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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1356593 |
審判番号 | 不服2018-11911 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-09-05 |
確定日 | 2019-10-31 |
事件の表示 | 特願2014-184570「携帯端末および辞書登録プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日出願公開、特開2016- 57919〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年9月10日の出願であって、平成30年3月7日付けの拒絶理由通知が通知され、平成30年5月9日付けで意見書、手続補正書が提出されたが、平成30年5月22日付けで拒絶査定がなされた。 これに対して、平成30年9月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成30年9月5日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 平成30年9月5日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成30年5月9日付け手続補正書の特許請求の範囲 (1-1)「 【請求項1】 入力された文字列の変換を取り消す操作を受け付けた場合に、前記入力された文字列を記憶する記憶部と、 前記取り消す操作を受け付けた後に、少なくとも2回以上の文字列の表示を確定する操作を組み合わせた操作パターンのいずれかに該当する操作を受けつけた場合に、前記記憶された文字列を読みとして入力する文字列の入力領域に入力し、前記表示が確定された文字列を変換後の文字列の入力領域に入力した状態で辞書へ登録する登録画面を表示させる制御部と、 を有することを特徴とする電子機器。 【請求項2】 前記制御部は、前記取り消す操作を受け付けた後に、少なくとも2回以上の文字列の表示を確定する操作を組み合わせた操作パターンのいずれかに該当する操作を受けつけた場合に、前記登録画面を表示させるためのアイコン画像を表示させ、当該アイコン画像の操作に基づいて前記登録画面を表示させる ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。 【請求項3】 コンピュータに、 入力された文字列の変換を取り消す操作を受け付けた場合に、前記入力された文字列を記憶し、 前記取り消す操作を受け付けた後に、少なくとも2回以上の文字列の表示を確定する操作を組み合わせた操作パターンのいずれかに該当する操作を受けつけた場合に、前記記憶された文字列を読みとして入力する文字列の入力領域に入力し、前記表示が確定された文字列を変換後の文字列の入力領域に入力した状態で辞書へ登録する登録画面を表示させる 処理を実行させることを特徴とする辞書登録プログラム。 」 とあったものを (1-2)「 【請求項1】 画面を表示する表示部と、 前記表示部に表示される文字入力を行う入力画面において、入力された文字列の変換を取り消す操作を受け付けた場合に、前記入力された文字列を記憶する記憶部と、 前記取り消す操作を受け付けた後に、少なくとも2回以上の文字列の表示を確定する操作を組み合わせた操作パターンのいずれかに該当する操作を受けつけた場合に、前記表示部に表示させる画面を、前記入力画面から、前記記憶された文字列を読みとして入力する文字列の入力領域に入力し、前記表示が確定された文字列を変換後の文字列の入力領域に入力した状態で辞書へ登録する登録画面へ、切り替える制御を行う制御部と、 を有し、 前記操作パターンは所定のパターンに設定されることを特徴とする携帯端末。 【請求項2】 前記制御部は、前記取り消す操作を受け付けた後に、少なくとも2回以上の文字列の表示を確定する操作を組み合わせた操作パターンのいずれかに該当する操作を受けつけた場合に、前記登録画面を表示させるためのアイコン画像を表示させ、当該アイコン画像の操作に基づいて前記登録画面を表示させる ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。 【請求項3】 コンピュータに、 表示部に画面を表示させ、 前記表示部に表示される文字入力を行う入力画面において、入力された文字列の変換を取り消す操作を受け付けた場合に、前記入力された文字列を記憶し、 前記取り消す操作を受け付けた後に、少なくとも2回以上の文字列の表示を確定する操作を組み合わせた操作パターンのいずれかに該当する操作を受けつけた場合に、前記表示部に表示させる画面を、前記入力画面から、前記記憶された文字列を読みとして入力する文字列の入力領域に入力し、前記表示が確定された文字列を変換後の文字列の入力領域に入力した状態で辞書へ登録する登録画面へ、切り替える制御を行う 処理を実行させ、 前記操作パターンは所定のパターンに設定されることを特徴とする辞書登録プログラム」(下線は、補正箇所を表す。) と補正しようとするものである。 請求項3の「表示部に画面を表示させ、」、「前記表示部に表示される文字入力を行う入力画面において、」「前記表示部に表示させる画面を、前記入力画面から、・・・辞書へ登録する登録画面へ、切り替える制御を行う」とする補正は、本願明細書の段落0013、段落0019、段落0040、段落0044、図5等の記載に基づくものであるが、当該補正事項は、「入力画面」から「登録画面」への切り替えに関するものであって、平成30年5月9日付け手続補正書の請求項3に係る「辞書登録プログラム」の構成要素として記載された「辞書へ登録する登録画面」の表示制御に関して、新たな構成である「入力画面」を定義し、新たに「登録画面へ、切り替える制御を行う」という制御の構成を変更するものである。 そうすると、当該補正は限定的減縮、請求項の削除、不明瞭な記載の釈明、誤記の訂正のいずれにも該当しない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 仮に、本件補正が限定的減縮であると仮定して、本件補正後の前記請求項3に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすか)について以下に検討する。 (2)独立特許要件 ア.本件補正発明 本件補正発明は、上記(1-2)の請求項3に記載されたとおりのものである。 イ.引用例1 原査定の拒絶理由で引用文献1として引用された「井上健語 他,ATOK2009のすべて,日本,株式会社ジャストシステム,2009年 2月 6日,初版第1刷,53頁」(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「(1)「たかき」と入力して変換しましたが、希望する「剛規」の変換候補はありませんでした。Escキーを押して入力を取り消します。 (2)「つよし」と入力して「剛」に変換・確定します。 (3)「きそく」と入力して「規則」に変換・確定します。 (4)back Spaceキーを押して「則」を削除します。 (5)「「たかき」から【剛規】に変換されるようにしますか?」とツールチップが表示されます。 (6)Shift+Enterキーを押します。「剛規」が確定され、同時に辞書に登録されます。以降、「たかき」という読みでspaceキーを押して「剛規」に変換できます。 (下線は、当審による。) 引用文献1において、「ATOK2009」はコンピュータのプログラムである。 以上の記載事項及び引用文献1において、「ATOK2009」はコンピュータのプログラムであるから、引用例1には 「コンピュータに 「たかき」と入力し、変換したが変換候補がないため入力を取消し、 「つよし」と入力して「剛」に変換・確定、 「きそく」と入力して「規則」に変換・確定、「則」を削除し、 「「たかき」から【剛規】に変換されるようにしますか?」とツールチップを表示し、 Shift+Enterキーを押し、「剛規」が確定されて、同時に辞書登録するプログラム」の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。 ウ.対比、判断 (ア)そこで、本件補正発明と引用例1発明を対比する。 引用例1発明の「「たかき」と入力し、変換したが変換候補がないため入力を取消し」で、コンピュータは、ツールチップで「「たかき」から【剛規】に変換されるようにしますか?」と表示していることから、「たかき」と入力された文字列は、コンピュータに記憶されていることは明らかである。また、「たかき」の入力はコンピュータの表示部に表示された入力画面で行われていることは明らかであるから、引用文献1発明は、本件補正発明の「コンピュータに、 表示部に画面を表示させ、 前記表示部に表示される文字入力を行う入力画面において、入力された文字列の変換を取り消す操作を受け付けた場合に、前記入力された文字列を記憶」する構成を含んでいる。 引用例1発明の「「つよし」と入力して「剛」に変換・確定、「きそく」と入力して「規則」に変換・確定、「則」を削除し」は、2回の確定操作を組み合わせたものであり、本件特許出願の図5におけるパターン2に相当するものである。本件補正発明の「少なくとも2回以上の文字列の表示を確定する操作を組み合わせた操作パターンのいずれかに該当する操作を受けつけた場合」との記載における「少なくとも」は、「2回以上」または「受けつけた」を修飾しているものと解されるところ、どちらの修飾をとったとしても、引用文献1発明は、本件補正発明の「前記取り消す操作を受け付けた後に、少なくとも2回以上の文字列の表示を確定する操作を組み合わせた操作パターンのいずれかに該当する操作を受けつけた場合」に相当する構成を含んでいる。 引用例1発明の「Shift+Enterキーを押します。「剛規」が確定されて、同時に辞書に登録されます。以降、「たかき」という読みでspaceキーを押して「剛規」に変換できます。」は、取り消した文字列に対して、表示が確定された文字列を辞書登録する制御処理であるから、本件補正発明の「前記記憶された文字列を読みとして入力する文字列の入力領域に入力し、前記表示が確定された文字列を変換後の文字列の入力領域に入力した状態で辞書へ登録する」「制御を行う」構成を含んでいる。 引用例1発明の「「つよし」と入力して「剛」に変換・確定、「きそく」と入力して「規則」に変換・確定、「則」を削除し、」は、前記図5のパターン2に対応することから、本件補正発明の「前記操作パターンは所定のパターンに設定され」る構成を含んでいる。 引用例1発明の「辞書登録するプログラム」は、本件補正発明の「辞書登録プログラム」に相当する。 (イ)したがって、両発明の一致点、相違点は以下の通りである。 〈一致点〉 「 コンピュータに、 表示部に画面を表示させ、 前記表示部に表示される文字入力を行う入力画面において、入力された文字列の変換を取り消す操作を受け付けた場合に、前記入力された文字列を記憶し、 前記取り消す操作を受け付けた後に、少なくとも2回以上の文字列の表示を確定する操作を組み合わせた操作パターンのいずれかに該当する操作を受けつけた場合に、前記記憶された文字列を読みとして入力する文字列の入力領域に入力し、前記表示が確定された文字列を変換後の文字列の入力領域に入力した状態で辞書へ登録する制御を行う 処理を実行させ、 前記操作パターンは所定のパターンに設定される辞書登録プログラム。」 〈相違点〉 本件補正発明では、「表示部に表示させる画面を、入力画面から登録画面へ切り替えている」のに対して、引用例1発明では、「ツールチップ」を表示していて、画面の切り替えを行っていない点。 (ウ)相違点について 引用例1発明のツールチップは、辞書に対して単語を登録するための操作を説明するものであると同時に、変換前の文字列に対して、変換の内容を表示するものである。本件補正発明の「単語登録画面」も、文字列である単語の読み、変換後の単語を表示するものである。 そうすると、操作において差異はあるものの、引用例1発明におけるツールチップと登録画面とは機能的にみて差異はない。 そして、登録画面を表示部全体に表示すること及び表示部の一部に表示することはいずれも常套的に行われている事項であって、そのいずれにするかは、単なる設計事項であり、画面を切り替えて見せるようにすることに技術的な困難性は認められないし、そのために格別な処理が行われているとも認められない。 してみると、引用例1発明の「ツールチップ」に替えて「表示部に表示させる画面を、入力画面から登録画面へ切り替えている」構成とすることは、当業者が容易になしえることである。 そして、上記相違点を総合的に判断しても、本件補正発明が奏する効果は引用例1発明、引用例1の記載事項から当業者が十分予測できたものであって格別なものとはいえない。 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成30年9月5日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項3に係る発明は、平成30年5月9日付け手続補正書の特許請求の範囲請求項3に記載された発明(以下、「本願発明」という。)であって、前記第2 (1)の(1-1)に記載したとおりのものである。 2.原査定の拒絶理由 原査定の理由は、この出願の請求項3に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という ものである。 引用文献1:井上健語 他,ATOK2009のすべて,日本,株式会社ジャストシステム,2009年 2月 6日,初版第1刷,53頁 3.引用文献 原査定の拒絶理由に引用される引用文献、およびその記載事項は、前記第2 (2)イ.に記載したとおりのものである。 4.対比、判断 本願発明は、本件補正発明から、「表示部に表示する画面」を「入力画面」から「登録画面に切り替える」とする補正、「操作パターンが所定のパターンに設定される」とする補正を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「第2 (2)」に記載したとおり、引用例1発明、引用例1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明、引用例1の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は引用例1発明、引用例1の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-08-27 |
結審通知日 | 2019-09-03 |
審決日 | 2019-09-18 |
出願番号 | 特願2014-184570(P2014-184570) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 成瀬 博之 |
特許庁審判長 |
佐藤 聡史 |
特許庁審判官 |
石川 正二 田中 秀樹 |
発明の名称 | 携帯端末および辞書登録プログラム |
代理人 | 大竹 裕明 |
代理人 | 高田 大輔 |
代理人 | 平川 明 |