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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A47L
管理番号 1356685
審判番号 不服2018-11556  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-27 
確定日 2019-11-26 
事件の表示 特願2016-526875「回転側面ブラシの適応速度制御」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月25日国際公開、WO2015/090403、平成29年 2月 2日国内公表、特表2017-503530、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)12月19日を国際出願日とする出願であって、平成29年10月31日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年2月7日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年5月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年8月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和元年6月17日付けで拒絶理由通知がされ、令和元年9月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願請求項1-12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、令和元年9月18日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ロボット掃除機において、
本体と、
前記ロボット掃除機を掃除対象表面上で移動させるように構成された推進システムと、
前記推進システムを、前記ロボット掃除機を前記掃除対象表面上で移動させるように制御するべく構成されたコントローラと、
前記本体の底面の、そこを介してごみを前記表面から取り除く開口と、
前記開口に隣接して配置された少なくとも1つの回転サイドブラシと、
を含み、
前記コントローラは、前記ロボット掃除機が前記掃除対象表面上で移動する速度を記録し、さらに、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの回転速度を、前記ロボット掃除機の前記記録された移動速度に基づいて制御するように構成され、
前記コントローラは、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの回転を、前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度に関係なく、前記回転速度が下側閾値を下回らないように制御するべく構成され、
前記コントローラは、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの前記回転を、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの円周方向の回転速度が前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度と実質的に等しいか、それより高くなるように制御するべく構成されるロボット掃除機。

【請求項2】
前記少なくとも1つの回転サイドブラシは、前記本体の外縁に配置される、請求項1に記載のロボット掃除機。

【請求項3】
前記コントローラは、前記ロボット掃除機の前記記録された移動速度が低下すると、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの前記回転速度を低下させ、前記ロボット掃除機の前記記録された移動速度が上昇すると、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの前記回転速度を上昇させるように構成される、請求項1または2に記載のロボット掃除機。

【請求項4】
前記コントローラは、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの前記回転速度を、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの円周方向への回転速度が前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度に応じるように制御するべく構成される、請求項1?3のいずれか1項に記載のロボット掃除機。

【請求項5】
前記コントローラは、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの回転方向を、前記サイドブラシの外縁上の、前記開口に対して遠位にある点が前記ロボット掃除機の移動方向と同じ方向に移動するように制御するべく構成される、請求項1?4のいずれか1項に記載のロボット掃除機。

【請求項6】
前記少なくとも1つの回転サイドブラシが、
前記開口の両側に横方向に配置された2つの回転サイドブラシを含む、請求項1?5のいずれか1項に記載のロボット掃除機。

【請求項7】
ロボット掃除機の少なくとも1つの回転サイドブラシの回転を制御する方法において、
前記ロボット掃除機の掃除対象表面上の移動を制御するステップと、
前記ロボット掃除機が前記表面上で移動する速度を記録するステップと、
前記少なくとも1つのサイドブラシの回転速度を、前記ロボット掃除機の移動速度に基づいて制御するステップと、
を含み、
前記少なくとも1つのサイドブラシの前記回転速度を制御する前記ステップは、
前記少なくとも1つの回転サイドブラシの前記回転を、前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度に関係なく、前記回転速度が下側閾値を下回らないように制御するステップと、
前記少なくとも1つの回転サイドブラシの前記回転を、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの円周方向の回転速度が前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度と等しいか、それより高くなるように制御するステップと、を含む方法。

【請求項8】
前記少なくとも1つのサイドブラシの前記回転速度を制御する前記ステップは、
前記ロボット掃除機の前記記録された移動速度が低下すると、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの前記回転速度を低下させるステップと、
前記ロボット掃除機の前記記録された移動速度が上昇すると、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの前記回転速度を上昇させるステップと、
を含む、請求項7に記載の方法。

【請求項9】
前記少なくとも1つのサイドブラシの前記回転速度を制御する前記ステップは、
前記少なくとも1つの回転サイドブラシの前記回転を、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの円周方向の回転速度が前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度に応じるように制御するステップを含む、請求項7または8に記載の方法。

【請求項10】
前記少なくとも1つのサイドブラシの前記回転速度を制御する前記ステップは、
前記少なくとも1つの回転サイドブラシの回転方向を、前記サイドブラシの外縁上の、開口に対して遠位にある点が前記ロボット掃除機の移動方向と同じ方向に移動するように制御するステップを含む、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。

【請求項11】
コンピュータ実行可能命令であって、掃除機に、前記コンピュータ実行可能命令が前記掃除機に含まれる処理ユニット上で実行されたときに、請求項7?10のいずれか1項に記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラム。

【請求項12】
請求項7から10のいずれか1項に記載のステップを実行するようにコントローラに命令するためのコンピュータプログラムを記録した、コンピュータ読取可能媒体。」

第3 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2007-143645号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、移動機能と掃除機能を備えて自律的に掃除を行う自律移動掃除機に関する。」(下線は、理解の一助のために当審で付した。以下同様。)

イ 「【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る自律移動掃除機について、図面を参照して説明する。図1、図2、図3は、自律移動掃除機1の外観構造を示し、図4は、自律移動掃除機1の内部構造であるブロック構成を示す。この自律移動掃除機1は、これらの図に示すように、回転動作して床面の清掃を行うブラシ4,5と、走行を行うための走行手段2と、走行経路を生成する経路生成部3と、経路生成部3の生成した走行経路にしたがって走行するように走行手段2を制御するとともにブラシの動作を制御する制御部20と、走行速度を取得する走行情報取得部6と、制御部20が走行手段2の制御及びブラシ4,5による清掃の動作を制御のために外部の環境情報を取得する環境情報取得手段7と、清掃対象域を含む走行領域内の地図情報を予め記憶させている記憶装置23と、ブラシ4,5等を駆動制御して清掃を行うための各駆動部と、掃除ブロア8と、を備えている。
【0015】
そして、自律移動掃除機1の制御部20は、走行速度が小さくなるにつれてブラシ4,5の回転数を減少させることにより、床面の一定の場所を一定時間に過度にブラッシングすることを防止して、床面を傷つけるのを防止する。制御部20は、自律移動掃除機1の全体の中枢を構成するものであり、マイクロコンピュータなどからなる。なお、自律移動掃除機1は、自律清掃機能として必要な回路系、駆動系、情報取得系などの構成要素の電源としてバッテリBTを備えている。以下、自律移動掃除機1の各部の構成と機能を説明する。
【0016】
自律移動掃除機1の走行手段2は、後部左右の駆動輪2aと、前部中央に設けた1つのキャスタ2bと、各駆動輪2aを回転駆動させるモータM1と、キャスタ2bの向きを転換させて操舵するためのモータM2とを備えている。これらのモータM1,M2の駆動は、制御部20によりモータドライブ部21を通じて制御される。自律移動掃除機1は、駆動輪2aの回転による推進力とキャスタ2bの指示方向とにより走行する。
【0017】
経路生成部3は、清掃する領域を清掃作業によって塗りつぶして移動するように、あるいは、所定の出発点から目的地まで清掃しつつ移動するように、移動経路を生成する。このような移動経路の生成や移動のために、環境情報取得手段7によって取得される環境情報とこれに基づく自己位置の情報が用いられる。
【0018】
環境情報取得手段7は、自律的に移動して掃除を行う領域の環境情報を取得し、この環境情報に基づいて、制御部20が、走行手段2の制御及びブラシ4,5による清掃の動作の制御を行う。環境情報は、自己位置を認識するための環境中の標識の位置や、走行中に衝突しないように検出する障害物や、掃除するためのゴミの性状に関する情報である。環境情報取得手段7は、例えば、環境情報としての進行方向の壁の位置や障害物を精度良く検出できるレーザレーダ12、周囲の広い範囲で障害物を検出できる複数の超音波センサ13、床面の段差や床面上のゴミを検出できる距離画像カメラ14等から構成される。」

ウ 「【0025】
次に、自律移動掃除機1の掃除機能の構成を説明する。自律移動掃除機1は、その前部両側の下部に設けられ床面に垂直な回転軸回りに回転駆動されるサイドブラシ4と、キャスタ2bと駆動輪2aとの間に開口したゴミ掃込口51内に設けられ床面に平行な回転軸回りに回転駆動されるメインブラシ5と、ゴミ掃込口51の開口の開閉量を調整するフラッパ52と、ゴミ掃込口51から掃き込まれるゴミを吸引する掃除ブロア8と、後方に開口した掃除ブロア8の排気口に装着されたフィルタ9と、サイドブラシ4及びメインブラシ5を回転駆動するモータM3,M4と、フラッパ52の開閉駆動部10と、両ブラシ4,5を上下移動させる駆動部11a,11bとを備えている。
【0026】
上述のサイドブラシ4は、自律移動掃除機1の前方左右から中心方向にゴミを掃き寄せて、メインブラシ5の方向へ送り込む。メインブラシ5は、ゴミを前方から後方に向けて掃くと共に、ゴミ掃込口51内に掃き上げる。掃き上げられたゴミは、掃除ブロア8によって吸い込まれて所定のゴミ容器に収納されると共に、掃除ブロア8が吸い込んだ空気は、フィルタ9を介して排出される。」

エ 「【0028】
次に、上述のブラシ4,5の上下位置や回転速度を、移動中に得られる環境情報に基づいて、制御部20が制御することについて説明する。制御部20は、上述の距離画像カメラ14の撮像データに基づく床面の凹凸段差の検出情報や、上述のレーザレーダ12による坂道(斜面)検知情報が得られると、地図情報に付加されている凹凸段差の高さ情報や坂道の角度情報に応じて駆動部11a,11bを制御して、ブラシ4,5を個別に又は同時に上昇又は下降させ、坂道の傾斜や凹凸段差に対応した清掃を可能とする。
【0029】
上述のブラシ4,5の上下位置や回転速度の制御は、床面を傷つけないために、より積極的に行われる。例えば、自律移動掃除機1は、走行速度が小さくなるにつれてブラシ4,5の動作回転数を減少させる。さらに、ブラシ4,5の移動速度が所定の値より小さくなったときは、ブラシ4,5は床面から離すように制御される。このように、動作の開始や終了時だけでなく、障害物回避のための旋回時に掃除機の動作方向が変わる位置において走行速度が低下してもブラシを上昇させることにより、床面が傷つけられるのを防止できる。」

オ 「【0031】
このとき、左右のサイドブラシ4の動作回転数が同じであると、内側のサイドブラシ4が外側のサイドブラシ4よりも速度が遅く床面に対する滞留時間が長くなり、より長時間ブラッシングすることになる。そして、過度のブラッシングは、床面を傷つけることになるので好ましくない。そこで、制御部20は、内側のブラシ4の動作回転数を減少させることにより床面を保護する制御を行う。
【0032】
上述のように、自律移動掃除機1においては、左右のサイドブラシ4のように、ブラシが複数ある場合に、各ブラシの中心位置での個別の速度を算出し、それぞれの速度に応じてブラシの動作回転数を減少させことができる。すなわち、走行情報取得部6は、走行経路の旋回半径を取得し、制御部20は、走行情報取得部6の取得した走行速度と旋回半径に基づいて複数の左右のサイドブラシ4のそれぞれについての床面に対する移動速度を算出し、移動速度が小さくなるにつれてサイドブラシ4の回転数を減少させる。このような制御により、複数ブラシが配置されている場合であっても、過度のブラッシングによる床面の傷つけを防止することができる。

カ 上記イの記載及び図1ないし3の記載から、自律移動掃除機1は、走行手段2、制御部20などを設けるための本体を含むことが理解できる。

キ 上記ウの記載及び図2の記載から、自律移動掃除機1は、そこを介してゴミを清掃を行う床面から掃き上げるゴミ掃込口51を備えていることが理解できる。

ク 上記ウ及びオの記載並びに図3の記載から、自律移動掃除機1は、ゴミ掃込口51に隣接して配置された左右の回転駆動されるサイドブラシ4を備えていることが理解できる。

ケ 上記イの記載によれば、自動移動掃除機1は、走行速度を取得する走行情報取得部6を備えており、また、上記エの記載によれば、制御部20は、自立移動掃除機1の走行速度が小さくなるにつれてブラシ4,5の動作回転数を減少させるものであるから、走行速度が小さくなるにつれてブラシ4,5の動作回転数を減少させる制御をするために走行情報取得部6で取得した走行速度を記録していることは、技術常識から明らかである。そうすると、上記イ及びエの記載と技術常識から、制御部20は、サイドブラシ4の動作回転数を、自立移動掃除機1の記録された走行速度が小さくなるにつれて減少させるように制御していることが理解できる。

コ したがって、上記アないしケを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「自律移動掃除機1において、
本体と、
前記自律移動掃除機1を清掃を行う床面で走行を行うように構成された走行手段2と、
前記走行手段2を、前記自律移動掃除機1を前記清掃を行う床面で走行を行うように制御するべく構成された制御部20と、
そこを介してゴミを前記清掃を行う床面から掃き上げるゴミ掃込口51と、
前記ゴミ掃込口51に隣接して配置された左右の回転駆動されるサイドブラシ4と、
を含み、
前記制御部20は、前記自律移動掃除機1が前記清掃を行う床面で走行を行う走行速度を記録し、さらに、前記左右の回転駆動されるサイドブラシ4の動作回転数を、前記自律移動掃除機1の前記記録された走行速度が小さくなるにつれて減少させるように制御するべく構成される自律移動掃除機1。」

2 引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特表2008-543394号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0031】
タービン6が、ハウジング2の内部に装着され、かつシャフト7の周りで回転するように構成されており、シャフト7は、真空掃除機が動作しているとき、タービン6を回転させるようにタービン6の翼に当たるように意図されている矢印「A」によって図2で示されている吸引空気流の移動方向に対して、ほぼ横方向に配置されている。」

イ 「【0034】
ハウジング2の上述の側面102に向かって方向付けられた円筒形のドラム10の一方の端部が、伝達プーリ12を支持している。駆動ベルト13が、伝達プーリ12と駆動プーリ8の間に巻き付けられ、張力をかけられており、前記ベルト13が、タービン6の運動を回転自在なブラシ9に伝達する。」

ウ 「【0038】
好ましくは、モータ発電機ユニット14は、それに付随するエンコーダ15を備え、エンコーダは、毎分回転数または角速度などの、シャフト7の回転速度を示すパラメータの値を検出するように構成されている。エンコーダ15はまた、検出された値を電子基板16のプロセッサへ送信するように構成されている。電子基板16は、図1および2で見ることができるように、たとえばケーブル17を用いて、エンコーダ15と接続されている。電子基板16は、好ましくは、下側および上側閾値毎分回転数または下側および上側閾値角速度などの、第1のシャフト7の回転速度を示すパラメータに対する事前に定義された閾値(下側閾値および上側閾値)を保存するためのメモリを備える。」

エ 「【0051】
掃除されるべき表面が高い抵抗を与える場合、たとえば、表面が特に粗い、またはかなり長い毛足を有する場合、回転自在なブラシ9の回転速度が、毎分回転数(または角速度)が電子基板16のメモリ内に保存されている事前に定義された下側閾値よりも小さくなるまで、かなり低下される。電子基板16が、回転自在なブラシ9の効果的な動作を再構築および維持するために、モータ発電機ユニット14の動作を切り替え、ユニットをモータに変換し、このことが回転自在なブラシ9に追加の回転トルクを付加し、この回転トルクが、タービン6による回転トルクに追加される。」

オ 「【0089】
したがって、本発明の目的のために、本説明および特許請求の範囲で使用されるような「真空掃除機」という用語は、家庭用真空掃除機、産業用真空掃除機、鉛直真空掃除機、中央集中型真空掃除機、ウォーターフィルタリング真空掃除機、スチーム噴射および吸引装置、バックパック真空掃除機、ベルト真空掃除機、電気ほうき、ウェット&ドライ装置、壁に取り付けられた装置などからなる群のデバイスを含む。同様に、「真空掃除機ノズル」という用語は、上記の任意の真空掃除機のいずれかに関連して使用するためのノズルとして意図されるべきである。」

第4 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「自律移動掃除機1」、「走行手段2」、「制御部20」、「ゴミ」、「ゴミ掃込口51」、「左右の回転駆動されるサイドブラシ4」、「動作回転数」は、本願発明1における「ロボット掃除機」、「推進システム」、「コントローラ」、「ごみ」、「開口」、「少なくとも1つの回転サイドブラシ」、「回転速度」に相当する。

イ 引用発明の「清掃を行う床面で走行を行う」動作は、本願発明1の「掃除対象表面上で移動させる」動作に相当する。同様に、引用発明の「清掃を行う床面で走行を行う走行速度」は、本願発明1の「掃除対象表面上で移動する速度」に相当する。

ウ 引用発明の「清掃を行う床面から掃き上げる」ことは、ゴミを取り除くことを意図しているから、本願発明1の「表面から取り除く」ことに相当する。

エ 引用発明の「回転駆動されるサイドブラシ4の動作回転数を、前記自律移動掃除機1の前記記録された走行速度が小さくなるにつれて減少させるように制御する」ことは、少なくともサイドブラシ4の回転速度を走行速度に基づいて制御している点で、本願発明1の「回転サイドブラシの回転速度を、前記ロボット掃除機の前記記録された移動速度に基づいて制御する」ことと一致する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ロボット掃除機において、
本体と、
前記ロボット掃除機を掃除対象表面上で移動させるように構成された推進システムと、
前記推進システムを、前記ロボット掃除機を前記掃除対象表面上で移動させるように制御するべく構成されたコントローラと、
そこを介してごみを前記表面から取り除く開口と、
前記開口に隣接して配置された少なくとも一つの回転サイドブラシと、
を含み、
前記コントローラは、前記ロボット掃除機が前記掃除対象表面上で移動する速度を記録し、さらに、前記少なくとも一つの回転サイドブラシの回転速度を、前記ロボット掃除機の前記記録された移動速度に基づいて制御するべく構成されるロボット掃除機。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「本体の底面の、そこを介してごみを前記表面から取り除く開口」を備えるのに対し、引用発明はゴミ掃込口51を本体の底面に備えているか不明な点。

(相違点2)本願発明1は「コントローラは、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの回転を、前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度に関係なく、前記回転速度が下側閾値を下回らないように制御するべく構成され」るのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点3)本願発明1は「コントローラは、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの前記回転を、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの円周方向の回転速度が前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度と実質的に等しいか、それより高くなるように制御するべく構成され」るのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。

引用文献2には、真空掃除機のブラシ9にシャフト7の周りで回転するタービン6の運動を伝達し、前記シャフト7の回転速度を示すパラメータに事前に定義された下側閾値を保存するためのメモリを備えることに関する技術的事項が記載されているが、そもそもロボット掃除機に関するものではなく、サイドブラシを含む本体が掃除対象表面上を移動するものでもない。したがって、サイドブラシの回転を、移動速度に関係なく、回転速度が下側閾値を下回らないように制御することは、何ら記載されていない。

仮に、引用文献2に記載された真空掃除機の技術がロボット掃除機に適用できるものであるとしても、引用文献1の段落【0029】の記載によれば、制御部20は、サイドブラシ4の移動速度が所定の値より小さくなったときは、床面が傷つけられるのを防止するために、サイドブラシ4を床面から離すように制御するものである。そうすると、引用発明において、回転速度が下側閾値を下回らないように制御するべく構成される旨の記載も示唆もなく、かかる構成を採用する動機付けは見当たらない。

そして、本願発明1の「ロボット掃除機」であることを前提として、回転サイドブラシの回転が「ロボット掃除機の掃除対象表面上での移動速度に関係なく、回転速度が下側閾値を下回らないように制御する」という技術的事項は、引用文献1及び引用文献2のいずれにも記載も示唆もされておらず、本願発明1は、かかる事項により、引用文献1及び引用文献2の記載事項から予測し得ない「ロボット掃除機10がゆっくりと移動し、またはさらには停止した場合に回転サイドブラシ24が静止するのを防止する(本願明細書段落【0031】)」という効果を奏するものである。

したがって、上記相違点1,3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2-6について

本願発明2-6も、本願発明1の「前記少なくとも1つの回転サイドブラシの回転を、前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度に関係なく、前記回転速度が下側閾値を下回らないように制御する」構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明7について

本願発明7は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「前記少なくとも1つの回転サイドブラシの回転を、前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度に関係なく、前記回転速度が下側閾値を下回らないように制御する」構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本願発明8-12について

本願発明8-12も、本願発明1の「前記少なくとも1つの回転サイドブラシの回転を、前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度に関係なく、前記回転速度が下側閾値を下回らないように制御する」構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断

原査定は、請求項1-14について上記引用文献1,2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和元年9月18日にされた手続補正により補正された請求項1,7は、それぞれ「コントローラは、前記少なくとも1つの回転サイドブラシの回転を、前記ロボット掃除機の前記掃除対象表面上での前記移動速度に関係なく、前記回転速度が下側閾値を下回らないように制御する」構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-12は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について

1.特許法第36条第6項第2号について

当審では、請求項12の「コンピュータプログラム製品」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和元年9月18日にされた補正において、「コントローラに命令するためのコンピュータプログラムを記録した、コンピュータ読取可能媒体」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明1-12は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-13 
出願番号 特願2016-526875(P2016-526875)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A47L)
P 1 8・ 121- WY (A47L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 片岡 弘之渋谷 善弘  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 松本 泰典
柿崎 拓
発明の名称 回転側面ブラシの適応速度制御  
代理人 龍華国際特許業務法人  
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