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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録(定型) A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録(定型) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録(定型) A63F
管理番号 1356562
審判番号 不服2018-3471  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-09 
確定日 2019-11-19 
事件の表示 特願2016-175085「ネットワークゲームシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-198662、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月30日に出願した特願2011-218579号の一部を平成26年6月27日に新たな特許出願とした特願2014-133415号の一部を平成28年9月7日に新たな特許出願としたものであって、平成29年7月6日付けで拒絶の理由(特許法第50条の2の通知を伴うもの)が通知され、同年9月19日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年11月24日付けで同年9月19日付けの手続補正が却下されると同時に、拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成30年3月9日付けで拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、平成30年12月14日付けで拒絶理由通知(以下、「第1回当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成31年2月18日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年4月26日付けで拒絶理由通知(最後)(以下、「第2回当審拒絶理由通知」という。)がされ、令和1年7月5日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がされたものである。


第2 令和1年7月5日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成31年2月18日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1及び2を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2へと補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
入力装置を備える複数のゲーム装置と、該ゲーム装置と通信ネットワークにより接続されるサーバ装置とを備え、入力装置を介して入力されたプレイヤの操作に従ってゲームが進行するネットワークゲームシステムであって、
サーバ装置が、
ゲーム装置毎に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を記憶するキャラクタ情報記憶手段と、
キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報のうち、送信先の他のゲーム装置に関連付けられたキャラクタのステータス情報に対応したステータス情報を有するキャラクタに関する任意のキャラクタ情報を他のゲーム装置に送信するキャラクタ情報送信手段と
を備え、
複数のゲーム装置が、
サーバ装置から受信したキャラクタ情報をゲーム内で利用する利用手段
を備える、ネットワークゲームシステム。
【請求項2】
入力装置を備える複数のゲーム装置と、該ゲーム装置と通信ネットワークにより接続されるサーバ装置とを備え、入力装置を介して入力されたプレイヤの操作に従ってゲームが進行するネットワークゲームシステムであって、
サーバ装置が、
ゲーム装置毎に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を記憶するキャラクタ情報記憶手段と、
キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報のうち、一のゲーム装置がサーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求してから所定の時間が経過した該ゲーム装置に対応するキャラクタ情報以外の任意のキャラクタ情報を他のゲーム装置に送信するキャラクタ情報送信手段と
を備え、
複数のゲーム装置が、
サーバ装置から受信したキャラクタ情報をゲーム内で利用する利用手段
を備える、ネットワークゲームシステム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
入力装置を備える複数のゲーム装置と、該ゲーム装置と通信ネットワークにより接続されるサーバ装置とを備え、入力装置を介して入力されたプレイヤの操作に従ってゲームが進行するネットワークゲームシステムであって、
サーバ装置が、
ゲーム装置毎に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を記憶するキャラクタ情報記憶手段と、
キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報のうち、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタに関するキャラクタ情報のなかから、任意のキャラクタ情報を自ゲーム装置に送信する第1キャラクタ情報送信手段と、
自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を、複数のゲーム装置のうち、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタを関連付けている他ゲーム装置に送信する第2キャラクタ情報送信手段と
を備え、
自ゲーム装置及び他ゲーム装置が、
サーバ装置から送信されたキャラクタ情報を受信するキャラクタ情報受信手段と、
サーバ装置から受信したキャラクタ情報をゲーム内で利用する利用手段
を備える、ネットワークゲームシステム。
【請求項2】
入力装置を備える複数のゲーム装置と、該ゲーム装置と通信ネットワークにより接続されるサーバ装置とを備え、入力装置を介して入力されたプレイヤの操作に従ってゲームが進行するネットワークゲームシステムであって、
サーバ装置が、
ゲーム装置毎に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を記憶するキャラクタ情報記憶手段と、
キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報のうち、自ゲーム装置とは異なる他ゲーム装置がサーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求してから所定の時間が経過した該他ゲーム装置に関連付けられたキャラクタ情報以外のキャラクタ情報のなかから、任意のキャラクタ情報を自ゲーム装置に送信する第1キャラクタ情報送信手段と、
自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を、複数のゲーム装置のうち、自ゲーム装置がサーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求してから所定の時間が経過していない場合に、サーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求した他ゲーム装置に送信する第2キャラクタ情報送信手段と
を備え、
自ゲーム装置及び他ゲーム装置が、
サーバ装置から送信されたキャラクタ情報を受信するキャラクタ情報受信手段と、
サーバ装置から受信したキャラクタ情報をゲーム内で利用する利用手段
を備える、ネットワークゲームシステム。」(下線は審決で付した。以下同じ。)

2 各補正事項について
本件補正により、本件補正後の請求項1は、本件補正前の「送信先の他のゲーム装置に関連付けられたキャラクタのステータス情報に対応したステータス情報を有するキャラクタに関する任意のキャラクタ情報を他のゲーム装置に送信するキャラクタ情報送信手段」に替えて、「自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタに関するキャラクタ情報のなかから、任意のキャラクタ情報を自ゲーム装置に送信する第1キャラクタ情報送信手段と、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を、複数のゲーム装置のうち、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタを関連付けている他ゲーム装置に送信する第2キャラクタ情報送信手段」との補正事項(以下「補正事項1」という。)、及び本件補正前の「複数のゲーム装置が、」に替えて、「自ゲーム装置及び他ゲーム装置が、サーバ装置から送信されたキャラクタ情報を受信するキャラクタ情報受信手段と、」を備えるとの補正事項(以下「補正事項2」という。)が追加された。
また、本件補正により、本件補正後の請求項2に、本件補正前の「一のゲーム装置がサーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求してから所定の時間が経過した該ゲーム装置に対応するキャラクタ情報以外の任意のキャラクタ情報を他のゲーム装置に送信するキャラクタ情報送信手段」に替えて、「自ゲーム装置とは異なる他ゲーム装置がサーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求してから所定の時間が経過した該他ゲーム装置に関連付けられたキャラクタ情報以外のキャラクタ情報のなかから、任意のキャラクタ情報を自ゲーム装置に送信する第1キャラクタ情報送信手段と、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を、複数のゲーム装置のうち、自ゲーム装置がサーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求してから所定の時間が経過していない場合に、サーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求した他ゲーム装置に送信する第2キャラクタ情報送信手段」との補正事項(以下「補正事項3」という。)、及び本件補正前の「複数のゲーム装置が、」に替えて、「自ゲーム装置及び他ゲーム装置が、サーバ装置から送信されたキャラクタ情報を受信するキャラクタ情報受信手段と、」を備えるとの補正事項(以下「補正事項4」という。)が追加された。

(1)補正事項1について
上記補正事項1は、本件補正前の請求項1の「ネットワークゲームステム」における「キャラクタ情報送信手段」に関して、「自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタに関するキャラクタ情報のなかから、任意のキャラクタ情報を自ゲーム装置に送信する第1キャラクタ情報送信手段と、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を、複数のゲーム装置のうち、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタを関連付けている他ゲーム装置に送信する第2キャラクタ情報送信手段」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項1は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

(2)補正事項2について
上記補正事項2は、本件補正前の請求項1の「ネットワークゲームステム」における「ゲーム装置」に関して、「自ゲーム装置及び他ゲーム装置が、サーバ装置から送信されたキャラクタ情報を受信するキャラクタ情報受信手段と、」を備えると、具体的に特定したものであるから、上記補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項2は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

(3)補正事項3について
上記補正事項3は、本件補正前の請求項2の「ネットワークゲームステム」における「キャラクタ情報送信手段」に関して、「自ゲーム装置とは異なる他ゲーム装置がサーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求してから所定の時間が経過した該他ゲーム装置に関連付けられたキャラクタ情報以外のキャラクタ情報のなかから、任意のキャラクタ情報を自ゲーム装置に送信する第1キャラクタ情報送信手段と、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を、複数のゲーム装置のうち、自ゲーム装置がサーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求してから所定の時間が経過していない場合に、サーバ装置に対してキャラクタ情報の送信を要求した他ゲーム装置に送信する第2キャラクタ情報送信手段」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項3は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項3は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

(4)補正事項4について
上記補正事項2は、本件補正前の請求項1の「ネットワークゲームステム」における「ゲーム装置」に関して、「自ゲーム装置及び他ゲーム装置が、サーバ装置から送信されたキャラクタ情報を受信するキャラクタ情報受信手段と、」を備えると、具体的に特定したものであるから、上記補正事項4は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項4は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、令和1年7月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲の【請求項1】」に記載したとおりのものと認める。

(2)明確性要件について
ア 「任意の」について
本件補正発明には、「キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報のうち、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタに関するキャラクタ情報のなかから、任意のキャラクタ情報を自ゲーム装置に送信する第1キャラクタ情報送信手段」と記載されている。
そして、上記記載からすると、自ゲーム装置に送信されるキャラクタ情報は、キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報のうち、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有する任意のものが送信されるものと解される。
ここで、キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報には、‘自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタのキャラクタ情報’も記憶されており、‘自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタのキャラクタ情報’は、「自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有する」「キャラクタ情報」であることは明らかであるから、結局のところ、自ゲーム装置に送信されるキャラクタ情報には、‘自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタのキャラクタ情報’も包含されることとなる。
そうすると、そもそも自ゲーム装置のキャラクタ情報である‘自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタのキャラクタ情報’を自ゲーム装置に送信することとなり、技術的にどのようなことを特定しようとするのかが不明である。

請求人は、『自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタに関するキャラクタ情報』から選択されるという意味で「任意」であることが明らかになっている、旨主張するが、上記のとおり、自ゲーム装置に送信されるキャラクタ情報に‘自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタのキャラクタ情報’が包含されている以上、上記特定事項の「任意のキャラクタ情報」の技術的範囲は、依然として不明確であるといわざるを得ない。

イ 「対応した」について
本件補正により請求項1の「ステータス情報に対応したステータス情報」は、「キャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベル」へと補正された。
しかし、「ステータス情報」を「キャラクタの属性又はレベル」と補正したとしても、そもそも「対応した」とは、「両者の関係がつりあうこと」以外に多様な意味を含むものであるから、「キャラクタの属性又はレベル」がどのような関係であるのか、依然として明らかでないし、ましてや、「同じ属性」や「同程度のレベル」を意味するものとは解し得ない。
また、「対応した」を、「両者の関係がつりあうこと」と解したとしても、請求項1に係る発明が、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタのキャラクタ情報と他ゲーム装置に関連付けられたキャラクタのキャラクタ情報とを交換することを前提としているものではないから、「キャラクタの属性又はレベル」がどのような関係であるのか、依然として明らかでない。

ウ 小括
よって、本願補正発明は、特許法第36条第6項第2号で規定される要件を満たすものではないから、特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ない。

(3)サポート要件について
ア 本願補正発明が解決しようとする課題について
本願明細書の発明の詳細な説明の【0006】及び【0007】によると、本願補正発明の解決しようとする課題は、「ネットワークゲームにおけるプレイヤ間のデータの交換に偶然性、予測不能性を取り入れ、あたかも仮想世界内で偶然にすれちがってデータを交換したかのような感覚をプレイヤに与えることのできる、より趣向性の高いネットワークゲームシステムを提供すること」であると認められる。

イ 本願補正発明が解決しようとする課題を解決するための手段について
本願明細書の発明の詳細な説明には、【課題を解決するための手段】として、「【0008】 本発明は、入力装置を備える複数のゲーム装置と、該ゲーム装置と通信ネットワークにより接続されるサーバ装置とを備え、入力装置を介して入力されたプレイヤの操作に従ってゲームが進行するネットワークゲームシステムであって、ゲーム装置毎に少なくとも1つのキャラクタが割り当てられており、ゲーム装置が、他のプレイヤが操作する他のゲーム装置とのデータ交換を実行するためのデータ交換要求をサーバ装置に送信するデータ交換要求送信手段と、ゲーム装置毎に割り当てられたキャラクタに関するキャラクタ情報を記憶するキャラクタ情報記憶手段と、キャラクタ情報記憶手段により記憶されたキャラクタ情報をサーバ装置に送信するキャラクタ情報送信手段とを備え、サーバ装置が、ゲーム装置からデータ交換要求を受信するデータ交換要求受信手段と、ゲーム装置からキャラクタ情報を受信するキャラクタ情報受信手段と、キャラクタ情報受信手段により受信したキャラクタ情報を記憶する受信キャラクタ情報記憶手段と、受信キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報のうち、他のゲーム装置に割り当てられた、少なくとも1つの他のキャラクタに関する他のキャラクタ情報を特定する他キャラクタ情報特定手段と、他キャラクタ情報特定手段により特定された他のキャラクタ情報をゲーム装置に送信する他キャラクタ情報送信手段とを備え、ゲーム装置が、サーバ装置から他のキャラクタ情報を受信する他キャラクタ情報受信手段と、他キャラクタ情報受信手段により受信した他のキャラクタ情報を記憶する他キャラクタ情報記憶手段とを備えることを特徴とするネットワークゲームシステムに関する。 【0009】 プレイヤがゲーム装置を操作することでデータ交換要求を行うと、データ交換要求と共に、ゲーム装置に割り当てられたキャラクタに関するキャラクタ情報がサーバ装置に送信され、サーバ装置では複数のゲーム装置から受信したキャラクタ情報が蓄積される。そして、サーバ装置に蓄積された複数のキャラクタ情報から、他のゲーム装置に対応する他のキャラクタ情報のいずれかが特定され、ゲーム装置に送信される。このため、ネットワークゲームにおいて、プレイヤ間のデータの交換に偶然性、予測不能性を取り入れて、趣向性を高めることが可能となる。」と記載されている。

以上の記載からすると、本願補正発明の「従来、ネットワークゲームでは、プレイヤ間、或いは、キャラクタ間でデータ交換をするにあたって、偶然性や予測不能性を有するものではなかった」との課題を解決するためには、「第一のゲーム装置と第二のゲーム装置の間で、お互いのゲーム装置に対応する(同じ属性や同程度のレベルの)キャラクタ情報が相互にデータ交換されること」が特定されることが必要であると当業者は認識し得ると認められる。
これに対して、本願補正発明は、「サーバ装置」が「キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報のうち、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタに関するキャラクタ情報のなかから、任意のキャラクタ情報を自ゲーム装置に送信する第1キャラクタ情報送信手段」と、「自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を、複数のゲーム装置のうち、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタを関連付けている他ゲーム装置に送信する第2キャラクタ情報送信手段」とを備え、「自ゲーム装置及び他ゲーム装置」が、「サーバ装置から送信されたキャラクタ情報を受信するキャラクタ情報受信手段」とを備えることまでは特定されているが、そもそも本願補正発明の前提条件である、「自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報」と「他ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報」とを「相互にデータ交換されること」が特定されていない。
そうすると、本願補正発明は、上記特定を欠くものであるから、上記本願補正発明の解決しようとする課題を解決することができるとは、当業者は認識することができない。
したがって、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が、上記本願補正発明の解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、当業者が出願時の技術常識に照らして、上記本願補正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえないので、本願補正発明は、サポート要件に適合するとはいえない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、「本願請求項1及び2は、「サーバ装置が、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を記憶し、記憶されたキャラクタ情報を他ゲーム装置に送信する」こと、「サーバ装置が、他ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を記憶し、記憶されたキャラクタ情報を自ゲーム装置に送信する」こと、及び、「自ゲーム装置及び他ゲーム装置が、サーバ装置からゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を受信する」ことを発明の構成要件として有するものです。その結果、自ゲーム装置に対応するキャラクタ情報が、他のゲーム装置にて受信され、一方で、他のゲーム装置に対応するキャラクタ情報が、自ゲーム装置にて受信されることとなります。その結果、自ゲーム装置を操作するプレイヤは、あたかも仮想世界内で偶然にすれちがってデータを交換したかのような感覚を覚えることができます。よって、補正後の本願請求項1及び2に係る発明は、本願明細書[0007]に記載の課題を解決する手段が記載されているものであると言えます。」旨、主張する。
しかし、上記イのとおり、本願補正発明には、自ゲーム装置と他ゲーム装置との間で、キャラクタ情報を「相互にデータ交換されること」までは特定されておらず、必ずしも、キャラクタ情報が「交換」できるとは限らないのであるから、本願補正発明は、上記本願補正発明の解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。

エ 小括
よって、本願補正発明は、特許法第36条第6項第1号で規定される要件を満たすものではないから、特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ない。

(4)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成31年2月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
入力装置を備える複数のゲーム装置と、該ゲーム装置と通信ネットワークにより接続されるサーバ装置とを備え、入力装置を介して入力されたプレイヤの操作に従ってゲームが進行するネットワークゲームシステムであって、
サーバ装置が、
ゲーム装置毎に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を記憶するキャラクタ情報記憶手段と、
キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報のうち、送信先の他のゲーム装置に関連付けられたキャラクタのステータス情報に対応したステータス情報を有するキャラクタに関する任意のキャラクタ情報を他のゲーム装置に送信するキャラクタ情報送信手段と
を備え、
複数のゲーム装置が、
サーバ装置から受信したキャラクタ情報をゲーム内で利用する利用手段
を備える、ネットワークゲームシステム。」(以下「本願発明」という。)

2 「第2回当審拒絶理由通知」の概要
(ア)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(イ)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(ア)について
本願発明が解決しようとする課題は、当初明細書に記載の「本発明は、ネットワークゲームにおけるプレイヤ間のデータの交換に偶然性、予測不能性を取り入れ、あたかも仮想世界内で偶然にすれちがってデータを交換したかのような感覚をプレイヤに与えることのできる、より趣向性の高いネットワークゲームシステムを提供することを目的とする。」(【0007】参照。)であって、その前提技術となるものは、「複数のゲーム装置とサーバ装置とを備え、プレイヤの操作に従ってゲームが進行するネットワークゲームを実行するものであって、ゲーム装置間でのデータの交換が可能なネットワークゲームシステム」(【0001】参照。)であると認められる。
そうすると、上記前提技術及び複数のゲーム装置間でデータを交換することさえ特定されていない請求項1及び2に係る発明は、上記課題を解決する手段が記載されているものとは認められない。
また、同じ属性や同程度のレベルを有するキャラクタ間でデータを交換することが特定されていない請求項1及び2に係る発明では、「より趣向性を高める」(【0007】及び【0049】参照。)という課題を解決する手段が記載されているものとは認められない。

(イ)について
ア 請求項1及び2の「キャラクタに関する任意のキャラクタ情報」において、「任意のキャラクタ情報」とは、どのような意味で「任意」なのか、発明の詳細な説明(例えば、【0044】には「自らのキャラクタ以外の他のキャラクタに関する他のキャラクタ情報が任意に特定される」と記載され、自らのキャラクタ以外のものを「任意」としているのに対し、【0048】には「キャラクタ管理テーブル40に記憶されたキャラクタ情報から任意に特定される」と記載され、キャラクタ管理テーブル40に記憶されたキャラクタ情報のいずれかを任意としている。)を参酌しても定かでない。
イ 請求項1の「ステータス情報対応したステータス情報」における「対応した」及び請求項2の「ゲーム装置に対応するキャラクタ情報」における「対応する」との事項の意味が定かでない。
辞書の意味からすると、「両者の関係がつり合う」と解し得るが、請求項1及び2に係る発明において、ステータス情報がつり合うと解しても、どの様な意味なのか定かでない。
(「対応したステータス情報」及び「対応するキャラクタ情報」が「同じ属性」や「同程度のレベル」(【0049】参照。)と補正されるのであれば、この限りではない。)

3 明確性要件について
本願発明は、実質的に、上記「第2 3 (1)独立特許要件について」で検討した本願補正発明の「自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタに関するキャラクタ情報のなかから、任意のキャラクタ情報を自ゲーム装置に送信する第1キャラクタ情報送信手段と、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタに関するキャラクタ情報を、複数のゲーム装置のうち、自ゲーム装置に関連付けられたキャラクタの属性又はレベルに対応した属性又はレベルを有するキャラクタを関連付けている他ゲーム装置に送信する第2キャラクタ情報送信手段」との限定を省き、「キャラクタ情報記憶手段により記憶された複数のキャラクタ情報のうち、送信先の他のゲーム装置に関連付けられたキャラクタのステータス情報に対応したステータス情報を有するキャラクタに関する任意のキャラクタ情報を他のゲーム装置に送信するキャラクタ情報送信手段」とし、「自ゲーム装置及び他ゲーム装置が、サーバ装置から送信されたキャラクタ情報を受信するキャラクタ情報受信手段と、」との限定を省くものである。

そうすると、本願発明は、上記「第2 3 (2)明確性要件」で検討した「ア 「任意の」について」及び「イ 「対応した」について」の記載不備を有することは明らかである。
そして、上記「第2 3 (3) (2)明確性要件について ア及びイ」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、特許法第36条第6項第2号で規定する要件を満たすものではない。

4 サポート要件について
本願発明は、上記のとおりであるから、本願発明は、上記「第2 3 (3)サポート要件について」で検討した記載不備を有することは明らかである。
そして、上記「第2 3 (3) (3)サポート要件について」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、特許法第36条第6項第1号で規定する要件を満たすものではない。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定により特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-06 
出願番号 特願2016-175085(P2016-175085)
審決分類 P 1 8・ 537- WYF (A63F)
P 1 8・ 121- WYF (A63F)
P 1 8・ 575- WYF (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 喜々津 徳胤鈴木 崇雅  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 吉村 尚
藤本 義仁
発明の名称 ネットワークゲームシステム  
代理人 特許業務法人ライトハウス国際特許事務所  

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