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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1356473
審判番号 不服2018-15328  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-20 
確定日 2019-11-12 
事件の表示 特願2018-126361「紫外線発光素子パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月22日出願公開,特開2018-186284,請求項の数(12)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年8月22日(パリ条約による優先権主張平成23年8月22日,同年8月24日,同年12月9日,同年12月22日(2件),同年12月27日(2件),同年12月30日,いずれも韓国)を出願日とする出願(以下「原出願」という。)の一部を,平成28年9月8日に新たな特許出願としたものについて,さらにその一部を平成30年7月2日に新たな特許出願としたものであって,以降の手続は次のとおりである。

平成30年 7月10日 拒絶理由通知(同年同月17日発送)
同年 8月13日 手続補正・意見書提出
同年 9月 4日 拒絶査定(同年同月11日謄本送達)
同年11月20日 審判請求・手続補正

第2 平成30年11月20日にされた手続補正について
以下,平成30年11月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)の適否を検討する。
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,補正前後の特許請求の範囲は以下のものである。
〈補正前〉
「 【請求項1】
キャビティの周囲に配置されている上部及び前記キャビティの下に配置されている下部を含むパッケージ本体と,
前記下部内に配置されている放熱部と,
前記下部内に配置され,且つ,垂直方向に延在する複数の第1導電層と,
前記下部内に配置され,且つ,水平方向に延在する複数の第2導電層と,
前記下部及び前記放熱部の下に配置されている第1突出防止層と,
前記第1突出防止層内に配置され,且つ,前記垂直方向に延在する第3導電層と,
前記第1突出防止層の下に配置され,且つ,前記水平方向に延在する第1電極パッドと
,
前記放熱部の上に配置されている紫外線発光素子と,を含み,
前記上部は,
第1セラミック層と,
前記第1セラミック層の下に配置されている第2セラミック層と,を含み,
前記下部は,複数のセラミック層を含み,
前記放熱部は,前記下部の前記複数のセラミック層の内部に配置され,
前記複数の第1導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうちいずれか一つのセラミック層と接し,且つ,それ以外のセラミック層と接触せず,
前記複数の第2導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうち互いに接触する二つのセラミック層と接し,且つ,それら以外のセラミック層と接触せず,
前記第1突出防止層は,前記放熱部,及び,前記複数のセラミック層のうち最も下に位置するセラミック層と接し,
前記第3導電層は,前記第1突出防止層と接し,
前記第1電極パッドは,前記第1突出防止層と接し,
前記紫外線発光素子は,前記紫外線発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して前記複数の第1導電層,前記複数の第2導電層,前記第3導電層及び前記第1電極パッドと電気的に接続されている,紫外線発光素子パッケージ。
【請求項2】
・・・(中略)・・・
【請求項3】
前記第1電極パッドは,前記放熱部と前記垂直方向において重ならない,請求項1または2に記載の,紫外線発光素子パッケージ。
【請求項4】
・・・(後略)」

〈補正後〉
「 【請求項1】
キャビティの周囲に配置されている上部及び前記キャビティの下に配置されている下部
を含むパッケージ本体と,
前記下部内に配置されている放熱部と,
前記下部内に配置され,且つ,垂直方向に延在する複数の第1導電層と,
前記下部内に配置され,且つ,水平方向に延在する複数の第2導電層と,
前記下部及び前記放熱部の下に配置されている第1突出防止層と,
前記第1突出防止層内に配置され,且つ,前記垂直方向に延在する第3導電層と,
前記第1突出防止層の下に配置され,且つ,前記水平方向に延在する第1電極パッドと,
前記放熱部の上に配置されている紫外線発光素子と,を含み,
前記上部は,
第1セラミック層と,
前記第1セラミック層の下に配置されている第2セラミック層と,を含み,
前記下部は,複数のセラミック層を含み,
前記放熱部は,前記下部の前記複数のセラミック層の内部に配置され,
前記複数の第1導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうちいずれか一つのセラミック層と接し,且つ,それ以外のセラミック層と接触せず,
前記複数の第2導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうち互いに接触する二つのセラミック層と接し,且つ,それら以外のセラミック層と接触せず,
前記第1突出防止層は,前記放熱部,及び,前記複数のセラミック層のうち最も下に位置するセラミック層と接し,
前記第3導電層は,前記第1突出防止層と接し,
前記第1電極パッドは,前記第1突出防止層と接し,
前記紫外線発光素子は,前記紫外線発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して前記複数の第1導電層,前記複数の第2導電層,前記第3導電層及び前記第1電極パッドと電気的に接続され,
前記紫外線発光素子は,導電性物質によって前記放熱部と電気的に接続されている,紫外線発光素子パッケージ。
【請求項2】
・・・(中略)・・・
【請求項3】
前記導電性物質は,Ag,AuまたはSnを含み,
前記第1電極パッドは,前記放熱部と前記垂直方向において重ならない,請求項1または2に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項4】
・・・(後略)」

2 補正事項の整理
《補正事項1》
補正前の請求項1の「前記紫外線発光素子は,前記紫外線発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して前記複数の第1導電層,前記複数の第2導電層,前記第3導電層及び前記第1電極パッドと電気的に接続されている」を,補正後の請求項1の「前記紫外線発光素子は,前記紫外線発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して前記複数の第1導電層,前記複数の第2導電層,前記第3導電層及び前記第1電極パッドと電気的に接続され,前記紫外線発光素子は,導電性物質によって前記放熱部と電気的に接続されている」と補正すること。

《補正事項2》
補正前の請求項3の「前記第1電極パッドは,前記放熱部と前記垂直方向において重ならない」を,補正後の請求項3の「前記導電性物質は,Ag,AuまたはSnを含み,前記第1電極パッドは,前記放熱部と前記垂直方向において重ならない」と補正すること。

3 本件補正の目的の適否についての検討
補正事項1は,補正前の請求項1の「紫外線発光素子」及び「放熱部」について,補正後の「前記紫外線発光素子は,導電性物質によって前記放熱部と電気的に接続されている」として,それらの接続関係について技術的に限定するものであり,また,補正事項2は,当該導電性物質について限定するものであるから,両補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

4 本件補正の新規事項の追加の有無についての検討
前記各補正事項に係る,「前記紫外線発光素子は,導電性物質によって前記放熱部と電気的に接続されている」点,及び「前記導電性物質は,Ag,AuまたはSnを含」む点は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落【0088】及び段落【0131】に記載されている。よって,前記補正事項は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

5 本件補正後の発明の独立特許要件についての検討
上記3で検討したとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる限定的減縮を目的とするものを含むから,以下においては,本件補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて更に検討する。

(1)刊行物に記載された発明
ア 引用例1:特開2006-216764号公報
(ア)本願の最先の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2006-216764号公報(以下「引用例1」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
a 「【0001】
本発明は,例えば発光ダイオードのような発光素子を実装するための発光素子実装用配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を実装する配線基板においては,かかる発光素子を実装するキャビティの側面に金属からなる光反射層を形成すると共に,当該キャビティ内に封止用樹脂を表面が平坦になるようにして充填することで,上記発光素子から発光された光を鮮明なものとすることができる。
そこで,発光素子からの光を外部に効率良く反射するため,セラミックからなる基体の上面に貫通孔を内側に有し且つセラミックからなる枠体を接合し,前記貫通孔の内面に,WおよびMoを含む金属層を被着し,かかる金属層の上にNiメッキ層およびAgメッキ層を順次被着する発光素子収納用パッケージが提案されている(例えば,特許文献1参照)。また,上記発光素子を実装する搭載部および当該発光素子とワイヤを介して導通するメタライズ配線導体は,W,Mo,Mnなどから形成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004-207672 (第1?8頁,図1,4)
【0004】
しかしながら,前記発光素子収納用パッケージのように,WやMoなどを配線導体として用いた場合,それらの電気抵抗が大きい(例えば,R(W)=約12mΩ/□)ため,電圧低下により,発光素子の発光性能が低下する,という問題があった。更に,上記発光素子をWまたはMoからなる搭載部の上に実装した場合,それらの熱伝導率が低い(例えば,W=25W/m・K(R.T.))ため,当該発光素子から発生する熱を外部に効率良く放熱できない。この結果,上記発光素子自体の温度上昇を招くため,当該発光素子自体の発光効率が低下してしまう,という問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は,前述した背景技術における問題点を解決し,実装すべき発光素子から発生する熱を外部に効率良く放熱できると共に,上記発光素子に接続される内部配線もしくは導体層の抵抗値を低下させ,且つ発光素子の発光効率を向上し得る発光素子実装用配線基板を提供する,ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は,前記課題を解決するため,発光素子を実装する導体層などをAgまたはその合金により形成する,ことに着想して成されたものである。
即ち,本発明の発光素子実装用配線基板(請求項1)は,表面および裏面を有し且つ焼成温度が1300℃以下の絶縁材からなる基板本体と,かかる基板本体の表面に開口し且つ底面に発光素子が実装されるキャビティと,かかるキャビティの少なくとも底面に離間して形成され且つAgを含む一対の導体層と,を含み,上記基板本体の側面には,上記一対の導体層に個別に導通し且つAgを含む複数の電極が形成されている,ことを特徴とする。
尚,上記「Agを含む」とは,AgおよびAg合金の少なくとも一方を指す。
【0007】
これによれば,上記一対の導体層およびこれらに個別に導通する複数の電極は,それぞれAgまたはAg合金により形成されているため,後述するように,一方または双方の導体層の上に発光素子を実装した場合,熱伝導率が高い(例えば,Ag=427W/m・K(R.T.))ことにより,上記発光素子から発生する熱を外部に効率良く放熱することができる。また,AgまたはAg合金は,電気抵抗が小さい(例えば,R(Ag)=約3mΩ/□)ため,上記一方または一対の導体層および複数の電極を介して,配線基板の内部配線や外部の取付基板(例えば,マザーボードなど)との導通に際して,従来のWやMoなどを用いた場合に比べて,電圧低下を少なくできる。従って,実装すべき発光素子から発生する熱を外部に効率良く放熱できると共に,上記発光素子の発光効率を向上させることが可能となる。
【0008】
尚,基板本体を形成する前記絶縁材には,1000℃以下の比較的低温で焼成可能なガラス-セラミックのほか,約1250℃で焼成可能なガラス(SiO_(2)-MnO_(2)-TiO_(2)-MgO-BaO-ZrO_(2)系ガラス)-セラミックも含まれる。また,前記Ag合金には,例えばAg-W系やAg-Mo系合金が含まれる。更に,前記発光素子には,発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)などが含まれる。加えて,前記キャビティは,底面の周囲から傾斜して基板本体の表面に向けて広がる側面を有する全体がほぼ円錐形状のほか,円筒形の側面を有する全体が円柱形の形態も含まれる。
・・・(中略)・・・
【0011】
また,本発明には,前記キャビティの側面は,前記基板本体の表面に向かって広がる傾斜面である,発光素子実装用配線基板も含まれ得る。これによる場合,発光素子から発光された光を所定の範囲に集光し且つ効率良く外部に放射することが可能となる。
更に,本発明には,前記キャビティの底面の中央に位置する実装エリア付近と前記基板本体の裏面との間には,Agを含むビア導体が貫通している,発光素子実装用配線基板も含まれ得る。これによる場合,一方または双方の導体層上の実装エリアに実装された発光素子から発生する熱を,導体層および複数の電極による放熱経路のほか,上記ビア導体を介して基板本体の裏面側にも放熱することが可能となる。
また,本発明には,前記ビア導体は,前記基板本体の裏面寄りの断面が前記実装エリア寄りの断面よりも大である,発光素子実装用配線基板も含まれ得る。
これによる場合,前記一方または双方の導体層上の実装エリアに実装された発光素子から発生する熱を,基板本体を貫通し且つ裏面寄りほど太くなる上記ビア導体を介して,効率良く裏面側に放熱することが可能となる。尚,上記ビア導体の側面における裏面から実装エリアに向けての仰角は,45度以下の範囲で選定される。」

b「【0013】
以下において,本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は,本発明における一形態の発光素子実装用配線基板(以下,単に配線基板と称する)1を示す平面図,図2は,図1中のX-X線の矢視に沿った断面図である。
配線基板1は,図1,図2に示すように,表面3および裏面4を有する基板本体2と,かかる基板本体2の表面3に開口するキャビティ5と,かかるキャビティ5の底面7上に離間して形成される一対の導体層15,16と,を備えている。
基板本体2は,一体に積層されたガラス-セラミック(絶縁材)層s1?s7からなり,平面視がほぼ正方形で約1mmの厚みを有する。上記ガラス-セラミックには,焼成温度が1000℃以下であるガラス-アルミナ系で低温焼成のガラス-セラミックのほか,Si,Mn,Ti,Zrの酸化物および周期律表2a族の元素を含むガラスとアルミナとからなり,焼成温度が約1250℃であるアルミナ系焼成体(セラミック)も含まれる。
尚,基板本体2の絶縁材に低温焼成のガラス-セラミックを用いる際には,導体層15,16や後述する光反射層10には,Agが適用され,上記アルミナ系焼成体を用いる際には,例えばAg-W系のようなAg合金が適用される。
・・・(中略)・・・
【0016】
図1,図2に示すように,一方の導体層15におけるキャビティ5の底面7上の先端部には,実装エリアが位置し,かかる実装エリアには,例えばSn-Ag系などの低融点合金のロウ材9またはエポキシ系樹脂を介して,発光ダイオード(発光素子)8が実装される。導体層15は,上記ロウ材9を介して,発光ダイオード8底面に位置する図示しない電極と導通する。尚,エポキシ系樹脂を介して発光ダイオード8を実装する際には,当該発光ダイオード8と一方の導体層15との間に,図示しないボンディングワイヤwがボンディング(ロウ付け)される。
図1,図2に示すように,発光ダイオード8と他方の導体層16の先端部との間には,ボンディングワイヤwがボンディング(ロウ付け)により結線される。
【0017】
図2に示すように,基板本体2を形成するガラス-セラミック層s1?s7間には,AgまたはAg合金からなり所定パターンを有する配線層20,21が形成されると共に,これらの間には,同じAgなどからなるビア導体22,23が形成されている。尚,配線層20,21は,電極12,14とも接続している。
グランド回路を形成する一方の導体層15は,ビア導体22を介して配線層20,および基板本体2の裏面4に位置する裏面電極24と導通可能とされている。一方,信号回路を形成する他方の導体層16は,ビア導体23を介して配線層21,および基板本体2の裏面4に位置する裏面電極25と導通可能とされている。
尚,裏面電極24,25や前記裏面電極17,18は,当該配線基板1自体を実装する図示しないマザーボードなどの取付基板との導通に活用される。
・・・(中略)・・・
【0022】
以上のような配線基板1によれば,前記一対の導体層15,16およびこれらに個別に導通する複数の電極12,14は,AgまたはAg合金からなるため,一方の導体層15上に発光ダイオード8などの発光素子を実装した場合,かかる発光素子から発生する熱を外部に効率良く放熱することができる。しかも,AgやAg合金は,電気抵抗が小さいため,一対の導体層15,16や電極12,14などを介して,配線基板1内の配線層20,21や外部の取付基板との導通に際して,低抵抗とすることができる。
【0023】
従って,配線基板1では,キャビティ5に実装すべき発光素子から発生する熱を外部に効率良く放熱できると共に,発光素子の発光効率を向上させることが可能となる。
尚,発光ダイオード8などが底面7上に実装されたキャビティ5内には,追ってエポキシ系などからなる封止用樹脂が充填され,発光ダイオード8などから発光され且つ光反射層10で反射した光を,外部に透過して放射させる。」

c「【0029】
また,前記配線基板1,1aにおいて,発光ダイオード8あるいは半導体レーザを実装する一方の導体層15,35,あるいは一対の導体層15,16,35,36の直下と基板本体2の裏面4との間を貫通するように,AgまたはAg合金からなる比較的太径のビア導体を形成しても良い。
上記ビア導体は,基板本体2の裏面4寄りの断面が実装エリア寄りの断面よりも大としたり,かかる実装エリア付近に位置する上端面の面積を,実装される発光ダイオード8などの底面の面積の少なくとも50%以上とされる。
例えば,図7の断面図で示す配線基板1bのように,前記キャビティ5および光反射層10を有し,導体層15の上にCuからなる接合材28を介して,発光素子8を実装すると共に,その実装エリアの直下から基板本体2の裏面4に向けて断面が拡大するAgまたはAg合金からなるビア導体40を形成しても良い。かかるビア導体40の裏面4側には,Agからなる裏面電極27を介して,Cuからなる放熱板29が配置される。」

d ここで,図7は次のものである。

e 上記図7から,キャビティ5は,ガラス-セラミック層s1?s3に形成された開口により形成されていることが見て取れる。

(イ)以上を総合すると,引用例1には,図7に示されたものに関して,次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明1」という。)。
「発光素子実装用配線基板1であって,
配線基板1は,表面3および裏面4を有する基板本体2と,基板本体2の表面3に開口するキャビティ5と,キャビティ5の底面7上に離間して形成される一対の導体層15,16と,を備え,
基板本体2は,一体に積層されたガラス-セラミック(絶縁材)層s1?s7からなり,前記キャビティ5はガラス-セラミック層s1?s3に形成された開口により形成されており,
一方の導体層15におけるキャビティ5の底面7上の先端部には,実装エリアが位置し,実装エリアには,例えばSn-Ag系などの低融点合金のロウ材9またはエポキシ系樹脂を介して,発光ダイオード(発光素子)8が実装され,
導体層15は,上記ロウ材9を介して,発光ダイオード8底面に位置する電極と導通するものであり,
発光ダイオード8と他方の導体層16の先端部との間は,ボンディングワイヤwがボンディング(ロウ付け)により結線され,
基板本体2を形成するガラス-セラミック層s1?s7間には,AgまたはAg合金からなり所定パターンを有する配線層20,21が形成されると共に,これらの間には,同じAgなどからなるビア導体22,23が形成されており,
グランド回路を形成する一方の導体層15は,ビア導体22を介して配線層20,および基板本体2の裏面4に位置する裏面電極24と導通可能とされており,
信号回路を形成する他方の導体層16は,ビア導体23を介して配線層21,および基板本体2の裏面4に位置する裏面電極25と導通可能とされており,
導体層15の上にはCuからなる接合材28を介して,発光素子8を実装すると共に,その実装エリアの直下から基板本体2の裏面4に向けて断面が拡大するAgまたはAg合金からなるビア導体40を形成し,ビア導体40の裏面4側には,Agからなる裏面電極27を介して,Cuからなる放熱板29が配置されるものである,
発光素子実装用配線基板1。」

イ 引用例2:特開2010-1868914号公報
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の最先の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2010-1868914号公報(以下「引用例2」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
a 「【0001】
本発明は,半導体発光素子を搭載した半導体発光装置に関し,より詳細には,光取り出し効率を向上させた半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,発光ダイオード(LED)の高出力化に伴い,支持基板として,耐熱性及び耐光性に優れたセラミックスを主原料とするパッケージが好適に利用されている(例えば,特許文献1:WO2006/046655号を参照。)。
このようなパッケージの導電配線は,通常,発光素子の載置部を含む表面の導電配線と,パッケージを実装する基板に施された導電配線と接続するため,パッケージ裏面の導電配線と,セラミックスの内部に埋設されて,表面の導電配線と裏面の導電配線とを結ぶ内層配線とから構成されている。
一般に,これら配線の原材料は黒色又はそれに近い色であるため,配線によって発光素子からの光が吸収されることがある。そこで,パッケージから露出した配線には,光の吸収を抑制するために金や銀などの金属により電解メッキが施されているが,パッケージに埋設された内層配線は電解メッキを施すことができず,黒色のままである。また,セラミックスは,一般に,多孔質で,光透過性のある材料であるため,発光ダイオードから出射された光の一部がセラミックスを透過し,セラミックスに埋設された配線によって吸収されることもある。その結果,発光装置の光取り出し効率が低下するという課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は,上記課題に鑑みなされたものであり,高発光効率化を実現することができる半導体発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の半導体発光装置は,上面に正負一対の導電配線が形成された第1絶縁層と,その第1絶縁層の下の内層配線と,その内層配線の下の第2絶縁層とが積層されて構成されたパッケージと,
同一面側に正負一対の電極を有し,それらの電極を前記導電配線に対向して配置された半導体発光素子と,
前記半導体発光素子を被覆する封止部材とを備えた半導体発光装置であって,
前記導電配線の一部が,前記第1絶縁層の上面において,前記半導体発光素子の直下から前記封止部材の外縁まで延長されて形成され,さらに前記パッケージの厚み方向に配置された導電配線を介して前記内層配線に接続されており,
前記パッケージを前記第1絶縁層の上面側から透過して見て,前記内層配線が,前記半導体発光素子の外周から間隔を空けて配置されていることを特徴とする。
【0005】
このような半導体発光装置では,前記内層配線が,前記封止部材の外縁の外側に配置されていることが好ましい。
また,前記第1絶縁層の上面にマークが形成されており,該マークは,前記半導体発光素子の外周から間隔を空けて配置されていることが好ましい。
前記パッケージは,半導体発光素子の直下に熱伝導性部材を備えていることが好ましい。
前記熱伝導性部材は,前記半導体発光素子の直下から前記パッケージの裏面に向かって広がる形状を有することが好ましい。
前記熱伝導性部材は,前記半導体発光素子の直下の第1熱伝導層と,その下の絶縁層と,その絶縁層の下の第2熱伝導層とから構成されていることが好ましい。
前記絶縁層がセラミックスからなる層であることが好ましい。
前記熱伝導性部材または熱伝導層が,CuWまたはCuMoを材料としていることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,半導体発光素子から出射した光が内層配線に吸収されることを抑制することができるので,半導体発光装置の高発光効率化を実現することができる。」

b「【0019】
図1Aを参照して説明すると,半導体発光素子12の外周領域12bとは,半導体発光素子12の外縁12aから所定幅Aを有する領域である。従って,第1絶縁層と第2絶縁層とを含むパッケージ11では,外周領域12b内であって,外周領域の直下に位置する領域(かつ第1絶縁層と第2絶縁層との間に存在する領域)には,パッケージを第1絶縁層の上面側から透過して見て,実質的に内層配線が存在しない。このような外周領域は,例えば,半導体発光素子12の外縁12aから少なくとも0.2mm程度の幅Aを有することが適しており,少なくとも0.3mm程度,さらに,少なくとも0.4mm程度を有することが好ましい。さらに,外周領域は,後述する封止部材13の外縁13aの内側の領域であることがより好ましい。すなわち,封止部材の外縁13aの外側に,内層配線が配置されていることが好ましい。
【0020】
パッケージの裏面,例えば,第2絶縁層の裏面には,通常,上述した導電配線又は内層配線と電気的に接続された裏面配線が形成されている。これにより,実装基板や回路基板への電気的接続を,外部端子として裏面の導電配線によって実現することができる。
絶縁層を3層以上含む場合には,任意の絶縁層の間に,内層配線を配置していてもよい。第1絶縁層と第2絶縁層との間以外の内層配線は,パッケージのいずれの領域において配線されていてもよい。
【0021】
パッケージは,さらに,半導体発光素子の載置領域の下に熱伝導性部材を備えていることが好ましい。ここで,載置領域の下とは,図1Aにおける半導体発光素子12の外縁12aのほぼ内側であって,半導体発光素子の下方の領域である。この場合には,通常,熱伝導性部材は,絶縁層でその表面が被覆され,その絶縁層の上面に半導体発光素子の電極と接続する導電配線が配置されている。絶縁層は,第1絶縁層それ自体であってもよいし(図1B中,符号21を参照。),第1絶縁層の一部が熱導電性部材の表面を被覆していることが適している(図1Cを参照)。
【0022】
例えば,第1絶縁層は,図1Cの断面図に示したように,第1絶縁層21がその内側に熱導電性部材収容用の凹部21cを備えるために,層21a,層21bが一体的に成形され,その一方の層21aが熱導電性部材の表面を被覆するものが挙げられる。熱導電性部材は,パッケージの内部に埋設されるように配置されていることが好ましい。ここで,埋設とは,熱伝導性部材の全体が,ほぼ完全に絶縁層に被覆される状態を指す。
【0023】
具体的には,熱伝導性部材は,半導体発光素子の載置面を形成する絶縁層(第1絶縁層であってもよい)を介して,導電配線の下方に配置されている。この場合の絶縁層の厚みは,0.1mm以下,好ましくは0.09mm以下,より好ましくは0.08mm以下,さらに好ましくは0.05mm程度である。このように薄膜とすることにより,半導体発光素子を熱伝導性部材に直接載置するのと同程度に,熱伝導性部材による放熱性を十分確保することが可能となるとともに,絶縁性を確実にしながら,半導体発光素子の電極と接続するための電極となる導電配線と,熱伝導性部材とをオーバーラップさせることにより半導体発光装置の小型化を実現することができる。
【0024】
熱伝導性部材は、パッケージの裏面、つまり、実装基板又は回路基板への実装面では、絶縁層を介して、導電配線の下方に配置されている。この場合の絶縁層は、上述したものが例示され、その厚みは0.1mm以下、好ましくは0.09mm以下、より好ましくは0.08mm以下、さらに好ましくは0.05mm程度である。このように薄膜とすることにより、熱伝導性部材による裏面からの放熱性を十分確保することが可能となる。さらに、絶縁性を確実にしながら、外部端子となる裏面側の裏面配線と、熱伝導性部材とをオーバーラップさせることができる。これにより、半導体発光装置の小型化を実現しながら、外部端子の表面積を稼いで、回路基板との接触面積を増加させて、半田クラック等による影響を最小限にとどめ、密着性を向上させることが可能となる。
【0025】
・・・(中略)・・・
【0026】
熱伝導性部材は,放熱性及びパッケージの小型化を考慮して,例えば,0.05mm以上の厚みであることが適しており,0.175mm以上であることが好ましい。また,0.5mm以下の厚みであることが適している。熱伝導性部材の形状は,特に限定されないが,半導体発光素子の直下からパッケージの裏面に向かって広がる形状,つまり,平面形状が大きくなるような形状を有することが好ましい。これにより,放熱性を向上させることができる。
【0027】
熱伝導性部材は,例えば,半導体発光素子の直下に配置される第1熱伝導層と,その下に配置される絶縁層と,その絶縁層の下に配置される第2熱伝導層とから構成されていることが好ましい。これにより,絶縁層により,内層配線と熱伝導層との接触を回避することができるので,短絡を防ぎ,信頼性の高い半導体発光装置とすることができる。
ここでの絶縁層の膜厚は特に限定されるものではなく,第1及び第2熱伝導層の材料,膜厚,発光素子の種類,パッケージの大きさ及び厚み等によって適宜調整することができる。この絶縁層は,上述したセラミックスからなる層であることが好ましい。
【0028】
・・・(中略)・・・
【0030】
半導体発光素子は,通常,いわゆる発光ダイオードと呼ばれる素子であることが好ましい。例えば,基板上に,InN,AlN,GaN,InGaN,AlGaN,InGaAlN等の窒化物半導体,III-V族化合物半導体,II-VI族化合物半導体等,種々の半導体によって,活性層を含む積層構造が形成されたものが挙げられる。なかでも,窒化物半導体からなる青色系の光を発する活性層を有するものが好ましい。得られる発光素子の発光波長は,半導体の材料,混晶比,活性層のInGaNのIn含有量,活性層にドープする不純物の種類を変化させるなどによって,紫外領域から赤色まで変化させることができる。
本形態の半導体発光素子は,活性層に対して同じ側に正負一対の電極を有する。
【0031】
半導体発光素子は,パッケージの導電配線に載置される。例えば,Au-Sn共晶などの半田,低融点金属等のろう材,銀,金,パラジウムなどの導電性ペースト等を用いて,半導体発光素子をパッケージの所定領域にダイボンディングすることができる。
【0032】
また,半導体発光素子に形成された電極は,パッケージにおける導電配線と接続される。同一面側に正及び負電極を有する半導体発光素子の正電極とパッケージの正電極(導電配線),半導体発光素子の負電極とパッケージの負電極(導電配線)とを半田やバンプで接続する。」

c「【0052】
実施例2
この実施例の半導体発光装置40は,図8示したように,パッケージ41表面の封止部材13の外縁近傍に凹部42を設け,その凹部42内に保護素子43が搭載されていること,LEDチップ12の直下に,2段構造の熱伝導性部材が埋め込まれていること以外は,実質的に実施例1の半導体発光装置10と同様に,導電配線14a,14b,アライメントマーク18等が形成され,半導体発光素子12が搭載されている。
【0053】
つまり,パッケージ41は,図9Aに示す第1絶縁層51(厚み:0.05mm),図10に示す第2絶縁層52(厚み:0.175mm),図11に示す第3絶縁層53(厚み:0.175mm),図12に示す第4絶縁層54(厚み:0.05mm)が積層され,焼成されることによって形成されている。これらの絶縁層は,アルミナを材料とするセラミックスグリーンシートから形成されている
【0054】
このような半導体発光装置40を構成するパッケージ41は,図9に示すように,第1絶縁層51の上面に,実施例1と同様に,導電配線14a,14b及びアライメントマーク18が形成されている。封止部材13の外縁13aに相当する位置に開口42aが形成されている。
また,図9Cに示すように,導電配線14a,14bの直下であって,第1絶縁層51内を貫通するように埋め込まれた導電配線(図示せず)が形成されている。
【0055】
図10に示すように,第2絶縁層52の表面には,内層配線23と,内層配線23直下であって,第2絶縁層52内を厚み方向に貫通するように埋め込まれた導体配線(図示せず)が形成されている。また,封止部材13の外縁13aに相当する位置に開口42bが形成されている。さらに,図9B及び図9Cに示されるように,第2絶縁層52の中央には,貫通孔が設けられ,その貫通孔のLEDチップ12の直下に相当する位置に,直径1.2mm程度の円盤状のCuWからなる熱伝導性部材55a(厚み約0.175mm)が嵌め込まれている。
【0056】
図11に示すように,第3絶縁層53の表面には,保護素子43用の配線パターン56が,その一部が第1絶縁層51の開口42a(図9Aを参照。)及び第2絶縁層52の開口42b(図10を参照。)から露出するように,それ以外の部分が第2絶縁層52と第3絶縁層53との間に配置されるように,形成されている。また,図9B及び図9Cに示されるように,第3絶縁層53の中央には,貫通孔が設けられ,その貫通孔のLEDチップ12の直下に相当する位置に,直径1.6mm程度の円盤状のCuWからなる熱伝導性部材55b(厚み約0.175mm)が嵌め込まれている。
【0057】
図12に示すように,第4絶縁層53の上面には配線パターンは形成されておらず,裏面には,図6と同様に,裏面配線パターンが形成されている。この第4絶縁層53によって,熱伝導性部材55bの裏面側を完全に被覆することができる。
【0058】
この実施例の半導体発光装置によれば,実施例1の効果に加え,特に,第3絶縁層53に嵌め込まれている熱伝導性部材55bの直径が,第2絶縁層52に嵌め込まれている熱伝導性部材55aの直径よりも大きい。これにより,熱伝導性部材55aおよび熱伝導性部材55bにより形成された熱伝導性部材全体の形状の側面に段差を形成している。つまり,熱伝導性部材は,半導体発光素子の直下からパッケージの背面に向かって広がる形状とされている。このような形状とすることにより,LEDチップ直下での熱伝導性部材による光吸収を最小限に抑えることができる。
【0059】
さらに,この効果を向上させるために,LEDチップ直下の第2絶縁層に嵌め込まれる熱伝導性部材の水平方向の面積を,LEDチップの水平方向の面積とほぼ同じ大きさとすることが好ましい。
また,パッケージの裏面の側で,熱伝導性部材が広く形成されているので,半導体発光素子からパッケージの裏面へかけての放熱も良好に行うことができる。」

d ここで,図9Cは以下のものである。


(イ)以上を総合すると,引用例2には,図9A?Cに示されたものに関して,次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明2」という。)。
「半導体発光素子を搭載した半導体発光装置であって,
上面に正負一対の導電配線が形成された第1絶縁層と,その第1絶縁層の下の内層配線と,その内層配線の下の第2絶縁層とが積層され,絶縁層を3層以上含み,任意の絶縁層の間に,内層配線を配置しており,第1絶縁層と第2絶縁層との間以外の内層配線は,パッケージのいずれの領域において配線されてもよいものである,パッケージと,
同一面側に正負一対の電極を有し,それらの電極を前記導電配線に対向して配置された半導体発光素子と,
前記半導体発光素子を被覆する封止部材とを備え,
前記各絶縁層がセラミックスからなる層であり,
パッケージは,第1絶縁層,第2絶縁層,第3絶縁層53,及び第4絶縁層54が積層され,焼成されることによって形成されており,
第1絶縁層上の導電配線14a,14bの直下であって,第1絶縁層51内を貫通するように埋め込まれた導電配線が形成されており,
第2絶縁層52の表面には,内層配線23と,内層配線23直下であって,第2絶縁層52内を厚み方向に貫通するように埋め込まれた導体配線が形成されており,
前記導電配線の一部が,前記第1絶縁層の上面において,前記半導体発光素子の直下から前記封止部材の外縁まで延長されて形成され,さらに前記パッケージの厚み方向に配置された導電配線を介して前記内層配線に接続されており,
前記パッケージを前記第1絶縁層の上面側から透過して見て,前記内層配線が,前記半導体発光素子の外周から間隔を空けて配置されており,
パッケージの裏面には,上述した導電配線又は内層配線と電気的に接続された裏面配線が形成されており,これにより,実装基板や回路基板への電気的接続を,外部端子として裏面の導電配線によって実現でき,
パッケージは,さらに,半導体発光素子の載置領域の下に熱伝導性部材を備え,ここで,載置領域の下とは,半導体発光素子の外縁のほぼ内側であって,半導体発光素子の下方の領域であり,
第4絶縁層53によって,熱伝導性部材の裏面側を完全に被覆され,
前記熱伝導性部材は,半導体発光素子の直下から前記パッケージの裏面に向かって広がる形状を有し,
前記熱伝導性部材は,前記半導体発光素子の直下の第1熱伝導層と,その下の絶縁層と,その絶縁層の下の第2熱伝導層とから構成されており,
前記熱伝導性部材または熱伝導層が,CuWまたはCuMoを材料としていることが好ましいものであり,
半導体発光素子の発光波長は,紫外領域から赤色までであり,
同一面側に正及び負電極を有する半導体発光素子の正電極とパッケージの正電極(導電配線),半導体発光素子の負電極とパッケージの負電極(導電配線)とが半田やバンプで接続された,
半導体発光装置。」

(2)対比
前記引用発明1と,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)とを対比する。
ア 引用発明1においては,「発光素子実装用配線基板1であって, 配線基板1は,表面3および裏面4を有する基板本体2と,基板本体2の表面3に開口するキャビティ5と,キャビティ5の底面7上に離間して形成される一対の導体層15,16と,を備え」,「基板本体2は,一体に積層されたガラス-セラミック(絶縁材)層s1?s7からなり,前記キャビティ5はガラス-セラミック層s1?s3に形成された開口により形成されて」いるものであるから,
引用発明1の「キャビティ5」は,補正発明の「キャビティ」に相当し,
引用発明1の「ガラス-セラミック層s1?s3」は,補正発明の「キャビティの周囲に配置されている上部」であって,「前記上部は,第1セラミック層と,前記第1セラミック層の下に配置されている第2セラミック層と,を含」むことに相当し,
引用発明1の「一体に積層されたガラス-セラミック(絶縁材)層s1?s7」のうちの「ガラス-セラミック層」s4?s7は,補正発明の「前記キャビティの下に配置されている下部」であって,「前記下部は,複数のセラミック層を含」むことに相当し,
引用発明1の「配線基板1」は,補正発明の「パッケージ本体」に相当する。

イ 引用発明1においては,「キャビティ5の底面7上に離間して形成される一対の導体層15,16」があり,「導体層15,16」は「キャビティ5の底面7」すなわち「ガラス-セラミック層s4」上に形成されるところ,「導体層15の上にはCuからなる接合材28を介して,発光素子8を実装すると共に,その実装エリアの直下から基板本体2の裏面4に向けて断面が拡大するAgまたはAg合金からなるビア導体40を形成し,ビア導体40の裏面4側には,Agからなる裏面電極27を介して,Cuからなる放熱板29が配置されるものである」から,「ビア導体40」が「ガラス-セラミック層」s4?s7中に配置されることは明らかである。よって,引用発明1の「ビア導体40」は,補正発明の「前記下部内に配置されている放熱部」であって,「前記放熱部は,前記下部の前記複数のセラミック層の内部に配置され」ることに相当する。

ウ 引用発明1においては,「基板本体2を形成するガラス-セラミック層s1?s7間には,AgまたはAg合金からなり所定パターンを有する配線層20,21が形成されると共に,これらの間には,同じAgなどからなるビア導体22,23が形成されて」いるところ,当該「ビア導体22,23」及び「配線層20,21」は,それぞれ,補正発明の「前記下部内に配置され,且つ,垂直方向に延在する複数の第1導電層」,及び「前記下部内に配置され,且つ,水平方向に延在する複数の第2導電層」であって,さらに「前記複数の第1導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうちいずれか一つのセラミック層と接し,且つ,それ以外のセラミック層と接触せず,
前記複数の第2導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうち互いに接触する二つのセラミック層と接し,且つ,それら以外のセラミック層と接触せず」との構成に相当する。

エ 引用発明1においては,「導体層15の上にはCuからなる接合材28を介して,発光素子8を実装すると共に,その実装エリアの直下から基板本体2の裏面4に向けて断面が拡大するAgまたはAg合金からなるビア導体40を形成」されるから,当該「発光素子8」と,補正発明の「前記放熱部の上に配置されている紫外線発光素子」とは,「前記放熱部の上に配置されている発光素子」である点で一致する。

オ 引用発明1においては,「グランド回路を形成する一方の導体層15は,ビア導体22を介して配線層20,および基板本体2の裏面4に位置する裏面電極24と導通可能とされており,信号回路を形成する他方の導体層16は,ビア導体23を介して配線層21,および基板本体2の裏面4に位置する裏面電極25と導通可能とされて」いるところ,
「発光ダイオード8と他方の導体層16の先端部との間は,ボンディングワイヤwがボンディング(ロウ付け)により結線され」るから,当該構成は,
補正発明の「前記紫外線発光素子は,前記紫外線発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して前記複数の第1導電層,前記複数の第2導電層,前記第3導電層及び前記第1電極パッドと電気的に接続され」ることとは,「前記発光素子は,前記発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して前記複数の第1導電層,及び前記複数の第2導電層と電気的に接続され」る点で一致する。

カ 引用発明1においては,「導体層15の上にはCuからなる接合材28を介して,発光素子8を実装すると共に,その実装エリアの直下から基板本体2の裏面4に向けて断面が拡大するAgまたはAg合金からなるビア導体40を形成し,ビア導体40の裏面4側には,Agからなる裏面電極27を介して,Cuからなる放熱板29が配置されるものであ」り,発光素子8から裏面電極に渡る導電経路があるものといえるから,当該構成は,補正発明の「前記紫外線発光素子は,導電性物質によって前記放熱部と電気的に接続されている」こととは,「前記発光素子は,導電性物質によって前記放熱部と電気的に接続されている」点で一致する。

キ 引用発明1の「発光素子実装用配線基板1」と,補正発明の「紫外線発光素子パッケージ」とは,「発光素子パッケージ」である点で一致する。

ク よって,引用発明1と補正発明とは,
「キャビティの周囲に配置されている上部及び前記キャビティの下に配置されている下部を含むパッケージ本体と,
前記下部内に配置されている放熱部と,
前記下部内に配置され,且つ,垂直方向に延在する複数の第1導電層と,
前記下部内に配置され,且つ,水平方向に延在する複数の第2導電層と,
前記放熱部の上に配置されている発光素子と,を含み,
前記上部は,
第1セラミック層と,
前記第1セラミック層の下に配置されている第2セラミック層と,を含み,
前記下部は,複数のセラミック層を含み,
前記放熱部は,前記下部の前記複数のセラミック層の内部に配置され,
前記複数の第1導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうちいずれか一つのセラミック層と接し,且つ,それ以外のセラミック層と接触せず,
前記複数の第2導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうち互いに接触する二つのセラミック層と接し,且つ,それら以外のセラミック層と接触せず,
前記発光素子は,前記発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して前記複数の第1導電層,前記複数の第2導電層,前記第3導電層及び前記第1電極パッドと電気的に接続され,
前記発光素子は,導電性物質によって前記放熱部と電気的に接続されている,発光素子パッケージ。」
である点で一致する。

ケ 一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点1》
補正発明は「前記下部及び前記放熱部の下に配置されている第1突出防止層と,前記第1突出防止層内に配置され,且つ,前記垂直方向に延在する第3導電層と,前記第1突出防止層の下に配置され,且つ,前記水平方向に延在する第1電極パッドと」を構成,及び,「前記第1突出防止層は,前記放熱部,及び,前記複数のセラミック層のうち最も下に位置するセラミック層と接し,前記第3導電層は,前記第1突出防止層と接し,前記第1電極パッドは,前記第1突出防止層と接し」との構成を備えるが,引用発明1は「前記下部及び前記放熱部の下に配置されている第1突出防止層」を備えず,これに伴い,「前記第1突出防止層内に配置され,且つ,前記垂直方向に延在する第3導電層と,前記第1突出防止層の下に配置され,且つ,前記水平方向に延在する第1電極パッド」,及び「前記第1突出防止層は,前記放熱部,及び,前記複数のセラミック層のうち最も下に位置するセラミック層と接し,前記第3導電層は,前記第1突出防止層と接し,前記第1電極パッドは,前記第1突出防止層と接し」との構成も備えない点。

《相違点2》
補正発明は,「紫外線発光素子パッケージ」であり,「紫外線発光素子」を備えるが,引用発明1は「発光素子」を備えるものの,「紫外線発光素子」を備える「紫外線発光素子パッケージ」とまでは特定されていない点。

(3)判断
ア まず相違点1について検討する。
(ア)本願明細書には,「第1突出防止層」に関して以下の記載がある。
「【0070】
第3の実施例に係る発光素子パッケージ200は,図7に示したように,本体210,放熱部220,及び発光素子230を備えることができる。
【0071】
・・・(中略)・・・
【0073】
・・・(中略)・・・
前記第3の層213は支持層と称することもできる。前記第3の層213は前記発光素子230を支持し,前記放熱部220が形成される工程で支持役割をすることもできる。すなわち,前記第3の層213は,放熱部220が熱によって膨張して発光素子230方向に突出することを防止する突出防止層の役割をすることができる。」

「【0098】
第7の実施例に係る発光素子パッケージは,図11に示したように,本体210,放熱部220,及び発光素子230を備えることができる。
【0099】
前記本体210は,発光素子230と放熱部220との間に位置する突出防止層260と,放熱部220の下部に位置する突出防止層270とを有する。
【0100】
放熱部220が上面のみならず下面にも凸状に突出し得るので,放熱部220の上下面の全てに突出防止層を形成することができる。」

(イ)すなわち,突出防止層とは,放熱部が熱によって膨張して下面に凸状に突出することを防止するものとして設けられるものということができる。

(ウ)なお,前記(1)イ(ア)cに摘記したとおり,引用例2には,熱伝導性部材を埋め込むように第4絶縁層54を設けることが記載されているが,当該層は同文献の段落【0057】に記載されているように,熱伝導性部材55bの裏面側を完全に被覆するものであり,これにより,「絶縁性を確実にしながら,外部端子となる裏面側の裏面配線と,熱伝導性部材とをオーバーラップさせることができ」,「半導体発光装置の小型化を実現しながら,外部端子の表面積を稼いで,回路基板との接触面積を増加させ」(ともに段落【0024】)るものと解され,前記突出防止層として設けられるものとはいえない。

(エ)さらに,引用発明1においては,「ビア導体40の裏面4側には,Agからなる裏面電極27を介して,Cuからなる放熱板29が配置されるもの」であって,ビア導体40自体も導電経路とされていることを勘案すると,熱伝導性部材と導電配線とを絶縁するものである上記(ウ)の引用例2に係る技術を,引用発明1に適用することには阻害要因があるというべきである。

イ よって,《相違点2》について検討するまでもなく,補正発明は,引用例2に記載を参酌しても,引用発明1から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ また,本件補正後の請求項1を引用する請求項2?12に係る発明は,補正発明に係る構成を全て含むものであるから,上記検討と同様に,引用例2に記載を参酌しても,引用発明1から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであり,また,他に,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たさない事項は発見しないので,本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものである。

6 小括
以上のとおりであるから,本件補正は適法にされたものである。

第3 本件発明について
1 本件発明
本件発明1?12は,平成30年11月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された,以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
キャビティの周囲に配置されている上部及び前記キャビティの下に配置されている下部を含むパッケージ本体と,
前記下部内に配置されている放熱部と,
前記下部内に配置され,且つ,垂直方向に延在する複数の第1導電層と,
前記下部内に配置され,且つ,水平方向に延在する複数の第2導電層と,
前記下部及び前記放熱部の下に配置されている第1突出防止層と,
前記第1突出防止層内に配置され,且つ,前記垂直方向に延在する第3導電層と,
前記第1突出防止層の下に配置され,且つ,前記水平方向に延在する第1電極パッドと,
前記放熱部の上に配置されている紫外線発光素子と,を含み,
前記上部は,
第1セラミック層と,
前記第1セラミック層の下に配置されている第2セラミック層と,を含み,
前記下部は,複数のセラミック層を含み,
前記放熱部は,前記下部の前記複数のセラミック層の内部に配置され,
前記複数の第1導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうちいずれか一つのセラミック層と接し,且つ,それ以外のセラミック層と接触せず,
前記複数の第2導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうち互いに接触する二つのセラミック層と接し,且つ,それら以外のセラミック層と接触せず,
前記第1突出防止層は,前記放熱部,及び,前記複数のセラミック層のうち最も下に位置するセラミック層と接し,
前記第3導電層は,前記第1突出防止層と接し,
前記第1電極パッドは,前記第1突出防止層と接し,
前記紫外線発光素子は,前記紫外線発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して前記複数の第1導電層,前記複数の第2導電層,前記第3導電層及び前記第1電極パッドと電気的に接続され,
前記紫外線発光素子は,導電性物質によって前記放熱部と電気的に接続されている,紫外線発光素子パッケージ。
【請求項2】
前記第2セラミック層の上面は,
前記第1セラミック層が配置されている第1領域と,
前記第1セラミック層が配置されていない第2領域と,を含み,
前記第2領域は,前記第1領域よりも前記紫外線発光素子に近接する領域である,請求項1に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項3】
前記導電性物質は,Ag,AuまたはSnを含み,
前記第1電極パッドは,前記放熱部と前記垂直方向において重ならない,請求項1または2に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項4】
前記放熱部の上側の前記水平方向における幅と下側の前記水平方向における幅は相互異なる,請求項1から3のいずれか一項に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項5】
前記放熱部の上側の前記水平方向における幅が前記放熱部の下側の前記水平方向における幅より大きい,請求項4に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項6】
前記上部は,前記キャビティの内側面に階段形状を含む,請求項1から5のいずれか一項に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項7】
前記第2セラミック層の上にガラスをさらに含む,請求項1から6のいずれか一項に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項8】
前記第1突出防止層の前記水平方向における幅は前記放熱部の前記水平方向における幅より大きい,請求項1から7のいずれか一項に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項9】
前記第3導電層は,前記放熱部と前記垂直方向において重ならない,請求項1から8のいずれか一項に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項10】
前記上部と前記下部の間に配置されている第2突出防止層と,
前記第2突出防止層の上に配置されている第2電極パッドと,
前記第2突出防止層内に配置され,且つ,前記垂直方向に延在する第4導電層と,をさらに含み,
前記第4導電層は,前記第2突出防止層と接し,
前記第2電極パッドは,前記第2突出防止層と接し,
前記紫外線発光素子は,前記第2電極パッドの上面にボンディングされている前記ワイヤを介して前記第4導電層及び前記第2電極パッドと電気的に接続されている,請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項11】
前記第2突出防止層の前記水平方向における幅は,前記放熱部の前記水平方向における幅より大きい,請求項10に記載の紫外線発光素子パッケージ。
【請求項12】
前記第4導電層は,前記放熱部と前記垂直方向において重ならない,請求項10に記載の紫外線発光素子パッケージ。」

2 原査定の拒絶の理由について
原査定の拒絶の理由は,本願に係る発明は,周知技術を勘案して引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3 検討
(1)刊行物に記載された発明
引用例2に記載された発明は,前記第2 5(1)イ(イ)に記載したとおりのものである。

(2)対比
引用発明2を本件発明1と対比する。
ア 引用発明2においては「半導体発光素子の発光波長は,紫外領域から赤色までであ」るから,本件発明1の「紫外線発光素子」に相当するといえる。

イ 引用発明2においては「絶縁層を3層以上含み,」「前記各絶縁層がセラミックスからなる層であり,パッケージは,第1絶縁層,第2絶縁層,第3絶縁層53,」「が積層され,焼成されることによって形成されて」いるから,当該構成は,本件発明1の「前記下部は,複数のセラミック層を含」むこととは「複数のセラミック層を含」む点で一致する。

ウ 引用発明2においては,「上面に正負一対の導電配線が形成された第1絶縁層と,その第1絶縁層の下の内層配線と,その内層配線の下の第2絶縁層とが積層され,絶縁層を3層以上含み,任意の絶縁層の間に,内層配線を配置しており,第1絶縁層と第2絶縁層との間以外の内層配線は,パッケージのいずれの領域において配線されてもよいものであ」り,また,「第1絶縁層上の導電配線14a,14bの直下であって,第1絶縁層51内を貫通するように埋め込まれた導電配線が形成されており,第2絶縁層52の表面には,内層配線23と,内層配線23直下であって,第2絶縁層52内を厚み方向に貫通するように埋め込まれた導体配線が形成されてもよいものである,パッケージ」であるから,当該「第1絶縁層と,その第1絶縁層の下の内層配線と,その内層配線の下の第2絶縁層とが積層され,絶縁層を3層以上含み,任意の絶縁層の間に,内層配線を配置して」いる各「内層配線」は,本件発明1の「前記下部内に配置され,且つ,水平方向に延在する複数の第2導電層」に相当し,引用発明2に係る「第1絶縁層51内を貫通するように埋め込まれた導電配線」及び「第2絶縁層52内を厚み方向に貫通するように埋め込まれた導体配線」は,ともに本件発明1の「前記下部内に配置され,且つ,垂直方向に延在する複数の第1導電層」に相当する。
また,上記引用発明2に係る各構成は,本件発明1の「前記複数の第1導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうちいずれか一つのセラミック層と接し,且つ,それ以外のセラミック層と接触せず, 前記複数の第2導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうち互いに接触する二つのセラミック層と接し,且つ,それら以外のセラミック層と接触せず」との構成にも相当するといえる。

エ 引用発明2の「パッケージ」と,本件発明1の「キャビティの周囲に配置されている上部及び前記キャビティの下に配置されている下部を含むパッケージ本体」とは,「パッケージ本体」である点で一致する。

オ 引用発明2の「パッケージは,さらに,半導体発光素子の載置領域の下に熱伝導性部材を備え」ることと,本件発明1の「前記下部内に配置されている放熱部」及び「前記放熱部の上に配置されている紫外線発光素子」と構成とは,「パッケージ内に配置されている放熱部」及び「前記放熱部の上に配置されている紫外線発光素子」である点で一致する。

カ 引用発明2の「第4絶縁層53によって,熱伝導性部材55bの裏面側を完全に被覆され」ることと,本件発明1の「前記第1突出防止層は,前記放熱部,及び,前記複数のセラミック層のうち最も下に位置するセラミック層と接」することとは,「最下層は,前記放熱部,及び,前記複数のセラミック層のうち最も下に位置するセラミック層と接」する点で一致する。

キ 引用発明2の「同一面側に正及び負電極を有する半導体発光素子の正電極とパッケージの正電極(導電配線),半導体発光素子の負電極とパッケージの負電極(導電配線)とが半田やバンプで接続された」ことと,
本件発明1の「前記紫外線発光素子は,前記紫外線発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して前記複数の第1導電層,前記複数の第2導電層,前記第3導電層及び前記第1電極パッドと電気的に接続され」ることとは,「前記紫外線発光素子は,前記複数の第1導電層,及び前記複数の第2導電層と電気的に接続され」る点で一致する。

ク 引用発明2の「半導体発光素子を搭載した半導体発光装置」は,本件発明1の「紫外線発光素子パッケージ」に相当する。

ケ よって,引用発明2と本件発明1とは,
前記下部内に配置されている放熱部と,
前記下部内に配置され,且つ,垂直方向に延在する複数の第1導電層と,
前記下部内に配置され,且つ,水平方向に延在する複数の第2導電層と,
前記放熱部の上に配置されている紫外線発光素子と,を含み,
パッケージは,複数のセラミック層を含み,
前記放熱部は,前記下部の前記複数のセラミック層の内部に配置され,
前記複数の第1導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうちいずれか一つのセラミック層と接し,且つ,それ以外のセラミック層と接触せず,
前記複数の第2導電層のそれぞれは,前記複数のセラミック層のうち互いに接触する二つのセラミック層と接し,且つ,それら以外のセラミック層と接触せず,
最下層は,前記放熱部,及び,前記複数のセラミック層のうち最も下に位置するセラミック層と接し,
前記紫外線発光素子は,前記複数の第1導電層,及び前記複数の第2導電層と電気的に接続された,
紫外線発光素子パッケージ。」
である点で一致する。

ケ 一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点1》
本件発明1は「キャビティの周囲に配置されている上部及び前記キャビティの下に配置されている下部を含むパッケージ本体」を備え「前記上部は,
第1セラミック層と,前記第1セラミック層の下に配置されている第2セラミック層と,を含」むが,
引用発明2は当該構成を備えない点。

《相違点2》
本件発明1は,「前記下部及び前記放熱部の下に配置されている第1突出防止層と,前記第1突出防止層内に配置され,且つ,前記垂直方向に延在する第3導電層と, 前記第1突出防止層の下に配置され,且つ,前記水平方向に延在する第1電極パッド」であって,「前記第1突出防止層は,前記放熱部,及び,前記複数のセラミック層のうち最も下に位置するセラミック層と接し」,「前記第3導電層は,前記第1突出防止層と接し,前記第1電極パッドは,前記第1突出防止層と接」する構成を備えるが,引用発明2は「最下層は,前記放熱部,及び,前記複数のセラミック層のうち最も下に位置するセラミック層と接」する構成はそなえるものの,その他の構成は備えない点。

《相違点3》
本件発明1は「前記紫外線発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して前記複数の第1導電層,前記複数の第2導電層,前記第3導電層及び前記第1電極パッドと電気的に接続され」る構成を備えるが,引用発明2は「前記紫外線発光素子は,前記複数の第1導電層,及び前記複数の第2導電層と電気的に接続され」る構成は備えるものの,「前記紫外線発光素子の上面にボンディングされているワイヤを介して」「前記第3導電層及び前記第1電極パッドと電気的に」接続される構成までは備えない点。

《相違点4》
本件発明1は「前記紫外線発光素子は,導電性物質によって前記放熱部と電気的に接続されている」構成を備えるが,引用発明2は当該構成を備えない点。

(3)判断
ア 事案に鑑み,まず相違点4から検討する。

イ 引用発明2においては,第1絶縁層を備えるが,これにより,「絶縁性を確実にしながら,半導体発光素子の電極と接続するための電極となる導電配線と,熱伝導性部材とをオーバーラップさせることにより半導体発光装置の小型化を実現」(段落【0023】)するものであり,熱伝導性部材は,半導体発光素子にいたる導電経路とは絶縁して設けられたものである。
それゆえ,例えば,引用発明1のように,導電性物質によって,発光ダイオード8(発光素子)とビア導体40(放熱部)を電気的に接続する先行技術が存在しても,当該技術を引用発明2に適用することには阻害要因があるというべきである。

ウ よって,《相違点1》ないし《相違点3》について検討するまでもなく,本件発明1は,周知技術を勘案しても引用発明2から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ また,本件発明2?12は,本件発明1に係る構成を全て含むものであるから,上記検討と同様に,周知技術を勘案しても引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1?12に係る発明は,周知技術を勘案しても,引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-25 
出願番号 特願2018-126361(P2018-126361)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 島田 英昭  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
発明の名称 紫外線発光素子パッケージ  
代理人 小野 誠  
代理人 市川 英彦  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 金山 賢教  
代理人 重森 一輝  

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