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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H05B 審判 全部申し立て 特174条1項 H05B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H05B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H05B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H05B |
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管理番号 | 1355940 |
異議申立番号 | 異議2018-700553 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-07-10 |
確定日 | 2019-08-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6256630号発明「発光素子および該発光素子に用いる組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6256630号の特許請求の範囲を、令和元年5月6日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、〔10、11〕について訂正することを認める。 特許第6256630号の請求項1-5、7-11に係る特許を維持する。 特許第6256630号の請求項6についての異議申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6256630号の請求項1?11に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)4月24日を国際出願日とする出願であって、平成29年12月15日にその特許権の設定登録がされ、平成30年1月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年7月10日に特許異議申立人森川真帆(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 そして、平成30年10月11日付けで取消理由が通知され、同年12月14日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して異議申立人から平成31年2月12日に意見書が提出され、さらに、平成31年2月27日付けで取消理由<決定の予告>が通知され、令和元年5月6日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)があり、その本件訂正請求に対して異議申立人から同年6月24日に意見書が提出されたものである。 なお、平成30年12月14日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の趣旨 本件訂正の請求の趣旨は、「特許第6256630号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?11に訂正することを求める。」というものである。 2 請求項1?9に係る訂正 (1)訂正の内容 本件訂正による請求項1?9に係る訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。以下同様である。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「ハロゲン原子」と記載されているのを、「フッ素原子」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5、7?9も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「典型元素から構成される複素環式化合物(B)」と記載されているのを、「典型元素から構成されており、式(B)で表される複素環式化合物(B)」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5、7?9も同様に訂正する。)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「A^(1)-G^(1)-A^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]」と記載されているのを、 「A^(1)-G^(1)-A^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化12】 [式中、 n^(B1)は、1以上の整数を表す。 Ar^(B1)は、芳香族複素環基を表し、この基は置換基を有していてもよい。 Ar^(B2)は、式(D-A)、(D-B)または(D-C)で表される基を表す。Ar^(B2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化13】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)およびm^(DA3)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化14】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)、m^(DA3)、m^(DA4)、m^(DA5)、m^(DA6)およびm^(DA7)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるG^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化15】 [式中、 m^(DA1)は、0以上の整数を表す。 Ar^(DA1)は、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5、7?9も同様に訂正する。)。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「式(M1-1)および式(M2-1)を満たす、発光素子。」と記載されているのを、 「式(M1-1)および式(M2-1)を満たし、 前記MAが900以上4000以下、前記MBが700以上3000以下である、発光素子。」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5、7?9も同様に訂正する。)。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1に 「2700≦MA+MB≦10000 (M1-1)」 と記載されているのを、 「2700≦MA+MB≦7000 (M1-1)」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5、7?9も同様に訂正する。)。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項1に「n^(1)は1以上の整数を表し、」と記載されているのを、「n^(1)は2または3を表し、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5、7?9も同様に訂正する。)。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項1に「環R^(1)は、芳香族複素環を表し」と記載されているのを、「環R^(1)は、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環を表し」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5、7?9も同様に訂正する。)。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項1に「環R^(1)において、芳香族複素環が有していてもよい置換基」と記載されているのを、「環R^(1)において、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5、7?9も同様に訂正する。)。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項1に「環R^(2)は、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表し、」と記載されているのを、「環R^(2)は、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環を表し、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5、7?9も同様に訂正する。)。 コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項1に「環R^(2)において、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が有していてもよい置換基」と記載されているのを、「環R^(2)において、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5、7?9も同様に訂正する。)。 サ 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項5に、「ハロゲン原子」と記載されているのを、「フッ素原子」と訂正する(請求項5の記載を引用する請求項7?9も同様に訂正する。)。 シ 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 ス 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1?6のいずれか一項」と記載されているのを、「請求項1?5のいずれか一項」と訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8、9も同様に訂正する。)。 本件訂正請求のうちの訂正事項1?13は、一群の請求項〔1-9〕に対して請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否 ア 訂正事項1及び訂正事項11 訂正事項1及び訂正事項11による訂正は、本件訂正前の請求項1又は請求項6に記載された発明における「ハロゲン原子」を「フッ素原子」に減縮するものである。 したがって、訂正事項1及び訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 訂正事項2及び訂正事項3 訂正事項2及び訂正事項3による訂正は、「式(B)」の構造式を特定するとともに、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「典型元素から構成される複素環式化合物(B)」について、「式(B)で表される複素環式化合物(B)」に減縮するものである。 したがって、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 ウ 訂正事項4 訂正事項4による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「イリジウム錯体(A)の分子量(MA)」及び「複素環式化合物(B)の分子量(MB)」について、その数値範囲をそれぞれ、「MAが900以上4000以下」、「MBが700以上300以下」に減縮するものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 エ 訂正事項5 訂正事項5による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「MA+MB」の範囲を、「≦10000」から「≦7000」へと減縮するものである。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 オ 訂正事項6 訂正事項6による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「式(A)」について、「n^(1)」の範囲を、「1以上の整数」から「2または3」へと減縮するものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 カ 訂正事項7及び訂正事項8 訂正事項7及び訂正事項8による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「環R^(1)」が表す「芳香族複素環」について、「5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環」に減縮するものである。 したがって、訂正事項7及び訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 キ 訂正事項9及び訂正事項10 訂正事項9及び訂正事項10による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「環R^(2)」が表す「芳香族炭化水素環または芳香族複素環」について、「5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環」に減縮するものである。 したがって、訂正事項9及び訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 ク 訂正事項12 訂正事項12による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 ケ 訂正事項13 訂正事項13による訂正は、訂正事項12により特許請求の範囲の請求項6が削除されたことによって生じた、訂正により削除された請求項6を引用しているという不明瞭な状態を、解消させることを目的とした訂正であると解することができる。 したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。 (3)新規事項の有無 ア 訂正事項1、11 本件特許の明細書段落【0029】には、「「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。」と記載されている。そうすると、訂正事項1、11による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 イ 訂正事項2、3 本件特許の明細書段落【0011】には、「[7]前記複素環式化合物(B)が、式(B)で表される複素環式化合物である、[1]?[6]のいずれかに記載の発光素子。 【化6】 [式中、 n^(B1)は、1以上の整数を表す。 Ar^(B1)は、複素環基を表し、この基は置換基を有していてもよい。 Ar^(B2)は、式(D-A)、(D-B)または(D-C)で表される基を表す。Ar^(B2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化7】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)およびm^(DA3)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化8】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)、m^(DA3)、m^(DA4)、m^(DA5)、m^(DA6)およびm^(DA7)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるG^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化9】 [式中、 m^(DA1)は、0以上の整数を表す。 Ar^(DA1)は、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]」と記載されている。また、段落【0176】には、「Ar^(B1)は、芳香族複素環基であることが好ましく、この芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、複素環式化合物(B)が、式(B)で表される複素環式化合物であることが記載されていたといえる。そうすると、訂正事項2、3による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 ウ 訂正事項4 本件特許の明細書段落【0194】には「イリジウム錯体(A)の分子量(MA)は、本発明の発光素子の外部量子効率がより優れるので、好ましくは900以上4000以下であり、より好ましくは1200以上4000以下であり、更に好ましくは1600以上4000以下であり、特に好ましくは1600以上3000以下である。」と記載されており、段落【0195】には「複素環式化合物(B)の分子量(MB)は、本発明の発光素子の外部量子効率がより優れるので、好ましくは700以上3000以下であり、より好ましくは1500以上3000以下であり、更に好ましくは2000以上3000以下である。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、イリジウム錯体(A)の分子量(MA)を900以上4000以下とし、複素環式化合物(B)の分子量(MB)を700以上3000以下とすることが記載されていたといえる。そうすると、訂正事項4による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 エ 訂正事項5 本件特許の明細書段落【0196】には、「イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)との合計(MA+MB)は、本発明の発光素子の外部量子効率がより優れるので、好ましくは7000以下であり、より好ましくは6000以下である。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)との合計(MA+MB)を7000以下とすることが記載されていたといえる。そうすると、訂正事項5による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 オ 訂正事項6 本件特許の明細書段落【0064】には、式(A)で表されるイリジウム錯体の添え字n^(1)でその数を規定されている配位子について、「n^(1)は2または3であることが好ましく、3であることがより好ましい。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、n^(1)について「2または3」とすることが記載されていたといえる。そうすると、訂正事項6による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 カ 訂正事項7、8 本件特許の明細書段落【0066】には、「環R^(1)は、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環であることが好ましく、2つ以上4つ以下の窒素原子を構成原子として有する5員の芳香族複素環または1つ以上4つ以下の窒素原子を構成原子として有する6員の芳香族複素環であることが好ましく、ジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ジアザベンゼン環、キノリン環またはイソキノリン環であることがより好ましく、これらの環は置換基を有していてもよい。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、環R^(1)の芳香族複素環について、「5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環」とすることが記載されていたといえる。そうすると、記載事項7、8による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 キ 訂正事項9、10 本件特許の明細書段落【0067】には、「環R^(2)は、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環、または、5員もしくは6員の芳香族複素環であることが好ましく、6員の芳香族炭化水素環または6員の芳香族複素環であることがより好ましく、6員の芳香族炭化水素環であることが更に好ましく、これらの環は置換基を有していてもよい。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、環R^(2)の芳香族炭化水素環及び芳香族複素環について、「5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環」とすることが記載されていたといえる。そうすると、記載事項9、10による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 ク 訂正事項12 訂正事項12による訂正は、請求項6を削除するものであるから、訂正事項12による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは、明らかである。 ケ 訂正事項13 訂正事項13による訂正は、訂正事項12による訂正と整合するように、請求項7が引用する請求項を改めたものであるから、訂正事項13による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは、明らかである。 (4)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1、11 訂正事項1、11による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、5に係る発明の「ハロゲン原子」を「フッ素原子」に減縮するものであるから、訂正事項1、11による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項2、3 訂正事項2、3による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における「典型元素から構成される複素環式化合物(B)」を、「式(B)で表される複素環式化合物(B)」に減縮するものであるから、訂正事項2、3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項4、5 訂正事項4、5による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における「MA」、「MB]、「MA+MB」の範囲を減縮するものである。したがって、訂正事項4、5による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項6?10 訂正事項6による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における式(A)で表されるイリジウム錯体(A)について、「n^(1)」を「2または3」に減縮するものであり、訂正事項7、8による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における式(A)で表されるイリジウム錯体(A)について、「環R^(1)」が表す「芳香族複素環」を「5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環」に減縮するものであり、訂正事項9、10による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における式(A)で表されるイリジウム錯体(A)について、「環R^(2)」が表す「芳香族炭化水素環」を「5員もしくは6員の芳香族炭化水素環」に減縮し、「芳香族複素環」を「5員もしくは6員の芳香族複素環」に減縮するものである。したがって、訂正事項6?10による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項12 訂正事項12による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ 訂正事項13 訂正事項13による訂正は、訂正事項12による訂正と整合するように、請求項7の記載を改めたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (5)小括 以上のとおりであるから、本件訂正による請求項1?9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3 請求項10、11に係る訂正 (1)訂正の内容 本件訂正による請求項10、11に係る訂正の内容は、以下のとおりである。 ア 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項10に「ハロゲン原子」と記載されているのを、「フッ素原子」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項10に「典型元素から構成される複素環式化合物(B)」と記載されているのを、「典型元素から構成されており、式(B)で表される複素環式化合物(B)」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 ウ 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項10に「A^(1)-G^(1)-A^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]」と記載されているのを、 「A^(1)-G^(1)-A^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化16】 [式中、 n^(B1)は、1以上の整数を表す。 Ar^(B1)は、芳香族複素環基を表し、この基は置換基を有していてもよい。 Ar^(B2)は、式(D-A)、(D-B)または(D-C)で表される基を表す。Ar^(B2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化17】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)およびm^(DA3)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化18】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)、m^(DA3)、m^(DA4)、m^(DA5)、m^(DA6)およびm^(DA7)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるG^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化19】 [式中、 m^(DA1)は、0以上の整数を表す。 Ar^(DA1)は、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 エ 訂正事項17 特許請求の範囲の請求項10に「式(M1-1)および式(M2-1)を満たす、組成物。」と記載されているのを、「式(M1-1)および式(M2-1)を満たし、前記MAが900以上4000以下、前記MBが700以上3000以下である、組成物。」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 オ 訂正事項18 特許請求の範囲の請求項10に 「2700≦MA+MB≦10000 (M1-1)」 と記載されているのを、 「2700≦MA+MB≦7000 (M1-1)」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 カ 訂正事項19 特許請求の範囲の請求項10に「n^(1)は1以上の整数を表し、」と記載されているのを、「n^(1)は2または3を表し、」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 キ 訂正事項20 特許請求の範囲の請求項10に「環R^(1)は、芳香族複素環を表し」と記載されているのを、「環R^(1)は、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環を表し」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 ク 訂正事項21 特許請求の範囲の請求項10に「環R^(1)において、芳香族複素環が有していてもよい置換基」と記載されているのを、「環R^(1)において、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 ケ 訂正事項22 特許請求の範囲の請求項10に「環R^(2)は、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表し、」と記載されているのを、「環R^(2)は、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環を表し、」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 コ 訂正事項23 特許請求の範囲の請求項10に「環R^(2)において、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が有していてもよい置換基」と記載されているのを、「環R^(2)において、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 本件訂正請求のうちの訂正事項14?23は、一群の請求項〔1-9〕に対して請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否 ア 訂正事項14 訂正事項14による訂正は、本件訂正前の請求項10に記載された発明における「ハロゲン原子」を「フッ素原子」に減縮するものである。 したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 訂正事項15及び訂正事項16 訂正事項15及び訂正事項16による訂正は、「式(B)」の構造式を特定するとともに、本件訂正前の請求項10に記載された発明における「典型元素から構成される複素環式化合物(B)」について、「式(B)で表される複素環式化合物(B)」に減縮するものである。 したがって、訂正事項15及び訂正事項16は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 ウ 訂正事項17 訂正事項17による訂正は、本件訂正前の請求項10に記載された発明における「イリジウム錯体(A)の分子量(MA)」及び「複素環式化合物(B)の分子量(MB)」について、その数値範囲をそれぞれ、「MAが900以上4000以下」、「MBが700以上300以下」に減縮するものである。 したがって、訂正事項17は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 エ 訂正事項18 訂正事項18による訂正は、本件訂正前の請求項10に記載された発明における「MA+MB」の範囲を、「≦10000」から「≦7000」へと減縮するものである。 したがって、訂正事項18は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 オ 訂正事項19 訂正事項19による訂正は、本件訂正前の請求項10に記載された発明における「式(A)」について、「n^(1)」の範囲を、「1以上の整数」から「2または3」へと減縮するものである。 したがって、訂正事項19は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 カ 訂正事項20及び訂正事項21 訂正事項20及び訂正事項21による訂正は、本件訂正前の請求項10に記載された発明における「環R^(1)」が表す「芳香族複素環」について、「5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環」に減縮するものである。 したがって、訂正事項20及び訂正事項21は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 キ 訂正事項22及び訂正事項23 訂正事項22及び訂正事項23による訂正は、本件訂正前の請求項10に記載された発明における「環R^(2)」が表す「芳香族炭化水素環または芳香族複素環」について、「5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環」に減縮するものである。 したがって、訂正事項22及び訂正事項23は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 (3)新規事項の有無 ア 訂正事項14 本件特許の明細書段落【0029】には、「「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。」と記載されている。そうすると、訂正事項14による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 イ 訂正事項15、16 本件特許の明細書段落【0011】には、「[7]前記複素環式化合物(B)が、式(B)で表される複素環式化合物である、[1]?[6]のいずれかに記載の発光素子。 【化6】 [式中、 n^(B1)は、1以上の整数を表す。 Ar^(B1)は、複素環基を表し、この基は置換基を有していてもよい。 Ar^(B2)は、式(D-A)、(D-B)または(D-C)で表される基を表す。Ar^(B2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化7】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)およびm^(DA3)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化8】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)、m^(DA3)、m^(DA4)、m^(DA5)、m^(DA6)およびm^(DA7)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるG^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化9】 [式中、 m^(DA1)は、0以上の整数を表す。 Ar^(DA1)は、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]」と記載されている。また、段落【0176】には、「Ar^(B1)は、芳香族複素環基であることが好ましく、この芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、複素環式化合物(B)が、式(B)で表される複素環式化合物であることが記載されていたといえる。そうすると、訂正事項15、16による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 ウ 訂正事項17 本件特許の明細書段落【0194】には「イリジウム錯体(A)の分子量(MA)は、本発明の発光素子の外部量子効率がより優れるので、好ましくは900以上4000以下であり、より好ましくは1200以上4000以下であり、更に好ましくは1600以上4000以下であり、特に好ましくは1600以上3000以下である。」と記載されており、段落【0195】には「複素環式化合物(B)の分子量(MB)は、本発明の発光素子の外部量子効率がより優れるので、好ましくは700以上3000以下であり、より好ましくは1500以上3000以下であり、更に好ましくは2000以上3000以下である。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、イリジウム錯体(A)の分子量(MA)を900以上4000以下とし、複素環式化合物(B)の分子量(MB)を700以上3000以下とすることが記載されていたといえる。そうすると、訂正事項17による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 エ 訂正事項18 本件特許の明細書段落【0196】には、「イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)との合計(MA+MB)は、本発明の発光素子の外部量子効率がより優れるので、好ましくは7000以下であり、より好ましくは6000以下である。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)との合計(MA+MB)を7000以下とすることが記載されていたといえる。そうすると、訂正事項18による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 オ 訂正事項19 本件特許の明細書段落【0064】には、式(A)で表されるイリジウム錯体の添え字n^(1)でその数を規定されている配位子について、「n^(1)は2または3であることが好ましく、3であることがより好ましい。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、n^(1)について「2または3」とすることが記載されていたといえる。そうすると、訂正事項19による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 カ 訂正事項20、21 本件特許の明細書段落【0066】には、「環R^(1)は、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環であることが好ましく、2つ以上4つ以下の窒素原子を構成原子として有する5員の芳香族複素環または1つ以上4つ以下の窒素原子を構成原子として有する6員の芳香族複素環であることが好ましく、ジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ジアザベンゼン環、キノリン環またはイソキノリン環であることがより好ましく、これらの環は置換基を有していてもよい。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、環R^(1)の芳香族複素環について、「5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環」とすることが記載されていたといえる。そうすると、記載事項20、21による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 キ 訂正事項22、23 本件特許の明細書段落【0067】には、「環R^(2)は、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環、または、5員もしくは6員の芳香族複素環であることが好ましく、6員の芳香族炭化水素環または6員の芳香族複素環であることがより好ましく、6員の芳香族炭化水素環であることが更に好ましく、これらの環は置換基を有していてもよい。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許の明細書には、環R^(2)の芳香族炭化水素環及び芳香族複素環について、「5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環」とすることが記載されていたといえる。そうすると、記載事項22、23による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 (4)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項14 訂正事項14による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に係る発明の「ハロゲン原子」を「フッ素原子」に減縮するものであるから、訂正事項14による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項15、16 訂正事項15、16による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に係る発明における「典型元素から構成される複素環式化合物(B)」を、「式(B)で表される複素環式化合物(B)」に減縮するものであるから、訂正事項15、16による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項17、18 訂正事項17、18による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に係る発明における「MA」、「MB]、「MA+MB」の範囲を減縮するものである。したがって、訂正事項17、18による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項19?23 訂正事項19による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に係る発明における式(A)で表されるイリジウム錯体(A)について、「n^(1)」を「2または3」に減縮するものであり、訂正事項20、21による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に係る発明における式(A)で表されるイリジウム錯体(A)について、「環R^(1)」が表す「芳香族複素環」を「5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環」に減縮するものであり、訂正事項22、23による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に係る発明における式(A)で表されるイリジウム錯体(A)について、「環R^(2)」が表す「芳香族炭化水素環」を「5員もしくは6員の芳香族炭化水素環」に減縮し、「芳香族複素環」を「5員もしくは6員の芳香族複素環」に減縮するものである。したがって、訂正事項19?23による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)小括 以上のとおりであるから、本件訂正による請求項10、11に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3 むすび 以上のとおり、本件訂正による訂正は、何れも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、〔10、11〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求は、前記第2のとおり、認められることとなったので、本件特許の請求項1?5、7?11に係る発明(以下、請求項の番号にしたがって「本件特許発明1」のようにいう。)は、本件訂正による訂正後の特許請求の範囲の請求項1?5、7?11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、請求項6は、本件訂正により削除された。 「【請求項1】 陽極と、 陰極と、 陽極および陰極の間に設けられた発光層と、 陽極および発光層の間に設けられた正孔輸送層とを有する発光素子であって、 発光層が、式(A)で表されるイリジウム錯体(A)と、典型元素から構成されており、式(B)で表される複素環式化合物(B)とを含有する層であり、 正孔輸送層が、架橋材料の架橋体を含有する層であり、 イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)とが、式(M1-1)および式(M2-1)を満たし、 前記MAが900以上4000以下、前記MBが700以上3000以下である、発光素子。 2700≦MA+MB≦7000 (M1-1) 0.35≦MA/MB≦3.00 (M2-1) 【化1】 [式中、 n^(1)は2または3を表し、n^(2)は0以上の整数を表し、n^(1)+n^(2)は3である。 E^(1)およびE^(2)は、それぞれ独立に、炭素原子または窒素原子を表す。但し、E^(1)およびE^(2)の少なくとも一方は炭素原子である。 環R^(1)は、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環を表し、この環は置換基として、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基または置換アミノ基を有していてもよく、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を更に有していてもよい。環R^(1)において、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環R^(1)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 環R^(2)は、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環を表し、これらの環は置換基として、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基または置換アミノ基を有していてもよく、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を更に有していてもよい。環R^(2)において、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環R^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 環R^(1)が有していてもよい置換基と環R^(2)が有していてもよい置換基とは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。 A^(1)-G^(1)-A^(2)は、アニオン性の2座配位子を表す。A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子または窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。G^(1)は、単結合、または、A^(1)およびA^(2)とともに2座配位子を構成する原子団を表す。A^(1)-G^(1)-A^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化12】 [式中、 n^(B1)は、1以上の整数を表す。 Ar^(B1)は、芳香族複素環基を表し、この基は置換基を有していてもよい。 Ar^(B2)は、式(D-A)、(D-B)または(D-C)で表される基を表す。Ar^(B2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化13】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)およびm^(DA3)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化14】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)、m^(DA3)、m^(DA4)、m^(DA5)、m^(DA6)およびm^(DA7)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるG^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化15】 [式中、 m^(DA1)は、0以上の整数を表す。 Ar^(DA1)は、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。] 【請求項2】 前記分子量(MA)と、前記分子量(MB)とが、式(M1-2)および式(M2-2)を満たす、請求項1に記載の発光素子。 3400≦MA+MB≦7000 (M1-2) 0.35≦MA/MB≦2.00 (M2-2) 【請求項3】 前記分子量(MA)と、前記分子量(MB)とが、式(M1-3)および式(M2-3)を満たす、請求項2に記載の発光素子。 4000≦MA+MB≦6000 (M1-3) 0.65≦MA/MB≦1.30 (M2-3) 【請求項4】 前記発光層と、前記正孔輸送層とが、隣接している、請求項1?3のいずれか一項に記載の発光素子。 【請求項5】 前記式(A)で表されるイリジウム錯体が、式(A-A)で表されるイリジウム錯体または式(A-B)で表されるイリジウム錯体である、請求項1?4のいずれか一項に記載の発光素子。 【化2】 [式中、 n^(1)、n^(2)、E^(1)およびA^(1)-G^(1)-A^(2)は、前記と同じ意味を表す。 E^(11A)、E^(12A)、E^(13A)、E^(21A)、E^(22A)、E^(23A)およびE^(24A)は、それぞれ独立に、窒素原子または炭素原子を表す。E^(11A)、E^(12A)、E^(13A)、E^(21A)、E^(22A)、E^(23A)およびE^(24A)が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。E^(11A)が窒素原子の場合、R^(11A)は存在しても存在しなくてもよい。E^(12A)が窒素原子の場合、R^(12A)は存在しても存在しなくてもよい。E^(13A)が窒素原子の場合、R^(13A)は存在しても存在しなくてもよい。E^(21A)が窒素原子の場合、R^(21A)は存在しない。E^(22A)が窒素原子の場合、R^(22A)は存在しない。E^(23A)が窒素原子の場合、R^(23A)は存在しない。E^(24A)が窒素原子の場合、R^(24A)は存在しない。 R^(11A)、R^(12A)、R^(13A)、R^(21A)、R^(22A)、R^(23A)およびR^(24A)は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、置換アミノ基またはフッ素原子を表し、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を有していてもよい。R^(11A)、R^(12A)、R^(13A)、R^(21A)、R^(22A)、R^(23A)およびR^(24A)が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R^(11A)とR^(12A)、R^(12A)とR^(13A)、R^(11A)とR^(21A)、R^(21A)とR^(22A)、R^(22A)とR^(23A)、および、R^(23A)とR^(24A)は、それぞれ結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。 環R^(1A)は、窒素原子、E^(1)、E^(11A)、E^(12A)およびE^(13A)とで構成されるトリアゾール環またはジアゾール環を表す。 環R^(2A)は、2つの炭素原子、E^(21A)、E^(22A)、E^(23A)およびE^(24A)とで構成されるベンゼン環、ピリジン環またはピリミジン環を表す。] 【化3】 [式中、 n^(1)、n^(2)およびA^(1)-G^(1)-A^(2)は、前記と同じ意味を表す。 E^(11B)、E^(12B)、E^(13B)、E^(14B)、E^(21B)、E^(22B)、E^(23B)およびE^(24B)は、それぞれ独立に、窒素原子または炭素原子を表す。E^(11B)、E^(12B)、E^(13B)、E^(14B)、E^(21B)、E^(22B)、E^(23B)およびE^(24B)が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。E^(11B)が窒素原子の場合、R^(11B)は存在しない。E^(12B)が窒素原子の場合、R^(12B)は存在しない。E^(13B)が窒素原子の場合、R^(13B)は存在しない。E^(14B)が窒素原子の場合、R^(14B)は存在しない。E^(21B)が窒素原子の場合、R^(21B)は存在しない。E^(22B)が窒素原子の場合、R^(22B)は存在しない。E^(23B)が窒素原子の場合、R^(23B)は存在しない。E^(24B)が窒素原子の場合、R^(24B)は存在しない。 R^(11B)、R^(12B)、R^(13B)、R^(14B)、R^(21B)、R^(22B)、R^(23B)およびR^(24B)は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、置換アミノ基またはフッ素原子を表し、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を有していてもよい。R^(11B)、R^(12B)、R^(13B)、R^(14B)、R^(21B)、R^(22B)、R^(23B)およびR^(24B)が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R^(11B)とR^(12B)、R^(12B)とR^(13B)、R^(13B)とR^(14B)、R^(11B)とR^(21B)、R^(21B)とR^(22B)、R^(22B)とR^(23B)、および、R^(23B)とR^(24B)は、それぞれ結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。 環R^(1B)は、窒素原子、炭素原子、E^(11B)、E^(12B)、E^(13B)およびE^(14B)とで構成されるピリジン環またはピリミジン環を表す。 環R^(2B)は、2つの炭素原子、E^(21B)、E^(22B)、E^(23B)およびE^(24B)とで構成されるベンゼン環、ピリジン環またはピリミジン環を表す。] 【請求項7】 前記架橋材料が、 架橋基A群から選ばれる少なくとも1種の架橋基を有する低分子化合物、または、架橋基A群から選ばれる少なくとも1種の架橋基を有する架橋構成単位を含む高分子化合物である、請求項1?5のいずれか一項に記載の発光素子。 (架橋基A群) 【化8】 [式中、R^(XL)は、メチレン基、酸素原子または硫黄原子を表し、n^(XL)は、0?5の整数を表す。R^(XL)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、n^(XL)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。*1は結合位置を表す。これらの架橋基は置換基を有していてもよい。] 【請求項8】 前記架橋材料が、架橋基A群から選ばれる少なくとも1種の架橋基を有する架橋構成単位を含む高分子化合物である、請求項7に記載の発光素子。 【請求項9】 前記架橋構成単位が、式(2)で表される構成単位または式(2’)で表される構成単位である、請求項8に記載の発光素子。 【化9】 [式中、 nAは0?5の整数を表し、nは1または2を表す。 Ar^(3)は、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 L^(A)は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基、-NR’-で表される基、酸素原子または硫黄原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R’は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。L^(A)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 Xは、架橋基A群から選ばれる架橋基を表す。Xが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化10】 [式中、 mAは0?5の整数を表し、mは1?4の整数を表し、cは0または1の整数を表す。mAが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 Ar^(5)は、芳香族炭化水素基、複素環基、または、少なくとも1種の芳香族炭化水素環と少なくとも1種の複素環とが直接結合した基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(4)およびAr^(6)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(4)、Ar^(5)およびAr^(6)はそれぞれ、当該基が結合している窒素原子に結合している当該基以外の基と、直接または酸素原子もしくは硫黄原子を介して結合して、環を形成していてもよい。 K^(A)は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基、-NR’-で表される基、酸素原子または硫黄原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R’は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。K^(A)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 X’は、架橋基A群から選ばれる架橋基、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。但し、少なくとも1つのX’は、架橋基A群から選ばれる架橋基である。] 【請求項10】 イリジウム錯体(A)と、典型元素から構成されており、式(B)で表される複素環式化合物(B)とを含有する組成物であって、 イリジウム錯体(A)が、式(A)で表されるイリジウム錯体であり、 イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)とが、式(M1-1)および式(M2-1)を満たし、前記MAが900以上4000以下、前記MBが700以上3000以下である、組成物。 2700≦MA+MB≦7000 (M1-1) 0.35≦MA/MB≦3.00 (M2-1) 【化11】 [式中、 n^(1)は2または3を表し、n^(2)は0以上の整数を表し、n^(1)+n^(2)は3である。 E^(1)およびE^(2)は、それぞれ独立に、炭素原子または窒素原子を表す。但し、E^(1)およびE^(2)の少なくとも一方は炭素原子である。 環R^(1)は、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環を表し、この環は置換基として、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基または置換アミノ基を有していてもよく、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を更に有していてもよい。環R^(1)において、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環R^(1)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 環R^(2)は、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環を表し、これらの環は置換基として、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基または置換アミノ基を有していてもよく、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を更に有していてもよい。環R^(2)において、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環R^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 環R^(1)が有していてもよい置換基と環R^(2)が有していてもよい置換基とは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。 A^(1)-G^(1)-A^(2)は、アニオン性の2座配位子を表す。A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子または窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。G^(1)は、単結合、または、A^(1)およびA^(2)とともに2座配位子を構成する原子団を表す。A^(1)-G^(1)-A^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化16】 [式中、 n^(B1)は、1以上の整数を表す。 Ar^(B1)は、芳香族複素環基を表し、この基は置換基を有していてもよい。 Ar^(B2)は、式(D-A)、(D-B)または(D-C)で表される基を表す。Ar^(B2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化17】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)およびm^(DA3)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化18】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)、m^(DA3)、m^(DA4)、m^(DA5)、m^(DA6)およびm^(DA7)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるG^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化19】 [式中、 m^(DA1)は、0以上の整数を表す。 Ar^(DA1)は、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。] 【請求項11】 前記分子量(MA)と、前記分子量(MB)とが、式(M1-3)および式(M2-3)を満たす、請求項10に記載の組成物。 4000≦MA+MB≦6000 (M1-3) 0.65≦MA/MB≦1.30 (M2-3)」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 平成31年2月27日付けで通知した取消理由の概要は、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。 2 当審の判断 (1)本件特許が解決しようとする課題 本件特許が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0009】の記載に基づけば、外部量子効率に優れる発光素子又は外部量子効率に優れる発光素子の製造に有用な組成物を提供することにあるといえる。 (2)請求項1及び請求項10に係る発明 一方、本件特許発明1及び本件特許発明10は、前記第3に記載したとおりのものであり、イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)とが、以下の式(M1-1)および式(M2-1)を満たし、前記MAが900以上4000以下、前記MBが700以上3000以下であることを要件としている。 2700≦MA+MB≦7000 (M1-1) 0.35≦MA/MB≦3.00 (M2-1) (3)分子量MA及び分子量MBが所定の要件を満たすことについて 本件特許の明細書段落【0194】には、「イリジウム錯体(A)の分子量(MA)は、本発明の発光素子の外部量子効率がより優れるので、好ましくは900以上4000以下であり、より好ましくは1200以上4000以下であり、更に好ましくは1600以上4000以下であり、特に好ましくは1600以上3000以下である。」と記載されている。また、本件特許の明細書段落【0195】には、「複素環式化合物(B)の分子量(MB)は、本発明の発光素子の外部量子効率がより優れるので、好ましくは700以上3000以下であり、より好ましくは1500以上3000以下であり、更に好ましくは2000以上3000以下である。」と記載されている。そして、本件特許の明細書段落【0197】には、「イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)との合計(MA+MB)が10000を超えると、本発明の発光素子を溶液塗布プロセスで作製する際に、イリジウム錯体(A)および複素環式化合物(B)の溶媒への溶解性が問題になる。」と記載されている。 当該記載に基づけば、MAが4000以下、MBが3000以下であるとする要件を満たすことにより、「MA+MB」が7000以下となり、溶媒への溶解性が問題とならず、発光素子の外部量子効率がより優れたものとなるといえる。そして、溶媒への溶解性が十分でなければスピンコート成膜時の膜質が劣ることは自明である。さらに、乙第一号証の記載に基づけば、「スピンコート成膜時の膜質改善」が、外部量子効率の効率改善のための一つの要因であることが理解できる。 また、乙第二号証の段落[0270]の記載に基づけば、「発光材料の分子量が小さ過ぎる」ことも「膜を形成した際の膜質の低下」を招くことが理解できる。このことは、MAが793.0である「イリジウム錯体13」を用いた比較例CD6の外部量子効率が0.89%であること、MBが484.6である「化合物H1」を用いた比較例CD1の外部量子効率が0.11であること、MBが609.8である「化合物H6」を用いた比較例CD7の外部量子効率が0.60%であることからも、裏付けられている。 そして、式(A)で表されるイリジウム錯体(A)及び式(B)で表される複素環式化合物(B)は、いずれも、芳香族環及び芳香族複素環を有する化合物である。式(A)で表されるイリジウム錯体(A)及び式(B)で表される複素環式化合物(B)が、良好な膜質を示す発光層を形成した場合に、互いの芳香族環及び芳香族複素環が密に配置されることとなり、発光層における分子間の電子伝達性が改善され、外部量子効率の向上に寄与することが理解できる。 そうすると、本件特許発明1及び本件特許発明10は、本件特許が解決しようとする課題を解決することができるものである。したがって、本件特許発明1及び本件特許発明10は、発明の詳細な説明に記載したものということができるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 (4)請求項2?5、7?9、11について 本件特許発明2?5、7?9、11は、本件特許発明1又は本件特許発明10を引用する発明である。 したがって、本件特許発明2?5、7?9、11についても、前記(3)と同様のことがいえる。 (5)特許異議申立人の意見 ア 特許異議申立人は、令和元年6月24日に提出した意見書の(2)において、「実施例・比較例からは、依然として、本件訂正発明1で規定された「MA」および「MB」の分子量関係・・・を満たせば、自ずと、イリジウム錯体(A)および複素環式化合物(B)の溶媒への溶解性・・・が向上し、その結果として外部量子効率が向上することは当業者が理解することはできない。」と主張している。 しかしながら、本件訂正により訂正された本件特許発明1は、前記(2)に記載した事項を要件とするものである。そして、乙第一号証及び乙第二号証に記載された技術常識を参酌すれば、本件特許の明細書の記載は、「MAが900以上4000以下」及び「MBが700以上3000以下」とする要件を満たすことにより、得られる発光層の膜質が改善し、外部量子効率が向上した発光素子が得られることが、当業者が理解できるように記載されていたということができる。 イ 特許異議申立人は、令和元年6月24日に提出した意見書の(3)a.において、「乙第一号証を素直に読めば、ここでは「外部量子効率を改善するためには、TDAPBをホスト材料として併用することによるスピンコート成膜時の膜の平坦化(膜質改善)などの要因も考慮すべき」旨が記載されているのであって、これを一般化して、発光素子に用いる組成物の一般的な膜質改善が外部量子効率の改善に寄与するとはいえない。」と主張している。しかし、乙第一号証には、高分子系有機ELについて、「また、燐光材料を用いる場合、三重項励起子の閉じ込めを効率的に行うために三重項準位が高く、ウェットプロセスによって薄膜を形成するために溶媒への溶解度、膜の平坦性が望まれる。」(第83頁第16?18行)との記載もなされている。TDAPBをホスト材料とした場合にのみ、外部量子効率の改善のためにスピンコート成膜時の膜の平坦化などの要因が考慮されるべきと解釈することはできない。 また、特許異議申立人は、令和元年6月24日に提出した意見書の(3)b.において、「「溶液中の化合物の溶解性」は化合物の分子量のみに影響されるものではなく、化合物が有する置換基、溶媒の種類等にも影響を受けることは技術常識であるので、本件訂正発明1の分子量関係のみを満たすことにより溶解性が改善されるとはいえない。」と主張している。しかし、本件訂正により訂正された本件特許発明1は、イリジウム錯体(A)及び複素環式化合物(B)の置換基の範囲を特定している。また、溶解性は溶媒の種類の影響も受けるものであるが、分子量の大きさが大き過ぎれば、いずれの溶媒を用いた場合でも溶解性に問題を生じる影響を及ぼすことは明らかである。そうすると、MAが「4000以下」、及び、MBが「3000以下」とする要件を満たすことによって、溶解性に問題が生じることを避けることができるといえる。 ウ 特許異議申立人は、令和元年6月24日に提出した意見書の(4)において、「イリジウム錯体(A)」と「複素環式化合物(B)」の分子量の合計(MA+MB)の「溶媒への溶解性」について、特許権者の主張は妥当なものではなく採用されるべきものではないと主張している。 しかし、溶媒への溶解性が問題とならないとされる、MAが上限値である「4000」以下であること、MBが上限値である「3000」以下であることの両方の要件を満たせば、「MA+MB」は、自ずと、式(M1-1)の上限値である「7000」以下とする要件を満たすこととなる。 エ 特許異議申立人は、令和元年6月24日に提出した意見書の(5)において、「実施例D1」が、他の実施例と比べて低い外部量子効率であったことについて、「特許権者は「偶然」と述べるだけで、なんら論理的に反論していない。」、「比較例CD1?7では、「イリジウム錯体(A)」および「複素環式化合物(B)」の種類および組み合わせに依存した、外部量子効率の低い発光素子が示されているだけであるので、本件特許明細書の実施例・比較例からは、本件訂正発明の発光素子の外部量子効率が本件訂正発明1の分子量関係を満たすか否かに依存するとはいえない。」と主張している。さらに、特許異議申立人は、令和元年6月24日に提出した意見書の(6)において、取消理由通知(決定の予告)の26頁8?12行の指摘に対し、「特許権者はこの指摘について何ら反論していない。」と主張している。 しかし、本件訂正により訂正された本件特許発明1は、前記(2)に記載した事項を要件とするものである。そして、MAが900以上4000以下、MBが700以上3000以下であるか否かは、「イリジウム錯体(A)」及び「複素環式化合物(B)」の種類に依存するものである。そして、上記要件及び式(M1-1)、式(M2-1)の要件を満たす実施例は、いずれも、優れた外部量子効率を示している。 オ 以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張を考慮しても、本件特許発明1?5、7?11が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されていないということはできない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?5、7?11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立の理由1(特許法第17条の2第3項) (1)特許異議申立人は、平成29年8月29日提出の手続補正書による補正について、上記補正前の請求項1及び請求項10における式(A)で表されるイリジウム錯体(A)の環R^(1)及び環R^(2)が置換基として有する「ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基または置換アミノ基」において、更に有するとされる「置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基」の置換基を、「ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基」とする補正事項が、新規事項の追加に相当するものと主張している。 (2)しかし、本件特許の明細書段落【0047】には、<共通する用語の説明>として、「「置換基」とは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキニル基を表す。」と記載されており、願書に最初に添付した明細書にも同じ記載がある。 また、本件特許の明細書段落【0073】には、「環R^(1)および環R^(2)が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基または置換アミノ基が好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基または置換アミノ基がより好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または1価の複素環基が更に好ましく、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基が特に好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよい。」と記載されているものの、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基が更に有する「置換基」について、特別の限定を付していない。 (3)そうすると、本件特許の明細書の記載に基づけば、式(A)で表されるイリジウム錯体(A)の環R^(1)及び環R^(2)が置換基として有する「ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基または置換アミノ基」において、更に有するとされる「置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基」の置換基について、共通する用語の説明として記載される置換基の選択肢に基づき、「ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基」とすることは、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。 (4)以上のとおりであるから、平成29年8月29日の手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。 したがって、特許異議申立人の申立の理由1に係る主張は採用できない。 2 申立の理由3(特許法第36条第4項第1号) (1)特許異議申立人は、「対象発明に基づいて外部量子効率に優れる発光素子、または発光素子の製造に有用な組成物を得ようとした場合、どのような基準に基づいて、適切な化学構造を有するイリジウム錯体(A)および複素環式化合物(B)を選択して用いればよいのかが本件の発明の詳細な説明には明確かつ十分に記載されていないため、当業者は、対象発明の実施に際して過度の試行錯誤を要する」とし、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないと主張している。 (2)しかし、本件特許発明1?5、7?11は、前記第3に記載したとおりのものである。発光層又は組成物が、「式(A)で表されるイリジウム錯体(A)」及び「式(B)で表される複素環式化合物(B)」を含有し、イリジウム錯体(A)の分子量「MA」及び複素環式化合物(B)の分子量「MB」について、「MAが900以上4000以下」、「MBが700以上3000以下」、「2700≦MA+MB≦7000」、「0.35≦MA/MB≦3.00」等とする、それぞれの数値範囲を満たす組合せであればよく、「式(A)で表されるイリジウム錯体(A)」及び「式(B)で表される複素環式化合物(B)」を選択する基準は明確であるといえる。そうすると、本件特許発明1?5、7?11を実施するに際して過度の試行錯誤を要するとはいえない。 (3)以上のとおりであるから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1?5、7?11を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。 したがって、特許異議申立人の申立の理由3に係る主張は採用できない。 3 申立の理由4(特許法第29条第1項第3号又は同法同条第2項) (1)特許異議申立人は、本件特許の請求項1?11に係る発明は、国際公開第2015/039723号(以下、「甲第1号証」という。)に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないものであるか、又は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと主張している。 (2)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、実施例2として、OLEDを製造すること(第79頁第23行?第82頁第22行)が記載されており、第82頁の「Tabelle 5」には、実施例2として製造されるOLEDの発光層が、ドーパントDとしてのK12、TMM-A、TMM-BのEML混合物からなることが記載されている。そうすると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 以下の構造を有するOLEDであって、 使用される基板は、膜厚50nmの構造化ITO(インジウムスズ酸化物)で被覆されたカラスプレートであり、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン)ポリスチレンスルホン酸塩)で被覆され、中間層は、これらの被覆されたガラスプレートに適用され、正孔注入として機能し、架橋可能である、以下に示される構造のポリマーが使用され、トルエンに溶解され、スピンコートされ、180℃60分間ベークされ、 発光層は、常に、少なくとも1つのマトリックス材料(ホスト材料)および発光ドーパント(発光体)で構成され、 正孔ブロック層および電子輸送層のための材料は、真空チャンバー内で熱蒸着され、 カソードは、100nmアルミニウム層の熱蒸着により形成されるものであり、 マトリックス材料が50%TMM-A、35%TMM-BでありドーパントDが15%K12である、 OLED。 基板 ITO(50nm) PEDOT 中間層(IL)(20nm) 発光層(EML)(60nm) 正孔ブロック層(HBL)(10nm) 電子伝導層(ETL)(40nm) カソード 」 (3)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と引用発明とを対比する。 a 引用発明の「OLED」は、技術的にみて、本件特許発明1の「発光素子」に相当する。 また、引用発明の「OLED」における「ITO」、「中間層」、「発光層」及び「カソード」は、技術的にみて、それぞれ、本件特許発明の「陰極」、「陽極および発光層の間に設けられた正孔輸送層」、「陽極および陰極の間に設けられた発光層」及び「陽極」に相当する。 b 引用発明の「発光層」を構成する「ドーパントD」である「K12」は、その化学構造からみて、「イリジウム錯体(A)」である。 また、引用発明の「K12」は、本件特許発明1の式(A)に当てはめた場合に、n^(1)が3であり、n^(2)が0であり、E^(1)及びE^(2)が炭素原子を表し、R^(1)が6員の芳香族複素環であり、6員の芳香族複素環が有する置換基が複数存在し、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成している。また、R^(2)が6員の芳香族炭化水素環であり、6員の芳香族炭化水素環は、置換基として、「アリール基」(以下、「アリール基1」という。)を有している。そして、このアリール基が、置換基として置換アミノ基を有するアリール基(以下、「アリール基2」という。)を更に有している。 ただし、引用発明の「K12」は、「アリール基2」の置換基である置換アミノ基と、「アリール基1」との間で互いに結合して環を形成している。また、「アリール基2」の置換基である置換アミノ基が有する「置換基」が「アリール基2」との間で互いに結合して環を形成している(なお、置換アミノ基が有するフェニル基と、「アリール基2」が有する2つめの置換基であるベンズヒドリル基とが、互いに結合して環を形成していると考えることもできる)。 c 引用発明の「発光層」を構成する「マトリックス材料(ホスト材料)」である「TMM-A」は、その化学構造からみて、「複素環式化合物(B)」であり、本件特許発明1における「式(B)」の要件を満たしている。 d 引用発明の「中間層」は、「架橋可能である」「ポリマーが使用され、トルエンに溶解され、スピンコートされ、180℃60分間ベークされ」て得られたものであるから、「架橋材料の架橋体を含有する層」であるといえる。 e 引用発明の「発光層」を構成する「ドーパントD」である「K12」は、その化学構造からみて、分子量が「2021.43」であるといえる。そうすると、引用発明は、本件特許発明1の「MAが900以上4000以下」とする要件を満たしている。 合議体注:「K12」の化学構造式は、Ir(C_(46)H_(29)N_(2))_(3) 2021.43≒192.217+(12.0107×46+1.00794×29+14.0067×2)×3 f 引用発明の「発光層」を構成する「マトリックス材料(ホスト材料)」である「TMM-A」は、その化学構造からみて、分子量が「1156.42」であるといえる。そうすると、引用発明は、本件特許発明1の「MBが700以上3000以下」とする要件を満たしている。 合議体注:「TMM-A」の化学構造式は、C_(88)H_(57)N_(3) 1156.42≒12.0107×88+1.00794×57+14.0067×3 g 引用発明の「発光層」を構成する「K12」と「TMM-A」の合計分子量は「3177.84」である。そうすると、引用発明は、本件特許発明1の「2700≦MA+MB≦7000 (M1-1)」の要件を満たしている。 合議体注:3177.84≒2021.425+1156.414 h 引用発明の「発光層」を構成する「K12」分子量を「TMM-A」の分子量で除した値は「1.75」である。そうすると、引用発明は、本件特許発明1の「0.35≦MA/MB≦3.00 (M2-1)」の要件を満たしている。 合議体注:1.75≒2021.425÷1156.414 i 以上より、本件特許発明1と引用発明とは、 「 陽極と、 陰極と、 陽極および陰極の間に設けられた発光層と、 陽極および発光層の間に設けられた正孔輸送層とを有する発光素子であって、 発光層が、イリジウム錯体(A)と、典型元素から構成されており、式(B)で表される複素環式化合物(B)とを含有する層であり、 正孔輸送層が、架橋材料の架橋体を含有する層であり、 イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)とが、式(M1-1)および式(M2-1)を満たし、 前記MAが900以上4000以下、前記MBが700以上3000以下である、発光素子。 2700≦MA+MB≦7000 (M1-1) 0.35≦MA/MB≦3.00 (M2-1) 【化12】 [式中、 n^(B1)は、1以上の整数を表す。 Ar^(B1)は、芳香族複素環基を表し、この基は置換基を有していてもよい。 Ar^(B2)は、式(D-A)、(D-B)または(D-C)で表される基を表す。Ar^(B2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化13】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)およびm^(DA3)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化14】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)、m^(DA3)、m^(DA4)、m^(DA5)、m^(DA6)およびm^(DA7)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるG^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化15】 [式中、 m^(DA1)は、0以上の整数を表す。 Ar^(DA1)は、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点]発光層が含有するイリジウム錯体(A)が、本件特許発明1では、式(A)で表される化合物であるのに対し、引用発明では、「K12」であって、本件特許発明1の式(A)に当てはめた場合に、n^(1)が3であり、n^(2)が0であり、E^(1)及びE^(2)が炭素原子を表し、R^(1)が6員の芳香族複素環であり、6員の芳香族複素環が有する置換基が複数存在し、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成しており、R^(2)が6員の芳香族炭化水素環であり、6員の芳香族炭化水素環は、置換基として、「アリール基」(以下、「アリール基1」という。)を有しており、このアリール基が、置換基として置換アミノ基を有するアリール基(以下、「アリール基2」という。)を更に有しているものの、引用発明の「K12」は、「アリール基2」の置換基である置換アミノ基と、「アリール基1」との間で互いに結合して環を形成しており、「アリール基2」の置換基である置換アミノ基が有する「置換基」が「アリール基2」との間で互いに結合して環を形成している(なお、置換アミノ基が有するフェニル基と、「アリール基2」が有する2つめの置換基であるベンズヒドリル基とが、互いに結合して環を形成していると考えることもできる)点。 (イ)判断 上記[相違点]について検討すると、本件特許発明1の「式(A)」は、「環R^(1)において、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基」及び「環R^(2)において、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基」については、「置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。」と規定する一方で、これらの基が有する「アルキル基」、「シクロアルキル基」、「アリール基」について環を形成してもよいとしておらず、「アルキル基」、「シクロアルキル基」、「アリール基」が有してもよい置換基である「フッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基」についても環を形成してもよいとしていない。そうすると、引用発明の「K12」が、本件特許発明1の「式(A)」に包含されないことは明らかである。 したがって、上記[相違点]は実質的な相違点である。 次に、引用発明について、上記[相違点]に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるかについて検討すると、甲第1号証の明細書第2頁第12行?第5頁第22行には、以下の記載がある。 「 (中略) 」 (翻訳文:本発明は、式(1)の化合物を提供するものである。 M(L)_(n)(L’)_(m) 式(1) 式中、一般式(1)の化合物は、以下の式(2)または式(3)の部分構造M(L)_(n)を含み: 式中、Aは出現毎に同一であるか異なっており、以下の式(A)の基であり: 式中、式(A)の点線は、この基の結合位置を表し、使用される他の記号や添え字は以下である: Mは、イリジウム、ロジウム、プラチナおよびパラジウムからなる群から選択される金属であり; Xは、出現毎に同一であるかまたは異なり、CR^(1)またはNであり; Qは、出現毎に同一であるかまたは異なり、R^(1)C=CR^(1)、R^(1)C=N、O、S、SeまたはNR^(1)であり; Vは、出現毎に同一であるかまたは異なり、O、S、SeまたはNR^(1)であり; Yは、出現毎に同一であるかまたは異なり、単結合またはC(R^(1))_(2)、C(=O)、O、S、NR^(1)およびBR^(1)から選択される二価基であり; (中略) L’は、出現毎に同一であるかまたは異なり、共配位子(coligand)であり; nは、Mがイリジウムまたはロジウムである場合に、1、2または3であり、Mがプラチナまたはパラジウムであるときに、1または2であり; mは、0、1、2、3または4であり; a、b、cは、出現毎に同一であるかまたは異なり、0または1であり、a=0またはb=0またはc=0は、それぞれY基が存在せず、代わりにR^(1)ラジカルがそれぞれのケースにおいて対応する炭素原子と結合していることを意味し、ただし、a+b+c≧2であり; 同時に、2以上の配位子Lが互いに結合されるか、またはLが任意の架橋Zを介してL’と結合され、そして三座、四座、五座もしくは六座配位子の系を形成することも可能である。 この化合物において、添え字nおよびmは、Mがイリジウムもしくはロジウムである場合の金属の配位数は6に対応し、Mがプラチナもしくはパラジウムの場合に、4に対応するように、選択される。) 上記記載に基づけば、甲第1号証には、イリジウム錯体について、本件特許発明1の式(A)に当てはめた場合のR^(2)の置換基が、次の式(A)の基 であることを特徴としている。そうすると、甲第1号証におけるイリジウム錯体は、a、b、cが0または1であり、かつ、a+b+c≧2であるから、置換アミノ基が他の置換基との間で環を形成することを要件としているといえる。そうすると、引用発明において、「K12」の「アリール基2」の置換基である置換アミノ基が有する「置換基」が「アリール基2」との間で互いに結合して環を形成している(または、置換アミノ基が有するフェニル基と、「アリール基2」が有する2つめの置換基であるベンズヒドリル基とが、互いに結合して環を形成している)構造について、環を形成しないものとすることを当業者が容易になし得たということはできない。 以上より、本件特許発明10は、引用発明と同一の発明ではなく、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。 なお、甲第1号証に記載された他のイリジウム錯体をドーパントとして含む発明に基づいても同様のことがいえる。 イ 本件特許発明10について 本件特許発明10は、組成物に関する発明であって、本件特許発明1と同じ「式(A)で表されるイリジウム錯体」を発明構成要件とするものである。そうすると、本件特許発明10も、本件特許発明1と同じ理由により、引用発明と同一の発明ではなく、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件特許発明2?5、7?9、11について 本件特許発明2?5、7?9は、本件特許発明1に限定を付したものであり、本件特許発明11は、本件特許発明11に限定を付したものである。 そうすると、2?5、7?9、11も本件特許発明1と同じ理由により、引用発明と同一の発明ではなく、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1?5、7?11は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当せず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項1?5、7?11に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件の請求項1?5、7?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件の請求項6に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項6に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 陽極と、 陰極と、 陽極および陰極の間に設けられた発光層と、 陽極および発光層の間に設けられた正孔輸送層とを有する発光素子であって、 発光層が、式(A)で表されるイリジウム錯体(A)と、典型元素から構成されており、式(B)で表される複素環式化合物(B)とを含有する層であり、 正孔輸送層が、架橋材料の架橋体を含有する層であり、 イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)とが、式(M1-1)および式(M2-1)を満たし、 前記MAが900以上4000以下、前記MBが700以上3000以下である、発光素子。 2700≦MA+MB≦7000 (M1-1) 0.35≦MA/MB≦3.00 (M2-1) 【化1】 [式中、 n^(1)は2または3を表し、n^(2)は0以上の整数を表し、n^(1)+n^(2)は3である。 E^(1)およびE^(2)は、それぞれ独立に、炭素原子または窒素原子を表す。但し、E^(1)およびE^(2)の少なくとも一方は炭素原子である。 環R^(1)は、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環を表し、この環は置換基として、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基または置換アミノ基を有していてもよく、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を更に有していてもよい。環R^(1)において、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環R^(1)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 環R^(2)は、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環を表し、これらの環は置換基として、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基または置換アミノ基を有していてもよく、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を更に有していてもよい。環R^(2)において、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環R^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 環R^(1)が有していてもよい置換基と環R^(2)が有していてもよい置換基とは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。 A^(1)-G^(1)-A^(2)は、アニオン性の2座配位子を表す。A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子または窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。G^(1)は、単結合、または、A^(1)およびA^(2)とともに2座配位子を構成する原子団を表す。A^(1)-G^(1)-A^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化12】 [式中、 n^(B1)は、1以上の整数を表す。 Ar^(B1)は、芳香族複素環基を表し、この基は置換基を有していてもよい。 Ar^(B2)は、式(D-A)、(D-B)または(D-C)で表される基を表す。Ar^(B2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化13】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)およびm^(DA3)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化14】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)、m^(DA3)、m^(DA4)、m^(DA5)、m^(DA6)およびm^(DA7)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるG^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化15】 [式中、 m^(DA1)は、0以上の整数を表す。 Ar^(DA1)は、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。] 【請求項2】 前記分子量(MA)と、前記分子量(MB)とが、式(M1-2)および式(M2-2)を満たす、請求項1に記載の発光素子。 3400≦MA+MB≦7000 (M1-2) 0.35≦MA/MB≦2.00 (M2-2) 【請求項3】 前記分子量(MA)と、前記分子量(MB)とが、式(M1-3)および式(M2-3)を満たす、請求項2に記載の発光素子。 4000≦MA+MB≦6000 (M1-3) 0.65≦MA/MB≦1.30 (M2-3) 【請求項4】 前記発光層と、前記正孔輸送層とが、隣接している、請求項1?3のいずれか一項に記載の発光素子。 【請求項5】 前記式(A)で表されるイリジウム錯体が、式(A-A)で表されるイリジウム錯体または式(A-B)で表されるイリジウム錯体である、請求項1?4のいずれか一項に記載の発光素子。 【化2】 [式中、 n^(1)、n^(2)、E^(1)およびA^(1)-G^(1)-A^(2)は、前記と同じ意味を表す。 E^(11A)、E^(12A)、E^(13A)、E^(21A)、E^(22A)、E^(23A)およびE^(24A)は、それぞれ独立に、窒素原子または炭素原子を表す。E^(11A)、E^(12A)、E^(13A)、E^(21A)、E^(22A)、E^(23A)およびE^(24A)が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。E^(11A)が窒素原子の場合、R^(11A)は存在しても存在しなくてもよい。E^(12A)が窒素原子の場合、R^(12A)は存在しても存在しなくてもよい。E^(13A)が窒素原子の場合、R^(13A)は存在しても存在しなくてもよい。E^(21A)が窒素原子の場合、R^(21A)は存在しない。E^(22A)が窒素原子の場合、R^(22A)は存在しない。E^(23A)が窒素原子の場合、R^(23A)は存在しない。E^(24A)が窒素原子の場合、R^(24A)は存在しない。 R^(11A)、R^(12A)、R^(13A)、R^(21A)、R^(22A)、R^(23A)およびR^(24A)は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、置換アミノ基またはフッ素原子を表し、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を有していてもよい。R^(11A)、R^(12A)、R^(13A)、R^(21A)、R^(22A)、R^(23A)およびR^(24A)が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R^(11A)とR^(12A)、R^(12A)とR^(13A)、R^(11A)とR^(21A)、R^(21A)とR^(22A)、R^(22A)とR^(23A)、および、R^(23A)とR^(24A)は、それぞれ結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。 環R^(1A)は、窒素原子、E^(1)、E^(11A)、E^(12A)およびE^(13A)とで構成されるトリアゾール環またはジアゾール環を表す。 環R^(2A)は、2つの炭素原子、E^(21A)、E^(22A)、E^(23A)およびE^(24A)とで構成されるベンゼン環、ピリジン環またはピリミジン環を表す。] 【化3】 [式中、 n^(1)、n^(2)およびA^(1)-G^(1)-A^(2)は、前記と同じ意味を表す。 E^(11B)、E^(12B)、E^(13B)、E^(14B)、E^(21B)、E^(22B)、E^(23B)およびE^(24B)は、それぞれ独立に、窒素原子または炭素原子を表す。E^(11B)、E^(12B)、E^(13B)、E^(14B)、E^(21B)、E^(22B)、E^(23B)およびE^(24B)が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。E^(11B)が窒素原子の場合、R^(11B)は存在しない。E^(12B)が窒素原子の場合、R^(12B)は存在しない。E^(13B)が窒素原子の場合、R^(13B)は存在しない。E^(14B)が窒素原子の場合、R^(14B)は存在しない。E^(21B)が窒素原子の場合、R^(21B)は存在しない。E^(22B)が窒素原子の場合、R^(22B)は存在しない。E^(23B)が窒素原子の場合、R^(23B)は存在しない。E^(24B)が窒素原子の場合、R^(24B)は存在しない。 R^(11B)、R^(12B)、R^(13B)、R^(14B)、R^(21B)、R^(22B)、R^(23B)およびR^(24B)は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、置換アミノ基またはフッ素原子を表し、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を有していてもよい。R^(11B)、R^(12B)、R^(13B)、R^(14B)、R^(21B)、R^(22B)、R^(23B)およびR^(24B)が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R^(11B)とR^(12B)、R^(12B)とR^(13B)、R^(13B)とR^(14B)、R^(11B)とR^(21B)、R^(21B)とR^(22B)、R^(22B)とR^(23B)、および、R^(23B)とR^(24B)は、それぞれ結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。 環R^(1B)は、窒素原子、炭素原子、E^(11B)、E^(12B)、E^(13B)およびE^(14B)とで構成されるピリジン環またはピリミジン環を表す。 環R^(2B)は、2つの炭素原子、E^(21B)、E^(22B)、E^(23B)およびE^(24B)とで構成されるベンゼン環、ピリジン環またはピリミジン環を表す。] 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 前記架橋材料が、 架橋基A群から選ばれる少なくとも1種の架橋基を有する低分子化合物、または、架橋基A群から選ばれる少なくとも1種の架橋基を有する架橋構成単位を含む高分子化合物である、請求項1?5のいずれか一項に記載の発光素子。 (架橋基A群) 【化8】 [式中、R^(XL)は、メチレン基、酸素原子または硫黄原子を表し、n^(XL)は、0?5の整数を表す。R^(XL)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、n^(XL)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。*1は結合位置を表す。これらの架橋基は置換基を有していてもよい。] 【請求項8】 前記架橋材料が、架橋基A群から選ばれる少なくとも1種の架橋基を有する架橋構成単位を含む高分子化合物である、請求項7に記載の発光素子。 【請求項9】 前記架橋構成単位が、式(2)で表される構成単位または式(2’)で表される構成単位である、請求項8に記載の発光素子。 【化9】 [式中、 nAは0?5の整数を表し、nは1または2を表す。 Ar^(3)は、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 L^(A)は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基、-NR’-で表される基、酸素原子または硫黄原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R’は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。L^(A)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 Xは、架橋基A群から選ばれる架橋基を表す。Xが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化10】 [式中、 mAは0?5の整数を表し、mは1?4の整数を表し、cは0または1の整数を表す。mAが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 Ar^(5)は、芳香族炭化水素基、複素環基、または、少なくとも1種の芳香族炭化水素環と少なくとも1種の複素環とが直接結合した基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(4)およびAr^(6)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(4)、Ar^(5)およびAr^(6)はそれぞれ、当該基が結合している窒素原子に結合している当該基以外の基と、直接または酸素原子もしくは硫黄原子を介して結合して、環を形成していてもよい。 K^(A)は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基、-NR’-で表される基、酸素原子または硫黄原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R’は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。K^(A)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 X’は、架橋基A群から選ばれる架橋基、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。但し、少なくとも1つのX’は、架橋基A群から選ばれる架橋基である。] 【請求項10】 イリジウム錯体(A)と、典型元素から構成されており、式(B)で表される複素環式化合物(B)とを含有する組成物であって、 イリジウム錯体(A)が、式(A)で表されるイリジウム錯体であり、 イリジウム錯体(A)の分子量(MA)と、複素環式化合物(B)の分子量(MB)とが、式(M1-1)および式(M2-1)を満たし、 前記MAが900以上4000以下、前記MBが700以上3000以下である、組成物。 2700≦MA+MB≦7000 (M1-1) 0.35≦MA/MB≦3.00 (M2-1) 【化11】 [式中、 n^(1)は2または3を表し、n^(2)は0以上の整数を表し、n^(1)+n^(2)は3である。 E^(1)およびE^(2)は、それぞれ独立に、炭素原子または窒素原子を表す。但し、E^(1)およびE^(2)の少なくとも一方は炭素原子である。 環R^(1)は、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環を表し、この環は置換基として、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基または置換アミノ基を有していてもよく、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を更に有していてもよい。環R^(1)において、5員の芳香族複素環または6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環R^(1)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 環R^(2)は、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環を表し、これらの環は置換基として、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基または置換アミノ基を有していてもよく、これらの基は、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアルキル基、置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基としてフッ素原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基もしくはシクロアルキニル基を有していてもよいアリール基を更に有していてもよい。環R^(2)において、5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または5員もしくは6員の芳香族複素環が有していてもよい置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環R^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 環R^(1)が有していてもよい置換基と環R^(2)が有していてもよい置換基とは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。 A^(1)-G^(1)-A^(2)は、アニオン性の2座配位子を表す。A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子または窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。G^(1)は、単結合、または、A^(1)およびA^(2)とともに2座配位子を構成する原子団を表す。A^(1)-G^(1)-A^(2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化16】 [式中、 n^(B1)は、1以上の整数を表す。 Ar^(B1)は、芳香族複素環基を表し、この基は置換基を有していてもよい。 Ar^(B2)は、式(D-A)、(D-B)または(D-C)で表される基を表す。Ar^(B2)が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。] 【化17】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)およびm^(DA3)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)およびAr^(DA3)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化18】 [式中、 m^(DA1)、m^(DA2)、m^(DA3)、m^(DA4)、m^(DA5)、m^(DA6)およびm^(DA7)は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。 G^(DA)は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるG^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。 Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)、Ar^(DA2)、Ar^(DA3)、Ar^(DA4)、Ar^(DA5)、Ar^(DA6)およびAr^(DA7)が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるT^(DA)は、同一でも異なっていてもよい。] 【化19】 [式中、 m^(DA1)は、0以上の整数を表す。 Ar^(DA1)は、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar^(DA1)が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。 T^(DA)は、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。] 【請求項11】 前記分子量(MA)と、前記分子量(MB)とが、式(M1-3)および式(M2-3)を満たす、請求項10に記載の組成物。 4000≦MA+MB≦6000 (M1-3) 0.65≦MA/MB≦1.30 (M2-3) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-08-09 |
出願番号 | 特願2016-564640(P2016-564640) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(H05B)
P 1 651・ 536- YAA (H05B) P 1 651・ 537- YAA (H05B) P 1 651・ 121- YAA (H05B) P 1 651・ 55- YAA (H05B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 横川 美穂 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
高松 大 宮澤 浩 |
登録日 | 2017-12-15 |
登録番号 | 特許第6256630号(P6256630) |
権利者 | 住友化学株式会社 |
発明の名称 | 発光素子および該発光素子に用いる組成物 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 坂元 徹 |
代理人 | 三上 敬史 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 三上 敬史 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 坂元 徹 |
代理人 | 中山 亨 |
代理人 | 中山 亨 |