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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B |
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管理番号 | 1356731 |
審判番号 | 不服2018-8212 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-14 |
確定日 | 2019-11-05 |
事件の表示 | 特願2016-216707「焼結結合されたセラミック物品」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日出願公開、特開2017- 81816〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成25年3月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:平成24年3月22日、米国)を国際出願日とする特願2015-501938号の一部を平成28年11月4日に新たな出願としたものであって、原審にて平成30年2月9日付けで拒絶査定がされ、同年6月14日付けでこの査定を不服とする本件審判の請求がされると同時に手続補正がされ、これに対し、当審にて平成31年2月14日付けで拒絶理由を通知したところ、令和1年5月15日付けで意見書の提出と共に手続補正がされたものである。 第2.本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年5月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。 「焼結セラミック物品であって: 炭化ケイ素を含み、チューブを具備する第1コンポーネントと; 炭化ケイ素を含む第2コンポーネントと; 炭化ケイ素を含む第3コンポーネントと; を備え、 前記第2コンポーネント及び前記第3コンポーネントが、前記チューブの向かい合う軸方向端部に配置されて前記チューブの外径の周囲で前記チューブを囲むフランジであり、各フランジが前記フランジの外部寸法を画定する位置で終端する放射状に突出する壁を有しており、前記第2および第3コンポーネントの間にはフランジが配置されておらず、前記放射状に突出する壁は平面状の表面を有し、 前記焼結セラミック物品は、さらに、前記チューブと前記第2コンポーネントとの間の第1境界面及び前記チューブと前記第3コンポーネントとの間の第2境界面であって: i)10%以下の窒素封止性能であって、前記窒素封止性能は200psiの印加ゲージ圧で2時間の間に前記境界面の前後で発生する圧力低下のパーセントである; ii)10%以下のヘリウム封止性能であって、前記ヘリウム封止性能は87PSI(ゲージ圧)の初期差圧で2時間の間に前記境界面の前後で発生する圧力低下である;及び iii)10%以下の減圧封止性能 からなる群から選択される少なくとも1つの性能的特徴を有し、焼結結合である各境界面を含み、 前記第1コンポーネント及び前記第2コンポーネントが: 少なくとも91重量%で、99.85重量%以下の量の炭化ケイ素を含み、前記炭化ケイ素の少なくとも95重量%がα相である、焼結セラミック物品。」 第3.当審の拒絶理由 当審にて通知した拒絶理由の一つは、 特許第2802013号公報(以下、「引用例1」という。) を引用し、 「本願発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張の基礎とされた先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 というものである。 第4.引用例の記載 引用例1には次の記載がある。 【0008】 【課題を解決するための手段】 本発明によれば、穿設孔を有する第1セラミックス未焼結体と、円筒形状又は円柱形状を有する第2セラミックス焼結体とを、該第1セラミックス未焼結体の穿設孔に該第2セラミックス焼結体を挿入し、接合材を使用しない状態で加熱焼成し、一体的に接合する接合方法において、該第1セラミックス未焼結体及び該第2セラミックス焼結体が窒化珪素又は炭化珪素であり、該第1セラミックス未焼結体の穿設孔径が、何も挿入されていない状態で加熱焼成した場合、該第2セラミックス焼結体の外径より0.1?1.0mm小さくなるように設定し、接合部からのリークを防止したことを特徴とするセラミックスの接合方法が提供される。 【0011】 本発明において、第1セラミックス未焼結体及び第2セラミックス焼結体に用いるセラミックスとしては、エンジン、産業機械及び熱交換器等に使用する場合を考慮して、高強度・高耐熱性の窒化珪素や炭化珪素を採用する。また、第1セラミックス未焼結体の形状、厚み、大きさは特に制限されず、使用目的、条件にあわせて選択すればよいが、例えば熱交換器に用いる場合、高圧ガス流れ方向に対し、接合部の接合距離が長いほどシール効果が大きくなるので、3mm以上の厚みを有することが好ましい。第1セラミックス未焼結体の穿設孔数にも特に制限はなく、1つの穿設孔のみを有する単孔板であっても、複数の穿設孔を有する多孔板であってもよい。更に、締め代0.1?1.0mmの範囲にある限り、第1セラミックス未焼結体の穿設孔の孔径や配置、第2セラミックス焼結体の外径や長さにも特に制限はない。第1セラミックス未焼結体の穿設孔は、成形時に同時に設けてもよいし、成形後に穿つようにしてもよい。 【0015】得られた接合体について、図3に示す気密性試験装置を用い接合部の気密性を調べた。図3において、接合体1は、水槽6に設置された保持治具7により保持され、この保持治具7と接合体1との間は、Oリング9より封止されている。そして、この状態で、7kg/cm^(2)のエアを通気路10を介して接合部に負荷し、接合部から漏出したエアをメスシリンダーにより補集し、その容量を測定した。 【0023】(実施例8)炭化珪素原料粉末に焼結助剤としてB_(4)Cを1.5重量%、Cを1重量%(いずれも外配量)添加し、これをアトライターで混合粉砕した後、乾燥造粒して得た原料を用いて、プレス成形により60×60mm、厚さ10mmの角板状の成形体を得た。これに、直径6.7mmの孔を7ヶ打抜きにより形成し、110℃で10時間乾燥した後、窒素雰囲気中500℃で5時間バインダ仮焼して第1セラミックス未焼結体を作製した。また、第1セラミックス未焼結体で用いたものと同じ原料を用いて、押出成形により直径6mm、長さ50mmの円柱棒を成形し、第1セラミックス未焼結体におけると同様の条件で乾燥及びバインダ仮焼を行った後、アルゴン雰囲気中2000℃で3時間焼成して第2セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の接合面には、切削加工を施した。これらを、アルゴン雰囲気中2000℃で3時間加熱焼成して接合一体化した。なお、この接合において、締め代は0.4mmとした。得られた接合体について、実施例1と同様に評価試験を行った。結果を表1に示す。 【0027】 【表1】 【図3】 第5.引用発明の認定 引用例1の【0008】には、穿設孔を有する第1セラミックス未焼結体と、第2セラミックス焼結体とを、該第1セラミックス未焼結体の穿設孔に該第2セラミックス焼結体を挿入し、接合材を使用しない状態で加熱焼成し、一体的に接合する接合方法において、該第1セラミックス未焼結体の穿設孔径が、何も挿入されていない状態で加熱焼成した場合、該第2セラミックス焼結体の外径より0.1?1.0mm小さくなるように設定し、接合部からのリークを防止するセラミックスの接合方法が記載され、同【0015】【0023】【表1】には、このセラミックスの接合方法の「実施例8」において、第1セラミックス未焼結体として穿設孔を有する成形体角板、第2セラミックス焼結体として焼結体円柱棒を用いて製造された炭化珪素セラミックスの接合体として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「第1セラミックス未焼結体からなる穿設孔を有する成形体角板と、第2セラミックス焼結体とを、該第1セラミックス未焼結体の穿設孔に該第2セラミックス焼結体円柱棒を挿入し、接合材を使用しない状態で加熱焼成し、一体的に接合した接合体であって、 該第1セラミックス未焼結体及び該第2セラミックス焼結体が、焼結助剤としてB_(4)Cを1.5重量%、Cを1重量%(いずれも外配量)添加した炭化珪素であり、該第1セラミックス未焼結体の穿設孔径が、何も挿入されていない状態で加熱焼成した場合、該第2セラミックス焼結体の外径より0.4mm小さくなるように設定し、7kg/cm^(2)のエアを負荷する気密性試験で接合部からのリークが防止された炭化珪素セラミックスの接合体。」 第6.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「炭化珪素セラミックスの接合体」が本願発明の「焼結セラミック物品」に相当し、以下、「第2セラミックス焼結体」が「第1コンポーネント」、焼成後の「第1セラミックス未焼結体」が「第2コンポーネント」、「穿設孔を有する成形体角板」が「外部寸法を画定する位置で終端する放射状に突出する壁を有しているフランジ」、「接合部」が「第1境界面」、「加熱焼成し、一体的に接合」が「焼結結合」にそれぞれ相当する。 また、引用例1の【図3】によれば、引用発明において、穿設孔を有する成形体角板は、平面状の表面を有し、焼結体円柱棒の軸方向端部に配置されているものと認められる。そして、その炭化珪素の含有量は、SiC/(SiC+B_(4)C+C)≒97.56%重量%と認められる。 してみると、本願発明のうち、 「焼結セラミック物品であって: 炭化ケイ素を含む第1コンポーネントと; 炭化ケイ素を含む第2コンポーネントと; を備え、 前記第2コンポーネントが、(第1コンポーネントの)軸方向端部に配置されて(第1コンポーネントの)外径の周囲で(第1コンポーネント)を囲むフランジであり、フランジが前記フランジの外部寸法を画定する位置で終端する放射状に突出する壁を有しており、前記放射状に突出する壁は平面状の表面を有し、 前記焼結セラミック物品は、さらに、前記(第1コンポーネント)と前記第2コンポーネントとの間の第1境界面であって:焼結結合である境界面を含み、前記第1コンポーネント及び前記第2コンポーネントが: 少なくとも91重量%で、99.85重量%以下の量の炭化ケイ素を含む、焼結セラミック物品。」の点は、引用発明と一致し、両者は次の点で相違する。 相違点1:本願発明の第1コンポーネントが「チューブを具備」し、第1コンポ-ネントの他端にチューブを囲むフランジの「第3コンポーネント」が配置され、第1コンポーネントと第3コンポーネントの間に「第2境界面」を含むの対し、引用発明の第2セラミック焼結体は円柱棒であり、一端にしか成形体角板を備えていない点。 相違点2:本願発明の境界面が、 「i)10%以下の窒素封止性能であって、前記窒素封止性能は200psiの印加ゲージ圧で2時間の間に前記境界面の前後で発生する圧力低下のパーセントである; ii)10%以下のヘリウム封止性能であって、前記ヘリウム封止性能は87PSI(ゲージ圧)の初期差圧で2時間の間に前記境界面の前後で発生する圧力低下である;及び iii)10%以下の減圧封止性能 からなる群から選択される少なくとも1つの性能的特徴を有」するのに対し、引用発明の接合部が、 「7kg/cm^(2)(約100PSI)のエアを負荷する気密性試験で接合部からのリークが防止された」ものである点。 相違点3:本願発明の炭化ケイ素の「少なくとも95重量%がα相である]のに対し、引用発明の炭化珪素の結晶相が不明である点。、 第7.相違点の判断 これらの相違点について検討する。 相違点1について 引用例1の【0008】には、引用発明に係るセラミックスの接合方法において、第2セラミックス焼結体は「円筒形状」でも良いことが記載され、同【表1】には、チューブ状焼結体を使用した実施例も記載されている。さらに、同【0011】には、当該接合方法による接合体の用途について「熱交換器等」が記載されているところ、熱交換器において、伝熱管の両端にフランジ状の板を設けることは周知(要すれば、特開昭61-134597号公報第1図、特開昭60-169086号公報第3図等参照)と認められる。 してみると、引用発明において、第2セラミックス焼結体をチューブ形状とし、その他端にも穿設孔を有する成形体角板を備えるようにすることは、熱交換器等における伝熱管としての使用を目的として当業者が容易になし得た設計変更にすぎない。 相違点2について 本願明細書の【0002】【0018】?【0021】には、本願発明の境界面の封止性能が、予備焼結した第1コンポーネントに未焼結の第2コンポーネントが干渉結合(収縮しながら焼結結合)することにより得られる旨記載されている。 してみると、引用発明の接合部もその接合方法からみて干渉結合と認められるから、相違点2は、単なる封止性能試験方法の差異であって、封止性能において実質的な差異があるとはいえない。 相違点3について 引用発明のようにホウ素や炭素を焼結助剤とする炭化珪素セラミックスにおいて、α相を有する炭化珪素を原料とすることは周知(要すれば、特開昭54-144411号公報請求項1、特開平7-257972号公報請求項1等参照)である。 してみると、相違点3は実質的な差異でないか、仮にそうでないとしても当業者にとって設計的事項の範囲内のものといえる。 したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第8.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、当審の拒絶理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-06-10 |
結審通知日 | 2019-06-14 |
審決日 | 2019-06-25 |
出願番号 | 特願2016-216707(P2016-216707) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 永一 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 宮澤 尚之 |
発明の名称 | 焼結結合されたセラミック物品 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 木下 智文 |
代理人 | 下山 治 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 永川 行光 |