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審決分類 審判 全部申し立て 1項1号公知  E02D
審判 全部申し立て 2項進歩性  E02D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E02D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E02D
管理番号 1355939
異議申立番号 異議2019-700032  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-17 
確定日 2019-08-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6359750号発明「擁壁用積ブロック」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6359750号の特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。 特許第6359750号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6359750号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成29年12月11日に特許出願され、平成30年6月29日にその特許権の設定登録がされ、平成30年7月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年1月17日に特許異議申立人ワイドウォール工法研究会(以下「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされ、平成31年3月26日付けで取消理由(発送日:平成31年4月2日)が通知され、その指定期間内である平成31年4月25日に意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正」という。)がされ、令和1年6月28日に申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「対峙する壁材及びフレーム材並びに該両材を連結する連結材を備え、」と記載されているのを、「壁材と、該壁材に対峙し、横材と縦材とを備えたフレーム材と、該フレーム材と前記壁材とを連結する連結材と、を備え、」に訂正する(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「同時に充填材を投入する」と記載されているのを、「一体的且つ同時に充填材を投入する」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「複数の対となる請求項1のブロック体を外側に壁材、内側にフレーム材を配して連設する工程と、」と記載されているのを、「水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するための自立するプレキャストコンクリートのブロック体であって、対峙する壁材及びフレーム材並びに該両材を連結する連結材を備え、該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材のー方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体を、複数の対とし、外側に壁材、内側にフレーム材を配して連設する工程と、」に訂正する。

エ 訂正事項4
願書に添付した図面の【図1】に記載された「34」を「33」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項、及び独立特許要件について
(1)訂正事項について
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的の適否について
訂正後の請求項1に係る発明は、訂正前の「フレーム材」について、「該壁材に対峙し、横材と縦材とを備えたフレーム材」との記載により、フレーム材の形状をより具体的に特定し、更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記(ア)で説示したように、訂正事項1は、「フレーム材」の構成について限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
明細書の段落【0020】には、「フレーム材3の縦材33の長さは、壁材の縦長と同じであり、横材32は、縦材と同程度の長さ(縦材と横材で形成される隅角部は重複して長さとしている。)となっており、」、「フレーム材横材及び縦材は、無筋のコンクリートで」及び「フレーム材の隅角部は、応力の集中を緩和するハンチ34を設けている。」と記載され、図面の【図1】には、その形状が図示されている。
したがって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的の適否について
訂正後の請求項2は、訂正前の「前記ブロック体の内包空間及び該ブロック体の外側で切土法面、盛土法面若しくは型枠とに挟まれた空間に、同時に充填材を投入する工程」について、「・・・一体的且つ同時に充填材を投入する工程」と記載することによって、前記ブロック体の内包空間及び該ブロック体の外側で切土法面、盛土法面若しくは型枠とに挟まれた空間の両空間に対して、時間的な同時性に加えて、空間的な一体性を明記し、本工程を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記(ア)で説示したように、訂正事項2は、ブロック体の内包空間及び該ブロック体の外側で切土法面、盛土法面若しくは型枠とに挟まれた空間の両空間に、「同時に充填材を投入する工程」という発明特定事項を概念的により下位の「一体的且つ同時に投入する工程」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
明細書の段落【0024】には、「(5)図4(3)に示すように、最下段のブロック体前面の埋戻し材64を投入し、締め固めた後に、ブロック体の胴込めコンクリート17と切土面に接する裏込めコンクリート60を同時に打設する」、「実施例1のブロック体は、極めて自立安定性が高く、胴込めコンクリート打設によって、ブロック内空断面からブロック裏の部分ヘとコンクリートが回り込み背面地山間の裏込めコンクリートが打設される。」と記載され、段落【0017】には、「本発明は、自立性を有するブロック体であり、なおかつコンクリートブロックとして中詰め充填材と裏込め充填材料にコンクリートを一体的に充填でき」と記載され、また、図面の【図4】には、内包空間16及び裏込め空間59のいずれにも同じ高さ位置でコンクリート17が打たれている点が記載されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的の適否について
訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記(ア)で説示したように、訂正事項3は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項3は、実質的な内容の変更を伴うものではない。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

エ 訂正事項4
(ア)訂正の目的の適否について
願書に添付した図面の【図1】の(4)に記載の「34」は、2箇所であり、一方は縦材と横材で形成されるフレーム材3の隅角部のハンチであり、他方は、フレーム材3の縦方向の部材の位置に記載されている。また、願書に添付した明細書の段落【0020】には、「フレーム材3の縦材33」及び「ハンチ34」と記載され、段落【0030】には、「33 フレーム材縦材」及び「34 ハンチ」と記載されている。また、図面の【図3】には、フレーム材3の縦方向の部材に対して「33」が付され、隅角部に対して「34」が付されている。したがって、前記他方のフレーム材3の縦材の位置の「34」は、「33」の誤記であるから、訂正事項4は、誤記の訂正を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記(ア)で説示したように、訂正事項4は、単に図面中の誤記を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項4は、願書に添付した明細書の段落【0020】及び段落【0030】、並びに図面の【図3】の記載に基づいて誤記を訂正するものである。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

オ 一群の請求項について
訂正前の請求項1?3は、請求項2及び3が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1?3について請求されている。
また、訂正後の請求項3に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。

カ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1?3について特許異議の申立てがされており、特許請求の範囲の減縮がなされた訂正後の請求項1?2については、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?3に係る発明(「本件発明1?3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(下線は、訂正箇所を示す。)
「【請求項1】
水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するための自立するプレキャストコンクリートのブロック体であって、
壁材と、
該壁材に対峙し、横材と縦材とを備えたフレーム材と、
該フレーム材と前記壁材とを連結する連結材と、
を備え、該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体。
【請求項2】
切土法面若しくは盛土法面を形成する工程若しくは型枠を設置する工程と、
水平方向若しくは鉛直方向に請求項1のブロック体を連設する工程と、
前記ブロック体の内包空間及び該ブロック体の外側で切土法面、盛土法面若しくは型枠とに挟まれた空間に、一体的且つ同時に充填材を投入する工程と、
を備えた構造物を構築する方法。
【請求項3】
水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するための自立するプレキャストコンクリートのブロック体であって、対峙する壁材及びフレーム材並びに該両材を連結する連結材を備え、該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体を、複数の対とし、外側に壁材、内側にフレーム材を配して連設する工程と、
前記ブロック体の内包空間及び該ブロック体の外側で対峙するブロック体とに挟まれた空間に同時に充填材を投入する工程と、
を備えた構造物を構築する方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、当審が平成31年3月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)請求項1に係る発明は、甲第11号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)請求項2に係る発明は、甲第11号証に記載された発明及び甲第12号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 甲号証の記載
甲第1号証:特開2003-27506号公報
甲第2号証:実用新案登録第3156212号公報
甲第3号証:「総合カタログ」(2010年度版)、高知県コンクリート製品工業組合、2010年7月 p43?46
甲第4号証:「GUARDIAN」カタログ、四万十コンクリート株式会社 平成28年10月製作
甲第5号証:実願昭51-050179号(実開昭52-141806号)のマイクロフィルム
甲第6号証:日本経済新聞2015年10月14日記事「土木ブロック拡販」
甲第7号証:特開2007-291797号公報
甲第8号証:特開2008-144501号公報
甲第9号証:「コンクリートプレキャスト&プレハブ工法」、建設物価メディア株式会社、1997年11月30日発行、p226-246
甲第10号証:「ワイドウォール工法用ガーディアン」図面及び名刺
甲第11号証:「GUARDIANII」カタログ、四万十コンクリート株式会社、平成29年7月製作
甲第12号証:特開2004-293248号公報


(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同じ。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート擁壁の構築方法及び該方法で使用される型枠パネルに関する。」

(イ)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、施工手間が簡素化され、工期が短縮され、擁壁を安価に構築することができる、コンクリート擁壁の構築方法と、該方法で使用される型枠パネルを提供することである。」

(ウ)「【0005】
【発明の作用及び効果】
本発明によるコンクリート擁壁の構築方法及び該方法で使用される型枠パネルの場合、ベース型枠パネルと型枠パネルが擁壁の型枠を形成し、擁壁構築後擁壁の一部としてそのまま残るので、従来のように作業用足場や型枠を現場で組み立てたり、擁壁構築後解体する必要がない。よって、施工手間が簡素化され、工期が短縮されるので、擁壁を安価に構築することができる。更に、ベース型枠パネル、型枠パネル、連結金具及び鉄筋からなる型枠装置の構造が非常に簡単である。更に、ベース型枠パネルの傾斜角度を選択することにより、種々の法勾配の擁壁を構築することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、図を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。図1は、本発明によるコンクリート擁壁の構築方法に従って構築された擁壁の縦断面図である。図1において、1は基礎、2は予め製作され、この基礎1上に固定設置されたコンクリート製のベース型枠パネル、3は同様に予め製作され、このベース型枠パネル1上に積み重ねられたコンクリート製の偏平板状の型枠パネルである。基礎1は例えば現場打ちされたコンクリート、ならしコンクリート、岩盤等である。
【0007】
ベース型枠パネル2は図2,3に示すように、底部4と傾斜部5とから一体に形成されている。この底部4は基礎1上に水平に固定される。傾斜部5はこの水平な底部4に対して傾斜しており、この傾斜角度によってコンクリート擁壁の法勾配が決定される。例えば1:0.1、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5の法勾配を生じるベース型枠パネル2が用意され、現場に応じて選択される。
【0008】
型枠パネル3は擁壁の表側で、傾斜部5の傾斜角度と同じ角度で傾斜部5上に積み重ねられる。そのために、型枠パネル3はその外周エッジが傾斜部5のエッジ及び他の型枠パネル3のエッジに嵌合するように形成され、かつクレーン等で吊り下げた状態で2本の連結金具6によって互いに連結される。この連結金具6は図4に示すように、例えばL字形鋼からなり、ボルト7を挿入するための2つの穴8a,8bを有する。この上側の穴8aは長穴として形成されている。連結金具6は型枠パネル3の裏面と面一になるようにこの裏面に形成された縦溝3aに嵌め込まれる。連結金具6を型枠パネル3に固定するために、ボルト7が連結金具6の穴8a,8bに挿入され、型枠パネル3に埋め込まれたナット状のインーサート9にねじ込まれている。
【0009】
ベース型枠パネル2の傾斜部5と、型枠パネル3の表面は粗面であってもよいが、石割のような模様を有していてもよいし、または石張であってもよい。
【0010】
擁壁の裏側には、型枠パネル3と同じ型枠パネル3′が積み重ねられている(図1参照)。この型枠パネル3′も連結金具6とボルト7によって互いに連結されている。
【0011】
図1に示すように、型枠パネル3,3′は更に、鉄筋10によって支持されている。この鉄筋10は一端が型枠パネル3,3′の連結金具6に、他端が打設コンクリート11内に埋め込み固定されたアンカー12に溶接等によって固定されている。
【0012】
次に、上記の構造のコンクリート擁壁の施工について説明する。先ず最初に、基礎1、例えばコンクリート基礎が形成され、この基礎にアンカー12が埋め込み固定される。続いて、この基礎1上に、ベース型枠パネル2が水平に固定設置され、そしてベース型枠パネル2の傾斜部5の裏側に連結金具6がボルト7によって固定され、この連結金具6とアンカー12に鉄筋10が溶接される。同様に、擁壁の裏側の型枠パネル3′が基礎1上に立設され、連結金具6がボルトによって型枠パネル3′に固定され、この連結金具6とアンカー12に鉄筋10が溶接される。そして、ベース型枠パネル2と基礎1と型枠パネル3′との間にコンクリートが打設充填される。
【0013】
コンクリートが固化した後で、次の段の型枠3,3′がクレーン等によって積み上げられ、連結金具6と鉄筋10が取付けられ、そしてコンクリートが打設される。これを繰り返すことにより、上記構造のコンクリート擁壁が構築される。」

(エ)図面
「【図1】



a 図1から、ベース型枠パネル2の傾斜部5と型枠パネル3’が対峙している点、及び、型枠パネル3及び型枠パネル3’が対峙している点が看て取れ、さらに、ベース型枠パネル2の傾斜部5及び型枠パネル3の勾配と型枠パネル3’の勾配とが異なる点が看て取れる。

(オ)上記ウより型枠パネル3は、コンクリート製のベース型枠パネル2と同様に予め製作されることから、コンクリート製であり、また型枠パネル3’は、型枠パネル3と同じであるから、同様にコンクリート製であるといえる。

イ 甲第1号証に記載された発明
上記のアから、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「コンクリート擁壁の構築方法で使用される型枠パネルにおいて、
底部4と傾斜部5とから一体に形成され、擁壁の表側において基礎1上に固定設置されるコンクリート製のベース型枠パネル2と、擁壁の裏側において基礎1上に立設されるコンクリート製の型枠パネル3’であって、ベース型枠パネル2の傾斜部5と型枠パネル3’が対峙しており、また、ベース型枠パネル2に積み上げられるコンクリート製の型枠パネル3と前記型枠パネル3’に積み上げられる型枠パネル3’であって、型枠パネル3及び型枠パネル3’が対峙しており、ベース型枠パネル2の傾斜部5及び型枠パネル3の勾配と、型枠パネル3’の勾配とが異なっており、
アンカー12が埋め込み固定された基礎1上に、ベース型枠パネル2が固定設置され、ベース型枠パネル2の傾斜部5の裏側に連結金具6がボルト7によって固定され、この連結金具6とアンカー12に鉄筋10が溶接されるとともに、擁壁の裏側の型枠パネル3′が基礎1上に立設され、連結金具6がボルトによって型枠パネル3′に固定され、この連結金具6とアンカー12に鉄筋10が溶接され、ベース型枠パネル2と基礎1と型枠パネル3′との間にコンクリートが打設充填され、コンクリートが固化した後で、次の段の型枠パネル3及び型枠パネル3′が連結金具6によって連結されて積み上げられ、打設コンクリート11内にアンカー12が埋め込み固定され、鉄筋10の一端が連結金具6に、他端がアンカー12に固定され、そしてコンクリートが打設され、これを繰り返すことによりコンクリート擁壁を構築する、コンクリート擁壁構築方法で使用される、型枠パネル。」

(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本考案は道路新設、改良工事や宅地の造成工事の構築利用される大型擁壁用積みブロックに関した擁壁構造である。」

(イ)「【0003】
以下、図1、図2、について従来の大型擁壁ブロックは前面壁5と後面壁6が固定されているのに対して、この考案に係る控幅自在大型擁壁ブロックの大きく違う所は前面壁5と後面壁6が個々の壁面となり控え金具の寸法調整で前面壁5と後面壁6を自由に控え幅設定し、一体化する事が出来る大型擁壁ブロックである。
【0004】
固定金具1、2,3でネジ止4上下左右を固定し逆Z状に付ける寸法により、自由に控え幅を設定出来る大型擁壁ブロックである。」

(ウ)「【0007】
本考案は上記の目的を達成するために、前面壁上部の後方に突出する第1凸面、後面壁上部の前方に突出する第2凸面、前面壁下部の後方に突出する第3凸面、後面壁下部の前方に突出する第4凸面にそれぞれ前記金具を取り付けるためのインサート穴を設けており、第1凸面の上辺と第4凸面の下辺は水平方向に延び、第2凸面の上辺と第3凸面の下辺は対向するブロックに向かって内側に傾斜するようにし(請求項1)、また、第1凸面と第4凸面が平行四辺形であり、第2凸面と第3凸面が台形である(請求項2)構成とした。」

(エ)「【0010】
この大型擁壁ブロックは2個1体で組み合わせ1組の大型擁壁ブロック体に形成し使用される。また必要な控え幅に応じた金具の取り替えによって調整が出来、従来の様にサイズの異なる控え幅の種類の必要がなく、1種類のブロックで(2個1体)控え自由にサイズが整う事となり、コストが低減し何種類の型枠の在庫を必要としない。
【考案を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本考案の実施の形態を図1?図4に基づいて説明する。図1は実施の1形態であって、組ブロック体を形成した2対1組の大型擁壁ブロックを示す。金具を取り付けた大型擁壁ブロック側面図1、図2は大型擁壁ブロック体の上面図である。この大型擁壁ブロックは前面壁5と後面壁6を逆Z状にして取り付け金具1,2,3で固定または逆Z状に作成した取り付け金具で、2個1対に組み合わせて1組の大型擁壁ブロック体を形成するもので、この場合、図2に示すように前面壁5後面壁6の同一サイズで同一形状にされた前面壁突起部7,後面壁突起部8のインサート穴20にボルト4を固定金具1,2,3で組み合わせる。
【0012】
次に、図2は前記大型擁壁ブロックを用いて施工を行う際吊り上げアンカー19は4箇所で吊金具を用いての取り付け箇所で、ずれ止め11凸は図1の前面壁ずれ止め14凹が入り後面ずれ止め12凸は図1の凹15に噛み合って、ずれ止めとなる。図1を形成した大型擁壁ブロックを左右方向に並列し上部方向に積み上げ上げられて構築される。この大型擁壁ブロックは控え幅を増減調節する為に、取り付け金具1,2,3を控え幅に応じた寸法で取替える事で自由に控え幅を変更できる。」

(オ)図1及び2
「【図1】


【図2】




(3)甲第3号証
ア 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の記載がある。
(ア)「●控え幅を500?2000迄自由に変更することが出来るため、安定幅を無駄なく選択でき、又背面を裏型枠として兼用できるので、スピードアップ、コスト削減を計れます。
●3分勾配が基本になっていますが、控え金具の取替えで3分勾配以上の勾配でも簡単に対応できます。」(43頁13-15行)」

(イ)43頁の右上の写真




上記の写真から、ブロック体の前面の壁材である第一壁材と、背面の壁材である第二壁材とが対峙し、両壁材を連結する控え金具を備え、該控え金具は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成する点が看取できる。

(ウ)43頁の左下の写真から、傾斜した擁壁の前面が看て取れる。

(エ)上記(ウ)で指摘した写真から看て取れる擁壁の前面の傾斜状態と、上記(イ)の写真におけるブロック体の傾斜状態とをふまえると、上記(イ)の写真における左の壁材は、(ウ)の写真における擁壁の前面に位置する壁材に対応するから、前面の壁材といえる。そうすると、上記(イ)の写真における右の壁材が背面の壁材であるといえる。
以上により、上記(イ)の写真から、ブロック体の前面の壁材である第一壁材と、背面の壁材である第二壁材とが対峙し、両壁材を連結する控え金具を備え、該控え金具は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる骨組み平面を複数面形成する点が看取できる。

(4)甲第4号証
ア 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の記載がある。
(ア)冒頭に「ガーディアンのテーマは『コンパクトでタフ』」と記載された頁(特徴の項1-4行)
「・控え幅を500?3500以上自由に変更することが出来るため、安定幅を無駄なく選択でき、かつ軽量であるため、スピードアップ、コスト削減を計れます。
・法面勾配は控え金具の取替えで底部が水平のまま直壁から1分、3分、4分、5分、6分、7分、1割勾配まで簡単に対応できます。」

(イ)冒頭に「擬石面」と記載されている頁の「基本A型」と題された図面




上記図から、ブロック体の前面の壁材である第一壁材と、背面の壁材である第二壁材とが対峙し、両壁材を連結する控え金具を備え、該控え金具は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成する点が看て取れる。

(ウ)冒頭に「自然石張」と記載されている頁の「製品規格」との題の下の右側の写真




(エ)冒頭に「◆参考施工図」と記載された頁の「積み上げ例」と題された図面




上記図から積み上げ例「壁面勾配擁壁」として、複数のブロック体が鉛直方向に連設された点が看取できる。

(5)甲第5号証
ア 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の記載がある。
(ア)「この考案は擁壁、特にプレキヤストコンクリートブロツクと現場打ちコンクリート玉石、砕石等の中詰材を併用して構築する擁壁に関するものである。」(第3頁3?6行)

(イ)「擁壁1は複数個のプレキヤスト鉄筋コンクリート中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2dを順次上下に積重ねて連結し、これらを内部に充填した現場打ちコンクリート玉石、礫、砕石あるいはこれらにモルタル、セメントミルクを注入したもの等の中詰材3により一体化することにより構成されている。
中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2dは、第2図に示すように相対する前面板4と後面板4’およびそれらの両端間に一体に設けた左右側板5,5’とからなり、前面板4と後面板4’はその対設間隔が上方に向かつて狭ばまるように少なくとも一方が傾斜しており、両側板5,5’の上端には凸部6が、また下端には凹部7が形成されている。そして、中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2dはそれぞれ積重ねた際、第1図または第3図に示すように上方に向かつて先細り状をなすように上部に重ねるもの程前後面板4,4’の間隔が狭まくなるように形成され、最上部以下の中空箱状ブロツク2dを除き、その下方の中空箱状ブロツク2a,2b,2cの各凸部6はそれぞれの上に重ねられる各中空箱状ブロツクの凹部7に密に噛み合うように形成されている。」(第3頁下から4行?第4頁下から2行)

(ウ)「・・・各中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2dの前後面板4,4’間に必要に応じ補強板8を一体に配置し、補強板8にも側板5,5’と同様に凸部9および凹部10を設ける。
各中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2dは各側板5,5’を接して適当な連結金具により横方向にも連結されている。その連結のため中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2dの側板5,5’には、所要位置に複数個の透孔11があけられており、相接する側板5,5’の透孔11,11に楔ボルト12を挿通し、この楔穴13に楔14を打込むことにより両側板5,5’相互を連結し、横方向に隣接する各中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2dを連結する。」(第5頁2?15行)

(エ)図面
「【図1】


【図2】



上記図1及び図2から、中空箱状ブロック2a,2b,2c,2dは、構造物を構築するに際して、自立することができる点が看て取れる。

イ 甲第5号証に記載された発明
上記のアから、甲第5号証には以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲5発明)
「複数個、順次上下に積重ねるとともに、横方向にも連結し、内部に充填した中詰材3により一体化することにより、擁壁を構成する自立するプレキヤスト鉄筋コンクリート中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2dであり、
各中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2dは、相対する前面板4と後面板4’およびそれらの両端間に一体に設けた左右側板5,5’とからなり、前面板4と後面板4’はその対設間隔が上方に向かつて狭ばまるように少なくとも一方が傾斜しており、両側板5,5’の上端には凸部6が、また下端には凹部7が形成されており、側板5,5’には、所要位置に複数個の透孔11があけられており、相接する側板5,5’の透孔11,11に楔ボルト12を挿通し、この楔穴13に楔14を打込むことにより両側板5,5’相互を連結し、
さらに、前後面板4,4’間に補強板8を一体に配置し、補強板8にも側板5,5’と同様に凸部9および凹部10を設けている、プレキヤスト鉄筋コンクリート中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2d。」

(6)甲第6号証
ア 甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、以下の記載がある。
(ア)「同社のブロックは製品の前面と後面のコンクリートを鉄骨でつなぐ特殊構造で、奥行きを自由に変えることができる。」(1段目9?13行)

(7)甲第7号証
ア 甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、法面の崩落防止のために施工される土留め擁壁、特に抜き型枠を利用した擁壁の構築方法に関する。」

(イ)「【0004】
図52に示した工法では、擁壁用ブロック106と裏型枠107を鉄筋等のセパレータ109で相互に連結し、一定間隔に保持した擁壁用ブロック106と裏型枠107間に胴込コンクリート108を打設するようにした工法も提案されているが(特許文献3参照)、この工法では、控え厚さが大きい場合、セパレータ109の強度が不足し、不安定になり易い。この弱点は、セパレータと鉄パイプを併用して解消するとしているが(特許文献4参照)、裏型枠やセパレータは最終的に埋め殺しとなるため、経済性が良くない。
また、連続して控え厚さが変化する(前背面勾配が異なる)と対応し難い。断続的に控え厚さが変化する場合、控え厚さの変化点は弱点となり易く、これを補うためには、多少なりとも無駄な断面が発生してしまう。また、擁壁用ブロック106に控え部や扶壁部が存在する分だけ材料コストが嵩む。
【0005】
図53に示した工法(特許文献5参照)では、1段目の擁壁用ブロック110と後壁板111の間に方形連結支構枠体112を介在させて胴込コンクリート113を打設し、1段目の擁壁用ブロック110にボルト接合した2段目の擁壁用ブロック110の背面に控杆部材114をボルト接合し、控杆部材114の後端部の型枠板添部115と裏込砕石層116の間に抜き型枠板17を挟み付け、抜き型枠板117と2段目の擁壁用ブロック110との間に胴込コンクリート113を打設している。」

(ウ)「【0006】
この工法では、控え厚さを規制している控杆部材114の長さを調節すれば、連続して控え厚さが変化する(前背面勾配が異なる)断面にも対応できるとしているが、現場で使用する控杆部材114が多様化し、混乱する可能性がある。また、基本的に点在する控杆部材114により規制されるため、確実性に乏しいという難点がある。控杆部材114の本数を増やすか、控杆部材114を大型化することによって、この難点を解消することはできるが、控杆部材114が埋め殺しとなることを考えれば、コスト面の問題がある。」

(エ)「【0011】
また、長さ方向に接続して基礎コンクリートに固着される型枠支持部材群の固着位置と、基礎ブロックまたは基礎コンクリートに対する傾斜角度を変更することによって、擁壁の控え厚さと勾配を制限無しに規制変更することができ、擁壁の設計の自由度が飛躍的に向上する。控え厚さと勾配は、高さ方向に連続的に規制されるため、確実性が高い。
更にまた、擁壁の前面と背面が独立した構造であるため、施工箇所がカーブ等で前背面の延長が変化したりする場合や、背面が垂直となる小型重力式擁壁の場合にも対応し易い。最終的に埋め殺しとなるのは、控え厚さに関係なく鉄筋等からなる抜き型枠支持部材のみであるから安価である。」

(オ)図52及び53
「【図52】



【図53】




(8)甲第8号証
ア 甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、コンクリートブロック積み擁壁に関し、特に山間部等に道路の拡幅を形成する際、前壁の法勾配が2割勾配(1:2.0)から略垂直の間のコンクリート擁壁上部へ、道路の拡幅施工を同時かつ容易に、しかも、経済的にできるコンクリート積みブロック擁壁に関するものである。」

(イ)「【0042】
図1はこの発明の第1の実施の形態によるコンクリートブロック積み擁壁の施工断面図であり、図2は図1で示した擁壁の一部の概略構造を示した斜視図であり、図3は図1で示した擁壁に用いられているコンクリートブロックの一部の概略構造を示した斜視図であり、図4は図1で示した擁壁に用いられているコンクリートブロックの他の一部の概略構造を示した斜視図であり、図5は図1で示した擁壁に用いられているコンクリートブロックの更に他の一部の概略構造を示した斜視図である。
【0043】
これらの図を参照して、擁壁20は、基礎コンクリート21の上に3段設置された通常形状の第1コンクリートブロック22a?22cと、最上段の第1コンクリートブロック22cの上部に、2段設置された道路拡幅用の第2コンクリートブロック23a及び23bと、そして更にその上部に、第3コンクリートブロック24a及び24bとが2段に積まれた状態で構成されている。
【0044】
第1コンクリートブロック22a?22cは、図3に示されているように、矩形平板状でその前面の法勾配が2割程度の第1前壁37aと、その内方側の中央に接続された控壁38aと、控壁38aに接続され、第1前壁37aと略平行に設置される平板状の第1後壁39aとからなる。
【0045】
第2コンクリートブロック23a及び23bの各々は、図4に示されているように、第1柱梁25を除いて第1コンクリートブロック22と略同一形状である。すなわち、第2コンクリートブロック23は、矩形平板状の第2前壁37bと、その内方側の中央に接続された平板状の控壁38bと、控壁38bに接続され、第2前壁37bと略平行に設置される矩形平板状の第2後壁39bと、第2前壁37bの外方側に接続され、第2前壁37bの勾配より急な勾配(ほぼ垂直勾配)で上下に延びる柱状の第1柱梁25a及び25bとからなる。第2コンクリートブロック23a及び23bは、上下の配置段が異なったものであっても第1柱梁25を除いた部分はすべて同一形状となっているが、第1柱梁25の形状は設置段によって異なっている。すなわち、第1柱梁25は下段のものから上段にいくに従って第2前壁37bからの突き出し長さが大きくなるように設定されている。そして、これらを積み上げたとき、図1等に示されているように第1柱梁25の各々の前面部が上下に整列するように構成されている。」

(ウ)「【0060】
図7はこの発明の第2の実施の形態によるコンクリートブロック積み擁壁の施工断面図であり、図8は図7で示した擁壁に用いられているコンクリートブロックの一部の概略構造を示した斜視図である。
【0061】
これらの図を参照して、この実施の形態による擁壁42は、基礎コンクリート21の上部に3段設置された、通常形状の第1コンクリートブロック22a?22cと、第1コンクリートブロック22cの上部に設置された道路拡幅用の第2コンクリートブロック23、そして更にその上部に、第3コンクリートブロック43a?43cが3段に積まれた状態で構成されている。
【0062】
第1コンクリートブロック22a?22cは、先の第1の実施の形態による第1コンクリートブロック22a?22cと略同一形状である。そして、その上の第2コンクリートブロック23は、先の第1の実施の形態による第2コンクリートブロック23aと略同一形状である。更に、図8に示されているように、第3コンクリートブロック43a?43cの各々は、矩形平板状で前面の法勾配が前壁37と、その内方側の中央に接続された平板状の控壁38と、控壁38に接続され、前壁37の勾配より緩やかな勾配で、かつ第2コンクリートブロック23の後壁39の勾配と同勾配で、上下に延びる矩形平板状の後壁39と、前壁37と同一勾配で上下の外方側に延びる中空柱状の柱梁26a?26cとからなる。これによって、第3コンクリートブロック43の前壁37は鉛直方向に整列し、最下段の第3コンクリートブロック43aの前壁37は第2コンクリートブロック23の前壁37に整列する。これによって、第3コンクリートブロック43と第2コンクリートブロック23の支持状態は安定する。また第3コンクリートブロック43が一種類ですむことから、製造コストが削減できると共に、吊り下げ荷重が一定となるため工期時間の短縮となる。
【0063】
この擁壁42の施工順序は、先の第1の実施の形態によるものと基本的に同一であるので、ここでの説明は繰り返さない。」

(エ)図面
「【図1】



【図2】



【図3】



【図4】



【図7】


【図8】



上記図から、コンクリート擁壁において、前壁と後壁の勾配が同一のもの、擁壁の鉛直方向途中で前壁及び後壁の勾配が変化するもの、後壁の外壁面が不連続に広く又は狭くなるもの等、前壁と後壁の控え厚さや勾配が異なる態様のものが看て取れる。

(9)甲第9号証
ア 甲第9号証の記載事項
甲第9号証には、以下の記載がある。
(ア)228頁の製品名「巌(いわお)」の内容の欄
「○1(当審注:「○1」は丸数字の1を表す。以下同様。)設置勾配が垂直から8分まで自立する構造である。」(2行)

(イ)228頁の「形状寸法」と題された図




上記図から、前壁と後壁の勾配が異なる態様の堤体コンクリートが看て取れる。

(ウ)232頁の「種別」の欄及び「項目」のうち特長・効果の内容の記載
a 種別
「砂防・治山ダム用ブロック」
b 特長・効果の内容
「○1 アンカー不要の自立式構造
大型のコンクリート製パネルと鋼製支持枠を一体化することで安全に自立でき、かつブロック同士を連結できることから施工時の外力に対しても、基本的にアンカー等の補助工法を必要としない。また、鋼製支持枠を変えるだけで、コンクリート製パネルは同一規格にて上流側、下流側とも所定の勾配に対応できる。」

(エ)232頁の「形状寸法」と題された図




上記図及び上記(ウ)から、砂防・治山ダム用ブロックにおいて、コンクリート製パネルと鋼製支持枠とを一体にし、該鋼製支持枠が、上下において水平方向に延びる棒状部材と、当該棒状部材のコンクリート製パネルが取り付けられる側と反対側において上下方向に延びる棒状部材と、水平方向に延びる上の棒状部材の一方側の端部と結合し、下の棒状部材の他方側の端部と結合する斜めの棒状部材とから構成されている点が看て取れる。

(オ)232頁の「製品」と題された写真




上記写真及び上記(ウ)から、砂防・治山ダム用ブロックにおいて、コンクリート製パネルと鋼製支持枠とを一体にし、該鋼製支持枠が、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右上下において水平方向に延びる4本の棒状部材と、当該4本の棒状部材のコンクリート製パネルが取り付けられる側と反対側で、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右において上下方向に延びる2本の棒状部材と、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右それぞれにおいて、前記4本の棒状部材のうち水平方向に延びる上の棒状部材の一方側の端部と結合し、下の棒状部材の他方側の端部と結合する斜めの棒状部材と、上下方向に延びる2本の棒状部材の下端同士を結合する水平の棒状部材とから構成されている点が看て取れる。

(カ)232頁の「施工中」と題された写真





(10)甲第10号証
ア 甲第10号証の記載事項
(ア)図面について
a 「図面番号」欄に「-170602000」との記載がある。
b 「尺度」欄に「1:25」との記載がある。
c 図面番号の左の欄に「ワイドウォール工法用ガーディアン」との記載がある。
d 「ファイル名」欄、「作成者」欄、「承認」欄が設けられているが、いずれも空欄となっている。
e 図面から、以下の点が看て取れる。
(a)対峙し、異なる勾配を有する前面パネル及び背面パネルを備える点。
(b)該両パネルを連結する連結部材を備え、該連結部材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる点。
(c)鉛直方向に互いに接するブロック体間において、下側のブロック体の上端部の前面パネルと背面パネルの間の幅を上側のブロック体の下端部の前面パネルと背面パネルの間の幅と等しくし、両方のパネルが上下方向に連続している点。
(d)鉛直方向に連設して互いに接するパネル間において、上側のブロック体の前面パネル及び背面パネルの下端部と下側のブロック体の前面パネル及び背面パネルの上端部とを連結する部材を備える点。

(イ)名刺(事務所・製造工場等の住所は省略)
a 日本工業規格表示認証工場 四万十コンクリート株式会社
代表取締役会長 矢野武志の名刺(以下、「名刺(ア)」という。)
「29.6.06」の日付印及び「来社」の手書き記載有り。
b 高岡コンクリート工業有限会社
代表取締役 矢野武志の名刺(以下、「名刺(イ)」という。)
「29.6.06」の日付印及び「ワイドの件で来社」の手書き記載有り。
c 法勾配控長自在耐震性大型ブロック「ガーディアン」製造販売
四万十コンクリート株式会社 代表取締役 矢野武志 YANO TAKESHI の名刺(以下、「名刺(ウ)」という。)
d 日本工業規格表示認証工場 四万十コンクリート株式会社
試験室主任(コンクリート技士) 高橋宏樹(TAKAHASHI HIROKI)の名刺(以下、「名刺(エ)」という。)
「29.6.06」の日付印有り。

(11)甲第11号証
ア 甲第11号証の記載事項
(ア)「◆はじめに
近年建設工事において施工体制も省力化且つ高齢化しつつある中、コンクリート二次製品もより軽量に、より安全作業が行われるよう改革していかなければ対応できない状況になりました。」(2頁「はじめに」の項)

(イ)「◆特徴
・控え幅を500以上自由に変更することが出来るため、安定幅を無駄なく選択することができ、専用の型枠が不要であるため、事前の作り置きができてコスト削減が計れます。
・擁壁タイプは等厚式、重力式、もたれ式等、どの様なタイプの積み方にも対応しています。
・法面勾配は組立専用台を使用し控え金具の取替えだけで底部が水平のまま直壁から1割勾配まで簡単に対応することが出来ます。
・・・
・専用の吊り金具を使用することにより、積み上げ作業は安全・迅速に行うことが出来ます。
・・・
・ブロック表面は自然環境に溶け込み易い擬石模様と自然石張りが選べます。
・中詰コンクリート内は鉄骨構造であるため、さらなる地震対策措置が可能となります。」(2頁「特徴」の項)

(ウ)写真または図面
a 3頁
(a) 「組立簡単」と題した写真
一つ目の写真には、「専用台で組立が簡単に行えます。」との記載がなされているとともに、下4つの写真に対してそれぞれ、「ステップ1 背面パネル設置」、「ステップ2 前面パネル設置」、「ステップ3 ボルト止め」及び「完成」との記載がなされている。(3頁の左側の「組立簡単」を説示する5つの写真。)

(b)「保管もコンパクト」と題した写真
上記写真には、パネルの外観を有する部材が段積みされている点が看て取れる。

(c)「軽量」と題した写真
上方の写真には、「小型クレーンでの施工が可能です。」との記載がなされているとともに、上方の写真において、対峙するパネルの間の空間に中詰コンクリートが打設されている点が看て取れ、また下方の写真において、切土法面が形成され、当該切土法面においてブロック体を連設する点が看て取れる。

b 4頁
(a)上方の右の写真




上記写真からは、ブロック体には、対峙するパネル間に空間を有している点、及び、ブロック体が自立する点が看て取れる。

(b)ガーディアンブロック擬石面500?3500型以上製品規格図(基本A型)




上記図(上方図及び下方右図)から、 ブロック体において、擬石面がある前面パネルと、水抜きパイプ差込穴が形成された擬石面がない背面パネルとが対峙し、対峙するパネル間に空間を有し、両パネルを連結する控え金具を備え、該控え金具は、上方の棒材及び下方の棒材並びに該上方の棒材の左側の端部と結合し、前記下方の棒材の右側の端部と結合する斜材からなる点が看て取れる。
また、図の下方には、「※中詰めコンクリートは1段ごとに投入し、ブロック天端より20cm程度打ち残して打設終了して下さい。(ただし、最上段は天端まで)」との記載がある。

c 6頁の図(積み上げ例)




「積み上げ例」として、当該ブロック体が種々の勾配で鉛直方向に連設されて構築された擁壁の断面を看て取れる。
また、いずれの積み上げ例においても擁壁を構成する各ブロックには、対峙する2つのパネルと、上方の棒材及び下方の棒材並びに該上方の棒材の左側の端部と結合し、前記下方の棒材の右側の端部と結合する斜材からなる点が看て取れる。
また、積み上げ例のうち「もたれ式」をみると、その右側には「表5分+裏1分」との記載がある。さらに、積み上げられたブロックの左側に「S=1:0.5」との記載があるとともに、右側に「1:0.1」との記載がある。

なお、上記図面中の「今まで↓」、「ワイドウォール工法」という文字は、申立人が記入したものであり、甲第11号証の記載事項の認定には考慮していない。

d 6頁の「展開図」から、ブロックAを、水平方向及び鉛直方向に連設することによって、擁壁を構築する点が看て取れる。

(エ)上記(ウ)a(a)における写真のうち、「ステップ2 前面パネル設置」と記載された写真を、「完成」と記載がなされた写真と併せてみれば、擬石面を有するパネルが前面パネルであり、これと対で設置されているパネルが背面パネルであるといえる。
また、上記の点を踏まえれば、(ウ)b(b)4頁の図(ガーディアンブロック擬石面500?3500型以上製品規格図)の基本A型において、擬石面があるパネルは、前面パネルであり、擬石面がないパネルは、背面パネルであるといえる。

(オ)上記(ウ)cの図において、「S=1:0.5」が5分の勾配を意味し、「1:0.1」が1分の勾配を意味することから、「もたれ式 表5分+裏1分」の積み上げ例の図において、左側が表側であり、右側が裏側であるといえる。また「もたれ」ている側が右側であることから、当該図において、切土法面もしくは盛土法面は右側に形成されるものといえ、技術常識を踏まえれば、左側に配置されたパネルが前面パネルであるといえる。

(カ)上記(ウ)b(a)及び(b)の写真及び図面をみると、上記上方の棒材及び下方の棒材、並びに、該上方の棒材の左側の端部と結合し、前記下方の棒材の右側の端部と結合する斜材により、控え金具の骨格が作られており、このような骨格は面を形成しているといえ、また、当該面は、幅方向に二つ存在しているといえる。

イ 甲第11号証に記載された発明
上記のアから、甲第11号証には以下の発明(以下、「甲11発明」及び「甲11の2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲11発明)
「水平方向及び鉛直方向に連設し、対峙する前面パネル及び水抜きパイプ差込穴が形成された背面パネルの間の空間に中詰コンクリートが打設されて、擁壁を構築するための自立するブロック体であって、対峙する前面パネル及び水抜きパイプ差込穴が形成された背面パネル、並びに、両パネルを連結する控え金具を備え、該控え金具は、上方の棒材及び下方の棒材並びに該上方の棒材の左側の端部と結合し、前記下方の棒材の右側の端部と結合する斜材により骨格が作られており、当該骨格は面を形成し、当該面が二つ存在しているブロック体。」
(甲11の2発明)
「切土法面が形成され、当該切土法面において、甲11発明に係るブロック体を、水平方向及び鉛直方向に連設し、対峙する前面パネル及び水抜きパイプ差込穴が形成された背面パネルの間の空間に中詰コンクリートが打設されて、擁壁を構築する方法。」

(12)甲第12号証
ア 甲第12号証の記載事項
(ア)「【0003】
ブロック積擁壁の構築に用いられる擁壁構築用ブロックとしては、多種多様の形状のものがある。
例えば、いわゆる箱型ブロックは、通常、前壁と後壁、及びこの前後の壁を連結する通常一対の控え壁を備えた構造をしており、安定的に積み上げることができる利点がある。
【0004】
そして、箱型ブロックを用いた擁壁の構築においては、通常、法面の前方に形成された基礎上に最下段のブロックを固定し、その上に順次ブロックを積み上げながら、法面とブロックとの間に裏込材(コンクリート等)を充填打設させていき、同時にブロックの前壁と後壁との間に中込めコンクリートを打設して全体を構築する。
しかし、このままでは、擁壁が背後から土圧を受け、箱型ブロックが前方へずれて崩れてしまう可能性がある。」

3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比・判断
本件発明1と甲11発明とを対比する。
甲11発明の「前面パネル」は、本件発明1の「壁材」に相当する。
また、甲11発明の「対峙する前面パネル及び水抜きパイプ差込穴が形成された背面パネル」における、「背面パネル」は、「前面パネル」と「対峙」しているのであるから、本件発明1における「該壁材に対峙し、横材と縦材とを備えたフレーム材」とは、「該壁材に対峙」した「部材」である点で共通する。
また、甲11発明の「両パネルを連結する控え金具を備え」は、本件発明1の該壁材と対峙した部材と「前記壁材とを連結する連結材と、を備え」に、相当する。

また、甲11発明における「水平方向及び鉛直方向に連設し」は、本件発明1の「水平方向若しくは鉛直方向に連設し」に相当し、
同様に、「対峙する前面パネル及び穴が形成された背面パネルの間の空間に中詰コンクリートが打設されて」は、「内包する空間に充填材を充填することによって」に相当する。

また、甲11発明のブロック体の構成要素である前面パネル及び背面パネルは、予め成型された部品であることは明らかであり、また、甲第11号証の写真(上記2(11)ア(ウ)で示した写真等)に記載された事項及び技術常識からみて、プレキャストコンクリートであるといえる。そうすると、甲11発明の「擁壁を構築するための自立するブロック体であって」は、本件発明1の「構造物を構築するための自立するプレキャストコンクリートのブロック体であって」に、相当する。

また、甲11発明の「上方の棒材及び下方の棒材並びに該上方の棒材の左側の端部と結合し、前記下方の棒材の右側の端部と結合する斜材により」作られる骨格が形成する面は、「安定した骨組み平面」であるといえるから、甲11発明の「該控え金具は、上方の棒材及び下方の棒材並びに該上方の棒材の左側の端部と結合し、前記下方の棒材の右側の端部と結合する斜材により骨格が作られており、当該骨格は面を形成し、当該面が二つ存在しているブロック体」は、本件発明1の「該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲11発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するための自立するプレキャストコンクリートのブロック体であって、
壁材と、
該壁材に対峙した部材と、
該壁材に対峙した部材と前記壁材とを連結する連結材と、
を備え、該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体。」

<相違点1>
壁材に対峙した部材について、本件発明1では、「横材と縦材とを備えたフレーム材」であるのに対して、甲11発明では、「水抜きパイプ差込穴が形成された背面パネル」である点。

上記相違点1について検討すると、本件発明1の「横材と縦材とを備えたフレーム材」は、甲11発明の「水抜きパイプ差込穴が形成された背面パネル」とは、構造上、明らかな差異があるものといえる。よって、相違点1は、実質的な相違点であるといえる。
したがって、本件発明1は、甲第11号証に記載された発明ではない。

イ 申立人の主張について
(ア)甲11発明における背面パネルは横材に相当する上部及び下部領域部分と、縦材に相当する左部及び右部領域部分を備えるものといえ、甲11発明には、「前面パネルと、該前面パネルに対峙し、上部及び下部領域部分と左部及び右部領域部分とを備えた背面パネルと、該背面パネルと前記前面パネルとを連結する控え金具と、を備え」ている点が記載されているから、訂正後の請求項1に係る発明も依然として甲11発明と同一であり、新規性を有していない。(意見書第3頁5行?第4頁16行)
しかしながら、
(ア)について。
甲第11号証の水抜きパイプ差込穴の径の大きさは、背面パネルの高さに対して4分の1にも満たないものであり、背面パネルの横幅に対しても同様の割合になるものと認められる(申立人は「背面パネルの高さの2割程度」としている)。また、当該穴の上部及び下部領域並びに左部及び右部領域に部材が存在するとしても、前記の割合程度の穴が形成された背面パネルにおいては、当該穴の上部及び下部領域を横材と評価することや、当該穴の左部及び右部領域を縦材と評価することができない。
そうすると、甲第11号証に記載された背面パネルについては、高さ及び横幅の寸法に比して小径の水抜きパイプ差込穴がほぼ中央部に形成されたパネルというのが自然であって、横材と縦材を備えたフレーム材ということはできない。
したがって、甲11発明の穴が形成された背面パネルは、本件発明1の横材と縦材とを備えたフレーム材に相当しないから、本件発明1は、甲第11号証に記載された発明ということはできない。
以上のとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第11号証に記載された発明ではないから、本件発明1に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由により取り消されるものではない。

エ 申立人の予備的主張について
申立人は、以下のとおり、進歩性に関しても予備的に主張している。
(イ)仮に、上記(ア)のとおりではないとしても、両者の相違点は貫通孔の大小に過ぎず、当業者は背面パネルの施工性改善や軽量化を図るため、貫通孔を大きくすることには容易に想到するから、訂正後の請求項1に係る発明は甲11発明に基づいて容易に想到することができるものであるため、進歩性を有していない。
(ウ)さらに、甲第9号証の232頁の写真(第4の2(9)ア(オ)参照)を見ると、前面パネルと対峙する山側の部材がフレーム状になっており、前面パネルと当該フレーム状部材とが連結材で連結されている点が看取できる(甲9発明)。そして、甲9発明のフレーム状部材は横材と縦材を備えており、本件特許発明のフレーム材に相当し、甲11発明の背面パネルを、甲9発明のフレーム状部材の構成の示唆を得てフレーム状とすることで、本件発明1に容易に想到するから、本件発明1は甲11発明及び甲9発明に基いて容易に想到することができるものであるため、進歩性を有していない旨、主張する。(意見書第4頁17行?第5頁14行)

しかしながら、
(イ)について。
甲11発明の穴は、上記のとおり、水抜きパイプを差し込むための穴であるから、施工性改善や軽量化をはかるためであるとしても、水抜きパイプの径の寸法に関連付けることなく穴の径を大きくすることはできないものであり、そして、甲第11号証には、水抜きパイプの径を大きくすることについての記載も示唆もないことから、背面パネルを、ほぼ中央部に形成された穴を大きくして、本件発明1のような横材と縦材とを備えたフレーム材であるようなものにすることが容易に想到できるということはできない。
(ウ)について。
甲第9号証をみると、砂防・治山ダム用ブロックにおいて、コンクリート製パネルと鋼製支持枠とを一体にし、該鋼製支持枠が、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右上下において水平方向に延びる4本の棒状部材と、当該4本の棒状部材のコンクリート製パネルが取り付けられる側と反対側で、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右において上下方向に延びる2本の棒状部材と、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右それぞれにおいて、前記4本の棒状部材のうち、水平方向に延びる上の棒状部材の一方側の端部と結合し、下の棒状部材の他方側の端部と結合する斜めの棒状部材と、上下方向に延びる2本の棒状部材の下端同士を結合する水平の棒状部材とから構成されている点が記載されている(上記第4の2(9)ア(エ)(オ))。
しかしながら、甲11発明の穴が形成された背面パネルは、上記(ア)で説示したとおり、高さ及び横幅の寸法に比して小径の穴がほぼ中央部に形成されたパネルと評価しうる構造であり、当該構造を横材と縦材とを備えたフレームの構造とする動機付けはないから、甲第9号証において、上記の構成の示唆がされているとしても、甲11発明の背面パネルを、「横材と縦材とを備えたフレーム材」にして、相違点1に係る本件発明1の構成に想到することはできない。

上記のとおりであるから、申立人の予備的主張を検討しても、甲11発明を主引用例として進歩性は欠如しているとはいえないので、本件発明1に係る特許は、取り消されるものではない。

(2)本件発明2について
ア 対比・判断
本件発明2と甲11の2発明とを対比すると、
甲11の2発明のうち甲11発明に係るブロック体との対比は、上記(1)で甲11発明について説示したとおりである。
甲11の2発明の「切土法面が形成され」は、本件発明2の「切土法面を形成する工程」に相当する。
また、甲11の2発明の「対峙する前面パネル及び水抜きパイプ差込穴が形成された背面パネルの間の空間に中詰コンクリートが打設」されることは、本件発明2の「前記ブロック体の内包空間」に「充填材を投入する工程」に相当する。
また、甲11の2発明の「擁壁を構築する方法」は、本件発明2の「構造物を構築する方法」に相当する。

そうすると、本件発明2と甲11の2発明とは、以下の点で相違する。

<相違点2>
壁材に対峙した部材について、本件発明2では、「横材と縦材とを備えたフレーム材」であるのに対して、甲11の2発明では、「水抜きパイプ差込穴が形成された背面パネル」である点。
<相違点3>
充填材を投入する工程において、本件発明2が、「前記ブロック体の内包空間及び該ブロック体の外側で切土法面、盛土法面若しくは型枠とに挟まれた空間に、一体的且つ同時に充填材を投入する」のに対して、甲11の2発明では、そのような特定がなされていない点。

上記相違点について検討する。
相違点2について。
相違点2は、上記相違点1と同じであるから、上記(1)で検討したことと同様に、相違点2は、実質的な相違点であるといえる。
そして、上記(1)エ(イ)及び(ウ)で予備的に検討した点及び、甲第12号証をみても、相違点2に係る本件発明2の「横材と縦材とを備えたフレーム材」という構成については記載も示唆もされていない点を踏まえると、甲11の2発明に、甲第12号証に記載の事項を適用したとしても、相違点2に係る本件発明2の構成に想到することはできない。
したがって、本件発明2は、相違点3について検討するまでもなく、甲11の2発明及び甲第12号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 申立人の主張について
申立人は、訂正事項2は「一体的且つ」と規定するのみであって、訂正前の請求項2に係る進歩性欠如の根拠となった甲11の2発明及び甲12発明の組み合わせのように、ブロック体内部と背面地山との間の複数箇所に同時に充填した場合も、一体的でないとまでは言えないから、訂正後の請求項2も依然として甲11の2発明及び甲第12号証に記載の事項の組み合わせにより容易に想到することができるものであるため、進歩性を有していない旨、主張している。(意見書5頁下から2行?6頁下から4行)
しかしながら、上記アにおいて説示したとおり、本件発明2の「横材と縦材とを備えたフレーム材」という構成は、甲第11号証及び甲第12号証のいずれにも記載も示唆もされていないのであるから、甲11の2発明に甲第12号証に記載の事項を組み合わせたとしても、本件発明2に想到することはできないことは明らかである。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明2は、甲11の2発明及び甲第12号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由により取り消されるものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、甲第11号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
また、請求項2に係る発明は、甲第11号証に記載された発明及び甲第12号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申し立て理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申し立て理由
(1)本件発明1?3は、甲1発明及び甲2発明、甲1発明及び甲3発明、甲1発明及び甲4発明、並びに、甲第6号証?甲第9号証及び甲第12号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?3に係る特許は、取り消されるべきものである。
(2)本件発明1?3は、甲5発明及び甲2発明、甲5発明及び甲3発明、甲5発明及び甲4発明、並びに、甲第6号証?甲第9号証及び甲第12号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?3に係る特許は、取り消されるべきものである。
(3)本件発明1?3は、特許出願前に日本国内又は外国において公然と知られた発明であり、また、甲第10号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第1号及び第3号の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?3に係る特許は、取り消されるべきものである。
(4)本件発明2?3は、甲第11号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2?3に係る特許は、取り消されるべきものである。
(5)本件発明1?3に係る特許請求の範囲の記載には、不備があり、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 進歩性欠如について(特許法第29条第2項)
(1)甲第1号証を主引用例とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、
a 甲1発明の「コンクリート製のベース型枠パネル2」または「コンクリート製の型枠パネル3」は、本件発明1の「壁材」に相当し、
甲1発明の「型枠パネル3’」と、本件発明1の「フレーム材」とは、「壁材に対峙した部材」という点で共通し、
甲1発明の「積み上げられ」ることは、本件発明1の「鉛直方向に連設し、」に相当する。

b 甲1発明の「ベース型枠パネル2と基礎1と型枠パネル3′との間にコンクリートが打設充填され」ること、及び「コンクリートが固化した後で、次の段の型枠パネル3及び型枠パネル3′が積み上げられ」たうえで「そしてコンクリートが打設され」ることは、本件発明1の「内包する空間に充填材を充填すること」に相当する。

c 甲1発明の「コンクリート擁壁を構築する、コンクリート擁壁構築方法で使用される、型枠パネル」である「ベース型枠パネル2」及び「型枠パネル3’」並びに、「型枠パネル3」及び「型枠パネル3’」と、本件発明1の「構造物を構築する自立するプレキャストコンクリートのブロック体」とは、構造物を構築するプレキャストコンクリート体である点で共通する。

d 甲1発明の「ベース型枠パネル2の傾斜部5と型枠パネル3’が対峙しており、また、ベース型枠パネル2に積み上げられるコンクリート製の型枠パネル3と前記型枠パネル3’に積み上げられる型枠パネル3’であって、型枠パネル3及び型枠パネル3’が対峙しており、ベース型枠パネル2の傾斜部5及び型枠パネル3の外壁面の勾配と、型枠パネル3’の外壁面の勾配とが異なっており、」において、傾斜部5と型枠パネル3’、及び、型枠パネル3及び型枠パネル3’は、いずれも対峙しているといえる。
そうすると、甲1発明の「傾斜部5」に対峙する「型枠パネル3’」、及び「型枠パネル3」に対峙した「型枠パネル3’」と、本件発明1の「壁材」に対峙した「横材と縦材とを備えたフレーム材」とは、「壁材に対峙した部材」という点で共通する。

そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するプレキャストコンクリート体であって、
壁材と、
該壁材に対峙した部材と、
を備えるプレキャストコンクリート体。

<相違点4>
構造物を構築するプレキャストコンクリート体について、本件発明1では、「自立するプレキャストコンクリートのブロック体」であって、「フレーム材と壁材とを連結する連結材」を備え、「該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体」であるのに対して、甲1発明では、そのような特定がなされていない点。

<相違点5>
壁材に対峙した部材について、本件発明1では、「横材と縦材とを備えたフレーム材」であるのに対して、甲1発明では、そのような特定がなされていない点。

(イ)判断
上記相違点について検討する。
a 相違点4について
甲1発明は、「アンカー12が埋め込み固定された基礎1上に、ベース型枠パネル2が固定設置され、ベース型枠パネル2の傾斜部5の裏側に連結金具6がボルト7によって固定され、この連結金具6とアンカー12に鉄筋10が溶接されるとともに、擁壁の裏側の型枠パネル3′が基礎1上に立設され、連結金具6がボルトによって型枠パネル3′に固定され、この連結金具6とアンカー12に鉄筋10が溶接され」、また、「次の段の型枠パネル3及び型枠パネル3′が連結金具6によって連結されて積み上げられ」るものである。すなわち、甲1発明は、擁壁の表側において、ベース型枠パネル2又は型枠パネル3が配置され、擁壁の裏側において型枠パネル3’が配置され、各型枠パネルが、連結金具6や鉄筋10を介してアンカー12に固定されるという型枠装置としたものである。
そして、このような「ベース型枠パネル」、「型枠パネル」、「連結金具」及び「鉄筋」からなる型枠装置としたことで、「構造が非常に簡単」という作用効果があるものである。(上記第4の2(1)ア(ウ)の段落【0005】参照。)
したがって、このような甲1発明において、各々配置されるベース型枠パネル2又は型枠パネル3及び型枠パネル3’を、あえて連結してブロック体とする動機付けはない。
ここで、甲第2号証?甲第4号証をみると、いずれにも、壁材及び壁材に対峙した部材を連結する連結材を備え、該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体とする構成が記載されているが、上記のとおり、甲1発明において、ベース型枠パネル2又は型枠パネル3及び型枠パネル3’を連結して各ブロック体とする動機付けはないのであるから、甲1発明に甲第2号証ないし甲第4号証に記載の発明を適用して、相違点4に係る本件発明1の構成とすることはできない。
また、甲第6号証?甲第9号証(第4の2(6)?(9)参照)には、ブロックの製品の前面と後面のコンクリートを鉄骨でつなぐ特殊構造(甲第6号証)、擁壁用ブロック110と後壁板111の間に方形連結支構枠体112を介在させたもの(甲第7号証)、第1前壁37aと、その内方側の中央に接続された控壁38aと、控壁38aに接続され、第1前壁37aと略平行に設置される平板状の第1後壁39aとからなる第1コンクリートブロック22a(甲第8号証)等の、コンクリートブロックと前方の部材と後方の部材とを連結する構造、及び、砂防・治山ダム用ブロックにおいて、コンクリート製パネルと鋼製支持枠とを一体にし、該鋼製支持枠が、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右上下において水平方向に延びる4本の棒状部材と、コンクリート製パネルが取り付けられる側と反対側で、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右において上下方向に延びる2本の棒状部材と、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右それぞれにおいて、水平方向に延びる上の棒状部材の一方側の端部と結合し、下の棒状部材の他方側の端部と結合する斜めの棒状部材と、上下方向に延びる2本の棒状部材の下端同士を結合する水平の棒状部材とから構成されている点(甲第9号証)が記載されている。
しかしながら、上記のとおり、甲1発明には、ベース型枠パネル2又は型枠パネル3及び型枠パネル3’を連結して各ブロック体とする動機付けはないから、たとえ甲第6号証ないし甲第9号証に記載される個々の内容が周知技術あるいは公知の技術であったとしても、当該周知技術あるいは公知の技術を適用して相違点4に係る本件発明1の構成とすることはできない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、甲1発明?甲4発明はいずれもブロック積みを利用した擁壁等の土木構造物の築造に関するものであるから、技術分野が共通しているため、甲2発明?甲4発明の各々を甲1発明に適用することは、当業者において容易に想到し得るものである旨主張する。(申立書19頁28行?20頁2行)
しかしながら、上記のとおり、甲1発明には、ベース型枠パネル2又は型枠パネル3及び型枠パネル3’を連結して各ブロック体とする動機付けはないのであるから、甲1発明に、甲第2号証?甲第4号証に記載された発明を適用して、相違点4に係る本件発明1の構成とすることはできない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明、並びに、甲第6号証?甲第9号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含み更に減縮した発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2は、甲1発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明、並びに、甲第6号証?甲第9号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

ウ 本件発明3について
本件発明3と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点4で相違する。そして、相違点4は、上記ア(イ)で検討したとおりである。
したがって、本件発明3は、甲1発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明、並びに、甲第6号証?甲第9号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(3)甲第5号証を主引用例とした進歩性欠如について(特許法第29条第2項)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲5発明とを対比すると、
a 甲5発明の「複数個、順次上下に積重ねるとともに、横方向にも連結し、」は、本件発明1の「水平方向若しくは鉛直方向に連設し、」に相当し、以下同様に、
「内部に充填した中詰材3により一体化することにより」は、「内包する空間に充填材を充填することによって」に、
「擁壁を構成する自立するプレキヤスト鉄筋コンクリート中空箱状ブロツク2a,2b,2c,2dであり」は、「構造物を構築する自立するプレキャストコンクリートのブロツク体であって」にそれぞれ相当する。

b 甲5発明の「前面板4と後面板4’」は、対設しているから、甲5発明の、「前面板4」と、これに対設している「後面板4’」と、本件発明1の「壁材」と、「該壁材に対峙」した「フレーム材」とは、「壁材」と、「該壁材に対峙」した「部材」である点で共通する。

c 甲5発明の「前後面板4,4’間」に一体に設け、又は一体に配置した「左右側板5,5’」及び「補強板8」は、前後面板4,4’を連結する部材であるといえるから、甲5発明の「前後面板4,4’間」に「左右側板5,5’を一体に設け」又は「補強板8を一体に配置し」た点と、本件発明1の「該フレーム材と前記壁材とを連結する連結材」を設けた点とは、壁材に対峙した部材と「前記壁材とを連結する連結材」を設けた点で共通する。

そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するための自立するプレキャストコンクリートのブロック体であって、
壁材と、
該壁材に対峙した部材と、
該壁材に対峙した部材と前記壁材とを連結する連結材と、
を備えるブロック体。

<相違点6>
壁材に対峙した部材と壁材とを連結する連結材について、本件発明1では、「上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成する」ものであるのに対して、甲5発明では、上端に凸部6、下端に凹部7が形成された両側板5,5’であって、所要位置に複数個の透孔11があけられており、相接する側板5,5’の透孔11,11に楔ボルト12を挿通し、この楔穴13に楔14を打込むことにより両側板5,5’相互が連結されるもの、及び側板5,5’と同様に凸部9および凹部10を設けている補強板8である点。

<相違点7>
壁材に対峙した部材について、本件発明1では、「横材と縦材とを備えたフレーム材」であるのに対して、甲5発明では、そのような特定がなされていない点。

(イ)判断
上記相違点6について検討する。
甲第2号証?甲第4号証をみると、いずれにも、壁材に対峙した部材及び壁材を連結する連結材を備え、該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体とする構成が記載されている。
しかしながら、甲5発明のプレキヤスト鉄筋コンクリート中空箱状ブロック2a,2b,2c,2dにおいて、「左右側板5,5’」及び「補強板8」は、いずれも凸部と凹部を有しており、下のブロックの凸部と上のブロックの凹部とが密に噛み合う機能を有するところ、このような機能を無視して「左右側板5,5’」及び「補強板8」を上弦材・下弦材及び斜材からなる連結材に変更する動機付けはない。
また、甲5発明の左右側板5,5’に、上記連結材を適用しようとしても、左右側板5,5’には、連結するための複数個の透孔11があけられており、相接する側板5,5’は、透孔11,11に楔ボルト12を挿通し、この楔穴13に楔14を打込むことにより両側板5,5’は、相互に連結されて、横方向に隣接する各中空箱状ブロック2a,2b,2c,2dを連結するためのものであるから、当該両側板5,5’を上記連結材にすると、連結機能が失われてしまう。したがって、甲5発明の左右側板5,5’に上記連結材を適用することに阻害要因があるというべきである。
したがって、甲5発明に甲第2号証ないし甲第4号証に記載の発明を適用して、相違点6に係る本件発明1の構成とすることはできない。
また、甲第6号証?甲第9号証(第4の2(6)?(9)参照)には、ブロックの製品の前面と後面のコンクリートを鉄骨でつなぐ特殊構造(甲第6号証)、擁壁用ブロック110と後壁板111の間に方形連結支構枠体112を介在させたもの(甲第7号証)、第1前壁37aと、その内方側の中央に接続された控壁38aと、控壁38aに接続され、第1前壁37aと略平行に設置される平板状の第1後壁39aとからなる第1コンクリートブロック22a(甲第8号証)等の、コンクリートブロックと前方の部材と後方の部材とを連結する構造、及び、砂防・治山ダム用ブロックにおいて、コンクリート製パネルと鋼製支持枠とを一体にし、該鋼製支持枠が、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右上下において水平方向に延びる4本の棒状部材と、コンクリート製パネルが取り付けられる側と反対側で、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右において上下方向に延びる2本の棒状部材と、コンクリート製パネルの裏面側に向かって左右それぞれにおいて、水平方向に延びる上の棒状部材の一方側の端部と結合し、下の棒状部材の他方側の端部と結合する斜めの棒状部材と、上下方向に延びる2本の棒状部材の下端同士を結合する水平の棒状部材とから構成されている点(甲第9号証)が記載されている。
しかしながら、上記のとおり、甲5発明の左右側板5,5’及び補強板8を変更する動機付けはなく、また、阻害要因があるから、甲5発明に、甲第6号証?甲第9号証に記載される周知技術を適用して相違点6に係る本件発明1の構成とすることはできない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、甲2発明?甲5発明はいずれもブロック積みを利用した擁壁等の土木構造物の築造に関するものであるから、技術分野が共通しているため、甲2発明?甲4発明の各々を甲5発明に適用することは、当業者において容易に想到し得るものである旨主張している。(申立書21頁26行?22頁3行)
しかしながら、上記(イ)のとおり、甲5発明の左右側板5,5’及び補強板8に、甲2号証?甲4号証に記載された連結部材を適用する動機付けはなく、また、甲5発明の左右側板の構造を変更することに阻害要因があることから、甲5発明に、甲第2号証?甲第4号証に記載された発明を適用して、相違点6に係る本件発明1の構成とすることはできない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲5発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明、並びに、甲第6号証?甲第9号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含み更に減縮した発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2は、甲5発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明、並びに、甲第6号証?甲第9号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

ウ 本件発明3について
本件発明3と甲5発明とを対比すると、少なくとも相違点6で相違する。そして、相違点6は、上記ア(イ)で検討したとおりである。
したがって、本件発明3は、甲5発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明、並びに、甲第6号証?甲第9号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

3 新規性欠如について(特許法第29条第1項第1号及び第3号)
(1)甲第10号証に基づく新規性欠如(同法第1項第1号及び第3号)
ア 甲第10号証の図面の公知となった日及び頒布日について
(ア)図面の表示について
甲第10号証の図面番号の欄に、記号及び数字からなる「-170602000」という記載は存在するが、当該記載が2017年6月2日という年月日を意味するとともに、図面の作成日を意味すると理解することができる表示はない。また、仮に当該記載が同図面の作成日を示すとしても、当該図面がいつ公知となったかを示す表示は同図面中に存在しない。

(イ)図面の手渡しがなされた日について
甲第10号証の図面と共に提出された名刺(ア)?(エ)のうち、名刺(ア)、(イ)及び(エ)には、「29.6.06」との日付印が押されているが、このような日付印は任意の日付で押印可能である一方、当該日付印が表示の日付に押された証拠はない。またこれらの名刺に表示された日付の日に、甲第10号証の図面が公知となったとの証拠もない。

(ウ)まとめ
上記のとおり、甲第10号証の図面の作成日が特定できないうえに、図面の手渡しがなされた日が何ら立証されていないことから、甲10号証の図面の内容が、本件特許の出願前において公知となった、または、甲10号証の図面の頒布が本件特許の出願前になされたとはいえない。

イ 検討1
上記アのとおり、甲10号証の図面の内容が本件特許の出願前において公知となった、または、甲10号証の図面の頒布日が本件特許の出願前であったと特定されない以上、本件発明1?3が、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然と知られた発明であるとも、また本件特許の出願前に頒布された甲第10号証の図面に記載された発明であるともいえない。

ウ 検討2
(ア)本件発明1について
仮に、上記図面が手渡しされたときに、上記名刺が渡され、名刺(ア)、(イ)及び(エ)に記載された「29.6.06」が、図面が手渡しされた日付、すなわち、平成29年6月6日であり、そして、当該図面の内容が公知となり、あるいは、当該図面が頒布されたものであるとして、予備的に検討しても、少なくとも、甲第10号証の図面には、本件発明1の以下の構成a?cが記載されていない。

a 「上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面」が複数面形成されている点。
b 内包する空間に充填材を充填する点。
c プレキャストコンクリートが用いられている点。

上記のとおり、甲第10号証の図面には、上記a?cの点が記載されておらず、また上記a?cの点を備えることが自明であるともいえないから、仮に甲第10号証の図面が本件特許の出願前に頒布され、あるいはその内容が公知となっていたとしても、本件発明1は、特許出願前に日本国内又は外国において公然と知られた発明ではなく、また、甲第10号証に記載された発明でもないので、その特許は、特許法第29条第1項第1号及び第3号の規定に違反してされたものではない。

(イ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含みさらに減縮した発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、その特許は、特許法第29条第1項第1号及び第3号の規定に違反してされたものではない。

(ウ)本件発明3について
上記(ア)と同様に、予備的に検討しても、甲第10号証の図面には、上記a?cの点が記載されておらず、また上記a?cの点を備えることが自明であるともいえないから、本件発明3は、特許出願前に日本国内又は外国において公然と知られた発明ではなく、また、甲第10号証に記載された発明でもないので、その特許は、特許法第29条第1項第1号及び第3号の規定に違反してされたものではない。

(2)甲第11号証に基づく新規性欠如(同法第1項第3号)
ア 本件発明2について
上記第4(「取消理由通知に記載した取消理由について」)の3(2)で検討したように、本件発明2と甲11の2発明とを対比すると、両者は、相違点2及び3において相違し、そのうち相違点2は、実質的な相違点であるから、本件発明2は、甲第11号証に記載された発明ではない。

イ 本件発明3について
上記第4(「取消理由通知に記載した取消理由について」)の3(1)で検討したように、甲第11号証には、「水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するための自立するプレキャストコンクリートのブロック体であって、壁材及び壁材に対峙した部材並びに該両材を連結する連結材を備え、該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体」に相当する構成は記載されているが、「複数の対とし、外側に壁材、内側にフレーム材を配して連設する工程と、前記ブロック体の内包空間及び該ブロック体の外側で対峙するブロック体とに挟まれた空間に同時に充填材を投入する工程」を備えた点が記載されておらず、また前記の点を備えることが自明であるともいえないから、本件発明3は、甲第11号証に記載された発明ではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、本件発明3について、ブロック体を複数の対とし、外側に壁材、内側にフレーム材を配して連設し、構造物、コンクリート擁壁を構築することは甲第9号証に示すとおり一般的に行われており、また、ブロック体の内方空間と隣接するブロック体同士に挟まれた空間との、複数箇所に同時に充填材を投入する方法は、本件特許の審査過程でも判断されたように、甲12発明にも記載された周知技術であるから、本件発明3は、訂正前、訂正後のいずれのものであっても甲11発明に周知技術を付加したのみであり、当業者が容易に想到することができ進歩性を有していない、と主張する。(意見書6頁下から3行?7頁11行)
しかしながら、本件発明3の、構造物を構築する方法におけるブロック体を「複数の対とし、外側に壁材、内側にフレーム材を配して連設する工程と、前記ブロック体の内包空間及び該ブロック体の外側で対峙するブロック体とに挟まれた空間に同時に充填材を投入する工程」を備える点は、甲第9号証及び甲第12号証を含め、申立人が提出したいずれの証拠にも記載も示唆もされていない。したがって、甲11発明に申立人が提出した証拠に記載の技術を適用しても、当業者が容易に想到することができたということはできない。
以上のとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。

エ まとめ
以上のとおり、本件発明2及び本件発明3は、甲第11号証に記載された発明ではないので、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
なお、上記のとおり、申立人の主張を踏まえても、本件発明3は、甲11発明に基いて容易に発明をすることができたということはできない。

4 記載要件について(特許法第36条第6項第2号)
申立人は、(1)本件特許発明1に含まれる「安定した」とは、何を以って安定とし、または安定でないとするかその基準が不明瞭であり、また「安定した骨組み平面を複数面」とは、複数面の骨組み平面を構成することで安定するのか、単数でも安定している骨組み平面が複数個存在するかいずれの意味であるか不明であり、さらに、側面視以外の方向から見た場合に上弦材、下弦材及び斜材がZ字型を構成する場合に、これが「骨組み平面」の「複数面」のうちに数えられるのかが不明である旨主張し、(2)また、本件特許発明1には、「上弦材」及び「下弦材」の形状等の構成について何ら規定されていないため、「該上弦材の一方側の端部」や「前記下弦材の他方側の端部」は何を指すのかが不明確であり、これらを連結する斜材についても同様に不明確である旨主張している。(申立書第26頁6行?第27頁24行)

しかしながら、特許請求の範囲の記載は以下のとおり明確である。
(1)について
請求項1には、「・・・連結材と、を備え、該連結材は上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体。」と記載されており、上記箇所において、「安定した骨組み平面」というものは、「上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる」ものであると明確に規定されている。つまり、「上弦材」、「下弦材」及び「斜材」という部材が前記のとおりに結合されていることで「骨組み平面」が安定して構成されていることと理解することができる。したがって、「安定した骨組み平面」の内容は、請求項1に係る発明のブロック体において明らかである。
また、請求項1の「安定した骨組み平面を複数面形成する」との記載から、「骨組み平面」は複数あることを意味していることは明らかである。
(2)について
請求項1に記載のとおり、上弦材及び下弦材は、対峙したフレーム材と壁材とを連結する連結材を構成する部材であり、上弦材及び下弦材のいずれもが、フレーム材と壁材との間に配置された長さを有した部材であることは明らかである。
また、長さを有した弦状の部材のいずれか一方の端の部分を「一方側の端部」と称し、一方の側とは反対側の端の部分を「他方側の端部」と称することは一般的に行われていることである。
そうすると、フレーム材と壁材の間に配置されている長さを有した弦状の部材である上弦材及び下弦材において、「該上弦材の一方側の端部」及び「前記下弦材の他方側の端部」がさす内容は明確である。

以上のとおりであるから、申立人の上記主張を採用することはできない。

したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するための自立するプレキャストコンクリートのブロック体であって、
壁材と、
該壁材に対峙し、横材と縦材とを備えたフレーム材と、
該フレーム材と前記壁材とを連結する連結材と、
を備え、該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体。
【請求項2】
切土法面若しくは盛土法面を形成する工程若しくは型枠を設置する工程と、
水平方向若しくは鉛直方向に請求項1のブロック体を連設する工程と、
前記ブロック体の内包空間及び該ブロック体の外側で切土法面、盛土法面若しくは型枠とに挟まれた空間に、一体的且つ同時に充填材を投入する工程と、
を備えた構造物を構築する方法。
【請求項3】
水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するための自立するプレキャストコンクリートのブロック体であって、対峙する壁材及びフレーム材並びに該両材を連結する連結材を備え、該連結材は、上弦材及び下弦材並びに該上弦材の一方側の端部と結合し、前記下弦材の他方側の端部と結合する斜材からなる安定した骨組み平面を複数面形成するブロック体を、複数の対とし、外側に壁材、内側にフレーム材を配して連設する工程と、
前記ブロック体の内包空間及び該ブロック体の外側で対峙するブロック体とに挟まれた空間に同時に充填材を投入する工程と、
を備えた構造物を構築する方法。
【図面】











 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-08-05 
出願番号 特願2017-236715(P2017-236715)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (E02D)
P 1 651・ 111- YAA (E02D)
P 1 651・ 537- YAA (E02D)
P 1 651・ 113- YAA (E02D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐々木 創太郎  
特許庁審判長 秋田 将行
特許庁審判官 西田 秀彦
有家 秀郎
登録日 2018-06-29 
登録番号 特許第6359750号(P6359750)
権利者 四万十コンクリート株式会社
発明の名称 擁壁用積ブロック  
代理人 葛西 さやか  
代理人 山本 直樹  
代理人 山本 英明  
代理人 栗本 博樹  
代理人 栗本 博樹  
代理人 葛西 泰二  
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