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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C12G
管理番号 1356002
異議申立番号 異議2019-700607  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-31 
確定日 2019-10-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第6468858号発明「柑橘類の蒸溜酒を含有するアルコール飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6468858号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6468858号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成27年1月23日に出願され、平成31年1月25日にその特許権の設定登録がされ、同年2月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?10に係る発明の特許に対し、令和1年7月31日に特許異議申立人 細川桂司(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6468858号の請求項1?10の特許に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明10」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
柑橘類の蒸溜酒を含有するアルコール飲料であって、当該飲料に含有される以下の成分の質量比が以下の条件:
d-リモネン/フルフラール=50?1300、及び
d-リモネン/チモール=20?600
を満たし、d-リモネンの含有量が4000?90000ppbである、前記アルコール飲料。
【請求項2】
d-リモネンの含有量が5000?80000ppbである、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
フルフラールの含有量が20?2200ppbであり、及び/又はチモールの含有量が50?5400ppbである、請求項1又は2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
柑橘類の蒸溜酒を含有するアルコール飲料であって、当該飲料に含有される以下の成分の質量比が以下の条件:
ジヒドロジャスモン酸メチル/フルフラール=10?400、及び
ジヒドロジャスモン酸メチル/チモール=4?150
を満たし、ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量が600?40000ppbである、前記アルコール飲料。
【請求項5】
ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量が1000?20000ppbである、請求項4に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
フルフラールの含有量が20?2200ppbであり、及び/又はチモールの含有量が50?5400ppbである、請求項4又は5に記載のアルコール飲料。
【請求項7】
柑橘類の蒸溜酒を含有するアルコール飲料を製造するための方法であって、当該飲料に含有される以下の成分の質量比が以下の条件:
d-リモネン/フルフラール=50?1300、及び
d-リモネン/チモール=20?600
を満たし、そして
当該飲料に含有されるd-リモネンの含有量が4000?90000ppbとなるよう、それらの成分の量を調整することを含む、製造方法。
【請求項8】
柑橘類の蒸溜酒を含有するアルコール飲料を製造する方法であって、当該飲料に含有される以下の成分の質量比が以下の条件:
ジヒドロジャスモン酸メチル/フルフラール=10?400、及び
ジヒドロジャスモン酸メチル/チモール=4?150
を満たし、そして
当該飲料に含有されるジヒドロジャスモン酸メチルの含有量が600?40000ppbとなるよう、それらの成分の量を調整することを含む、製造方法。
【請求項9】
柑橘類の蒸溜酒を含有するアルコール飲料のエグミ又は加熱臭を緩和するための方法であって、当該飲料に含有される以下の成分の質量比が以下の条件:
d-リモネン/フルフラール=50?1300、及び
d-リモネン/チモール=20?600
を満たし、そして
当該飲料に含有されるd-リモネンの含有量が4000?90000ppbとなるよう、それらの成分の量を調整することを含む、方法。
【請求項10】
柑橘類の蒸溜酒を含有するアルコール飲料のエグミ又は加熱臭を緩和するための方法であって、当該飲料に含有される以下の成分の質量比が以下の条件:
ジヒドロジャスモン酸メチル/フルフラール=10?400、及び
ジヒドロジャスモン酸メチル/チモール=4?150
を満たし、そして
当該飲料に含有されるジヒドロジャスモン酸メチルの含有量が600?40000ppbとなるよう、それらの成分の量を調整することを含む、方法。」

第3 申立理由の概要及び証拠方法
1 申立理由の概要
申立人は、後記2の証拠を提出した上で、以下の申立理由を主張している。
(1)特許法第36条第6項第1号(以下、「理由1」という。)
本件発明1?10は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 証拠方法
甲第1号証:野口忠編「栄養・生化学辞典」、初版第1刷、株式会社朝倉書店、平成14年11月20日、79頁(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi、1992年、Vol.39、No.1、p.16-24(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:特許第4302871号公報(以下、「甲3」という。)

第4 証拠方法に記載された事項
1 甲1には、次の事項が記載されている。
(1-1)(15行?18行)
「えぐ味 acridity
苦味、収れん味を中心とする好まれない味、不快味。野菜などに多くみられる。例えばタケノコ、山菜などによく認められる。」

2 甲2には、次の事項が記載されている。
(2-1)(21頁左欄1行?4行)
「5種類の精油中、特徴的香気を持つ含酸素画分の成分のいき値及び含有量をTable2に示した。この画分の個々の成分のU_(0)の計算のため、含有量の単位をppmにした。」

(2-2)(18、19頁)


3 甲3には、次の事項が記載されている。
(3-1)
「【請求項1】
柑橘類またはリンゴの生の果実の皮をアルコールに浸漬し、減圧蒸留して得られることを特徴とする蒸留酒。
【請求項2】
柑橘類またはリンゴの生の果実の皮をアルコールに浸漬し、減圧蒸留することを特徴とする蒸留酒の製造法」

(3-2)
「【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。本発明においては、任意の芳香を持つ果実や野菜等の生の植物体を原材料として好適に用いることができる。果実としては、みかん、オレンジ、レモン、夏みかん、ゆず、すだち、カボス、グレープフルーツ等の柑橘類や、リンゴ、なし、モモ、ブドウ、キウイ、バナナ、メロン、すいか等をあげることができる。また、野菜類としては、トマト、ピーマン、セロリ等の他、セージ、シナモン、ラベンダー、パセリ、ローズマリー、ショウガ、ペッパー、ペパーミント等の香辛野菜類をあげることができるが、特に香辛野菜類を好適に用いることができる。」

(3-3)
「【0013】
果実類の芳香成分の多くは果皮とその近傍の果肉に多く存在しているので、生の果皮を原材料として用いることもできる。果皮はそれだけで用いてもよいが、果肉と混合して用いてもよい。果実の果皮、特に柑橘系の果実の果皮は、フレッシュな芳香と同時にナリンギンやリモノイド等の苦味成分を大量に含んでおり、アルコールで抽出しただけでは苦味が強すぎて飲用には適さない。ところが、これらの苦味成分のほとんどは本発明の条件下での減圧蒸留では留出してこないので、程よい苦さを持った特徴的な蒸留酒が得られる。果皮の添加量を調節することによって製造する蒸留酒の苦味度を調節することができる。」

第5 申立理由についての当審の判断
1 理由1について
(1)サポート要件の考え方について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

(2)本件発明の課題
本件発明の課題は、発明の詳細な説明の段落【0004】の記載からみて、エグミと加熱臭が緩和された柑橘類の蒸留酒を含有するアルコール飲料を提供することであると認める。

(3)特許請求の範囲に記載された発明
特許請求の範囲には、上記「第2」で示したように本件発明1?10が記載されている。

(4)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
柑橘類の蒸溜酒には、特有の飲みにくさがある。具体的には、エグミと加熱臭である。従って、当該蒸溜酒を含有するアルコール飲料においては、そのようなエグミと加熱臭を緩和することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、柑橘類の蒸溜酒を含有するアルコール飲料に含有されるフルフラール及びチモールがエグミと加熱臭を生じること、d-リモネン又はジヒドロジャスモン酸メチルの含有量と、フルフラール又はチモールの含有量との比が特定の範囲であると、エグミと加熱臭を緩和できることを見出した。」
「【発明の効果】
【0007】
本発明は、柑橘類の蒸溜酒に由来するエグミと加熱臭を緩和することができる。本明細書において柑橘類の蒸溜酒を含有するアルコール飲料に関して用いる「エグミ」とは、柑橘類の蒸溜酒の特徴である爽やかですっきりとした風味を妨げ、口中を不快にさせる不要な味わいのことを意味し、「加熱臭」とは、柑橘類の蒸溜酒のフレッシュな柑橘香の香り立ちを妨げる不要な香りを意味する。この「エグミ」と「加熱臭」が柑橘類の蒸溜酒に含まれると、柑橘類の蒸溜酒のすっきりとした飲みやすさが低下する。」
「【実施例】
【0040】
以下に実施例に基づいて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1
フルフラールがエグミ及び加熱臭に与える影響と、d-リモネンの効果を検討した。
【0042】
柚子皮110gにアルコール度数26%のアルコール溶液を加えて1000mlにメスアップ後、常圧蒸溜釜にて、アルコール飲料の原料となる柚子の蒸溜酒(アルコール度数48.9v/v%)を製造した。得られた柚子の蒸溜酒を水で希釈して、当該蒸溜酒を3v/v%(アルコール換算で1.467v/v%)含有するアルコール飲料(飲料1)を製造した。その成分を分析した結果を以下の表1に示す。分析はGC-MSで行った。
【0043】
〔GC-MS分析条件〕
試料となる飲料を以下の条件にて、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)に供した。GCの分析条件は以下のとおり。
【0044】
GC装置:Agilent Technologies GC-MSD
GCオーブン温度条件:40℃(5分)- 6℃/min - 240℃
質量分析(MS)条件
四重極設定値:150
イオン源設定値:230
面積値算出条件
トータルイオンモード
質量(LOW):35
質量(HIGH):550
カラム:DB-WAXETR 60m、内径320μm、膜厚0.25μm
試料前処理条件:試料80μLと内部標準物質(デカン酸メチルエステル20ppmアルコール水溶液)20μLを20mLスクリューキャップバイアル瓶中で混合
ダイナミックヘッドスペース条件
装置:ゲステル社MPS
吸着剤:TENAX
試料気化温度:80℃
試料気化用ガス供給量:3000ml
試料気化用ガス供給速度:100ml/min
試料気化用ガス種類:窒素
ピーク保持時間:MSの解析によって成分および濃度の同定を行った。
標準物質:フルフラール、チモール、リモネン、ジヒドロジャスモン酸メチル
【0045】
【表1】

【0046】
飲料1をコントロールとする。フルフラールがエグミ及び加熱臭に与える影響を調べるために、飲料1にフルフラールを追加して、飲料a1-0及び飲料a2-0を製造した。さらに、フルフラール量が多い飲料a2-0にd-リモネンを種々の量で添加して、飲料a2-a1からa2-a7を製造した。
【0047】
訓練されたパネリストにより、各飲料のエグミ及び加熱臭について官能評価を行った。評価基準は以下の通りである。この評価基準は、他の実施例でも用いる。
【0048】
7:エグミや加熱臭をほとんど感じない。
6:エグミや加熱臭が感じにくい。
5:エグミや加熱臭がやや感じにくい。
4:エグミや加熱臭があり飲み難い。
3:エグミや加熱臭がやや強くあり飲み難い。
2:エグミや加熱臭が強く飲み難い。
1:エグミや加熱臭が非常に強く飲み難い。
【0049】
結果を以下の表に示す。評価点が5点以上であれば、結果は良好であったものと考えられる。
【0050】
【表2】

【0051】
表2から明らかなとおり、フルフラールの量が増加すると、エグミと加熱臭が強くなった。そして、d-リモネン/フルフラールの値が一定範囲にある場合に、官能評価結果が良好であった。
【0052】
実施例2
実施例1に続いて、ジヒドロジャスモン酸メチル/フルフラールの値の適切な範囲を確認した。具体的には、実施例1で得られた飲料a2-0にジヒドロジャスモン酸メチルを種々の量で添加して、飲料a2-b1からa2-b7を製造した。実施例1と同様にして、各飲料のエグミ及び加熱臭について官能評価を行った。結果を表3に示す。尚、表3中、ジヒドロジャスモン酸メチルは、「MD」と表される。また、表3中のいずれの飲料でもd-リモネンの含有量は2841ppbであった。
【0053】
【表3】

【0054】
表3から明らかなとおり、ジヒドロジャスモン酸メチル/フルフラールの値が一定範囲にある場合に、官能評価結果が良好であった。
【0055】
実施例3
実施例1に続いて、チモールがエグミ及び加熱臭に与える影響と、d-リモネンの効果を検討した。
【0056】
具体的には、実施例1の飲料1にチモールを追加して、飲料b1-0及び飲料b2-0を製造した。さらに、チモール量が多い飲料b2-0にd-リモネンを種々の量で添加して、飲料b2-a1からb2-a7を製造した。実施例1と同様にして、各飲料のエグミ及び加熱臭について官能評価を行った。結果を表4に示す。
【0057】
【表4】

【0058】
表4から明らかなとおり、チモールの量が増加すると、エグミと加熱臭が強くなった。そして、d-リモネン/チモールの値が一定範囲にある場合に、官能評価結果が良好であった。
【0059】
実施例4
実施例3に続いて、ジヒドロジャスモン酸メチル/チモールの値の適切な範囲を確認した。具体的には、実施例3で得られた飲料b2-0にジヒドロジャスモン酸メチルを種々の量で添加して、飲料b2-b1からb2-b7を製造した。実施例1と同様にして、各飲料のエグミ及び加熱臭について官能評価を行った。結果を表5に示す。尚、表5中、ジヒドロジャスモン酸メチルは、「MD」と表される。また、表5中のいずれの飲料においても、d-リモネンの含有量は2841ppbであった。
【0060】
【表5】

【0061】
表5から明らかなとおり、ジヒドロジャスモン酸メチル/チモールの値が一定範囲にある場合に、官能評価結果が良好であった。」

(5)判断
ア 判断
本件発明の課題は、上記(2)で述べたように、エグミと加熱臭が緩和された柑橘類の蒸留酒を含有するアルコール飲料を提供することである。

本件明細書の実施例において、柚子の蒸留酒を含有するアルコール飲料である飲料1をコントロールとして、これにフルフラール又はチモールを追加すると、エグミと加熱臭が強くなったことから、フルフラール又はチモールがエグミと加熱臭の原因となる物質であることを確認している(実施例1、表2のa1-0、a2-0、実施例3、表4のb2-0)。
その上で、フルフラール又はチモールが追加された飲料に、リモネン又はジヒドロジャスモン酸メチルを種々の量で添加して、「d-リモネン/フルフラール、」及び「d-リモネン/チモール」、又は、「ジヒドロジャスモン酸メチル/フルフラール」及び「ジヒドロジャスモン酸メチル/チモール」を特定の範囲とすることにより、当該飲料において、エグミと加熱臭が緩和されることを確認している(実施例1、表2のa2-a2?a2-a6、実施例3、表4のb2-a2?b2-a6)。
このように、本件明細書の発明の詳細な説明には、エグミと加熱臭が緩和された柑橘類の蒸留酒を含有するアルコール飲料を提供することが記載されているといえる。
よって、本件発明1?10は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものである。

イ 申立人の主張と検討について
申立人は、甲1によると、エグミとは、苦み、収れん味を中心とする好まれない味を意味するものであり、甲2及び甲3の記載から、レモンやすだち、かぼす等の柑橘類でも、アルコールで抽出したものは、飲用に適さない苦味を有しており、柑橘類のエグミ、苦みは、必ずしもチモールに由来するものとは限られず、チモールが実質的に含まれない柑橘類においても生じるものであることから、本件発明が解決しようとする課題は、あくまで、チモールを含む柚子等の柑橘類の蒸留酒において生じるエグミ及び加熱臭を緩和することにあるといえ、チモールが含まれないか、あるいは含まれていたとしても少量である柑橘類の蒸留酒の場合には、本件発明が解決すべき課題であるフルフラール及びチモールが生じさせるエグミ及び加熱臭がそのそも生じないことになるところ、本件発明においては、柑橘類の蒸留酒に由来するフルフラール及びチモールが特定量含まれることが特定されていないから、本件発明は、本件発明が解決すべき課題自体が存在しない態様を含んでおり、サポート要件を満たさない旨主張する。

しかしながら、独立請求項である本件発明1、7及び9において、d-リモネン/フルフラールの比が50?1300であること、及び、d-リモネン/チモールの比が200?600であることが特定され、さらに、d-リモネンの含有量が4000?90000ppbであることが特定されていることから、フルフラール及びチモールの含有量が間接的に特定されているといえる。
また、独立請求項である本件発明4、8及び10において、ジヒドロジャスモン酸メチル/フルフラールの比が10?400であること、及び、ジヒドロジャスモン酸メチル/チモールの比が4?150であることが特定され、さらに、ジヒドロジャスモン酸メチルの含有量が600?40000ppbであることが特定されていることから、フルフラール及びチモールの含有量が間接的に特定されているといえる。
そして、発明の詳細な説明において、フルフラール又はチモールを、柚子の蒸留酒を含むアルコール飲料であるコントロール飲料1に追加する実験を行った結果、フルフラール及びチモールがエグミ及び加熱臭の原因となることを確認しているのであるから(実施例1、表2のa1-0、a2-0、実施例3、表4のb2-0)、本件発明1、4、7?10は、エグミ及び加熱臭の原因となるフルフラール及びチモールの含有量が間接的に特定されているものであって、解決すべき課題が存在しない態様を含んでいるとはいえない。
本件発明2は請求項1を引用するものであり、本件発明5は請求項4を引用するものであるから、上記と同様の理由により、エグミ及び加熱臭の原因となるフルフラール及びチモールの含有量が間接的に特定されているものであって、解決すべき課題が存在しない態様を含んでいるとはいえない。
本件発明3には、「フルフラールの含有量が20?2200ppbであり、及び/又はチモールの含有量が50?5400ppbである、請求項1又は2に記載のアルコール飲料。」と記載されており、本件発明6には、「フルフラールの含有量が20?2200ppbであり、及び/又はチモールの含有量が50?5400ppbである、請求項4又は5に記載のアルコール飲料。」と記載されており、本件発明3及び6においては、エグミ及び加熱臭の原因となるフルフラール及びチモールの含有量が直接的に特定されているものであるから、解決すべき課題が存在しない態様を含んでいるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(6)まとめ
以上のとおり、本件発明1?10は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法第36条第6項の規定を満たしている。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-10-18 
出願番号 特願2015-11662(P2015-11662)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C12G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川合 理恵  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 中島 芳人
冨永 みどり
登録日 2019-01-25 
登録番号 特許第6468858号(P6468858)
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 柑橘類の蒸溜酒を含有するアルコール飲料  
代理人 小林 泰  
代理人 山本 修  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小野 新次郎  
代理人 梶田 剛  

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