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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  E01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  E01C
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  E01C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  E01C
管理番号 1355937
異議申立番号 異議2018-700918  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-15 
確定日 2019-08-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6325498号発明「転圧機械の散水装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6325498号の明細書および特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書および特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第6325498号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6325498号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成27年9月15日に特許出願され、平成30年4月20日に特許権の設定登録がされ、平成30年5月16日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1に係る特許に対し、平成30年11月15日に特許異議申立人岩▲崎▼精孝(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成31年3月29日付けで取消理由(発送日同年4月4日)が通知され、その指定期間内である令和1年5月31日に意見書の提出及び訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がなされ、令和1年7月9日に申立人により意見書の提出がされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正請求の内容
本件訂正請求は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを求めるものであって、次の事項を訂正内容とするものである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと該運転席の床板との間に画成されて側方に向けて開口する機械室と、
前記車体の前後にそれぞれ設けられた前部及び後部散水ノズルと、
散水タンク内の水を配管を介して前記前部及び後部散水ノズルに供給する散水ポンプと、
前記前部及び後部散水ノズルに供給される水を濾過するフィルタと、
前記散水タンクと前記後部散水ノズルとを接続する配管を開閉する切換バルブと、
前記散水ポンプ、前記フィルタ及び前記切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で前記機械室内に取り付けられたブラケット部材と、
前記床板に貫設されて前記切換バルブを上方に露出させた操作孔と
を備えたことを特徴とする転圧機械の散水装置。」
とあるのを、
「運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと該運転席の床板との間に画成されて側方に向けて開口する機械室と、
前記車体の前後にそれぞれ設けられた前部及び後部散水ノズルと、
散水タンク内の水を配管を介して前記前部及び後部散水ノズルに供給する散水ポンプと、
前記前部及び後部散水ノズルに供給される水を濾過するフィルタと、
前記散水タンクと前記後部散水ノズルとを接続する配管を開閉する切換バルブと、
前記機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有し、前記散水ポンプ、前記フィルタ及び前記切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で前記機械室内に取り付けられたブラケット部材と、
前記床板に貫設されて前記切換バルブを上方に露出させた操作孔と
を備えたことを特徴とする転圧機械の散水装置。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0009】に、
「上記の目的を達成するため、本発明の転圧機械の散水装置は、運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと該運転席の床板との間に画成されて側方に向けて開口する機械室と、前記車体の前後にそれぞれ設けられた前部及び後部散水ノズルと、散水タンク内の水を配管を介して前記前部及び後部散水ノズルに供給する散水ポンプと、前記前部及び後部散水ノズルに供給される水を濾過するフィルタと、前記散水タンクと前記後部散水ノズルとを接続する配管を開閉する切換バルブと、前記散水ポンプ、前記フィルタ及び前記切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で前記機械室内に取り付けられたブラケット部材と、前記床板に貫設されて前記切換バルブを上方に露出させた操作孔とを備えたことを特徴とする。」
とあるのを、
「上記の目的を達成するため、本発明の転圧機械の散水装置は、運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと該運転席の床板との間に画成されて側方に向けて開口する機械室と、前記車体の前後にそれぞれ設けられた前部及び後部散水ノズルと、散水タンク内の水を配管を介して前記前部及び後部散水ノズルに供給する散水ポンプと、前記前部及び後部散水ノズルに供給される水を濾過するフィルタと、前記散水タンクと前記後部散水ノズルとを接続する配管を開閉する切換バルブと、前記機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有し、前記散水ポンプ、前記フィルタ及び前記切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で前記機械室内に取り付けられたブラケット部材と、前記床板に貫設されて前記切換バルブを上方に露出させた操作孔とを備えたことを特徴とする。」
に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0010】に、
「本発明の転圧機械の散水装置によれば、予めブラケット部材に散水ポンプ、フィルタ及び切換バルブを固定してアセンブリー化した上で機械室内に取付可能なため生産性を向上でき、散水装置の故障発生時には作業し易い機械室の外部で機器の修理や交換を実施できると共に、ステップを使用して車体に搭乗して他の箇所のメンテナンスを並行して実施可能なためメンテナンス性を向上でき、さらに、作業者が運転席に着座したまま操作孔を介して切換バルブを操作できることから、締固め作業を継続しながら後部転圧輪への散水を実行・中止可能となり作業性を向上することができる。」
とあるのを、
「本発明の転圧機械の散水装置によれば、予めブラケット部材に散水ポンプ、フィルタ及び切換バルブを固定してアセンブリー化した上で機械室に設けられた固定ベースの上面に係止片を当接させて機械室内に取付可能なため生産性を向上でき、散水装置の故障発生時には作業し易い機械室の外部で機器の修理や交換を実施できると共に、ステップを使用して車体に搭乗して他の箇所のメンテナンスを並行して実施可能なためメンテナンス性を向上でき、さらに、作業者が運転席に着座したまま操作孔を介して切換バルブを操作できることから、締固め作業を継続しながら後部転圧輪への散水を実行・中止可能となり作業性を向上することができる。」
に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「ブラケット部材」を、「機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片」を有する構成に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加について
段落【0019】には「特に図4,5に示すように、これらの各機器が固定されるユニットベース19は、全体として車両前方に面した前壁19a、後方に面した後壁19b、下方に面した底壁19c、右方に面した右側壁19d、中間高さに配置された棚壁19eから構成されている。ユニットベース19の右側壁19dには前後一対のボルト孔23が貫設されると共に、ボルト孔23よりも若干上方位置には水平に係止片24が突設されている。後述するように、これらのボルト孔23及び係止片24が制御ユニット20の取付に利用される。」と記載されており、この記載から、ユニットベース19の右側壁19dには、本件訂正事項1における係止片が突設されていることが導き出される。
また、段落【0022】には「次に、機械室21の構成を説明する。
機械室21は後部車体5の左側面に画成されている。詳しくは、後部車体5の左側面の最下部には、作業者が運転席9に乗降するためのステップ30が設けられ、このステップ30と運転席9の床板31との間に左側方に開口するように機械室21が画成されている。機械室21の奧壁21aには前後方向に延びる形状をなす固定ベース32が溶接され、この固定ベース32には前後一対の雌ねじ部33が形成されている。」と記載されており、この記載から、機械室21の奧壁21aには、本件訂正事項1における固定ベース32が溶接されることが導き出される。
また、段落【0023】には「制御ユニット20は機械室21内に配設され、そのユニットベース19の係止片24を固定ベース32の上面に当接させている。ユニットベース19の各ボルト孔23には左側方よりボルト34が挿入されて固定ベース32の雌ねじ部33に螺合し、これにより制御ユニット20が機械室21内の所定位置に取り付けられている。」と記載されており、この記載から、本件訂正事項1における係止片24を固定ベース32の上面に当接させていることが導き出される。
また、段落【0028】には「さらに、機械室21への制御ユニット20の取付時には、機械室21内の固定ベース32の上面に対してユニットベース19の係止片24を上方から当接させると、固定ベース32に対する制御ユニット20の上下位置が自ずと定まる。その状態で制御ユニット20の左右位置を調整するだけで雌ねじ部33にボルト孔23を一致させてボルト34で固定できる。よって、機械室21内への制御ユニット20の組付作業を一層容易に実施することができる。」と記載されており、この記載から、本件訂正事項1における機械室21内の固定ベース32の上面に対してユニットベース19の係止片24を上方から当接させることが導き出される。
したがって、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記で説示したように、訂正事項1は機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片の構成を限定するものであって発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。

(2)訂正事項2および3について
訂正事項2および3は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1ないし3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び明細書のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項1に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)

本件発明
「運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと該運転席の床板との間に画成されて側方に向けて開口する機械室と、
前記車体の前後にそれぞれ設けられた前部及び後部散水ノズルと、
散水タンク内の水を配管を介して前記前部及び後部散水ノズルに供給する散水ポンプと、
前記前部及び後部散水ノズルに供給される水を濾過するフィルタと、
前記散水タンクと前記後部散水ノズルとを接続する配管を開閉する切換バルブと、
前記機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有し、前記散水ポンプ、前記フィルタ及び前記切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で前記機械室内に取り付けられたブラケット部材と、
前記床板に貫設されて前記切換バルブを上方に露出させた操作孔と
を備えたことを特徴とする転圧機械の散水装置。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して平成31年3月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証ないし甲第19号証から本件特許出願前に公然実施されたと認められる発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 各甲号証の内容
〔証拠〕
甲第1号証:「振動ローラ TW502・TW352コンバインドローラ SW502・SW352タンデムローラ」パンフレット、酒井重工業株式會社、2005年9月
甲第2号証:「取扱説明書 振動ローラ MODEL SW352 TW352 SW502 TW502」、酒井重工業株式會社、平成17年4月、39-41頁
甲第3号証:「PARTS CATALOGUE VIBRATING ROLLER MODEL SW352 TW352」、酒井重工業株式會社、2005年5月、21-21-3頁、27-28-1頁
甲第4号証:「あなたのお宅をもっと素敵にするお店 【砕石舗装】ローラ大作戦♪」、株式会社洞山工務店、2014年8月22日掲載、[2018年10月19日検索]、インターネット
甲第5号証:「いわけんブログ 一般社団法人岩手県建設業協会・関連団体からのお知らせや地域情報等を掲載しているブログです。 ふれあいウィーク開催!!」いわけんブログ、2013年8月25日掲載、[2018年10月19日検索]、インターネット
甲第6号証:「SW300-1・320-1・330-1 TW320-1・TW330-1」パンフレット、SAKAI HEAVY INDUSTRIES,LTD、2013年5月
甲第7号証:「PARTS CATALOGUE VIBRATING ROLLER MODEL TW320-1・TW330-1」、酒井重工業株式会社、2011年9月、21-21-3頁、26-28-3頁
甲第8号証:「GSE Great Southern Equipment Company Photo Gallery Our Equipmet and Our People」、Great Southern Equipment,Inc.、2015年8月15日掲載、[2018年10月26日検索]、インターネット
甲第9号証:「The Rental Show Procuct Preview November 2009 Products on display at The Rental Show 2010」、FOR Construction PROS.com、2009年11月11日掲載
甲第10号証:「DRIVEN BY TECHNOLOGY & INNOVATION OUR BRANDS」、Business Media|Fort Atkinson|AC Business Media、[2018年10月26日検索]、インターネット
甲第11号証:「SAKAI news The Rental Show 2015 開催」、酒井重工業株式会社、2015年4月9日
甲第12号証:「TOOLS FOR THE TRADE SAKAI’s Compact Roller Line Increases Productivety」、THE NATIONAL ASPHALT PAVEMENT ASSOCIATION、HMAT Hot Mix Asphalt Technology、2009年5月/6月、47頁
甲第13号証:「Sakai’s Compact Roller Line Utilizes 4000 VPM Feature」、Construction Equipment Guide、2011年2月19日
甲第14号証:「NEW SAKAI TW330-1 COMBINATION TANDEM FOR SALE」、Bauer Trader Media、[2018年10月25日検索]、インターネット
甲第15号証:「BAUER MEDIA GROUP About Us」、Bauer Media pty ltd.[2018年10月26日検索]、インターネット
甲第16号証:「振動ローラ SW652シリーズ」パンフレット、酒井重工業株式會社、2006年7月
甲第17号証:「取扱説明書 振動ローラ MODEL SW652シリーズ SW652 SW652B SW652ND」、酒井重工業株式會社、平成18年8月、42-46頁
甲第18号証:「MODEL SW652 ENGINE HINO W04D-H VIBRATING ROLLER」、酒井重工業株式會社、2011年9月、21-21-3頁、28-29-2頁
甲第19号証:「会長のブログ 静岡県沼津市 小林道路株式会社 社長のブログ 現場」、2011年6月8日掲載、[2018年10月19日検索]、インターネット
(以上、特許異議申立書に添付して提出)
甲第20号証:「PARTS CATALOGUE MODEL GW750-2 (No.20106?) ENGINE ISUZU A1-4JJ1X VIBRATING ROLLER」、酒井重工業株式會社、2005年5月、26-26-2頁、28-28-1頁
甲第21号証:「取扱説明書 振動ローラ MODEL GW750-2
」、酒井重工業株式會社、平成19年10月、40-42頁
甲第22号証:「上田技研レンタル ニュース・新着情報 2013年07月の記事」、2013年7月5日掲載、[2019年6月29日検索]、インターネット
(以上、令和1年7月9日付け意見書に添付して提出)

(1) 散水装置X1について
ア 甲第1号証
(ア)1枚目、左頁、上段に「振動ローラ TW502・TW352 コンバインドローラ SW502・SW352 タンデムローラ」が記載されている。
(イ)1枚目、右頁、上段の外観図から、振動ローラであるコンバインドローラTW502・TW352について、外観が共通している点が看て取れる。
(ウ)1枚目、右頁、下段に「2005.09」が記載されているから、2005年9月発行であることが推認される。
(エ)2枚目、中央の写真から、振動ローラであるコンバインドローラTW502について、運転席を設ける点、車体の側部に設けられたステップと運転席のフロアボードとの間に画成されて側方に向けて開口する空間を有する点が看て取れる。
(オ)上記(イ)及び(エ)から、振動ローラであるコンバインドローラTW352について、運転席を設ける点、車体の側部に設けられたステップと運転席のフロアボードとの間に画成されて側方に向けて開口する空間を有する点が推認される。

イ 甲第2号証
(ア)表紙に、「取扱説明書 振動ローラ MODEL SW352 TW352 SW502 TW502」が記載されている。
(イ)39頁第9行-第17行には、以下の事項が記載されている。
「2.5 散水操作
(1)散水する前に、散水タンクの水の量を確認します。不足しているときは給水してください。
水の量は、タンクについているレベルゲージを見てください。
[重要]
散水用の水には清水を使用してください。
*前輪のみの散水(TW352,TW502のみ)
前輪(鉄輪)のみ散水を行うときは、フロアボードにある散水バルブを閉じてください。」
(ウ)39頁、右側、中段の図から、フロアボードに開口が設けられており、その開口を通して散水バルブが露出している点が看て取れる。
(エ)最終頁に、「平成17年4月」が記載されているから、平成17年4月発行であることが推認される。

ウ 甲第3号証
(ア)表紙に、「PARTS CATALOGUE VIBRATING ROLLER MODEL SW352 TW352」が記載されている。
(イ)21頁ないし21-3頁、図全体から、振動ローラであるコンバインドローラTW352についてフロアボード9の下部に乗降のためのステップが設けられている点が看て取れる。
(ウ)27頁ないし27-2頁、図全体から、振動ローラであるコンバインドローラTW352について、車体の前部に設けられたノズル60、車体の後部に設けられたノズル56、タンク55、タンク55と水を濾過するフィルタ26の間に接続されたビニールホース8、フィルタ26とポンプASS’Y38の間に接続されたビニールホース39、ポンプASS’Y38と車体の前部に設けられたノズル60に接続されたホース5、ポンプASS’Y38と車体の後部に設けられたノズル56に接続されたビニールホース30及びビニールホース30を開閉するボールバルブ24が看て取れる。
(エ)27頁ないし27-2頁、図全体から、振動ローラであるコンバインドローラTW352について、前後方向に延びる板部材に対し、一方の面にポンプASS’Y38がブラケットを介して取り付けられ、他方の面にボールバルブ24が取り付けられている点、左右方向に延びる板部材に対し、フィルタ26が取り付けられている点、車体の側部に設けられたステップとフロアボード9との間に画成された空間にフィルタ26、ポンプASS’Y38、ボールバルブ24及びブラケットが配置されている点が看て取れる。
(オ)28頁ないし28-1頁、図全体から、振動ローラであるコンバインドローラTW352について、ポンプ1がボルト10、スプリングワッシャ11及びワッシャ12を介してブラケット2に固定されている点が看て取れる。
カ 最終頁に、「May-2005」が記載されているから、2005年5月発行であることが推認される。

エ 甲第4号証
(ア)1枚目、上段に、「Aug 22,2014」が記載されているから、2014年8月22日掲載であることが推認される。
(イ)3枚目、上段の写真及び9枚目、拡大写真から、ロードローラの下方側面に[SAKAI TW352」の文字が看て取れる。

オ 甲第5号証
(ア)1枚目、上段に、「2013年8月25日(日)」が記載されているから、2013年8月25日掲載であることが推認される。
(イ)3枚目、上段右側の写真及び10枚目の拡大写真から、ロードローラの下方側面に[SAKAI TW352」の文字が看て取れる。

公然実施について
甲第1号証ないし甲第5号証によれば、振動ローラであるコンバインドローラTW352は、本件発明に係る特許出願(以下、「本件特許出願」という。)の出願日(2015年9月15日)より前に販売されていたものである。したがって、振動ローラであるコンバインドローラTW352は本件特許出願前に公然実施されたといえる。

キ 散水装置X1の認定
甲第1号証ないし甲第3号証より、以下の振動ローラであるコンバインドローラTW352の散水装置に係る発明(以下、「散水装置X1発明」という。)が開示されていると認められる。
「運転席にフロアボードを設け、
フロアボードの下部に乗降のためのステップが設けられており、
車体の側部に設けられたステップと運転席のフロアボードとの間に画成されて側方に向けて開口する空間を有し、
車体の前部に設けられたノズルと、車体の後部に設けられたノズルと、タンクとが設けられ、
タンクと水を濾過するフィルタの間に接続されたビニールホース、フィルタとポンプの間に接続されたビニールホース、ポンプと車体の前部に設けられたノズルに接続されたホース、ポンプと車体の後部に設けられたノズルに接続されたビニールホース及びビニールホースを開閉するバルブが設けられ、
前後方向に延びる車体の板部材に対し、一方の面にポンプがブラケットを介して取り付けられ、他方の面にバルブが取り付けられ、
左右方向に延びる車体の板部材に対し、フィルタが取り付けられ、
車体の側部に設けられたステップとフロアボードとの間に画成された空間にフィルタ、ポンプ、バルブ及びブラケットが配置され、
ポンプがボルト、スプリングワッシャ及びワッシャを介してブラケットに固定され、
フロアボードに開口が設けられており、その開口を通してバルブが露出しており、前輪(鉄輪)のみ散水を行うときは、上記バルブを閉じる、
振動ローラであるコンバインドローラTW352の散水装置X1」

(2)散水装置X2について
ア 甲第6号証
(ア)1枚目に「SW300-1・320-1・330-1・TW320-1・330-1 Vibratory Tandem Roller」が記載されている。
(イ)1枚目に「Vibratory Tandem Roller All-drum drive, articulated steering Compact size double drum type (SW) and combination type (TW) vibrating roller.」(仮訳:振動タンデムローラ 全ドラム駆動、アーティキュレート操舵コンパクトサイズダブルドラムタイプ(SW)とコンビネーションタイプ(TW)振動ローラ。)が記載されている。
(ウ)1枚目、中段、右側の写真から、Vibratory Tandem Roller TW330-1について、運転席を設ける点、車体の側部に設けられたステップを有する点が看て取れる。
エ 2枚目、下段に、「2013.05」が記載されているから、2013年5月発行であることが推認される。

イ 甲第7号証
(ア)表紙に、「PARTS CATALOGUE VIBRATING ROLLER MODEL TW320-1・TW330-1」が記載されている。
(イ)21頁ないし21-3頁、図全体から、振動タンデムローラであるコンビネーションタイプTW320-1・TW330-1について、フロアボード6が看て取れる。
(ウ)27頁ないし27-2頁、図全体から、振動タンデムローラであるコンビネーションタイプTW330-1について、車体の前部に設けられたノズル17、車体の前部に設けられたノズル17に接続されたビニールホース(ワイヤーイリ)1、車体の後部に設けられたノズル10、タンク40、タンク40に接続されたビニールホース4、車体の後部に設けられたノズル10に接続されたビニールホース(ワイヤーイリ)20が看て取れる。
(エ)27頁ないし27-2頁、図全体から、振動タンデムローラであるコンビネーションタイプTW330-1について、車体の底板とフロアボード6との間に画成された空間に装置が配置されている点、前後方向に延びる板部材に対し、装置がボルト18、スプリングワッシャ19及びヒラワッシャ48を介して取り付けられている点が看て取れる。
(オ)28頁ないし28-3頁、図全体から、振動タンデムローラであるコンビネーションタイプTW320-1・TW330-1について、ブラケット4、ビニールホース15、28、32、50、ポンプ24、フィルタ33、ボールバルブ47が看て取れる。
(カ)28頁ないし28-3頁、図全体から、振動タンデムローラであるコンビネーションタイプTW320-1・TW330-1について、ポンプ24には、ビニールホース15、28、32、50を介してフィルタ33及びボールバルブ47が接続されている点、前後方向に延びる板部材に対し、ブラケット4が取り付けられている点、ブラケット4に対し、ポンプ24がベース37、ボルト38、ヒラワッシャ39及びスプリングワッシャ40を介して取り付けられている点、ブラケット4に対し、フィルタ33がボルト29、スプリングワッシャ30及びヒラワッシャ43を介して取り付けられている点、ブラケット4に対し、ボールバルブ47がジョイント46を介して取り付けられている点が看て取れる。
(キ)最終頁に、「September 2011」が記載されているから、2011年9月発行であることが推認される。

ウ 甲第8号証
(ア)1枚目、下段、左側の写真、2枚目ないし4枚目の拡大写真から、ロードローラの側面に[SAKAI TW330-1」の文字が看て取れる。
(イ)6枚目および7枚目は、Internet Archiveにおいて、1枚目ないし5枚目のウェブサイトを保存したものと認められるところ、「2015」、「Aug」、「15」が記載されているから、当該ウェブサイトは2015年8月15日に保存されたものであることが推認される。

エ 甲第9号証
(ア)1枚目、上段に、「NOVEMBER 11,2009」が記載されているから、2009年11月11日掲載であることが推認される。
(イ)1枚目、中段の写真から、ロードローラの側面に[SAKAI TW330-1」の文字が看て取れる。

オ 甲第10号証
(ア)甲第10号証の1枚目の中段の図から、「FOR Construction PROS.com」の文字が看て取れる。

カ 甲第11号証
(ア)1枚目、上段に、「2015年4月9日」が記載されているから、2015年4月9日発行であることが推認される。
(イ)1枚目第1行-第7行には、以下の事項が記載されている。
「The Rental Show 2015 開催
今年もThe Rental Show(通称:ARAショー)が米国のニューオリンズにて2月23日?25日に開催されました。このARAショーはThe American Rental Association(略:ARA,アメリカのレンタル協会)が主催する展示会になり、毎年2月頃に開催されています。
酒井重工業は、子会社であるSAKAI AMERICAがブースを出展しており今年で6年目になります。今年も多くのお客様にご来場頂きました。」

キ 甲第12号証
(ア)表紙、上段に、「MAY/JUNE 2009」が記載されているから、2009年5月もしくは6月発行であることが推認される。
(イ)47頁右欄第8行-第17行には、以下の事項が記載されている。
「The SW300-1,SW320-1 and SW330-1,double-drum rollers ・・・
SAKAI’s TW320-1 and TW330-1 rollers combine both vibratory drum andpneumatic tires. ・・・」
ウ 47頁右欄中段の写真から、ロードローラの側面に[SAKAI SW320」の文字が看て取れる。

ク 甲第13号証
(ア)表紙、上段に、「February 19 2011」が記載されているから、2011年2月19日掲載であることが推認される。
(イ)34頁右枠左欄第17行-第36行には、以下の事項が記載されている。
「The SW300-1,SW320-1 and SW330-1,double drum rollers ・・・
SAKAI’s TW320-1 and TW330-1 rollers combine both vibratory drum andpneumatic tires. ・・・」
ウ 34頁右枠中央の写真から、ロードローラの側面に[SAKAI SW320-1」の文字が看て取れる。

ケ 甲第14号証
(ア)1枚目第1行には、以下の事項が記載されている。
「NEW SAKAI TW330-1 COMBINATION TANDEM FOR SALE」
(イ)1枚目、上段中央の写真から、ロードローラの側面に[SAKAI W330-1」の文字が看て取れる。
(ウ)1枚目、中段には、「Model TW330-1」が記載されている。
(エ)1枚目、中段には、「Year 2012」が記載されているから、2012年式であることが推認される。

コ 甲第15号証
(ア)1枚目、上段には、「BAUER MEDIA GROUP」が記載されている。

公然実施について
甲第6号証ないし甲第9号証、甲第11号証ないし甲第14号証によれば、振動タンデムローラであるコンビネーションタイプTW330-1は、本件特許出願の出願日(2015年9月15日)より前に販売されていたものである。したがって、振動タンデムローラであるコンビネーションタイプTW330-1は本件特許出願前に公然実施されたといえる。

シ 散水装置X2の認定
甲第6号証及び甲第7号証より、以下の振動タンデムローラであるコンビネーションタイプTW330-1の散水装置に係る発明(以下、「散水装置X2発明」という。)が開示されていると認められる。
「運転席を設け、
車体の側部に設けられたステップ、フロアボードを有し、
車体の底板とフロアボードとの間に画成された空間を有し、
車体の前部に設けられたノズル、車体の後部に設けられたノズル、タンクを有し、車体の前部に設けられたノズルに接続されたビニールホース(ワイヤーイリ)、タンクに接続されたビニールホース、車体の後部に設けられたノズルに接続されたビニールホース(ワイヤーイリ)を有し、
ポンプには、ビニールホースを介してフィルタ及びバルブが接続され、
前後方向に延びる車体の板部材に対し、ブラケットがボルト、スプリングワッシャ及びヒラワッシャを介して取り付けられており、ブラケットに対し、ポンプがベース、ボルト、ヒラワッシャ及びスプリングワッシャを介して取り付けられており、ブラケットに対し、フィルタがボルト、スプリングワッシャ及びヒラワッシャを介して取り付けられ、ブラケットに対し、バルブがジョイントを介して取り付けられ、車体の底板とフロアボードとの間に画成された空間に配置されている、
振動タンデムローラであるコンビネーションタイプTW330-1の散水装置X2」

(3)散水装置X3について
ア 甲第16号証
(ア)1枚目、左頁、上段に「振動ローラ SW652シリーズ」が記載されている。
(イ)1枚目、右頁、上段の外観図及び2枚目の上段の写真から、振動ローラであるSW652シリーズについて、運転席を設ける点、車体の側部に設けられたステップを有する点、運転席に床板を設ける点が看て取れる。
(ウ)1枚目、右頁、下段に「2006.07」が記載されているから、2006年7月発行であることが推認される。
(エ)3枚目、右頁、中段、右側第1行-第3行には、振動ローラであるSW652シリーズについて、以下の事項が記載されている。
「バックアップシステム散水装置標準装備
2タンク、2モータの散水で一台のモータがトラブルの場合も他のモータで前後車輪に散水できます。」

イ 甲第17号証
(ア)表紙に、「取扱説明書 振動ローラ MODEL SW652シリーズ SW652 SW652B SW652ND」が記載されている。
(イ)44頁第7行-第12行には、振動ローラであるSW652シリーズについて、以下の事項が記載されている。
「4(本決定注:原文では丸囲み数字。) フィルタ付近のコックを右図のように切換えると、前後タンクを前後輪各々で使用する独立散水回路になります。(スタンダードモード)
・フィルタ附近のコックを右図のように切換え、PUMP1・2いずれか片方のスイッチを押すと、1つのポンプで前後輪に散水することが可能になります。(エコモード)」
(ウ)最終頁に、「平成18年8月」が記載されているから、平成18年8月発行であることが推認される。

ウ 甲第18号証
(ア)表紙に、「MODEL SW652 ENGINE HINO W04D-H VIBRATING ROLLER」が記載されている。
(イ)表紙、図全体から、振動ローラであるSW652シリーズについて、車体の底板と運転席の床板との間に画成された空間に装置が配置されている点が看て取れる。
(ウ)21頁ないし21-3頁、図全体から、振動ローラであるSW652シリーズについて、床板の一部を構成するカバー21に開口が設けられている点が看て取れる。
(エ)28頁ないし28-2頁、図全体から、振動ローラであるSW652シリーズについて、車体の前後にそれぞれ設けられたノズル36,36、タンクASS’Y8、ワイヤイリビニールホース21、ビニールホース9、22、ボルト31、スプリングワッシャ32、ワッシャ33が看て取れる。
(オ)28頁ないし28-2頁、図全体から、振動ローラであるSW652シリーズについて、ブラケットが、ボルト31、スプリングワッシャ32及びワッシャ33を介して本体に取り付けられている点が看て取れる。
(カ)29頁ないし29-2頁、図全体から、振動ローラであるSW652シリーズについて、ワイヤイリビニールホース12、16、ビニールホース13、15、41、ポンプ1、フィルタ8、コック28、34、42、43、ブラケット19、Uボルト20、ワッシャ21、スプリングワッシャ22、ナット23、クロス32が看て取れる。
(キ)29頁ないし29-2頁、図全体から、振動ローラであるSW652シリーズについて、運転席の床板の下に装置が配置されている点、ポンプ1に、ワイヤイリビニールホース12、16、ビニールホース13、15、41及びクロス32を介してフィルタ8及びコック28、34、42、43が取り付けられている点、ブラケット19に対し、クロス32がUボルト20、ワッシャ21、スプリングワッシャ22、ナット23を介して取り付けられている点が看て取れる。
(ク)最終頁に、「SEPTEMBER-2006」が記載されているから、2006年9月発行であることが推認される。

エ 甲第19号証
(ア)1枚目、上段に、「2011/06/08(水)」が記載されているから、2011年6月8日掲載であることが推認される。
(イ)1枚目、上段の写真及び2枚目の拡大写真から、ロードローラの側面に[SAKAI SW652」の文字が看て取れる。

公然実施について
甲第16号証ないし甲第19号証によれば、振動ローラであるSW652シリーズは、本件特許出願の出願日(2015年9月15日)より前に販売されていたものである。したがって、振動ローラであるSW652シリーズは本件特許出願前に公然実施されたといえる。

カ 散水装置X3の認定
甲第16号証ないし甲第18号証より、以下の振動ローラであるSW652シリーズの散水装置に係る発明(以下、「散水装置X3発明」という。)が開示されていると認められる。
「運転席と、車体の側部に設けられたステップを有し、
運転席に床板を設け、床板の一部を構成するカバーには開口が設けられ、
車体の底板と運転席の床板との間に画成された空間を有し、
車体の前後にそれぞれ設けられたノズル、タンク、ワイヤイリビニールホース、ビニールホースを有し、
ブラケットが、ボルト、スプリングワッシャ及びワッシャを介して本体に取り付けられ、
ポンプに、ワイヤイリビニールホース、ビニールホース及びクロスを介してフィルタ及びコックが取り付けられ、
ブラケットに対し、クロスがUボルト、ワッシャ、スプリングワッシャ、ナットを介して取り付けられており、
ポンプ、フィルタ及びコックが車体の底板と運転席の床板との間に画成された空間に配置され、
フィルタ付近のコックを切換えると、前後タンクを前後輪各々で使用する独立散水回路になり、フィルタ付近のコックを切換え、ポンプいずれか片方のスイッチを押すと、1つのポンプで前後輪に散水することが可能になる、
振動ローラであるSW652シリーズの散水装置X3」

(4)甲第20号証ないし甲第22号証について
ア 甲第20号証
(ア)表紙に、「PARTS CATALOGUE MODEL GW750-2 (No.20106?) ENGINE ISUZU A1-4JJ1X VIBRATING ROLLER」が記載されている。
(イ)26頁、図全体から、振動ローラであるGW750-2について、車体の底板と運転席の床板との間に画成された空間に装置が配置されている点が看て取れる。
(ウ)26頁ないし26-2頁、図全体から、振動ローラであるGW750-2について、車体の前後にそれぞれ設けられたノズル24,48、タンクASSY10,46、ビニールホース(ワイヤーイリ)13,15,31,33,35,37,40,44,46、ボルト60、ワッシャ61、ポンプASSY62、ブラケット63、ボルト64、ワッシャ65、スプリングワッシャ66が看て取れる。
(エ)26頁ないし26-2頁、図全体から、振動ローラであるGW750-2について、ポンプASSY62がボルト60、ワッシャ61を介して固定される点が、ブラケット63がボルト64、ワッシャ65、スプリングワッシャ66を介して固定される点が看て取れる。
(オ)28頁ないし28-1頁、図全体から、振動ローラであるGW750-2について、ボールバルブ5、ボルト7、ワッシャ8、スプリングワッシャ9、ブラケット10、ベース16、サンスイポンプASSY20、ボルト21、ワッシャ22、スプリングワッシャ23が看て取れる。
(オ)28頁ないし28-1頁、図全体から、ブラケット10がボルト7、ワッシャ8、スプリングワッシャ9を介してベース16に固定される点が、サンスイポンプASSY20がボルト21、ワッシャ22、スプリングワッシャ23を介してベース16に固定される点が、図全体がポンプASSY26である点が看て取れる。
(カ)最終頁に、「September-2011」が記載されているから、2011年9月発行であることが推認される。

イ 甲第21号証
(ア)表紙に、「取扱説明書 振動ローラ MODEL GW750-2 適用号機 1GW2-20101」が記載されている。
(イ)41頁下段の図全体から、運転席、車体の側部に設けられたステップ、床板および機械室が看て取れる。
(ウ)最終頁に、「平成19年10月」が記載されているから、平成19年10月発行であることが推認される。

ウ 甲第22号証
(ア)1枚目、上段右側に、「UPDATE:2013年7月5日[金曜日]」が記載されているから、2013年7月5日掲載であることが推認される。
(イ)1枚目、上段の写真から、ロードローラの側面に[SAKAI GW750-2」の文字が看て取れる。
(ウ)1枚目、中段には、「NETIS登録 酒井:GW750-2 運転質量:9000kg 締固め幅:1,950mm」が記載されている。

公然実施について
甲第20号証ないし甲第22号証によれば、振動ローラであるGW750-2は、本件特許出願の出願日(2015年9月15日)より前に販売されていたものである。したがって、振動ローラであるGW750-2は本件特許出願前に公然実施されたといえる。

オ 散水装置X4の認定
甲第20号証および甲第21号証より、以下の振動ローラであるGW750-2の散水装置に係る発明(以下、「散水装置X4発明」という。)が開示されていると認められる。
「運転席、車体の側部に設けられたステップ、床板および機械室を有し、
車体の底板と運転席の床板との間に画成された空間に装置が配置されており、
車体の前後にそれぞれ設けられたノズル、タンクASSY、ビニールホース(ワイヤーイリ)、ボールバルブを有し、
サンスイポンプASSY20がボルト21、ワッシャ22、スプリングワッシャ23を介してベース16に固定され、ブラケット10に取り付けられたボールバルブ5がボルト7、ワッシャ8、スプリングワッシャ9を介してベース16に固定され、ベース16がボルト60、ワッシャ61を介して固定される、
振動ローラであるGW750-2の散水装置X4」

4 取消理由通知に記載した取消理由(第29条第2項)について
(1)散水装置X1発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明と散水装置X1発明の対比
本件発明と散水装置X1発明とを対比する。

散水装置X1発明の「フロアボード」は、本件発明の「床板」に相当し、以下同様に、
「前部に設けられたノズル」及び「車体の後部に設けられたノズル」は、「前部及び後部散水ノズル」に、
「タンク」は、「散水タンク」に、
「ビニールホース」及び「ホース」は、「配管」に、
「ポンプ」は、「散水ポンプ」に、
「バルブ」は、「切換バルブ」に、
「ブラケット」は、「ブラケット部材」に、
「開口」は、「操作孔」に、
「振動ローラであるコンバインドローラTW352」は、「転圧機械」にそれぞれ相当する。

また、散水装置X1発明は、車体の側部に設けられたステップとフロアボードとの間に画成された「空間」にフィルタ、ポンプ、バルブ及びブラケットが配置されているから、当該「空間」は、本件発明の「機械室」に相当する。

以上のことから、本件発明と散水装置X1とは、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと該運転席の床板との間に画成されて側方に向けて開口する機械室と、
前記車体の前後にそれぞれ設けられた前部及び後部散水ノズルと、
散水タンク内の水を配管を介して前記前部及び後部散水ノズルに供給する散水ポンプと、
前記前部及び後部散水ノズルに供給される水を濾過するフィルタと、
前記散水タンクと前記後部散水ノズルとを接続する配管を開閉する切換バルブと、
前記散水ポンプを固定した状態で前記機械室内に取り付けられたブラケット部材と、
前記床板に貫設されて前記切換バルブを上方に露出させた操作孔と
を備えた、転圧機械の散水装置。」

(相違点1)
本件発明は、ブラケット部材が「前記機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有し」ているのに対し、散水装置X1発明は、前記構成について特定されていない点。

(相違点2)
本件発明は、「前記散水ポンプ、前記フィルタ及び前記切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で前記機械室内に取り付けられたブラケット部材」であるのに対し、散水装置X1発明は、ポンプがブラケットに固定されているが、「前後方向に延びる板部材に対し、一方の面にポンプがブラケットを介して取り付けられ、他方の面にバルブが取り付けられ、左右方向に延びる板部材に対し、フィルタが取り付けられ」ている点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
上記第3の3のとおり散水装置X2発明は、本件特許出願前に公然実施された発明である。当該散水装置X2発明には、前後方向に延びる車体の板部材に対し、ブラケットが、ボルト、スプリングワッシャ及びヒラワッシャを介して取り付けられる構成を有しているが、ブラケット部材が機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有していない。
また、上記第3の3のとおり散水装置X3発明は、本件特許出願前に公然実施された発明である。当該散水装置X3発明には、ブラケットが、ボルト、スプリングワッシャ及びワッシャを介して本体に取り付けられる構成を有しているが、ブラケット部材が機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有していない。
したがって、散水装置X1発明において、相違点1に係る本件発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得る事項であるとはいえない。

上記相違点2について検討する。
散水装置X2発明には、ポンプをブラケットに対してベース、ボルト、ヒラワッシャ及びスプリングワッシャを介して取り付け、フィルタをブラケットに対してボルト、スプリングワッシャ及びヒラワッシャを介して取り付け、バルブをブラケットに対してジョイントを介して取り付けた状態で空間内に取り付けた構成を備えるものであり、当該構成は、本件発明の相違点2に係る構成に相当する。
そして、一般的に、複数の部品や装置を一体とすることは設計事項であり、散水装置X1発明について、その構成部品や装置を一体とすることは当業者であれば容易に着想し得ることであり、また、散水装置X1発明と散水装置X2発明は同じ転圧機械の散水装置の技術分野に属しており、さらにブラケットに対して装置を取り付ける点で作用・機能が共通するので、散水装置X2発明を散水装置X1発明に適用し、ブラケット部材に対して散水ポンプ、フィルタ及び切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で機械室内に取り付けることは当業者が容易に想到し得る事項である。
したがって、散水装置X1発明において、相違点2に係る本件発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

ウ 小括
よって、本件発明は、当業者が散水装置X1発明、散水装置X2発明および散水装置X3発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)散水装置X2発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明と散水装置X2発明の対比
本件発明と散水装置X2発明とを対比する。

散水装置X2発明の「フロアボード」は、本件発明の「床板」に相当し、以下同様に、
「車体の前部に設けられたノズル」及び「車体の後部に設けられたノズル」は、「前部及び後部散水ノズル」に、
「タンク」は、「散水タンク」に、
「ビニールホース(ワイヤーイリ)」及び「ビニールホース」は、「配管」に、
「ポンプ」は、「散水ポンプ」に、
「フィルタ」は、「フィルタ」に、
「バルブ」は、「切換バルブ」に、
「ブラケット」は、「ブラケット部材」に、
「振動タンデムローラであるコンビネーションタイプTW330-1」は、「転圧機械」にそれぞれ相当する。

また、散水装置X2発明は、車体の底板とフロアボードとの間に画成された「空間」にフィルタ、ポンプ、バルブ及びブラケットが配置されているから、本件発明の「機械室」に相当する。

また、散水装置X2発明のブラケットに対して、「ポンプがベース、ボルト、ヒラワッシャ及びスプリングワッシャを介して取り付けられ」、「フィルタがボルト、スプリングワッシャ及びヒラワッシャを介して取り付けられ」、「バルブがジョイントを介して取り付けられ」ている点は、その機能及び構成から、本件発明のブラケット部材に対して、「前記散水ポンプ、前記フィルタ及び前記切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で前記機械室内に取り付けられた」点に相当する。

以上のことから、本件発明と散水装置X2発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップ、該運転席の床板との間に画成された機械室と、
前記車体の前後にそれぞれ設けられた前部及び後部散水ノズルと、
散水タンク内の水を配管を介して前記前部及び後部散水ノズルに供給する散水ポンプと、
前記前部及び後部散水ノズルに供給される水を濾過するフィルタと、
前記散水タンクと前記後部散水ノズルとを接続する配管を開閉する切換バルブと、
前記散水ポンプ、前記フィルタ及び前記切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で前記機械室内に取り付けられたブラケット部材と、
を備えた、転圧機械の散水装置。」

(相違点3)
本件発明は、「運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと該運転席の床板との間に画成されて側方に向けて開口する機械室」を備える構成であるのに対し、散水装置X2発明は、「車体の底板とフロアボードとの間に画成された空間に装置が配置されている」点。

(相違点4)
本件発明は、「前記床板に貫設されて前記切換バルブを上方に露出させた操作孔」を備える構成であるのに対し、散水装置X2発明は、「フロアボードにバルブを上方に露出させる操作孔を貫設していない」点。

(相違点5)
本件発明は、ブラケット部材が「前記機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有」するのに対し、散水装置X2発明は、前記構成について特定されていない点。

イ 判断
上記相違点3について検討する。
上記第3の3のとおり散水装置X1発明は、本件特許出願前に公然実施された発明である。当該散水装置X1発明には、車体の側部に設けられたステップと運転席のフロアボードとの間に画成されて側方に向けて開口する空間を有し、車体の側部に設けられたステップとフロアボードとの間に画成された空間にフィルタ、ポンプ、バルブ及びブラケットが配置される構成を備えている。
そして、散水装置X2発明と散水装置X1発明は同じ転圧機械の散水装置の技術分野に属しており、さらに散水のための機械室を設ける点で作用・機能が共通するので、散水装置X1発明を散水装置X2発明に適用し、運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと運転席の床板との間に画成されて側方に向けて開口する機械室を設けることは当業者が容易に想到し得る事項である。
したがって、散水装置X2発明において、相違点3に係る本件発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

上記相違点4について検討する。
散水装置X1発明には、フロアボードに開口が設けられており、その開口を通してバルブが露出しており、前輪(鉄輪)のみ散水を行うときは、上記バルブを閉じる構成が開示されている。
そして、散水装置X2発明と散水装置X1発明は同じ転圧機械の散水装置の技術分野に属しており、さらにフロアボードの下部に機械室を設けバルブを配する点で作用・機能が共通し、散水装置X2発明においても操作性の向上を図るとの課題があるといえるので、散水装置X1発明を散水装置X2発明に適用し、床板に貫設されて切換バルブを上方に露出させた操作孔を設けることは当業者が容易に想到し得る事項である。
したがって、散水装置X2発明において、相違点4に係る本件発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

上記相違点5について検討する。
上記(1)で検討したように、散水装置X2発明、散水装置X1発明および散水装置X3発明は、ブラケット部材が機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有していない。
したがって、散水装置X2発明において、相違点5に係る本件発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得る事項であるとはいえない。

ウ 小括
よって、本件発明は、当業者が散水装置X2発明、散水装置X1発明および散水装置X3発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)散水装置X4発明を副引用発明とした場合
ア 判断
上記(1)、(2)で検討したように、散水装置X1発明を主引用発明とし、散水装置X2発明および散水装置X3発明を副引用発明とした場合には相違点1が、散水装置X2発明を主引用発明とし、散水装置X1発明および散水装置X3発明を副引用発明とした場合には相違点5が存在する。
上記第3の3のとおり散水装置X4発明は、本件特許出願前に公然実施された発明である。当該散水装置X4発明には、サンスイポンプASSY20がボルト21、ワッシャ22、スプリングワッシャ23を介してベース16に固定され、ブラケット10に取り付けられたボールバルブ5がボルト7、ワッシャ8、スプリングワッシャ9を介してベース16に固定される構成を有しているが、ブラケット部材が機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有していない。
したがって、散水装置X1発明において、相違点1に係る本件発明の構成にすること、散水装置X2発明において、相違点5に係る本件発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得る事項であるとはいえない。

この点について、申立人は、令和元年7月9日付け意見書の「(3)甲第20号証について」において、
「・・・
甲第20号証の2頁の「DETAIL E」に示すように、「ポンプ638」は、「車体601」の中央部の「機械室604」に設置されている。より詳しくは、甲第20号証の5頁にも示すように、「ポンプ638」は、「ベース690」を介して「車体601」に固定されるとともに、「ホース680」や各種治具を介して「散水バルブ624」(甲第20号証の6頁のボールバルブ5)が接続されている。また、「ベース690」と「散水バルブ624」の間には、断面L字状の「ブラケット部材650」(甲第20号証の6頁のブラケット10)が介設されている。「ブラケット部材650」には、水平方向に張り出す「係止片650a」が形成されている。「ベース690」(甲第20号証の6頁のベース16)の「上面690a」に、「ブラケット部材650」の「係止片650a」が当接し、ボルト等で「ベース690」の「上面690a」と「ブラケット650」の「係止片650a」とが締結されている。「ポンプ638」は、「散水バルブ624」、「ブラケット650」、及び「ホース680」、各種治具等でアッセンブリ状態で「機械室604」に取り付けられている。」(2頁4行-34行)
旨主張している。
しかしながら、甲第20号証には、サンスイポンプASSY20(申立人が主張する「ポンプ638」に相当)がボルト21、ワッシャ22、スプリングワッシャ23を介してベース16(申立人が主張する「ベース690」に相当)に固定され、ブラケット10(申立人が主張する「係止片650a」に相当)に取り付けられたボールバルブ5(申立人が主張する「散水バルブ624」に相当)がボルト7、ワッシャ8、スプリングワッシャ9を介してベース16に固定され、車体の底板と運転席の床板との間に画成された空間に配置されて、ベース16がボルト60、ワッシャ61を介して固定される点が記載されており、甲第20号証記載のものの「サンスイポンプASSY20」、「ベース16」、「ボールバルブ5」は、本件発明の「散水ポンプ」、「固定ベース」、「切換バルブ」に相当すると認められるものの、甲第20号証の「ブラケット10」は「ボールバルブ5」を「ベース16」に取り付けるための部材であると解するのが自然であって、甲第20号証には、機械室に固定ベースを設けること、固定ベースの上面に当接する係止片をブラケットに設けることが記載されているとはいえないから、申立人の上記主張は採用できない。そうすると、甲第20号証を踏まえても、散水装置X1発明において相違点1に係る本件発明の構成にすること、散水装置X2発明において、相違点5に係る本件発明の構成にすることが当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。

したがって、散水装置X1発明において、相違点1に係る本件発明の構成にすること、散水装置X2発明において、相違点5に係る本件発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得る事項であるとはいえない。

イ 小括
よって、本件発明は、当業者が散水装置X1発明、散水装置X2発明ないし散水装置X4発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由(第29条第1項第2号)について
ア 散水装置X1発明を主引用発明とした場合
申立人は、本件発明は散水装置X1発明と同一であるから新規性が無い旨を主張している。しかし、上記4(1)で検討したように、散水装置X1発明を主引用発明とした場合には、本件発明と散水装置X1発明とを対比すると、相違点1および相違点2が存在するため、本件発明と散水装置X1発明は同一ではない。
したがって、申立人の主張する特許異議申立理由によっては、本件発明を取り消すことはできない。

(2)取消理由(第29条第2項)について
ア 散水装置X1発明を主引用発明とした場合
申立人は、本件発明は散水装置X1発明から容易想到である旨を主張している。しかし、上記4(1)で検討したように、散水装置X1発明を主引用発明とした場合には、本件発明と散水装置X1発明とを対比すると、相違点1および相違点2が存在し、相違点1に係る構成は当業者が容易に想到し得る事項ではないため、本件発明は、散水装置X1発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立人の主張する特許異議申立理由によっては、本件発明を取り消すことはできない。

イ 散水装置X1発明を主引用発明、散水装置X3発明を副引用発明とした場合
申立人は、本件発明は散水装置X1発明および散水装置X3発明から容易想到である旨を主張している。しかし、上記4(1)で検討したように、散水装置X1発明を主引用発明とした場合には、本件発明と散水装置X1発明とを対比すると、相違点1および相違点2が存在し、相違点1に係る構成は散水装置X3発明に記載されていないものであって、本件発明は、散水装置X1発明および散水装置X3発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立人の主張する特許異議申立理由によっては、本件発明を取り消すことはできない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、平成31年3月12日付け取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
転圧機械の散水装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧機械の散水装置に係り、詳しくは散水装置を構成する散水ポンプ、フィルタ、各種バルブ類の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載のハンドガイドローラでは、機体フレーム上の前後に散水ノズルを配設し、コックが介装された配管を介して各散水ノズルを散水タンクに接続し、コックの開閉に応じて散水タンク内の水を重力により配管を経て散水ノズルに供給して前後の転圧輪に散水するように構成されている。
【0003】
ハンドガイドローラは非搭乗型の転圧機械であるが、搭乗型の転圧機械、例えば振動ローラ、マカダムローラ、タイヤローラ等では、散水タンクの水を前後の散水ノズルに供給するための散水ポンプが備えられている。このような散水ポンプは、水を濾過するフィルタ、後部転圧輪への散水を実行・中止するための切換バルブ等のバルブ類と共に、運転席の下側に設置される場合がある。例えば振動ローラの後部車体の左側には運転席への乗降用のステップが設けられており、このステップの箇所に左側方に開口するように機械室が形成され、その内部に上記散水ポンプ、フィルタ、バルブ類が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3446108号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の転圧機械の散水装置では、散水装置を構成する各機器を何ら考慮することなく単に機械室内に設置しただけの構成のため、以下に述べる問題が生じた。
まず、車両の生産性に関して、機械室内で各機器が個別に設置されていることから機器毎に機械室内への組付作業が必要になり、生産性が非常に悪い。
【0006】
また、メンテナンス性に関して、機械室内の何れかの機器が故障したとしても、故障箇所を特定しなければ修理・交換のために故障した機器を機械室から取り出せない。さらに、故障した機器を機械室から取り出さずに修理する場合には、修理中の作業者により乗降用のステップが遮られるため、例えば、ステップから後部車体上に登って内部をメンテナンスする作業を並行して実施できない。
【0007】
一方、作業性に関して、締固め作業中に後部転圧輪への散水を実行・中止する場合、作業者は一旦車両を停止させた上で運転席から地上に降りて切換バルブを操作する必要があり、締固め作業が中断して作業効率を低下させてしまう。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、散水装置を構成する各機器の組付作業が容易で生産性が良好であると共に、故障発生時のメンテナンス性が良好であり、しかも、締固め作業を継続しながら後部転圧輪への散水を実行・中止できる作業性の良好な転圧機械の散水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の転圧機械の散水装置は、運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと該運転席の床板との間に画成されて側方に向けて開口する機械室と、前記車体の前後にそれぞれ設けられた前部及び後部散水ノズルと、散水タンク内の水を配管を介して前記前部及び後部散水ノズルに供給する散水ポンプと、前記前部及び後部散水ノズルに供給される水を濾過するフィルタと、前記散水タンクと前記後部散水ノズルとを接続する配管を開閉する切換バルブと、前記機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有し、前記散水ポンプ、前記フィルタ及び前記切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で前記機械室内に取り付けられたブラケット部材と、前記床板に貫設されて前記切換バルブを上方に露出させた操作孔とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の転圧機械の散水装置によれば、予めブラケット部材に散水ポンプ、フィルタ及び切換バルブを固定してアセンブリー化した上で機械室に設けられた固定ベースの上面に係止片を当接させて機械室内に取付可能なため生産性を向上でき、散水装置の故障発生時には作業し易い機械室の外部で機器の修理や交換を実施できると共に、ステップを使用して車体に搭乗して他の箇所のメンテナンスを並行して実施可能なためメンテナンス性を向上でき、さらに、作業者が運転席に着座したまま操作孔を介して切換バルブを操作できることから、締固め作業を継続しながら後部転圧輪への散水を実行・中止可能となり作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の散水装置が適用された振動ローラを示す正面図である。
【図2】機械室内での制御ユニットの設置状態を示す図1のA部詳細図である。
【図3】操作孔を介して運転席側に露出した切換バルブを示す図1のB矢視図である。
【図4】機械室内への制御ユニットの取付状態を示す車両左斜め前方より見た分解斜視図である。
【図5】同じく制御ユニットを車両右斜め前方より見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を振動ローラ車両の散水装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の散水装置が適用された振動ローラを示す正面図、図2は機械室21内での制御ユニット20の設置状態を示す図1のA部詳細図である。
振動ローラ1の車体は、前部転圧輪2を備えた前部車体3と後部転圧輪4を備えた後部車体5とから構成されている。これらの前部車体3と後部車体5とは、センタピン6を介して水平方向に屈曲可能なアーティキュレート式に連結され、相互に屈曲することで車両を旋回させるようになっている。前部転圧輪2はほぼ車幅と対応する長さを有する金属ドラムから構成され、後部転圧輪4は計4本のゴムタイヤから構成されている。
【0013】
後部車体5上の前側位置にはステアリング7を備えた操作台8が設置され、操作台8の後側には運転席9が設置されている。運転席9に着座した作業者はステアリング7及び操作台両脇の前後進レバー10を操作し、その操作に応じて、前部車体3内に搭載されたエンジンで駆動されるHST(Hydro Static Transmission)を動力源として振動ローラ1が走行するようになっている。
【0014】
本実施形態の散水装置は、前部転圧輪2に対応して配設された前部散水ノズル12、後部転圧輪4に対応して配設された後部散水ノズル13、後部車体5上に設置されて各散水ノズル12,13から散水される水を貯留する散水タンク14、及び散水タンク14と前部及び後部散水ノズル12,13とを接続する配管15(ホース)上に配設された散水ポンプ16、フィルタ17、バルブ類18a?18cから構成されている。
【0015】
そして、散水ポンプ16、フィルタ17、バルブ類18a?18cが共通のユニットベース19(ブラケット部材)に固定されてアセンブリー化された上で(以下、このアセンブリー状態を制御ユニット20と称する)、運転席9の下側に画成された機械室21内に取り付けられており、以下、その構成を説明する。
【0016】
図3は操作孔35を介して運転席9側に露出した切換バルブ18aを示す図1のB矢視図、図4は機械室21内への制御ユニット20の取付状態を示す車両左斜め前方より見た分解斜視図、図5は同じく制御ユニット20を車両右斜め前方より見た斜視図である。
【0017】
まず、制御ユニット20を構成する各機器の機能を説明する。散水ポンプ16は渦巻きポンプとして構成されて、散水タンク14内の水を前部及び後部散水ノズル12,13に供給する役割を果たす。フィルタ17は、散水ポンプ16から各散水ノズル12,13に供給される水に含まれるゴミ等を濾過する役割を果たす。またバルブ類18a?18cとして、本実施形態では切換バルブ18a、ソレノイドバルブ18b、ドレンバルブ18cが備えられている。切換バルブ18aは、散水ポンプ16と後部散水ノズル13とを接続する配管15を開閉する役割を果たし、これにより前部散水ノズル12から前部転圧輪2への散水を継続しながら、後部散水ノズル13から後部転圧輪4への散水を任意に実行・中止し得るようになっている。
【0018】
ソレノイドバルブ18bは、散水ポンプ16と前部及び後部散水ノズル12,13との間に介装され、散水ポンプ16の作動時には開弁されて散水ポンプ16から各散水ノズル12,13への水の供給を許容し、散水ポンプ16の停止時には閉弁されて各散水ノズル12,13からの水の滴りを防止する。ドレンバルブ18cは配管15上の各所に介装され、開弁により配管15内の水を排出する。
【0019】
特に図4,5に示すように、これらの各機器が固定されるユニットベース19は、全体として車両前方に面した前壁19a、後方に面した後壁19b、下方に面した底壁19c、右方に面した右側壁19d、中間高さに配置された棚壁19eから構成されている。ユニットベース19の右側壁19dには前後一対のボルト孔23が貫設されると共に、ボルト孔23よりも若干上方位置には水平に係止片24が突設されている。後述するように、これらのボルト孔23及び係止片24が制御ユニット20の取付に利用される。
【0020】
また、ユニットベース19の底壁19c上には散水ポンプ16がボルト25により固定され、前壁19aにはフィルタ17がボルト26により固定されている。また、ユニットベース19の棚壁19e上にはソレノイドバルブ18bが固定され、後壁19bにはステー27が図示しないボルトにより固定され、ステー27の上端は後方に向けて直角に折曲されて切換バルブ18aが固定されている。これらの散水ポンプ16、フィルタ17、ソレノイドバルブ18b、切換バルブ18aは配管15により相互に接続されると共に、配管15の各所にはドレンバルブ18cが設けられている。
【0021】
図2,5に示すように、配管15aは上方に延設されて散水タンク14と接続され、この配管15aを経て散水タンク14内の水が散水ポンプ16に供給される。配管15bは前方に延設されて前部散水ノズル12に接続され、この配管15bを経て散水ポンプ16から吐出された水が前部散水ノズル12に供給される。配管15cは後方に延設されて後部散水ノズル13に接続され、切換バルブ18aの開弁時には散水ポンプ16から吐出された水が配管15cを経て後部散水ノズル13に供給され、切換バルブ18aの閉弁時には水の供給が中止される。
なお、散水ポンプ16やソレノイドバルブ18bのハーネス29は図示しない制御回路に接続され、制御回路からの駆動信号により作動するようになっている。
【0022】
次に、機械室21の構成を説明する。
機械室21は後部車体5の左側面に画成されている。詳しくは、後部車体5の左側面の最下部には、作業者が運転席9に乗降するためのステップ30が設けられ、このステップ30と運転席9の床板31との間に左側方に開口するように機械室21が画成されている。機械室21の奧壁21aには前後方向に延びる形状をなす固定ベース32が溶接され、この固定ベース32には前後一対の雌ねじ部33が形成されている。
【0023】
制御ユニット20は機械室21内に配設され、そのユニットベース19の係止片24を固定ベース32の上面に当接させている。ユニットベース19の各ボルト孔23には左側方よりボルト34が挿入されて固定ベース32の雌ねじ部33に螺合し、これにより制御ユニット20が機械室21内の所定位置に取り付けられている。
【0024】
上記のように切換バルブ18aはユニットベース19の後壁19bに固定されたステー27上に配置されているため、床板31の直下に位置している。そして、切換バルブ18aと対応するように床板31には円形状をなす操作孔35が貫設され、この操作孔35を介して切換バルブ18aは上方、即ち運転席9側に向けて露出している。
【0025】
以上のように構成された振動ローラ1の散水装置の生産時においては、予めユニットベース19に散水ポンプ16、フィルタ17及びバルブ類18a?18c等の機器を固定して制御ユニット20としてアセンブリー化した上で、ボルト34により機械室21内に取り付けられる。即ち、ユニットベース19に対する散水ポンプ16等の機器の固定については作業し易い機械室21の外部で容易に実施でき、狭い機械室21内への作業は制御ユニット20の設置のみで完了することから、その生産性を大幅に向上することができる。
【0026】
また、振動ローラ1の使用中において散水装置が正常に機能しなくなったときには、制御ユニット20の何れかの機器に故障が発生している可能性がある。このような場合、故障箇所を特定することなく制御ユニット20ごと機械室21から取り出し、作業し易い外部で制御ユニット20の故障箇所を特定した上で、故障した機器の修理や交換を実施できる。また、制御ユニット20を機械室21から取り出した後は、何ら問題なくステップ30を使用して後部車体5に搭乗可能であるため、例えば後部車体5の内部のメンテナンスを実施できる。これらの要因によりメンテナンス性を向上することができる。
【0027】
また、締固め作業中において後部転圧輪4への散水を実行・中止する場合があるが、このときの作業者は運転席9に着座したまま操作孔35を介して切換バルブ18aを操作可能である。従って、従来技術のように車両1を停止させる必要も、運転席9から地上に降りる必要もないことから、締固め作業を継続しながら後部転圧輪4への散水を実行・中止でき、その作業性を大幅に向上することができる。
【0028】
さらに、機械室21への制御ユニット20の取付時には、機械室21内の固定ベース32の上面に対してユニットベース19の係止片24を上方から当接させると、固定ベース32に対する制御ユニット20の上下位置が自ずと定まる。その状態で制御ユニット20の左右位置を調整するだけで雌ねじ部33にボルト孔23を一致させてボルト34で固定できる。よって、機械室21内への制御ユニット20の組付作業を一層容易に実施することができる。
【0029】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では振動ローラ1に具体化したが、散水装置を備えた転圧機械であれば、その種別はこれに限るものではなく任意に変更可能である。よって、例えばマカダムローラやタイヤローラ等に適用してもよい。
また上記実施形態では、散水装置のバルブ類18a?18cとして切換バルブ18a、ソレノイドバルブ18b、ドレンバルブ18cを備えたが、これに限るものではなく任意に変更可能であり、例えばソレノイドバルブ18bを省略してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 振動ローラ(転圧機械)
5 後部車体(車体)
9 運転席
12 前部散水ノズル
13 後部散水ノズル
14 散水タンク
15 配管
16 散水ポンプ
17 フィルタ
18a 切換バルブ
19 ユニットベース(ブラケット部材)
21 機械室
30 ステップ
31 床板
35 操作孔
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと該運転席の床板との間に画成されて側方に向けて開口する機械室と、
前記車体の前後にそれぞれ設けられた前部及び後部散水ノズルと、
散水タンク内の水を配管を介して前記前部及び後部散水ノズルに供給する散水ポンプと、
前記前部及び後部散水ノズルに供給される水を濾過するフィルタと、
前記散水タンクと前記後部散水ノズルとを接続する配管を開閉する切換バルブと、
前記機械室に設けられた固定ベースの上面に当接する係止片を有し、前記散水ポンプ、前記フィルタ及び前記切換バルブをそれぞれ固定したアセンブリー状態で前記機械室内に取り付けられたブラケット部材と、
前記床板に貫設されて前記切換バルブを上方に露出させた操作孔と
を備えたことを特徴とする転圧機械の散水装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-08-14 
出願番号 特願2015-181886(P2015-181886)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (E01C)
P 1 651・ 851- YAA (E01C)
P 1 651・ 121- YAA (E01C)
P 1 651・ 112- YAA (E01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡村 典子  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 須永 聡
小林 俊久
登録日 2018-04-20 
登録番号 特許第6325498号(P6325498)
権利者 日立建機株式会社
発明の名称 転圧機械の散水装置  
代理人 長門 侃二  
代理人 長門 侃二  
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