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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1356367
審判番号 不服2018-11303  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-21 
確定日 2019-11-08 
事件の表示 特願2014-223001「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月23日出願公開、特開2016- 90720、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月31日の出願であって、平成30年3月19日付けで拒絶理由が通知され、同年5月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、それに対して、同年8月21日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において、令和1年5月22日付けで拒絶理由が通知され、同年7月25日に意見書及び手続補正書(以下、当該手続補正書を「本件補正書」という。)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、本件補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成装置において、
シートに画像を形成する電子写真方式の画像形成ユニットであって、装置本体に対して着脱自在に装着された画像形成ユニットと、
前記画像形成ユニットの着脱時に前記画像形成ユニットが通過する開口部を有する筐体であって、前記画像形成ユニットを収納する筐体と、
前記画像形成ユニットに設けられた把持部であって、前記画像形成ユニットが前記装置本体に装着された状態において、少なくとも一部が前記開口部から突出する把持部と、
前記開口部を閉塞する閉塞位置と前記開口部を開放する開放位置との間で変位可能なカバーであって、前記閉塞位置にあるときに前記把持部のうち前記開口部から突出した部分を覆う突出覆い部を有するカバーとを備え、
前記カバーには、画像形成が終了したシートが載置される排紙トレイが設けられ、
前記突出覆い部は、前記カバーのうち前記排紙トレイの一部が突出して前記排紙トレイに載置されたシートを支持し当該シートの端部と前記排紙トレイとの間に隙間を形成するように
設けられている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成ユニットにシートを搬送する搬送ローラを備え、
さらに、前記搬送ローラの軸線方向と直交する仮想平面に投影された前記突出覆い部と当該仮想平面に投影された前記把持部の一部とが重なることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記突出覆い部は、前記カバーの一部が突出した部位であり、
前記軸線方向と平行な方向を幅方向としたとき、
前記突出覆い部の突出方向先端を連ねた尾根部は幅方向に延び、かつ、当該尾根部の延び方向長さは、前記カバーの幅方向長さより小さいことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記突出覆い部は、前記排紙トレイのうち前記軸線方向の中央部に位置していることを特徴とする請求項2及び3のうちいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記筐体には、画像が形成されたシートを前記排紙トレイに向けて排出する排紙口が設けられており、
前記突出覆い部のうち前記排紙口側には、前記排紙口から離間するほど上昇する傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成ユニットは、現像剤像を担持する感光ドラムを有し、
前記筐体のうち前記把持部を挟んで前記感光ドラムとの反対側には、当該感光ドラムを露光する露光器が配設されており、
さらに、前記把持部には、前記露光器から出射される露光用の光を通過させる窓部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記感光ドラムの軸線と平行な方向を幅方向としたとき、
前記把持部のうち前記窓部を挟んで幅方向両端側には、前記窓部を囲む枠部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記カバーより鉛直方向上方側には、画像を読み取る画像読取装置が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成ユニットは、現像剤を収容する収容部を有すること特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の画像形成装置。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2002-207408号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は、認定に用いた箇所を強調するために付与したものである(以下、同様。)。

ア 「【0111】この画像形成装置Aは図1に示すように、光学手段1から画像情報に基づいた光像を照射して像担持体である感光ドラム101にトナー像を形成する。そして前記トナー像の形成と同期して記録媒体としてのシートPを分離手段2および搬送手段3によって一枚づつ分離搬送し、且つプロセスカートリッジCとしてカートリッジ化された画像形成部において前記感光ドラム101に形成したトナー像を、転写手段である転写ローラ10によってシートPに転写し、そのシートPを定着手段5に搬送し、転写トナー像を定着して、排紙手段6によって排出トレイ7上へ排出する。
【0112】前記画像形成部を構成するプロセスカートリッジCは、図1に示すように、感光ドラム101を回転してその表面を帯電手段105によって一様に帯電し、前記光学手段1からの光像を露光部109を介して感光ドラム101に露光して静電潜像を形成し、現像手段110で前記静電潜像に応じたトナー像を形成することにより可視像化する。そして前記転写ローラ10でトナー像をシートPに転写した後は、クリーニング手段120によって感光ドラム101に残留したトナーを除去する。尚、前記感光ドラム101等の各部品は樹脂製のハウジング130内に収納されてカートリッジ化され、画像形成装置Aに対して着脱可能に構成されている。137は感光ドラム101に向けて搬送されるシートPをガイドするシートガイドである。
【0113】20はプロセスカートリッジCを着脱する際に開く開閉カバーである。開閉カバー20の内側には、転写ローラ10、シートPの搬送路9の一方を形成する搬送ガイド21が設けてある。図7に示すように、開閉カバー20を開くことで、画像形成装置Aに対してプロセスカートリッジCを着脱することができる。」

イ 「【0119】本実施の形態のプロセスカートリッジCは、図1および図3に示すように、像担持体である電子写真感光ドラム101の周囲に帯電手段105、露光部109、現像手段110、クリーニング手段120を配置し、これらをハウジング130で覆って一体化して構成し、これを画像形成装置Aに着脱可能に構成している。132はプロセスカートリッジCの着脱などのハンドリング時に、プロセスカートリッジCを保持するための把手である。」

ウ 「【0130】(ハウジングの構成)ハウジング130はクリーニング枠体131、現像枠体133からなり、クリーニング枠体131には感光ドラム101、帯電手段105、クリーニング手段120が保持されている。感光ドラム101はクリーニング枠体131と現像枠体133とで形成された転写のための開口部134に隣接して設けてある。開口部134から感光ドラム101、ドラムギア102、スリーブ駆動ギア103、転写ローラ駆動ギア104の一部が露出しており、開口部134において、感光ドラム101上に形成されたトナー像が、シートPに転写される。一方、現像枠体133には、現像手段110が保持されている。クリーニング枠体131と現像枠体133は、軸135によって回動可能に連結され、加圧バネ136によって図3中矢印G方向に付勢され、感光ドラム101と突き当てコロ115とが圧接されている。
【0131】把手132は開口部134の両端部に、クリーニング枠体131に一体に設けてあり、プロセスカートリッジCを画像形成装置Aに対して着脱する際に、ユーザーは把手132を持ってプロセスカートリッジCの着脱を行う。」

エ 「【0139】25は開閉カバー20を閉じた際に、プロセスカートリッジCの把手132が入り込む凹部であり、把手132に対応する位置に設けてある(図1参照)。」

オ 「【0141】{プロセスカートリッジの着脱動作}前記画像形成装置A内にはプロセスカートリッジCを装着するための装着手段が設けてある。プロセスカートリッジCの画像形成装置Aに対する着脱は、開閉カバー20を開くことによって行う。開閉カバー20を開くと、それまで圧縮コイルばね27のばね力で感光ドラム101に圧接していた転写ローラ10は感光ドラム101から離れる。また、開閉カバー20を開くと、画像形成装置A内の左右壁面に設けてある装着ガイド30および位置決めガイド溝31が現われる(図7参照)。
【0142】プロセスカートリッジCを画像形成装置Aに装着する際には、開閉カバー20を開き、プロセスカートリッジCの左右側面に突出して設けた着脱ガイド139を前記装着ガイド30に沿わせてプロセスカートリッジCを挿入する。なお、手差し給紙ガイド28の内側面28a上にプロセスカートリッジCを載置することでプロセスカートリッジCの画像形成装置Aへの着脱を容易としている。前記挿入過程において、位置決め軸138は位置決めガイド溝31にガイドされ、位置決めガイド溝31の終端32にて、プロセスカートリッジCは画像形成装置Aに対して位置決めされる(図8参照)。その後、開閉カバー20を閉じることによって装着が完了する。開閉カバー20を閉じると、開閉カバー20の内側に設けた転写ローラ10が感光ドラム101に圧接され、転写ローラギア12と転写ローラ駆動ギア104がかみ合う。また、搬送ガイド21がプロセスカートリッジCと対向してシートPの搬送路9が形成される。また、把手132が開閉カバー20の凹部25に納まる(図1参照)。
【0143】プロセスカートリッジCを画像形成装置Aから取り出す際には、前記装着動作の逆の手順で行う。すなわち、開閉カバー20を開き、プロセスカートリッジCの把手132を手指でつかみ、装着ガイド30に沿わせてプロセスカートリッジCを引き出すことで、プロセスカートリッジCを画像形成装置Aから取り出すことができる。
【0144】プロセスカートリッジCの把手132は、前述のようにプロセスカートリッジCの開口部134の両端部から、プロセスカートリッジCの着脱方向に略並行に延設して設けてある。把手132の先端部132aは、プロセスカートリッジCを画像形成装置Aから引き出す際にやすいように、先端部が下方に屈曲し、手指による引き出し方向の力を受ける指掛け面132bを設けている。さらに、プロセスカートリッジCを図7の状態に支えやすいように、把手132の先端部の上面は上方に隆起した凸部132cを有する。
【0145】プロセスカートリッジCを画像形成装置Aに着脱する際は、上記指掛け面132bに人差し指ないし中指を引っ掛けて下方から支え、親指にて凸部132cを上方から押さえることで、プロセスカートリッジCを安定して支持することができる(図7および図8参照)。
【0146】{開閉カバー各部とプロセスカートリッジ各部の寸法関係の説明}プロセスカートリッジCを画像形成装置Aから取り出す操作は、図8に示したように、把手132の指掛け面132bに手指を引っ掛けて、矢印K方向に引き出すことで行われる。このとき、把手132の移動経路は図8において、Mの範囲となる。前記把手132の移動経路Mの延長上の開閉カバー20上には、開閉カバー20を閉じた際に把手132が収まる凹部25が設けてある。
【0147】前記プロセスカートリッジCの引き出し操作において、ユーザーは把手132に手指をかける際に、把手132の外側から手指を指掛け面132bにかけるのが自然である。この状態でプロセスカートリッジCを装着ガイド30に沿って引き出すと、ユーザーの手指が開閉カバー20の凹部25の周辺部に当接した時点で、それ以上プロセスカートリッジCを引き出す操作が終了する。このときユーザーの手指は少なくとも凹部25の外側に隣接した部分26に当接しており、この凹部25の外側に隣接した部分26、すなわち把手132の横方向外側に位置する開閉カバー20の一部が、プロセスカートリッジCが引き出されるのを制限する引き出し制限部26となる。
【0148】ユーザーはその後、プロセスカートリッジCを上方に持ち上げることで、プロセスカートリッジCの取り出しが終了する。」

(2) 上記(1)で摘記した事項において、「感光ドラム101」と「電子写真感光ドラム101」という記載が混在しているが、両者は同じ部材を示すことは明らかである。

(3) 上記(1)及び(2)の事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「感光ドラム101に形成したトナー像を、転写手段である転写ローラ10によってシートPに転写し、そのシートPを定着手段5に搬送し、転写トナー像を定着して、排紙手段6によって排出トレイ7上へ排出する画像形成装置Aであって、
感光ドラム101を回転してその表面を帯電手段105によって一様に帯電し、光学手段1からの光像を露光部109を介して感光ドラム101に露光して静電潜像を形成し、現像手段110で前記静電潜像に応じたトナー像を形成することにより可視像化するプロセスカートリッジCであって、像担持体である感光ドラム101の周囲に帯電手段105、露光部109、現像手段110、クリーニング手段120を配置し、これらをハウジング130で覆って一体化して構成し、これを画像形成装置Aに着脱可能に構成したプロセスカートリッジCと、
ハウジング130がクリーニング枠体131、現像枠体133からなり、クリーニング枠体131に一体に設けてあり、プロセスカートリッジCを画像形成装置Aに対して着脱する際に、ユーザーが持ってプロセスカートリッジCの着脱を行う把手132と、
プロセスカートリッジCを画像形成装置Aに装着する際に開かれる開閉カバー20と、
を備え、開閉カバー20を閉じると、開閉カバー20の内側に設けた転写ローラ10が感光ドラム101に圧接され、転写ローラギア12と転写ローラ駆動ギア104がかみ合い、搬送ガイド21がプロセスカートリッジCと対向してシートPの搬送路9が形成され、把手132が開閉カバー20の凹部25に納まる、
画像形成装置A。」

2 引用文献2について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2007-3660号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0021】
画像形成装置1は、内部構造を保護する筐体2、主に画像を現像する現像ユニット6を備える。このような構成により、画像形成装置1は、用紙(記録媒体)にトナーを融着させることによって画像を形成する装置として構成されている。
【0022】
筐体2の前面には、図1において矢印100で示すように、X軸に略平行な軸を中心に約90°回動するフロントカバー20が取り付けられている。
【0023】
現像ユニット6は、筐体2の内部に配置され、図示しない感光ドラムの表面に形成された静電潜像を、トナーによって形成される顕像に現像する機能を有するユニットである。現像ユニット6は、フロントカバー20が開いた状態において、図1において矢印101で示すように、筐体2の内部に対して着脱可能とされている。現像ユニット6には、着脱の際に、オペレータが使用する取っ手60が設けられている。」

イ 「【0027】
本実施の形態における画像形成装置1では、図2に示すように、フロントカバー20に収容部21を設けている。収容部21は、フロントカバー20における開口部(切り欠き部)として形成されている。
【0028】
画像形成装置1において、現像ユニット6を内部に収容した状態で、かつ、フロントカバー20を閉じた状態にすると、取っ手60がフロントカバー20の収容部21に収容された状態となる。すなわち、フロントカバー20は、取っ手60と干渉する部分が切り欠かれた状態に形成されている。なお、このとき、取っ手60の(+Y)方向の端部は、フロントカバー20から突出することがないようにされている。
【0029】
フロントカバー20をこのような形状とすることにより、従来に比べて、フロントカバー20を(-Y)方向に配置することができる。したがって、取っ手60を小型化して操作性を低下させることなく、装置の小型化が実現される。」

ウ 「【0039】
図4は、第2の実施の形態における画像形成装置1aのフロントカバー20aを示す断面図である。
【0040】
第2の実施の形態におけるフロントカバー20aには、Y軸方向の厚みが薄い肉薄部が設けられており、これが取っ手60を収容する収容部21aを形成している。このように、フロントカバー20aに、一部肉薄の収容部21aを設けることによっても、従来の装置に比べて、フロントカバー20aを取っ手60の方向に近接配置することができる。したがって、取っ手60を小型化させることなく、装置の小型化を実現することができる。
【0041】
また、フロントカバー20aには、第1の実施の形態のフロントカバー20のように、開口部が形成されることはないので、筐体2の内部に粉塵が侵入することを防止することができる。」

(2) 上記(1)で摘記した事項から、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「内部構造を保護する筐体2、主に画像を現像する現像ユニット6を備え、用紙にトナーを融着させることによって画像を形成する装置として構成されている画像形成装置であって、
筐体2の前面には、フロントカバー20が取り付けられ、
現像ユニット6は、筐体2の内部に配置され、図示しない感光ドラムの表面に形成された静電潜像を、トナーによって形成される顕像に現像する機能を有するユニットであり、
現像ユニット6は、フロントカバー20が開いた状態において、筐体2の内部に対して着脱可能とされ、
現像ユニット6には、着脱の際に、オペレータが使用する取っ手60が設けられており、
フロントカバー20には、フロントカバー20における開口部として形成されている収容部21が設けられ、
画像形成装置1において、現像ユニット6を内部に収容した状態で、かつ、フロントカバー20を閉じた状態にすると、取っ手60がフロントカバー20の収容部21に収容された状態となり、フロントカバー20をこのような形状とすることにより、取っ手60を小型化して操作性を低下させることなく、装置の小型化が実現され、
フロントカバーに、厚みが薄い肉薄部が設けて、取っ手60を収容する収容部21aを形成し、このように、フロントカバーに、一部肉薄の収容部21aを設けることによっても、取っ手60を小型化させることなく、装置の小型化を実現することができる、
画像形成装置。」

3 引用文献3について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2011-81174号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、排紙トレイに載置された用紙のカールを抑え、整列して集積すると共に、集積された用紙を取り出しやすい排紙トレイを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。」

イ 「【0038】
図3および図4に、本発明の排紙トレイ41を詳細に示す。排紙トレイ41は読取り部11aの下側に設けられており、排出口39が配設された立壁42と、この立壁42に直交し排紙方向下流に向かって延在する側壁43a、43bと、立壁42および側壁43a、43bに囲まれ、排出された用紙Sを載置する載置面46とから構成されている。
【0039】
載置面46は、排出口39から排出される用紙Sの排紙方向上流側に位置する上流面47と、この上流面47の奥側から排紙方向下流側に向かって延びる水平面48と、前記上流面47の手前側から排紙方向下流側に向かって延びる水平段部49と、水平面48および水平段部49の間に設けられた凸部51とからなる。
【0040】
上流面47は立壁42の排出口39よりも下側であって側壁43a、43bの間に位置し、排紙方向に水平方向と傾斜角度αをなしている。ここでは傾斜角度αとして例えば、13°を採用している。
【0041】
水平面48は上流面47の排紙方向下流側縁部と連続し、排紙トレイ41の排紙方向下流側に水平方向に位置している。水平面48の側壁43aと凸部51との間の寸法をL1とする。
【0042】
水平段部49は上流面47の排紙方向下流側縁部と連続し、排紙トレイ41の排紙方向下流側に位置し、上流面47よりも一段低く形成されている。水平段部49を構成する底面52は水平方向に位置している。本実施形態では水平段部49の側壁43bと凸部51との間の寸法をL2とするとL1とL2とは同じ長さであるが、L2がL1より長くてもよい。
【0043】
凸部51は水平面48および水平段部49の底面52を水平にすることにより、水平面48と水平段部49との間に形成されている。また、凸部51は上流面47の中央から排紙方向下流に向かって水平方向と傾斜角度βをなして延びている。ここでは、傾斜角度βとして例えば10°を採用している。凸部51の排紙方向と直交する方向の寸法L3は例えば、50mmである。これにより、はがきなど小さなサイズの用紙でも凸部51の上面53に載置することができる。更に、凸部51の上面53であって搬送方向下流側縁部には、水平方向に切欠き面54が形成されている。
【0044】
次に、画像が形成された後、用紙Sが排出口39から排出され排紙トレイ41に載置される動作について説明する。
【0045】
排出口39から排出された用紙Sは上流面47および凸部51の上面53に沿って滑りながら押し出される。このとき、排出された用紙Sの少なくとも下面に画像が記録されており、片面印刷または両面印刷などの印刷動作により、用紙Sは図5(a)に示すように両端が上方に向けて反ったカール(以下、バックカールという)が生じ、または図5(b)に示すように両端が下方に向けて反ったカール(以下、フェイスカールという)が生じている。
【0046】
バックカールの生じた用紙Sが排紙トレイ41に載置されると用紙Sの中央付近が凸部51の角部56に当接し、両端は水平面48および水平段部49上のスペースに落ち込み上方に反って湾曲する。従って、2点差線で示す従来と比べてバックカールが生じることによる用紙両端の高さを抑え、排紙トレイ41に集積された用紙Sの高さが高くなることを防止し、排紙トレイ41と読取り部11aとの間により多くの用紙を集積することができる。
【0047】
フェイスカールの生じた用紙Sが排紙トレイ41に載置されると用紙Sの中央が凸部51の上面53に載置され、両端は水平面48および水平段部49に向かって下方に反って湾曲している。従って、2点差線で示す従来と比べてフェイスカールが生じることによる用紙中央の膨らみを抑え、排紙トレイ41に集積された用紙Sの高さが高くなることを防止し、排紙トレイ41と読取り部11aとの間により多くの用紙を集積することができる。
【0048】
また、上流面47および凸部51は排紙方向に傾斜しているので、上流面47および凸部51上に載置された用紙Sは傾斜に沿って排紙方向上流側に移動し、用紙Sの排紙方向上流側端部が排紙トレイ41の立壁42に当接し一致する。これにより、排紙トレイ41に用紙Sを整列して集積することができる。
【0049】
排紙トレイ41の手前側に水平段部49が形成されている。従って、排紙トレイ41上に集積された用紙Sを取り出す際には、画像形成装置11よりも手前側に位置するユーザが用紙Sを排紙トレイ41から取り出す際のスペースを確保し手が入りやすくなるので、凸部上に載置され水平段部49に向かって湾曲する用紙Sを排紙トレイ41から取り出しやすくなる。」

(2) 上記(1)で摘記した事項から、引用文献3には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。

「排紙トレイ41を備えた画像形成装置であって、
排紙トレイ41は読取り部11aの下側に設けられており、排出口39が配設された立壁42と、この立壁42に直交し排紙方向下流に向かって延在する側壁43a、43bと、立壁42および側壁43a、43bに囲まれ、排出された用紙Sを載置する載置面46とから構成され、
載置面46は、排出口39から排出される用紙Sの排紙方向上流側に位置する上流面47と、この上流面47の奥側から排紙方向下流側に向かって延びる水平面48と、前記上流面47の手前側から排紙方向下流側に向かって延びる水平段部49と、水平面48および水平段部49の間に設けられた凸部51とからなり、
排出口39から排出された用紙Sは上流面47および凸部51の上面53に沿って滑りながら押し出され、
排紙トレイ41の手前側に水平段部49が形成されているので、排紙トレイ41上に集積された用紙Sを取り出す際には、画像形成装置11よりも手前側に位置するユーザが用紙Sを排紙トレイ41から取り出す際のスペースを確保し手が入りやすくなるので、凸部上に載置され水平段部49に向かって湾曲する用紙Sを排紙トレイ41から取り出しやすくなる画像形成装置。」

4 引用文献4について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2014-157341号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0042】
(中略)
(3)画像形成部
画像形成部4は、プロセスカートリッジ15と、スキャナユニット16と、定着ユニット17とを備えている。
【0043】
プロセスカートリッジ15は、本体ケーシング2に対して着脱可能に構成され、給紙部3の後側部分の上側において本体ケーシング2に装着されている。プロセスカートリッジ15は、感光体カートリッジの一例としてのドラムカートリッジ18と、現像カートリッジ19とを備えている。」

イ 「【0055】
スキャナユニット16は、本体ケーシング2内において、プロセスカートリッジ15の前側に配置されている。スキャナユニット16は、感光ドラム20に向けて、画像データに基づくレーザービームLを出射し、感光ドラム20の周面を露光する。」

ウ 「【0061】
(中略)
2.ドラムカートリッジの詳細
ドラムカートリッジ18は、図2Aおよび図2Bに示すように、フレームの一例としてのドラムフレーム45を備えている。」

エ 「【0075】
そして、ドラムフレーム45は、その後側部分が、感光体収容部の一例としてのドラム収容部57として区画され、その前側部分が、現像カートリッジ収容部の一例としてのカートリッジ収容部58として区画されている。」

オ 「【0085】
(中略)
(3)カートリッジ収容部
カートリッジ収容部58は、詳しくは、1対のカートリッジ収容部側壁51、前壁61および底壁47の前側部分により区画されている。これにより、カートリッジ収容部58は、現像カートリッジ19の着脱を許容するように上側が開放されている。
【0086】
また、カートリッジ収容部58には、移動部材の一例としてのハンドル65が設けられている。」

オ 「【0099】
(中略)
3. 本体ケーシングに対するプロセスカートリッジの着脱動作
次に、本体ケーシング2に対するプロセスカートリッジ15の着脱動作について説明する。
【0100】
本体ケーシング2にプロセスカートリッジ15を装着するには、まず、ドラムカートリッジ18のカートリッジ収容部58に対して、図1に示すように、現像カートリッジ19を上側から装着する。これにより、プロセスカートリッジ15が形成される。
【0101】
次いで、本体ケーシング2を開放位置に配置し、カートリッジ開口部5を開放する。
【0102】
次いで、起立位置にあるハンドル65の把持部分69を把持して、プロセスカートリッジ15を、カートリッジ開口部5を介して、後下方に向かって本体ケーシング2内に挿入する。そうすると、プロセスカートリッジ15は、上下方向において、給紙部3の後側部分と定着ユニット17との間に到達し、本体ケーシング2内における装着位置に配置される。
【0103】
このとき、ハンドル65は、起立位置に配置され、前後方向に投影したときに、通過口70とスキャナユニット16とが重なるように、スキャナユニット16の後側に配置されている。
【0104】
そのため、画像形成動作時において、スキャナユニット16から出射されるレーザービームLは、通過口70を前側から後側に向かって通過した後、感光ドラム20の周面に到達し、感光ドラム20の周面を露光する。このように、ハンドル65が通過口70を有しているので、レーザービームLは、ハンドル65の通過口70を通過し、感光ドラム20の周面を露光することができる。そのため、露光装置の一例としてのスキャナユニット16を、スキャナユニット16から出射されるレーザービームLがハンドル65をよけるように、本体ケーシング2の上部に配置する必要がない。その結果、プリンタ1を小型化することができる。」

(2) 上記(1)で摘記した事項から、引用文献4には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。

「プロセスカートリッジ15と、スキャナユニット16と、定着ユニット17とを備え、
プロセスカートリッジ15は、本体ケーシング2に対して着脱可能に構成され、給紙部3の後側部分の上側において本体ケーシング2に装着され、ドラムカートリッジ18と、現像カートリッジ19とを備え、
ドラムカートリッジ18は、ドラムフレーム45を備え、
ドラムフレーム45は、その後側部分が、感光体収容部の一例としてのドラム収容部57として区画され、その前側部分が、現像カートリッジ収容部の一例としてのカートリッジ収容部58として区画され、
カートリッジ収容部58には、ハンドル65が設けられ、
スキャナユニット16は、本体ケーシング2内において、プロセスカートリッジ15の前側に配置され、感光ドラム20に向けて、画像データに基づくレーザービームLを出射し、感光ドラム20の周面を露光する画像形成部であって、
画像形成動作時において、スキャナユニット16から出射されるレーザービームLは、ハンドル65が有する通過口70を通過し、感光ドラム20の周面を露光する画像形成部。」

5 引用文献5について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2007-124427号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0014】
画像形成装置1の上段位置に画像読取ユニット(ISU…スキャナー)25を上下開閉自在に設けるとともに、この画像読取ユニット25の下方の画像形成装置1の中段位置に、画像形成装置1内部の現像ユニット20等を着脱する時に開閉する開口カバー35Aを、画像読取ユニット25と同じ向きに上下開閉自在に設けている。この画像読取ユニット25と開口カバー35Aの開閉構造等については、後で詳細に説明する。」

(2) 上記(1)で摘記した事項から、引用文献5には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。

「上段位置に画像読取ユニット25を上下開閉自在に設けるとともに、この画像読取ユニット25の下方の画像形成装置1の中段位置に、画像形成装置1内部の現像ユニット20等を着脱する時に開閉する開口カバー35Aを、画像読取ユニット25と同じ向きに上下開閉自在に設けている画像形成装置1。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比する発明について
原査定の対象となった平成30年5月21日付け手続補正後の請求項1は、当該手続補正前の請求項1に対して、請求項4及び5の発明特定事項を付加するとともに、さらに限定したものである。
そして、原査定の理由である平成30年3月19日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶理由は、請求項4及び5に対して、引用文献1及び3を引用して、当該請求項に係る発明が、当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、上記拒絶理由通知書では、請求項4及び5に対して、引用文献2を引用した拒絶理由は通知していない。
本願発明1は、平成30年5月21日付け手続補正後の請求項1を、本件補正によりさらに限定したものであるから、本願発明1と対比する発明は、引用文献1から認定した上記引用発明とする。

(2) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「シートP」は、本願発明1の「シート」に相当し、引用発明においては、感光ドラム101に形成したトナー像を、転写手段である転写ローラ10によってシートPに転写し、そのシートPを定着手段5に搬送し、転写トナー像を定着していることから、「シートP」に画像を形成している。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「シートに画像を形成する」点で共通する。

イ 引用発明の「プロセスカートリッジC」は、感光ドラム101を回転してその表面を帯電手段105によって一様に帯電し、光学手段1からの光像を露光部109を介して感光ドラム101に露光して静電潜像を形成し、現像手段110で前記静電潜像に応じたトナー像を形成することにより可視像化するものであるから、引用発明の「プロセスカートリッジC」は、電子写真方式でシートPに画像を形成するものである。
また、引用発明の「プロセスカートリッジC」は、像担持体である感光ドラム101の周囲に帯電手段105、露光部109、現像手段110、クリーニング手段120を配置し、これらをハウジング130で覆って一体化して構成したものであるから、感光ドラム101、帯電手段105、露光部109、現像手段110、クリーニング手段120といった部材が「ユニット」を構成するものといえる。。
したがって、引用発明の「プロセスカートリッジC」は、本願発明1の「画像形成ユニット」に相当し、本願発明1の「画像形成ユニット」と、引用発明の「プロセスカートリッジC」とは、「シートに画像を形成する」点、及び「電子写真方式」である点で共通する。

ウ 引用発明の「プロセスカートリッジC」は、画像形成装置Aに着脱可能であることから、本願発明1の「画像形成ユニット」と引用発明の「プロセスカートリッジC」とは、「装置本体に対して着脱自在に装着され」る点でも共通する。

エ 引用発明の「把手132」は、プロセスカートリッジCのハウジング130を構成するクリーニング枠体131に一体に設けてあることから、引用発明の「把手132」は、本願発明1の「把持部」に相当し、両者は、「前記画像形成ユニットに設けられた」ものである点でも共通する。

オ 引用発明の「開閉カバー20」は、プロセスカートリッジCを画像形成装置Aに装着する際に開かれるものであり、開閉カバー20が開かれれば、画像形成装置Aの開閉カバー20を除いた部分に開口が存在し、開閉カバー20は、当該開口を閉塞することは自明である。また、開閉カバー20が、プロセスカートリッジCを画像形成装置Aに装着する際に開かれる以上、前記開口は、プロセスカートリッジCが装着される際に、通過する部分であるし、逆に、プロセスカートリッジCを画像形成装置Aから取り出す際にも通過する部分でもあると認められる。
したがって、引用発明における上述の「開口」は、本願発明1の「開口部」に相当し、両者は、「前記画像形成ユニットの着脱時に前記画像形成ユニットが通過する」点で共通する。
そして、引用発明において、上記「開口」が形成されている、画像形成装置Aの開閉カバー20を除いた部分は、プロセスカートリッジCを収納することから、本願発明1の「筐体」に相当し、本願発明1と引用発明とは、「筐体」が、「前記画像形成ユニットの着脱時に前記画像形成ユニットが通過する開口部を有する」点、及び「前記画像形成ユニットを収納する」点で共通する。
また、引用発明の「開閉カバー20」は、本願発明1の「カバー」に相当し、本願発明1の「カバー」と、引用発明の「開閉カバー20」とは、「前記開口部を閉塞する閉塞位置と前記開口部を開放する開放位置との間で変位可能」である点で共通する。

カ 引用発明の「開閉カバー20」には、当該開閉カバー20が閉じると、把手132が納まる「凹部25」が形成されていることから、把手132は、画像形成装置Aの開閉カバー20を除いた部分から突出しているということができる。そして、把手132が、突出する部分は、上記オで説示した「開口」である。
してみると、本願発明1の「把持部」と、引用発明の「把手」とは、「前記画像形成ユニットが前記装置本体に装着された状態において、少なくとも一部が前記開口部から突出する」点でも共通する。

キ 上記カで検討したとおり、引用発明の「把手132」は、画像形成装置Aの「開口」から突出しており、その突出した部分が「凹部25」に納まっている。
してみると、本願発明1の「突出覆い部」と、引用発明の「凹部25」とは、「前記閉塞位置にあるときに前記把持部のうち前記開口部から突出した部分を覆う」部分であるという限りにおいて共通し、本願発明1の「カバー」と、引用発明の「開閉カバー20」とは、「前記閉塞位置にあるときに前記把持部のうち前記開口部から突出した部分を覆う」部分を有するという限りにおいて共通する。

ク 引用発明の「画像形成装置A」は、本願発明1の「画像形成装置」に相当する。

ケ 上記アないしクから、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。

[一致点]
「シートに画像を形成する画像形成装置において、
シートに画像を形成する電子写真方式の画像形成ユニットであって、装置本体に対して着脱自在に装着された画像形成ユニットと、
前記画像形成ユニットの着脱時に前記画像形成ユニットが通過する開口部を有する筐体であって、前記画像形成ユニットを収納する筐体と、
前記画像形成ユニットに設けられた把持部であって、前記画像形成ユニットが前記装置本体に装着された状態において、少なくとも一部が前記開口部から突出する把持部と、
前記開口部を閉塞する閉塞位置と前記開口部を開放する開放位置との間で変位可能なカバーであって、前記閉塞位置にあるときに前記把持部のうち前記開口部から突出した部分を覆う部分を有するカバーとを備える、
画像形成装置」

コ そして、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1の「カバー」には、「画像形成が終了したシートが載置される排紙トレイが設けられ」るのに対して、引用発明の「開閉カバー20」には、「排紙トレイ」が設けられていない点。

[相違点2]
本願発明1の「突出覆い部」は、「前記カバーのうち前記排紙トレイの一部が突出して前記排紙トレイに載置されたシートを支持し当該シートの端部と前記排紙トレイとの間に隙間を形成するように設けられている」のに対して、引用発明の「凹部」は、それが形成された「開閉カバー20」から突出した形状ではなく、「開閉カバー20」に、「排紙トレイ」が設けられていない以上、載置されたシートを支持し、当該シートの端部と排紙トレイとの間に隙間を形成するように設けられているものではない点。

(3) 相違点に対する判断
事案に鑑みて、相違点2について検討する。
引用文献3には、上記第3の2(2)で説示したとおりの技術的事項が記載されており、上流面47及び凸部51よりも、水平段部49を一段低く形成することで、ユーザが用紙Sを排紙トレイ41から取り出す際のスペースを確保し手が入りやすくしている。本願発明1と引用文献3に記載された技術的事項を対比すると、引用文献3の「上流面47及び凸部51」は、本願発明の「排紙トレイ」の「一部が突出し」た部分であるという概念に限っては共通するものということができる。
してみると、引用発明において、排紙トレイの一部を突出させて、排紙トレイに載置されたシートを支持し当該シートの端部と前記排紙トレイとの間に隙間を形成することまでは、当業者であれば、容易に想到し得たことであるといえる。
しかし、排紙トレイの一部が突出させられ、排紙トレイに載置されたシートを支持し当該シートの端部と前記排紙トレイとの間に隙間を形成する部分が、画像形成ユニットの把持部のうち、画像形成ユニットを着脱する際に通過する開口部から突出した部分を覆う構成を兼ねることは、引用文献3に記載されておらず、当業者といえども、容易に想到し得ることではない。
また、そのように構成することは、引用文献2、4又は5にも記載されておらず、本願出願時において周知であったことを示す証拠もほかにない。
そして、本願発明1は、突出覆い部が、把持部を収容するという構成と、画像形成されたシートをつかみやすくする構成とを兼用することができるという、従来技術にはない顕著の効果を奏するので、引用発明において、本願発明1の上記相違点2に係る発明特定事項を導き出すことが、当業者が適宜なし得た設計変更ということもできない。

(4) 小括
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3、4又は5に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9は、本願発明1を直接又は間接に引用し、本願発明1をさらに限定したものである。
したがって、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3、4又は5に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 原査定についての判断
請求項1に対する原査定の拒絶の理由の概要は、引用文献1に記載された発明に対して、引用文献3に記載された技術的事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかし、上記第4の1で検討したとおり、引用文献1に記載された発明に基づいて、請求項1に係る発明をなすことは、当業者であっても容易ではない。
また、請求項2ないし9は、請求項1の記載を直接又は間接に引用するものであるから、請求項1に係る発明が、容易に発明をすることができたものでない以上、請求項2ないし9に係る発明も、やはり、容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由通知について
1 特許法第36条第6項第1号について
当審においては、平成30年5月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲に対して、請求項1の「前記突出覆い部は、前記カバーのうち前記排紙トレイの一部が突出して前記排紙トレイに載置されたシートを支持し当該シートと前記排紙トレイとの間に隙間を形成するように設けられている」という記載は、シートの突出覆い部の周辺と排紙トレイとの間のみに隙間が形成されて、シートの端部と排紙トレイとの間に隙間が形成されない態様も含むものとなっているが、このような態様を含む請求項の記載の範囲まで、発明の詳細な説明の記載を拡張ないし一般化することはできないので、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない旨の拒絶理由を通知したが、当該拒絶理由は、本件補正書により、請求項1の上記記載が、「前記突出覆い部は、前記カバーのうち前記排紙トレイの一部が突出して前記排紙トレイに載置されたシートを支持し当該シートの端部と前記排紙トレイとの間に隙間を形成する」(下線は、補正箇所を強調するためのものである。以下、同様。)と補正されたことで解消した。

2 特許法第36条第6項第2号について
当審においては、平成30年5月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲に対して、請求項1の「前記閉塞位置にあるときに前記把持部うち前記開口部から突出した部分」 という記載は、意味が明確でないので、特許法第36条第6項第2号の規定を満たさない旨の拒絶理由を通知したが、当該拒絶理由は、本件補正書により、請求項1の上記記載が、「前記閉塞位置にあるときに前記把持部のうち前記開口部から突出した部分」と補正されたことで解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし9は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願は拒絶することはできない。
また、当審において通知した拒絶の理由によっても、本願は拒絶することはできない。
そして、ほかに本願を拒絶すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-28 
出願番号 特願2014-223001(P2014-223001)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 537- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡▲崎▼ 輝雄  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 塚本 丈二
藤本 義仁
発明の名称 画像形成装置  

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