• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1356666
審判番号 不服2018-3672  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-14 
確定日 2019-11-29 
事件の表示 特願2016-114249「組織除去のための挿入可能な内視鏡機器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日出願公開、特開2016-195773、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年5月17日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2016-514139号の一部を平成28年6月8日に新たな特許出願としたものであって、平成29年5月26日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月25日に手続補正がされ、同年11月9日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年3月14日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において平成31年4月25日付けで拒絶理由通知がされ、令和元年8月5日に手続補正がされたものである。


第2 当審拒絶理由について
当審では、特許法第36条第6項第2号明確性要件に関し、請求項9の「前記洗浄チャンネルの一部を形成するよう構成されている、請求項1に記載の柔軟内視鏡器具。」、請求項10の「前記開口部で吸引力を掛けるよう構成されている、請求項1に記載の柔軟内視鏡器具。」、請求項16の「前記近位コネクタは・・・、請求項13に記載の内視鏡器具。」の各記載につき、その意味が不明確であるとの拒絶理由を通知しているが、令和元年8月5日の手続補正において、当該記載がそれぞれ、「前記洗浄チャンネルの一部を形成するよう構成されている、請求項6記載の柔軟内視鏡器具。」、「開口部で吸引力を掛けるよう構成されている、請求項1に記載の柔軟内視鏡器具。」、「前記近位コネクタは・・・、請求項14に記載の内視鏡器具。」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。


第3 本願発明
上記「第2」のとおり、本願の特許請求の範囲の記載に不備はない。
よって、本願の請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ請求項に対応して「本願発明1」などという。)は、令和元年8月5日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1、13は次のとおりの発明である。
「【請求項1】
軟性内視鏡の単一の器具チャンネル内に挿入可能な柔軟内視鏡器具であって、
被験者内の部位で物質を切除するよう構成された切断アセンブリであって、外側カニューレと、当該外側カニューレ内に配置された内側カニューレとを含み、前記外側カニューレは、前記切除される物質が前記切断アセンブリに入る経路となる開口部を形成する、切断アセンブリと、
前記外側カニューレに結合されると共に前記外側カニューレを前記内側カニューレに対して回転させるよう構成されると共に、前記柔軟内視鏡器具を挿入できる前記器具チャンネルよりも小さい外径を備えた柔軟性外側チュービングであって、前記外側カニューレの対応する長さの少なくとも40倍の長さを備えると共に前記器具チャンネル内の多数の曲がりを通過するのに十分な柔軟性を備えた柔軟性外側チュービングと、
柔軟性トルクコイル及び柔軟性トルクロープの一方を含むと共に前記柔軟性外側チュービング内に一部が配置され、遠位端が前記内側カニューレに結合された柔軟性トルク構成要素であって、当該柔軟性トルク構成要素へのトルクの印加に応答して、前記内側カニューレを前記外側カニューレに対して回転させて前記切除される物質を切除するよう構成された柔軟性トルク構成要素と、
真空源に係合するよう構成された吸入ポートを備えた吸入チャンネルであって、前記内側カニューレの内壁により部分的に形成されると共に、前記外側カニューレに形成された開口部から前記柔軟性トルク構成要素に沿って前記吸入ポートまで延伸する吸入チャンネルとを含む、柔軟内視鏡器具。」(下線は、当審で付した。)
「【請求項13】
軟性内視鏡の単一の器具チャンネル内に挿入可能な内視鏡器具であって、
被験者内の部位で物質を切除するよう構成された切断アセンブリであって、外側カニューレと、当該外側カニューレ内に配置された内側カニューレとを含み、前記外側カニューレは、前記切除される物質が前記切断アセンブリに入る経路となる開口部を形成する、切断アセンブリと、
前記外側カニューレに結合されると共に前記外側カニューレを前記内側カニューレに対して回転させるよう構成されると共に、前記内視鏡器具を挿入できる前記器具チャンネルよりも小さい外径を備えた柔軟性外側チュービングであって、前記外側カニューレの対応する長さの少なくとも40倍の長さを備えると共に前記器具チャンネル内の多数の曲がりを通過するのに十分な柔軟性を備えた柔軟性外側チュービングと、
柔軟性トルクコイル及び柔軟性トルクロープの一方を含むと共に前記柔軟性外側チュービング内に一部が配置され、遠位端が前記内側カニューレに結合された柔軟性トルク構成要素であって、当該柔軟性トルク構成要素へのトルクの印加に応答して、前記内側カニューレを前記外側カニューレに対して回転させて前記切除される物質を切除するよう構成された柔軟性トルク構成要素と、
真空源に係合するよう構成された吸入ポートを備えた吸入チャンネルであって、前記内側カニューレの内壁により部分的に形成されると共に、前記外側カニューレに形成された開口部から前記柔軟性トルク構成要素に沿って前記吸入ポートまで延伸する吸入チャンネルとを含む、内視鏡器具。」

なお、本願発明2?12は、本願発明1を直接的又は間接的に引用してさらに減縮した発明であり、また、本願発明14?20は、本願発明13を直接的又は間接的に引用してさらに減縮した発明である。


第4 原査定の概要
原査定の概要は、本願発明1?20は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1:国際公開第2013/022525号
引用文献2:特表2003-524479号公報


第5 引用文献の記載事項
1 引用文献1
上記引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、括弧内に付記した邦訳は、引用文献1のパテントファミリーである特表2014-528753号公報の記載を援用した。
1a:「[0003] Surgical instruments used to shave, cut, resect, abrade and/or remove tissue, bone and or other bodily materials are known. Such surgical instruments can include a cutting surface, such as a rotating blade, disposed on an elongated inner tube that is rotated within an elongated outer tube having a cutting window. The inner and outer tubes together form a surgical cutting blade. In general, the elongated outer tube includes a distal end defining an opening or cutting window that exposes the cutting surface of the inner tube (at the distal end of the inner tube) to tissue, bone and/or any other bodily materials. A powered handpiece is used to rotate the inner tube with respect to the outer tube while an outer tube hub (connected to the proximal end of the outer tube) is rigidly fixed to the handpiece and an inner tube hub (connected to the proximal end of the inner tube) is loosely held in place by the powered handpiece and can move axially.」
(組織、骨および/または他の人体材料を剃り、切除し、切断および/または除去するために使用される手術器具は周知である。この手術器具は細長の内側チューブに配置された回転刃のような切断面を有する。その回転刃は、切除ウインドウを有する細長い外側チューブ内を回転する。内側および外側チューブはともに手術用切断刃を形成する。概して、細長い外側チューブは開口部または切除ウインドウを画定する遠位端を有する。外側チューブの開口部または切除ウインドウは内側チューブの切断面(典型的に、内側チューブの遠位端側に配置された)を組織、骨および/または除去されるべき他の人体材料に対して露出させる。付勢された持ち手部は、外側チューブハブ(内側チューブの近位端に接続された)が持ち手部に固定されて、かつ、内側チューブハブ(内側チューブの近位端に接続された)が付勢された持ち手部によって緩く保持され、軸線方向に回転することができる。)

1b:「[0004] In such surgical instruments, it is often useful, or even necessary, for a surgeon to be able to precisely orient a tip of the surgical cutting blade (defining the cutting surface within the cutting window) at a specific angle. Because of this requirement, it is known to provide kits having multiple surgical cutting blades having first ends angled to different fixed degrees. Thus, depending on the needs or requirements of the surgery, a surgeon can switch between multiple different surgical cutting blades multiple times during surgery so as to precisely orient the selected surgical cutting blade in the exact location he/she is trying to reach. However, providing kits having multiple surgical cutting blades having first ends angled to different fixed degrees can be expensive and, even with a variety of different angles, may result in the surgeon not having a particular desired configuration.」
(この手術器具において、しばしば、外科医は、手術用切除刃の先端を(切除ウインドウ内の切除面を画定しつつ)特定の角度で正確に方向付けることが要求される。この要求のために、異なる固定角度に曲げられた第1端部を有する複数の手術用切除刃を有するキットが与えられている。手術の必要または要求に応じて、外科医は、到達すべき正確な位置で選択した手術用切除刃が正確に方向付けられるように、手術中に複数回にわたり、複数の異なる手術用切除刃を交換しなければならない。しかし、固定された異なる角度に曲げられた第1端を有する複数の手術用切除刃を有するキットを与えることは、コストが高くつき、かつ、さまざまな異なる角度を有するといっても、外科医が所望する特定の構成を達成することは困難である。)

1c:「[0034] Fig. 1 illustrates one embodiment of a surgical instrument 1 having a bent configuration to be used in a powered surgical tool system. Except for the cutting tool, to be described hereafter, the system may be in accordance with the system disclosed in U.S. Patent No. 7,247,161, the disclosure of which is incorporated herein by reference in its entirety. The shaft portion 120 of the surgical instrument 1 has a distally located semi-rigid section. Figs. 2A and 2B illustrates the surgical instrument 1 while in a straight configuration, with Fig. 2B being a sectional view taken along lines 2B-2B in Fig. 2A. Fig. 3A illustrates a cross- sectional view of the surgical instrument 1 with an inner tube 50 co-axially disposed within an outer tube 40. Fig. 3B is an enlarged view of a distal end 70 of surgical instrument 1. The inner tube 50 includes a fluid bodily materials removal passage 55 that extends the length of the inner tube 50. Passage 55 is attached to a suction source to remove fluids therethrough. The inner tube 50 also includes a cutting surface 55A at its distal end 50a (see Fig. 4) while the outer tube 40 includes a cutting window 45 at its distal end 40A (Fig. 4). The inner tube 50 is co-axially disposed within the outer tube 40 such that the cutting surface 55A is exposed at the cutting window 45. The cutting surface 55A disposed within the cutting window 45 form a cutting instrument, which cuts by rotating the inner tube 50 within the outer tube 40 while suction is applied through the inner tube 50. In particular, the embodiment illustrated in Fig. I is a surgical shaver or microdebrider, for use in endoscopic surgical procedures, that drives an elongated rotatable surgical instrument and aspirates material from a surgical work site. In operation, a surgeon grasps an elongated body of a handpiece in a manner similar to gripping a writing apparatus, such as a pencil or pen. While gripping the body of the handpiece in this manner, the surgeon is able to direct the distal end of the shaver blade assembly to the bodily material to be cut With the tips of the surgeon's fingers, the surgeon can manipulate the shaft portion 120 to orient the cutting window 45 to an appropriate position to cut the bodily material.」
(図1は、付勢された手術ツールシステムで使用される湾曲構成を有する手術器具1の実施形態を示す。切除ツールを除き、ここに開示するのは、ここに参考文献として組み込む米国特許第7,247,161号に開示されたシステムと同様である。手術器具1のシャフト部120は遠位に配置された半硬質部を有する。図2Aおよび2Bは直線構成における手術器具1を示す。図2Bは、図2Aの線2B-2Bの断面図を示す。図3Aは、外側チューブ40内部に同軸に配置された内側チューブ50を有する手術器具1の断面図を示す。図3Bは手術器具1の遠位端70の拡大図である。内側チューブ50は、内側チューブ50の長さ方向に延伸する流体/人体材料を除去する流路55を含む。流路55は、流れる流体を除去するための吸引源に取り付けられている。内側チューブ50は、遠位端50A(図4参照)において切除面55Aを有し、外側チューブ40はその遠位端40A(図4参照)において切除ウインドウ45を有する。内側チューブ50は、外側チューブ40内に同軸に配置されており、その結果、切除面55Aは切除ウインドウ45において露出される。切除ウインドウ45内に配置される切除面55Aは切除部材を形成し、それは、内側チューブ50を通じて吸引が適用されている間に外側チューブ40内で内側チューブ50が回転することによって組織を切除する。特に、図1に示す実施形態は内視鏡手術で使用するための手術シェーバーまたはマイクロデブリーダであり、細長い回転可能な手術器具1を駆動しかつ施術サイトから材料を吸引する。動作中、外科医は、鉛筆またはペンのような筆記具を掴むような方法で、持ち手部の細長いボディを握る。この方法で持ち手部のボディを握っている間、外科医はシェーバー刃組立体の遠位端を切除するべき人体組織の方向へ向けることができる。外科医の指の先端によって、外科医は、切除ウインドウ45の向きを人体組織を切断するのに適した方向に向けるように、シャフト部120を操作することができる。)

1d:「[0035] Fig. 4 illustrates an expanded view of the shaft portion 120 of the surgical instrument 1 according to one embodiment, including all of the various layers. As mentioned above, the inner tube 50 is provided with a distal end 50A having a cutting surface 55A and a proximal end 50B with a flexible portion 50C disposed therebetween. The outer tube 40 also includes a distal end 40A and a proximal end 40B with a flexible portion 40C disposed therebetween. The flexible portion 40C may comprise intermittent helically-staggered cuts through a wall of the outer tube 40 to allow the flexible portion 40C to bend in a number of planes. The intermittent helically-staggered cuts may be made with a laser or any other suitable means of cutting the flexible portion 40C.・・・」
(図4は、ひとつの実施形態に従う手術器具1のシャフト部120の分解図であり、さまざまな層のすべてが示されている。上述したように、内側チューブ50は切除面55Aを有する遠位端50Aおよび近位端50Bならびにそれらの間に配置されたフレキシブル部分50Cを備える。外側チューブ40は遠位端40Aおよび近位端40Bならびにそれらの間に配置されたフレキシブル部分40Cを有する。フレキシブル部分40Cは、フレキシブル部分40Cが多くの面で曲がることができるように外側チューブ40の壁を貫通する断続的螺旋状旋回カットを含む。断続的螺旋状旋回カットは、フレキシブル部分40Cを切断するレーザまたは他の適当な手段によって形成されている。・・・)

1e:「[0040] The surgical instrument 1 is configured to repeatedly transition from an unlocked state in which the shaft portion is easily bendable, to a locked state in which the shaft portion is rigidly set to a predetermined angle or configuration based on the actuation of the compression member 10. The predetermined angle or configuration can be any angle or configuration that a surgeon may desire for a given surgical procedure (or portion of a surgical procedure) and is not limited to a set number of predetermined angles. For example, using the same surgical instrument 1, the surgeon could adjust the bend angle to 30° for one part of a surgical procedure, and to 45° for another part of the same surgical procedure. An S- shaped, or bayonet-shaped, bend is also possible if the allowable bend length is long enough. ・・・With the surgical instrument 1, a surgeon can bend and lock the shaft portion 120 to virtually any desired orientation depending on the procedure to be performed, and the cutting window 45 orientation desired. Afterward, the surgeon can unlock the shaft portion and bend the shaft portion 120 to a different desired position to thereby adjust the bend angle and/or the orientation of the cutting window 45.」
(手術器具1は、シャフト部120が容易に湾曲可能なアンロック状態から、シャフト部120が圧縮部材10の作用に基づいて所定の角度または構成に堅固に設定されるロック状態へ、繰り返し移行するように構成されている。所定の角度または構成は、外科医が所与の施術(または施術の一部)で所望し、かつ、設定可能な所定の角度に制限がない、任意の角度または構成である。例えば、同じ手術器具1を使って、外科医は施術中の一部に対して湾曲角度を30°に調節することができ、同じ施術中の他の部分に対して45°に調節することができる。湾曲部の長さが十分であれば、S字形状またはバヨネット形状の湾曲も可能である。・・・外科医は、実質的に、施術に応じた所望の方向、および所望の切除ウインドウ45の方向にシャフト部120を曲げかつロックすることができる。その後、外科医は、シャフト部120をアンロックし、異なる所望の位置へ曲げ、それによって、湾曲角度および/または切除ウインドウ45の方向を調節する。)

1f:「[0044] By providing the disclosed compression-type locking semi-rigid tube 20, the links 21 (and thus the semi-rigid tube 20) can be made thinner. This enables the outer diameter of the entire surgical instrument to be reduced, which makes the instrument cause less trauma on the patient Without the compression-type locking structure, the links need to be made thicker so as to be stronger and thereby fit together (in a press-fit or interference-fit arrangement) more tightly so as to maintain any shape into which the tube is bent Even then, such thicker, stiffer bendable tubes do not always stay in the bent orientation when being inserted into a patient Thus, the disclosed embodiment provides a semi-rigid tube 20 made from thinner links and having a smaller outer diameter while also providing a stiffer tube when it is locked into the user-selected predetermined orientation.」
(開示した圧縮タイプのロック可能な半硬質チューブ20を設けることにより、リンク21(および半硬質チューブ20)はより薄く形成できる。これにより、手術器具1全体の外径を短縮することが可能となり、それは手術器具1に対する患者の精神的苦痛を少なくする。圧縮タイプのロック機構が無いと、リンク21はより強くするためにより厚くする必要があり、またリンク21はチューブが曲がる任意の形状を維持するためによりタイト(圧ばめ、または締まりばめ)に嵌め合う必要がある。そのように厚くて堅いチューブは、患者の体内に挿入された場合に常に同じ方向で曲がったままではない。よって、開示した実施形態は、ユーザが選択した所定の方向にロックしたとき堅固なチューブを与えつつ、より薄いリンク21およびより小さい外径で作成された半硬質チューブ20を与える。)

これらの記載及び図面を参照すれば、引用文献1の記載内容につき次の事項を認めることができる。
ア)手術器具1は、外側チューブ40の遠位端40Aを含み、当該遠位端40A内に配置された内側チューブ50の遠位端50Aを含む([0035]、FIG.3B、FIG.4)。
前記遠位端40Aは、切除ウィンドウ45を形成し、切除ウィンドウ45に露出する前記遠位端50Aの切除面55Aは、施術サイトで人体材料を切除するように構成され、また、切除される人体材料は、切除ウィンドウ45を介して内側チューブ50内の流路55に流れる([0034]、FIG.3B)。
イ)外側チューブ40のフレキシブル部分40Cは前記遠位端40Aに結合される([0035]、FIG.4)。
ウ)外側チューブ40のフレキシブル部分40C内には、内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50Cの一部が配置され、該フレキシブル部分50Cの遠端は、前記遠位端50Aに結合される([0035]、FIG.4)。内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50Cが回転すると、前記遠位端50Aを前記遠位端40Aに対して回転させて、前記切除される人体材料を切除する([0003]、[0034])。
エ)前記流路55は、吸引源に取り付けられ、前記内側チューブ50の遠位端50Aの内壁により部分的に形成されると共に、前記外側チューブ40の遠位端40Aに形成された切除ウィンドウ45から前記内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50Cに沿って前記吸入源まで延伸する([0034]、FIG.2B、FIG.3B)。
オ)手術器具1は、外側チューブ40のフレキシブル部分40Cと、内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50Cと、流路55とを含む([0035]、FIG.4)。

以上によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「外側チューブ40の遠位端40Aと、当該遠位端40A内に配置された内側チューブ50の遠位端50Aとを含む手術器具1であって、
前記遠位端40Aは、切除ウィンドウ45を形成し、切除ウィンドウ45に露出する前記遠位端50Aの切除面55Aは、施術サイトで人体材料を切除するように構成され、また、切除される人体材料は、切除ウィンドウ45を介して内側チューブ50内に流れ、
さらに、前記手術器具1は、
前記外側チューブ40の遠位端40Aに結合される外側チューブ40のフレキシブル部分40Cと、
前記外側チューブ40のフレキシブル部分40C内に一部が配置され、遠端が前記遠位端50Aに結合された内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50Cであって、当該内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50Cが回転すると、前記遠位端50Aを前記遠位端40Aに対して回転させて、前記切除される人体材料を切除するよう構成された、内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50Cと、
吸引源に取り付けられた流路55であって、前記内側チューブ50の遠位端50Aの内壁により部分的に形成されると共に、前記外側チューブ40の遠位端40Aに形成された切除ウィンドウ45から前記内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50Cに沿って前記吸入源まで延伸する流路55とを含む、手術器具1。」

2 引用文献2
上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
2a:「【請求項1】 湾曲部で接続された基端部と先端部とを有する固いチューブを含む外部材であって、該チューブの先端に形成された切開窓を含む外部材と、
外部材内に回転自在に配置された内部材であって、上記湾曲部に隣接する柔軟領域を形成するべく第1の方向に形成された螺旋状カットを有する一体型ワン・ピース構造の内チューブと、切開窓に隣接する内チューブの先端に設けられた切開チップと、上記螺旋状カット上に上記第1の方向と反対である第2の方向に螺旋状に巻かれた第1材料ストリップとを有する内部材と、を備えた角度付き回転式組織切開装置。」

2b:「【0023】
使用する時において、ハブ16および32は、フロリダ州ジャクソンビルのゾムド・サージカル・プロダクツ社が市販し、その開示内容が本明細書に参考により取り込まれるベイス(Bays)氏の米国特許第5,916,231号明細書に示されるストレートショット(STRAIGHTSHOT)(登録商標)等の周知のモーター駆動式ハンドピース(図示せず)に接続される。内部材14は外部材内で回転可能である一方、ハンドピースに対して外部材12は実質的に静止状態に保たれる。この時点で、内部材のチューブ状部分34は、外部材の先端に位置する切開窓30と隣接して配置される内部材の切開チップ38と、外部材の湾曲部内22に配置される内部材の螺旋状カット部と共に、外部材内に同軸に配置される。ハンドピースモーターを起動した時、外部材12は、ハンドピースに対し実質的に静止しているが、内部材14は回転する。より詳しくは、ハンドピースモーターの起動により、内部材の末端にあるハブ32が回転する。内部チューブ34は、ハブ32に固く取り付けられ、従って、ハブと同じ方向に回転し、螺旋状カット40がその回転に伴い内部材を湾曲させ、回転方向を反転した時は螺旋状ストリップ42および44の締め(take-up)が減じる。さらに詳しくは、ハブが螺旋状カットと同じ方向に回転する場合、内部チューブに巻かれた材料の最内部螺旋状ストリップは巻きを解く、または放射状に(半径方向に)広がろうとし、材料の最外部螺旋状ストリップの放射状収縮(半径方向の収縮)による抵抗を受け、トルクが遅延なく即座に伝達される。ハブが螺旋状カットと反対方向に回転する場合、材料の最内部螺旋状ストリップは巻き上げられ、放射状(半径方向)に収縮しようとし、内部チューブによる抵抗を受けてトルクが遅延なく即座に伝達される。」


第6 対比・判断
1 本願発明13について
(1)対比
本願発明13(前者)と引用発明(後者)とを対比する。
ア)前者の「軟性内視鏡の単一の器具チャンネル内に挿入可能な内視鏡器具」と後者の「手術器具1」とは、“手術器具”の点で共通する。
イ)後者の「外側チューブ40の遠位端40A」は、その形状、機能等からみて前者の「外側カニューレ」に相当し、以下同様に、「内側チューブ50の遠位端50A」は「内側カニューレ」に、「施術サイト」は「被験者内の部位」に、「人体材料」は「物質」に、「切除ウィンドウ45」は「開口部」に、それぞれ相当する。
後者においては、「遠位端40Aは、切除ウィンドウ45を形成し、切除ウィンドウ45に露出する前記遠位端50Aの切除面55Aは、施術サイトで人体材料を切除するように構成され」ていることから、遠位端40Aと遠位端50Aとが協働して一の切断手段を成し、施術サイトで人体材料を切除するものといえるので、当該「切断手段」、即ち、後者の「外側チューブ40の遠位端40A」及び「内側チューブ50の遠位端50A」が、前者の「被験者内の部位で物質を切除するよう構成された切断アセンブリ」に相当する。
また、後者では、「遠位端40Aは、切除ウィンドウ45を形成し」、「切除される人体材料は、切除ウィンドウ45を介して内側チューブ50内に流れ」ることから、両者は、「外側カニューレは、前記切除される物質が前記切断アセンブリに入る経路となる開口部を形成する」点で一致する。
ウ)後者の「外側チューブ40のフレキシブル部分40C」は、前者の「柔軟性外側チュービング」に相当するところ、当該「フレキシブルな部分40C」が柔軟性を備えていることは明らかであるから、両者は、「前記外側カニューレに結合されると共に」「柔軟性を備えた柔軟性外側チュービング」を含む点で一致する。
エ)後者では、「内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50Cが回転すると、前記遠位端50Aを前記遠位端40Aに対して回転させ」るのであるから、「内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50C」は、回転トルクが入力されるとそれを遠位端50Aへと伝達するよう構成された手段といえるし、また、その一部である「フレキシブル部分50C」が柔軟性を有することも明らかである。
よって、後者の「内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50C」は、前者の「柔軟性トルク構成要素」に相当し、また、「当該柔軟性トルク構成要素へのトルクの印加に応答して、前記内側カニューレを前記外側カニューレに対して回転させて前記切除される物質を切除するよう構成された柔軟性トルク構成要素」にも相当する。
さらに、後者の「内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50C」の「遠端」は、前者の「柔軟性トルク構成要素」の「遠位端」に相当する。
オ)後者の「流路55」は、「吸引源に取り付けられ」ているのであるから、その取り付け箇所に適宜のポートを有することは技術的に明らかである。
よって、後者の「吸引源に取り付けられた流路55」は、前者の「真空源に係合するよう構成された吸入ポートを備えた吸入チャンネル」に相当し、また、後者の「前記内側チューブ50の近位端50B及びフレキシブル部分50Cに沿って前記吸入源まで延伸する流路55」は、「前者の前記外側カニューレに形成された開口部から前記柔軟性トルク構成要素に沿って前記吸入ポートまで延伸する吸入チャンネル」に相当する。

よって、両者は、
「手術器具であって、
被験者内の部位で物質を切除するよう構成された切断アセンブリであって、外側カニューレと、当該外側カニューレ内に配置された内側カニューレとを含み、前記外側カニューレは、前記切除される物質が前記切断アセンブリに入る経路となる開口部を形成する、切断アセンブリと、
前記外側カニューレに結合されると共に柔軟性を備えた柔軟性外側チュービングと、
前記柔軟性外側チュービング内に一部が配置され、遠位端が前記内側カニューレに結合された柔軟性トルク構成要素であって、当該柔軟性トルク構成要素へのトルクの印加に応答して、前記内側カニューレを前記外側カニューレに対して回転させて前記切除される物質を切除するよう構成された柔軟性トルク構成要素と、
真空源に係合するよう構成された吸入ポートを備えた吸入チャンネルであって、前記内側カニューレの内壁により部分的に形成されると共に、前記外側カニューレに形成された開口部から前記柔軟性トルク構成要素に沿って前記吸入ポートまで延伸する吸入チャンネルとを含む、手術器具。」
の点で一致し、次の各点で相違する。
<相違点1>
前者は、「軟性内視鏡の単一の器具チャンネル内に挿入可能な内視鏡器具」であるのに対し、後者の「手術器具」は、軟性内視鏡の単一の器具チャンネル内に挿入可能か否か明らかでなく、そのため、前者の「柔軟性外側チュービング」が、「内視鏡器具を挿入できる前記器具チャンネルよりも小さい外径を備え」かつ「器具チャンネル内の多数の曲がりを通過するのに十分な柔軟性を備え」ているのに対し、後者の柔軟性外側チュービングは、内視鏡器具を挿入できる器具チャンネルよりも小さい外径を備えているのか否か不明であり、また、器具チャンネル内の多数の曲がりを通過するのに十分な柔軟性を備えているのか否かも不明な点。
<相違点2>
前者の「柔軟性外側チュービング」は、「外側カニューレを前記内側カニューレに対して回転させるよう構成されると共に」「外側カニューレの対応する長さの少なくとも40倍の長さを備える」のに対し、後者の柔軟性外側チュービングは、外側カニューレを内側カニューレに対して回転させるよう構成されるのか否か、外側カニューレの対応する長さの少なくとも40倍の長さを備えるのか否かがいずれも不明な点。
<相違点3>
前者の「柔軟性トルク構成要素」は、「柔軟性トルクコイル及び柔軟性トルクロープの一方を含む」のに対し、後者の柔軟性トルク構成要素は、柔軟性トルクコイル及び柔軟性トルクロープのいずれをも含まない点。

(2)判断
相違点1について検討する。
引用文献1における「外科医は、到達すべき正確な位置で選択した手術用切除刃が正確に方向付けられるように、手術中に複数回にわたり、複数の異なる手術用切除刃を交換しなければならない。しかし、固定された異なる角度に曲げられた第1端を有する複数の手術用切除刃を有するキットを与えることは、コストが高くつき、かつ、さまざまな異なる角度を有するといっても、外科医が所望する特定の構成を達成することは困難である。」(摘記事項1a)、「手術器具1に関して、外科医は、実質的に、施術に応じた所望の方向、および所望の切除ウインドウ45の方向にシャフト部120を曲げかつロックすることができる。その後、外科医は、シャフト部120をアンロックし、異なる所望の位置へ曲げ、それによって、湾曲角度および/または切除ウインドウ45の方向を調節する。」(摘記事項1e)、「圧縮タイプのロック機構が無いと、リンク21はより強くするためにより厚くする必要があり、またリンク21はチューブが曲がる任意の形状を維持するためによりタイト(圧ばめ、または締まりばめ)に嵌め合う必要がある。そのように厚くて堅いチューブは、患者の体内に挿入された場合に常に同じ方向で曲がったままではない。よって、開示した実施形態は、ユーザが選択した所定の方向にロックしたとき堅固なチューブを与えつつ、より薄いリンク21およびより小さい外径で作成された半硬質チューブ20を与える。」(摘記事項1f)等の記載からみて、引用発明の「手術器具」は、外科医がフレキシブル部分40C及びフレキシブル部分50Cを、予め所望の位置に曲げかつロックし、その後、患者の体内に挿入されるものと解される。
そうすると、手術器具が予め任意の形状に変形されロックされた場合、当該器具を内視鏡の器具チャンネルを介して体内に挿入することは、器具チャンネルの径等を考慮するともはや実質的に不可能といえることから、引用発明に接した当業者が、同発明を「軟性内視鏡の単一の器具チャンネル内に挿入可能な内視鏡器具」へと変更すべき動機付けはない。
また、引用文献2における上記摘記事項2a?2bの記載から、仮に、柔軟性トルクコイル及び柔軟性トルクロープの一方を含む柔軟性トルク構成要素が従来周知の技術であったとしても、予め任意の形状に変形されロックされた手術器具を、内視鏡の器具チャンネルを介して体内に挿入する事項までもが従来周知であったとはいえないし、また、引用文献2の他の記載をみても、当該事項については記載も示唆もない。
よって、引用文献2の記載を参酌しても、引用発明を出発点として、当業者が、相違点1に係る本願発明13の特定事項を容易に想到できたとはいえない。

(3)小括
したがって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本願発明13は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明14?20について
本願発明14?20は、本願発明13の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
そして、上記1で示したとおり、本願発明13は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そうすると、本願発明14?20は、本願発明13について示した理由と同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明1について
本願発明1は、本願発明13を特定するための事項である「内視鏡器具」を、「柔軟内視鏡器具」と限定したものに相当する発明である(上記「第3」における下線部参照。)。
そして、上記1で示したとおり、本願発明13は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そうすると、本願発明1は、本願発明13について示した理由と同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本願発明2?12について
本願発明2?12は、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
そして、上記3で示したとおり、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そうすると、本願発明2?12は、本願発明1について示した理由と同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?20は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて容易に発明をすることができたものではない。 また、当審で通知した拒絶理由は解消した。
したがって、原査定及び当審の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-19 
出願番号 特願2016-114249(P2016-114249)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮下 浩次  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 沖田 孝裕
関谷 一夫
発明の名称 組織除去のための挿入可能な内視鏡機器  
代理人 水野 祐啓  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ