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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
管理番号 1355955
異議申立番号 異議2018-700992  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-05 
確定日 2019-09-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6338155号発明「偏光板、画像表示装置、および画像表示装置における明所コントラストの改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6338155号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4?7〕、3、〔8、9、11?14〕、10について訂正することを認める。 特許第6338155号の請求項1、3、5?8、10、12?14に係る特許を維持する。 特許第6338155号の請求項2、4、9、11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6338155号の請求項1?14に係る特許(以下、総称して「本件特許」という。)についての出願は、2013年(平成25年)12月26日(優先権主張 平成25年3月29日)を国際出願日とする出願であって、平成30年5月18日にその特許権の設定登録がされ、同年6月6日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許について、同年12月5日に特許異議申立人笠原 佳代子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、当審は、平成31年3月20日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和元年5月24日に意見書の提出及び訂正請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、同年6月26日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和元年5月24日になされた訂正請求による訂正(以下、当該訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の1?14について訂正するものであって、その内容は以下のとおりである(下線は、当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。)。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルムが配置されており、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置された有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.05以上0.30以下であることを特徴とする、画像表示装置。」と記載されているのを、
「偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルムが配置されており、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22以上0.30以下であることを特徴とする、画像表示装置。」に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された、請求項5?7についても同様に訂正する。)。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記画像表示装置が表示素子を備え、前記偏光板が前記表示素子よりも観察者側に配置されている、請求項2に記載の画像表示装置。」と記載されているのを、
「偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルムが配置されており、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板および表示素子を備え、前記偏光板が前記λ/4位相差板および前記表示素子よりも観察者側に配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22であることを特徴とする、画像表示装置。」に訂正する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に、
「偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たす偏光板を、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光板における前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように画像表示装置に配置することを特徴とする、画像表示装置における明所コントラストの改善方法であって、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置された有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.05以上0.30以下である、前記改善方法。」と記載されているのを、
「偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たす偏光板を、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光板における前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように画像表示装置に配置することを特徴とする、画像表示装置における明所コントラストの改善方法であって、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))が、1.82であり、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))が、1.60であり、前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22である、前記改善方法。」に訂正する(請求項8の記載を引用して記載された、請求項12?14についても同様に訂正する。)。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10に、
「前記画像表示装置が表示素子を備え、前記偏光板が前記表示素子よりも観察者側に配置されている、請求項9に記載の改善方法。」と記載されているのを、
「偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たす偏光板を、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光板における前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように画像表示装置に配置することを特徴とする、画像表示装置における明所コントラストの改善方法であって、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板および表示素子を備え、前記偏光板が前記λ/4位相差板および前記表示素子よりも観察者側に配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))が、1.82であり、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))が、1.60であり、前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22であり、前記光透過性フィルムの平均屈折率(N)が、1.63である、前記改善方法。」に訂正する。

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項11を削除する。

2 一群の請求項について
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-7〕、〔8-14〕に対して請求されたものである。
ここで、請求人は、訂正後の請求項3については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
また、請求人は、訂正後の請求項10については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 一群の請求項1?7について
ア 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、a:本件特許の願書に添付した明細書の段落【0026】、【0027】及び【0089】(実施例1)の記載に基づいて、請求項1に記載された「光透過性フィルム」を、「ポリエチレンナフタレートフィルムである」ものに限定し、b:本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項2、同明細書の段落【0014】及び【0085】の記載に基づいて、請求項1に記載された「有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ」を、「前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている」ものに限定し、c:本件特許の願書に添付した明細書の段落【0025】、【0026】、【0027】及び【0089】(実施例1)の記載に基づいて、請求項1に記載された(「前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との」)「差(n_(x)-n_(y))」が、「0.05以上0.30以下であ」ったものを、「0.22以上0.30以下」であるものに限定する、訂正である。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項5?7についての訂正も同様である。

イ 訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正である。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、a:請求項1及び請求項2の記載を引用する請求項3の記載を、請求項1及び請求項2の記載を引用しないものとし(以下、「訂正事項3a」という。)、b:本件特許の願書に添付した明細書の段落【0026】、【0027】及び【0089】(実施例1)の記載に基づいて、訂正前の請求項3が間接的に引用する訂正前の請求項1に記載された「光透過性フィルム」を、「ポリエチレンナフタレートフィルムである」ものに限定し(以下、「訂正事項3b」という。)、c:本件特許の願書に添付した明細書の段落【0089】(実施例1)の記載に基づいて、請求項1に記載された「差(n_(x)-n_(y))」が、「0.05以上0.30以下であ」ったものを、「0.22」に限定する(以下、「訂正事項3c」という。)、訂正である。
したがって、訂正事項3aに係る訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。また、訂正事項3b及び3cに係る訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、特許請求の範囲の請求項4を削除する訂正である。
したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正(訂正事項1?4による訂正)は、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2) 一群の請求項8?14について
ア 訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、a:本件特許の願書に添付した明細書の段落【0026】、【0027】及び【0089】(実施例1)の記載に基づいて、請求項8に記載された「光透過性フィルム」を、「ポリエチレンナフタレートフィルムである」ものに限定し、b:本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項9、同明細書の段落【0014】及び【0085】の記載に基づいて、請求項8に記載された「有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ」を、「前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている」ものに限定し、c:本件特許の願書に添付した明細書の段落【0089】(実施例1)の記載に基づいて、請求項8に記載された「光透過性フィルム」を、「遅相軸方向の屈折率(n_(x))が、1.82であり、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))が、1.60であ」るものに限定し、d:本件特許の願書に添付した明細書の段落【0089】(実施例1)の記載に基づいて、請求項8に記載された「差(n_(x)-n_(y))」が、「0.05以上0.30以下であ」ったものを、「0.22」に限定する、訂正である。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正事項5による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項12?14についての訂正も同様である。

イ 訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、特許請求の範囲の請求項9を削除する訂正である。
したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正事項6による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、a:請求項8及び請求項9の記載を引用する請求項10の記載を、請求項8及び請求項9の記載を引用しないものとし(以下、「訂正事項7a」という。)、b:本件特許の願書に添付した明細書の段落【0026】、【0027】及び【0089】(実施例1)の記載に基づいて、訂正前の請求項10が間接的に引用する訂正前の請求項8に記載された「光透過性フィルム」を、「ポリエチレンナフタレートフィルムである」ものに限定し(以下、「訂正事項7b」という。)、c:本件特許の願書に添付した明細書の段落【0089】(実施例1)の記載に基づいて、訂正前の請求項10が間接的に引用する訂正前の請求項8に記載された「光透過性フィルム」が、「前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))が、1.82であり、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))が、1.60であり」、「前記光透過性フィルムの平均屈折率(N)が、1.63である」ものに限定し(以下、「訂正事項7c」という。)、d:本件特許の願書に添付した明細書の段落【0089】(実施例1)の記載に基づいて、訂正前の請求項10が間接的に引用する訂正前の請求項8に記載された「差(n_(x)-n_(y))」が、「0.05以上0.30以下であ」ったものを、「0.22」に限定する(以下、「訂正事項7d」という。)、訂正である。
したがって、訂正事項7aに係る訂正事項7による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。また、訂正事項7b?7dに係る訂正事項7による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正事項7による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項8について
訂正事項8による訂正は、特許請求の範囲の請求項11を削除する訂正である。
したがって、訂正事項8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正事項8による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正(訂正事項5?8による訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。

4 まとめ
以上のとおりであるから本件訂正請求(訂正事項1?8による訂正)は、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、上記2(別の訂正単位とする求め)より、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4?7〕、3、〔8、9、11?14〕、10について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明
前記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって、本件特許の請求項1、3、5?7、8、10、12?14に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」、「本件訂正発明3」などどいう。)は、それぞれ訂正特許請求の範囲の請求項1、3、5?7、8、10、12?14に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルムが配置されており、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22以上0.30以下であることを特徴とする、画像表示装置。」
「【請求項3】
偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルムが配置されており、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板および表示素子を備え、前記偏光板が前記λ/4位相差板および前記表示素子よりも観察者側に配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22であることを特徴とする、画像表示装置。」
「【請求項5】
前記光透過性フィルムにおける前記偏光子が形成されている面とは反対側の面に形成され、かつ前記光透過性フィルムの進相軸方向と平行となる方向における屈折率が前記光透過性フィルムの進相軸方向の屈折率よりも低い機能層をさらに備える、請求項1に記載の画像表示装置。」
「【請求項6】
前記光透過性フィルムの平均屈折率よりも低い平均屈折率を有する機能層をさらに備える、請求項1に記載の画像表示装置。」
「【請求項7】
前記機能層が、ハードコート層、または防眩層である、請求項5または6に記載の画像表示装置。」
「【請求項8】
偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たす偏光板を、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光板における前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように画像表示装置に配置することを特徴とする、画像表示装置における明所コントラストの改善方法であって、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))が、1.82であり、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))が、1.60であり、前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22である、前記改善方法。」
「【請求項10】
偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たす偏光板を、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光板における前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように画像表示装置に配置することを特徴とする、画像表示装置における明所コントラストの改善方法であって、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板および表示素子を備え、前記偏光板が前記λ/4位相差板および前記表示素子よりも観察者側に配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))が、1.82であり、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))が、1.60であり、前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22であり、前記光透過性フィルムの平均屈折率(N)が、1.63である、前記改善方法。」
「【請求項12】
前記光透過性フィルムにおける前記偏光子が形成されている面とは反対側の面に形成され、かつ前記光透過性フィルムの進相軸方向と平行となる方向における屈折率が前記光透過性フィルムの進相軸方向の屈折率よりも低い機能層をさらに備える、請求項8に記載の改善方法。」
「【請求項13】
前記光透過性フィルムの平均屈折率よりも低い平均屈折率を有する機能層をさらに備える、請求項8に記載の改善方法。」
「【請求項14】
前記機能層が、ハードコート層、または防眩層である、請求項12または13に記載の改善方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?14に係る特許に対して、当審が平成31年3月20日付けで通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア 理由1(進歩性)
本件特許の請求項1?14に係る発明は、本件特許の優先権主張の日(以下、「本件優先日」という。)前に日本国内または外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用文献1:特開2006-259694号公報(甲第1号証)
引用文献2:特公平4-73123号公報(甲第2号証)
引用文献3:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典7」、縮刷版第36刷、1997年9月20日発行(初版第1刷、1961年10月30日発行、縮刷版第1刷、1964年1月15日発行)、共立出版株式会社、881頁(甲第3号証の1)
(当合議体注:引用文献1は、主引用文献、引用文献2は、副引用文献であり、引用文献3は、フッ化マグネシウムの屈折率を示すために一例としてあげた文献である。)

イ 理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1、4?8、11?14に係る発明は、発明の詳細な記載したものではなく、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第5 当合議体の判断
1 理由1(進歩性)について
(1) 引用文献及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
取消理由で引用された引用文献1(特開2006-259694号公報(甲第1号証))は、本件優先日前に頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。

(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイパネルと、
前記ディスプレイパネルの一側面上に配置された偏光子と、
前記ディスプレイパネルと前記偏光子との間に配置された広帯域4分の1波長板とを備え、
前記広帯域4分の1波長板は、2分の1波長板と、4分の1波長板とを有し、
該2分の1波長板と該4分の1波長板とは、n_(x)およびn_(y)を面内主屈折率、n_(z)を厚さ方向の屈折率とした場合、それぞれN_(z)=(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))=0.3?0.8の関係を満足していることを特徴とする、表示装置。
【請求項2】
・・・略・・・
【請求項4】
前記ディスプレイパネルが、液晶ディスプレイパネル、有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、および電界放射ディスプレイパネルからなる群から選ばれる、請求項1乃至3のいずれかの表示装置。
【請求項5】
前記偏光子が、前記ディスプレイパネルの水平方向に対して略平行な吸収軸を有している、請求項1乃至4のいずれかの表示装置。」

(イ) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学板とそれを用いた表示装置とに関し、さらに詳細には、反射防止偏光板、広帯域4分の1波長板、および広視野角(WVA)反射防止表示装置と、それを用いた電子装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
光を発する表示装置としては、有機エレクトロルミネセンス(OEL)ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび電界放出ディスプレイ等がある。また、光を透過または反射させる他の種類の表示装置としては、液晶ディスプレイ等がある。これらの両方の種類の表示装置では、表示部が明るく、且つ高コントラスト比を提示することが重要である。
【0003】
表示部のコントラスト比は、該表示部の明状態と暗状態との比率であり、暗状態は、実際に適用されるすべての環境下で周辺光からの反射光によって左右される。この反射光により、視聴者は映像に重畳した周辺光の光源からの反射像を見ることになり、特定の角度によっては画像のコントラスト比を損ねることから、とりわけ気に障る。また、反射光は、表示された映像にコントラスト比を低下させるヘイズ(もや)を重畳させて、可視グレースケール領域を制限する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、反射光による干渉の問題を解消すべく偏光子と4分の1波長板とを用いた、従来の方法に係る表示装置の断面図である。図1に示すように、直線偏光子104と一軸性(uniaxial)4分の1波長(λ/4)板102とが共にラミネートされて、反射性材料を有するディスプレイパネル100の一側面上に設けられている。
【0005】
周辺光106は、直線偏光子104に入射する際に偏光し、その偏光106は、一軸性4分の1波長板102を透過した際に円偏光する。その円偏光106は、ディスプレイパネル100の反射性材料により反射して反転する。そして、該反射円偏光106は、一軸性4分の1波長板102へと反射して直線偏光子104により吸収される。これにより、周辺光106がディスプレイパネル100から放射された有用な光と干渉することを防止している。ただし、この方法では、周辺光の内の緑色光は効果的に反射を防止することができるが、周辺光の赤色光および青色光に対しては効果的に反射防止することができない。
【0006】
図2は、偏光子板と広帯域4分の1波長板とが用いられた、他の従来の表示装置の断面図である。図2に示すように、図1の表示装置と比較すると、一軸性2分の1波長(λ/2)板108が、直線偏光子104および一軸性4分の1波長板102とさらにラミネートされており、ここでは、その2分の1波長板108と4分の1波長板102とのラミネートは、広帯域4分の1波長板とも称される。
【0007】
この方法では、通常の周辺白色光106a(赤色光、緑色光、青色光)については効果的に反射を防止できるが、ディスプレイパネル100に対して斜めに入射する光106bについては直線偏光子104により完全に吸収することができない。これは、一軸性2分の1波長板108の軸と直線偏光子104の透過軸との夾角、および一軸性4分の1波長板102の軸と直線偏光子104の透過軸との夾角が、異なる角度で周辺光が表示装置に入射した際に変化することに起因する。そのため、図1および図2に示す表示装置は、共に斜光に対する反射防止特性に乏しいという不都合がある。
【0008】
図3は、図1に示す表示装置の反射状態をシミュレートした図である。図4は、図2に示す表示装置の反射状態をシミュレートした図である。図3および図4に示すように、それら二つの表示装置の反射防止特性はそれぞれ悪いことが理解できる。その図3において、極角が50°であってアジマス角が0°、90°、180°および270°の領域の部分における反射比は0.01よりも大きくなっている。図4においても同様に、極角が50°であってアジマス角が0°、90°、180°および270°の領域の部分における反射比は0.01よりも大きくなってしまっている。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な反射防止特性を有し、表示品質を向上させることが可能な反射防止偏光板と、それを用いた装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明の表示装置は、ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルの一側面上に配置された偏光子と、前記ディスプレイパネルと前記偏光子との間に配置された広帯域4分の1波長板とを備え、前記広帯域4分の1波長板は、2分の1波長板と、4分の1波長板とを有し、該2分の1波長板と該4分の1波長板とは、n_(x)およびn_(y)を面内主屈折率、n_(z)を厚さ方向の屈折率とした場合、それぞれN_(z)=(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))=0.3?0.8の関係を満足していることを特徴とする。
・・・略・・・
【0014】
(3)前記ディスプレイパネルが、液晶ディスプレイパネル、有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、および電界放射ディスプレイパネルからなる群から選ばれる。
【0015】
(4)前記偏光子が、前記ディスプレイパネルの水平方向に対して略平行な吸収軸を有している。
・・・略・・・
【0027】
また、上記した課題を解決するために、本発明の電子装置は、表示装置と、前記表示装置と電気的に結合された制御装置と、前記表示装置上に画像を表示すべく、前記制御装置と電気的に結合された入力装置とを備え、前記表示装置は、ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルの一側面上に配置された偏光子と、前記ディスプレイパネルと前記偏光子との間に配置された広帯域4分の1波長板とを備え、前記広帯域4分の1波長板は、2分の1波長板と、4分の1波長板とを有し、該2分の1波長板と該4分の1波長板とは、n_(x)およびn_(y)を面内主屈折率、n_(z)を厚さ方向の屈折率とした場合、それぞれN_(z)=(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))=0.3?0.8の関係を満足していることを特徴とする。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0035】
本発明では、それぞれN_(z)=(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))=0.3?0.8の関係を満足する4分の1波長板と、2分の1波長板とを備えている。そのため、いかなる角度で表示装置に入射する周辺光も、前記4分の1波長板、前記2分の1波長板および前記偏光子により効果的に吸収される。したがって、広角で良好な反射防止特性を得ることができる。
【0036】
また、本発明は良好な反射防止特性を有しているので、明確なコントラストを有する。したがって、表示品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を図5乃至図8に示した実施例に沿って詳細に説明する。
・・・略・・・
【実施例】
【0038】
図5は、本発明の実施例に係る広視野角反射防止表示装置の断面図である。図5に示すように、広視野角反射防止表示装置は、少なくとも、ディスプレイパネル100と、偏光子104と、4分の1波長板302および2分の1波長板304を有する広帯域4分の1波長板300と、を備えている。
【0039】
偏光子104は、ディスプレイパネル100の一側面上に設けられている。広帯域4分の1波長板300は、偏光子104とディスプレイパネル100との間に挟まれている。本発明の一実施例では、偏光子104と、4分の1波長板302との間に、2分の1波長板304が挟まれている。
【0040】
ディスプレイパネル100は反射性材料を含んでいる。その反射性材料は、たとえば金属線(データ線、走査線等)、電極(ゲート電極、ソース/ドレイン電極、蓄積コンデンサ等)、あるいは他の反射膜(半導体膜等)等である。
【0041】
また、ディスプレイパネル100は、液晶ディスプレイ(LCD)パネル、有機エレクトロルミネセンス(OEL)ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、電界放射ディスプレイパネル等からなる群から選ばれる。
【0042】
偏光子104は、例えば直線偏光子であり、4分の1波長板302は、例えば二軸性(biaxial)4分の1波長板である。2分の1波長板304は、例えば二軸性2分の1波長板である。
【0043】
特に、2分の1波長板304と4分の1波長板302とは、n_(x)およびn_(y)が面内主屈折率、n_(z)が厚さ方向の屈折率、n_(x)≠n_(y)≠n_(z)とした場合、それぞれ、N_(z)=(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))=0.3?0.8の関係を満足しており、好ましくはN_(z)=0.3?0.6である。
・・・略・・・
【0045】
図5に示すように、通常の周辺光106aは、直線偏光子104に入射する際に直線的に偏光する。その直線偏光106aは、広帯域4分の1波長板300に入射する際、その広帯域4分の1波長板300によって、たとえば左円偏光等の円偏光に変化して、ディスプレイパネル100へと透過する。その左円偏光は、ディスプレイパネル100の反射性材料(金属線、電極あるいは反射膜等)により反射するとともに、反転して右円偏光となる。なお、一実施例において偏光が当初から右円偏光であった場合は、同様にして左円偏光となる。
【0046】
その広帯域4分の1波長板300へと反射した右円偏光は、再び円偏光して、直線偏光子104の透過軸に対して垂直に接近する軸を有する直線偏光となる。ここで、該直線偏光軸と透過軸との間の角度は、好ましくは85°?90°である。このように、右円偏光と左円偏光とのいずれも、ディスプレイパネル100において透過時および反射時に直線偏光子104により吸収されるので、それらがディスプレイパネル100から放射された光信号と干渉することがない。
【0047】
斜めから入射する周辺光106bも、ディスプレイパネル100における透過および反射に際して通常の周辺光106aと同様の態様で通過する。これは、2分の1波長板304と4分の1波長板302とは共に、N_(z)=(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))=0.3?0.8、好ましくはNz=0.3?0.6(ただし、n_(x)≠n_(y)≠n_(z))を満足しているので、光が表示装置内に斜めに入射してもそれらの軸が同じ配向に固定されているためである。
・・・略・・・
【0051】
本発明の実施例に係る表示装置は、共にN_(z)=(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))=0.3?0.8の関係を満足する2分の1波長板と4分の1波長板とを備えているので、周辺光が表示装置に対して斜めに入射した場合であっても、直線偏光子の透過軸402と2分の1波長板の軸400との間に夾角θを有し、直線偏光子の透過軸402と4分の1波長板の軸404との間に夾角(2θ+45)を有している。そのため、直線偏光子104、4分の1波長板302および2分の1波長板304を有するラミネーション(図5参照)は、表示装置に斜めに入射する光に対しても良好に反射を防止することができる。
【0052】
なお、直線偏光子104の吸収軸(図5参照)がディスプレイパネル100の水平方向に対して略平行である場合、さらに反射の少ない良好な視認性・鮮明度を得ることができる。このため、本発明の実施例に係る表示装置は良好な反射防止特性および鮮明度を有するので、屋外環境でも使用することができる。
・・・略・・・
【0054】
このように、本発明に係る反射防止偏光板は、偏光子と、それぞれNz=(nx-nz)/(nx-ny)=0.3?0.8の関係を満足している、2分の1波長板および4分の1波長板とを備えている。したがって、該反射防止偏光板は、反射防止を必要とする表示装置や他の電子装置に適用されるべく広角で優れた反射防止を提供することができる。
・・・略・・・
【0058】
以上のように、本発明の表示装置と電子装置とは、それぞれNz=(nx-nz)/(nx-ny)=0.3?0.8の関係を満足する二軸性4分の1波長板と、二軸性2分の1波長板とを備えているので、いかなる角度で表示装置に入射する周辺光も、その二軸性4分の1波長板、二軸性2分の1波長板および直線偏光子を有するラミネーションにより効果的に吸収される。すなわち、本発明の表示装置および電子装置は、広角の反射防止特性を有している。
【0059】
また、このように本発明の表示装置と電子装置とは広角の反射防止特性を有しているので、明確なコントラストを有することになり、表示品質を向上させることができる。
・・・略・・・
【図面の簡単な説明】
【0061】
・・・略・・・
【図5】本発明の実施例に係る広視野角反射防止表示装置の断面図。
・・・略・・・
【符号の説明】
【0062】
100 ディスプレイパネル
104 偏光子
300 広帯域4分の1波長板
302 4分の1波長板
304 2分の1波長板」

(ウ) 「【図5】



イ 引用発明
引用文献1の特許請求の範囲1、4及び5の記載から、引用文献1には、次の「表示装置」に係る発明が記載されているものと認められる。
「ディスプレイパネルと、
前記ディスプレイパネルの一側面上に配置された偏光子と、
前記ディスプレイパネルと前記偏光子との間に配置された広帯域4分の1波長板とを備え、
前記広帯域4分の1波長板は、2分の1波長板と、4分の1波長板とを有し、
該2分の1波長板と該4分の1波長板とは、n_(x)およびn_(y)を面内主屈折率、n_(z)を厚さ方向の屈折率とした場合、それぞれN_(z)=(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))=0.3?0.8の関係を満足している、表示装置であって、
前記ディスプレイパネルは、有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルであり、
前記偏光子が、前記ディスプレイパネルの水平方向に対して略平行な吸収軸を有している、
表示装置。」(以下、「引用発明」という。)

ウ 引用方法発明
(ア) 引用文献1の段落【0002】及び【0058】の記載からみて、上記引用発明を用いて、「いかなる角度で表示装置に入射する周辺光も」「効果的に吸収さ」せ、「良好な反射防止特性を得」て、「明確なコントラストを有する」ものとする方法を把握することができる。
そうしてみると、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「引用発明の表示装置を用いて、いかなる角度で表示装置に入射する周辺光も効果的に吸収させ、良好な反射防止特性を得て、明確なコントラストを有するものとする方法。」(以下、「引用方法発明」という。)

(2) 本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と引用発明とを対比する。
(ア) 「λ/4位相差板」について
引用発明の「広帯域4分の1波長板」は、「広帯域」な「4分の1波長板」と理解されるところ、「4分の1波長板」が、「λ/4位相差板」とも呼ばれることは技術常識である。
してみると、引用発明の「広帯域4分の1波長板」は、本件訂正発明1の「λ/4位相差板」に相当する。

(イ) 「偏光板」について
a 引用発明は、「ディスプレイパネル」と、「前記ディスプレイパネルの一側面上に配置された偏光子」と、「前記ディスプレイパネルと前記偏光子との間に配置された広帯域4分の1波長板とを備え」る。
また、引用発明の「前記ディスプレイパネルは、有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルであ」る。そうすると、引用発明が備える「偏光子」、「広帯域4分の1波長板」が、外光反射防止を目的として、「有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネル」の観察者側にあることは明らかである。

b 同様に、引用発明の「表示装置」は、「ディスプレイパネル」の観察者側に向かって、「広帯域4分の1波長板」と「偏光子」をこの順に「備え」ることが理解される。

c 上記bより、引用発明の「表示装置」においては、「偏光子」が最も観察者側に配置されるものとなるところ、「偏光子」は機械的に脆弱なものであり、「偏光子」の偏光機能が維持されるよう、「偏光子」の保護膜として機能する光学部材を当該「偏光子」の観察者側に備えていることは技術的に明らかである。

d 上記cより、引用発明の「偏光子」と、「偏光子」の観察者側に配置される「偏光子」の保護膜として機能する光学部材とからなる構成は、技術的にみて、偏光板ということができる。
そうすると、引用発明は、偏光板を備えているということができる。また、引用発明の偏光板は、「偏光子」を備えているということもできる。

(ウ) 「有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ」、「画像表示装置」について
引用発明の「表示装置」は、「ディスプレイパネル」「を備え」る。
引用発明の「ディスプレイパネルは、有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルであ」る。
そうすると、引用発明の「ディスプレイパネル」は、「有機エレクトロルミネセンスディスプレイ」ということができる。
してみると、引用発明の「ディスプレイパネル」は、本件訂正発明1の「有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ」に相当する。
また、引用発明の「表示装置」は、本件訂正発明1の「画像表示装置」に相当する。

(エ) 上記(ウ)と(イ)dより、引用発明は、偏光板を備えている点において、本件訂正発明1の「画像表示装置」の「偏光板を備える」との要件を満たす。
また、引用発明は、本件訂正発明1の「前記偏光板が、偏光子」「を備え」との要件を満たす。

(オ) 上記(イ)aより、引用発明の「表示装置」は、「広帯域4分の1波長板」「を備え」る「有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネル」であるということができる。
また、上記(イ)aとbより、引用発明の「表示装置」は、「広帯域4分の1波長板」よりも観察者側に「偏光子」が配置された「有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネル」であるということができる。
そうすると、上記(イ)c,d及び上記(ウ)より、引用発明は、本件訂正発明1の「前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置され」た「有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであ」るとの要件を満たす。

(カ) 引用発明の「偏光子」は、「前記ディスプレイパネルの」「水平方向に対して略平行な吸収軸を有している」。
そうすると、引用発明は、「偏光子」の「吸収軸」方向が、「前記ディスプレイパネルの」「水平方向」に沿うように配置されているということができる。
してみると、引用発明は、本件訂正発明1の「前記偏光子の吸収軸方向」「が水平方向に沿うように、前記偏光子」「が配置されており」との要件を満たす。

(キ) 以上の対比結果を踏まえると、本件訂正発明1と引用発明は、
「偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、偏光子を備え、
前記偏光子の吸収軸方向が水平方向に沿うように、前記偏光子が配置されており、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである、
画像表示装置。」である点において一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件訂正発明1は、「前記偏光板が」、「前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「を備え」、
「前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、
n_(x)>N>n_(y) …(1)」、
「前記光透過性フィルムの進相軸方向」「が水平方向に沿うように」、「前記光透過性フィルムが配置されており」、
「前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置され」、
「前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22以上0.30以下である」のに対して、
引用発明は、そのような「光透過性フィルム」を備えているとはいえない点。

イ 判断
相違点1について検討する。
(ア) 取消理由で引用された引用文献2(特公平4-73123号公報(甲第2号証))には、「他の実施例」として、偏光板において、保護膜として、従来用いられているセルロース系あるいはポリアクリル系樹脂よりも、化学薬品に対する耐腐触性、耐熱、耐湿性などに優れたPET(ポリエチレンテレフタレート)を延伸加工したフィルムを用いるとともに、斜め方向から見たときに、延伸加工により生じる複屈折に起因して観察される着色干渉縞が現れないようにするために、レターデイションが10μm以上で、[(1/n_(y)^(2)-1/n_(x)^(2))/(1/n_(y)^(2)-1/n_(z)^(2))]^(1/2)<0.63を満足するn_(x)=1.59、n_(y)=1.70、n_(z)=1.51のPETフィルムの「サンプルII」を、(第6図に示されたように、)PETフィルムの延伸方向(PETフィルムの遅相軸方向に対応する)が偏光フィルムの偏光軸の方向と平行になるように、すなわち、PETフィルムの進相軸方向と偏光フィルムの吸収軸方向とが平行になるように、偏光フィルムの両面に、接着する技術(以下、「引用文献2記載技術」という。)が記載されている(特に、引用文献1の5欄35?40行(表中のサンプルII)及び7欄23行?8欄5行、第6図を参照。)。
(当合議体注:引用文献2の第6図は以下のものである。ここで、実線の矢印は偏光フィルム2の偏光軸の方向を、点線の矢印は保護膜1及び3の延伸方向を示す。

)
しかしながら、縦え、引用発明において、「偏光子」の保護膜を、耐腐触性、耐熱、耐湿性に優れたものとするとともに、斜め方向から見たときに着色干渉縞が現れないようにすることを考慮し、引用文献2記載技術を採用したとしても、上記相違点1に係る本件訂正発明1の、「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22以上0.30以下である」「ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「の進相軸方向」「が水平方向に沿うように」「配置され」た構成を得ることはできない。
なぜならば、引用文献2記載技術は、保護膜としてPETフィルムを用いたものであるところ、引用文献2の2欄22行?3欄3行には、「本発明の目的は、PETその他のポリエステル系フイルムの上記のような欠点を排除し、色むらの生じないポリエステルフイルムで保護された偏光板を提供することを目的とする。」(当合議体注:「保護されて偏光板」は「保護されて偏光板」の誤記である。)と記載されている。
ここで、本件優先日前の当業者ならば、ポリエステル(系)フィルムとして、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを心得ている。
しかしながら、本件優先日前の当業者ならば、PENフィルムよりもPETフィルムの方が安価で、また、延伸加工性に優れていることも、心得ている。
そうしてみると、引用発明の「偏光子」の「保護膜」として、PETフィルムに替えて、PENフィルムを採用することには特段の動機付けが必要といえる。
しかしながら、引用文献1及び引用文献2には、このような特段の動機付けを示唆するような記載はない。
また、このような特段の動機付けが、本件優先日前の当業者における技術常識から導き出されるともいえない。
さらに、PENフィルムよりもPETフィルムの方が安価で、また、延伸加工性に優れていることを勘案すると、引用発明の「偏光子」の「保護膜」として、PENフィルムを採用することには阻害要因があるともいえる。
念のために、当業者がPETフィルムでなくPENフィルムを採用すると仮定しても、「差(n_(x)-n_(y))」が「0.22以上0.30以下」の構成に至るとまではいえない。
よって、本件訂正発明1は、引用発明及び引用文献2(甲第2号証)に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、異議申立人が提出した甲第3号証の1、甲第3号証の2、甲第4号証の1?5、甲第5号証あるいは甲第6号証のいずれにも、上記の「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22以上0.30以下である」、「ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「の進相軸方向」「が水平方向に沿うように」「配置」する構成について記載も示唆もされていない。

(イ) 令和元年6月26日付の特許異議申立人提出の意見書について
a 特許異議申立人は、令和元年6月26日付けで新たな甲第7号証(特開2010-13569号公報)及び甲第8号証(梅本清司「大型液晶ディスプレイ用光学補償フィルム」、月刊ディスプレイ2007年10月号別冊、2007年10月17日、株式会社テクノタイムズ社発行、45?53頁)とともに意見書(以下、単に「意見書」という。)を提出し、本件訂正発明1について、「訂正事項・・・で訂正された「光透過性フィルムがポリエチレンナフタレートフィルムであり、差(nx-ny)が、0.22以上0.30以下である」点は、「光透過性フィルムが、式(1)(nx>N>ny)の関係を満たす」点と併せて、・・・甲第7号証に全て記載されている。」、「また、甲第6号証には、「偏光板が、偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有するポリエステルフィルム(光透過性フィルム)とを備える点」が、甲第2号証と同様に記載されており・・・、甲第6号証には、当該ポリエステルフィルムとして、ポリエチレンナフタレートフィルムを使用することも記載されている(段落0027)。」、「そして、甲第7号証に記載された発明は、偏光子の保護フィルムを含めた光学用途分野に有用なポリエチレンナフタレートフィルムを提供することを目的とするため、これを甲第1号証に記載された発明の偏光子保護フィルムとして使用することは、当業者に容易に想到できる。」、「従って、訂正後の請求項1に係る発明は、甲第1号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得るものであり、特許法第29条第2項の規定に違反しているため、・・・その特許は取り消されるべきものである。」と主張している(同意見書第6?7頁「(3)異議申立人の意見の内容」「1)請求項1について」参照。)。

b 特許異議申立人の上記の主張について検討する。
(a) 甲第7号証の段落【0001】の「本発明は、光学エレクトロニクス分野で使用される、ポリエチレンナフタレートの縦一軸延伸フィルムからなる高複屈折で高透明フィルムおよびその製造方法に関する。さらに、高複屈折を要求される液晶ディスプレイ用光学補償フィルムや液晶バックライト輝度向上フィルムに好適なポリエチレンナフタレートの縦一軸延伸フィルムに関する。」、【0002】の「従来、高複屈折(Δn)のフィルムは、液晶ディスプレイ分野の光学補償材料、液晶パネルに使用される偏光フィルムの粘着剤用離型フィルムの易検査化、また、光ピックアップ、デジタルカメラの光学フィルターなど波長板や偏光レンズ、偏光サングラスに用いられる二色性偏光素子の保護膜として使用されてきた。」及び【0041】の「本発明の縦一軸延伸フィルムは、新規液晶ディスプレイ分野での光学補償材料用基材フィルムや偏光フィルムの粘着剤用離形フィルムの基材フィルムとして使用でき、光学フィルム用途分野にて精度の高い効果を発揮する。」との記載によれば、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」は、液晶ディスプレイの「光学補償材料用基材フィルム」、「偏光フィルムの粘着剤用離形フィルム」、「液晶バックライト輝度向上フィルム」、あるいは、「光ピックアップ、デジタルカメラの光学フィルターなど波長板」や「偏光レンズ、偏光サングラスに用いられる二色性偏光素子」の「保護膜」として用いることを前提としたものである。
そうすると、良好な反射防止特性、明確なコントラストを得るために、有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの一側面上に偏光子と広帯域4分の1波長板とを備えた引用発明が属する技術分野と、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」が適用される技術分野とは異なる。

(b) そうしてみると、引用発明において、単なる「偏光子」の「保護膜」として、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を採用する理由が見当たらない。

(c) また、PENフィルムよりもPETフィルムの方が安価で、また、延伸加工性にも優れていることを勘案すると、引用発明において、単なる「偏光子」の「保護膜」として、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を採用することには、阻害要因があるともいえる。

(d) さらに、引用発明と、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を組み合わせると仮定しても、相違点1に係る「前記光透過性フィルムの進相軸方向」「が水平方向に沿うように」、「前記光透過性フィルムが配置されており」、「前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が」「0.22以上0.30以下である」との構成を採用するとはいえない。
なぜならば、PETフィルムの進相軸方向と偏光フィルムの吸収軸方向とを平行にする構成は、引用文献2に記載されているが、引用文献2を考慮する当業者であれば、屈折率値についても引用文献2に記載された屈折率値(n_(x)=1.59、n_(y)=1.70、n_(z)=1.51)を参考にするはずであるから、「差(n_(x)-n_(y))」が「0.22以上0.30以下」の構成に至るとまではいえない。

(e) 甲第8号証にも、光学補償フィルムについて、一軸延伸により「n_(x)>n_(y)=n_(z)」の関係となることが開示されているだけであり、「差(n_(x)-n_(y))」が「0.22以上0.30以下であ」る「ポリエチレンナフタレートフィルム」については記載も示唆もされていない。

e してみると、本件訂正発明1は、引用発明、引用文献2(甲第2号証)に記載された技術及び甲第7号証、甲第8号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ 小括
したがって、本件訂正発明1は、当業者が引用発明、引用文献2(甲第2号証)に記載された技術、甲第3号証の1?甲第6号証に記載された技術及び甲第7号証、甲第8号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

(3) 本件訂正発明5?7について
ア 本件特許の特許請求の範囲の請求項5?7は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件訂正発明5?7は、本件訂正発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。

イ そうすると、前記(2)のとおり、本件訂正発明1は、当業者が引用発明、引用文献2(甲第2号証)に記載された技術、甲第3号証の1?甲第6号証に記載された技術及び甲第7号証、甲第8号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件訂正発明5?7も、当業者が引用発明、引用文献2(甲第2号証)に記載された技術、甲第3号証の1?甲第6号証に記載された技術及び甲第7号証、甲第8号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

(4) 本件訂正発明3について
ア 対比
(ア) 本件訂正発明3と引用発明との対比は、前記(2)アと同様である。
(イ) 「表示素子」について
上記(2)ア(ウ)より、引用発明の「ディスプレイパネル」(「有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネル」)は、本件訂正発明3の「表示素子」に相当する。
そうすると、上記(2)ア(オ)より、引用発明は、本件訂正発明3の「前記画像表示装置が、λ/4位相差板および表示素子を備え、前記偏光板が前記λ/4位相差板および前記表示素子よりも観察者側に配置されている」「有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであ」るとの要件を満たす。

イ 上記アの対比結果を踏まえると、本件訂正発明3と引用発明は、
「偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、偏光子を備え、
前記偏光子の吸収軸方向が水平方向に沿うように、前記偏光子が配置されており、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板および表示素子を備え、前記偏光板が前記λ/4位相差板および前記表示素子よりも観察者側に配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである、
画像表示装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点3)
本件訂正発明3は、「前記偏光板が」、「前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「を備え」、
「前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、
n_(x)>N>n_(y) …(1)」、
「前記光透過性フィルムの進相軸方向」「が水平方向に沿うように」、「前記光透過性フィルムが配置されており」、
「前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置され」、
「前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22である」のに対して、
引用発明は、そのような「光透過性フィルム」を備えているとはいえない点。

イ 判断
相違点3について検討する。
(ア) 上記(2)イ(ア)で検討したのと同様に、縦え、引用発明において、「偏光子」の保護膜を、耐腐触性、耐熱、耐湿性に優れたものとするとともに、斜め方向から見たときに着色干渉縞が現れないようにすることを考慮し、引用文献2記載技術を採用したとしても、上記相違点3に係る本件訂正発明3の、「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22である」「ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「の進相軸方向」「が水平方向に沿うように」「配置され」た構成を得ることはできない。
なぜならば、本件優先日前の当業者の技術常識を踏まえると、引用発明の「偏光子」の「保護膜」として、PENフィルムを採用することには特段の動機付けが必要といえるところ、引用文献1及び引用文献2には、このような特段の動機付けを示唆するような記載はない。また、このような特段の動機付けが、本件優先日前の当業者における技術常識から導き出されるともいえない。
さらに、PENフィルムよりもPETフィルムの方が安価で、また、延伸加工性に優れていることを勘案すると、引用発明の「偏光子」の「保護膜」として、PENフィルムを採用することには阻害要因があるともいえる。
念のために、当業者がPETフィルムでなくPENフィルムを採用すると仮定しても、「差(n_(x)-n_(y))」が「0.22」の構成に至るとまではいえない。
よって、本件訂正発明3は、引用発明及び引用文献2(甲第2号証)に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、異議申立人が提出した甲第3号証の1?甲第6号証のいずれにも、上記の「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22である」、「ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「の進相軸方向」「が水平方向に沿うように」「配置」する構成について記載も示唆もされていない。

(イ) 令和元年6月26日付の特許異議申立人提出の意見書について
a 特許異議申立人は、意見書において、本件訂正発明3について、「訂正事項・・・に係る構成「差(nx-ny)が、0.22である」についても、甲第7号証に記載されているに等しい事項である。かりに、訂正事項・・・に係る構成が甲第7号証に記載されていないとしても、差(nx-ny)を0.22に限定することに、格別な技術的意義はなく、選択発明を認めるべき顕著な効果も有していない。」、「従って、訂正後の請求項3に係る発明は、甲第1号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得るものであり、特許法第29条第2項の規定に違反しているため、・・・その特許は取り消されるべきものである。」と主張している(同意見書第7頁「(3)異議申立人の意見の内容」「2)請求項3について」参照。)。

b 特許異議申立人の上記の主張について検討する。
(a) 上記(2)イ(イ)において検討したのと同様に、引用発明が属する技術分野と、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」が適用される技術分野とは異なる。
そうしてみると、引用発明において、単なる「偏光子」の「保護膜」として、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を採用する理由が見当たらない。
また、PENフィルムよりもPETフィルムの方が安価で、また、延伸加工性にも優れていることを勘案すると、引用発明において、単なる「偏光子」の「保護膜」として、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を採用することには、阻害要因があるともいえる。

(b) さらに、引用発明と、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を組み合わせると仮定しても、相違点3に係る「前記光透過性フィルムの進相軸方向」「が水平方向に沿うように」、「前記光透過性フィルムが配置されており」、「前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22」の構成を採用するとはいえない。
なぜならば、PETフィルムの進相軸方向と偏光フィルムの吸収軸方向とを平行にする構成は、引用文献2に記載されているが、引用文献2を考慮する当業者であれば、屈折率値についても引用文献2に記載された屈折率値を参考にするはずであるから、「差(n_(x)-n_(y))」が「0.22」の構成に至るとまではいえない。

ウ 小括
したがって、本件訂正発明3は、当業者が引用発明、引用文献2(甲第2号証)に記載された技術、甲第3号証の1?甲第6号証に記載された技術及び甲第7号証、甲第8号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

(5) 本件訂正発明8について
ア 対比
本件訂正発明8と引用方法発明とを対比する。
(ア) 本件訂正発明8における「引用発明の表示装置」及び本件訂正発明8における「画像表示装置」に係る対比は、前記(2)アと同様である。

(イ) 引用方法発明は、「引用発明の表示装置を用いて」、「いかなる角度で表示装置に入射する周辺光も効果的に吸収させ、良好な反射防止特性を得て、明確なコントラストを有するものとする方法」である。
そうすると、引用方法発明は、「引用発明の表示装置」において、「明確なコントラストを有するものとする方法」である。

(ウ) 引用文献1の段落【0003】の記載によれば、引用文献1における「コントラスト比」は、「表示部の明状態と暗状態との比率であり、暗状態は、実際に適用されるすべての環境下で周辺光からの反射光によって左右される」ものである。
一方、本件訂正発明8の「画像表示層における明所コントラスト」は、本件特許明細書の段落【0070】によれば、「{(白表示の輝度+外光反射)/(黒表示の輝度+外光反射)}として算出され」るものであり、「外光反射を低減することができれば、明所コントラストを向上させることができる」ものである。
そうすると、技術的にみて、引用方法発明における「コントラスト」は、本件訂正発明8の「画像表示装置における明所コントラスト」に相当する。
また、上記(イ)より、引用方法発明は、「表示装置」の「コントラスト」を「明確な」もの、すなわち、大きな(高い)ものとする方法であるということができる。
してみると、引用方法発明の「明確なコントラストを有するものとする方法」は、本件訂正発明8の「画像表示装置における明所コントラスト」を改善する方法に相当するということができる。

(エ) 以上の対比結果を踏まえると、本件訂正発明8と引用方法発明とは、
「偏光子を備えた偏光板を、前記偏光板における前記偏光子の吸収軸方向が水平方向に沿うように画像表示装置に配置する画像表示装置における明所コントラストの改善方法であって、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置された有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである、
前記改善方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点8)
本件訂正発明8においては、「画像表示装置」が、「前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「を備え」、
「前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満た」し、
「n_(x)>N>n_(y) …(1)」
「前記光透過性フィルムの進相軸方向」「が水平方向に沿うように画像表示装置に配置」され、
「前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置され」、
「前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))が、1.82であり、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))が、1.60であり、前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22である」のに対して、
引用方法発明においては、「表示装置」が、そのような光透過性フィルムを備えているとはいえない点。

イ 判断
相違点8について検討する。
(ア) 相違点1について前記(2)イ(ア)で検討したのと同様に、縦え、引用方法発明において、「偏光子」の保護膜を、耐腐触性、耐熱、耐湿性に優れたものとするとともに、斜め方向から見たときに着色干渉縞が現れないようにすることを考慮し、引用文献2記載技術を採用したとしても、上記相違点8に係る本件訂正発明8の、「n_(x)」「が」「1.82であり」、「n_(y)」「が」「1.60であり」、「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22である」「ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「の進相軸方向」「が水平方向に沿うように」「配置され」た構成を得ることはできない。
なぜならば、本件優先日前の当業者の技術常識を踏まえると、引用方法発明の「偏光子」の「保護膜」として、PENフィルムを採用することには特段の動機付けが必要といえるところ、引用文献1及び引用文献2には、このような特段の動機付けを示唆するような記載はない。また、このような特段の動機付けが、本件優先日前の当業者における技術常識から導き出されるともいえない。
さらに、PENフィルムよりもPETフィルムの方が安価で、また、延伸加工性に優れていることを勘案すると、引用方法発明の「偏光子」の「保護膜」として、PENフィルムを採用することには阻害要因があるともいえる。
念のために、当業者がPETフィルムでなくPENフィルムを採用すると仮定しても、「n_(x)」「が」「1.82」、「n_(y)」「が」「1.60」、「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22」の構成に至るとまではいえない。
よって、本件訂正発明8は、引用方法発明及び引用文献2(甲第2号証)に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、異議申立人が提出した甲第3号証の1?甲第6号証のいずれにも、上記の「n_(x)」が「1.82」、「n_(y)」が「1.60」、「差(n_(x)-n_(y))」が「0.22である」、「ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「の進相軸方向」「が水平方向に沿うように」「配置」する構成について記載も示唆もされていない。

(イ) 令和元年6月26日付の特許異議申立人提出の意見書について
a 特許異議申立人は、意見書において、本件訂正発明8について、「訂正事項・・・で訂正された「光透過性フィルムがポリエチレンナフタレートフィルムであり、差(nx-ny)が、0.22である」点は、「光透過性フィルムが、式(1)(nx>N>ny)の関係を満たす」点と併せて、・・・甲第7号証に記載されているか、記載されているに等しい事項である。」、「また、甲第6号証には、「偏光板が、偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有するポリエステルフィルム(光透過性フィルム)とを備える点」が、甲第2号証と同様に記載されており・・・、甲第6号証には、当該ポリエステルフィルムとして、ポリエチレンナフタレートフィルムを使用することも記載されている段落(0027)。」、「そして、・・・「光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(nx)が、1.82であり、・・・進相軸方向の屈折率(ny)が、1.60であり、」の点についても、甲第7号証が記載されているに等しいといえる。仮に、・・・構成が甲第7号証に記載されていないとしても、nxとnyを特定の値に限定することに、格別の技術的意義はなく、選択発明を認めるべき顕著な効果も有していない。」、「そして、甲第7号証に記載された発明は、偏光子の保護フィルムを含めた光学用途分野に有用なポリエチレンナフタレートフィルムを提供することを目的とするため、これを甲第1号証に記載された発明の偏光子保護フィルムとして使用することは、当業者に容易になし得る。」、「従って、訂正後の請求項8に係る発明は、甲第1号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得るものであり、特許法第29条第2項の規定に違反しているため、・・・その特許は取り消されるべきものである。」と主張している(同意見書第7?8頁「(3)異議申立人の意見の内容」「3)請求項8について」参照。)。

b 特許異議申立人の上記の主張について検討する。
(a) 上記(2)イ(イ)において検討したのと同様に、引用方法発明が属する技術分野と、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」が適用される技術分野とは異なる。
そうしてみると、引用方法発明において、単なる「偏光子」の「保護膜」として、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を採用する理由が見当たらない。
また、PENフィルムよりもPETフィルムの方が安価で、また、延伸加工性にも優れていることを勘案すると、引用方法発明において、単なる「偏光子」の「保護膜」として、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を採用することには、阻害要因があるともいえる。

(b) さらに、引用方法発明と、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を組み合わせると仮定しても、相違点8に係る、「前記光透過性フィルムの進相軸方向」「が水平方向に沿うように画像表示装置に配置」され、「n_(x)」「が」「1.82」、「n_(y)」「が」「1.60」、「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22」の構成を採用するとはいえない。
なぜならば、PETフィルムの進相軸方向と偏光フィルムの吸収軸方向とを平行にする構成は、引用文献2に記載されているが、引用文献2を考慮する当業者であれば、屈折率値についても引用文献2に記載された屈折率値を参考にするはずであるから、「n_(x)」「が」「1.82」、「n_(y)」「が」「1.60」、「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22」の構成に至るとまではいえない。

ウ 小括
したがって、本件訂正発明8は、当業者が引用方法発明、引用文献2(甲第2号証)に記載された技術、甲第3号証の1?甲第6号証に記載された技術及び甲第7号証、甲第8号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

(6) 本件訂正発明12?14について
ア 本件特許の特許請求の範囲の請求項12?14は、いずれも、請求項8を直接又は間接的に引用するものであって、本件訂正発明12?14は、本件訂正発明8の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。

イ そうすると、前記(5)のとおり、本件訂正発明8は、当業者が引用方法発明、引用文献2(甲第2号証)に記載された技術、甲第3号証の1?甲第6号証に記載された技術及び甲第7号証、甲第8号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件訂正発明12?14も、当業者が引用方法発明、引用文献2(甲第2号証)に記載された技術、甲第3号証の1?甲第6号証に記載された技術及び甲第7号証、甲第8号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるといえない。

(7) 本件訂正発明10について
ア 対比
本件訂正発明10と引用方法発明とを対比する。
(ア) 本件訂正発明10と引用方法発明との対比は、上記(5)アと同様である。

(イ) 引用方法発明の「引用発明の表示素子」については、上記(4)アと同様である。

(ウ) 以上の対比結果を踏まえると、本件訂正発明10と引用方法発明とは、
「偏光子を備えた偏光板を、
前記偏光板における前記偏光子の吸収軸方向が水平方向に沿うように画像表示装置に配置する画像表示装置における明所コントラストの改善方法であって、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板および表示素子を備え、前記偏光板が前記λ/4位相差板および前記表示素子よりも観察者側に配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである、
前記改善方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点10)
本件訂正発明10においては、「画像表示装置」が、「前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「を備え」、
「前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満た」し、 「n_(x)>N>n_(y) …(1)」、
「前記光透過性フィルムの進相軸方向」「が水平方向に沿うように画像表示装置に配置」し、
「前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置され」、
「前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))が、1.82であり、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))が、1.60であり、前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22であり、前記光透過性フィルムの平均屈折率(N)が、1.63である」のに対して、
引用方法発明においては、「表示装置」が、そのような光透過性フィルムを備えているとはいえない点。

イ 判断
相違点10について検討する。
(ア) 相違点1について前記(2)イ(ア)で検討したのと同様に、縦え、引用方法発明において、「偏光子」の保護膜を、耐腐触性、耐熱、耐湿性に優れたものとするとともに、斜め方向から見たときに着色干渉縞が現れないようにすることを考慮し、引用文献2記載技術を採用したとしても、上記相違点10に係る本件訂正発明10の、「n_(x)」「が」「1.82であり」、「n_(y)」「が」「1.60であり」、「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22であり」、「平均屈折率(N)が」「1.63である」「ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「の進相軸方向」「が水平方向に沿うように画像表示装置に配置され」た構成を得ることはできない。
なぜならば、本件優先日前の当業者の技術常識を踏まえると、引用方法発明の「偏光子」の「保護膜」として、PENフィルムを採用することには特段の動機付けが必要といえるところ、引用文献1及び引用文献2には、このような特段の動機付けを示唆するような記載はない。また、このような特段の動機付けが、本件優先日前の当業者における技術常識から導き出されるともいえない。
さらに、PENフィルムよりもPETフィルムの方が安価で、また、延伸加工性に優れていることを勘案すると、引用方法発明の「偏光子」の「保護膜」として、PENフィルムを採用することには阻害要因があるともいえる。
念のために、当業者がPETフィルムでなくPENフィルムを採用すると仮定しても、「n_(x)」「が」「1.82」、「n_(y)」「が」「1.60」、「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22」、「平均屈折率(N)が」「1.63」の構成に至るとまではいえない。
よって、本件訂正発明10は、引用方法発明及び引用文献2(甲第2号証)に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、異議申立人が提出した甲第3号証の1?甲第6号証のいずれにも、上記の「n_(x)」が「1.82」、「n_(y)」が「1.60」、「差(n_(x)-n_(y))」が「0.22」、「平均屈折率(N)」が「1.63である」「ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「の進相軸方向」「が水平方向に沿うように」「配置」する構成について記載も示唆もされていない。

(イ) 令和元年6月26日付の特許異議申立人提出の意見書について
a 特許異議申立人は、意見書において、本件訂正発明10について、「特許権者は、請求項10に対して、訂正後の請求項8の限定を付加して独立形式に書き替えるにあたり、「前記光透過性フィルムの平均屈折率(N)が、1.63である」を付加して訂正をしている・・・。」、「請求項8について述べたように、・・・訂正後の請求項8に係る発明は、甲第1号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得るものである。」、「また、・・・訂正事項・・・に係る「前記光透過性フィルムの平均屈折率(N)が、1.63である」についても、甲第7号証に記載されているに等しい事項である。仮に、訂正事項・・・に係る構成が甲第7号証に記載されていないとしても、平均屈折率(N)を特定の値に限定することに、特別な技術的意義はなく、選択発明を認めるべき顕著な効果も有していない。」、「従って、訂正後の請求項10に係る発明は、甲第1号証から甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得るものであり、特許法第29条第2項の規定に違反しているため、・・・その特許は取り消されるべきである。」旨主張している(同意見書第8?9頁「(3)異議申立人の意見の内容」「4)請求項10について」参照。)。

b 特許異議申立人の上記の主張について検討する。
(a) 上記(2)イ(イ)において検討したのと同様に、引用方法発明が属する技術分野と、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」が適用される技術分野とは異なる。
そうしてみると、引用方法発明において、単なる「偏光子」の「保護膜」として、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を採用する理由が見当たらない。
また、PENフィルムよりもPETフィルムの方が安価で、また、延伸加工性にも優れていることを勘案すると、引用方法発明において、単なる「偏光子」の「保護膜」として、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を採用することには、阻害要因があるともいえる。

(b) さらに、引用方法発明と、甲第7号証に記載された「縦1軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム」を組み合わせると仮定しても、相違点10に係る、「前記光透過性フィルムの進相軸方向」「が水平方向に沿うように画像表示装置に配置」され、「n_(x)」「が」「1.82」、「n_(y)」「が」「1.60」、「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22」、「平均屈折率(N)が」「1.63」の構成を採用するとはいえない。
なぜならば、PETフィルムの進相軸方向と偏光フィルムの吸収軸方向とを平行にする構成は、引用文献2に記載されているが、引用文献2を考慮する当業者であれば、屈折率値についても引用文献2に記載された屈折率値を参考にするはずであるから、「n_(x)」「が」「1.82」、「n_(y)」「が」「1.60」、「差(n_(x)-n_(y))が」「0.22」、「平均屈折率(N)が」「1.63」の構成に至るとまではいえない。

ウ 小括
したがって、本件訂正発明10は、当業者が引用方法発明、引用文献2(甲第2号証)に記載された技術、甲第3号証の1?甲第6号証に記載された技術及び甲第7号証、甲第8号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

2 理由2(サポート要件)について
(1) 本件特許の明細書の段落【0005】によれば、本件訂正発明1が解決しようとする課題は、「複屈折率を有した保護フィルムを含む偏光板を用いることにより、或いは、本来複屈折率を有さない材料からなる偏光板用保護フィルムに敢えて意図的に複屈折率を付与することにより、当該偏光板表示装置のコントラストを改善する」ことである。

(2) 本件訂正発明1は、「複屈折率を有した保護フィルム」として、「前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルム」「を備え」ている。
さらに、本件訂正発明1は、「式(1)」「n_(x)>N>n_(y)」の条件及び「差(n_(x)-n_(y))が」「0.05以上0.3以下」の条件を満たし(本件訂正発明1の「差(n_(x)-n_(y))」は「0.22以上0.30以下である」。)、「光透過性フィルムの進相軸方向と」、「偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように」、「偏光子および」「光透過性フィルムが配置され」るとともに、「光透過性フィルムが」「偏光子よりも観察者側に位置するように」「偏光板が配置されている」という構成を具備する。

(3) そうしてみると、本件訂正発明1の上記構成、及び本件特許の明細書の段落【0069】?【0074】の明所コントラストの改善に関する記載を考慮すると、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明において、上記の発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものである。
本件訂正発明3、5?8、10、12?14についても同様である。

(4) 以上のとおりであるから、本件訂正発明1、3、5?8、10、12?14は、発明の詳細な記載されたものであるから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないということはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人は、特許異議申立理由B(特許法第36条第6項第1号)として、「独立請求項である本件特許発明1は、構成E『前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置された有機エレクトロルミネセンスディスプレイであり、』を備えるものである。また、他の独立請求項である本件特許発明8も、構成Eと同じ構成Qを備えるものである。」、「しかし、本件特許公報の明細書には、有機ELを用いた実施例の記載はなく、λ/4位相差板と偏光板とを配置した場合の実施例の記載もない。」、「なお、実施例における反射率の測定結果は、表示装置を使用した時の結果ではなく(λ/4位相差板がない偏光板としての反射率である)、また甲5に記載された技術常識からの計算値とほぼ一致しているため、技術常識を確認した程度の記載にすぎない。」、「そして、実施例では、液晶表示装置を用いた場合のコントラストが、黒表示における黒色度により評価されているが、液晶表示装置では黒表示においても光漏れが生じることが技術常識であるためその影響を受けるのに対して、有機ELでは黒表示における光漏れが生じない。また、有機ELでは、黒表示において反射性材料(電極等)からの反射が生じ、その程度が液晶表示装置と異なることも技術常識である。このため、液晶表示装置を用いた場合のコントラストが、実施例が比較例より優れていても、有機ELを用いた場合に同じ結果が得られるとは限らない。従って、液晶表示装置を用いた実施例の結果を、有機ELを用いた場合にまで、拡張ないし一般化することは困難である。」、「一方、本件特許公報には、有機ELを用いた場合の効果の記載として、『偏光子、λ/4位相差板は、外光反射防止用円偏光板として機能するわけであるが、通常のλ/4位相差板は、ある特定の波長に対してのみ、λ/4位相差板として機能するため、入射したすべての外光反射防止できない。したがって、偏光子の吸収軸を水平方向として、S偏光を吸収し、ディスプレイ内部に入射する光を低下させることにより、観察者側に戻ってくる光を低下させることができる。』との記載(段落0085)のみが存在する。」、「しかし、この記載は、単に、偏光子の吸収軸を水平にしたことによる効果の記載であり、光透過性フィルムとの関係で記載された効果ではない。また、上記記載は、甲1発明における偏光子の吸収軸を水平方向にしたことによる効果を記述しているに過ぎない。このため、上記記載から、本件特許発明1において有機ELの偏光子に特定の光学特性・・・を有する光透過性フィルムを用いた場合の効果を、当業者が推認することはできない。」、「従って、本件特許発明1は、課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えており、サポート要件違反である。・・・同じ構成を備える本件特許発明2?14についても同様である。」と主張している。

(2) 請求人が主張するとおり、有機ELと液晶表示装置とでは表示動作原理が異なり、黒表示における漏れ光や電極等の反射性材料による反射光等の点で前提が異なるとしても、有機ELを備える本件訂正発明1は、観察者側から、順番に「光透過性フィルム」、「偏光子」、「λ/4位相差板」、「有機エレクトロルミネセンスディスプレイ」を配置し、「光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルム」を配置した構成としたものであり、本件特許の明細書の段落【0069】?【0074】及び【0085】の明所コントラストの改善に関する記載を考慮すると、「屈折率差」による外光反射が効果的に防止されるとともに、観察者側に戻ってくる光も低下されているものであるから、外光反射や漏れ光はそもそも少ないと理解できる。
そうしてみると、「屈折率差」による外光反射の有無及びその程度が、有機ELの明所コントスト及びその改善への寄与が大きいと理解できることから、縦え、本件特許明細書に、有機ELを用いた実施例の記載はなく、λ/4位相差板と偏光板とを配置した場合の実施例の記載もないとしても、当業者は、(n_(x)-n_(y))=0.22のポリエチレンナフタレートからなる光透過性フィルムを用いた実施例1の液晶モニターによる黒表示の官能評価結果に基づいて、有機ELを用いた本件訂正発明1であっても、表示装置の(明所)コントラストを目視で感知できる程度にまで改善することができると推認あるいは理解することができる。
本件訂正発明3、5?8、10、12?14についても同様である。

(3) よって、本件訂正発明1、3、5?8、10、12?14は、発明の詳細な記載されたものであるから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていないということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、3、5?8、10、12?14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3、5?8、10、12?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2、4、9、11は、本件訂正で削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議申立てについて、本件特許の請求項2、4、9、11に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルムが配置されており、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22以上0.30以下であることを特徴とする、画像表示装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たし、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように、前記偏光子および前記光透過性フィルムが配置されており、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板および表示素子を備え、前記偏光板が前記λ/4位相差板および前記表示素子よりも観察者側に配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22であることを特徴とする、画像表示装置。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記光透過性フィルムにおける前記偏光子が形成されている面とは反対側の面に形成され、かつ前記光透過性フィルムの進相軸方向と平行となる方向における屈折率が前記光透過性フィルムの進相軸方向の屈折率よりも低い機能層をさらに備える、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記光透過性フィルムの平均屈折率よりも低い平均屈折率を有する機能層をさらに備える、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記機能層が、ハードコート層、または防眩層である、請求項5または6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たす偏光板を、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光板における前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように画像表示装置に配置することを特徴とする、画像表示装置における明所コントラストの改善方法であって、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板を備え、かつ前記λ/4位相差板よりも観察者側に前記偏光板が配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))が、1.82であり、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))が、1.60であり、前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22である、前記改善方法。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
偏光子と、前記偏光子の片面に設けられた、面内に複屈折性を有する、ポリエチレンナフタレートフィルムである光透過性フィルムとを備え、
前記光透過性フィルムの面内における屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をn_(x)とし、前記面内における前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をn_(y)とし、前記光透過性フィルムの平均屈折率をNとしたとき、前記光透過性フィルムが、下記式(1)の関係を満たす偏光板を、
n_(x)>N>n_(y) …(1)
前記光透過性フィルムの進相軸方向と、前記偏光板における前記偏光子の吸収軸方向と、の両方が水平方向に沿うように画像表示装置に配置することを特徴とする、画像表示装置における明所コントラストの改善方法であって、
前記画像表示装置が、λ/4位相差板および表示素子を備え、前記偏光板が前記λ/4位相差板および前記表示素子よりも観察者側に配置されているとともに、前記光透過性フィルムが前記偏光子よりも観察者側に位置するように前記偏光板が配置されている有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであり、
前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))が、1.82であり、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))が、1.60であり、前記光透過性フィルムの遅相軸方向の屈折率(n_(x))と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n_(y))との差(n_(x)-n_(y))が、0.22であり、前記光透過性フィルムの平均屈折率(N)が、1.63である、前記改善方法。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
前記光透過性フィルムにおける前記偏光子が形成されている面とは反対側の面に形成され、かつ前記光透過性フィルムの進相軸方向と平行となる方向における屈折率が前記光透過性フィルムの進相軸方向の屈折率よりも低い機能層をさらに備える、請求項8に記載の改善方法。
【請求項13】
前記光透過性フィルムの平均屈折率よりも低い平均屈折率を有する機能層をさらに備える、請求項8に記載の改善方法。
【請求項14】
前記機能層が、ハードコート層、または防眩層である、請求項12または13に記載の改善方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-08-29 
出願番号 特願2015-507969(P2015-507969)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G02B)
P 1 651・ 537- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 徹  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
河原 正
登録日 2018-05-18 
登録番号 特許第6338155号(P6338155)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 偏光板、画像表示装置、および画像表示装置における明所コントラストの改善方法  
代理人 永井 浩之  
代理人 浅野 真理  
代理人 浅野 真理  
代理人 朝倉 悟  
代理人 永井 浩之  
代理人 鈴木 啓靖  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 中村 行孝  
代理人 朝倉 悟  
代理人 鈴木 啓靖  
代理人 中村 行孝  

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