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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23G
管理番号 1356547
審判番号 不服2018-4312  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-30 
確定日 2019-10-30 
事件の表示 特願2016-500142号「コーヒーチェリー副産物を含有する食品製品およびチョコレート組成物およびそれを形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔2014年10月2日国際公開、WO2014/158271、平成28年5月19日国内公表、特表2016-513965号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、2013年12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年3月14日,米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成29年11月29日付けで拒絶査定がなされ、それに対して平成30年3月30日に拒絶査定不服審判が請求され、平成30年5月10日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書が提出されたものである。
その後、当審において、平成30年10月31日付けで拒絶理由を通知し、応答期間内である平成31年2月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
そして、この出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成31年2月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの1つまたは複数の部分、および
チョコレート組成物
を含み、
種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの1つまたは複数の部分が、
40μm?100μmの平均粒径、および
30ラピッドビスコ単位?3000ラピッドビスコ単位のピーク粘度
を有し、
種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの1つまたは複数の部分が、コーヒー豆を含まず、
種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの1つまたは複数の部分が、総アフラトキシンについて約20ppb未満、総フモニシンについて2ppm未満、総オクラトキシンについて10ppb未満、および総ボミトキシンについて5ppm未満のマイコトキシンレベルを有する、
食品製品。」

第2 拒絶理由の概要
当審において平成30年10月31日付けで通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲に記載の「ラピッドビスコ単位」が、いかなる単位であるのか不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.(拡大先願)この出願に係る発明は、その優先日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の引用例1の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

3.(進歩性)この出願に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の引用例2,3に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例一覧:
引用例1:特願2012-100070号(特開2013-227418号)
引用例2:特開2004-81060号公報
引用例3:特開2012-50452号公報

第3 刊行物
1.引用例2
当審において通知した拒絶理由に引用された引用例2には、次の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】
フリーズドライされた果実又は豆類と、その外側に設けられたチョコレート層とを有するチョコレート菓子において、該フリーズドライされた果実又は豆類が予め所望の形に成形されたものであることを特徴とするチョコレート菓子。
【請求項2】
フリーズドライされた果実又は豆類が、果実又は豆類を破砕又はペースト状にした果実又は豆類を、所望の形状の容器に入れてフリーズドライされたものである請求項1記載のチョコレート菓子。」(【特許請求の範囲】)

(2)「フリーズドライする果実等としては、例えば苺、レモン、ブルーベリー、パイナップル、マンゴー、キウイ、ラズベリー、栗、柿等の果実や、小豆、コーヒー豆等の豆類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。」(段落【0010】)

(3)「本発明のチョコレート菓子は、上記フリーズドライ果実等の外側をチョコレート層で包んである。コーティングチョコレートとしては油脂分の多い本来のチョコレート、それより油脂分の少ない準チョコレートやホワイトチョコレート等が挙げられる。このコーティングチョコレートには、フリーズドライ果実等の香料、それ以外の香料、着色料や場合によっては調味料又はクエン酸等の酸味料を適当量加えることもできる。又、前記コーティングチョコレートをホイップすることで、軽い食感のチョコレート菓子とすることもできる。」(段落【0013】)

(4)「(実施例1)
原料冷凍苺をチョッパーミルで破砕し、この苺65部に砂糖30部、デキストリン5部、酸味料と香料を微量添加した。これを幅14mm、長さ65mm、高さ9mmのかまぼこ型トレイ(320個取り)に流し込み、-20℃以下で予備凍結後、完全凍結してフリーズドライ乾燥を行った。このときの真空度は67Pa、温度は-50℃であった。
予め溶解しておいた不二製油株式会社製のホワイトチョコレート80部に、流動性を増すために植物油脂(メラノSS-400(登録商標);不二製油株式会社製)を5部添加した。これを35℃に調温し、結晶の安定化のためにチョコシードB(登録商標;不二製油株式会社製)を3%添加し攪拌した。このホワイトチョコレートを35℃に保ちながら、ミキサー(愛工舎株式会社製AM30)4段切り替えの3速にて8?10分攪拌してホイップした。得られたホイップホワイトチョコレートの比重は0.75であった。
このホイップしたホワイトチョコレートをエンローバー機(カカオバリー社製MS2000ディスク掻き揚げ方式)に充填し、前記かまぼこ型のフリーズドライ苺の外側に、エンローバー法によりフリーズドライ苺の重量の2倍量のホイップホワイトチョコレートをコーティングして、チョコレート菓子320個を得た。
得られたチョコレート菓子は、その全数がほぼ均質であり、苺果汁感たっぷりで、かつ食感がサックリした苺とホイップによる口当たりの軽い食感のホワイトチョコレートとのバランスのとれたチョコレート菓子であった。
(実施例2)
実施例1において冷凍苺の代わりに冷凍レモンを用い、すりつぶした原料レモン果肉と果汁を合計で70部、乳糖20部、砂糖7部及びデキストリン3部に香料を微量添加した。これを実施例1と同様のトレイに流し込み、実施例1と同様にして、かまぼこ型のフリーズドライレモンを作成した。
実施例1のホワイトチョコレートに代えて、不二製油株式会社製のヨーグルトチョコレートを用いて実施例1と同様にして前記フリーズドライレモンに2倍量のホイップヨーグルトチョコレートをコーティングして、チョコレート菓子320個を得た。
得られたチョコレート菓子は、その全数がほぼ均質であり、レモンの果汁感たっぷりで、かつ食感がサックリしたレモンとホイップによる軽い食感のヨーグルトチョコレートのあっさりとした風味とのバランスのとれたチョコレート菓子であった。
(実施例3)
実施例1において冷凍苺の代わりにブルーベリーを用い、すりつぶした原料ブルーベリー果肉と果汁を合計で70部、乳糖20部、砂糖7部及びデキストリン3部に香料を微量添加した。これを実施例1と同様のトレイに流し込み、実施例1と同様にして、かまぼこ型のフリーズドライブルーベリーを作成した。
実施例2と同じく不二製油株式会社製のヨーグルトチョコレートを用いて実施例2と同様にして前記フリーズドライブルーベリーに2倍量のホイップヨーグルトチョコレートをコーティングして、チョコレート菓子320個を得た。
得られたチョコレート菓子は、その全数がほぼ均質であり、ブルーベリーの果汁感たっぷりで、かつ食感がサックリしたブルーベリーとホイップによる軽い食感のヨーグルトチョコレートのあっさりとした風味とのバランスのとれたチョコレート菓子であった。」(段落【0018】?【0020】)

上記(1)?(4)の記載から、引用例2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「破砕又はペースト状にした果実をフリーズドライしたものと、その外側に設けられたチョコレート層とを有するチョコレート菓子。」

2.引用例3
当審において通知した拒絶理由に引用された引用例3には、次の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】
コーヒーチェリーのマイコトキシンレベルが、総アフラトキシン20ppb未満、総オクラトキシン10ppb未満および総フモニシン5ppm未満であるような急速乾燥されているコーヒーチェリーの調製品を含む食品。
【請求項2】
前記コーヒーチェリーの調製品が、コーヒーチェリーの粉砕片を含む、請求項1に記載の食品。
・・・
【請求項4】
前記コーヒーチェリーの調製品が、コーヒーチェリーの豆、コーヒーチェリーの果肉、コーヒーチェリーの粘質およびコーヒーチェリーの殻皮のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の食品。
【請求項5】
前記コーヒーチェリーの調製品が、コーヒーチェリーの豆、コーヒーチェリーの果肉、コーヒーチェリーの粘質およびコーヒーチェリーの殻皮のうちの少なくとも1つからの抽出物を含む、請求項1に記載の食品。
・・・ 」(【特許請求の範囲】)

(2)「同様にここで用いる用語「コーヒーチェリー」は、外果皮および外側の中果皮(すなわち、果肉)が、内側の中果皮(すなわち、粘質)および内果皮(すなわち、殻皮)を包囲し、またこれらが種子(すなわち、豆)を包囲する、コーヒーノキの実を指す。従って、具体的には、用語コーヒーチェリーは、コーヒーチェリー原体を指し、これは、このチェリーの茎を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。」(段落【0020】)

(3)「こうして得られた急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーは、この後、さらにマイコトキシンの毒素除去をすることなく、非常に多数の食品での様々な用途に利用することができる。例えば、急速乾燥亜成熟コーヒーチェリー原体を食品に使用する場合、このコーヒーチェリーを別の消耗品と混合することができる(例えば、動物の餌用の穀物との混合物、または人間が消費するためのチョコレートでのコーティング)。もう1つの特に好ましい例では、急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーを粉砕し、食品添加剤として、またはコーヒーチェリー茶をいれるための基礎原料として使用する(例えば、ばら茶については500から3000μmのサイズに粉砕することが好ましく、またはティーバッグについては200から1000μmのサイズに粉砕することが好ましい)。
また、急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーの一部のみを食品に利用することができることは理解されるはずである。例えば、この亜成熟コーヒーチェリーが、ほぼ成熟した状態である場合、果肉、粘質および/または殻皮を種子から分離することができ、この後、これらを(場合により他の種子と混合し)焙煎して、市販のコーヒー豆にすることも考えられる。この後、この急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーからの残りの果肉、粘質および/または殻皮は、食品添加剤として、または1つもしくはそれ以上の所望の成分(例えば、ポリフェノール)を抽出するための基礎材料として利用することができる。」(段落【0030】?【0031】)

上記(1)?(3)の記載から、引用例3には次の事項が記載されているものと認められる。

「マイコトキシンレベルが、総アフラトキシン20ppb未満、総オクラトキシン10ppb未満および総フモニシン5ppm未満であるコーヒーチェリーの果肉、粘質および/または殻皮を、食品添加剤とする」点

第4 対比・判断
1.対比
以下、本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「破砕又はペースト状にした果実をフリーズドライしたもの」と本願発明の「乾燥コーヒーチェリーの1つまたは複数の部分」は、「乾燥された果実の1つまたは複数の部分」の限りにおいて一致する。
また、引用発明の「その外側に設けられたチョコレート層」は、チョコレートからなるものであるから、本願発明の「チョコレート組成物」に相当し、引用発明の「チョコレート菓子」は、本願発明の「食品製品」に相当する。
以上のことからすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

【一致点】
「乾燥された果実の1つまたは複数の部分、およびチョコレート組成物を含む食品製品。」

【相違点】
1.「乾燥された果実の1つまたは複数の部分」が、本願発明は「種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの1つまたは複数の部分」であるのに対して、引用発明は「破砕又はペースト状にした果実をフリーズドライしたもの」である点。
2.「乾燥された果実の1つまたは複数の部分」について、本願発明は「40μm?100μmの平均粒径」を有するのに対して、引用発明は破砕又はペースト状にされてはいるものの粒径を特定していない点。
3.「乾燥された果実の1つまたは複数の部分」について、本願発明は「30ラピッドビスコ単位?3000ラピッドビスコ単位のピーク粘度を有し」ているのに対して、引用発明はピーク粘度を特定していない点。
4.「乾燥された果実の1つまたは複数の部分」について、本願発明は「コーヒー豆を含ま」ないのに対して、引用発明にはそのような特定がない点。
5.「乾燥された果実の1つまたは複数の部分」について、本願発明は「総アフラトキシンについて約20ppb未満、総フモニシンについて2ppm未満、総オクラトキシンについて10ppb未満、および総ボミトキシンについて5ppm未満のマイコトキシンレベルを有する」のに対して、引用発明はそのような特定をしていない点。

2.判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用例3には、上記第3の2.で摘示したとおり、種子から分離した急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーの果肉、粘質および/または殻皮を、食品添加剤とする点が記載されている。そして、本願明細書の段落【0014】の「種子を除去したコーヒーチェリーの部分は、本明細書中においてより詳細に議論され、一般には、殻皮、粘液質、シルバースキン、パーチメントコート、ペクチン層、果肉、外皮、茎、葉等を含む。」の記載によると、種子を除去したコーヒーチェリーの部分は殻皮、粘液質、シルバースキン、パーチメントコート、ペクチン層、果肉、外皮、茎、葉等を含むものであるから、引用例3の乾燥コーヒーチェリーの果肉、粘質および/または殻皮は、本願発明の「種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの1つまたは複数の部分」といえるものである。
そして、引用例3には、急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーの原体であるが、チョコレートでのコーティングについて記載され、チョコレートとコーヒーチェリーとを共に使用することが想定されている(段落【0030】参照。)。
また、引用例3記載の「種子から分離した急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーの果肉、粘質および/または殻皮」も引用発明の「破砕又はペースト状にした果実をフリーズドライしたもの」も果実の乾燥物という点で共通している。
これらのことからすれば、上記引用例3記載の「種子から分離した急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーの果肉、粘質および/または殻皮」を、引用発明の「破砕又はペースト状にした果実をフリーズドライしたもの」に代えて採用することは当業者にとって容易である。
よって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用例3に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

(2)相違点2について
引用発明の「破砕又はペースト状にした」ことに関し、引用例2には、「原料冷凍苺をチョッパーミルで破砕し、この苺65部に砂糖30部、デキストリン5部、酸味料と香料を微量添加した。これを幅14mm、長さ65mm、高さ9mmのかまぼこ型トレイ(320個取り)に流し込み、-20℃以下で予備凍結後、完全凍結してフリーズドライ乾燥を行った。」(段落【0018】)と記載され、チョッパーミルで破砕することが記載されている。
そして、本願発明の平均粒径を得ることについて、本願明細書には「粉砕は、いずれのタイプの粉砕、ミル粉砕および/またはプレミル粉砕を含んでもよい。粉砕は、ハンマーミル、ローラーミル、ディスクミル等のような当業者に知られた種々の粉砕デバイスによって行ってよい。」(段落【0025】)と記載され、チョッパーミルを含めた、当業者に知られた種々の装置の使用が想定されているといえるから、本願発明と引用発明の粉砕手段は特に相違するものではない。
また、食品に用いる平均粒径として、40μm?100μm程度の値は、慣用される値であり(例えば食品科学便覧編集委員会編,「食品科学便覧」,共立出版株式会社,昭和53年5月10日初版1刷発行,p262の表1.34参照。)、本願発明が、具体的な平均粒径として40μm?100μmの値を採用したことに格別の意味があるものとは明細書の記載から認められない。
そうすると、引用発明の「破砕又はペースト状にした果実」において、上記慣用される粒径を採用し、相違点2に係る「40μm?100μmの平均粒径」とすることは設計的事項の域を出るものではない。
よって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用例2の記載事項並びに慣用技術に基いて当業者が容易に想到できたものである。
なお、請求人は平成31年2月26日提出の意見書(以下、「意見書」という。)において、次のように主張している。
「平均粒径に関し、今般の拒絶理由通知において、審判官殿は、『先願にはコーヒーチェリーの平均粒径やピーク粘度についての具体的な限定はないが、本願発明におけるコーヒーチェリーの平均粒径やピーク粘度は非常に広範囲であり、コーヒーチェリーをパン生地へ添加するにあたっての通常の平均粒径やピーク粘度を排除するものとは認められない。』と認定している。理由3(進歩性)についても同様の認定をしている。補正後の請求項1は、『0.1μm?3000μmの平均粒径』を『40μm?100μmの平均粒径』という小さいサイズに限定したものであり、広範囲なものではなくなり、かつ、以下に示すように種子を除去した乾燥コーヒーチェリーにおける通常の平均粒径の範囲内にないものである。
本発明者は、補正後の請求項に規定された平均粒径の範囲より実質的に大きい平均粒径が食品に望ましくない粒状感触を生じさせることを見出し、補正後の請求項に規定された平均粒径範囲が請求項1に規定した食品および組成物にとって重要であることを見出したものである。また、補正後の請求項に規定された平均粒径範囲より実質的に小さい粒子サイズは、請求されている食品および組成物においてうまくブレンドされないという問題があった。
本発明の出願以前には、種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの粉砕における困難さのために、具体的には、種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの特徴である特に長い繊維が標準的なミリング装置をすり抜けてしまうことから、補正後の請求項に規定された小さいサイズの平均粒径をもつ種子を除去した乾燥コーヒーチェリーを使用することは行われていなかった。
請求項に規定した食品および組成物に添加するために種子を除去した乾燥コーヒーチェリーを粉砕する本発明者の研究において、粉砕中に最適な粒子範囲を見出し、さらに、その範囲外の粒子を捨てることが必須であることを見出した。補正後の請求項に規定された粒子範囲よりも大きい粒子のサイズを減少させようとして粉砕を続けようとすると、最適サイズの粒子は小さくなり過ぎてしまうという問題がある。また、補正後の請求項に規定された粒子範囲よりも大きい粒子を分離して再粉砕すると、結果として生じる熱によって食品および組成物の味が損なわれてしまうという問題がある。
以上のように、請求項に規定した食品および組成物に種子を除去した乾燥コーヒーチェリーを添加する際に、『40μm?100μmの平均粒径』とすることは、『香味、食感(texture)等のような味覚の問題』を解決する上で非常に重要であり、また、出願当時、種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの平均粒径として通常の範囲のものではない。」
しかし、本願明細書において種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの平均粒径については、段落【0025】において、種子を除去したコーヒーチェリーの粉砕された部分について、「約40μm・・・約100μm・・・、または(終点を含めた)これらの値のいずれか2つの間のいずれかの値または範囲の平均粒径を有してもよい。」及び「約40μm・・・約100μm・・・、または(終点を含めた)これらの値のいずれか2つの間のいずれかの値または範囲も含めた、約1μm?約400μmであってよい。」と記載されるのみであり、明細書の記載から、本願発明が出願当初から「40μm?100μmの平均粒径」を採用することにより、上記意見書で主張するような作用効果を意図していたとは認められないから、上記請求人の主張は明細書の記載に基づくものではなく、相違点2に係る数値限定に格別の意味を認めることはできない。

(3)相違点3について
本願発明は、「種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの1つまたは複数の部分」のピーク粘度を「30ラピッドビスコ単位?3000ラピッドビスコ単位」としているが、「30ラピッドビスコ単位?3000ラピッドビスコ単位」の範囲自体、食品に用いる原材料のピーク粘度として、通常用いられるきわめて広い範囲を特定するものであり、明細書の記載を見ても、ピーク粘度を「30ラピッドビスコ単位?3000ラピッドビスコ単位」とするために格別な工程を採用しているとは認められない。
そうすると、本願発明のピーク粘度は、所定の平均粒径の種子を除去した乾燥コーヒーチェリーの1つまたは複数の部分のピーク粘度の測定値が、30ラピッドビスコ単位?3000ラピッドビスコ単位であったという結果を単に示す程度のものと認められる。そして、上記(1)、(2)で検討したように引用発明において、所定の平均粒径の種子から分離した急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーの果肉、粘質および/または殻皮を採用することは当業者が容易に想到し得たところ、そのピーク粘度を測定すれば、同様に30ラピッドビスコ単位?3000ラピッドビスコ単位という、通常用いられるきわめて広い範囲内の結果が得られることは普通に予測される。
また、作用効果についても、本願明細書にはピーク粘度を当該範囲に限定したことにより格別の作用効果を奏する旨の記載はないから、当該範囲の採用に格別な意味はなく、設計的事項の範囲の域を出るものとは認められない。
したがって、相違点3に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用例3に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

(4)相違点4について
上記(1)で指摘したように、引用例3には種子から分離した急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーの果肉、粘質および/または殻皮を食品添加剤として用いることが記載されており、当該種子から分離した急速乾燥亜成熟コーヒーチェリーの果肉、粘質および/または殻皮を引用発明の「破砕又はペースト状にした果実」の原材料として採用したものは、コーヒー豆は含まないものといえる。
よって、相違点4に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用例3に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

(5)相違点5について
引用例3には、上記第3の2.(1)で摘示したとおり、マイコトキシンレベルについて、総アフラトキシンを20ppb未満、総オクラトキシンを10ppb未満とすることが記載されており、総アフラトキシン及び総オクラトキシンのマイコトキシンレベルについては本願発明と一致している。
そして、総フモニシンについては5ppm未満であり本願発明より多く、また、総ボミトキシンについては特定されていない。
しかし、人体に害のあるマイコトキシンの食品への含有量については、格別の特定がなくとも極力少なくすることは当然のことであって、相違点5に係る各数値は、人体に害のある成分について、その含有量が少ないことをいうにすぎず、上限値を特定したことに格別の意味があるものとは認められないから、相違点5に係る数値の限定は設計的事項の域を出るものではない。
よって、相違点5に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用例3の記載事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

(6)作用効果について
相違点1?5を総合的に考慮しても、これら相違点に係る構成とすることに困難性は認められない。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明,引用例2及び引用例3に記載された事項並びに慣用技術から導き出せる範囲内の作用効果にすぎず、格別顕著なものということはできない。

3.小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明,引用例2及び引用例3に記載された事項並びに慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明(本願発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の拒絶理由及び他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-04 
結審通知日 2019-06-05 
審決日 2019-06-20 
出願番号 特願2016-500142(P2016-500142)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長部 喜幸田ノ上 拓自坂崎 恵美子  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 莊司 英史
井上 哲男
発明の名称 コーヒーチェリー副産物を含有する食品製品およびチョコレート組成物およびそれを形成する方法  
代理人 土屋 徹雄  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 江口 昭彦  
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