ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1356380 |
審判番号 | 不服2018-11399 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-23 |
確定日 | 2019-10-25 |
事件の表示 | 特願2016-147342「ユーザ定義可能なプロパティを有するプレゼンテーションのセクション」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月26日出願公開,特開2017- 21807〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,2009年7月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年8月11日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2011-523026号の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成27年3月2日に新たな特許出願とした特願2015-039999号の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成28年7月27日に新たな特許出願としたものであって, 平成28年8月23日付けで審査請求がなされ,平成29年8月23日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成29年11月28日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成30年4月18日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成30年4月24日),これに対して平成30年8月23日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成30年10月22日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。 第2.平成30年8月23日付けの手続補正の適否 平成30年8月23日付けの手続補正(以下,これを「本件手続補正」という)は,平成29年11月28日付けの手続補正により補正された請求項13における明瞭でない表現を,明瞭にすることを目的とするものであって,当該補正事項は,願書に最初に添付された,明細書,特許請求の範囲,及び,図面に記載した事項の範囲内でなされ,本件手続補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された全ての発明と,本件手続補正により補正された請求項に係る発明とが,発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものであるから, 本件手続補正は,特許法17条の2第3項?第5項の規定を満たすものである。 第3.本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成30年8月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものである。 「ユーザが定義可能なプロパティに基づいて電子ファイルへのアクセスを提供する方法であって, コンピューティングデバイスが,コンピュータ可読記憶媒体に記憶された前記電子ファイルにアクセスするステップであって,前記電子ファイルは, 第1のセットのアクセス制御データを含む第1のセットのデータであって,前記第1のセットのアクセス制御データは,ユーザが前記第1のセットのデータに関し第1の動作を実行する権利を有することを特定する,第1のセットのデータと, 第2のセットのアクセス制御データを含む第2のセットのデータであって,前記第2のセットのアクセス制御データは,ユーザが前記第2のセットのデータに関し第2の動作を実行する権利を有することを特定する,第2のセットのデータと, を含む,アクセスするステップと, 前記コンピューティングデバイスが,前記第1及び第2のセットのデータを用いてグラフィカル・インターフェースを生成及び表示するステップと, 前記コンピューティングデバイスが,前記第1のセットのデータに関して前記第1の動作を実行するためのユーザからの要求を受信するステップと, 前記第1のセットのデータに関して前記第1の動作を実行するための前記ユーザからの要求を受信することに応答して, 前記コンピューティングデバイスによって,前記第1のセットのアクセス制御データに基づいて前記ユーザが前記第1の動作を実行する権利を有するか否かを判定するステップと, 前記ユーザが前記第1のセットのデータに関して前記第1の動作を実行する前記権利を有する場合に,前記コンピューティングデバイスによって,前記第1のセットのデータに関し前記第1の動作を実行するステップと, 前記ユーザが前記第1のセットのデータに関して前記第1の動作を実行する前記権利を有さない場合に,前記コンピューティングデバイスによって,前記第1のセットのデータに関して第1の動作を実行するための前記要求を拒否するステップと を含むことを特徴とする方法。」 第4.原審拒絶査定の拒絶理由の概要 原審拒絶査定の拒絶の理由の概略は,この出願の請求項1?請求項18に係る発明は,本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 1.特開平11-025076号公報 2.特開2006-163732号公報 第5.引用文献に記載の事項及び発明 1.引用文献に記載の事項 (1)原審における平成29年8月23日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特開平11-025076号公報(1999年1月29日公開,以下,これを「引用文献1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 A.「【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は,上記事情に鑑み,1つの文書を複数の人がアクセスする場合にそれら複数の人に適切にアクセス権を与えることができる文書管理装置,およびそれら複数の人に適切にアクセス権を与える機能を有する文書管理プログラムが格納された文書管理プログラム記憶媒体を提供することを目的とする。」 B.「【0025】また,図1に示すコンピュータシステム100と,本発明の文書管理装置との対応関係は以下のとおりである。上述したように,コンピュータシステム100の本体部101には,磁気ディスク101a(図2参照)が内蔵されており,その磁気ディスク101aには,構造化された多数の文書401,402,…,40nが格納されている。したがってこの磁気ディスク101aが,本発明にいう記憶部の一例に相当する。 【0026】また,図1に示すコンピュータシステム100には,操作子としてキーボード103およびマウス104が備えられており,これらの操作子を操作することによってアクセス者IDが設定され,画像表示部102の表示画面102aには文書が表示され,キーボード103やマウス104の操作により文書の編集操作が行なわれる。したがって,図1に示すコンピュータシステム100のキーボード103やマウス104,画像表示部102,およびアクセス者IDを受け付けたり,文書を表示したり,文字の編集操作を受け付けるプログラム(図2では,「その他の手段」の一部に相当する)や,そのプログラムを実行する本体部101のCPU等の複合体が,本発明にいう表示編集部の一例に相当する。また,本体部101に内蔵された磁気ディスク101に格納された文書管理プログラム200とその文書管理プログラム200を実行するCPU等が,本発明の文書管理装置をいう,アクセス権設定手段,アクセス許可手段,文書構成変更手段,および表示形式調整手段に相当する。このように,ここでは,アクセス権設定手段,アクセス許可手段,文書構成変更手段,および表示形成調整手段は,プログラム自体を言う場合もあり,プログラムとそのプログラムを実行するCPU等のハードウェアとの組合せを言う場合もある。」 C.「【0030】このようにして,表示形式の調整を受けることにより生成された表示用文書が表示編集部において表示され,その表示された文書が編集(文章の変更,校正など)の対象となる。ここで,構造化文書の,各構造化部分毎にアクセス権を設定するにあたっては,その構造化文書の各構造化部分に直接対応付けてアクセスの許否を設定してもよい。この場合,例えば,アクセス権が存在する構造化部分のみ記憶部からの読み出しを許可したり,あるいは記憶部からの読出しはその構造化文書全体について許容するものの,アクセス権が存在する構造化部分のみ記憶部への書き戻しを許したりするというアクセス上の制限がなされる。 【0031】また,構造化文書の各構造化部分毎にアクセス権を設定するにあたっては,文書構成の変更の段階におけるアクセス権を設定するようにしてもよい。すなわち,記憶部からは要求のあった文書全体が読み出されるものの,文書構成の変更の段階で,アクセス権が存在しない構造化部分については,構成変更後の文書には含まれないように省く処理を行なう。こうすることにより,表示編集部では,構成変更後の文書にはそのアクセス権のない構造化部分が含まれていないためアクセス権が存在しな構造化部分については表示されず,したがってそのアクセス権が存在しない構造化部分の文章が変更されることもない。 【0032】さらに,構造化文書の各構造化部分毎にアクセス権を設定するにあたっては,文書の表示形式を調整する段階におけるアクセス権を設定してもよい。すなわち,記憶部からは要求のあった文書全体が読み出され,文書構成変更手段においても,仮に,その構成変更後の文書にアクセス権の存在しない構造化部分が含まれるようにその文書構成を変更したとし,その文書の表示形式を調整する段階において,アクセス権の存在しない構造化部分については,例えば文字の大きさをゼロに設定するなど,表示されないように表示形式を調整する。こうすることにより,アクセス権が存在しない構造化部分については表示形式上表示されず,したがってそのアクセス権が存在しない構造化部分の文章が変更されることもない。 【0033】以上で,本発明の実施形態の概要についての説明を終了し,以下,具体的な実施形態について説明する。尚,以下に説明する具体的実施形態については,第1実施形態,第2実施形態のように実施形態どうしを区別する。図4は,本発明の文書管理装置および文書管理プログラムの第1実施形態の模式構成図である。 【0034】ここでは,構造化文書の一例として,図4に示すSGML文書が採用されている。SGMLは電子化された文書の構造を定める規格の1つである。ここではSGML自体についての説明は省略する。このSGML文書は,構造化文書401のブロック内に示すように,木構造を有している。この構造化文書401は,図1,図2を参照して説明したように,コンピュータシステム100の本体部101に内蔵された。磁気ディスク102aに格納されている。アクセス権設定手段402には,アクセス権を管理するアクセス権管理者により,図1に示すキーボード103から,アクセス権種別情報が入力される。このアクセス権種別情報には,アクセス権を設定しようとする構造化文書401を特定する情報,アクセス者(アクセス者ID)を特定する情報,およびそのアクセス者に対し,構造化文書401のどの文書要素(構造化部分)のアクセスを許容し,どの文書要素のアクセスを禁止するかをあらわす情報が含まれている。アクセス権種別情報が入力されたアクセス権設定手段402は,その入力されたアクセス権種別情報に従って,指定された構造化文書401について,かつ指定されたアクセス者について,構造化文書401の各文書要素(構造化部分)に対して直接にアクセス権の有無を設定する。ここでは,構造化文書401として木構造を有するSGMLが採用されており,ある文書要素に対するアクセス権有/無の設定は,特に指定されない限り,その文書要素の下階総にあたる文書要素に対しても有効である。 【0035】アクセス権設定手段402には,1つの構造化文書401に関して,複数のアクセス者(複数のアクセスID)に関するアクセス権種別情報が入力され,アクセス権設定手段402は,複数のアクセス者それぞれについて,各文書要素(各構造化部分)毎にアクセス権の有無を設定する。表示編集部404には,構造化文書401が複写された複写文書405が表示されるが,この複写文書の表示にあたっては,アクセス者(ここではアクセス者Aと称する)により,例えばキーボード103あるいはマウス104が操作されて,本発明にいうアクセス許可手段の一例である参照/編集許可手段403に対し,構造化文書401を表示編集部404に送信するよう要求がなされる。すると,この図4に示す参照/編集許可手段403は,要求のあった構造化文書を,各文書要素毎のアクセス権の有無とは無関係に読み出してきて表示編集部404に送り,表示編集部404では,その送られてきた文書(複写文書405)が表示される。その後アクセス者Aは,その複写文書405に手を加えて,その複写文書を部分的に変更する。ここでは,図12(当審注;「図4」の誤記である。)に示す複写文書405中,「文書要素2」と「文書要素8」の文書が変更されたものとする。このような文書内容の変更を行なった後,アクセス者Aは,キーボード103から,自分に割り当られたアクセス者IDを入力するとともに,複写文書405の,変更された文書要素(ここでは「文書要素2」と「文書要素8」)を構造化文書401に書き戻すこと,すなわち構造化文書401中の「文書要素2」と「文書要素8」を,変更した後の文章に書き替えることが要求される。すると,参照/編集許可手段403は,構造化文書401の,入力されたアクセス者IDに関するアクセス権を参照し,ここに示す例では,アクセス者Aは文書要素2に対するアクセス権を持っておらず,参照/編集許可手段403は,文書要素2に関しては,アクセス者Aによる,構造化文書401への書き戻しを拒否する。したがって構造化文書401の文書要素2は変更されない。一方,文書要素8に関しては,構造化文書401の文書要素8に対応してアクセス者Aに対するアクセス権の有/無は積極的には設定されておらず,その文書要素8の上階層の文書要素である文書要素5にアクセス者Aに対するアクセス権「有」がを設定されているため,この文書要素5のアクセス権「有」が文書要素8にも反映され,参照/編集許可手段403は,アクセス者Aからの指示に応じて,複写文書405の文書要素8を,構造化文書401の文書要素8に上書きする。」 D.「 」 (2)原審拒絶理由に引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特開2006-163732号公報(2006年6月22日公開,以下,これを「引用文献2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 E.「【0037】 図5は,アクセス権設定ダイアログの一例を示す図である。 【0038】 レポジトリ領域内のキャビネットやフォルダを選択すると,その選択に応じて,ユーザのアクセス権と,日付又は曜日に対応したアクセス権を設定することが可能となる。ここで「保管」ボタンを押下すると,アクセス権設定ダイアログでの設定はアクセス権設定ファイル400に格納される。」 F.「 」 2.引用文献1に記載の発明 (1)上記Cの「アクセス権設定手段402には,1つの構造化文書401に関して,複数のアクセス者(複数のアクセスID)に関するアクセス権種別情報が入力され,アクセス権設定手段402は,複数のアクセス者それぞれについて,各文書要素(各構造化部分)毎にアクセス権の有無を設定する」という記載,及び,上記Dに引用した,【図4】開示の「構造化文書401」の「文書要素1」?「文書要素10」から,引用文献1には, “アクセス者が,構造化文書の各文書要素毎にアクセスするための方法” が記載されていることが読み取れる。 (2)上記Bの「コンピュータシステム100の本体部101には,磁気ディスク101a(図2参照)が内蔵されており,その磁気ディスク101aには,構造化された多数の文書401,402,…,40nが格納されている」という記載,同じく,上記Bの「コンピュータシステム100には,操作子としてキーボード103およびマウス104が備えられており,これらの操作子を操作することによってアクセス者IDが設定され,画像表示部102の表示画面102aには文書が表示され,キーボード103やマウス104の操作により文書の編集操作が行なわれる。」という記載,同じく,上記Bの「本体部101に内蔵された磁気ディスク101に格納された文書管理プログラム200とその文書管理プログラム200を実行するCPU等が,本発明の文書管理装置をいう,アクセス権設定手段,アクセス許可手段,文書構成変更手段,および表示形式調整手段に相当する」という記載,及び,上記Cの「この構造化文書401は,図1,図2を参照して説明したように,コンピュータシステム100の本体部101に内蔵された。磁気ディスク102aに格納されている」という記載から,引用文献1においては, “コンピュータシステムは,少なくとも,CPU,磁気ディスク,及び,画像表示部を有し, 前記磁気ディスクには,構造化文書と,前記CPUにより実行されると,アクセス権設定手段,アクセス許可手段,文書構成変更手段,および表示形式調整手段を含む文書管理装置を実現する,文書管理プログラムとが格納されている”ことが読み取れ, 上記Cの「アクセス者(ここではアクセス者Aと称する)により,例えばキーボード103あるいはマウス104が操作されて,本発明にいうアクセス許可手段の一例である参照/編集許可手段403に対し,構造化文書401を表示編集部404に送信するよう要求がなされる」という記載と,上記において検討した事項から,引用文献1においては, “アクセス者からの指示によって,磁気ディスクに格納された構造化文書へのアクセスを開始する”ものであることが読み取れる。 (3)上記Cの「例えば,アクセス権が存在する構造化部分のみ記憶部からの読み出しを許可したり,あるいは記憶部からの読出しはその構造化文書全体について許容するものの,アクセス権が存在する構造化部分のみ記憶部への書き戻しを許したりするというアクセス上の制限がなされる」という記載,同じく,上記Cの「構造化文書401は,図1,図2を参照して説明したように,コンピュータシステム100の本体部101に内蔵された。磁気ディスク102aに格納されている」という記載,同じく,上記Cの「アクセス権種別情報が入力される。このアクセス権種別情報には,アクセス権を設定しようとする構造化文書401を特定する情報,アクセス者(アクセス者ID)を特定する情報,およびそのアクセス者に対し,構造化文書401のどの文書要素(構造化部分)のアクセスを許容し,どの文書要素のアクセスを禁止するかをあらわす情報が含まれている。アクセス権種別情報が入力されたアクセス権設定手段402は,その入力されたアクセス権種別情報に従って,指定された構造化文書401について,かつ指定されたアクセス者について,構造化文書401の各文書要素(構造化部分)に対して直接にアクセス権の有無を設定する」という記載,同じく,上記Cの「ここに示す例では,アクセス者Aは文書要素2に対するアクセス権を持っておらず」という記載,及び,同じく,上記Cの「文書要素8の上階層の文書要素である文書要素5にアクセス者Aに対するアクセス権「有」がを設定されているため,この文書要素5のアクセス権「有」が文書要素8にも反映され」という記載と,上記(1)においても引用した,上記Dに引用した【図4】に開示の事項から,引用文献1においては, “所定のアクセス者に対して,第1の動作の実行を許可するアクセス権が設定された第1の文書要素と,第2の動作の実行を許可するアクセス権が設定された第2の文書要素を有する”ものであることが読み取れる。 (4)上記Cの「表示形式の調整を受けることにより生成された表示用文書が表示編集部において表示され」という記載,同じく,上記Cの「アクセス権が存在しない構造化部分については表示形式上表示されず」という記載,上記Dに引用した【図4】に開示の「表示編集部404」,及び,「複写文書405」と,上記(3)において検討した事項から,引用文献1においては, “各文書要素は,表示編集部において表示される”ものであることが読み取れる。 (5)上記(3)において引用した記載を含む,上記Cの「アクセス者Aは,キーボード103から,自分に割り当られたアクセス者IDを入力するとともに,複写文書405の,変更された文書要素(ここでは「文書要素2」と「文書要素8」)を構造化文書401に書き戻すこと,すなわち構造化文書401中の「文書要素2」と「文書要素8」を,変更した後の文章に書き替えることが要求される。すると,参照/編集許可手段403は,構造化文書401の,入力されたアクセス者IDに関するアクセス権を参照し,ここに示す例では,アクセス者Aは文書要素2に対するアクセス権を持っておらず,参照/編集許可手段403は,文書要素2に関しては,アクセス者Aによる,構造化文書401への書き戻しを拒否する。したがって構造化文書401の文書要素2は変更されない。一方,文書要素8に関しては,構造化文書401の文書要素8に対応してアクセス者Aに対するアクセス権の有/無は積極的には設定されておらず,その文書要素8の上階層の文書要素である文書要素5にアクセス者Aに対するアクセス権「有」がを設定されているため,この文書要素5のアクセス権「有」が文書要素8にも反映され,参照/編集許可手段403は,アクセス者Aからの指示に応じて,複写文書405の文書要素8を,構造化文書401の文書要素8に上書きする」という記載と,上記(2)において検討した事項から,引用文献1には, “アクセス者から,文書要素についての所定の処理要求が入力されると,アクセス許可手段が,前記文書要素に設定されている前記アクセス者のアクセス権を参照し, 前記アクセス者が,前記文書要素に対して前記所定の処理についてのアクセス権を有している場合は,前記所定の処理を実行し, 前記アクセス者が,前記アクセス権を有していない場合には,前記所定の処理を実行しない,方法。”が記載されていることが読み取れる。 (6)以上,上記(1)?上記(5)において検討した事項から,引用文献1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。 「アクセス者が,構造化文書の各文書要素毎にアクセスするための方法であって, コンピュータシステムは,少なくとも,CPU,磁気ディスク,及び,画像表示部を有し, 前記磁気ディスクには,構造化文書と,前記CPUにより実行されると,アクセス権設定手段,アクセス許可手段,文書構成変更手段,および表示形式調整手段を含む文書管理装置を実現する,文書管理プログラムとが格納され, 前記アクセス者からの指示によって,磁気ディスクに格納された構造化文書へのアクセスを開始するものであって, 所定のアクセス者に対して,第1の動作の実行を許可するアクセス権が設定された第1の文書要素と, 第2の動作の実行を許可するアクセス権が設定された第2の文書要素を有し, 各文書要素は,表示編集部において表示され, アクセス者から,文書要素についての所定の処理要求が入力されると,アクセス許可手段が,前記文書要素に設定されている前記アクセス者のアクセス権を参照し, 前記アクセス者が,前記文書要素に対して前記所定の処理についてのアクセス権を有している場合は,前記所定の処理を実行し, 前記アクセス者が,前記アクセス権を有していない場合には,前記所定の処理を実行しない,方法。」 第6.本願発明と引用発明との対比および相違点についての判断 1.本願発明と引用発明との対比 (1)引用発明における「アクセス者」が,本願発明における「ユーザ」に相当し, 引用発明において,複数の「文書要素」からなる「構造化文書」は,「磁気ディスク」に格納されているものであるから, 引用発明における「構造化文書」が,本願発明における「電子ファイル」に相当し, 引用発明における「構造化文書」を構成する「各文書要素」は,それぞれ,異なる“性質”,即ち,「プロパティ」を有するものであって, 引用発明において,「各文書要素」に「アクセス」することは,「各文書要素」の“性質”に基づいて,「アクセス」することに他ならず,「各文書要素」は,「アクセス者」によって「編集」が可能なものであるから, 引用発明における「アクセス者が,構造化文書の各文書要素毎にアクセスするための方法」が, 本願発明における「ユーザが定義可能なプロパティに基づいて電子ファイルへのアクセスを提供する方法」に相当する。 (2)引用発明における「コンピュータシステム」と, 本願発明における「コンピュータデバイス」とは,「コンピュータ装置」である点で共通し, 引用発明における「磁気ディスク」が, 本願発明における「コンピュータ可読記憶媒体」に相当し, 引用発明において,「アクセス者からの指示によって,磁気ディスクに格納された構造化文書へのアクセスを開始する」ということは, 「コンピュータシステム」が,「アクセス者からの指示によって,磁気ディスクに格納された構造化文書へのアクセスを開始する」ことに他ならないので,上記(1)において検討した事項も踏まえると, 引用発明における「アクセス者からの指示によって,磁気ディスクに格納された構造化文書へのアクセスを開始する」ことと, 本願発明における「コンピューティングデバイスが,コンピュータ可読記憶媒体に記憶された前記電子ファイルにアクセスするステップ」とは, “コンピュータ装置が,コンピュータ可読記憶媒体に記憶された電子ファイルにアクセスするステップ”である点で共通する。 (3)引用発明における「第1の動作の実行を許可するアクセス権」は,「所定のアクセス者」が,「第1の文書要素」に対して,「第1の動作を実行する」権限を有しているか否かを判断する情報に他ならないので, 本願発明における「第1のセットのアクセス制御データ」とは, “第1のアクセス制御データ”である点で共通するので, 引用発明における「所定のアクセス者に対して,第1の動作の実行を許可するアクセス権が設定された第1の文書要素」と, 本願発明における「第1のセットのアクセス制御データを含む第1のセットのデータであって,前記第1のセットのアクセス制御データは,ユーザが前記第1のセットのデータに関し第1の動作を実行する権利を有することを特定する,第1のセットのデータ」とは, “第1のアクセス制御データを含む第1のデータであって,前記第1のアクセス制御データは,ユーザが前記第1のデータに関し第1の動作を実行する権利を有することを特定する,第1のデータ”である点で共通し, 同様に,引用発明における「第2の動作の実行を許可するアクセス権が設定された第2の文書要素」と, 本願発明における「第2のセットのアクセス制御データを含む第2のセットのデータであって,前記第2のセットのアクセス制御データは,ユーザが前記第2のセットのデータに関し第2の動作を実行する権利を有することを特定する,第2のセットのデータ」とは, “第2のアクセス制御データを含む第2のデータであって,前記第2のアクセス制御データは,ユーザが前記第2のデータに関し第2の動作を実行する権利を有することを特定する,第2のデータ”である点で共通する。 したがって, 引用発明における「所定のアクセス者に対して,第1の動作の実行を許可するアクセス権が設定された第1の文書要素と, 第2の動作の実行を許可するアクセス権が設定された第2の文書要素を有し」と, 本願発明における「電子ファイルは, 第1のセットのアクセス制御データを含む第1のセットのデータであって,前記第1のセットのアクセス制御データは,ユーザが前記第1のセットのデータに関し第1の動作を実行する権利を有することを特定する,第1のセットのデータと, 第2のセットのアクセス制御データを含む第2のセットのデータであって,前記第2のセットのアクセス制御データは,ユーザが前記第2のセットのデータに関し第2の動作を実行する権利を有することを特定する,第2のセットのデータと, を含む」とは, “電子ファイルは, 第1のアクセス制御データを含む第1のデータであって,前記第1のアクセス制御データは,ユーザが前記第1のデータに関し第1の動作を実行する権利を有することを特定する,第1のデータと, 第2のアクセス制御データを含む第2のデータであって,前記第2のアクセス制御データは,ユーザが前記第2のデータに関し第2の動作を実行する権利を有することを特定する,第2のデータと, を含む”点で共通する。 (4)引用発明においても「文書要素」を用いた表示が行われているので, 引用発明における「各文書要素は,表示編集部において表示され」と, 本願発明における「コンピューティングデバイスが,前記第1及び第2のセットのデータを用いてグラフィカル・インターフェースを生成及び表示するステップ」とは, “コンピュータ装置が,第1及び第2のデータを用いて表示するステップ”である点で共通する。 (5)引用発明における「アクセス者から,文書要素についての所定の処理要求が入力されると」と, 本願発明における「コンピューティングデバイスが,前記第1のセットのデータに関して前記第1の動作を実行するためのユーザからの要求を受信するステップ」とは, “コンピュータ装置が,第1のデータに関して第1の動作を実行するためのユーザからの要求を受信するステップ”である点で共通する。 (6)引用発明において,「アクセス許可手段が,前記文書要素に設定されている前記アクセス者のアクセス権を参照」することは,「アクセス者」が,「アクセス権」を有するか否かの判断を伴うものであるから, 引用発明における「アクセス許可手段が,前記文書要素に設定されている前記アクセス者のアクセス権を参照し」と, 本願発明における「第1のセットのデータに関して前記第1の動作を実行するための前記ユーザからの要求を受信することに応答して, 前記コンピューティングデバイスによって,前記第1のセットのアクセス制御データに基づいて前記ユーザが前記第1の動作を実行する権利を有するか否かを判定するステップ」とは, “第1のデータに関して前記第1の動作を実行するための前記ユーザからの要求を受信することに応答して, 前記コンピュータ装置によって,第1のアクセス制御データに基づいてユーザが第1の動作を実行する権利を有するか否かを判定するステップ”である点で共通する。 (7)引用発明における「アクセス者が,前記文書要素に対して前記所定の処理についてのアクセス権を有している場合は,前記所定の処理を実行し」と, 本願発明における「ユーザが前記第1のセットのデータに関して前記第1の動作を実行する前記権利を有する場合に,前記コンピューティングデバイスによって,前記第1のセットのデータに関し前記第1の動作を実行するステップ」とは, “ユーザが第1のデータに関して第1の動作を実行する権利を有する場合に,コンピュータ装置によって,前記第1のデータに関し前記第1の動作を実行するステップ”である点で共通する。 (8)引用発明における「アクセス者が,前記アクセス権を有していない場合には,前記所定の処理を実行しない」と, 本願発明における「ユーザが前記第1のセットのデータに関して前記第1の動作を実行する前記権利を有さない場合に,前記コンピューティングデバイスによって,前記第1のセットのデータに関して第1の動作を実行するための前記要求を拒否するステップ」とは, “ユーザが第1のデータに関して第1の動作を実行する権利を有さない場合に,コンピュータ装置によって,前記第1のデータに関して第1の動作を実行するための要求を拒否するステップ”である点で共通する。 (9)以上,上記(1)?(8)において検討した事項から,本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] ユーザが定義可能なプロパティに基づいて電子ファイルへのアクセスを提供する方法であって, コンピュータ装置が,コンピュータ可読記憶媒体に記憶された電子ファイルにアクセスするステップであって, 電子ファイルは, 第1のアクセス制御データを含む第1のデータであって,前記第1のアクセス制御データは,ユーザが前記第1のデータに関し第1の動作を実行する権利を有することを特定する,第1のデータと, 第2のアクセス制御データを含む第2のデータであって,前記第2のアクセス制御データは,ユーザが前記第2のデータに関し第2の動作を実行する権利を有することを特定する,第2のデータと, を含む,アクセスするステップと, 前記コンピュータ装置が,前記第1及び第2のデータを用いて表示するステップと, コンピュータ装置が,前記第1のデータに関して前記第1の動作を実行するための前記ユーザからの要求を受信するステップと, 前記第1のデータに関して前記第1の動作を実行するための前記ユーザからの要求を受信することに応答して, 前記コンピュータ装置によって,前記第1のアクセス制御データに基づいて前記ユーザが前記第1の動作を実行する権利を有するか否かを判定するステップと, 前記ユーザが前記第1のデータに関して前記第1の動作を実行する前記権利を有する場合に,前記コンピュータ装置によって,前記第1のデータに関し前記第1の動作を実行するステップと, 前記ユーザが前記第1のデータに関して前記第1の動作を実行する前記権利を有さない場合に,前記コンピュータ装置によって,前記第1のデータに関して第1の動作を実行するための要求を拒否するステップと を含む方法。 [相違点1] “コンピュータ装置”に関して, 本願発明においては,「コンピューティングデバイス」であるのに対して, 引用発明においては,「コンピュータシステム」である点。 [相違点2] “第1のアクセス制御データを含む第1のデータ”,及び,“第2のアクセス制御データを含む第2のデータ”に関して, 本願発明においては,「第1のセットのアクセス制御データを含む第1のセットのデータ」,及び,「第2のセットのアクセス制御データを含む第2のセットのデータ」であるのに対して, 引用発明においては,「文書要素」,及び,「アクセス権」が,「セット」であるかについては,特に,言及されていない点。 [相違点3] “表示するステップ”に関して, 本願発明においては,「グラフィカル・インターフェースを生成及び表示するステップ」であるのに対して, 引用発明においては,「グラフィカル・インターフェースを生成及び表示する」点については,特に,言及されてない点。 2.相違点についての当審の判断 (1)[相違点1]について 引用発明において,コンピュータシステムとして,コンピューティングデバイスを用いることは,当業者が適宜選択し得る事項である。 よって,[相違点1]は,格別のものではない。 (2)[相違点2]及び[相違点3]について 上記E,及び,上記Fに引用した,引用文献2には,画面に表示された「インターフェース」を用いて,「アクセス権設定ファイル」に保存される,複数のデータを設定する点が開示されていて,上記Fに引用した,引用文献2の【図5】における,データ入力のための画面が,本願発明における「グラフィカル・インターフェース」に相当し,画面内で設定される「フォルダ名」や,「ユーザ名」で構成される「アクセス権設定ファイル」に保存されるデータが,本願発明における「セットのデータ」に相当する。 そして,引用発明と,引用文献2に記載の発明とは,“アクセス権を設定する技術に関するもの”である点で共通し, 引用発明においても,上記Dに引用した,引用文献1の【図4】の記載にもあるとおり,「文書要素」を画面に表示する構成を有し,引用発明における「文書要素」に関するデータも,「アクセス権限」とセットになっていることを考慮すれば, 引用発明において,上記指摘の引用文献2に記載の発明における“インターフェース画面”を表示すること,及び,「セットのデータ」を導入することは,当業者が適宜なし得る事項である。 よって,[相違点2],及び,[相違点3]は,格別のものではない。 (3)以上,上記(1),及び,上記(2)において検討したとおり,[相違点1]?[相違点3]はいずれも格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。 第7.むすび したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2019-05-31 |
結審通知日 | 2019-06-03 |
審決日 | 2019-06-17 |
出願番号 | 特願2016-147342(P2016-147342) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平井 誠 |
特許庁審判長 |
仲間 晃 |
特許庁審判官 |
石井 茂和 須田 勝巳 |
発明の名称 | ユーザ定義可能なプロパティを有するプレゼンテーションのセクション |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 宮前 徹 |
代理人 | 上田 忠 |
代理人 | 中西 基晴 |