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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1356341
審判番号 不服2017-16850  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-13 
確定日 2019-10-16 
事件の表示 特願2015-204889「LTEにおけるPDCCHペイロードサイズのあいまいさを解決する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月24日出願公開、特開2016- 40929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2011年(平成23年)3月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2010年3月18日 米国,2010年9月20日 米国,2011年2月8日 米国)を国際出願日とする出願である特願2013-500195号の一部を平成27年10月16日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年11月12日 手続補正書の提出
平成28年11月28日 手続補正書の提出
平成29年 1月16日付け 拒絶理由通知書
平成29年 6月26日 意見書,及び手続補正書の提出
平成29年 7月 7日付け 拒絶査定
平成29年11月13日 拒絶査定不服審判の請求,
及び手続補正書の提出
平成30年12月 5日付け 平成29年11月13日にされた手続補正に
ついての補正の却下の決定,
及び拒絶理由通知書
平成31年 3月11日 意見書,及び手続補正書の提出


第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,平成31年3月11日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであると認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。),及び請求項4に係る発明(以下,「本願発明2」という。)は,以下のとおりである。

「【請求項1】
ワイヤレス通信の方法であって、
一次コンポーネントキャリアおよび少なくとも1つの二次コンポーネントキャリアを含む複数のコンポーネントキャリアを用いてユーザ機器(UE)を通信するように設定することと、
前記UEが、前記複数のコンポーネントキャリアのうちのあるコンポーネントキャリア上で送信されるグラントにキャリアインジケータフィールド(CIF)が含まれているかどうかを判別できないときを決定することと、
前記判別できないことが決定されるときはいつでも、前記グラントによって前記複数のコンポーネントキャリアのうちの1つのコンポーネントキャリアのみをスケジューリングすることと、
ここにおいて、前記判別できないことが決定されるときは、少なくとも下記(i)および/または(ii)のときを含む、
(i)前記グラントに付加された巡回冗長検査(CRC)がセル無線ネットワーク一時識別子(C-RNTI)によってスクランブルされているとき、および
(ii)共通の探索空間の制御チャネル要素(CCE)インデックスと前記UE固有の探索空間のCCEインデックスが等しく、かつ前記共通の探索空間が前記UE固有の探索空間と重なり合うとき
を備える、ワイヤレス通信の方法。」

「【請求項4】
ワイヤレス通信のための装置であって、
一次コンポーネントキャリアおよび少なくとも1つの二次コンポーネントキャリアを含む複数のコンポーネントキャリアのうちのあるコンポーネントキャリア上でグラントを受信するための手段と、
前記グラントに基づいてeNodeBと通信するための手段と、
ここにおいて、前記グラントは、前記装置がグラントにキャリアインジケータフィールド(CIF)が含まれているかどうかを判別できないと前記eNodeBが決定するときに前記複数のコンポーネントキャリアのうちの1つのコンポーネントキャリアのみをスケジューリングし、
ここにおいて、前記判別できないことが決定されるときは、少なくとも下記(i)および/または(ii)のときを含む、
(i)前記グラントに付加された巡回冗長検査(CRC)がセル無線ネットワーク一時識別子(C-RNTI)によってスクランブルされているとき、および
(ii)共通の探索空間の制御チャネル要素(CCE)インデックスと前記UE固有の探索空間のCCEインデックスが等しく、かつ前記共通の探索空間が前記UE固有の探索空間と重なり合うとき
を備える、装置。」


第3 拒絶の理由
平成31年3月11日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1,4に対応する平成29年6月26日に手続補正された特許請求の範囲の請求項4,19に関して,平成30年12月5日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。

1 特許法第36条に規定する要件について
(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(明確性) 略
(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)?(3) 略

(4)請求項4の「前記判別できないことが決定されたときはいつでも前記グラントによって前記複数のコンポーネントのうちの前記コンポーネントキャリアのみをスケジューリングする」との事項において,前記グラントにはCIFを含むグラント,あるいはCIFを含まないグラントが,含まれ得るものである。
しかし,発明の詳細な説明(段落0058など)には,「..PDCCHあいまいさが存在し、かつeNodeB802がコンポーネントキャリアCC2用のCIFを含むPDCCHをUE804に送信した場合(1508)、UE802は、PDCCHがCIFを含まず、かつPDCCHはコンポーネントキャリアCC1用のPDCCHであると仮定する。そのような状況では、UE804は、受信されたPDCCHを適切に復号することができない。」と記載されているように,前記判別できないことが決定されたとき,CIFを含むグラントを用いることについて,想定されていないことは明らかである。したがって、出願時の技術常識に照らしても、請求項4に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
さらに、請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないことから、発明の詳細な説明の記載は請求項4に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。
したがって,請求項4に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されておらず,また,発明の詳細な説明には実施できる程度に記載されていない。(サポート要件,実施可能要件)

(5)請求項4の「前記判別できないことが決定されたときはいつでも..スケジューリングすること」と,「前記グラントに付加された巡回冗長検査(CRC)が..セル無線ネットワーク一時識別子(C-RNTI)によってスクランブルされているときにかぎり..スケジューリングすること」と,「共通の探索空間の..前記UE固有の探索空間と重なり合う」との事項について,発明の詳細な説明(段落0050-0053,0058など)には,「..判別できないこと」及び「..クスランブルされているとき」及び「..探索空間が重なり合うとき」ときに,「..スケジューリングすること」によって,「PDCCHグラントがCC1(CIFを含まない)用のグラントであるかそれともCC2(CIFを含む)用のグラントであるかを判別できない」との本願発明の解決しようとする課題を解決することは記載されているが,「前記判別できないことが決定されたとき」のみ,又は「セル無線ネットワーク一時識別子(C-RNTI)によってスクランブルされているとき」のみ,又は「共通の探索空間の..前記UE固有の探索空間と重なり合う」ときなどに,「..スケジューリングすること」によって,どのようにして前記本願発明の解決しようとする課題を解決するのか記載されていない。よって,請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく,また,発明の詳細な説明は請求項4に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。
したがって,請求項4に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでなく,また,発明の詳細な説明には実施できる程度に記載されていない。(サポート要件,実施可能要件)

(6)?(7) 略


2 特許法第29条の規定について
(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(1)?(2) 略

(3)請求項19に係る発明に対して以下の引用例3が引用されている。(新規性,進歩性)

引用例3.Huawei,Remaining Issues on Carrier Indicator Field,[online],3GPP TSG RAN WG1 meeting #60 R1-101047,2010.2.16,[検索日 2018.11.26],インターネットURL:http://www.3gpp.org/FTP/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60/Docs/R1-101047.zip


第4 当審の判断

1 特許法第36条に規定する要件(サポート要件,実施可能要件)について

(1)本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。(下線は当審が付与。)

「【0048】
DCIにCIFを含めるように構成することができる。たとえば、コンポーネントキャリアCC1のDCIは、PDCCHが共通の探索空間にある場合、CIFを含まないように構成され得る。コンポーネントキャリアCC1とコンポーネントキャリアCC2の両方のDCIは、PDCCHがUE固有の探索空間にある場合、CIFを含むように構成され得る。各コンポーネントキャリア用のCIFを含むためのDCIの構成は、コンポーネントキャリア同士が同じPDCCHフォーマットを使用するかそれとも異なるPDCCHフォーマットを使用するかとは無関係である。CIFを含むDCIとCIFを含まないDCIがあるので、UEは、PDCCHペイロードサイズを調べて、DCIがCIFを含むかどうかを決定する。PDCCHペイロードサイズは、送信モード、eNodeB802における送信アンテナの数(DL-MIMO)および/またはUEにおける送信アンテナの数(UL-MIMO)、TDDシステムおよびFDDシステム、DCIがCIFを含むかどうか、帯域幅などの関数である。したがって、コンポーネントキャリアCC1のCIFを含まないPDCCHペイロードサイズは、コンポーネントキャリアCC2のCIFを含む別のPDCCHのペイロードサイズと同じであり得る。コンポーネントキャリアCC1とコンポーネントキャリアCC2の両方のPDCCHがCC1およびCC2上で送信されるので、UE804は、PDCCHペイロードサイズのみに基づいてPDCCHグラントがコンポーネントキャリアCC1(CIFを含まない)用のグラントであるかそれともコンポーネントキャリアCC2(CIFを含む)用のグラントであるかを判別できないことがある。
中略
【0051】
PDCCHはブロードキャストまたはユニキャストであり得る。PDCCHがブロードキャストである場合、PDCCHを共通の探索空間904内で送信しなければならない。PDCCHがユニキャストであるとき、PDCCHは、共通の探索空間904内またはUE固有の探索空間906内で送信され得る。図9に示すように、探索空間904、906は場合によっては重なり合う。探索空間904、906が重なり合っていると(すなわち、共通の探索空間904内の第1のCCEインデックスnCCEとUE固有の探索空間906内の第1のCCEインデックスnCCEとが同じであると)、PDCCHペイロードは重なり合った空間908内に存在し、CIFを含まないコンポーネントキャリアCC1用のPDCCHペイロードは、CIFを含むコンポーネントキャリアCC2用のPDCCHペイロードと同じサイズであり、UE804は、PDCCHがどちらのコンポーネントキャリアに適用されるかを決定できないことがある。
【0052】
図10は、クロスキャリアスケジューリングがあるときの潜在的なPDCCH混乱を示すための第2の図1000である。図10に示すように、コンポーネントキャリアCC1用のPDCCHは、共通の探索空間904内またはUE固有の探索空間906内に存在し得る。コンポーネントキャリアCC1用のPDCCHが共通の探索空間904に存在するとき、PDCCHは、以前のLTE Releaseとの後方互換性を維持するためにCIFを含まない(1002)。理論的には、共通の探索空間904内で送信されるPDCCHは、ブロードキャスト用のCIFではなくユニキャスト用のCIFを含み得るが、共通の探索空間904のサイズが大きくなり、ブラインドデコードの数が増大する。したがって、共通の探索空間904内で送信されるPDCCHは、CIFを含まない。
【0053】
コンポーネントキャリアCC1用のPDCCHがUE固有の探索空間906内に存在するとき、PDCCHはCIFを含み得る(1004)。コンポーネントキャリアCC2用のPDCCHは、共通の探索空間904内に存在せず(1006)、UE固有の探索空間906のみに存在する(1008)。UE804にはどちらのコンポーネントキャリアもCIFを含むことがわかっており、したがって、UE804は、DCIにCIFが含まれていると仮定し、CIFを調べて、どちらのコンポーネントキャリアがスケジューリングされているかを決定するので、UE804は、PDCCHスケジューリング可能性1004、1008に関してPDCCHがどちらのコンポーネントキャリアに適用されるかを決定することができる。しかしながら、PDCCHスケジューリング可能性1002、1008に関して、UE804は、PDCCHペイロードサイズが同じであり、PDCCHペイロードが重なり合った探索空間908内に存在するときにPDCCHがどちらのコンポーネントキャリアに適用されるかを決定できないことがある。
中略
【0058】
図15は、潜在的なPDCCHあいまいさを解決するための第5の例示的な方法を示すための図1500である。第5の例示的な方法によれば、PDCCHあいまいさが存在するとき、UE804は、PDCCHはCIFを含まないと仮定する。CIFを含まないPDCCHは、同じコンポーネントキャリア(たとえば、一次/アンカーキャリア、一次セル)をスケジューリングする。したがって、eNodeB802は、あいまいさが存在する可能性があるときは常に一次キャリア用のPDSCH/PUSCHをスケジューリングすべきである。2つのコンポーネントキャリア間で重なり合った探索空間が存在しないとき、PDCCHあいまいさは存在しないと考えられる。しかしながら、探索空間が重なり合っているときは、他のコンポーネントキャリアのスケジューリングが制限される。したがって、PDCCHあいまいさが存在し(すなわち、PDCCHペイロードが重なり合った探索空間内に存在し、PDCCHペイロード同士が同じサイズであり)、かつeNodeB802がコンポーネントキャリアCC1用のCIFを含まないPDCCHをUE804に送信した場合(1502)、UE802は、PDCCHがCIFを含まず、かつPDCCHはアンカーコンポーネントキャリアCC1用のPDCCHであると仮定する。さらに、PDCCHあいまいさが存在し、かつeNodeB802がコンポーネントキャリアCC2用のCIFを含むPDCCHをUE804に送信した場合(1508)、UE802は、PDCCHがCIFを含まず、かつPDCCHはコンポーネントキャリアCC1用のPDCCHであると仮定する。そのような状況では、UE804は、受信されたPDCCHを適切に復号することができない。したがって、この方法によれば、PDCCHあいまいさが存在する可能性がある場合、eNodeB802は、コンポーネントキャリアCC2をスケジューリングすべきではなく、アンカーコンポーネントキャリアCC1のみをスケジューリングすべきである。
【0059】
したがって、第5の例示的な方法によれば、UEは、所与のサービングセル(たとえば、コンポーネントキャリアCC2)用のCIFを含むように構成され得る。また、UEは、一次セル(たとえば、コンポーネントキャリアCC1)内のPDCCH候補を監視するように構成され得る。UEは、共通のペイロードサイズを有するPDCCHおよび重なり合った探索空間内で情報を受信したときに(すなわち、共通の探索空間とUE固有の探索空間内で同じ第1のCCEインデックスnCCEを受信したときに)、共通の探索空間内のPDCCHは一次セル用の(または一次セルによって送信される)PDCCHであると仮定する。一構成では、UEは、C-RNTIによってスクランブルされたCRCが情報に含まれるときにのみ共通のペイロードサイズを有する重なり合った探索空間内のPDCCHは一次セル用のPDCCHであると仮定する。そのような構成では、C-RNTI以外の他のRNTIによってスクランブルされたCRCが情報に含まれるときには、PDCCHあいまいさは存在せず、UEがそのような仮定をする必要はない。」

(2)当審拒絶理由の「1(4)」について
請求項1の「前記判別できないことが決定されるときはいつでも、前記グラントによって前記複数のコンポーネントキャリアのうちの1つのコンポーネントキャリアのみをスケジューリングする」との事項は,「判別できないことが決定されるとき」はいつでも,二次コンポーネントキャリアのみをスケジューリングし,CIFを含む二次コンポーネントキャリア用のグラントをユーザ機器に対して用いることを含むものである。
一方,eNodeBはUEに対して,スケジュール情報を含むグラントをPDCCHを介して送信することが,当業者の技術常識であるところ,上記(1)の段落0058-0059によれば,eNodeBは,グラントにCIFが含まれているか否か判別できないと決定したときには,一次コンポーネントキャリアのスケジューリングを行い,CIFを含まない一次コンポーネントキャリア用のグラントをUEに送信し,前記グラントを受信したUEは,前記グラントにCIFが含まれているか否か判別できないので,前記グラントをCIFを含まない一次コンポーネントキャリア用のものと仮定するものであることが記載されているといえる。
さらに,上記(1)の段落0058-0059によれば,eNodeBが,グラントにCIFが含まれているか否か判別できないと決定したとき,二次コンポーネントキャリアのスケジューリングを行い,CIFを含む二次コンポーネント用のグラントをUEに送信し,前記グラントを受信したUEは,前記グラントにCIFが含まれているか否か判別できないので,前記グラントを一次コンポーネントキャリア用のCIFを含まないものと仮定した場合には,受信されたグラントを適切に復号できないことが記載されているといえる。
そうすると,本願の発明の詳細な説明では,「判別できないことが決定されるとき」はいつでも,CIFを含むグラントによって二次コンポーネントキャリアのみをスケジューリングすることについて,想定されていないことは明らかである。
したがって、出願時の技術常識に照らしても、本願発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

また,上記(1)の段落0058-0059に記載されているとおり,eNodeBが「判別できないことが決定されるとき」に,CIFを含むグラントによって1つのコンポーネントキャリアのみをスケジューリングした場合は,UEが受信した前記グラントにCIFが含まれているか否か判別できないために,前記グラントをCIFを含まない一次コンポーネントキャリア用のものと仮定すると,前記グラントを適切に復号できないため,請求項1の「一次コンポーネントキャリアおよび少なくとも1つの二次コンポーネントキャリアを含む複数のコンポーネントキャリアを用いてユーザ機器(UE)を通信するように」することについて,発明の詳細な説明には,当業者が実施できる程度に記載されているとはいえない。

[請求人の主張について]
当審拒絶理由の上記「1(4)」について,請求人は,平成31年3月11日に提出された意見書において,本願明細書の段落0058には、請求項1に係る発明がCIFを含むグラントおよびCIFを含まないグラントを想定していることが記載されているため,請求項1は、発明の詳細な説明の範囲内のものであり、かつ発明の詳細な説明の記載に従って十分に実施可能であると,主張している。
しかし,本願明細書の段落0048は,従来技術として,「(すなわち、PDCCHペイロードが重なり合った探索空間内に存在し、PDCCHペイロード同士が同じサイズであり)、かつeNodeB802がコンポーネントキャリアCC1用のCIFを含まないPDCCHをUE804に送信した場合(1502)」に,CIFを含むグラントと,CIFを含まないグラントとが判別できないことが記載されているところ,「判別できないことが決定されるとき」はいつでも,CIFを含むグラントによって二次コンポーネントのみをスケジューリングすることは記載されておらず,また,前記判別できないときに,UEが,前記グラントがCIFを含むグラントと仮定した場合には,受信されたグラントが適切に復号できないことは明らかである。

したがって、本願発明1は,発明の詳細な説明に記載したものではなく,また,発明の詳細な説明には,当業者が実施できる程度に記載されているとはいえない。


(3)当審拒絶理由の「1(5)」について
請求項1の「前記判別できないことが決定されるときはいつでも、前記グラントによって前記複数のコンポーネントキャリアのうちの1つのコンポーネントキャリアのみをスケジューリングすること」,及び,「ここにおいて、前記判別できないことが決定されるときは、少なくとも下記(i)および/または(ii)のときを含む、
(i)前記グラントに付加された巡回冗長検査(CRC)がセル無線ネットワーク一時識別子(C-RNTI)によってスクランブルされているとき、および
(ii)共通の探索空間の制御チャネル要素(CCE)インデックスと前記UE固有の探索空間のCCEインデックスが等しく、かつ前記共通の探索空間が前記UE固有の探索空間と重なり合うとき」との事項は,グラントに付加するCRCをC-RNTIによってスクランブルすることのみに基づいて,判別できないことを決定し,前記決定されるときには,二次コンポーネントキャリアのみをスケジューリングすることを含むものである。
一方,eNodeBは個別のUEに対して,PDCCHに含まれるグラントをユニキャストで送信するために,前記グラントに付加されるCRCを前記個別のUEに固有のC-RNTIによってスクランブルすることが,当業者の技術常識であるところ,上記(1)の段落0051-0053,0058-0059によると,グラントに付加されるCRCを送信先の個別のUE固有のC-RNTIによってスクランブルすること,及び,共通の探索空間で送信される一次コンポーネントキャリア用のCIFを含まないグラントと,UE固有の探索空間で送信される二次コンポーネントキャリア用のCIFを含むグラントとが,同じサイズであること,及び,共通の探索空間とUE固有の探索空間とが重なりあっていることの,全てを満たす場合に,UEは,受信したグラントが,一次コンポーネントキャリア,あるいは二次コンポーネントキャリアの何れに適用されるかを判別できないため,eNodeBは,前記判別できないと決定した場合に,一次コンポーネントキャリアのみをスケジューリングすることが記載されているといえる。
そして,上記(1)の段落0048によると,一次コンポーネントキャリアのCIFを含まないグラントと,二次コンポーネントキャリアのCIFを含むグラントとが,同じペイロードサイズでない場合には,一次コンポーネントキャリア,あるいは二次コンポーネントキャリアの何れに適用されるかを判別できること,及び上記(1)の段落0058によると,共通の探索空間とUE固有の探索空間とが重なり合っていない場合に,一次コンポーネントキャリア,あるいは二次コンポーネントキャリアの何れに適用されるかを判別できることが記載されているといえる。
そうすると,発明の詳細な説明においては,グラントに付加されたCRCがC-RNTIによってスクランブルされていることのみに基づいて,判別できないことを決定し,前記決定されるときには,二次コンポーネントキャリアのみをスケジューリングすることは,想定されていないことは明らかである。
したがって、出願時の技術常識に照らしても、本願発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

また,上記のとおり,eNodeBは個別のUEに対して,PDCCHに含まれるグラントをユニキャストで送信するために,前記グラントに付加されるCRCを前記個別のUEに固有のC-RNTIによってスクランブルすることが,当業者の技術常識であるから,グラントに付加するCRCをC-RNTIによってスクランブルすることのみに基づいて,判別できないことを決定し,前記決定されるときには,二次コンポーネントキャリアのみをスケジューリングする場合には,個別のUEに対して一次コンポーネントキャリア用のグラントがユニキャストで送信できないことは明らかである。
そして,発明の詳細な説明には,グラントに付加されたCRCがC-RNTIによってスクランブルされていることのみに基づいて,判別できないことを決定し,前記決定されるときには,二次コンポーネントキャリアのみをスケジューリングする場合に,どのようにして個別のUEに対して一次コンポーネントキャリア用のグラントを送信するのか,発明の詳細な説明には,当業者が実施できる程度に記載されているとはいえない。

[請求人の主張について]
当審拒絶理由の上記「1(5)」について,請求人は,平成31年3月11日に提出された意見書において,補正によって,当審拒絶理由の上記「1(5)」は解消されたと主張している。
しかし,上記で述べたとおり,請求項1に係る発明において,当審拒絶理由の「1(5)」は解消されていない。

したがって、本願発明1は,発明の詳細な説明に記載したものではなく,また,発明の詳細な説明には,当業者が実施できる程度に記載されているとはいえない。


2 特許法第29条の規定(新規性,進歩性)について

(1)本願発明2
本願発明2は,上記「第2」で認定した,以下のとおりのものである。

「【請求項4】
ワイヤレス通信のための装置であって、
一次コンポーネントキャリアおよび少なくとも1つの二次コンポーネントキャリアを含む複数のコンポーネントキャリアのうちのあるコンポーネントキャリア上でグラントを受信するための手段と、
前記グラントに基づいてeNodeBと通信するための手段と、
ここにおいて、前記グラントは、前記装置がグラントにキャリアインジケータフィールド(CIF)が含まれているかどうかを判別できないと前記eNodeBが決定するときに前記複数のコンポーネントキャリアのうちの1つのコンポーネントキャリアのみをスケジューリングし、
ここにおいて、前記判別できないことが決定されるときは、少なくとも下記(i)および/または(ii)のときを含む、
(i)前記グラントに付加された巡回冗長検査(CRC)がセル無線ネットワーク一時識別子(C-RNTI)によってスクランブルされているとき、および
(ii)共通の探索空間の制御チャネル要素(CCE)インデックスと前記UE固有の探索空間のCCEインデックスが等しく、かつ前記共通の探索空間が前記UE固有の探索空間と重なり合うとき
を備える、装置。」(再掲)


(2)引用例の記載及び引用発明
当審拒絶理由で引用されたHuawei,Remaining Issues on Carrier Indicator Field,[online],3GPP TSG RAN WG1 meeting #60 R1-101047,2010.2.16,[検索日 2018.11.26],インターネットURL:http://www.3gpp.org/FTP/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60/Docs/R1-101047.zip(表題の当審訳:「キャリアインジケータフィールドに関する残りの問題」;以下,「引用例3」という。)には以下の記載がある。(下線は当審が付与。)

ア 「DCI formats for UE-specific control channels
In case of cross-carrier scheduling enabled carrier (based on the carrier mapping configured by eNB between each PDSCH/PUSCH carrier and the corresponding PDCCH carrier), for DCI formats for UE-specific control channels which are scrambled with C-RNTI in UE-specific SS, CIF is better to be included to simplify the DCI design. However, one argument is if the payload sizes of multiple aggregated carriers are different due to different carrier bandwidths or transmission modes, CIF can be left out [3]. Unfortunately, DCI payload size ambiguity may occur among the DCI formats with and without CIF. Although it can be solved by padding bit(s) to the ambiguous DCI formats as done in Rel-8, it will complicate the DCI payload design and all the payload size ambiguity needs to be exhaustively enumerated, and the specification will be even more complex if more DCI formats are introduced in future releases. 」(1葉17行-26行)
(当審訳:
UE固有の制御チャネル用のDCIフォーマット
クロスキャリアスケジューリング対応キャリア(各PDSCH/PUSCHキャリアと対応するPDCCHキャリア間のeNBで設定されたキャリアマッピングに基づく)の場合、UE固有のSSにおいてC-RNTIでスクランブルされるUE固有の制御チャネルのDCIフォーマットのためには、DCI設計を単純化するためにCIFを含めるようにするのがよい。しかしながら、キャリア帯域幅や伝送モードが異なるために複数のアグリゲートキャリアのペイロードサイズが異なる場合に,CIFを省略できることが,議論となる[3]。残念ながら、DCIペイロードサイズのあいまいさは、CIFのあるDCIフォーマットと,CIFの無いDCIフォーマットとの間で発生する可能性がある。Rel-8で行われているようにあいまいなDCIフォーマットにビットをパディングすることによって解決することができるが、それはDCIペイロード設計を複雑にし、全てのペイロードサイズのあいまいさは徹底的に列挙する必要があり、将来のリリースでDCIフォーマットがさらに導入された場合,仕様はさらにもっと複雑になる。)

イ 「4 Linkage between PDSCH/PUSCH and PDCCH
In the WF of RAN1#59bis on CIF, there are two schemes for the CC linkage between PDSCH/PUSCH and PDCCH:
Scheme 1: Each PDSCH/PUSCH CC can be scheduled only from a single DL CC.
Scheme 2: Support scheduling a PDSCH/PUSCH CC from more than one DL CC.
This shall not increase the number of PDCCH blind decodes and or the PDCCH CRC false detection rate compared to a system not having CIF.

For scheme 1, the number of PDCCH BDs can be kept the same as to the case not having CIF, while for scheme 2, eNB would need some standardization and/or implementation efforts to control the number of PDCCH BDs, such as bit padding and/or compressing for DCI payload size alignment, especially in the case of different transmission modes and/or different CC bandwidths adopted among multiple CCs. So we prefer to configure single linkage from PDSCH/PUSCH to PDCCH, in order to keep the same blind decoding number as to the case with same-carrier scheduling.[7]

In addition, if PDCCHs (with CIF included) for PDSCH/PUSCHs from multiple CCs have the same payload size, these PDCCHs can be simultaneously detected in the same search space. In another word, the search spaces for these PDCCHs can be shared, which is beneficial to decrease the PDCCH blocking probability without increasing the number of PDCCH BDs. The logic of SS sharing is similar to what has been captured in Rel-8, where DCI format 1A/0 scrambled by C-RNTI/SPS C-RNTI has the same payload size as that for DCI format 3/3A, so DCI format 1A/0 scrambled by C-RNTI/SPS C-RNTI is allowed in common SS to decrease the blocking probability without increasing the blind decoding number. More specific analysis can be referred to our paper for BD analysis [7]. Then we propose that:

Proposal:
For each PDSCH/PUSCH CC, higher layer can configure a single CC carrying the corresponding DL grant/UL grant.
If PDCCHs (with CIF included) for PDSCH/PUSCHs from multiple CCs have the same payload size, the search spaces of these PDCCHs can be shared.」(2葉34行-3葉22行)
(当審訳:
4 PDSCH/PUSCHとPDCCHとの間のリンケージ
CIFについてRAN1#59bisのWFには、PDSCH/PUSCHとPDCCHとの間のCCリンケージには2つの方式がある:
方式1:各PDSCH/PUSCH CCは単一のDL CCからのみスケジュールすることができる。
方式2:複数のDL CCからのPDSCH/PUSCH CCのスケジューリングをサポートする。
これは、CIFを持たないシステムと比較して、PDCCHブラインドデコードの数やPDCCH CRCの誤検出率を増加させない。

方式1の場合、PDCCH BDの数は、CIFを持たない場合と同じに保つことができるが、方式2では、特に、複数のCC間で異なる伝送モード及び/又は異なるCC帯域幅が採用されている場合、eNBは、ビットパディング及び/又はDCIペイロードサイズアラインメントのための圧縮など、PDCCH BDの数を制御するための何らかの標準化及び/又は実装努力が必要となる。そのため、同一キャリアスケジューリングの場合と同じブラインドデコーディング数を維持するために、PDSCH/PUSCHからPDCCHへの単一リンケージを設定することを提案する[7]。

さらに、複数のCCからのPDSCH/PUSCHに対するPDCCHs(CIFを含む)が同じペイロードサイズを有する場合、これらのPDCCHは同じサーチスペース内で同時に検出することができ、言い換えれば、これらのPDCCHのサーチスペースを共有することができ、これは、PDCCH BDの数を増やすことなくPDCCHブロッキング確率を減少させるのに有益である。SS共有のロジックは、Rel-8で取り込まれたものと似ており、ここで、C-RNTI/SPS C-RNTIによってスクランブルされたDCIフォーマット1A/0は、DCIフォーマット3/3Aのものと同じペイロードサイズを有するものであり、ブラインドデコーディング数を増加させることなくブロッキング確率を減少させるため、C-RNTI/SPS C-RNTIによってスクランブルされたDCIフォーマット1A/0は共通SSで許可される。より具体的な分析は、BD分析に関する我々の論文[7]を参照することができる。そこで我々は以下を提案する:

提案:
各PDSCH/PUSCH CCに対して、上位層は対応するDLグラント/ULグラントを搬送する1つのCCを構成することができる。
複数のCCからのPDSCH/PUSCHに対するPDCCHs(CIFを含む)が同じペイロードサイズを持つ場合、これらのPDCCHのサーチスペースを共有できる。)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると,引用例3には,次の技術的事項が記載されているといえる。

(ア)上記アの記載からも明らかなように,CIFは,複数のコンポーネントキャリアによるクロスキャリアスケジューリングにおいて用いられるものであることは,当業者の技術常識であるから,上記イの「方式1」及び「提案」は,クロスキャリアスケジューリングであることは,当業者に自明である。

(イ)上記イの「方式1」及び「提案」に係る記載には,eNodeBからUEに対して,各PDSCH/PUSCH CCをスケジューリングする単一のDL CC上で,DLグラント/ULグラントを搬送することが記載されているといえる。
そして,上述のとおり,上記イの「方式1」及び「提案」に係る記載のスケジューリングは明らかにクロスキャリアスケジューリングであるところ,UEが,DLグラント/ULグラントを受信する手段と,前記受信したDLグラント/ULグラントに基づいてeNodeBとの通信を行う手段とを備えることは,当業者の技術常識であるから,引用例3には,各PDSCH/PUSCH CCをスケジューリングする単一のDL CC上で,DLグラント/ULグラントを受信するための手段と、前記DLグラント/ULグラントに基づいてeNodeBと通信するための手段とを備えたUEが記載されているといえる。

したがって,引用例3には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「各PDSCH/PUSCH CCをスケジューリングする単一のDL CC上で,DLグラント/ULグラントを受信するための手段と、
前記DLグラント/ULグラントに基づいてeNodeBと通信するための手段と,
を備える、UE。」


(3)引用発明との対比・判断

ア 引用発明との対比
本願発明2と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「UE」は,ワイヤレス通信のための装置であることは明らかであるから,本願発明2の「ワイヤレス通信のための装置」に相当する。

(イ)引用発明は,クロスキャリアスケジューリングに関するものであるから,引用発明の「各PDSCH/PUSCH CC」は,本願発明2の「一次コンポーネントキャリアおよび少なくとも1つの二次コンポーネントキャリアを含む複数のコンポーネントキャリア」に相当し,「各PDSCH/PUSCH CCをスケジューリングする単一のDL CC」は,本願発明2の「一次コンポーネントキャリアおよび少なくとも1つの二次コンポーネントキャリアを含む複数のコンポーネントキャリアのうちのあるコンポーネントキャリア」に相当する。そして,引用発明の「DLグラント/ULグラント」は,本願発明2の「グラント」に含まれる。したがって,引用発明の「各PDSCH/PUSCH CCをスケジューリングする単一のDL CC上で,DLグラント/ULグラントを受信するための手段」は,本願発明2の「一次コンポーネントキャリアおよび少なくとも1つの二次コンポーネントキャリアを含む複数のコンポーネントキャリアのうちのあるコンポーネントキャリア上でグラントを受信するための手段」に相当する。
また,引用発明の「前記DLグラント/ULグラントに基づいてeNodeBと通信するための手段」は,本願発明2の「前記グラントに基づいてeNodeBと通信するための手段」に相当する。

そうすると,本願発明2と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

[一致点]
「ワイヤレス通信のための装置であって、
一次コンポーネントキャリアおよび少なくとも1つの二次コンポーネントキャリアを含む複数のコンポーネントキャリアのうちのあるコンポーネントキャリア上でグラントを受信するための手段と、
前記グラントに基づいてeNodeBと通信するための手段と、
を備える、装置。」

[相違点]
本願発明2は,「ここにおいて、前記グラントは、前記装置がグラントにキャリアインジケータフィールド(CIF)が含まれているかどうかを判別できないと前記eNodeBが決定するときに前記複数のコンポーネントキャリアのうちの1つのコンポーネントキャリアのみをスケジューリングし、
ここにおいて、前記判別できないことが決定されるときは、少なくとも下記(i)および/または(ii)のときを含む、
(i)前記グラントに付加された巡回冗長検査(CRC)がセル無線ネットワーク一時識別子(C-RNTI)によってスクランブルされているとき、および
(ii)共通の探索空間の制御チャネル要素(CCE)インデックスと前記UE固有の探索空間のCCEインデックスが等しく、かつ前記共通の探索空間が前記UE固有の探索空間と重なり合うとき」との事項を備えるのに対して,引用発明は,前記事項について特定していない点。


(4)判断
上記相違点について検討する。

本願発明2は,ユーザ機器(UE)としてeNodeBと通信を行う「ワイヤレス通信のための装置」であるといえるところ,本願発明2の「ここにおいて、前記グラントは、前記装置がグラントにキャリアインジケータフィールド(CIF)が含まれているかどうかを判別できないと前記eNodeBが決定するときに前記複数のコンポーネントキャリアのうちの1つのコンポーネントキャリアのみをスケジューリングし、
ここにおいて、前記判別できないことが決定されるときは、少なくとも下記(i)および/または(ii)のときを含む、
(i)前記グラントに付加された巡回冗長検査(CRC)がセル無線ネットワーク一時識別子(C-RNTI)によってスクランブルされているとき、および
(ii)共通の探索空間の制御チャネル要素(CCE)インデックスと前記UE固有の探索空間のCCEインデックスが等しく、かつ前記共通の探索空間が前記UE固有の探索空間と重なり合うとき」との事項は,eNodeBにおける動作に関する事項を特定するものであって,ユーザ機器(UE)としての「ワイヤレス通信のための装置」を何ら特定するものではない。
そうすると,上記相違点は,実質的な相違点ではない。
(審査基準第III部第2章第4節4.1.2 「他のサブコンビネーション」に関する事項が、「他のサブコンビネーション」のみを特定する事項であって、請求項に係るサブコンビネーションの発明の構造、機能等を何ら特定していない場合、4.2.2 請求項中に記載された「他のサブコンビネーション」に関する事項がサブコンビネーションの発明の構造、機能等を何ら特定していない場合 参照。)

そして,本願発明2が奏する効果も,当業者が引用発明から容易に予想できる範囲内のものである。

したがって,本願発明2は,引用例3に記載された発明であり,また,引用例3に記載された発明に基づき,当業者が容易に想到できたものである。


第5 むすび
以上のとおり,本願は,発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしておらず,特許請求の範囲の記載が同条6項1号,同条6項2号に規定する要件を満たしていないから,拒絶すべきものである。
また,本願発明2は,引用例3に記載された発明であり,引用例3に記載された発明に基づき,当業者が容易に想到できたものであるから,特許法第29条第1項第3号,同条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-15 
結審通知日 2019-05-21 
審決日 2019-06-04 
出願番号 特願2015-204889(P2015-204889)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H04W)
P 1 8・ 537- WZ (H04W)
P 1 8・ 121- WZ (H04W)
P 1 8・ 536- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 脇岡 剛
山本 章裕
発明の名称 LTEにおけるPDCCHペイロードサイズのあいまいさを解決する方法  
代理人 岡田 貴志  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  

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