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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1356606
審判番号 不服2019-4274  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-02 
確定日 2019-10-31 
事件の表示 特願2016-57480号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年9月28日出願公開、特開2017-169698号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成28年3月22日の出願であって、平成30年1月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月9日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年10月18日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月21日付け(発送日:平成31年1月8日)で、平成30年10月18日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成31年4月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成31年4月2日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?2のうち、請求項1を補正する内容を含むものであり、本件補正により、平成30年3月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
遊技球を検知する始動入賞検知手段による球検知を契機として当り判定する当り判定手段と、遊技球が入賞可能な特別入賞口を開閉する開閉手段を有する特別入賞部とを備え、前記当り判定手段が当りと判定した場合には、前記開閉手段が前記特別入賞口を開放する当り遊技を実行するよう構成された遊技機において、
前記特別入賞口に入賞した遊技球を検知する特別入賞検知手段と、
画像を表示可能な表示手段とを備え、
前記始動入賞検知手段が球検知した際に第1エラー条件が満たされる第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を前記表示手段において実行すると共に、前記特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を前記表示手段において実行し、前記始動入賞検知手段および特別入賞検知手段から信号を受信できない第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され、
前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生した場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成されたことを特徴とする遊技機。」は、
審判請求時に提出された手続補正書(平成31年4月2日付け)における
「【請求項1】
遊技球を検知する始動入賞検知手段による球検知を契機として当り判定する当り判定手段と、遊技球が入賞可能な特別入賞口を開閉する開閉手段を有する特別入賞部とを備え、前記当り判定手段が当りと判定した場合には、駆動手段の作動により前記開閉手段が前記特別入賞口を開放する複数回のラウンド遊技と、前記駆動手段が非作動となるラウンド遊技間インターバル時間とを含む当り遊技を実行するよう構成された遊技機において、
前記特別入賞口に入賞した遊技球を検知する特別入賞検知手段と、
画像を表示可能な表示手段とを備え、
前記始動入賞検知手段が球検知した際に第1エラー条件が満たされる第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を前記表示手段において実行すると共に、前記ラウンド遊技間インターバル時間を含む前記駆動手段の非作動中に前記特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を前記表示手段において実行し、前記始動入賞検知手段および特別入賞検知手段から信号を受信できない第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され、
前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生した場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成されたことを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

(2)補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「当り遊技」に関して、「前記当り判定手段が当りと判定した場合には、前記開閉手段が前記特別入賞口を開放する」とあったものを、「前記当り判定手段が当りと判定した場合には、駆動手段の作動により前記開閉手段が前記特別入賞口を開放する複数回のラウンド遊技と、前記駆動手段が非作動となるラウンド遊技間インターバル時間とを含む」と限定し、
同じく、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2エラー条件が満たされる第2エラー」に関して、「前記特別入賞検知手段が球検知した際に」「発生」するとあったものを「前記ラウンド遊技間インターバル時間を含む前記駆動手段の非作動中に前記特別入賞検知手段が球検知した際に」「発生」すると限定することを含むものである。
そして、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0027】、【0054】、【0103】等の記載からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Eは、分説するため当審にて付した。)。
「A 遊技球を検知する始動入賞検知手段による球検知を契機として当り判定する当り判定手段と、遊技球が入賞可能な特別入賞口を開閉する開閉手段を有する特別入賞部とを備え、前記当り判定手段が当りと判定した場合には、駆動手段の作動により前記開閉手段が前記特別入賞口を開放する複数回のラウンド遊技と、前記駆動手段が非作動となるラウンド遊技間インターバル時間とを含む当り遊技を実行するよう構成された遊技機において、
B 前記特別入賞口に入賞した遊技球を検知する特別入賞検知手段と、
C 画像を表示可能な表示手段とを備え、
D 前記始動入賞検知手段が球検知した際に第1エラー条件が満たされる第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を前記表示手段において実行すると共に、前記ラウンド遊技間インターバル時間を含む前記駆動手段の非作動中に前記特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を前記表示手段において実行し、前記始動入賞検知手段および特別入賞検知手段から信号を受信できない第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され、
E 前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生した場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成されたことを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献1
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-90820号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。

ア 記載事項
(ア)「【0038】
次に、図3を参照して、本実施形態のパチンコ遊技機の遊技盤について説明する。」

(イ)「【0049】
始動入賞装置38の下方には、第1大入賞装置39aが配置されている。第1大入賞装置39aには、前倒したとき遊技球が入球可能な開閉扉があり、本発明の「開閉手段」に相当する。
【0050】
詳細は後述するが、始動入賞装置38の右側には、第2大入賞装置39bが配置されている。大入賞装置39a、39bは、共に特別図柄の抽選に当選したとき、すなわち大当りしたことにより発生する特別遊技で所定時間開放される入賞装置である。遊技球が大入賞装置39a、39bの内部にある大入賞口(図示省略)に入賞することにより、多くの賞球を獲得することが可能となる。」

(ウ)「【0060】
主制御基板24は、その内部に、主制御基板側CPU241と、ROM242と、RAM243を備えている。主制御基板側CPU241は、いわゆるプロセッサ部であり、大当りを発生させるか否かの抽選処理、決定された変動パターンや停止図柄の情報から制御コマンドを作成し、演出制御基板25に送信する等の処理を行う。なお、CPU241は、本発明の「抽選手段」、「特別遊技制御手段」、「遊技状態制御手段」に相当する。
・・・
【0062】
主制御基板24には、始動入賞口センサ38c、大入賞口センサ39c、始動ゲート通過センサ40c、一般入賞口センサ42c、特定領域センサ56c、磁気センサ50、電波センサ51、振動センサ52が接続され、各検知信号を受信可能となっている。」

(エ)「【0076】
上記の構成により液晶制御基板26は、演出制御基板25から送信された液晶制御コマンドに基づき画像処理を行い、液晶表示装置36に演出画像や動画を表示している。」

(オ)「【0124】
次に、図6Bを参照して、アタッカと振分部の動作について説明する。
【0125】
まず、通常ラウンド(第6ラウンド以外)のアタッカ動作を説明する。具体的には、アタッカ1(第1大入賞装置39a)の開閉扉の動作であり、信号が「ON」であるとき開放状態、「OFF」であるとき閉鎖状態を意味する。
【0126】
上述の通り、通常ラウンドの開閉扉の作動時間は29.0秒であり、開閉扉の閉鎖後に1.98秒の残存球排出時間と0.02秒のラウンドインターバルを経て、次回ラウンドに進む。なお、通常ラウンドでは、振分部55は動作しない。」

(カ)「【0144】
次に、図7を参照して、特別ラウンド表示とV入賞表示について説明する。
【0145】
図7(a)の「特別ラウンド表示(遊技指示演出)」は、特別ラウンド(第6ラウンド)において、遊技球がV入賞する前の様子を示している。液晶表示装置36の表示領域上部にある表示領域60では、複数の「右打ち→」の文字が右方向にスクロールしている。特別遊技中は、遊技者が右打ちを行う必要があるので、これを指示する表示となっている。
【0146】
表示領域左上の表示領域63には、現在の大当りラウンド数が表示されるが、ここでは、「Round06」となる。一方、表示領域右上の表示領域64、65には、それぞれ獲得玉数(「00520玉」)と連荘回数(「01回目」)が表示される。
・・・
【0153】
これは、非確変図柄当りでのV入賞が不正により発生した可能性があることによる。このとき、図7(d)に示すような「V入賞表示(警告表示)」を出現させるようにしてもよい。ここでは、表示領域67に「Warning!!」の文字が表示された態様となっているが、異常の内容が明確である場合には、「エラー16」のように具体的に表示してもよい。」

(キ)「【0170】
次に、図9を参照して、本実施形態のパチンコ遊技機のエラー種類について説明する。パチンコ遊技機1には、以下で説明するもの以外にも多数のエラーが発生し得るが、ここでは説明を省略する。また、以下には、正確にはエラーとはいえないが、警告や報知を行う対象となるものが含まれる。
・・・
【0172】
パチンコ遊技機1では、主制御側のCPU241が始動入賞時に抽選用乱数を取得して当否判定を行っている。しかし、RAMクリアにより乱数カウンタを初期状態に戻し、大当り乱数を狙い撃ちする不正行為が行われることがある。このため、このような不正行為を防止すべく、電源投入時にRAMクリアスイッチ27が操作された場合にエラーとして報知することとしている。
・・・
【0175】
次に説明する(2)?(6)のエラーは、確変移行判定部54に関するものであり、優先順位の高いエラーとして定義されている。ここで、優先順位とは、パチンコ遊技機1に複数のエラーが同時に発生した場合に、報知が優先される順位である。
【0176】
(2)大入賞口2排出過多異常(エラー8)
「RAMクリア」の次に優先順位が高いエラーとして、「大入賞口2排出過多異常」がある。大入賞口2排出過多異常とは、アタッカ2の排出数が入賞数より多い場合(排出数>入賞数)に報知されるエラーである。これは、不正行為により特定領域センサ56cをオンした可能性があるため、エラーとして報知することとしている。
・・・
【0214】
(15)入賞異常(エラー10)
次に優先順位が高いエラーとして、「入賞異常」がある。入賞異常とは、例えば、第1大入賞装置39aの大入賞口センサ39cにより検知される異常である。大入賞口センサ39cに通常より大きな遊技球が挟まった状態となると、その期間、大入賞口センサ39cが遊技球の通過信号を出力し続けることがある。このため、異常として報知することとしている。
【0215】
入賞異常の報知としては、液晶表示装置36に「入賞口スイッチエラー」等の表示がなされるのみである。また、その報知は、演出制御基板25が主制御基板24から送信される入賞異常検知コマンドを受信したときに開始する。また、この報知は、報知開始から30秒が経過して、演出制御基板25が解除コマンドを受信するまで継続して行われる。」

(ク)「【0218】
(17)断線(エラー4)
次に優先順位が高いエラーとして、「断線」がある。断線とは、基板同士又は基板と各種センサを接続する配線(ハーネス)が断線したときに検知されるエラーである。例えば、始動入賞口センサ38cの配線が断線している場合、始動入賞信号の送信ができなくなるため、エラーとして報知することとしている。
【0219】
断線の報知としては、液晶表示装置36に「断線しています。」等の表示がなされるのみである。断線の報知は、演出制御基板25が主制御基板24から送信される補給切れ検知コマンドを受信した後に開始する。また、この報知は、ハーネスを交換する等して要因が解除されるまで、すなわち、演出制御基板25が解除コマンドを受信するまで継続して行われる。」

(ケ)「【0236】
詳細は後述するが、始動入賞口センサ38cが遊技球を検出すると、始動入賞口センサ38cは、球検出信号を主制御手段に送信し、主制御手段で特別図柄の抽選が行われる。
・・・
【0238】
最後に、ステップS60では、主制御手段は、特別電動役物管理処理を行う。これは、特別図柄の抽選結果により特別電動役物(大入賞装置39a、39b)の動作を制御する処理である。
【0239】
詳細は後述するが、特別図柄が当り態様で停止した場合には、いわゆる大当りとなり、所定ラウンド数の特別遊技が遊技者に付与される。後述するが、特別図柄管理処理(ステップS50)にて、特別図柄が外れ態様で停止した場合には、直ちに特別電動役物管理処理が終了となる。特別電動役物管理処理が終了すると、遊技管理処理も終了となる。」

(ケ)「【0289】
次に、図14を参照して、遊技管理処理の中で行われる特別電動役物管理処理について説明する。特別電動役物管理処理(図10:ステップS60)において、主制御手段は、後述する特別電動役物動作ステータス(大当り開始処理、特別電動役物作動開始処理、特別電動役物作動中処理、特別電動役物作動継続判定処理、大当り終了処理)を判定し、それぞれの処理を管理する。」

(コ)「【0309】
最後に、主制御手段は、大入賞口開閉動作設定処理を行う(ステップS127)。以下、図17を参照して、大入賞口開閉動作設定処理の詳細について説明する。
【0310】
まず、主制御手段は、大当り種別、ラウンド数、特別図柄役物作動タイマ、ソレノイド動作パターン(図6Bに示す動作)に基づいて、ソレノイドのON/OFFを設定する(ステップS131)。ここでいうソレノイドは、アタッカ1又はアタッカ2の開閉扉を駆動するソレノイドである。その後、ステップS132に進む。」

(サ)「【0322】
ステップS156の判定が「YES」である場合、主制御手段は、入賞数を1加算する(ステップS157)。すなわち、大入賞口センサ39cがアタッカ2の入賞数をカウントする処理となる。その後、ステップS158に進む。」

イ 認定事項
(シ)引用文献1には、【0145】に「液晶表示装置36の表示領域上部にある表示領域60では、複数の「右打ち→」の文字が右方向にスクロールしている。」と記載され、
【0146】に「表示領域左上の表示領域63には、現在の大当りラウンド数が表示される・・・表示領域右上の表示領域64、65には、それぞれ獲得玉数(「00520玉」)と連荘回数(「01回目」)が表示される。」と記載され、
【0153】に「表示領域67に「Warning!!」の文字が表示された態様となっているが、異常の内容が明確である場合には、「エラー16」のように具体的に表示してもよい。」と記載されている。
また、特別ラウンド表示とV入賞表示の具体例を示す【図7】(d)に、液晶表示装置36には、上部にある表示領域60、左上の表示領域63、及び、右上の表示領域64、65における所定の表示と並行して、表示領域67に文字による所定の表示を行うことが図示されている。
【図7】



したがって、引用文献1には、「液晶制御基板26によって、上部にある表示領域60、左上の表示領域63、右上の表示領域64、65における所定の表示と並行して、表示領域67に文字による異常の内容に関する所定の表示を行う表示器である液晶表示装置36」が示されているものと認められる。

(ス)引用文献1には、【0153】に「表示領域67に「Warning!!」の文字が表示された態様となっているが、異常の内容が明確である場合には、「エラー16」のように具体的に表示してもよい。」と記載され、【0218】に「断線(エラー4)・・・基板同士又は基板と各種センサを接続する配線(ハーネス)が断線したときに検知されるエラーである。」と記載され、「各種センサ」の例として、「始動入賞口センサ38c」が例示されている。
そして、【0062】の「主制御基板24には、始動入賞口センサ38c、大入賞口センサ39c、始動ゲート通過センサ40c、一般入賞口センサ42c、特定領域センサ56c、磁気センサ50、電波センサ51、振動センサ52が接続され、各検知信号を受信可能となっている。」との記載によると、「主制御基板24」には、「始動入賞口センサ38c」以外にも、「大入賞口センサ39c」が接続されるものである。
そうすると、引用文献1には、【0218】に記載されている「断線」として、「主制御基板24」と「始動入賞口センサ38c」との間で発生する断線以外にも、「主制御基板24」と「大入賞口センサ39c」との間で発生する断線もあることが示されている。
したがって、引用文献1には、「主制御基板24と各種センサ、例えば、始動入賞口センサ38c、大入賞口センサ39c等を接続する配線(ハーネス)の何れかの断線が検知される断線(エラー4)が発生したときに、「断線しています。」等の表示が液晶表示装置36の表示領域67になされる」ことが示されていると認められる。

(セ)エラーの種類を説明する図である【図9】には、「入賞異常(エラー10)の優先順位は「15」であり、断線(エラー4)の優先順位は「17」である」ことが示されていると認められる。


ウ 引用発明
上記アの記載事項、上記イの認定事項、及び、図面の図示内容を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?eは、本件補正発明のA?Eに対応させて付与した。)。
「a 始動入賞口センサ38c、大入賞口センサ39c、が接続され、各検知信号を受信可能となっている主制御基板24(【0062】)を備え、
主制御手段は、始動入賞口センサ38cが遊技球を検出すると、特別図柄の抽選を行い(【0236】)、
始動入賞装置38の下方に配置され、前倒したとき遊技球が入球可能な開閉扉を有し、内部に大入賞口を有する第1大入賞装置39a(【0049】?【0050】)を備え、
主制御手段は、遊技管理処理の中で行われる特別電動役物管理処理において、特別図柄の抽選結果が大当りとなった場合、大当り種別、ラウンド数、特別図柄役物作動タイマ、ソレノイド動作パターンに基づいて設定されるソレノイドのON/OFFにより、第1大入賞装置39aの開閉扉の動作を制御して、開閉扉の作動時間が29.0秒であり、開閉扉の閉鎖後に1.98秒の残存球排出時間と0.02秒のラウンドインターバルを経て、次回ラウンドに進む通常ラウンド(第6ラウンド以外)を含む所定ラウンド数の特別遊技を行う(【0049】、【0125】?【0126】、【0238】、【0239】、【0289】、【0310】)
パチンコ遊技機(【0038】)において、

b 大入賞口センサ39cは、第1大入賞装置39aの入賞数をカウントし(【0214】、【0322】)、

c 液晶制御基板26によって、上部にある表示領域60、左上の表示領域63、右上の表示領域64、65における所定の表示と並行して、表示領域67に文字による異常の内容に関する所定の表示を行う表示器である液晶表示装置36(認定事項(シ))と、

d 例えば、第1大入賞装置39aの大入賞口センサ39cにより検知される異常である入賞異常(エラー10)が発生すると、「入賞口スイッチエラー」等の表示が液晶表示装置36の表示領域67になされ(【0214】?【0215】)、
主制御基板24と各種センサ、例えば、始動入賞口センサ38c、大入賞口センサ39c等を接続する配線(ハーネス)の何れかの断線が検知される断線(エラー4)が発生したときに、「断線しています。」等の表示が液晶表示装置36の表示領域67になされ(認定事項(ス))、

e 複数のエラーが同時に発生した場合に優先順位にしたがって報知されるエラーの種類が決定され、断線(エラー4)は優先順位が17であり、入賞異常(エラー10)は優先順位が15であるパチンコ遊技機(【0170】、【0175】、認定事項(セ))。」

(3)引用文献2
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-22220号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。

ア 記載事項
(ア)「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る遊技機の好ましい実施形態について詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態では、本発明に係る弾球遊技機として、パチンコ遊技機を例にとって説明する。」

(イ)「【0064】
この「大当り」となった場合には、特別変動入賞装置52の大入賞口ソレノイド52c(図3参照)が作動して開放扉52bが開放動作を行い、これにより大入賞口50が所定のパターンで開閉制御されて、通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態(大当り遊技)が発生する。・・・」

(ウ)「【0091】
(4-2.当り遊技)
次に、上記した各当りによる当り遊技について説明する。
【0092】
(4-2-1.15R長開放確変大当りによる当り遊技)
15R長開放確変大当りによる当り遊技(以下、「15R確変大当り遊技」と称する)は、規定ラウンド数を15ラウンドとする大当りであり、本実施形態では、1回のラウンド遊技における大入賞口50の最大開放時間が「長開放時間」の‘29.8秒’に設定される。ここで「長開放時間」とは、その時間内に大入賞口への入賞数が上記最大入賞数(たとえば、9個)に達する可能性がある(最大入賞数に達する可能性が十分ある)時間幅として定めたものである。
【0093】
ラウンド遊技が開始されて大入賞口50が開放された後、上記の最大開放時間が経過した場合は大入賞口50が閉鎖されて今回のラウンド遊技が終了し、規定ラウンド数の15ラウンドに達していなければ、所定時間(ラウンド間インターバル時間)が経過した後、次のラウンド遊技に移行される。ただし、最大開放時間経過前であっても大入賞口50に入賞した遊技球数(入賞球数)が最大入賞数(たとえば、9個)に達した場合は、大入賞口50が閉鎖されて今回のラウンド遊技が終了し、所定時間(ラウンド間インターバル時間)が経過した後、次のラウンド遊技に移行される。つまり、大入賞口の最大開放時間が経過した場合か、または大入賞口に入賞した遊技球数が最大入賞数に達した場合かのいずれか一方の条件を満たすと、開放された大入賞口が閉鎖され、所定のインターバル時間を挟んで、次のラウンド遊技に移行されるようになっている(後述の10R長開放確変大当りによる当り遊技、2R短開放潜確大当りによる当り遊技についても同様)。なお、ラウンド遊技間における上記「ラウンド間インターバル時間」は、「残存球排出時間」と、この残存球排出時間が経過してから次のラウンド遊技が開始されるまでの「開放前インターバル時間」とからなる。上記「残存球排出時間」とは、大入賞口の閉鎖後における大入賞口内部の残存球を排出するための余裕時間(たとえば、1980ms)を指し、その時間幅として、大入賞口が閉鎖される直前に入賞した遊技球が大入賞口内部に形成された入賞検出スイッチ(大入賞口センサ52a)を通過するまでに要する十分な時間が確保されている。また「開放前インターバル時間」とは、上述の残存球排出時間が経過して大入賞口内の残存球が排出されたものとみなされた後、次のラウンド遊技における大入賞口が開放されるまでの時間幅(たとえば、20ms)を指す。この開放前インターバル時間中に大入賞口センサ52aが遊技球を検出しても、その遊技球は無効なものとして扱われるようになっている。」

(エ)「【0156】
<7.主制御側タイマ割込処理:図8>
次に図8を参照して、主制御側のタイマ割込処理について説明する。図8は、主制御側タイマ割込処理を示すフローチャートである。この主制御側タイマ割込処理は、CTCからの一定時間(4ms程度)ごとの割込みで起動され、主制御側メイン処理実行中に割り込んで実行される。以下では説明の便宜上、CPU201がRAMやROMなどのメインメモリを読み書きする際のアドレス値(そのアドレスに記述されているデータ類を含む)やプログラム上の演算処理により得られた結果情報などを、CPU内蔵のレジスタ内に読み込んだり取り込んだりするなどの処理を「取得」と称し、またCPU201がRAMのワーク領域にアクセスして、所定のデータを記憶させることを「格納」と称する場合がある。
・・・
【0159】
次いで、入力管理処理を行う(ステップS53)。この入力管理処理では、パチンコ遊技機1に設けられた各種センサによる検出情報を入賞カウンタに格納する。ここでの各種センサによる検出情報とは、たとえば、上始動口センサ34a、下始動口センサ35a、普通図柄始動口センサ37a、大入賞口センサ52a、一般入賞口センサ43aなどの入賞検出スイッチから出力されるスイッチ信号のON/OFF情報(入賞検出情報)である。これにより、各入賞口において入賞を検出(入賞が発生)したか否かが割込みごとに監視される。また上記「入賞カウンタ」とは、各々の入賞口ごとに対応して設けられ、入賞した遊技球数(入賞球数)を計数するカウンタである。本実施形態では、RAM203の所定領域に、上始動口34用の上始動口入賞カウンタ、下始動口35用の下始動口入賞カウンタ、普通図柄始動口37用の普通図柄始動口入賞カウンタ、大入賞口50大入賞口50用の大入賞口入賞カウンタ、一般入賞口43用の一般入賞口用の入賞カウンタなどが設けられている。またこの入力管理処理では、入賞検出スイッチからの検出情報が入賞を許容すべき期間中に入賞したか否かに基づいて、不正入賞があったか否かも監視される。たとえば、可動翼片47が作動中でないにもかかわらず下始動口センサ35aが遊技球を検出したり、大当り遊技中でないにもかかわらず大入賞口センサ52aが遊技球を検出したりした場合は、これを不正入賞とみなして入賞検出情報を無効化し、その無効化した旨を外部に報知するべく後述のエラー管理処理(ステップS55)において所定のエラー処理が行われるようになっている。
・・・
【0161】
次いで、遊技動作状態の異常の有無を監視するエラー管理処理を行う(ステップS55)。このエラー管理処理では、遊技動作状態の異常として、たとえば、基板間に断線が生じたか否かを監視したり、不正入賞があったか否かを監視したりしたりして、これらの動作異常(エラー)が発生した場合には、そのエラーに対応した所定のエラー処理を行う。エラー処理としては、たとえば、所定の遊技動作(たとえば、遊技球の払い出し動作や遊技球の発射動作など)の進行を停止させたり、エラー報知用コマンドを演出制御部24に送信して、演出手段によりエラーが発生した旨を報知させたりする。」

(オ)「【0445】
上記「特別電動役物作動フラグ」とは、特別変動入賞装置50が作動中か否かを確認するために利用されるフラグで、当該フラグがON状態(=5AH)である場合には、特別変動入賞装置50が作動中である旨を示し、当該フラグがOFF状態(=00H)である場合には、特別変動入賞装置50が未作動中である旨を示す。なおラウンド遊技間において特別電動役物作動フラグがON状態(=5AH)となる期間、つまり特別変動入賞装置が作動中とされる期間は、大入賞口が開放してからその大入賞口が閉鎖された後、残存球排出時間(第1の所定時間:1980ms)が経過するまでの期間となっている。他方、ラウンド遊技間において特別電動役物作動フラグがOFF状態(=00H)となる期間、つまり特別変動入賞装置が未作動中とされる期間は、上述の残存球排出時間(1980ms)が経過してから次のラウンド遊技が開始されるまでのインターバル時間(第2の所定時間:20ms)中の期間となっている。なお特別電動役物作動フラグがOFF状態(=00H)の期間中に大入賞口に入賞が発生した場合は、不正入賞とみなし、スピーカー46から警報音を鳴らすなどの所定のエラー処理(不正入賞検出エラー処理)が実行されるようになっている。」

イ 引用文献2に記載された技術事項
上記アの記載事項を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2に記載された技術事項」という)が記載されていると認められる(a、dは、本件補正発明のA、Dに対応させて付与した。)。
「a’「大当り」となった場合には、特別変動入賞装置52の大入賞口ソレノイド52cが作動して開放扉52bが開放動作を行い、これにより大入賞口50が所定のパターンで開閉制御されて、通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態(大当り遊技)が発生するパチンコ遊技機(【0014】、【0064】)において、
d’CPU201は、タイマ割込処理において、大当り遊技中でないにもかかわらず大入賞口センサ52aが遊技球を検出した場合や、「ラウンド間インターバル時間」から、「残存球排出時間」を除いた「開放前インターバル時間」(第2の所定時間:20ms)に大入賞口に入賞が発生した場合は、不正入賞とみなし、所定のエラー処理を実行するパチンコ遊技機(【0093】、【0156】、【0159】、【0445】)。」

(4)対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
(a)引用発明における「始動入賞口センサ38cが遊技球を検出すると、特別図柄の抽選を行」う「主制御手段」は、本件補正発明における「遊技球を検知する始動入賞検知手段による球検知を契機として当り判定する当り判定手段」としての機能を有する。

そして、引用発明における「大入賞口」は、本件補正発明における「遊技球が入賞可能な特別入賞口」に相当し、引用発明における「前倒したとき遊技球が入球可能な開閉扉」は、「大入賞装置39a」が「内部に大入賞口を有する」ことから、本件補正発明における「特別入賞口を開閉する開閉手段」に相当する。
そうすると、引用発明における「始動入賞装置38の下方に配置され、前倒したとき遊技球が入球可能な開閉扉を有し、内部に大入賞口を有する大入賞装置39a」は、本件補正発明における「遊技球が入賞可能な特別入賞口を開閉する開閉手段を有する特別入賞部」に相当する。

また、引用発明における「特別図柄の抽選結果が大当りとなった場合」、「第1大入賞装置39aの開閉扉の動作」が「大当り種別、ラウンド数、特別図柄役物作動タイマ、ソレノイド動作パターンに基づいて設定されるソレノイドのON/OFFによ」ることは、それぞれ、本件補正発明における「当り判定手段が当りと判定した場合」、「特別入賞口」の「開放」が「駆動手段の作動によ」ることに相当する。
そうすると、引用発明における「主制御手段は」「大当り種別、ラウンド数、特別図柄役物作動タイマ、ソレノイド動作パターンに基づいて設定されるソレノイドのON/OFFにより、第1大入賞装置39aの動作を制御し、開閉扉の作動時間が29.0秒であ」る「通常ラウンド(第6ラウンド以外)を含む所定ラウンド数の特別遊技を行う」ことは、「主制御手段」が、「内部に大入賞口を有する第1大入賞装置39a」によって、「第6ラウンド以外」の複数の「通常ラウンド」を含む「特別遊技を行う」ことであるから、本件補正発明における「駆動手段の作動により開閉手段が特別入賞口を開放する複数回のラウンド遊技」「を含む当り遊技を実行する」ことに相当し、同様に、引用発明における「大当り種別、ラウンド数、特別図柄役物作動タイマ、ソレノイド動作パターンに基づいて設定されるソレノイドのON/OFFにより」、「開閉扉の閉鎖後に1.98秒の残存球排出時間と0.02秒のラウンドインターバルを経て、次回ラウンドに進む通常ラウンドを含む所定ラウンド数の特別遊技を行う」ことは、本件補正発明における「駆動手段が非作動となるラウンド遊技間インターバル時間」「を含む当り遊技を実行する」ことに相当する。
ゆえに、引用発明における「主制御手段は、遊技管理処理の中で行われる特別電動役物管理処理において、特別図柄の抽選結果が大当りとなった場合、大当り種別、ラウンド数、特別図柄役物作動タイマ、ソレノイド動作パターンに基づいて設定されるソレノイドのON/OFFにより、第1大入賞装置39aの開閉扉の動作を制御して、開閉扉の作動時間が29.0秒であり、開閉扉の閉鎖後に1.98秒の残存球排出時間と0.02秒のラウンドインターバルを経て、次回ラウンドに進む通常ラウンド(第6ラウンド以外)を含む所定ラウンド数の特別遊技を行」うことは、本件補正発明における「当り判定手段が当りと判定した場合には、駆動手段の作動により開閉手段が特別入賞口を開放する複数回のラウンド遊技と、駆動手段が非作動となるラウンド遊技間インターバル時間とを含む当り遊技を実行する」ことに相当する。

よって、引用発明における構成aの「パチンコ遊技機」は、本件補正発明における構成Aの「遊技機」に相当する。

(b)引用発明における「第1大入賞装置39a」は、構成aによると、「内部に大入賞口を有する」ものであることから、引用発明における「第1大入賞装置39aの入賞数をカウント」する「大入賞口センサ39c」は、大入賞口に入賞した遊技球を検出するものであるから、本件補正発明における「特別入賞口に入賞した遊技球を検知する特別入賞検知手段」に相当する。
したがって、引用発明における構成bは、本件補正発明における構成Bに相当する。

(c)引用発明における「演出画像や動画」は、本件補正発明における「画像」に相当することから、引用発明における「上部にある表示領域60、左上の表示領域63、右上の表示領域64、65における所定の表示と並行して、表示領域67に文字による異常の内容に関する所定の表示を行う表示器である液晶表示装置36」は、本件補正発明における「画像を表示可能な表示手段」に相当する。
したがって、引用発明における構成cは、本件補正発明における構成Cに相当する。

(d)引用発明における「例えば、第1大入賞装置39aの大入賞口センサ39cにより検知される異常である入賞異常(エラー10)が発生する」ことは、「大入賞口センサ39c」の出力信号が所定の条件を満たすことにより「入賞異常」が発生したと判定されることである。
そうすると、引用発明における「例えば、第1大入賞装置39aの大入賞口センサ39cにより検知される異常である入賞異常(エラー10)が発生すると」と、本件補正発明における「始動入賞検知手段が球検知した際に第1エラー条件が満たされる第1エラーが発生した場合に」、及び、「ラウンド遊技間インターバル時間を含む駆動手段の非作動中に特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラーが発生した場合に」とは、「入賞検知手段が球検知した際にエラー条件が満たされる入賞エラーが発生した場合に」で共通する。
また、引用発明における「「入賞口スイッチエラー」等の表示」と、本件補正発明における「第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示」及び「該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示」とは、「エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含むエラー表示」である点で共通する。
したがって、引用発明における「例えば、第1大入賞装置39aの大入賞口センサ39cにより検知される異常である入賞異常(エラー10)が発生すると、「入賞口スイッチエラー」等の表示が液晶表示装置36の表示領域67になされ」ることと、本件補正発明における「始動入賞検知手段が球検知した際に第1エラー条件が満たされる第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を表示手段において実行すると共に、ラウンド遊技間インターバル時間を含む駆動手段の非作動中に特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を前記表示手段において実行」することとは、「入賞口スイッチエラー」等の表示が液晶表示装置36の表示領域67になされ」ることと、本件補正発明における「入賞検知手段が球検知した際にエラー条件が満たされる入賞エラーが発生した場合に、該エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含むエラー表示を表示手段において実行する」ことで共通する。

そして、引用発明における「主制御基板24と各種センサ、例えば、始動入賞口センサ38c、大入賞口センサ39c等を接続する配線(ハーネス)の何れかの断線が検知される断線(エラー4)が発生したとき」は、本件補正発明における「始動入賞検知手段および特別入賞検知手段から信号を受信できない第3エラーが発生した場合」に相当し、引用発明における「「断線しています。」等の表示が液晶表示装置36の表示領域67になされ」ることは、本件補正発明における「第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を表示手段において実行する」「よう構成され」ることに相当する。
したがって、引用発明における「主制御基板24と各種センサ、例えば、始動入賞口センサ38c、大入賞口センサ39c等を接続する配線(ハーネス)の何れかの断線が検知される断線(エラー4)が発生したときに、「断線しています。」等の表示が液晶表示装置36の表示領域67になされ」ることは、本件補正発明における「始動入賞検知手段および特別入賞検知手段から信号を受信できない第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され」ることに相当する。

よって、引用発明における構成dと本件補正発明における構成Dとは、「入賞検知手段が球検知した際にエラー条件が満たされる入賞エラーが発生した場合に、入賞エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含むエラー表示を表示手段において実行すると共に、始動入賞検知手段および特別入賞検知手段から信号を受信できない第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を表示手段において実行するよう構成され」ることで共通する。

(e)引用発明における「複数のエラーが同時に発生した場合に優先順位にしたがって報知されるエラーの種類が決定され、断線(エラー4)は優先順位が17であり、入賞異常(エラー10)は優先順位が15である」ことは、「断線(エラー4)」の発生中に「入賞異常(エラー10)」が「同時に発生した場合」、「断線(エラー4)」の報知に替えて、「断線(エラー4)」よりも「報知」の「優先順位」の高い「入賞異常(エラー10)」の報知がなされることである。
そうすると、引用発明の「複数のエラーが同時に発生した場合に優先順位にしたがって報知されるエラーの種類が決定され、断線(エラー4)は優先順位が17であり、入賞異常(エラー10)は優先順位が15である」ことと、本件補正発明における「表示手段での第3エラー表示の実行中において、第1エラーまたは第2エラーが発生した場合に、実行中の第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する第1エラー表示または第2エラー表示を、表示手段において実行中の第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成された」こととは、上記(d)の検討内容を考慮すると、「表示手段での第3エラー表示の実行中において、入賞検知手段が球検知した際にエラー条件が満たされるエラーが発生した場合に、いずれのエラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含むエラー表示を表示手段において実行する」ことで共通する。

上記(a)?(e)により両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「A 遊技球を検知する始動入賞検知手段による球検知を契機として当り判定する当り判定手段と、遊技球が入賞可能な特別入賞口を開閉する開閉手段を有する特別入賞部とを備え、前記当り判定手段が当りと判定した場合には、駆動手段の作動により前記開閉手段が前記特別入賞口を開放する複数回のラウンド遊技と、前記駆動手段が非作動となるラウンド遊技間インターバル時間とを含む当り遊技を実行するよう構成された遊技機において、
B 前記特別入賞口に入賞した遊技球を検知する特別入賞検知手段と、
C 画像を表示可能な表示手段とを備え、
D’入賞検知手段が球検知した際にエラー条件が満たされる入賞エラーが発生した場合に、該入賞エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含むエラー表示を前記表示手段において実行すると共に、前記始動入賞検知手段および前記特別入賞検知手段から信号を受信できない第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され、
E’前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記入賞エラーが発生した場合に、何れのエラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含むエラー表示を実行することを特徴とする遊技機。」

[相違点1](構成D)
その発生に伴い、発生したことを特定可能な文字画像を含むエラー表示を表示手段において実行される、入賞エラーに関して、
本件補正発明は、「始動入賞検知手段が球検知した際に第1エラー条件が満たされる第1エラー」と「ラウンド遊技間インターバル時間を含む駆動手段の非作動中に特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラー」とを設け、「第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示」と「第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示」とを表示手段において実行するのに対して、
引用発明は、入賞異常(エラー10)が、本件補正発明のような第1エラー及び第2エラーを含み、それぞれのエラーに対応するエラー表示がなされるか否か不明な点。

[相違点2](構成E)
本件補正発明は、表示手段での第3エラー表示の実行中において、第1エラーまたは第2エラーが発生した場合に、実行中の第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する第1エラー表示または第2エラー表示を、表示手段において実行中の第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成されているのに対して、引用発明は、液晶表示装置36の表示領域67に表示されるエラーの種類について、複数のエラーが同時に発生した場合に優先順位にしたがって報知されるエラーの種類が決定される点。

(5)当審判合議体における判断
ア 相違点1について
上記相違点1について検討する。
引用発明は、何れのエラー(入賞異常、断線)が発生した場合、何れのエラーが発生したのかを特定可能な文字画像(「入賞口スイッチエラー」、「断線しています。」)を液晶表示装置36に表示することにより報知するものである(構成d)。
そして、引用発明は、構成dにより、「入賞異常(エラー10)」としての「第1大入賞装置39aの大入賞口」に係る異常の発生を検知可能なものである。

ところで、遊技機の技術分野において、始動入賞口に係る異常の発生を検出するために、始動入賞検知手段が球検知した際にエラー条件が満たされるエラーが発生したことを検出すること、及び、検出したエラーについてその発生を報知することは、本願の出願前に周知の技術事項である(例えば、上記引用文献2には、遊技動作状態の異常の有無を監視するエラー管理処理において、遊技動作状態の異常として、基板間に断線が生じたか否かを監視したり、不正入賞があったか否かを監視したりするものにおいて、可動翼片47が作動中でないにもかかわらず下始動口センサ35aが遊技球を検出した場合は、エラー処理として、演出手段によりエラーが発生した旨を報知すること(【0159】、【0161】)が記載され、
原査定の拒絶の理由において引用された特開2013-248031号公報には、可変入賞球装置15が開状態でないときに始動入賞口14への遊技球の入賞を検出した場合に異常入賞が発生したと判定され、異常入賞が発生したと判定された場合には、第1態様の異常報知を実行(異常入賞1報知ではランプのみを用いた報知を行い、異常入賞2報知ではランプおよび音を用いた報知を行う)することにより、異常入賞が生じたことを報知すること(【0123】、【0425】)が記載され、
同じく、原査定の拒絶の理由において引用された特開2016-30211号公報には、ぱちんこ機100が報知するエラーとして、普通電動役物が未作動のときに遊技球が所定数検知された場合に発生するエラーとしての始動口エラーについて(【0335】?【0336】)記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)。

一方、引用文献2に記載された技術事項における「大当り遊技中でないにもかかわらず大入賞口センサ52aが遊技球を検出した場合や、「ラウンド間インターバル時間」から、「残存球排出時間」を除いた「開放前インターバル時間」(第2の所定時間:20ms)に大入賞口に入賞が発生した場合は、不正入賞とみな」すことは、本件補正発明における「ラウンド遊技間インターバル時間を含む駆動手段の非作動中に特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラーが発生した場合」に相当する。
そうすると、引用文献2に記載された技術事項の構成d’と本件補正発明の構成Dとは、ラウンド遊技間インターバル時間を含む駆動手段の非作動中に特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラーが発生した場合のエラー処理に関する技術である点で共通する。
ここで、引用文献2に記載された技術事項は、【0161】に「・・・これらの動作異常(エラー)が発生した場合には、・・・」と記載されているように、動作異常として、大入賞口に係る異常の発生を検出するという課題を解決するものである。

これらのことからみて、引用発明と、上記周知の技術事項1及び引用文献2に記載された技術事項とは、入賞異常の発生を報知する技術で共通するものであるとともに、入賞異常の発生を検出するという共通の課題を解決するものである。
よって、引用発明の「入賞異常(エラー10)」の検出に上記周知の技術事項1及び引用文献2に記載された技術事項を適用して、「入賞異常(エラー10)」の検出として、始動入賞口センサ38cが球検知した際に第1エラー条件が満たされる始動入賞異常と、「開放前インターバル時間」を含むソレノイドの非作動中に大入賞口センサ39cが球検知した際に第2エラー条件が満たされる大入賞口異常の検出を可能とすると共に、異常の種類に対応するエラー表示を行うようにし、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2について
引用発明は、液晶表示装置36の表示領域67にエラー表示を行うことに並行して、複数の表示領域(60、63?65)に所定の表示を行う(構成d、e)ことを可能とするものである。
そして、遊技機の技術分野において、複数のエラーが同時に発生する場合に、個々の異常の発生を識別可能に視認させるため、表示手段におけるエラー表示の実行中に、種類の異なるエラーが新たに発生した場合、発生している全てのエラーの種類を報知できるように、エラー表示を継続させつつ、新たに発生したエラーに対応するエラー表示を、表示手段において実行中のエラー表示と文字画像が重ならない表示位置で同時に表示させることは、本願の出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2015-139591号公報には、複数種類の異常が同時期に発生した場合であっても、当該複数種類の異常を識別可能に視認させやすくするために、異常1が発生し、異常報知画像(「異常1発生」)を異常表示領域に表示しているときに、異常2が発生すると、画像表示装置5を用いて、「異常2発生」を、「異常1発生」の表示と文字画像が重ならない異常表示領域に同時に表示すること(【0225】?【0229】、【図23】)が示され、
上記特開2016-30211号公報には、装飾図柄表示装置208において、先に送信された磁界検知エラーコマンドに基づき磁界検知エラーを報知しているときに、磁気検知エラーコマンドが送信されると、磁界検知エラーと磁気検知エラーの両方の報知を、装飾図柄表示装置208を用いて、それぞれの文字画像が重ならない表示位置に合わせて表示することにより行うこと(【0391】?【0393】、【図37】)が示され、
特開2010-179142号公報には、「エラーメッセージは、エラーコマンドごとに、それぞれ図柄表示部104における異なる位置に表示される。これによって、複数のエラーが同時に発生した場合にも、発生したエラーの内容を図柄表示部104を介して報知することができる。」(【0074】)ことが記載されている。以下「周知の技術事項2」という。)。
そうすると、引用発明と上記周知の技術事項2とは、複数のエラーが同時に発生し得る遊技機である点で共通する。
また、引用発明は、構成eより、複数のエラーが同時に発生した場合、発生中の全てのエラーの種類を識別可能に報知する必要があるという自明の課題を内在するものである。
したがって、引用発明と上記周知の技術事項2とは、複数のエラーが同時に発生した場合、発生中の全てのエラーの種類を識別可能に報知するという共通の課題を解決するものである。
よって、引用発明における「入賞異常(エラー10)」と「断線(エラー4)」といった複数のエラーが同時に発生している場合のエラー報知に際し、優先順位にしたがって報知されるエラーの種類が決定されることに替えて、上記周知の技術事項2を適用して、発生中のエラーを個々に視認可能とするために、表示領域67を複数設け、表示領域67でのエラーの報知中に、別の種類のエラーが発生した場合に、実行中のエラーの報知を継続させつつ、発生したエラーに対応する報知を、エラー報知が実行されている表示領域67と文字画像が重ならない表示領域67で開始させるよう構成し、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

ウ 請求人の審判請求書における主張について
請求人は、平成31年4月2日付け審判請求書において、本件補正発明は、引用文献に対して以下の有利な作用効果を奏する旨主張する。
(ア)「当り遊技中は、複数回のラウンド遊技によって特別入賞口への多数の入賞が発生するため、ラウンド遊技間インターバル時間に特別入賞口への不正入賞が発生しても、その不正入賞に応じた賞球数の増加等では、遊技店側が不正行為の存在を確定的に把握することができない。これに対し、当り遊技におけるラウンド遊技間インターバル時間にも、特別入賞検知手段の球検知によって第2エラー条件が満たされるようにすることで、ラウンド遊技間インターバル時間を狙って特別入賞口への不正入賞を発生させる不正行為を第2エラーとして把握することができる。」(〔3〕 本願発明の説明欄の (A) を参照。)

そこで、請求人の上記主張について検討する。
上記アにおいて検討したように、引用文献2に記載された技術事項における構成d’の「大当り遊技中でないにもかかわらず大入賞口センサ52aが遊技球を検出した場合や、「ラウンド間インターバル時間」から、「残存球排出時間」を除いた「開放前インターバル時間」(第2の所定時間:20ms)に大入賞口に入賞が発生した場合は、不正入賞とみな」すことは、本件補正発明における「ラウンド遊技間インターバル時間を含む駆動手段の非作動中に特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラーが発生した場合」に相当する。
そして、引用文献2に記載された技術事項は、当該構成d’を備えることにより、請求人の主張する本件補正発明により奏される上記効果「当り遊技におけるラウンド遊技間インターバル時間にも、特別入賞検知手段の球検知によって第2エラー条件が満たされるようにすることで、ラウンド遊技間インターバル時間を狙って特別入賞口への不正入賞を発生させる不正行為を第2エラーとして把握することができる。」と同様の効果を奏することは、当業者が予期し得る範囲のものである。

よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(6)小括
本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明、引用文献2に記載された技術事項、及び、上記周知の技術事項1?2から予測し得る効果の範囲内のものであって、格別なものではない。
よって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項、及び、上記周知の技術事項1?2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
上記1?3より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年3月16日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。記号A1?Eは、分説するため当審で付した。)は、次のとおりのものと認める。
「A1 遊技球を検知する始動入賞検知手段による球検知を契機として当り判定する当り判定手段と、遊技球が入賞可能な特別入賞口を開閉する開閉手段を有する特別入賞部とを備え、前記当り判定手段が当りと判定した場合には、前記開閉手段が前記特別入賞口を開放する当り遊技を実行するよう構成された遊技機において、
B 前記特別入賞口に入賞した遊技球を検知する特別入賞検知手段と、
C 画像を表示可能な表示手段とを備え、
D1 前記始動入賞検知手段が球検知した際に第1エラー条件が満たされる第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示を前記表示手段において実行すると共に、前記特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示を前記表示手段において実行し、前記始動入賞検知手段および特別入賞検知手段から信号を受信できない第3エラーが発生した場合に、該第3エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第3エラー表示を前記表示手段において実行するよう構成され、
E 前記表示手段での前記第3エラー表示の実行中において、前記第1エラーまたは前記第2エラーが発生した場合に、実行中の前記第3エラー表示を継続させつつ、発生したエラーに対応する前記第1エラー表示または前記第2エラー表示を、前記表示手段において実行中の前記第3エラー表示と文字画像が重ならない表示位置で開始させ得るよう構成されたことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
(1)(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2014-90820号公報
2.特開2010-101842号公報
3.特開2016-30211号公報(新たに引用された文献)
4.特開2013-248031号公報

3 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(前記「第2 3(2)」における「引用文献1」に対応する。)の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2 3(2)引用文献1」に記載したとおりである。

4 対比
本願発明は、前記「第2 3(1)」で検討した本件補正発明の構成Aの「当り遊技」に関して、「駆動手段の作動により前記開閉手段が前記特別入賞口を開放する複数回のラウンド遊技と、前記駆動手段が非作動となるラウンド遊技間インターバル時間とを含む」とあったものを「前記開閉手段が前記特別入賞口を開放する」とその限定を省き、
また、本件補正発明の構成Dの「第2エラー条件が満たされる第2エラー」に関し、「前記ラウンド遊技間インターバル時間を含む前記駆動手段の非作動中に前記特別入賞検知手段が球検知した際に」「発生」するとあったものを「前記特別入賞検知手段が球検知した際に」「発生」するとその限定を省くものである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、前記「第2 3(4)対比」において抽出した相違点2(構成E)、及び、次の相違点1’(構成D1)で相違し、その余の点において一致する。

[相違点1’](構成D1)
その発生に伴い、発生したことを特定可能な文字画像を含むエラー表示を表示手段において実行される、入賞エラーに関し、
本願発明は、「始動入賞検知手段が球検知した際に第1エラー条件が満たされる第1エラー」と「特別入賞検知手段が球検知した際に第2エラー条件が満たされる第2エラー」とを設け、「第1エラーが発生した場合に、該第1エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第1エラー表示」と「第2エラーが発生した場合に、該第2エラーであることを特定可能な文字画像を少なくとも含む第2エラー表示」とを表示手段において実行するのに対して、
引用発明は、入賞異常(エラー10)が、本願発明のような第1エラー及び第2エラーを含み、それぞれのエラーに対応するエラー表示がなされるか否か不明な点。

そこで、上記相違点1’、2について検討する。

ア 相違点1’について
前記「第2 3(5)ア 相違点1について」において検討したように、遊技機の技術分野において、始動入賞口に係る異常の発生を検出するために、始動入賞検知手段が球検知した際にエラー条件が満たされるエラーが発生したことを検出すること、及び、検出したエラーについてその発生を報知することは、上記周知の技術事項1として示したように、本願の出願前に周知の技術事項である。
また、同じく、遊技機の技術分野において、大入賞口に係る異常の発生を検出するために、大入賞口検知手段が球検知した際にエラー条件が満たされるエラーが発生したことを検出すること、及び、検出したエラーについてその発生を報知することは、本願の出願前に周知の技術事項である(例えば、上記引用文献2には、遊技動作状態の異常の有無を監視するエラー管理処理において、遊技動作状態の異常として、基板間に断線が生じたか否かを監視したり、不正入賞があったか否かを監視したりするものにおいて、大当り遊技中でないにもかかわらず大入賞口センサ52aが遊技球を検出した場合は、エラー処理として、演出手段によりエラーが発生した旨を報知すること(【0159】、【0161】)が記載され、
特開2008-93363号公報には、大当り遊技も小当り遊技も行われていない状態のときに大入賞口に遊技球の入賞があれば、その入賞を異常入賞であると判断すること(【0367】)が記載され、
特開2010-104683号公報には、遊技機の異常を検出するために、大当たりラウンド中でないにもかかわらず、大入賞口スイッチで遊技球が検出されると、入賞エラーカウンタを1加算すること(【0008】、【0112】)が記載されている。以下「周知の技術事項3」という。
そして、引用発明と、上記周知の技術事項1及び3とは、入賞異常の発生を検出するという共通の課題を解決するものである。
よって、引用発明の「入賞異常(エラー10)」の検出に上記周知の技術事項1及3を適用して、「入賞異常(エラー10)」の検出として、始動入賞異常と大入賞口異常の入賞異常の検出を可能とすると共に、異常の種類に対応するエラー表示を行うようにし、上記相違点1’に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2について
上記相違点2については、前記「第2 3(5)イ 相違点2について」において検討したと同様に、引用発明及び上記周知の技術事項2に基づいて当業者が容易になし得たものである。

ウ 小括
本願発明により奏される効果は、当業者が、引用発明、及び、上記周知の技術事項1?3から予測し得る効果の範囲内のものであって、格別なものではない。
よって、本願発明は、引用発明、及び、上記周知の技術事項1?3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
上記1?4より、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-02 
結審通知日 2019-09-03 
審決日 2019-09-17 
出願番号 特願2016-57480(P2016-57480)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠崎 正  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 長崎 洋一
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 山田 健司  
代理人 山本 喜幾  

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