は,主表面1aにほぼ平行な平面上に延在する頂面3aと,LEDチップ4が設けられた主表面1aの領域10を囲み,主表面1aから離隔する方向に延在する内壁3bとを有する。内壁3bは,主表面1aと頂面3aとに連なっている。樹脂部3の内壁3bは,LEDチップ4から発せられた光を反射するための反射面として機能する。 【0057】 樹脂部3および8は,LEDチップ4から発せられた光を樹脂部3で効率良く反射するために,反射率が高い白色の樹脂から形成されている。また,製造時におけるリフロー工程を考慮して,樹脂部3および8は,耐熱性に優れた樹脂から形成されている。具体的には,上述の両方の条件を満たす液晶ポリマーまたはポリアミド系樹脂などが使用されている。なお,これ以外の樹脂およびセラミックなどについても,樹脂部3および8を形成する材料として使用することができる。また,LEDチップ4から発せられた光をさらに効率良く反射させるために,内壁3bの表面にめっきを施しても良い。 【0058】 樹脂部3の内壁3bと主表面1aとによって形成された凹部には,LEDチップ4および金線5が位置している。その凹部には,LEDチップ4および金線5を覆うようにエポキシ樹脂6が設けられている。エポキシ樹脂6は,外部からの物理的または電気的な接触に対して,LEDチップ4および金線5を保護する役割を果たしている。エポキシ樹脂6は,内壁3bから中心部にかけてやや凹んだ形状の頂面6aを有する。エポキシ樹脂6は,主表面1aから頂面6aまでの距離が,主表面1aから樹脂部3の頂面3aまでの距離よりも小さくなるように形成されている。このため,エポキシ樹脂6の頂面6a上においても頂面3aに向かう方向に内壁3bが延在している。 【0059】 エポキシ樹脂6は,LEDチップ4から発せられる光に対して,樹脂部3が有する反射率よりも小さい反射率を有する材料で形成されている。具体的には,ポッティング方式で注型された透明または乳白色の樹脂が使用されている。なお,ポッティング方式以外にも,トランスファー成型またはインジェクション成型などによっても,エポキシ樹脂6を設けることが可能である。この場合は,エポキシ樹脂6を任意の形状(たとえばレンズ形状)に形成することができる。 【0060】 図3は,図1中のIII-III線上に沿った断面図である。図1および図3を参照して,主表面1aに平行な平面上において内壁3bによって規定される形状25が円形となっている。樹脂部3は,その内壁3bによって規定される形状25の面積が,主表面1aから離れるに従って大きくなるように形成されている。つまり,内壁3bは,頂点が下方に位置する円錐を想定した場合に,その円錐の底面から頂点に向かって延在する円錐の側壁の形状を有する。 【0061】 図4は,樹脂部の内壁によって光が反射される様子を模式的に表わした断面図である。図4を参照して,主表面1a上に光源22が設けられている場合を想定すると,光源22から発せられた光は放射状に進行する。半導体発光装置では,この光源22から発せられる光の指向性を適切に制御し,さらには,所定の方向に高輝度な光を取り出すことが重要となる。樹脂部3は,内壁3bによって規定される形状の面積が主表面1aから離れるに従って大きくなるように形成されているため,光源から主表面1aに近い方向に進行する光を内壁3bによって所定の方向に反射させることができる。これにより,光源から発せられた光を,半導体発光装置の前面,つまり矢印23に示す方向に取り出すことができる。また,主表面1aに平行な平面上において内壁3bによって規定される形状が円形となっているため,内壁3bの傾きを調整することによって光の指向性を容易に制御することができる。 【0062】 本実施の形態では,図1を参照して,LEDチップ4から発せられた光は,内壁3bによって所定の方向に反射され,エポキシ樹脂6を透過して頂面6aから外部へと出射する。この際,頂面6aにおいて屈折が生じることによって光の進行する方向が変化する。しかし,頂面6a上においても反射面として機能する内壁3bが存在するため,光を再び内壁3bに反射させて半導体発光装置の前面へと出射させることができる。 【0063】 図5および図6は,内壁によって規定される形状の変形例を示す断面図である。図5および図6は,図3に示す断面に相当する断面図である。 【0064】 図5を参照して,主表面1aに平行な平面上において内壁3bによって規定される形状26が楕円となるように樹脂部3を形成してもよい。図6を参照して,主表面1aに平行な平面上において内壁3bによって規定される形状27が長方形となるように樹脂部3を形成してもよい。これらの場合,半導体発光装置から発せられる光の発光面積を大きくとることができる。このように半導体発光装置が搭載される電子機器などの使用目的にあわせて,樹脂部3を設ける形態を適宜変更すれば良い。 【0065】 この発明の実施の形態1に従った半導体発光装置は,第1の領域としての領域10と,領域10の周縁に沿って延在する第2の領域としての領域20とが規定された主表面1aを有するリードフレーム1と,領域10に設けられた半導体発光素子としてのLEDチップ4と,LEDチップ4を完全に覆うように領域10に設けられた第1の樹脂部材としてのエポキシ樹脂6と,LEDチップ4を囲むように領域20に設けられた第2の樹脂部材としての樹脂部3とを備える。 【0066】 エポキシ樹脂6は,LEDチップ4から発せられた光に対して第1の反射率を有する。樹脂部3は,LEDチップ4から発せられた光に対して第1の反射率よりも大きい第2の反射率を有する。エポキシ樹脂6は,第1の頂面としての頂面6aを含む。樹脂部3は,主表面1aからの距離が主表面1aから頂面6aまでの距離よりも大きい位置に設けられた第2の頂面としての頂面3aと,LEDチップ4が位置する側において主表面1aから離隔する方向に延在し,頂面3aに連なる内壁3bとを含む。 【0067】 半導体発光装置は,LEDチップ4に接続される一方端5pと,主表面1aに接続される他方端5qとを有する金属線としての金線5をさらに備える。エポキシ樹脂6は,金線5を完全に覆うように設けられている。 【0068】 リードフレーム1は,スリット状の溝1mによって離間した部分1tを含む。部分1tは他の部分の厚みよりも小さい厚みで形成されている。 【0069】 リードフレーム1は,同一平面上に延在する板形状に形成されている。リードフレーム1は,主表面1aと反対側の面1bに形成され,かつ樹脂としての樹脂部8が充填される第1の凹部としての溝15を含む。反対側の面1bには,溝15の両側に位置して実装基板に電気的に接続される端子部9が設けられている。 【0070】 樹脂部3は,主表面1aに平行な面上において内壁3bによって規定される形状の面積が,主表面1aから離れるに従って大きくなるように形成されている。主表面1aに平行な面上において内壁3bによって規定される形状は,円形,楕円形および多角形のいずれかである。 【0071】 このように構成された半導体発光装置によれば,頂面6a上においてもLEDチップ4から発せられる光を反射させるための内壁3bが延在している。また,相対的に低い位置にエポキシ樹脂6の頂面6aが設けられているため,光がエポキシ樹脂6を透過する際に減衰することを抑制できる。さらに,板状に形成されることによってリードフレーム1の高さが低く抑えられているため,樹脂部3の高さを高くすることができる。これにより,LEDチップ4から発せられる光を反射させるための内壁3bをより高い位置まで延在させることができる。以上の理由から,LEDチップ4から発せられる光の指向性を適切に制御して,半導体発光装置から高輝度な光を取り出すことができる。」 (ウ)図1は以下のものである イ 引用発明2 (ア)上記ア(ア)によれば,引用例2には, 「第1の領域と,前記第1の領域の周縁に沿って延在する第2の領域とが規定された主表面を有するリードフレームと, 前記第1の領域に設けられた半導体発光素子と, 前記半導体発光素子から発せられた光に対して第1の反射率を有し,前記半導体発光素子を完全に覆うように前記第1の領域に設けられた第1の樹脂部材と, 前記半導体発光素子から発せられた光に対して前記第1の反射率よりも大きい第2の反射率を有し,前記半導体発光素子を囲むように前記第2の領域に設けられた第2の樹脂部材とを備え, 前記第1の樹脂部材は,第1の頂面を含み, 前記第2の樹脂部材は,前記主表面からの距離が前記主表面から前記第1の頂面までの距離よりも大きい位置に設けられた第2の頂面と,前記半導体発光素子が位置する側において前記主表面から離隔する方向に延在し,前記第2の頂面に連なる内壁とを含み, 前記第2の樹脂部材は,前記主表面に平行な面上において前記内壁によって規定される形状の面積が,前記主表面から離れるに従って大きくなるように形成されている,半導体発光装置であって, 前記リードフレームは,同一平面上に延在する板形状に形成され,スリット状の溝によって離間した部分を含み,前記部分は他の部分の厚みよりも小さい厚みで形成されており, 前記リードフレームは,前記主表面と反対側の面に形成され,かつ樹脂が充填される第1の凹部を含み,前記反対側の面には,前記第1の凹部の両側に位置して実装基板に電気的に接続される端子部が設けられている,半導体発光装置。」 が記載されているものと認められる。 (イ)上記ア(イ)(段落【0059】)によれば,第1の樹脂部材は,エポキシ樹脂であること,第2の樹脂部材は,反射率が高い白色の樹脂から形成され,また,リードフレームが樹脂にインサート成型されることによって設けられ,樹脂がリードフレームの反対側の面に回り込んで第1の凹部に充填されるものであることが認められる。 (ウ)上記ア(イ)(段落【0048】)を踏まえて,引用例2の図1を見ると,樹脂部3,すなわち第2の樹脂部材の内壁3bと主表面1aとによって形成された凹部には,リードフレーム1の主表面1aが露出しており,露出した主表面1aにLEDチップ4,すなわち半導体発光素子が銀(Ag)ペースト7を介して設けられ,LEDチップ4の頂面に設けられた電極と,LEDチップ4が設けられた主表面1aとはスリット状の溝1mによって離間している主表面1aとが金線5によって接続されていること,スリット状の溝1mを挟んで溝15が形成されており,第2の樹脂部材に埋め込まれたリードフレームの端部は第2の樹脂部材から突出するとともに,主表面と反対側の面は,樹脂が充填される溝15,すなわち凹部を除いて露出しており,また,当該露出された部分と当該樹脂が充填された部分は同一面上にあることが理解できる。 (エ)引用発明2 以上によれば,引用例2には,次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明2」という。)。 「第1の領域と,前記第1の領域の周縁に沿って延在する第2の領域とが規定された主表面を有するリードフレームと, 前記第1の領域に設けられた半導体発光素子と, 前記半導体発光素子から発せられた光に対して第1の反射率を有し,前記半導体発光素子を完全に覆うように前記第1の領域に設けられた第1の樹脂部材と, 前記半導体発光素子から発せられた光に対して前記第1の反射率よりも大きい第2の反射率を有し,前記半導体発光素子を囲むように前記第2の領域に設けられた第2の樹脂部材とを備え, 前記第1の樹脂部材は,第1の頂面を含み, 前記第2の樹脂部材は,前記主表面からの距離が前記主表面から前記第1の頂面までの距離よりも大きい位置に設けられた第2の頂面と,前記半導体発光素子が位置する側において前記主表面から離隔する方向に延在し,前記第2の頂面に連なる内壁とを含み, 前記主表面に平行な面上において前記内壁によって規定される形状の面積が,前記主表面から離れるに従って大きくなるように形成されている,半導体発光装置であって, 前記リードフレームは,同一平面上に延在する板形状に形成され,スリット状の溝によって離間した部分を含み,前記部分は他の部分の厚みよりも小さい厚みで形成されており, 前記第2の樹脂部材の内壁と前記主表面とによって形成された凹部には,露出した前記リードフレームの主表面に前記半導体発光素子が銀ペーストを介して設けられ,前記半導体発光素子の頂面に設けられた電極と,前記半導体発光素子が設けられた前記主表面とは前記スリット状の溝によって離間している前記主表面とが金線によって接続され, また,前記リードフレームは,前記主表面と反対側の面に前記スリット状の溝を挟んで形成され,かつ前記スリット状の溝とともに樹脂が充填される第1の凹部を含み,前記反対側の面には,前記第1の凹部の両側に位置して実装基板に電気的に接続される端子部が設けられており, 前記第1の樹脂部材は,エポキシ樹脂であり, 前記第2の樹脂部材は,反射率が高い白色の樹脂から形成され,また,前記第2の樹脂部材は,前記リードフレームが樹脂にインサート成型されることによって設けられ,樹脂が前記リードフレームの反対側の面に回り込んで前記スリット状の溝及び第1の凹部に充填され, 前記第2の樹脂部材に埋め込まれた前記リードフレームの端部は第2の樹脂部材から突出するとともに,前記リードフレームの前記主表面と反対側の面は,樹脂が充填される凹部を除いて露出しており,当該露出している部分と当該樹脂が充填される部分は同一面上にある, 半導体発光装置。」 (3)引用例Aに記載された発明 ア 引用例A(特開2004-111964号公報)には以下の記載がある。 「【0001】 本発明は表面実装技術(SMT)に関するものである。より具体的には,デバイスを基板表面に接続するための電気接続部を窪み中に設けることにより,窪み中ではんだ付けすることを可能とした表面実装型電子装置又は電子デバイスに関する。 【背景技術】 ・・・(中略)・・・ 【0008】 従来から周知の表面実装型光電デバイスの第2の例を図2(a)?図2(b)に示した。図2(a)は上面の側面図であり,図2(b)は平面図である。 【0009】 第2のデバイス200においては,LED201が導電性媒体203により接触部材202上に電気的に取り付けられている。ボンディングワイヤ204がLED201を他方の接触部材205へと電気接続している。デバイス200の本体全体は,光学的に透明なプラスチックである。2つの接触部材202,205は,デバイス100の本体206の 下に沿って外側に水平に伸びており,本体206の外の水平部分で終わっている。はんだリフロー処理において,接触部材202,205ははんだ接合211により基板210に接続されるが,このはんだ接合211は接触部材202,205の端部における,外側垂直面とは反対に向かっている。上述した例のいずれにおいても,はんだ付けポイントも導電性部材もプラスチック本体の端部の外へと伸びているのである。図1又は図2に示す構成に類似する従来の公知技術が,例えば,以下の特許文献1ないし3に記載される。 【特許文献1】特開平10-65220号 ・・・(中略)・・・ 【0011】 図2(a)及び(b)に示した延長導電性部材含むデザインは,図1(a)及び(b)に示したものよりも更に長いフットプリントを持っている。これにより,LEDデバイスを基板上に密に搭載することが出来ない。デバイスのフットプリントは長さcであるが,これはデバイスの本体aよりもかなり長い。はんだ付けすることにより,必要とされる全体長は更に長くなってしまう。 【0012】 従来技術によるデバイスに要するサイズは,LEDデバイスのアレイの画素解像度に影響を与える。図2(a)及び(b)に示したデバイスのアレイを図3に示したが,これらのデバイスはPCB300上に搭載されている。LEDデバイスのピッチdは,小さくすることは出来ない。小さくした場合,組立工程或いは使用中に短絡が発生する可能性があるのである。 【0013】 更に,図1,及び図2に示したデバイスにおいては,延長された導電性部材及びはんだ接合部が見る者に対して視覚的に現れることになり,これらの反射性が高いことから,見た目に望ましくない障害となってしまう。換言すると,これらはLEDと基板との間のコントラストを低下させてしまうのである。この現象は日光等の明るい周囲光がある状況下では,より強調される。 【0014】 フットプリントを小さくしつつも熱抵抗を低く維持した表面実装電子デバイスの必要性がある。LEDデバイスにおいては更に,より良好なコントラストが求められている。従って,本発明の目的は,従来技術における1つ以上の欠点を少なくとも部分的に緩和することである。 【0015】 本発明の一態様によれば,デバイスを実装する為の第1の実装表面を持つ本体を含む表面実装電子デバイスが提供される。第1の表面は,窪み部分をその中に持っている。また,少なくとも2つの電気接触部材が第1の表面に設けられている。電気接触部材は,窪み部分の少なくとも1つの内面の少なくとも一部を形成する第1の部分を含む。従って,デバイスが実装された場合にこれらの下には間隙が生じることになる。」 「【0059】 第5の実施形態800を図8(a)及び(b)に示したが,これは図4(b)の実施形態に類似したものであり,対応する造作及び部品には符号の頭を4から8に変えた以外は同様の符号を付してある。光学的に透明な本体802は2つの水平な接触部材804,806を持っている。LED808は第1の接触部材804上に実装される。2つの接触部材自体が本体802の下側810に設けられている。接触部材804,806は,第1の部分816,818において終わっている外端部を含み,その上面は各接触部材の残りの部分と同じレベルにあるが,縦の厚さが接触部材の残りの部分の半分しかない。よってこれら第1の部分816,818の下にはそれぞれに窪み820,821がある。各接触部材の第1の部分以外の残りの部分は第2の部分822,824である。LED808は第1の接触部材の第2の部分822の上に実装され,ボンディングワイヤ828がLEDの上部を第2の接触部材806の第2の部分824へと接続している。 【0060】 よって実施形態間の違いは,電気接触部材804,806の第1の部分816,818の本体802基部における形状と厚さの違いにある。特に,平坦部分,それに続く斜め上向きに延びる部分,そしてまたそれに続く更なる平坦部分を持たせるよりも,接触部材下部を平坦部分,それに続き,短い距離だけ垂直に上に伸びる実質的に直角(垂直)な部分,そして再度外向きの更なる平坦部分で構成した方が,接触部材の上面を平坦にすることが出来る。厚さを薄くした平坦部分が第1の部分816,818を形成する。本体は第1の部分816,818の下には存在していない。よって第1の部分810が窪み820,821を画定することになる。 【0061】 先に述べた従来技術によるデバイスとは異なり,接触部材がパッケージ本体を超えて水平に伸びてはいない。代わりに,フットプリントはより小さくなっており,本体の長さaと幅bに収まっている。更に,窪みがデバイスをPCBへと搭載する為のはんだを収容する空間を提供しており,はんだが本体の長さaを超えることはない。よってこれらのデバイスはより緊密に設けることが出来,上から見た場合に,はんだは見える位置に略存在しないように実装され得る。 【0062】 第6の実施形態900を図9(a)及び(b)に示した。これは図5(a),(b)の実施形態と似ているが,上から見た場合の接触部材の形状が図8の実施形態と同じものであり,対応する造作及び部品には符号の頭を5から9に変えた以外は同様の符号を付してある。概ね光学的に不透明な本体902は3つの水平接触部材904,906,907を含んでいる。2つのLED908,909は,第1の主要接触部材904上に実装される。これら3つの接触部材自体が本体902の下側910に設けられる。接触部材904,906,907は第1の部分916,918,919で終わる外側端部を持っており,これらの上面は各接触部材の残りの部分と同じレベルにあるが,その厚さは接触部材の他の部分の縦の厚さの半分しかない。よって各第1の部分916,918,919の下には窪み920,921がある。各接触部材の第1の部分以外の残りの部分は第2の部分922,924,925である。LED908,909は,第1の接触部材904の第2の部分922上に実装されており,第1のボンディングワイヤ928が第1のLED908の上部を第1の副接触部材906の第2の部分924へと接続し,第2のボンディングワイヤ929が第2のLED909の上部を第2の副接触部材907の第2の部分925へと接続している。光学的に透明なプラスチックで満たされた反転させた円錐台形の空洞930が2つのLED908,909からの光を上方向に逃がすようになっている。 【0063】 よって図5(a)及び(b),図9(a)及び(b)の実施形態との違いは,各接触部材904,906,907の第1の部分916,918,919にある。これらは本体902の下にありながらも,垂直に窪みを作っている。第1の部分916,918,919の下には本体は存在していない。よってこの場合にも,窪み920,921が画定されている。 【0064】 先に述べた従来技術によるデバイスとは異なり,接触部材がパッケージ本体を超えて水平に伸びてはいない。かわりに,フットプリントはより小さくなっており,本体の長さaと幅bに収まっている。更に,窪みがデバイスをPCBへと搭載する為のはんだを収容する空間を提供しており,はんだが本体の長さaを超えることはない。よってこれらのデバイスはより緊密に設けることが出来,上から見た場合に,はんだは見える位置に略存在しないように実装され得る。」 ここで,図9(a)及び(b)は以下のものである。 イ 引用発明A 以上から,引用例Aには,図9に示された第6の実施形態について,以下の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されているものと認められる。 「デバイスを基板表面に接続するための電気接続部を窪み中に設けることにより,窪み中ではんだ付けすることを可能とした表面実装型電子装置であって, 概ね光学的に不透明な本体902が,3つの水平接触部材904,906,907を含んでおり, 2つのLED908,909が,第1の主要水平接触部材904上に実装され, 3つの水平接触部材自体が本体902の下側910に設けられ,水平接触部材904,906,907は第1の部分916,918,919で終わる外側端部を持っており,これらの上面は各接触部材の残りの部分と同じレベルにあるが,その厚さは水平接触部材の他の部分の縦の厚さの半分しかないものであり,よって各第1の部分916,918,919の下には窪み920,921があり, 各水平接触部材の第1の部分以外の残りの部分は第2の部分922,924,925であり, LED908,909は,第1の水平接触部材904の第2の部分922上に実装されており,第1のボンディングワイヤ928が第1のLED908の上部を第1の副水平接触部材906の第2の部分924へと接続し,第2のボンディングワイヤ929が第2のLED909の上部を第2の副水平接触部材907の第2の部分925へと接続しており, 光学的に透明なプラスチックで満たされた反転させた円錐台形の空洞930が2つのLED908,909からの光を上方向に逃がすようになっているものである, 表面実装型電子装置。」 5 当審の判断 (1)理由1について ア 対比 (ア)引用発明1と本願発明1とを対比する。 a 引用発明1の「接着剤35」は,本願発明1の「第1の樹脂成形体」に相当する。 b 引用発明1の「金属プレート21」であってそ「の上面を覆う接着剤35を有」するもの,及び,「金属プレート」「22」であってそ「の上面を覆う接着剤35を有」するものは,それぞれ本願発明1の「第1のインナーリード部」及び「第2のインナーリード部」に相当する。 c 引用発明1の「金属プレート21」「の拡張部分」であって「接着剤35によって覆われないまま残され,当該部分は,接着剤35によって覆われたエリアの外へ延びて」いる部分,及び「金属プレート」「22の拡張部分」であって「接着剤35によって覆われないまま残され,当該部分は,接着剤35によって覆われたエリアの外へ延びて」いる部分は,それぞれ本願発明1の「第1のアウターリード部」及び「第2のアウターリード部」に相当する。 d 引用発明1の「LED20は,第一の金属接触プレート21上にマウントされ」ることは,本願発明1の「前記第1のインナーリード部に発光素子を載置する」ことに相当する。 e 引用発明1の「金属プレート21,22の上面上の接着剤35がLED20を露出するためのカップ39を形成」することと,本願発明1の「前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部と前記第1の樹脂成形体とにより形成される底面と,前記環状の凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部」とは,「前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部とにより形成される底面と,凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部」である点で一致する。 f 引用発明1の「LED20を備える表面実装LEDパッケージ」は,本願発明1の「表面実装型発光装置」に相当する。 (イ)よって,本願発明1によって形成されるものと引用発明1とは,結果として以下の点で一致すると言える。 「第1のインナーリード部と第1のアウターリード部とを有する平板状の第1のリードと,第2のインナーリード部と第2のアウターリード部とを有する平板状の第2のリードと,を備えるリードフレームと, 第1の樹脂成形体とを有し, 前記第1のインナーリード部に発光素子が載置され, 前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部とにより形成される底面と,凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部を備える, 表面実装型発光装置。」 (ウ)一方,本願発明1と引用発明1とは,以下の各点で相違する。 《相違点1》 本願発明1は,本願請求項1に記載された各「工程」を備える,「表面実装型発光装置の製造方法」に係る発明であるのに対して,引用発明1は「LED20を備える表面実装LEDパッケージ」という,物の発明であることから,前記各「工程」は備えない点。 《相違点2》 本願発明1は,「平板状の第1のリード」及び「平板状の第2のリード」を備えるが,引用発明1の「金属プレート21,22」は「水平底面に沿って窪み27を有」することから,「平板状」とはいえない点。 《相違点3》 本願発明1は,「第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面及び裏面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面かつ同じ厚みを含む第1の樹脂成形体を」形成し,「前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部と前記第1の樹脂成形体とにより形成される底面と,前記環状の凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部」を備えるのに対して,引用発明1は「前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部とにより形成される底面と,凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部」に対応する構成は備えるものの,「第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面及び裏面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面かつ同じ厚み」であり,「底面」が「前記第1の樹脂成形体とによ」っても形成され,さらに,「側面」が「底面方向から見て環状に繋がる凹みを持ち,底面方向から見て前記環状の凹みの内側の面と前記環状の凹みの外側の面とを持つ上金型」の「前記環状の凹みによって形成される」ものであることまでは特定されていない点。 《相違点4》 本願発明1は,「第1の樹脂成形体の凹部内に,第2の樹脂成形体の表面が凹部の上面と一致するように第2の熱硬化性樹脂を配置」し,「第2の樹脂成形体を形成する」が,引用発明1はそのような構成を備えない点。 《相違点5》 本願発明1は,「第1の樹脂成形体」が「エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種であり,かつ,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質,遮光性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されている」ものであるのに対して,引用発明1は「第1の樹脂成形体」が「第1の樹脂」により形成されることに対応する構成は備えるものの,当該「第1の樹脂」が「エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種であり,かつ,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質,遮光性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されている」ことまでは特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み,まず相違点2について検討する。 (ア)相違点2に係る「平板状の第1のリード」及び「平板状の第2のリード」における「平板状」の技術的意味を検討するに,本願発明1に係る「第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面及び裏面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面かつ同じ厚みを含む第1の樹脂成形体を形成する」との構成から,各インナーリード部自体が同一平面上に位置することを前提としているといえ,さらに本願の各図を参照すると,「第1のリード」及び「第2のリード」はともに同一平面上に配置されるものであると解される。 (イ)一方,前記4(1)ア(ア)に摘記したとおり,引用例1には,「【0002】 ・・・(中略)・・・金属プレート11,12は,図1の上面図における垂直端に沿って窪み14を有する。また,図2に示すように,金属接触プレート11,12の水平底面に沿って窪み17を有する。これら窪みは,接着剤をシーリングし,該構造を引っ掛け,保持するためのものであ」り,「【0003】図1のA-A’断面に沿った図2の断面に示すように,接着剤15は,このパッケージの底面における窪み17と,このパッケージの垂直側に沿った窪み14とを満たし,この構造を固める。この構造は,はんだ付け用の窪みによって占められていない金属接触プレート11,12の底面のみを露出する」ものであることが記載されている。 そして,上記各記載に続けて,「【0004】【発明が解決しようとする課題】」として,「このはんだ付けのための限定されたエリアは接触の信頼性を低減する。」こと,及び「【0005】本発明の目的は,表面実装LEDパッケージのマザーボードへのはんだ付けの信頼性を向上させることである」と記載されている。ここで,「はんだ付けのための限定されたエリア」とは,「はんだ付け用の窪みによって占められていない金属接触プレート11,12の底面のみ」を指し,窪み17の存在によって,はんだ付けのためのエリアが限定されてしまうことが課題の発端となっていることは明らかである。 そうすると,引用例1に記載された発明は,「接着剤をシーリングし,該構造を引っ掛け,保持するためのものである」窪み17の存在を前提とするものであって,これは,引用例1の図12に係る引用発明1についても同様であり,引用発明1についても,窪み27を設けることが前提となっていることは明らかである。 (ウ)したがって,引用例1において「接着剤をシーリングし,該構造を引っ掛け,保持するための」窪み27を排除することには阻害要因があるところ,当該窪み27を排除しない限り,相違点2に係る「平板状の第1のリード」及び「平板状の第2のリード」との構成とはなり得ないから,引用発明1において,相違点2に係る構成を備えることは,当業者が容易になし得たこととはいえない。 ウ 小括 よって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は引用発明1及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)理由2について ア 対比 (ア)引用発明2と本願発明1とを対比する。 a 引用発明2の「半導体発光素子」は,本願発明1の「発光素子」に相当する。 b 引用発明2の「前記半導体発光素子を囲むように前記第2の領域に設けられた第2の樹脂部材」は,本願発明1の「第1の樹脂成形体」に相当する。 c 引用発明2の「前記半導体発光素子を完全に覆うように前記第1の領域に設けられた第1の樹脂部材」と,本願発明1の「第2の熱硬化性樹脂」であって「第1の樹脂成形体の凹部内に,第2の樹脂成形体の表面が凹部の上面と一致するように」「配置」されたものとは,「第2の熱硬化性樹脂」であって「第1の樹脂成形体の凹部内に」「配置」されたものである点で一致する。 d 引用発明2の「リードフレームは,同一平面上に延在する板形状に形成され」ているところ,「『主表面』に『半導体発光素子が銀ペーストを介して設けられ』る『リードフレーム』」,及び「前記『半導体発光素子』が設けられる『リードフレーム』とは『スリット状の溝によって離間』しており,『半導体発光素子の頂面に設けられた電極』と『金線によって接続され』ている『リードフレーム』」は,それぞれ,本願発明1の「平板状の第1のリード」及び「平板状の第2のリード」に相当する。 e 引用発明2において「前記第2の樹脂部材に埋め込まれた前記リードフレームの端部は第2の樹脂部材から突出する」ところ,当該突出する部分であって,「『主表面』に『半導体発光素子が銀ペーストを介して設けられ』る『リードフレーム』」に係る部分,及び「前記『半導体発光素子』が設けられる『リードフレーム』とは『スリット状の溝によって離間』しており,『半導体発光素子の頂面に設けられた電極』と『金線によって接続され』ている『リードフレーム』」に係る部分は,それぞれ本願発明1の「第1のアウターリード部」及び「第2のアウターリード部」に相当する。 また,引用発明2において,「前記第2の樹脂部材に埋め込まれ」「第2の樹脂部材から突出」しない前記リードフレームの部分は,上記と同様に,それぞれ本願発明1の「第1のインナーリード部」及び「第2のインナーリード部」に相当する。 f 引用発明2においては,「前記第2の樹脂部材は,前記主表面からの距離が前記主表面から前記第1の頂面までの距離よりも大きい位置に設けられた第2の頂面と,前記半導体発光素子が位置する側において前記主表面から離隔する方向に延在し,前記第2の頂面に連なる内壁とを含み, 前記主表面に平行な面上において前記内壁によって規定される形状の面積が,前記主表面から離れるに従って大きくなるように形成されている」ものであり,また「前記第2の樹脂部材は,前記リードフレームが樹脂にインサート成型されることによって設けられ,樹脂が前記リードフレームの反対側の面に回り込んで前記スリット状の溝及び第1の凹部に充填され」るものであるから,前記eの相当関係も含めると,当該構成は,本願発明1の「前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部と前記第1の樹脂成形体とにより形成される底面と,前記環状の凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部」に相当する。 g 本願発明1の,「第1の樹脂成形体」が「第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面及び裏面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面かつ同じ厚みを含む」ことと,引用発明2の「「前記第2の樹脂部材は,前記リードフレームが樹脂にインサート成型されることによって設けられ,樹脂が前記リードフレームの反対側の面に回り込んで前記スリット状の溝及び第1の凹部に充填され」る」こととは,「第1の樹脂成形体」が「第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面である」点で一致する。 h 引用発明2の「半導体発光装置」は,本願発明1の「表面実装型発光装置」に相当する。 (イ)よって,本願発明1によって形成されるものと引用発明2とは,結果として以下の点で一致すると言える。 「第1のインナーリード部と第1のアウターリード部とを有する平板状の第1のリードと,第2のインナーリード部と第2のアウターリード部とを有する平板状の第2のリードと,を備えるリードフレームと, 第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面である含む第1の樹脂成形体とを有し, 前記第1のインナーリード部に発光素子が載置され, 前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部と前記第1の樹脂成形体とにより形成される底面と,前記環状の凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部内に,第2の熱硬化性樹脂が配置された, 表面実装型発光装置。」 (ウ)一方,本願発明1と引用発明2とは,以下の各点で相違する。 《相違点A》 本願発明1は,本願請求項1に記載された各「工程」を備える,「表面実装型発光装置の製造方法」に係る発明であるのに対して,引用発明1は「半導体発光装置」という,物の発明であることから,前記各「工程」は備えない点。 《相違点B》 本願発明1は,「第1の樹脂成形体」が「エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種であり,かつ,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質,遮光性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されている」ものであるのに対して,引用発明2は「第1の樹脂成形体」が「第1の樹脂」により形成されることに対応する構成は備えるものの,当該「第1の樹脂」が「エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種であり,かつ,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質,遮光性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されている」ことまでは特定されていない点。 《相違点C》 本願発明1においては,「第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面及び裏面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面かつ同じ厚みを含む第1の樹脂成形体を形成」するのに対し,引用発明2においては「第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面である含む第1の樹脂成形体」が形成されているものの,「第1の樹脂」の「裏面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面かつ同じ厚み」である構成までは備えない点。 《相違点D》 本願発明1は,「第1の樹脂成形体の凹部内に,第2の樹脂成形体の表面が凹部の上面と一致するように第2の熱硬化性樹脂を配置する」のに対して,引用発明2は,「第2の熱硬化性樹脂」であって「第1の樹脂成形体の凹部内に」「配置」する構成は備えるものの,「第2の樹脂成形体の表面が凹部の上面と一致するように」配置する構成までは備えない点。 イ 判断 事案に鑑み,まず相違点Dについて検討する。 (ア)前記4(2)イ(エ)のとおり,引用発明2は,「前記第1の樹脂部材は,第1の頂面を含み,前記第2の樹脂部材は,前記主表面からの距離が前記主表面から前記第1の頂面までの距離よりも大きい位置に設けられた第2の頂面と,前記半導体発光素子が位置する側において前記主表面から離隔する方向に延在し,前記第2の頂面に連なる内壁とを含み」との構成を備えるものであり,これは,前記4(2)ア(イ)に摘記した「【0023】 このように構成された半導体発光装置によれば, ・・・(中略)・・・このため,第1の頂面から出射した光を相対的に大きい反射率を有する第2の樹脂部材の内壁によって反射させることができる。これにより,光の指向性を適切に制御することができ,さらには半導体発光装置から高輝度な光を取り出すことができる。また,第2の頂面よりも低い位置に第1の頂面を設けているため,半導体発光素子から発せられた光が第1の樹脂部材を透過する際に減衰することを抑制できる。このため,半導体発光装置からさらに高輝度な光を取り出すことができる。」との記載のとおり,光の指向性を適切に制御して,半導体発光装置から高輝度な光を取り出すためのものであり,これにより,同段落【0021】に記載された「光の指向性を適切に制御することができる半導体発光装置 ・・・(中略)・・・を提供する」との目的を達成している。 従って,引用発明2において,前記「前記第1の樹脂部材は,第1の頂面を含み,前記第2の樹脂部材は,前記主表面からの距離が前記主表面から前記第1の頂面までの距離よりも大きい位置に設けられた第2の頂面と,前記半導体発光素子が位置する側において前記主表面から離隔する方向に延在し,前記第2の頂面に連なる内壁とを含み」との構成は,前記目的の達成に必須であるから,当該構成を変更することには,阻害要因があるといえる。 (イ)ここで,引用発明2における「主表面」とは,「第1の領域と,前記第1の領域の周縁に沿って延在する第2の領域とが規定された主表面」であって,「リードフレーム」が有するものであるから,引用発明2に係る「前記第1の樹脂部材は,第1の頂面を含み,前記第2の樹脂部材は,前記主表面からの距離が前記主表面から前記第1の頂面までの距離よりも大きい位置に設けられた第2の頂面」との構成から,第2の樹脂部材の頂面である「第2の頂面」は,第1の樹脂部材の頂面である「第1の頂面」に比べて,リードフレームが有する「主表面」からの距離が大きく,「第1の頂面」及び「第2の頂面」は,リードフレームが有する「主表面」からの距離が同じではないといえる。 (ウ)前記(2)ア(ア)のとおり,引用発明2における「第1の樹脂部材」及び「第2の樹脂部材」は,それぞれ,本願発明1における「第2の樹脂成形体」及び「第1の樹脂成形体」に相当し,また,引用発明2に係る「第1の頂面」は,本願発明1における「第2の樹脂成形体の表面」に相当する。また,本願発明1においては,「第1の樹脂成形体は,底面と側面とを持つ凹部が形成されて」いるから,「凹部の上面」は,引用発明2における「第2の頂面」にあたるものといえる。 そうすると,本願発明1においては,相違点Dに係る「第2の樹脂成形体の表面が凹部の上面と一致」する構成を備えるのに対して,引用発明2においては,「第1の頂面」及び「第2の頂面」は,リードフレームが有する「主表面」からの距離が同じではなく,両頂面が一致することはないから,前記相違点Dに係る構成を備えず,しかも,前記(ア)のとおり,前記「主表面」からの距離が同じではない構成を変更することには阻害要因がある。 (エ)よって,仮に,各樹脂部材の頂面について前記「主表面」からの距離を同じくした周知技術があるとしても,引用発明2において,相違点Dに係る構成を備えることは,当業者が容易になし得たこととはいえない。 ウ 小括 よって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は引用発明2及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)理由Aについて ア 対比 (ア)引用発明Aと本願発明1とを対比する。 a 引用発明Aの「概ね光学的に不透明な本体902」は,本願発明1の「第1の樹脂成形体」に相当する。 b 引用発明Aの「水平接触部材904」及び「水平接触部材」「906,907」は,それぞれ,本願発明1の「平板状の第1のリード」及び「平板状の第2のリード」に相当する。 c 引用発明Aにおいては「2つのLED908,909が,第1の主要水平接触部材904上に実装され, 3つの水平接触部材自体が本体902の下側910に設けられ,水平接触部材904,906,907は第1の部分916,918,919で終わる外側端部を持って」いることから,当該「2つのLED908,909」,「第1の主要水平接触部材904」,及び「水平接触部材」「906,907」は,それぞれ,本願発明1の「発光素子」,「第1のインナーリード」及び「第2のインナーリード」に相当する。 d 引用発明Aの「光学的に透明なプラスチックで満たされた反転させた円錐台形の空洞930」について,当該「反転させた円錐台形の空洞930」と,本願発明1の「前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部と前記第1の樹脂成形体とにより形成される底面と,前記環状の凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部」とは,「前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部により形成される底面と,凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部」である点で一致する。 e 引用発明Aの「光学的に透明なプラスチックで満たされた反転させた円錐台形の空洞930」は,本願発明1の「前記第1の樹脂成形体の凹部内に,第2の樹脂成形体の表面が凹部の上面と一致するように第2の熱硬化性樹脂を配置する」ことに相当する。 f 引用発明Aの「表面実装型電子装置」は本願発明1の「表面実装型発光装置」に相当する。 (イ)よって,本願発明1によって形成されるものと引用発明Aとは,結果として以下の点で一致すると言える。 「第1のインナーリード部を有する平板状の第1のリードと,第2のインナーリード部を有する平板状の第2のリードと,を備えるリードフレームと, 第1の樹脂成形体とを有し, 前記第1のインナーリード部に発光素子が載置され, 前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部により形成される底面と,凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部内に,第2の樹脂成形体の表面が凹部の上面と一致するように第2の熱硬化性樹脂が配置された, 表面実装型発光装置。」 (ウ)一方,本願発明1と引用発明Aとは,以下の各点で相違する。 《相違点a》 本願発明1は,本願請求項1に記載された各「工程」を備える,「表面実装型発光装置の製造方法」に係る発明であるのに対して,引用発明Aは「表面実装型電子装置」という,物の発明であることから,前記各「工程」は備えない点。 《相違点b》 本願発明1においては,「リードフレーム」が「第1のインナーリード部と第1のアウターリード部とを有する平板状の第1のリードと,第2のインナーリード部と第2のアウターリード部とを有する平板状の第2のリードと,を備える」ものであるのに対し,引用発明Aにおいては「第1のインナーリード部を有する平板状の第1のリードと,第2のインナーリード部を有する平板状の第2のリードと,を備えるリードフレーム」を備えるものの,「第1のアウターリード部と」「第2のアウターリード部」を有するものではない点。 《相違点c》 本願発明1は,「第1の樹脂成形体」が「エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種であり,かつ,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質,遮光性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されている」ものであるのに対して,引用発明Aは「第1の樹脂成形体」が「第1の樹脂」により形成されることに対応する構成は備えるものの,当該「第1の樹脂」が「エポキシ樹脂,変性エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種であり,かつ,フィラー,拡散剤,顔料,蛍光物質,反射性物質,遮光性物質からなる群から選択される少なくとも1種が混合されている」ことまでは特定されていない点。 《相違点d》 本願発明1は,「第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面及び裏面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面かつ同じ厚みを含む第1の樹脂成形体を」形成し,「前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部と前記第1の樹脂成形体とにより形成される底面と,前記環状の凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部」を備えるのに対して,引用発明Aは「前記第1のインナーリード部と前記第2のインナーリード部とにより形成される底面と,凹みによって形成される側面と,を持つ前記第1の樹脂成形体の凹部」に対応する構成は備えるものの,「第1のインナーリード部と第2のインナーリード部との間の第1の樹脂の表面及び裏面が第1のインナーリード部と第2のインナーリード部と実質的に同一平面かつ同じ厚み」であり,「底面」が「前記第1の樹脂成形体とによ」っても形成され,また,「凹み」が「底面方向から見て環状に繋がる凹みを持ち,底面方向から見て前記環状の凹みの内側の面と前記環状の凹みの外側の面とを持つ上金型」に係る「前記環状」であることまでは特定されていない点 イ 判断 事案に鑑み,まず相違点bについて検討する。 (ア)引用発明Aにおいては「3つの水平接触部材自体が本体902の下側910に設けられ」,本体902の下側910を超えた水平接触部材,すなわち,相違点bに係る各「アウターリード部」は備えないものとなっている。 (イ)上記(ア)に構成に関しては,前記4(3)アに摘記したとおり,引用例Aには第6の実施形態について,「接触部材がパッケージ本体を超えて水平に伸びてはいない。かわりに,フットプリントはより小さくなっており,本体の長さaと幅bに収まっている。更に,窪みがデバイスをPCBへと搭載する為のはんだを収容する空間を提供しており,はんだが本体の長さaを超えることはない。よってこれらのデバイスはより緊密に設けることが出来,上から見た場合に,はんだは見える位置に略存在しないように実装され得る。」(段落【0064】)と記載されており,これにより,「延長された導電性部材及びはんだ接合部が見る者に対して視覚的に現れることになり,これらの反射性が高いことから,見た目に望ましくない障害となってしまう。換言すると,これらはLEDと基板との間のコントラストを低下させてしまうのである。」(段落【0013】)との課題を解決しようとするものであるから,当該構成を変更することには,阻害要因があるといえる。 (ウ)したがって,仮に,本体の下側を超えて水平接触部材を設ける周知技術があるとしても,引用発明Aにおいて,相違点bに係る構成を備えることは,当業者が容易になし得たこととはいえない。 ウ 小括 よって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は引用発明A及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり,本願発明1は,理由1,2及びAのいずれによっても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本願の請求項2?14について ア 本願の請求項2?14は,請求項1を直接または間接に引用するものであるから,当該各請求項に係る発明は請求項1に係る発明特定事項を全て含むものである。 そして,前記(1)?(3)で検討したとおり,請求項1に係る発明は,理由1,2及びAのいずれによっても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,本願の請求項2?14に係る発明についても,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 6 むすび 以上のとおりであるから,原査定の理由及び当審拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-10-23 |
出願番号 | 特願2017-16662(P2017-16662) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 近藤 幸浩 |
発明の名称 | 樹脂成形体及び表面実装型発光装置並びにそれらの製造方法 |