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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1356331
審判番号 不服2019-2658  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-27 
確定日 2019-10-17 
事件の表示 特願2016-62696号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年9月28日出願公開、特開2017-170021号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成28年3月25日の出願であって、平成30年4月6日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月18日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月16日付け(送達日:同年同月27日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成31年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成31年2月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年2月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1?2のうち、請求項1を補正する内容を含むものであり、本件補正により、平成30年6月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「予め定めた処理を実行できる第1制御部と、
前記第1制御部による処理結果に基づいて処理を実行できる第2制御部と、
図柄列を変動させて変動ゲームを実行できるゲーム実行部と、
前記変動ゲームの開始操作をするための開始操作部と、
前記変動ゲームにおいて、前記図柄列の停止操作をするための停止操作部と、を備え、
前記第1制御部は、
前記開始操作を契機に、前記変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を特定可能な当選情報を決定する結果決定処理と、
前記結果決定処理において決定した当選情報に関する結果情報を前記第2制御部に出力させるための結果情報出力処理と、
前記ゲーム実行部を制御することにより前記変動ゲームを開始させる開始処理と、
前記停止操作部の操作に応じて図柄列を停止させることによりゲーム結果を導出させる結果導出処理と、
特定状態へ移行させるか否かを決定する移行決定処理と、
前記特定状態へ移行させた場合であって、前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち特定のゲーム結果を特定可能な当選情報を決定した場合に、前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様に関する操作情報を表示させる情報表示処理と、を実行でき、
前記当選情報には、前記特定のゲーム結果を特定可能な特定当選情報が複数あり、各特定当選情報は、それぞれ前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様が異なり、
前記結果情報出力処理では、前記特定状態へ移行させているとき、及び前記特定状態へ移行させていないときの何れであっても、複数の前記特定当選情報において同じ特定結果情報を出力させることによって、当該特定結果情報に基づいて、前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様を特定できないようになっており、
前記停止操作部の操作態様に関する前記操作情報の表示は、図柄列の変動が開始するまでに開始されることを特徴とする遊技機。」は、

審判請求時に提出された手続補正書(平成31年2月27日付け)における
「予め定めた処理を実行できる第1制御部と、
前記第1制御部による処理結果に基づいて処理を実行できる第2制御部と、
図柄列を変動させて変動ゲームを実行できるゲーム実行部と、
前記変動ゲームの開始操作をするための開始操作部と、
前記変動ゲームにおいて、前記図柄列の停止操作をするための停止操作部と、を備え、
前記第1制御部は、
前記開始操作を契機に、前記変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を特定可能な当選情報を決定し、前記変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を決定する結果決定処理と、
前記結果決定処理において決定した当選情報に関する結果コマンドを前記第2制御部へ出力させるための結果コマンド出力処理と、
前記ゲーム実行部を制御することにより前記変動ゲームを開始させる開始処理と、
前記停止操作部の操作に応じて図柄列を停止させることによりゲーム結果を導出させる結果導出処理と、
特定状態へ移行させるか否かを決定する移行決定処理と、
前記特定状態へ移行させた場合であって、前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち特定のゲーム結果を特定可能な当選情報を決定した場合に、前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様に関する操作情報を表示させる情報表示処理と、
前記操作情報に関する操作コマンドを前記第2制御部へ出力させるための操作コマンド出力処理と、を実行でき、
前記当選情報には、前記特定のゲーム結果を特定可能な特定当選情報が複数あり、各特定当選情報は、それぞれ前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様が異なり、
前記結果コマンド出力処理では、
非特定状態において前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち前記特定のゲーム結果が決定された場合には、前記結果決定処理の実行により決定されたゲーム結果を特定可能な一方で前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様については特定不能な結果コマンドが前記第1制御部から前記第2制御部へ出力され、
前記特定状態において前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち前記特定のゲーム結果が決定された場合には、前記結果コマンドが前記第1制御部から前記第2制御部へ出力されず、
前記操作コマンド出力処理では、
前記特定状態において前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち前記特定のゲーム結果が決定された場合には、前記結果決定処理の実行により決定されたゲーム結果を特定不能な一方で前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様については特定可能な操作コマンドが前記第1制御部から前記第2制御部へ出力され、
前記非特定状態において前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち前記特定のゲーム結果が決定された場合には、前記操作コマンドが前記第1制御部から前記第2制御部へ出力されず、
前記停止操作部の操作態様に関する前記操作情報の表示は、図柄列の変動が開始するまでに開始されることを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために合議体にて付した。)。

2 補正の適否(補正の目的)
(1)補正事項
本件補正による補正事項は、次の5点である。
ア 本件補正前の「前記開始操作を契機に、前記変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を特定可能な当選情報を決定する結果決定処理」が、「前記開始操作を契機に、前記変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を特定可能な当選情報を決定し、前記変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を決定する結果決定処理」に補正された。

イ 本件補正前の「前記結果決定処理において決定した当選情報に関する結果情報を前記第2制御部に出力させるための結果情報出力処理」が、「前記結果決定処理において決定した当選情報に関する結果コマンドを前記第2制御部へ出力させるための結果コマンド出力処理」に補正された。

ウ 「前記第1制御部」が「実行でき」る処理として、「前記操作情報に関する操作コマンドを前記第2制御部へ出力させるための操作コマンド出力処理」が追加補正された。

エ 本件補正前の「前記結果情報出力処理では、前記特定状態へ移行させているとき、及び前記特定状態へ移行させていないときの何れであっても、複数の前記特定当選情報において同じ特定結果情報を出力させることによって、当該特定結果情報に基づいて、前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様を特定できないようになっており」が、「前記結果コマンド出力処理では、非特定状態において前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち前記特定のゲーム結果が決定された場合には、前記結果決定処理の実行により決定されたゲーム結果を特定可能な一方で前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様については特定不能な結果コマンドが前記第1制御部から前記第2制御部へ出力され、前記特定状態において前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち前記特定のゲーム結果が決定された場合には、前記結果コマンドが前記第1制御部から前記第2制御部へ出力されず、」に補正された。

オ 「前記操作コマンド出力処理では、前記特定状態において前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち前記特定のゲーム結果が決定された場合には、前記結果決定処理の実行により決定されたゲーム結果を特定不能な一方で前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様については特定可能な操作コマンドが前記第1制御部から前記第2制御部へ出力され、前記非特定状態において前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち前記特定のゲーム結果が決定された場合には、前記操作コマンドが前記第1制御部から前記第2制御部へ出力されず、」が追加補正された。

(2)合議体による判断
上記補正事項エは、上記補正事項イにより、「結果情報」が「結果コマンド」に補正されたことを考慮しても、本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「複数の前記特定当選情報において同じ特定結果情報を出力させる」なる構成を削除すること(以下「削除1」という。)を含むものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでないことは明らかである。
また、上記補正事項エは、本件補正前に「前記特定状態へ移行させているとき、及び前記特定状態へ移行させていないときの何れであっても」「特定結果情報を出力させる」とあったものを、本件補正後に「前記特定状態において前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち前記特定のゲーム結果が決定された場合には、前記結果コマンドが」「出力され」ないものとすることに補正することを含むものである。そして、当該補正により、「特定状態」においても、非「特定状態」においても「特定結果情報を出力させ」ることが可能であったものが、非「特定状態」においてのみ、「特定結果情報を出力させ」ることが可能なものとなった。すなわち、上記補正事項エによって、「特定状態」において「特定結果情報を出力させ」ていた構成が削除され(以下「削除2」という。)、「特定状態」において「特定結果情報を出力させ」ない構成が追加された。
したがって、上記補正事項エは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないことは明らかである。
また、上記補正事項エのうち削除1?2を行う補正が、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことも明らかである。

(3)請求人の主張について
請求人は、上記補正事項エについて、平成31年2月27日付け審判請求書の【請求の理由】の「3.(2)補正の根拠について ア.平成30年6月18日付け手続補正の適否について」において、次の主張をしている。
「出願人は、平成30年6月18日付け手続補正により、明細書の段落[0098]の記載を根拠とし、請求項1について、「 前記結果情報出力処理では、前記特定状態へ移行させているとき、及び前記特定状態へ移行させていないときの何れであっても、複数の前記特定当選情報において同じ特定結果情報を出力させることによって、当該特定結果情報に基づいて、前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様を特定できないようになっており、」のように補正した。
しかしながら、本願の願書に最初に添付された明細書(段落[0098]、[0103]、[0139]、[0156]等)には、下記「イ.」欄において詳細に説明する通り、AT状態において、当選番号011?016をグループ化し、ベル役が当選したことを示す当選コマンドを第1制御部(主基板)が第2制御部(副基板)に出力する態様について記載されておらず、当該手続補正は、本願の明細書等の記載を誤って理解してするものであった。本審判請求と同時にする手続補正は、これを正すものであり、審理にあたっては何卒ご配慮を賜りたい。」

審判請求書における請求人の上記主張について検討すると、上記補正事項エに係る本件補正前の平成30年6月18日付け手続補正書において、補正により追加された構成に関して、「本願の明細書等の記載を誤って理解してする」ことに基づいてなされたものであって、「本審判請求と同時にする手続補正は、これを正すものであ」る旨主張するが、この点については、後述の「3 補正の適否(新規事項)」において検討するように、上記補正事項エに係る本件補正前に補正により追加された構成は、本願の明細書等の記載に基づくものであると認められることから、請求人が主張するような「本願の明細書等の記載を誤って理解」したことに基づくものではないため、採用することはできない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれを目的とするものではない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 補正の適否(新規事項)
本件補正は、上記「2 補正の適否(補正の目的)」において検討したとおり却下すべきものであるが、ここでは、上記補正事項エのうち本件補正後の発明特定事項が、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてなされたものであるか否かを、以下に検討する。
(1)当初明細書等の記載
上記補正事項エに関し、当初明細書等には、
「主制御用CPU40aは、取得した当選番号乱数の値をもとに、選択している当選番号抽選テーブルを参照することによって、取得した当選番号乱数の値が振り分けられている当選番号を決定する。」(【0078】)と記載され、
「この実施形態において、当選番号には、変動ゲームにおいて入賞可能とする図柄組合せ(役)が定められている。したがって、ステップS108の処理(当選番号抽選処理)は、変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果としての図柄組合せ(役)を決定する結果決定処理に相当する。」(【0079】)と記載され、
「主制御用CPU40aは、当選番号抽選を行うと、決定した当選番号を特定可能な値(情報)を、主制御用RAM40cに記憶されている当選番号フラグに設定する。」(【0080】)と記載され、
「ステップS108の処理(当選番号抽選処理)を終了すると、主制御用CPU40aは、AT指示処理を行う(ステップS109)。AT指示処理は、次のような処理である。
最初に、主制御用CPU40aは、主制御用RAM40cに記憶されている指示番号フラグに00を設定することにより、指示番号フラグをクリア(初期化)する。指示番号フラグは、払出し表示部37において表示する指示情報(指示内容)を予め定めた指示番号を特定可能とするための情報である。主制御用CPU40aは、指示番号フラグから特定可能な指示番号に基づいて、払出し表示部37において表示させる指示情報を特定可能である。」(【0081】)と記載され、
「ステップS110の処理(指示情報表示処理)を終了すると、主制御用CPU40aは、演出コマンド送信処理を行う(ステップS111)。演出コマンド送信処理は、次のような処理である。」(【0093】)と記載され、
「主制御用CPU40aは、主制御用RAM40cに記憶されているATフラグの値を参照し、今回の変動ゲームにおける演出状態(指示状態)を特定する。主制御用CPU40aは、特定した演出状態を特定可能なATコマンドを生成するとともに、演出コマンド送信バッファ(第1コマンド送信バッファ)に格納する。なお、この実施形態のスロットマシン10において、演出コマンド送信バッファに格納されたコマンドは、所定の演出コマンド送信処理によって副基板41へ送信される。」(【0094】)と記載され、
「AT状態において、主制御用CPU40aは、主制御用RAM40cに記憶されている指示番号フラグの値を参照することにより、ステップS109の処理(AT指示処理)で決定した指示番号を特定する。主制御用CPU40aは、特定した指示番号を特定可能な指示コマンドを生成するとともに、演出コマンド送信バッファに格納する。」(【0095】)と記載され、
「この実施形態において、ステップS111の処理(演出コマンド送信処理)は、第2情報に相当する指示コマンドを副基板41に出力する指示処理に相当し、指示情報表示処理を実行することにより、指示情報を表示させた後に、実行される。したがって、この実施形態のスロットマシン10では、ステップS111の処理(演出コマンド送信処理)を主制御用CPU40aが実行することにより、指示コマンドを副基板41に出力する指示手段が実現される。」(【0096】)と記載され、
「また、主制御用CPU40aは、ステップS108の処理(当選番号抽選処理)において決定した当選番号に基づき、複数の当選役をグループ化し、当該グループを特定可能な当選コマンドを生成するとともに、演出コマンド送信バッファに格納する。複数の当選役をグループ化するとは、例えば、当選番号011?016をグループ化し、ベル役が当選したことを示す当選コマンドがある。このように、当選コマンドは、押し順や押し位置を特定不能なコマンドである。」(【0098】)と記載されている。
また、遊技進行メイン処理を示すフローチャートである【図8】には、


当選番号抽選処理(S108)→AT指示処理(S109)→指示情報表示処理(S110)→演出コマンド送信処理(S111)の順に遊技処理が進行することが図示されている。

(2)合議体による判断
請求人は、審判請求書において、上記補正事項エのうち本件補正後の発明特定事項における「結果コマンド」に関して、当初明細書等の発明の詳細な説明の【0098】に記載された「当選コマンド」を対応付けている。
そして、当初明細書等の発明の詳細な説明には、「当選コマンド」に関連する記載として、【0078】?【0080】に主制御用CPU40aが、ステップS108において当選番号を決定する旨の記載があり、【0098】に主制御用CPU40aが、ステップS108において当選番号に基づき「当選コマンド」を生成し、生成された「当選コマンド」を演出コマンド送信バッファに格納する旨の記載がある。
一方、「当選コマンド」と対をなすコマンドである「指示コマンド」に関して、当初明細書等の【0081】に主制御用CPU40aが、ステップS109において指示番号を決定することが記載され、【0095】に主制御用CPU40aが、指示番号に基づき「指示コマンド」を生成し、生成された「指示コマンド」を演出コマンド送信バッファに格納することが記載され、【0093】、【0096】に主制御用CPU40aが、ステップS111において演出コマンド送信バッファに格納された「指示コマンド」を副基板41に出力することが記載されている。
そして、「指示コマンド」に関してではあるが、生成された「指示コマンド」が「演出コマンド送信バッファ」に格納され、S111において、副基板41に出力されることが明記されていることからみて、S108において生成され、「演出コマンド送信バッファ」に格納される「当選コマンド」についても、「指示コマンド」と同様に、S111において、「指示コマンド」と共に副基板41に出力されるものと認められる。
また、【図8】のS108?S111における処理手順からみて、S111の演出コマンド送信処理では、S108?S110において生成された演出に関するコマンドである「当選コマンド」、「指示コマンド」、及び、指示情報の表示に関するコマンドを一括して副基板41に送信するものであると認められる。
さらに、情報処理一般の技術分野において、「演出コマンド送信バッファ」が、格納された情報を送信するための機能を有するものであって、「演出コマンド送信バッファ」に格納された情報は、消去されることなく、そのまま送信先に送信されるものであることは、当業者における技術常識である。
ここで、当初明細書等には、主制御用CPU40aが、遊技状態がAT状態であるのか、あるいは、非AT状態であるのかを区別することなく「当選番号に基づき、・・・当選コマンドを生成する」(【0098】)ことは記載されているが、「当選コマンド」が、遊技状態がAT状態であるか、非AT状態であるかに応じて生成されるか否かが決定されることについては記載も示唆もされていない。
これらのことからみて、当初明細書等には、遊技状態がAT状態であるか非AT状態であるかにかかわらずに、生成された「当選コマンド」が、「演出コマンド送信バッファ」に格納された後、S111において副基板41に出力されることが示されているものと認められる。
すなわち、上記補正事項エに係る本件補正前の平成30年6月18日付け補正書においてなされた発明特定事項の追加、すなわち、発明の詳細な説明に記載された「当選コマンド」を「結果情報」に対応させることを含む補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものである。
しかしながら、上記補正事項エのうち本件補正後の発明特定事項、すなわち、「当選コマンド」を「結果コマンド」に対応させることを含む上記補正事項エのうち本件補正後の発明特定事項は、当初明細書等に記載も示唆もされていない。

(3)請求人の主張
請求人は、上記補正事項エのうち本件補正後の発明特定事項(以下「上記補正事項エのうち本件補正後の発明特定事項」という。)について、審判請求書の【請求の理由】の「3.(2)補正の根拠について イ.補正の根拠の説明」で、次の主張をしている。
「(上記補正事項エのうち本件補正後の発明特定事項は、)明細書の段落[0098]、[0103]、[0139]、[0156]に基づく。
具体的に、明細書の段落[0098]には、「また、主制御用CPU40aは、ステップS108の処理(当選番号抽選処理)において決定した当選番号に基づき、複数の当選役をグループ化し、当該グループを特定可能な当選コマンドを生成するとともに、演出コマンド送信バッファに格納する。複数の当選役をグループ化するとは、例えば、当選番号011?016をグループ化し、ベル役が当選したことを示す当選コマンドがある。このように、当選コマンドは、押し順や押し位置を特定不能なコマンドである。」と記載されており、この記載から、当選番号011?016をグループ化することによって、ベル役が当選したことを特定可能である一方で押し順や押し位置を特定不能な「当選コマンド」を出力することが理解できる。また、段落[0103]には、試験用当選コマンドを、上記当選コマンドと同様にして出力することが記載されている。
一方、明細書の段落[0139]には、「具体的には、副制御用CPU41aは、ベル役を特定可能な当選コマンドを入力した場合、ベル役に当選している可能性があることを示唆する示唆演出を表示するように、演出表示装置15を制御してもよい。ベル役に当選している可能性があることを示唆する示唆演出とは、例えば、ベルを模した画像を演出表示装置15に表示する態様により行われるものがある。」と記載されており、この記載から、当選コマンドの入力を契機として、「ベル役に当選している可能性があることを示唆する示唆演出」をナビ演出とは別に実行することが理解できる。
ここで、本実施形態のAT状態では、指示コマンドに基づいてナビ演出を実行するように構成されていることから、AT状態中、上記「ベル役に当選している可能性があることを示唆する示唆演出」を実行しない構成であるように理解するのが自然であり、そうすると、本願明細書には、「非AT状態において、『ベル役が当選したことを示す当選コマンド』を出力し、AT状態において、『ベル役が当選したことを示す当選コマンド』を出力せず、非AT状態において、『ベル役が当選したことを示す当選コマンド』の入力を契機として、示唆演出を実行する」ことが開示されているものと考えられる。
このうち、特に、「AT状態において当選コマンドを出力しない」ことは、主たる実施形態において、AT状態中、当選コマンドを出力するとは記載されていないことに加えて、例えば段落[0156]における変更例の記載からも理解できる。具体的に、段落[0156]には、「例えば、AT状態中、チェリー役を特定可能な当選コマンドを入力した場合、副制御用CPU41aは、該コマンドを入力してから、第3停止操作に関する操作コマンドを入力する迄の間、押し位置として、チェリー押し位置を識別可能とするナビ画像を表示するように、演出表示装置15を制御する。」と記載されており、これは、本実施形態の構成が「AT状態において当選コマンドを出力しない」ものであることを前提としつつも、これの変更例として、AT状態中、当選コマンドを出力可能に構成し、当該当選コマンドに基づいてナビ演出を実行させてもよいことを開示するものである。
したがって、本願の明細書等における上記の記載を総合すれば、本願明細書には、上記補正事項に係る構成が開示されているものと思料する。」

請求人が審判請求書において、上記補正事項エのうち本件補正後の発明特定事項の補正の根拠として主張する【0098】、【0103】、【0139】、【0156】の記載内容について検討する。
当初明細書等の【0098】及び【0103】には、「ベル役が当選したことを示す当選コマンド」や、「試験用当選コマンド」が、押し順や押し位置を特定不能なコマンドであることが記載されているが、「特定のゲーム結果」(AT)「が決定された場合」に、「当選コマンド」が「前記第1制御部から前記第2制御部へ出力され」ないことについては、記載も示唆もされていない。
そして、当初明細書等の【0139】には、「ベル役を特定可能な当選コマンドを入力した場合、ベル役に当選している可能性があることを示唆する示唆演出」をナビ演出とは別に表示する旨記載されているが、【0139】に「ベル役を特定可能な当選コマンド」が、遊技状態がAT状態であるか、非AT状態であるかに応じて生成されるか否かが決定されるものであることが記載されていない以上、請求人が主張するように、「非AT状態において、『ベル役が当選したことを示す当選コマンド』を出力し、AT状態において、『ベル役が当選したことを示す当選コマンド』を出力せず、非AT状態において、『ベル役が当選したことを示す当選コマンド』の入力を契機として、示唆演出を実行する」ことが開示されているとすることはできない。
また、当初明細書等の【0156】の記載に基づいて、請求人は、「本実施形態の構成が「AT状態において当選コマンドを出力しない」ものであることを前提としつつも、これの変更例として、AT状態中、当選コマンドを出力可能に構成し、当該当選コマンドに基づいてナビ演出を実行させてもよいことを開示するものである」旨主張するが、当初明細書等には、「AT状態において当選コマンドを出力しない」という前提自体が、記載も示唆もされていないことから、請求人の主張は妥当でない。

この点についてさらに検討する。
本件補正後の請求項1の「前記結果決定処理において決定した当選情報に関する結果コマンドを前記第2制御部へ出力させるための結果コマンド出力処理」なる発明特定事項から、「結果コマンド」は「当選情報」に関するものであることが導かれる。また、本件補正後の請求項1の「前記開始操作を契機に、前記変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を特定可能な当選情報を決定し、前記変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を決定する結果決定処理」なる発明特定事項から、「当選情報」は、「変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を特定可能な」情報であることが導かれる。
そうすると、本件補正後の請求項1に係る発明特定事項からみて、「結果コマンド」は、「変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を特定可能な」情報であるといえる。ここで、「変動ゲーム」は、遊技状態がAT状態であるか、非AT状態であるかにかかわらず、遊技毎に必ず実行されるものであることが、当業者における技術常識である。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明特定事項からみて、「変動ゲーム」に必要な情報である「結果コマンド」を、遊技状態がAT状態である場合に、第1制御部から第2制御部に送信しないことは、矛盾するものである。
この点からみても、請求人の主張は妥当でない。
よって、請求人の審判請求書における上記主張(3)を採用することはできない。

(4)小括
以上のとおりであるから、当初明細書等には、上記補正事項エのうち本件補正後の発明特定事項が記載されているとは認められず、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に、上記補正事項エのうち本件補正後の発明特定事項は、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された範囲内においてなされたものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定に違反する。
よって、本件補正は、同法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年2月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されているので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年6月18日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「A 予め定めた処理を実行できる第1制御部と、
B 前記第1制御部による処理結果に基づいて処理を実行できる第2制御部と、
C 図柄列を変動させて変動ゲームを実行できるゲーム実行部と、
D 前記変動ゲームの開始操作をするための開始操作部と、
E 前記変動ゲームにおいて、前記図柄列の停止操作をするための停止操作部と、を備え、
F 前記第1制御部は、
F1 前記開始操作を契機に、前記変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を特定可能な当選情報を決定する結果決定処理と、
F2 前記結果決定処理において決定した当選情報に関する結果情報を前記第2制御部に出力させるための結果情報出力処理と、
F3 前記ゲーム実行部を制御することにより前記変動ゲームを開始させる開始処理と、
F4 前記停止操作部の操作に応じて図柄列を停止させることによりゲーム結果を導出させる結果導出処理と、
F5 特定状態へ移行させるか否かを決定する移行決定処理と、
F6 前記特定状態へ移行させた場合であって、前記結果決定処理の実行により前記ゲーム結果のうち特定のゲーム結果を特定可能な当選情報を決定した場合に、前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様に関する操作情報を表示させる情報表示処理と、を実行でき、
G 前記当選情報には、前記特定のゲーム結果を特定可能な特定当選情報が複数あり、各特定当選情報は、それぞれ前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様が異なり、
H 前記結果情報出力処理では、前記特定状態へ移行させているとき、及び前記特定状態へ移行させていないときの何れであっても、複数の前記特定当選情報において同じ特定結果情報を出力させることによって、当該特定結果情報に基づいて、前記特定のゲーム結果を導出させる前記停止操作部の操作態様を特定できないようになっており、
I 前記停止操作部の操作態様に関する前記操作情報の表示は、図柄列の変動が開始するまでに開始される
J ことを特徴とする遊技機。」(なお、記号AないしJは、分説するため、合議体が付した。)。

2 原査定の拒絶の理由の概要
(1)(新規性)この出願の下記の請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)(進歩性)この出願の下記の請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特許第5857328号公報

3 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特許第5857328号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は合議体で付した。以下同様。)。
(1)記載事項
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシン(回胴遊技機)、パチンコ機(弾球遊技機)に代表される遊技台に関する。」

イ 「【0013】
[第1実施形態]
<全体構成>
まず、図1および図2を用いてスロットマシン100の全体構成について説明する。図1は、スロットマシン100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。図2は、入賞ラインの一例を示す図である。
【0014】
図1に示すスロットマシン100は、本発明の遊技台の一例に相当するものであり、本体101と、本体101の正面に取り付けられ、本体101に対して開閉可能な前面扉102と、を備える。本体101の中央内部には(図示省略)、外周面に複数種類の図柄が配置されたリールが3個(左リール110、中リール111、右リール112)収納され、スロットマシン100の内部で回転できるように構成されている。これらのリール110乃至112はステッピングモータ等の駆動装置により回転駆動される。
【0015】
本実施形態において、各図柄は帯状部材に等間隔で適当数印刷され、この帯状部材が所定の円形筒状の枠材に貼り付けられて各リール110?112が構成されている。リール110?112上の図柄は、遊技者から見ると、図柄表示窓113から縦方向に概ね3つ表示され、合計9つの図柄が見えるようになっている。・・・」

ウ 「【0018】
本実施形態では左リール中段図柄、中リール中段図柄および右リール中段図柄で構成される中段入賞ラインL1、左リール上段図柄、中リール中段図柄および右リール下段図柄で構成される右下がり入賞ラインL2、左リール下段図柄、中リール中段図柄および右リール上段図柄で構成される右上がり入賞ラインL3、左リール下段図柄、中リール下段図柄および右リール下段図柄で構成される下段入賞ラインL4、の4つの入賞ラインが設けられている。図2には、これらの入賞ラインが示されている。有効となる入賞ライン(以下、単に「有効ライン」と称する場合がある)は、遊技媒体としてベットされたメダルの枚数によって予め定まっている。本実施形態のスロットマシン100は3枚賭け専用機であり、メダルの投入枚数が3枚未満のときはどの入賞ラインも有効にはならず、メダルが3枚ベットされたときに全入賞ラインL1?L4が有効になる。入賞ラインが有効になると、スタートレバー135を操作して遊技を開始することができるようになる。なお、入賞ラインの数については4ラインに限定されるものではない。例えば、中段入賞ラインL1、右下がり入賞ラインL2および右上がり入賞ラインL3の3ラインを有効な入賞ラインとして設定してもよく、ベット数に応じた数の入賞ラインを有効な入賞ラインとして設定してもよい。
・・・
【0025】
ストップボタンユニット136には、左ストップボタン137、中ストップボタン138および右ストップボタン139で構成されるストップボタン137?139が設けられている。ストップボタン137?139は、スタートレバー135の操作によって回転を開始したリール110?112を個別に停止させるためのボタン型のスイッチであり、各リール110?112に対応づけられている。本実施形態では、左ストップボタン137を操作することによって左リール110を停止させることができ、中ストップボタン138を操作することによって中リール111を停止させることができ、右ストップボタン139を操作することによって右リール112を停止させることができる。
・・・
【0031】
<制御部の回路構成>
次に、図3を用いて、スロットマシン100の制御部の回路構成について説明する。なお、同図は制御部の回路ブロック図である。
【0032】
スロットマシン100の制御部は、大別すると、遊技の進行を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて、主な演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、によって構成されている。」

エ 「【0079】
「小役3a」に内部当選した場合には、遊技者の操作順序に応じて小役3に対応する図柄組み合わせが表示される入賞ラインが決定される(図7備考欄参照)。より具体的には、予め定められた操作順序である正解操作順序に従って停止操作がされた場合には、「ベル図柄」が中リール111の中段(図2に示す番号5の位置参照)に表示され、それ以外の場合には、「ベル図柄」が中リール111の下段(図2に示す番号6の位置参照)に表示される。
・・・
【0081】
本実施形態では、「小役3a」に内部当選した場合、複数種類(具体的には3種類)の中から一つのリール停止データが抽選により選択されるようになっており、このリール停止データごとに正解操作順序が設けられている。より具体的には、(1)リール停止データd-1が選択された場合には、第1停止リールを右リール112とする第1停止操作をした場合が正解操作順序、(2)リール停止データd-2が選択された場合には、第1停止リールを中リール111とする第1停止操作をした場合が正解操作順序、(3)リール停止データd-3が選択された場合には、第1停止リールを左リール110とする第1停止操作をした場合が正解操作順序となっている。すなわち、選択されたリール停止データごとに第一停止操作に関する正解停止順序が決定される。なお、本実施形態では、上記リール停止データの抽選においては、リール停止データd-1?d3のそれぞれが選択される確率は等分となるように設定されている。」

オ 「【0100】
具体的には、AT状態においては、小役3aに内部当選した場合に正解停止順序を報知する演出を実行し、再遊技役1-3に内部当選した場合に正解停止順序を報知する演出を実行するので、遊技者は、小役3aに内部当選した場合には、遊技者が演出に従った操作を行うことで、より多くのメダルを獲得でき、また、再遊技役1-3に内部当選した場合にはRT1への降格を回避でき、有利な遊技状態を維持することができる。本実施形態では、RT1において再遊技役2に入賞した場合、つまりRT2に移行したときにAT状態となり、AT状態は、付与された所定ゲーム数(例えば、30ゲームなど)を消化した場合に終了して、後述するAT終了準備状態に移行する。勿論、AT状態は、RT系の遊技状態の移行を伴う場合(RT2から他の遊技状態に移行する場合)にも終了して、移行先のRT系の遊技状態に対応したAT系の遊技状態に移行する。なお、正確には、AT終了準備状態において、AT抽選に当選した場合にもAT状態は設定されるようになっている。
・・・
【0136】
<主制御部の操作順序報知演出>
次に、図12?図13を用いて、主制御部300の操作順序報知演出について説明する。図12は、再遊技役1-2、再遊技役1-3及び小役3aに内部当選した場合のリール停止データの概要及び主制御部300の操作順序報知演出の演出データを示す図である。本実施形態の主制御部300の操作順序報知演出は、払出枚数表示器127を用いて行われる。したがって、主制御部300の操作順序報知演出の演出データとは、7セグメント(SEG)表示器の点灯パターンデータ(以下、7セグデータという)である。また、図13は、7セグデータと払出枚数表示器127の表示態様(点灯態様)の対応を示す図である。」

カ 「【0160】
図18(b)は、主制御部300の遊技状態がRT2(AT状態)にある場合の操作順序報知演出の演出態様を示すタイムチャートである。図18(b)は、主制御部300の遊技状態がRT2(AT状態)にあるときに、小役3aに内部当選した場合には、主制御部300及び第1副制御部400はともに正解操作手順(具体的には12枚のメダル払出がある操作手順)を報知する操作手順演出を実行することを示しており(時点t1)、再遊技役1-3に内部当選したときには、正解操作順序(具体的には再遊技役1が入賞する操作手順)を報知する操作手順演出を実行することを示している(時点t2)。この結果、遊技者は、報知内容に従った停止操作を行えば、より多くのメダルを獲得でき、有利な遊技状態であるRT2の状態を維持することができる。」

キ 「【0169】
<主制御部メイン処理>
まず、図22を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部メイン処理について説明する。なお、同図は主制御部メイン処理の流れを示すフローチャートである。


・・・
【0172】
ステップS102では、賭け数設定/スタート操作受付処理を実行する。ここではメダルの投入の有無をチェックし、メダルの投入に応じて入賞ライン表示ランプ120を点灯させる。また、メダルが投入されたことを示す投入コマンドの送信準備を行う。なお、前回の遊技で再遊技役に入賞した場合は、前回の遊技で投入されたメダル枚数と同じ数のメダルを投入する処理を行うので、遊技者によるメダルの投入が不要となる。また、スタートレバー135が操作されたか否かのチェックを行い、スタートレバー135の操作があればステップS103へ進む。
・・・
【0175】
ステップS105では、入賞役内部抽選処理を行う。入賞役内部抽選処理では、現在の遊技状態に応じてROM306に格納されている入賞役抽選テーブルを読み出し、これとステップS104で取得した乱数値とを用いて内部抽選を行うとともに、この内部抽選の結果を示す内部抽選コマンドを第1副制御部400へ送信するための準備を行う。内部抽選の結果、いずれかの入賞役(作動役を含む)に内部当選した場合、その入賞役のフラグがオンになる。
【0176】
ステップS106では、入賞役内部抽選処理の内部抽選結果に基づき、リール停止データを選択するリール停止データ選択処理(詳しくは後述)を行う。
【0177】
ステップS107では、主制御部300の操作順序報知演出の設定を行う主制御部操作順序報知演出設定処理(詳しくは後述する)を実行する。
【0178】
ステップS108では、リール回転開始処理が実行され、全リール110?112の回転を開始させる。
【0179】
ステップS109では、リール停止制御処理を行う。リール停止制御処理では、ストップボタン137?139の受け付けが可能になり、いずれかのストップボタンが押されると、押されたストップボタンに対応するリールを停止させるために、リール停止データの停止テーブルを参照し、停止テーブルに設定された引込みコマ数に従ってリール110?112の何れかを停止させる。全リール110?112が停止するとステップS110へ進む。
・・・
【0182】
ステップS112では、遊技状態制御処理(詳しくは後述)を行う。遊技状態制御処理では、RT系及びAT系の各遊技状態の移行に関する処理を行い、それらの開始条件又は終了条件の成立により、遊技状態を移行させる。また、現在の遊技状態を示す情報(RT系及びAT系)を含む遊技状態コマンドを送信するための準備を行う。」

ク 「【0185】
<主制御部タイマ割込処理>
次に図22(審決注:図23の誤記と認める。)を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割込処理について説明する。なお、同図は主制御部タイマ割込処理の流れを示すフローチャートである。


・・・
【0192】
ステップS2006では、コマンド設定送信処理を行い、送信準備されていた各種のコマンドが第1副制御部400に送信される。なお、第1副制御部400に送信する出力予定情報は本実施形態では16ビットで構成しており、ビット15はストローブ情報(オンの場合、データをセットしていることを示す)、ビット11?14はコマンド種別(本実施形態では、基本コマンド、投入コマンド、スタートレバー受付コマンド、内部抽選コマンド、演出抽選処理に伴う演出コマンド、リール110?112の回転の開始に伴う回転開始コマンド、ストップボタン137?139の操作の受け付けに伴う停止ボタン受付コマンド、リール110?112の停止処理に伴う停止位置情報コマンド、入賞判定コマンド、メダル払出処理に伴う払出枚数コマンド及び払出終了コマンド、リール停止コマンド、遊技状態更新コマンド、演出回転開始コマンド、演出回転終了コマンド、ストップボタン有効化コマンド)、ビット0?10はコマンドデータ(コマンド種別に対応する所定の情報)で構成されている。」

ケ 「【0199】
<リール停止データ選択処理>
次に、図24を用いて、リール停止データ選択処理について説明する。図24は、図22のステップS106のリール停止データ選択処理の流れを詳しく示すフローチャートである。


【0200】
ステップS201では、入賞役内部抽選処理の内部抽選結果に基づき、リール停止データを選択する。なお、このリール停止データは、主制御部300のROM306内に記憶されている。
【0201】
ステップS202では、ステップS201において選択されたリール停止データに関する情報を含んだリール停止データコマンドを第1副制御部400に送信する準備を行う。ここで、リール停止データコマンドには、操作順序に関する情報が含まれている。例えば、RT2において小役3aに内部当選し、停止データd-1(図12参照)を選択したことを示す情報(停止データd-1の正解操作順序を示す情報であり、停止データd-1選択と表記する)を含んだリール停止データコマンドを第1副制御部400に送信する準備を行う(図14参照)。
・・・
【0203】
<主制御部操作順序報知演出設定処理>
次に、図25を用いて、主制御部操作順序報知演出設定処理について説明する。図25は、図22のステップS107の主制御部操作順序報知演出設定処理の流れを詳しく示すフローチャートである。


・・・
【0207】
<小役3a報知設定処理>
次に、図26を用いて、小役3a報知設定処理について説明する。図26は、図25のステップS301の小役3a報知設定処理の流れを詳しく示すフローチャートである。


・・・
【0210】
ステップS403では、主制御部300の遊技状態がRT2(AT状態)において小役3aに内部当選したので、小役3a用の報知設定を行う。詳しくは、RT2において小役3aに内部当選した場合に選択されたリール停止データに基づいた正解操作順序の7セグデータを操作順序報知演出として設定する(図12、図13参照)。」

コ 「【0439】
・・・内部当選した役に関する情報(内部抽選コマンド)・・・」

(2)引用発明
上記(1)のア?コの記載事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、記号aないしjは、本願発明の構成A?Jに対応させて合議体が付した。)。
「a 遊技の進行を制御する主制御部300(【0032】)と、
b 主制御部300が送信するコマンド信号に応じて、主な演出の制御を行う第1副制御部400(【0032】)と、
c 外周面に配置された複数種類の図柄が、図柄表示窓113から縦方向に概ね3つ表示され、スロットマシン100の内部で回転できるように構成されている3個のリール110?112(【0014】?【0015】)と、
d 操作して遊技を開始させるためのスタートレバー135(【0018】)と、
e スタートレバー135の操作によって回転を開始したリール110?112を個別に停止させるためのストップボタン137?139(【0025】)とを備え、
f 主制御部300のCPU304は、主制御部メイン処理、若しくは、主制御部タイマ割込処理を実行し(【0169】、【0185】)、
f1?f2 主制御部メイン処理において、スタートレバー135の操作があれば、入賞役内部抽選処理を行い、内部抽選の結果を示す内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)を第1副制御部400へ送信するための準備を行い(【0172】、【0175】、【0439】、【図22】)、
続く、リール停止データ選択処理では、入賞役内部抽選処理の内部抽選結果に基づき、リール停止データを選択し、選択されたリール停止データに関する情報を含んだリール停止データコマンド(操作順序に関する情報)を第1副制御部400に送信する準備を行い(【0176】、【0199】?【0201】、【図22】、【図24】)、
主制御部タイマ割込処理におけるコマンド設定送信処理で、送信準備されていた各種コマンドを第1副制御部400に送信し(【0185】、【0192】、【図23】)、
f3 主制御部メイン処理におけるリール回転開始処理で、全リール110?112の回転を開始させ(【0178】、【図22】)、
f4 主制御部メイン処理におけるリール停止制御処理で、いずれかのストップボタンが押されるとリール110?112の何れかを停止させ、全リール110?112を停止させるリール停止制御処理を行い(【0179】、【図22】)、
f5 主制御部メイン処理における遊技状態制御処理で、RT系及びAT系の各遊技状態の移行に関する処理を行い、それらの開始条件又は終了条件の成立により、遊技状態を移行させ(【0182】、【図22】)、
f6 主制御部メイン処理における主制御部操作順序報知演出設定処理の小役3a報知設定処理で、移行したときにAT状態となるRT2において小役3aに内部当選した場合に選択されたリール停止データに基づいた正解操作順序の7セグデータを操作順序報知演出として設定し、払出枚数表示器127を用いて操作順序報知演出を行い(【0100】、【0136】、【0160】、【0177】、【0207】、【0210】、【図25】?【図26】)、
g?h 「小役3a」に内部当選した場合、複数種類の中から一つのリール停止データが抽選により選択され、リール停止データごとに正解操作順序が設けられており、正解操作順序に従って停止操作がされた場合には、「ベル図柄」が中リール111の中段に表示され、それ以外の場合には、「ベル図柄」が中リール111の下段に表示され(【0079】、【0081】)、
i 主制御部300のCPU304は、主制御部メイン処理において、主制御部操作順序報知演出設定処理を実行後に、リール回転開始処理を実行する(【0169】、【0177】?【0178】、【図22】)、
j スロットマシン(【0001】)。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている

4 対比
本願発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
(a)引用発明における「遊技の進行を制御する」ことは、構成f?f6における各種処理を行うことであるから、本願発明における「予め定めた処理を実行できる」ことに相当する。
したがって、引用発明における構成aの「遊技の進行を制御する主制御部300」は、本願発明における構成Aの「予め定めた処理を実行できる第1制御部」に相当する。

(b)引用発明における「主制御部300が送信するコマンド信号に応じて、主な演出の制御を行う」ことは、上記(a)より、本願発明における「第1制御部による処理結果に基づいて処理を実行できる」ことに相当する。
したがって、引用発明における構成bの「主制御部300が送信するコマンド信号に応じて、主な演出の制御を行う第1副制御部400」は、本願発明における構成Bの「前記第1制御部による処理結果に基づいて処理を実行できる第2制御部」に相当する。

(c)まず、本願発明における「ゲーム実行部」は、本願明細書の【発明の詳細な説明】に「リールユニット16のうち、表示窓12aから視認可能な部分は、図柄列を変動させて変動ゲームを実行できるゲーム実行部に相当する。」(【0018】)と定義されている。
そして、引用発明における「外周面に配置された複数種類の図柄」の列は、本願発明における「図柄列」に相当する。
また、引用発明における「スロットマシン100の内部で回転できるように構成されている」ことは、本願発明における「変動させて変動ゲームを実行できる」ことに相当する。
さらに、引用発明における「3個のリール110?112」のうち「図柄が、図柄表示窓113から縦方向に概ね3つ表示され」る部分は、本願発明における「ゲーム実行部」に相当する。
したがって、引用発明における構成cの「外周面に配置された複数種類の図柄が、図柄表示窓113から縦方向に概ね3つ表示され、スロットマシン100の内部で回転できるように構成されている3個のリール110?112」は、本願発明における構成Cの「図柄列を変動させて変動ゲームを実行できるゲーム実行部」に相当する。

(d)引用発明における「操作して遊技を開始させるため」は、本願発明における「変動ゲームの開始操作をするため」に相当する。
したがって、引用発明における構成dの「操作して遊技を開始させるためのスタートレバー135」は、本願発明における構成Dの「変動ゲームの開始操作をするための開始操作部」に相当する。

(e)引用発明における「スタートレバー135の操作によって回転を開始したリール110?112を個別に停止させるため」は、本願発明における「変動ゲームにおいて、図柄列の停止操作をするため」に相当する。
したがって、引用発明における構成eの「スタートレバー135の操作によって回転を開始したリール110?112を個別に停止させるためのストップボタン137?139」は、本願発明における構成Eの「変動ゲームにおいて、図柄列の停止操作をするための停止操作部」に相当する。

(f?f1)まず、引用発明における構成f?f2の「スタートレバー135の操作があ」ることは、本願発明における「開始操作を契機に」することに相当する。

次に、請求人は、本願発明における「当選情報」を、平成30年6月18日付け意見書において、本願明細書の【0079】に記載された「当選番号」に対応付けている。
そして、本願明細書には、「当選番号」に関連する記載として、「当選番号011?016には、変動ゲームにおいて入賞可能な役として、ベル役とベルこぼし役とが定められている。当選番号011?016のうち何れかに当選している場合であって、第1押し順?第6押し順のうち予め定められた何れか1つの押し順で停止操作されたときには、押し位置に関係なく、ベル役に入賞するようにリールが停止される。その一方で、上記1つの押し順とは異なる押し順で停止操作がされたときには、押し位置に関係なく、ベルこぼし役に入賞するようにリールが停止される。」(【0065】)なる記載がある。この記載によると、「当選番号」には、「当選番号011?016」のように、押し順により「ベル役」と「ベルこぼし役」の入賞役のうちいずれの役が決定されるような、入賞役と押し順の組み合せを指定する情報を含むものである。
一方、引用発明における構成f?f2の「入賞役内部抽選処理」及び「入賞役内部抽選処理の内部抽選結果に基づき」行われる「リール停止データ選択処理」とは、「スタートレバー135の操作があ」ることに基づいて行われる処理であり、「入賞役内部抽選処理」により「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」が抽選(決定)され、「リール停止データ選択処理」により「リール停止データコマンド(操作順序に関する情報)」が選択(決定)されるものである。
そして、例えば、構成g?hにより特定されるように、「小役3a」に内部当選した場合、「正解操作順序に従って停止操作がされた場合には、「ベル図柄」が中リール111の中段に表示され、それ以外の場合には、「ベル図柄」が中リール111の下段に表示され」るものである。
そうすると、引用発明において、ベル役には、「ベル図柄」が中リール111の中段に表示される役と、「ベル図柄」が中リール111の下段に表示される役とがあって、「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」と「リール停止データコマンド(操作順序に関する情報)」との複数の組み合せ情報のうちの1つの情報に基づいて、いずれかのベル役が決定されるものである。
したがって、引用発明における構成f?f2の「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」と「リール停止データコマンド(操作順序に関する情報)」との複数の組み合せ情報のうちの1つの組み合せ情報は、本願発明における構成F、F1の「変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を特定可能な当選情報」に相当する。

よって、引用発明における構成f?f2の「内部抽選の結果を示す内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」を抽選(決定)する「入賞役内部抽選処理」と、「リール停止データコマンド(操作順序に関する情報)」を選択(決定)する「リール停止データ選択処理」とを行う「主制御部300のCPU304」は、本願発明における構成F?F1の「開始操作を契機に、変動ゲームにおいて導出可能とするゲーム結果を特定可能な当選情報を決定する結果決定処理」「を実行でき」る「第1制御部」の機能を有する。

(f、f2)引用発明における構成f?f2において、「主制御部タイマ割込処理におけるコマンド設定送信処理で、送信準備されていた各種のコマンドを第1副制御部400に送信するコマンド設定送信処理」が行われることからみて、「コマンド設定送信処理」において、「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」が「第1副制御部400に送信」されるものである。
そして、上記(f、f1)より、引用発明における「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」と「リール停止データコマンド(操作順序に関する情報)」との組み合せ情報は、本願発明における「当選情報」に相当する。
したがって、引用発明における構成f?f2により特定される「内部抽選の結果を示す内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」と「リール停止データコマンド(操作順序に関する情報)」との組み合せ情報のうち、「第1副制御部400に送信」される「内部抽選の結果を示す内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」は、本願発明における構成F、F2の「第2制御部に出力」される「結果決定処理において決定した当選情報に関する結果情報」に相当する。
よって、引用発明における構成f?f2の「各種コマンド」のうち、「内部抽選の結果を示す内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」を「第1副制御部400に送信するコマンド設定送信処理」を行う「主制御部300のCPU304」は、本願発明における構成F、F2の「結果決定処理において決定した当選情報に関する結果情報を前記第2制御部に出力させるための結果情報出力処理」「を実行でき」る「第1制御部」の機能を有する。

(f、f3)上記(c)より、引用発明における「3個のリール110?112」のうち「図柄が、図柄表示窓113から縦方向に概ね3つ表示され」る部分は、本願発明における「ゲーム実行部」に相当する。
そうすると、引用発明における「全リール110?112の回転を開始させる」ことは、本願発明における「ゲーム実行部を制御することにより変動ゲームを開始させる」ことに相当する。
したがって、引用発明における構成f、f3の「主制御部メイン処理におけるリール回転開始処理で、全リール110?112の回転を開始させ」る「主制御部300のCPU304」は、本願発明における構成F、F3の「ゲーム実行部を制御することにより変動ゲームを開始させる開始処理」「を実行でき」る「第1制御部」の機能を有する。

(f、f4)引用発明における「いずれかのストップボタンが押されるとリール110?112の何れかを停止させ、全リール110?112を停止させる」ことは、本願発明における「停止操作部の操作に応じて図柄列を停止させることによりゲーム結果を導出させる」ことに相当する。
したがって、引用発明における構成f、f4の「主制御部メイン処理におけるリール停止制御処理で、いずれかのストップボタンが押されるとリール110?112の何れかを停止させ、全リール110?112を停止させるリール停止制御処理を行」う「主制御部300のCPU304」は、本願発明における構成F、F4の「停止操作部の操作に応じて図柄列を停止させることによりゲーム結果を導出させる結果導出処理」「を実行でき」る「第1制御部」の機能を有する。

(f、f5)引用発明における「AT系の各遊技状態」は、本願発明における「特定状態」に相当する。
そして、引用発明における「開始条件又は終了条件の成立により、遊技状態を移行させ」ることは、本願発明における「移行させるか否かを決定する」ことに相当する。
したがって、引用発明における構成f、f5の「主制御部メイン処理における遊技状態制御処理で、RT系及びAT系の各遊技状態の移行に関する処理を行い、それらの開始条件又は終了条件の成立により、遊技状態を移行させ」る「主制御部300のCPU304」は、本願発明における構成F、F5の「特定状態へ移行させるか否かを決定する移行決定処理」「を実行でき」る「第1制御部」の機能を有する。

(f、f6)引用発明における「AT状態となるRT2」に「移行した」場合は、上記(f、f5)より、本願発明における「特定状態へ移行させた場合」に相当する。
そして、引用発明における「小役3aに内部当選した場合」は、本願発明における「ゲーム結果のうち特定のゲーム結果を特定可能な当選情報を決定した場合」に相当する。
また、引用発明における「リール停止データに基づいた正解操作順序の7セグデータを操作順序報知演出として設定し、払出枚数表示器127を用いて操作順序報知演出を行」うことは、本願発明における「特定のゲーム結果を導出させる停止操作部の操作態様に関する操作情報を表示させる情報表示処理」「を実行でき」ることに相当する。
したがって、引用発明における構成f、f6の「主制御部メイン処理における主制御部操作順序報知演出設定処理の小役3a報知設定処理で、移行したときにAT状態となるRT2において小役3aに内部当選した場合に選択されたリール停止データに基づいた正解操作順序の7セグデータを操作順序報知演出として設定し、払出枚数表示器127を用いて操作順序報知演出を行」う「主制御部300のCPU304」は、本願発明における構成F、F6の「特定状態へ移行させた場合であって、結果決定処理の実行によりゲーム結果のうち特定のゲーム結果を特定可能な当選情報を決定した場合に、特定のゲーム結果を導出させる停止操作部の操作態様に関する操作情報を表示させる情報表示処理」「を実行でき」る「第1制御部」の機能を有する。

(g)引用発明の構成g?hにおいて、「「小役3a」に内部当選した場合、複数種類の中から一つのリール停止データが抽選により選択され」ることは、上記(f?f1)、(f、f6)から、「「小役3a」に内部当選した場合」、「「小役3a」に内部当選した」ことを指示する「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」と「リール停止データコマンド(操作順序に関する情報)」との組み合せ情報が、複数の「リール停止データコマンド(操作順序に関する情報)」の分だけ複数存在することになり、その組み合せ情報の各々が、少なくとも、異なる操作順序に関する情報を含むものであるから、本願発明における「特定のゲーム結果を特定可能な特定当選情報が複数あり、各特定当選情報は、それぞれ特定のゲーム結果を導出させる停止操作部の操作態様が異な」ることに相当する。
したがって、引用発明における構成g?hの「「小役3a」に内部当選した場合、複数種類の中から一つのリール停止データが抽選により選択され、リール停止データごとに正解操作順序が設けられており、正解操作順序に従って停止操作がされた場合には、「ベル図柄」が中リール111の中段に表示され、それ以外の場合には、「ベル図柄」が中リール111の下段に表示され」ることは、本願発明における構成Gの「当選情報には、特定のゲーム結果を特定可能な特定当選情報が複数あり、各特定当選情報は、それぞれ特定のゲーム結果を導出させる停止操作部の操作態様が異な」ることに相当する。

(h)引用発明の構成g?hにおける「「小役3a」に内部当選した場合」、上記(f?f1)、(f、f6)、(g)より、「「小役3a」に内部当選した」ことを指示する「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」と、選択(決定)された「リール停止データコマンド(操作順序に関する情報)」との組み合せ情報が、「第1副制御部400に送信」されるものである。
そして、引用発明において、「「小役3a」に内部当選した」ことを指示する「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」は、「リール停止データコマンド(操作順序に関する情報)」としてどのような情報が選択(決定)されようとも、同じ内容の情報であり、かつ、「操作順序に関する情報」とは異なる内容の「内部当選した役に関する情報」である。
また、引用発明は、構成f1?f2より、「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」が、一旦生成されると「第1副制御部400へ送信するための準備」が行われるものであるから、遊技状態が、「AT状態」であるか否かに応じて、「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」が、「第1副制御部400」へ送信されるか否かについての判断がなされるものではない。
したがって、引用発明の構成g?hにおける「「小役3a」に内部当選した場合」に、「第1副制御部400」へ送信される「「小役3a」に内部当選した」ことを指示する「内部抽選コマンド(内部当選した役に関する情報)」は、本願発明の構成Hにおける「特定状態へ移行させているとき、及び特定状態へ移行させていないときの何れであっても、複数の特定当選情報において同じ特定結果情報を出力させることによって、当該特定結果情報に基づいて、特定のゲーム結果を導出させる停止操作部の操作態様を特定できないようになっており」という要件を満たすものであるといえる。
よって、引用発明における構成g?hは、本願発明における構成Hの「結果情報出力処理では、特定状態へ移行させているとき、及び特定状態へ移行させていないときの何れであっても、複数の特定当選情報において同じ特定結果情報を出力させることによって、当該特定結果情報に基づいて、特定のゲーム結果を導出させる停止操作部の操作態様を特定できないようになって」いることに相当する。

(i)引用発明における構成iの「主制御部300のCPU304は、主制御部メイン処理において、主制御部操作順序報知演出設定処理を実行後に、リール回転開始処理を実行する」ことは、構成f6より、「主制御部操作順序報知演出設定処理」により設定された「操作順序報知演出」が、「払出枚数表示器127を用いて」演出表示されることであるから、引用発明は、「リール回転開始処理」が実行される前に、「操作順序報知演出」が演出表示されるものであるといえる。
したがって、引用発明における構成iの「主制御部300のCPU304は、主制御部メイン処理において、主制御部操作順序報知演出設定処理を実行後に、リール回転開始処理を実行する」ことは、本願発明における構成Iの「停止操作部の操作態様に関する操作情報の表示は、図柄列の変動が開始するまでに開始される」ことに相当する。

(j)引用発明における構成jの「スロットマシン」は、本願発明における構成Jの「遊技機」に相当する。

5 検討
上記4の(a)?(j)における対比より、本願発明と引用発明とは、相違点する点はない。
したがって、本願発明は、引用発明である。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-16 
結審通知日 2019-08-20 
審決日 2019-09-03 
出願番号 特願2016-62696(P2016-62696)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡崎 彦哉  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 恩田 博宣  
代理人 山本 実  
代理人 恩田 誠  

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