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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C22C
管理番号 1355994
異議申立番号 異議2019-700521  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-02 
確定日 2019-10-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6471270号発明「水素吸蔵合金」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6471270号の請求項1,3ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6471270号の請求項1?8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は,2017年(平成29年)12月20日(優先権主張 平成28年12月26日)を国際出願日とする特許出願であって,平成31年 1月25日にその特許権の設定登録がされ,同年 2月13日に特許掲載公報が発行され,その後,その請求項1,3?8に係る特許に対し,令和 1年 7月 2日に特許異議申立人 古賀純明(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
本件特許の請求項1?8に係る発明は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される,次のとおりのものである(以下,各々「本件発明1」?「本件発明8」という。)。

「【請求項1】
CaCu_(5)型、すなわちAB_(5)型の結晶構造の母相を有する水素吸蔵合金であって、
Aサイトは、Laを含有する希土類元素から構成され、且つ、
Bサイトは、Coを含有せず、Ni、Al及びMnを少なくとも含有し、Alの含有量(モル比)に対するMnの含有量(モル比)の割合(Mn/Al)が0.60以上1.48以下であり、且つ、
Alの含有量(モル比)とMnの含有量(モル比)の合計含有量に対するLaの含有量(モル比)の割合(La/(Mn+Al))が1.32以上であり、且つ、
粉末X線回折測定から得られるa軸長が5.03Å以上5.07Å以下であることを特徴とする水素吸蔵合金。
【請求項2】
Bサイトは、Alの含有量(モル比)に対するMnの含有量(モル比)の割合(Mn/Al)が1.15以上1.48以下であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金。
【請求項3】
CaCu_(5)型、すなわちAB_(5)型の結晶構造の母相を有する水素吸蔵合金であって、
一般式:MmNiaMnbAlc(式中、MmはLaを含有する希土類元素、式中aは3.8以上4.7以下、bは0.1以上0.6以下、cは0.1以上0.6以下。)で表すことができ、
Aサイトを構成する元素の合計モル数に対するBサイトを構成する元素の合計モル数の比率(「ABx」と称する)が4.85≦ABx≦5.40である請求項1又は2に記載の水素吸蔵合金。
【請求項4】
CaCu_(5)型、すなわちAB_(5)型の結晶構造の母相を有する水素吸蔵合金であって、
一般式:MmNiaMnbAlc(式中、MmはLaを含有する希土類元素、式中aは3.8以上4.7以下、bは0.1以上0.6以下、cは0.1以上0.6以下。)で表すことができ、
Aサイトを構成する元素の合計モル数に対するBサイトを構成する元素の合計モル数の比率(「ABx」と称する)が5.00≦ABx≦5.40である請求項1又は2に記載の水素吸蔵合金。
【請求項5】
45℃における圧力-組成等温線図(PCT曲線)において、水素吸蔵量(H/M)0.5における平衡水素圧が0.005MPa以上0.035MPa以下であることを特徴とする請求項1?4の何れかに記載の水素吸蔵合金。
【請求項6】
請求項1?5の何れかに記載の水素吸蔵合金を含有するニッケル水素電池の負極活物質。
【請求項7】
請求項6に記載の負極活物質を用いたニッケル水素電池。
【請求項8】
請求項6に記載の負極活物質を用いた、電気自動車或いはハイブリッド自動車に搭載するニッケル水素電池。」

3 申立理由の概要
申立人は,甲第1号証?甲第8号証を提出し,本件発明1,3?8は,甲第1?4号証に記載された発明及び甲第5?8号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,同発明に係る特許は,同法第113条第2号の規定に違反して特許されたものである旨の特許異議の申立てをしている。

甲第1号証 欧州特許出願公開第0591952号明細書
甲第2号証 「新版水素吸蔵合金-その物性と応用-」,アグネ技術センター,2008年 7月31日発行,p.125,138?140
甲第3号証 特開2002-146458号公報
甲第4号証 Electrochimica Acta,vol.52(2007),p.2423-2428
甲第5号証 Energy & Environmental Science,2011.4
甲第6号証 Materials Transaction,vol.46, No.6 (2005), p.1417-1424
甲第7号証 特許第3828922号公報
甲第8号証 特許第3965209号公報

4 甲号証の記載
(1)甲第1号証(以下「甲1」という。)は,発明の名称を「Hydrogen absorbing alloy and process for preparing same」(水素吸蔵合金及びその製造方法:訳文は甲第1号証の1による。以下同じ。)とする特許文献であって,発明の概要として「The present invention provides a hydrogen absorbing alloy having a structure of CaCu_(5)-type hexagonal system and represented by a general formula R_(1-x)A_(x)(Ni_(5-y)B_(y))_(z)」(第3頁24?25行)(本発明は,CaCu_(5)型六方晶構造を有し,一般式R_(1-x)A_(x)(Ni_(5-y))B_(y))_(z)で表される水素吸蔵合金を提供するものである)と記載され,実施例の合金組成として「LaNi_(4.6)Al_(0.2)Mn_(0.2)」が記載されている(第8頁表2,第10頁表4のNo.15)。

(2)甲第2号証(以下「甲2」という。)は,水素吸蔵合金の種類とその水素吸蔵特性をまとめた学術図書であって,これまでに開発された二元系合金の代表例としてLaNi_(5),MmNi_(5)(Mm:ミッシュメタル)などがあり,合金の構成金属の一部,あるいは両方を他の金属で置換するか,または他の金属を添加して,より適切な合金が開発されていることが記載され(第139頁12?17行),その具体的な合金組成として「MmNi_(4.5)Al_(0.25)Mn_(0.25)」が記載されている(第140頁表3.4)。

(3)甲第3号証(以下「甲3」という。)は,発明の名称を「低価格希土類系水素吸蔵合金とその用途」とする特許文献であって,実施例の合金組成として「LnNi_(3.0)Cu_(1.2)Mn_(0.2)Fe_(0.3)Al_(0.2)」が記載されている(第6頁表1の合金No.20)。ここで,Lnの原料はLaを25質量%含有し,残部が主にCe,Nd,Prからなる希土類金属混合物であるミッシュメタルと金属Laとを混合し,La含有率を調整した材料であること(段落【0034】),急冷凝固により作成すると,CaCu_(5)型結晶構造の単一相からなる合金となること(段落【0046】)が記載されている。

(4)甲第4号証(以下「甲4」という。)は,論題を「Microstructures and electrochemical properties of Co-free AB_(5) -type hydrogen storage alloys through substitution of Ni by Fe」(NiとFeの置換によるCoフリーAB_(5)型水素吸蔵合金のミクロ組織と電気化学的性質:訳文は甲第4号証の1による。以下同じ。)とする学術論文であって,「Lattice parameters of the alloys LaNi_(4.05-x)Al_(0.45)Mn_(0.5)Fe_(x)(0≦x≦0.5)」(LaNi_(4.05-x)Al_(0.45)Mn_(0.5)Fe_(x)(0≦x≦0.5)合金の格子定数)のうちa軸長が5.034?5.074Åの範囲であることが記載され(第2424頁表1),表1から,Feを含んだ合金のa,c軸の長さ,セル体積は,元の合金よりも大きく,Fe含有量の増加とともに増大することが考察されている(第2424頁右欄「3.1 結晶構造とミクロ組織」の項)。

(5)甲第5号証(第2頁8?10行)及び甲第6号証(第1419頁左欄2?4行)にはいずれも,結晶構造を,CuKα線を用いたRigaku D/Max-3A X線回折によって確認したことが記載されている。

(6)甲第7号証及び甲第8号証にはいずれも,低Co水素吸蔵合金(いずれも,例えば請求項1を参照。)が記載されている。

5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 甲1に記載された発明との対比
(ア)本件発明1に係る水素吸蔵合金と,甲1に記載された合金である「LaNi_(4.6)Al_(0.2)Mn_(0.2)」とを対比すると,両者はともにAB_(5)型の結晶構造を有し,AサイトはLaを含有する希土類元素から構成され,BサイトはCoを含有せず,Ni,Al及びMnを少なくとも含有している点で共通している。そして,甲1に記載された合金の組成式によれば,モル比の割合は,
(Mn/Al)=0.2/0.2=1
La/(Mn+Al)=1/(0.2+0.2)=1/0.4=2.5
であり,いずれも,本件発明1に係る水素吸蔵合金のモル比の割合と重複している。
よって,本件発明1と甲1に記載された合金とは,
「CaCu_(5)型、すなわちAB_(5)型の結晶構造の母相を有する水素吸蔵合金であって、
Aサイトは、Laを含有する希土類元素から構成され、且つ、
Bサイトは、Coを含有せず、Ni、Al及びMnを少なくとも含有し、Alの含有量(モル比)に対するMnの含有量(モル比)の割合(Mn/Al)が1であり、且つ、
Alの含有量(モル比)とMnの含有量(モル比)の合計含有量に対するLaの含有量(モル比)の割合(La/(Mn+Al))が2.5である、水素吸蔵合金。」
である点において一致し,次の相違点を有する。
(相違点1)
本件発明1に係る水素吸蔵合金は,「粉末X線回折測定から得られるa軸長が5.03Å以上5.07Å以下である」のに対し,甲1に記載された合金においては,a軸長が不明である点。

(イ)上記相違点1について検討すると,甲4には,AB_(5)型水素吸蔵合金において,a軸長が本件発明1と重複する合金が記載されている。
しかしながら,甲4に記載の合金組成によれば,モル比の割合は,
(Mn/Al)=0.5/0.45=1.1
La/(Mn+Al)=1/(0.5+0.45)=1.05
であり,(La/(Mn+Al))が甲1に記載された合金組成のものとは異なり,また,本件発明1の範囲を下回るものとなっている。
そして,甲4に記載の合金組成における格子定数は,Feの含有量との関係については記載されているが(甲4第2424頁右欄「3.1 結晶構造とミクロ組織」の項目を参照。表1から,Feを含んだ合金のa,c軸の長さ,セル体積は,元の合金よりも大きく,Fe含有量の増加とともに増大することが考察されている。),(La/(Mn+Al))との関係については記載されていないから,甲4に記載の格子定数が,ただちに,甲1に記載された合金にも適合するとは限らない。
むしろ,本件特許明細書の段落【0068】【表2】の比較例3と実施例1とを対比すると,(La/(Mn+Al))が本件発明1の範囲を下回ると,a軸長も本件発明1の範囲(5.03Å以上5.07Å以下)を下回る結果が得られていることからすれば,同じく(La/(Mn+Al))の値が本件発明1を下回る甲4に記載の合金組成で観察された格子定数(a軸長)が,モル比の割合とは無関係に,甲1に記載された合金組成に適合するということはできないというべきである。

(ウ)以上より,上記相違点1は実質的な相違点であり,当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
よって,CuKα線を用いたX線回折による結晶構造の確認に係る甲第5号証や甲第6号証に記載された技術事項について検討するまでもなく,本件発明1は,甲1及び甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

イ 甲2に記載された発明との対比
(ア)本件発明1に係る水素吸蔵合金と,甲2に記載された合金組成である「MmNi_(4.5)Al_(0.25)Mn_(0.25)」とを対比すると,両者はともにAB_(5)型の結晶構造を有する合金組成であり,AサイトはMm(ミッシュメタル,すなわち,Laを含む希土類元素の混合物)から構成され,BサイトはCoを含有せず,Ni,Al及びMnを少なくとも含有する点で共通している。そして,甲2に記載された合金の組成式によれば,モル比の割合は,
(Mn/Al)=0.25/0.25=1
Mm/(Mn+Al)=1/(0.25+0.25)=1/0.5=2
であり,(Mn/Al)については,本件発明1に係る水素吸蔵合金のモル比の割合と重複している(なお,La/(Mn+Al)については,MmにおけるLaの割合が不明である。)。
よって,本件発明1と甲2に記載された合金とは,
「CaCu_(5)型、すなわちAB_(5)型の結晶構造の母相を有する水素吸蔵合金であって、
Aサイトは、Laを含有する希土類元素から構成され、且つ、
Bサイトは、Coを含有せず、Ni、Al及びMnを少なくとも含有し、Alの含有量(モル比)に対するMnの含有量(モル比)の割合(Mn/Al)が1である、水素吸蔵合金。」
である点において一致し,次の相違点を有する。
(相違点1)
本件発明1に係る水素吸蔵合金は,「粉末X線回折測定から得られるa軸長が5.03Å以上5.07Å以下である」のに対し,甲2に記載された合金においては,a軸長が不明である点。
(相違点2)
本件発明1に係る水素吸蔵合金は,モル比の割合(La/(Mn+Al))が1.32以上であるのに対し,甲2に記載された合金においては,MmにおけるLaの割合が不明であるから,(La/(Mn+Al))が不明である点。

(イ)上記相違点のうち,相違点1は,上記アと同じであるから,上記アと同様に判断される。

(ウ)よって,相違点2,及び,CuKα線を用いたX線回折による結晶構造の確認に係る甲第5号証や甲第6号証に記載された技術事項について検討するまでもなく,本件発明1は,甲2及び甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

ウ 甲3に記載された発明との対比
(ア)本件発明1に係る水素吸蔵合金と,甲3に記載された合金組成である「LnNi_(3.0)Cu_(1.2)Mn_(0.2)Fe_(0.3)Al_(0.2)」とを対比すると,両者はともにAB_(5)型の結晶構造を有する合金組成であり,AサイトはLn(ミッシュメタル,すなわち,Laを含む希土類元素の混合物)から構成され,BサイトはCoを含有せず,Ni,Al及びMnを少なくとも含有する点で共通している。そして,甲3に記載された合金の組成式によれば,モル比の割合は,
(Mn/Al)=0.2/0.2=1
Ln/(Mn+Al)=1/(0.2+0.2)=1/0.4=2.5
であり,(Mn/Al)については,本件発明1に係る水素吸蔵合金のモル比の割合と重複している(なお,La/(Mn+Al)については,LnにおけるLaの割合が不明である。)。
よって,本件発明1と甲3に記載された合金とは,
「CaCu_(5)型、すなわちAB_(5)型の結晶構造の母相を有する水素吸蔵合金であって、
Aサイトは、Laを含有する希土類元素から構成され、且つ、
Bサイトは、Coを含有せず、Ni、Al及びMnを少なくとも含有し、Alの含有量(モル比)に対するMnの含有量(モル比)の割合(Mn/Al)が1である、水素吸蔵合金。」
である点において一致し,次の相違点を有する。
(相違点1)
本件発明1に係る水素吸蔵合金は,「粉末X線回折測定から得られるa軸長が5.03Å以上5.07Å以下である」のに対し,甲3に記載された合金においては,a軸長が不明である点。
(相違点2)
本件発明1に係る水素吸蔵合金は,モル比の割合(La/(Mn+Al))が1.32以上であるのに対し,甲3に記載された合金においては,LnにおけるLaの割合が不明であるから,(La/(Mn+Al))が不明である点。

(イ)上記相違点のうち,相違点1は,上記アと同じであるから,上記アと同様に判断される。

(ウ)よって,相違点2,及び,CuKα線を用いたX線回折による結晶構造の確認に係る甲第5号証や甲第6号証に記載された技術事項について検討するまでもなく,本件発明1は,甲3及び甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

エ 甲4に記載された発明との対比
(ア)本件発明1に係る水素吸蔵合金と,甲4に記載された合金組成である「LaNi_(4.05-x)Al_(0.45)Mn_(0.5)Fe_(x)(0≦x≦0.5)」のうち「x=0」のものとを対比すると,両者はともにAB_(5)型の結晶構造を有する合金組成であり,AサイトはLaを含有する希土類元素から構成され,BサイトはCoを含有せず,Ni,Al及びMnを少なくとも含有する点で共通している。そして,甲4に記載された合金の格子定数aは,x=0.0,すなわちFeを含まない組成において,格子定数a=5.034であり,本件発明1のa軸長と重複している。
よって,本件発明1と甲4に記載された合金とは,
「CaCu_(5)型、すなわちAB_(5)型の結晶構造の母相を有する水素吸蔵合金であって、
Aサイトは、Laを含有する希土類元素から構成され、且つ、
Bサイトは、Coを含有せず、Ni、Al及びMnを少なくとも含有し、且つ、
粉末X線回折測定から得られるa軸長が5.034Åである、水素吸蔵合金。」
である点において一致し,次の相違点を有する。

(相違点3)
本件発明1に係る水素吸蔵合金は,モル比の割合が,
(Mn/Al)が0.60以上1.48以下であり,且つ,
(La/(Mn+Al))が1.32以上であるのに対し,
甲4に記載された合金は,モル比の割合が,
(Mn/Al)=0.5/0.45=1.1
(La/(Mn+Al))=1/(0.5+0.45)=1/0.95=1.05
である点。

(イ)上記相違点について検討するに,甲1?甲3にはいずれも,AB_(5)型水素吸蔵合金として,Laモル比が同程度のものが記載されている。
しかしながら,上記ア(イ)で検討したとおり,甲4に記載された合金組成で観察された格子定数が,モル比の割合とは無関係に,甲1に記載された合金組成に適合するということはできないというべきであり,このことは,甲2,甲3に記載された合金においても同様である。すなわち,甲1?甲3に記載された合金組成が周知であるということのみをもって,ただちに,甲4に記載された格子定数aが適合するということはできない。

(ウ)よって,CuKα線を用いたX線回折による結晶構造の確認に係る甲第5号証や甲第6号証に記載された技術事項について検討するまでもなく,本件発明1は,甲4に記載された発明及び甲1?甲3の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

オ 本件発明1についてのまとめ
以上ア?エで検討したとおり,本件発明1は,甲1?4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(2)本件発明3?8について
ア 本件発明3?5は,本件発明1を引用して,水素吸蔵合金を技術的に特定したものである。
そして,本件発明1が甲1?甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないことは,上記(1)のとおりであるから,低Co水素吸蔵合金に関する甲第7号証や甲第8号証に記載された技術事項について検討するまでもなく,本件発明3?5も上記(1)と同様の理由で,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

イ 本件発明6は,本件発明1?5を引用した負極活物質に係るものである。
そして,本件発明1,3?5が甲1?甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないことは,上記アのとおりであるから,本件発明6も上記アと同様の理由で,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

ウ 本件発明7,8はいずれも,本件発明6を引用したニッケル水素電池に係るものである。
そして,本件発明6が甲1?甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないことは,上記イのとおりであるから,本件発明7,8いずれも,上記イと同様の理由で,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

6 むすび
以上のとおり,特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては,本件発明1,3?8に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件発明1,3?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-10-07 
出願番号 特願2018-536529(P2018-536529)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (C22C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川村 裕二  
特許庁審判長 中澤 登
特許庁審判官 平塚 政宏
亀ヶ谷 明久
登録日 2019-01-25 
登録番号 特許第6471270号(P6471270)
権利者 三井金属鉱業株式会社
発明の名称 水素吸蔵合金  
代理人 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所  

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