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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01S
管理番号 1356664
審判番号 不服2018-15915  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-30 
確定日 2019-11-26 
事件の表示 特願2016-558018「レーザー装置を操作する方法、共振装置及び移相器の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月24日国際公開、WO2015/139829、平成29年 3月23日国内公表、特表2017-508301、請求項の数(25)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成27年 3月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年(平成26年) 3月17日、独国)を国際出願日とする出願であって平成29年 9月29日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年 2月16日付けで手続補正がされ、平成30年 7月23日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成30年 7月23日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

本願請求項1-25に係る発明は、以下の引用文献1-15に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献等一覧
1.特開2007-256365号公報
2.特開2006-179779号公報
3.米国特許出願公開第2004/0017833号明細書
4.特開2011-76097号公報
5.国際公開第2009/066755号
6.特開2005-241406号公報
7.特開2007-316158号公報
8.特開平11-26852号公報
9.特開2008-310340号公報
10.特開2004-294941号公報
11.特開2006-267201号公報
12.特開2012-132711号公報
13.特開2014-41273号公報
14.特開平2-294617号公報
15.特開2002-318169号公報


第3 本願発明

本願請求項1-25に係る発明(以下「本願発明1」などという。)は、平成30年 2月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定される発明であり、本願発明は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
レーザー装置を操作する方法であって、
a)レーザーパルス(110)が共振器(1)内を循環するように、共振器(1)にレーザーパルス(110)を与え、当該レーザーパルス(110)は搬送波(12)を有し、
b)前記レーザーパルス(110)に対応する周波数コムのオフセット周波数f_(0)を決定し、当該周波数コムは、互いから距離f_(rep)を置いて複数のレーザーモードf_(m)を有し、その周波数は方程式f_(m)=m×f_(rep)+f_(0)で記述でき、mは自然数であり、
c)共振器循環当たりに前記レーザーパルス(110)の前記搬送波(120)に位相循環遅延を与える幾何学的位相を変更することで前記オフセット周波数f_(0)を変更する、ステップを有する方法。


【請求項6】
共振器(1)、能動媒質(24)、及び、当該共振器からのレーザーパルス(110)を外に結合するための外結合装置(3’)を有する、レーザーパルス(10)を生成する共振装置(100)であって、
前記レーザーパルス(110)に対応する周波数コムのオフセット周波数f_(0)を決定する測定装置(90)を有し、当該周波数コムは、互いから距離f_(rep)を置いて複数のレーザーモードf_(m)を有し、その周波数は方程式f_(m)=m×f_(rep)+f_(0)で記述でき、mは自然数である、共振装置において、
向きを変えられる少なくとも1つの複屈折素子又は偏光素子(7)が前記共振器(1)内に配置され、前記少なくとも1つの複屈折素子又は偏光素子(7)の向きの変化によって、共振器循環当たりのレーザーパルス(110)の搬送波(120)に位相循環遅延を与える幾何学的位相(Δφ)が変更可能であり、それにより当該レーザーパルス(110)に関連する周波数コムのオフセット周波数f_(0)が変更可能である、ことを特徴とする共振装置。


【請求項7】
レーザー放射、特にレーザーパルス(110)を受ける共振器(1)を備えた共振装置(100)において、
共振器循環当たりに光波に、特に前記レーザー放射の前記搬送波(120)に位相循環遅延を与える幾何学的位相(Δφ)を変更することで位相循環時間及び群循環時間に異なる遅延を生じさせる、少なくとも1つの調整可能な複屈折素子又は偏光素子(7)が、前記共振器(1)内に配置されており、
前記調整可能な複屈折素子又は偏光素子の設定を変更するとき、前記レーザー放射、特に前記レーザーパルス(110)の循環損失が前記共振器(1)において変えられない又は実質的に変えられない、ことを特徴とする共振装置。


【請求項25】
移相器(2)を通過するレーザーパルス(110)に対応する周波数コムのオフセット周波数f_(0)を調整するためにその向きを変えられる少なくとも1つの複屈折素子又は偏光素子(7)を有する移相器(2)の使用であって、
前記周波数コムは、互いから距離f_(rep)を置いて多数のレーザーモードf_(m)を有し、その周波数は方程式f_(m)=m×f_(rep)+f_(0)で記述でき、mは自然数であり、 共振器循環当たりの前記レーザーパルス(110)の搬送波(120)に位相循環遅延を与える幾何学的位相(Δφ)が、前記少なくとも1つの複屈折素子又は偏光素子(7)の向きの変化によって変更され、それにより前記オフセット周波数f_(0)が変更される、移相器の使用。」

なお、本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明8-14は、本願発明7を減縮した発明であり、本願発明15-24は、本願発明6,7を減縮した発明である。




第4 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の記載があり、以下の発明が記載されていると認められる。(下線は当審で付加。以下同様。)

(1)「技術分野
【0001】
本発明は、或る一定の光周波数範囲において等間隔に配列された複数の光周波数の光を発生する光周波数コム発生装置に関するものである。」

(2)「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係る光周波数コム発生装置1の構成図である。この図に示される光周波数コム発生装置1は、レーザ光源10、光ファイバ増幅器30A,30B、高非線形性光ファイバ40A,40B、非線形光学媒体52A、フォトダイオード56A,56B,56C、CEO周波数安定化部60および繰返し周波数安定化部70等を備えている。
【0015】
レーザ光源10は、モード同期レーザ発振してパルスレーザ光を出力するものであり、増幅用光ファイバ11、励起光源12、ドラム13、λ/4板14、λ/2板15、ポラライザ16、偏波依存型光アイソレータ17および偏波無依存型光アイソレータ18を含む。これらのうち、増幅用光ファイバ11,λ/4板14,λ/2板15,ポラライザ16および光アイソレータ17は、リング型光共振器の共振光路上に設けられている。
【0016】
増幅用光ファイバ11は、Er元素が光導波領域に添加された光ファイバであり、ピエゾ素子が設けられたドラム13に巻かれている。励起光源12は、増幅用光ファイバ11に添加されたEr元素を励起し得る波長1.48μm帯の励起光を出力して、その励起光を増幅用光ファイバ11に供給する。
【0017】
λ/4板14およびλ/2板15は、リング型光共振器で発振するレーザ光の偏波を制御する。また、λ/4板14,λ/2板15,ポラライザ16および偏波依存型光アイソレータ17は、リング型光共振器でパルスレーザ光を選択的に発振させる。ドラム13に設けられたピエゾ素子は、そのドラム13に巻かれた増幅用光ファイバ11の長さを調整することができ、これにより、リング型光共振器の共振器長を調整することができる。
【0018】
このように構成されるレーザ光源10では、励起光源12から出力された励起光が増幅用光ファイバ11に供給され、増幅用光ファイバ11に添加されているEr元素が励起されて、増幅用光ファイバ11から波長1.55μm帯の光が放出される。増幅用光ファイバ11から放出された光はリング型光共振器により共振されて、レーザ光源10はレーザ発振する。
【0019】
また、このレーザ光源10では、λ/4板14,λ/2板15,ポラライザ16および偏波依存型光アイソレータ17の作用によりモード同期レーザ発振し、この発振により得られたパルスレーザ光が偏波無依存型光アイソレータ18を経て出力される。なお、レーザ光源10から出力されるパルスレーザ光の波長は、励起光源12から増幅用光ファイバ11に供給される励起光のパワーに依存する。レーザ光源10から出力されるパルスレーザ光の繰返し周波数は、ドラム13に設けられたピエゾ素子の作用により調整されたリング型光共振器の共振器長に依存する。


【0028】
ハーフミラー54Aを透過したパルスレーザ光を入力するバンドパスフィルタ55Aは、その入力したパルスレーザ光のうち特定の透過帯域のものを透過させる。ここで、透過帯域は、高非線形性光ファイバ40Aから出力されるパルスレーザ光の帯域のうち光周波数が高い帯域である。CEO周波数検出部56Aは、バンドパスフィルタ55Aを透過したパルスレーザ光の第2高調波と基本波とのビート周波数に基づいてCEO周波数を検出する。そして、CEO周波数安定化部60は、CEO周波数検出部56Aにより検出されたCEO周波数が所定値となるように、励起光源12から増幅用光ファイバ11に供給される励起光のパワーを調整することにより、レーザ光源10から出力されるパルスレーザ光の波長を安定化制御する。

【0034】
図2は、本実施形態に係る光周波数コム発生装置1の高非線形性光ファイバ40A,40Bから出力されるパルスレーザ光の光周波数の配置を示す図である。この図に示されるように、高非線形性光ファイバ40A,40Bから出力されるパルスレーザ光は、光周波数軸で見ると一定の光周波数範囲において一定間隔frepの光周波数列からなる光コムとなる。
【0035】
光周波数のものさしである光コムのスペクトルが1オクターブ以上に拡がることは、光周波数計測への応用という観点からは極めて重要な意味を持つ。すなわち、f-to-2f干渉と呼ばれる手法により、光コムのオフセット周波数(f_(CEO))の観測が可能となるからである(非特許文献2参照)。図2は、1オクターブ以上に広がる光コムの周波数軸上のモードを示している。
【0036】
光周波数軸において、一定間隔frepで並んでいるコムのモードを仮想的に光周波数0となる点の近傍まで伸ばすと、オフセット周波数(f_(CEO))が存在する。これは、時間軸のパルスで理解すると、隣り合うパルスにおける光のキャリア周波数とパルスのエンベロープとの位相差である「carrier-envelope 位相」となることから、「carrier-envelope offset周波数(CEO周波数)」f_(CEO)と呼ばれる。CEO周波数f_(CEO)を観察することができると、光コム中において、CEO周波数f_(CEO)をゼロ番目として、n番目のモードの周波数f(n)は、下記(1)式で記述することができ、繰返し周波数frepおよびCEO周波数f_(CEO)の2つのパラメータにより表すことができる。
【0037】
f(n)= n×frep + f_(CEO) …(1)
光コムが1オクターブ以上に広がっているということは、光コム中にn番目のモードと2n番目のモードとが同時に存在することを意味する。n番目のモードの第2高調波の光周波数は下記(2)式で表され、2n番目のモードの光周波数は下記(3)式で表される。両者の差はf_(CEO)となり、ビート観測により測定することができる。これが、f-to-2f干渉と呼ばれる手法である。」

(3)
上記(2)において、パルスレーザ光は搬送波を有することは当業者にとって、記載されているに等しい自明な事項である。

(4) 以上(1)-(3)をまとめると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「光周波数コム発生装置のパルスレーザ光の波長を安定化制御する方法であって、パルスレーザ光は搬送波を有し
a)パルスレーザ光がリング型光共振器内を循環するように、リング型光共振器にパルスレーザ光を放出し、
b)パルスレーザ光のCEO周波数を検出し、CEO周波数f_(CEO)をゼロ番目として、n番目のモードの周波数f(n)は、下記式で記述することができ、f(n)=n×frep+f_(CEO)
c)CEO周波数が所定値となるように、励起光源12から増幅用光ファイバ11に供給される励起光のパワーを調整する
ステップを有する方法」



2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は二重周波数安定化モード同期レーザ光源に係り、特に、光通信用光源において発振周波数やパルスの繰り返し周波数が正確に固定された二重周波数安定化モード同期レーザ光源に関するものである。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の方法では、抜き出した特定の縦モード一本の周波数は安定化できるものの、キャリヤ・エンベロープオフセット(Carrier-Envelope Offset:CEO)周波数の揺らぎにより、その他の縦モードの周波数が揺らいでしまい、スペクトル全体で見ると全ての縦モードに対しては周波数が安定化できないという課題がある。
CEO周波数f_(CEO)とは、レーザ共振器内の光パルスの位相速度と群速度の違いに由来する縦モード全体のオフセット周波数である(図1)。モード同期レーザの各縦モード(N次モード)の周波数f_(N)は、繰り返し周波数f_(rep)だけではなくCEO周波数f_(CEO)にも依存し、2つのパラメータを用いて
f_(N)=Nf_(rep)+f_(CEO) (1)
と表すことができる。ここでNは整数で、モードの次数を表す。
図2に示すように、光パルスのピークにおける搬送波の位相が共振器を周回するごとにΔΦCEOだけシフトしていくとすると、f_(CEO)は
f_(CEO)=(ΔΦ_(CEO)/2π)f_(rep) (2)
と表される。ここでΔΦCEOは、搬送波周波数ω_(c)、共振器長l_(c)、共振器内の群速度v_(g)および位相速度v_(p)を用いて
ΔΦ_(CEO)=ω_(C)l_(C)(1/v_(g)-1/v_(p)) (3)
で与えられる。
ファイバレーザにおいては、共振器に群速度分散が存在することによって共振器内の群速度v_(g)と位相速度v_(p)に差が生じ、その差は温度や圧力によってランダムに変化するため、CEO周波数の揺らぎが生じる。したがって特許文献2に記載の方法では、ある一本の縦モードの周波数が安定化できたとしても、その他の縦モードの周波数はCEO周波数の揺らぎによって変動するため、スペクトル全体の周波数を安定化することが不可能であることがわかる。」


3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の記載がある。(訳文は、当審が作成した。)。

[0115] b. Comb Position. The frequency of a given comb line is given by f _(n) =n f _(rep) +δ, where n is a large integer. Hence, simply changing the cavity length can control the frequency of comb lines. However, this also changes the comb spacing, which is undesirable if a measurement spans a large number of comb lines. Controlling δ instead of f _(rep) allows a rigid shift of the comb positions, i.e. the frequency of all the lines can be changed without changing the spacing.
[0116] The comb position depends on the phase delay, t _(g) , and the group delay, t _(p) . Each delay in turn depends on the cavity length. In addition, the comb position depends on the "carrier" frequency, which is determined by the lasing spectrum. To obtain independent control of both the comb spacing and position, an additional parameter, besides the cavity length, must be adjusted.
[0117] A small rotation about a vertical axis (swivel) of the end mirror of the laser in the arm that contains the prisms produces a controllable group delay as disclosed in FIG. 5 . This is because the different spectral components are spread out spatially across the mirror. 」

(日本語訳:[0115]b.コム位置。所与のコムラインの周波数がf_(n)=nf_(rep)+δによって与えられ、ここで、nは整数である。それゆえ、単に共振器長を変えることでコムラインの周波数を制御することができる。
しかし、この方法は、コム間隔が変化するため、測定間隔が多数のコムラインにまたがる場合に望ましくない。f_(rep)を変えることなくδを制御するとコム位置を固定してシフトする、すなわち、間隔を変えずに全ての周波数ラインの位置を変えることができる
[0116]コム位置は、位相遅延、および群遅延に依存する。各遅延はキャビティの長さに依存する。加えて、コム位置は「搬送波」の周波数に依存し、これはレーザスペクトルによって決定される。コムラインの間隔及び位置の両方を独立して制御するために、キャビティ長さに加えて、付加的なパラメータを調整しなければならない。
[0117]図5に開示されているように、プリズムをレーザのエンドミラーの縦軸(旋回)周りに回転させることで、制御可能な遅延を生成する。これは、異なるスペクトル成分がミラー全体にわたって空間的に広げられるからである。)



4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、積層波長板に関し、特に変換効率を改善した高次モードの積層波長板と、これを用いた偏光変換子と、該偏光変換子を用いた偏光照明装置bと、高次モードの積層波長板を用いたピックアップ装置に関する。

(2)「【発明を実施するための形態】
【0047】
ここで、図5に示した積層1/2波長板1’を構成する第1の波長板2’と第2の波長板3’の光学的な作用について図8を用いて説明する。図8(a)は、積層1/2波長板1’に入射した直線偏光4のポアンカレ球上での軌道の推移を説明するための図である。図8(b)は、図8(a)に示したポアンカレ球において積層1/2波長板1’に入射した光線の偏光状態の軌跡をS2軸方向から見た図(S1S3平面に投影した図)である。図8(c)は、本発明に係る積層1/2波長板1’の第1の波長板2’の機能について説明するために、前記偏光状態の軌跡をS1軸方向から見た図(S2S3平面に投影した図)である。図8(b)、(c)において、直線偏光4の光線がポアンカレ球の赤道上の所定の位置P0に入射すると、第1の波長板2’によって光軸R1を中心にして360°回転しP1に到達し(P0=P1)、さらに第2の波長板3’によって光軸R2を中心にして180°回転しP2(赤道)に到達することによって、積層1/2波長板1’を出射する光線が直線偏光4(入射光)に対してθ=90°だけ回転した直線偏光5となって積層1/2波長板1’を出射することが分かる。」


5 引用文献5-11について
引用文献5にはベクトル渦を発生する渦発生装置について記載されている。
引用文献6には複屈折分散計測装置について記載されている。
引用文献7には偏光制御素子及びそれを用いたレーザシステムについて記載されている。
引用文献8には光導波路を用いて空間を基礎として量子光増幅器を動作させるための方法及び装置について記載されている。
引用文献9には液晶プロジェクタについて記載されている。
引用文献10には偏光制御器について記載されている。
引用文献11には位相連続光FSK変調方法について記載されている。


6 引用文献12及び引用文献13について
引用文献12及び引用文献13には引用文献2と同様に、周波数コムのオフセット周波数と位相シフト量との間に相関があることが記載されている。


7 引用文献14及び引用文献15について
引用文献14及び引用文献15には引用文献4と同様に、ポアンカレ球を用いて偏光状態を検討することが記載されている。


第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「光周波数コム発生装置」、「パルスレーザ光」、「リング型光共振器」、「CEO周波数」、「f(n)=n×frep+f_(CEO)」は、それぞれ本願発明1の「レーザー装置」、「レーザーパルス」、「共振器」、「周波数コムのオフセット周波数f_(0)」、「f_(m)=m×f_(rep)+f_(0)」に相当する。

イ 引用発明の「光周波数コム発生装置のパルスレーザ光の波長を安定化制御する方法」について、「制御」は操作の一種であるから、本願発明1の「レーザー装置を操作する方法」に相当する。

ウ 引用発明の「パルスレーザ光のCEO周波数を検出し」は、CEO周波数を検出することで決定しているから、本願発明1の「前記レーザーパルス(110)に対応する周波数コムのオフセット周波数f_(0)を決定し」に相当する。

エ 引用発明の「CEO周波数f_(CEO)をゼロ番目として、n番目のモードの周波数f(n)は、下記(1)式で記述することができ、f(n)= n×frep + f_(CEO) 」は本願発明1の「当該周波数コムは、互いから距離f_(rep)を置いて複数のレーザーモードf_(m)を有し、その周波数は方程式f_(m)=m×f_(rep)+f_(0)で記述でき、mは自然数であり」に相当する。

オ 引用発明と本願発明1とは、周波数コムのオフセット周波数f_(CEO)(f_(0))を変更することにおいて共通する。

カ したがって、本願発明1と引用発明とは、次の(一致点)で一致し、(相違点1)で相違する。

(一致点)
「レーザー装置を操作する方法であって、
a)レーザーパルス(110)が共振器(1)内を循環するように、共振器(1)にレーザーパルス(110)を与え、当該レーザーパルス(110)は搬送波(12)を有し、
b)前記レーザーパルス(110)に対応する周波数コムのオフセット周波数f_(0)を決定し、当該周波数コムは、互いから距離f_(rep)を置いて複数のレーザーモードf_(m)を有し、その周波数は方程式f_(m)=m×f_(rep)+f_(0)で記述でき、mは自然数であり、
c)前記オフセット周波数f_(0)を変更する、
ステップを有する方法。」

(相違点1)
オフセット周波数f_(0)を変更する方法が本願発明1では「c)共振器循環当たりに前記レーザーパルス(110)の前記搬送波(120)に位相循環遅延を与える幾何学的位相を変更する」一方、引用発明ではc)CEO周波数が所定値となるように、「励起光源12から増幅用光ファイバ11に供給される励起光のパワーを調整」している点。


(2)判断
(相違点1)について検討する。
ア 引用文献2の記載から周波数コムのオフセット周波数について、
f_(CEO)=(ΔΦ_(CEO)/2π)f_(rep)
ΔΦ_(CEO)=ω_(C)l_(C)(1/v_(g)-1/v_(p))
(ここで、ΔΦ_(CEO)は光パルスのピークにおける搬送波の位相が共振器を周回するごとにシフトする量、ω_(c)は搬送波周波数、l_(c)は共振器長、v_(g)は共振器内の群速度、v_(p)は位相速度)
であることが理解されるから、引用発明における「a)パルスレーザ光がリング型光共振器内を循環する際」に「搬送波周波数ω_(c)、共振器長l_(c)、共振器内の群速度v_(g)、位相速度v_(p))」を調整することで、パルスレーザ光のCEO周波数を調整することは当業者が容易に想到し得ることである。
しかしながら、「搬送波周波数ω_(c)、共振器長l_(c)、共振器内の群速度v_(g)、位相速度v_(p))」を調整することは「ポアンカレ球の表面上を進んだ経路で囲まれた面積」が得られるよう偏光状態を変えるものではないから、本願発明における幾何学的位相を変更することにはならない。


イ 引用文献3の記載から、「プリズムをレーザのエンドミラーの縦軸(旋回)周りに回転させる」ことで周波数コムの「コムラインの間隔及び位置の両方を独立して制御する」ことは理解できるから、引用発明において、リング型光共振器内に「プリズムをレーザのエンドミラーの縦軸(旋回)周りに回転させる」よう構成することは当業者が容易に想到し得ることである。
しかしながら、「プリズムをレーザのエンドミラーの縦軸(旋回)周りに回転させる」ことは「異なるスペクトル成分がミラー全体にわたって空間的に広げられる」ものであって、「ポアンカレ球の表面上を進んだ経路で囲まれた面積」が得られるよう偏光状態を変えるものではないから、本願発明における幾何学的位相を変更することにはならない。


ウ 引用文献4の記載から偏光の状態をポアンカレ球上での軌道の推移として説明することは理解されるから、引用発明のパルスレーザ光について偏光状態をポアンカレ球上での軌道の推移として説明することは当業者が容易に想到し得ることである。
しかしながら、引用文献4の記載は「偏光の状態をポアンカレ球上での軌道の推移として説明」しているのみで、「ポアンカレ球の表面上を進んだ経路で囲まれた面積」が得られるよう偏光状態を変えることを示していないから、本願発明における幾何学的位相を変更することは記載されていない。

エ 以上のとおりであるから、引用発明および引用文献2-4に記載の発明をいかに組み合わせようとも、「ポアンカレ球の表面上を進んだ経路で囲まれた面積」が得られるよう偏光状態を変えることで周波数コムのオフセット周波数を変更することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
そして、この点は引用文献5-15にも記載されていないし、出願時の技術常識でもない。

オ そうすると、引用発明および引用文献2-15には「共振器循環当たりに前記レーザーパルス(110)の前記搬送波(120)に位相循環遅延を与える幾何学的位相を変更することで前記オフセット周波数f0を変更する」ことは、記載されておらず、出願時の技術常識ともいえないから、本願発明1は引用発明及び引用文献2-15に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


2 本願発明2-5について

本願発明2-5は、本願発明1に従属し、本願発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本願発明1と同じ理由(上記1参照)により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-15に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


3 本願発明6について

本願発明6は「 共振器(1)、能動媒質(24)、及び、当該共振器からのレーザーパルス(110)を外に結合するための外結合装置(3’)を有する、レーザーパルス(10)を生成する共振装置(100)であって、
前記レーザーパルス(110)に対応する周波数コムのオフセット周波数f_(0)を決定する測定装置(90)を有し、当該周波数コムは、互いから距離f_(rep)を置いて複数のレーザーモードf_(m)を有し、その周波数は方程式f_(m)=m×f_(rep)+f_(0)で記述でき、mは自然数である、共振装置において、
向きを変えられる少なくとも1つの複屈折素子又は偏光素子(7)が前記共振器(1)内に配置され、前記少なくとも1つの複屈折素子又は偏光素子(7)の向きの変化する共振装置」において(A)「共振器循環当たりのレーザーパルス(110)の搬送波(120)に位相循環遅延を与える幾何学的位相(Δφ)が変更可能であり、それにより当該レーザーパルス(110)に関連する周波数コムのオフセット周波数f_(0)が変更可能である」(以下、構成(A)という。)ことが特定されている。

ここで、構成(A)の事項は上記「1 本願発明1について」に記載した(相違点1)に係る本願発明1の構成と実質的に同じであり、これら構成は、上記「1 本願発明1について」で説示したのと同様に、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。


4 本願発明7について

本願発明7には「レーザー放射、特にレーザーパルス(110)を受ける共振器(1)を備えた共振装置(100)」において、(B)「共振器循環当たりに光波に、特に前記レーザー放射の前記搬送波(120)に位相循環遅延を与える幾何学的位相(Δφ)を変更することで位相循環時間及び群循環時間に異なる遅延を生じさせる、少なくとも1つの調整可能な複屈折素子又は偏光素子(7)が、前記共振器(1)内に配置されており、
前記調整可能な複屈折素子又は偏光素子の設定を変更するとき、前記レーザー放射、特に前記レーザーパルス(110)の循環損失が前記共振器(1)において変えられない又は実質的に変えられない(以下、構成(B)という。)」ことが特定されている。

ここで、構成(B)の事項は上記「1 本願発明1について」に記載した(相違点1)に係る本願発明1の構成を少なくとも包含しており、これら構成は、上記「1 本願発明1について」で説示したのと同様に、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。


5 本願発明8-24について

本願発明8-14は、本願発明7に従属し、本願発明7の発明特定事項をすべて含むものであるから、本願発明7と同じ理由(上記4参照)により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-15に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明15-24は、本願発明6,7に従属し、本願発明6,7の発明特定事項をすべて含むものであるから、本願発明6,7と同じ理由(上記3,4参照)により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-15に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


6 本願発明25について

本願発明25は「移相器(2)を通過するレーザーパルス(110)に対応する周波数コムのオフセット周波数f_(0)を調整するためにその向きを変えられる少なくとも1つの複屈折素子又は偏光素子(7)を有する移相器(2)の使用であって、
前記周波数コムは、互いから距離f_(rep)を置いて多数のレーザーモードf_(m)を有し、その周波数は方程式f_(m)=m×f_(rep)+f_(0)で記述でき、mは自然数であ」る場合に(C)「共振器循環当たりの前記レーザーパルス(110)の搬送波(120)に位相循環遅延を与える幾何学的位相(Δφ)が、前記少なくとも1つの複屈折素子又は偏光素子(7)の向きの変化によって変更され、それにより前記オフセット周波数f_(0)が変更される」(以下、構成(C)という。)が特定されている。

ここで、構成(C)の事項は上記「1 本願発明1について」に記載した(相違点1)に係る本願発明1の構成と実質的に同じであり、これら構成は、上記「1 本願発明1について」で説示したのと同様に、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。



第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献2-15に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-12 
出願番号 特願2016-558018(P2016-558018)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 百瀬 正之  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 井上 博之
田中 秀直
発明の名称 レーザー装置を操作する方法、共振装置及び移相器の使用  
代理人 今井 秀樹  
代理人 藤田 アキラ  
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