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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1356770
審判番号 不服2018-15919  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-30 
確定日 2019-11-07 
事件の表示 特願2017- 98153号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-136455号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年4月22日に出願した特願2011-96274号の一部を平成27年11月24日に新たな特許出願(特願2015-228764号)とし、さらにその一部を平成29年5月17日に新たな特許出願(特願2017-98153号)としたものであって、平成30年2月16日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月30日付け(送達日:同年9月4日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、当審において、令和1年5月20日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年7月22日に意見書及び手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、記号AないしKは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技球の入賞が困難な閉止状態と、前記閉止状態と比較して遊技球の入賞が容易な開放状態と、を形成することが可能な可変入賞装置と、
B 前記可変入賞装置への遊技球の入賞を契機として、特賞状態を生起させるか否かを決定する特図抽選を実行する特図抽選手段と、
C 前記特図抽選が実行された場合に、該特図抽選に係る特別図柄の変動表示を行った後に、該特図抽選の結果に対応する態様にて該特別図柄の停止表示を行う特図表示制御手段と、
D 遊技球による所定領域の通過を契機として、前記可変入賞装置を前記閉止状態から前記開放状態へと変位させる入賞口開放遊技を生起させるか否かを決定する普図抽選を行う普図抽選手段と、
E 前記普図抽選が実行された場合に、該普図抽選に係る普通図柄の変動表示を行った後に、該普図抽選の結果に対応する態様にて該普通図柄の停止表示を行う普図表示制御手段と、
F 前記普通図柄が当選となる態様にて停止表示された場合に、前記入賞口開放遊技を生起させる入賞口開放遊技制御手段と、
G 前記入賞口開放遊技を、前記可変入賞装置が前記開放状態とされる時間が通常状態と比較して延長された延長状態にて実行可能に制御する開放時間制御手段と、
H 前記特別図柄の変動表示を、該変動表示が行われる時間が特図変動時間通常状態と比較して短縮された特図変動時間短縮状態にて実行可能に制御する特図変動時間制御手段と、
I 前記普通図柄の変動表示を、該変動表示が行われる時間が普図変動時間通常状態と比較して短縮された普図変動時間短縮状態にて実行可能に制御する普図変動時間制御手段と、
J 前記特図抽選を、前記特賞状態を生起させる確率が第1抽選確率状態と比較して高く設定された第2抽選確率状態にて実行可能に制御する抽選確率制御手段と、を備え、
G-1 前記開放時間制御手段は、
前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記通常状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、前記第2抽選確率状態が生起される際に、前記延長状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、
H-1 前記特図変動時間制御手段は、
前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記特図変動時間通常状態または前記特図変動時間短縮状態にて前記特別図柄の変動表示を実行可能とし、
I-1 前記普図変動時間制御手段は、
前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記普図変動時間通常状態または前記普図変動時間短縮状態にて前記普通図柄の変動表示を実行可能とする
K ことを特徴とする遊技機。」

3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願の遡及日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2008-125582号公報

4 引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の出願遡及日(平成23年4月22日)前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-125582号公報(平成20年6月5日出願公開、以下「引用例」という。)には、弾球遊技機に関し、図面と共に次の事項が記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様)。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、特別図柄抽選及び普通図柄抽選を行うパチンコ遊技機などの弾球遊技機に関する。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の弾球遊技機では、特別図柄変動時間を総じて短くするか否かと、始動口への入賞容易性を高くするか否かを別々に管理するものとはなっていないため、遊技状態のバリエーションが最大でも4つであった。そのため、遊技状態の組み合せパターンが限られており、新規なゲーム性の創造が困難なものとなっていた。また、始動口への入賞容易性を高くする方法が2つしかなく、いずれかの方法が用いられていたため、始動口への入賞容易性が高くなる遊技状態が画一的で面白味のないものとなっていた。
さらに、従来の4つの遊技状態は、遊技者が一義的に判断できるものと、判断が困難なものとに二分されているため、現在どの遊技状態であるかを遊技者に考えさせるような攻略的な面白味を付加することは困難であった。
・・・略・・・
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、特別図柄始動口と、普通図柄始動口と、特別図柄始動口を開放又は拡大させる普通電動役物と、特別図柄始動口に対する遊技球の入賞に応じて、大当り状態を発生させるか否かという特別図柄抽選を行うと共に、普通図柄始動口に対する遊技球の入賞に応じて、普通電動役物を開放動作させるか否かという普通図柄抽選を行う制御部と、特別図柄抽選が行われた後から計時される時間が第一時間に達した際に、制御部によって抽選結果の表示がなされる特別図柄表示部と、普通図柄抽選が行われた後から計時される時間が第二時間に達した際に、制御部によって抽選結果の表示がなされる普通図柄表示部とを備える弾球遊技機において、前記制御部には、少なくとも、二種類定められた抽選確率のうちいずれを特別図柄抽選に適用するかを決める特別図柄確率変動フラグと、特別図柄抽選によって大当り状態を発生させないという決定がされた際に、二種類定められた第一時間選択テーブルのうちいずれを適用するかを決める特別図柄変動時間短縮フラグと、二種類定められた抽選確率のうちいずれを普通図柄抽選に適用するかを決める普通図柄確率変動フラグと、普通図柄抽選によって前記開放動作させるという決定がされた際に、二種類定められた第二時間選択テーブルのうちいずれを適用するかを決める普通図柄変動時間短縮フラグと、二種類定められた時間のうちいずれを普通電動役物の開放時間に適用するかを決める開放延長機能作動フラグと、が定義されており、制御部は、各フラグのON/OFFの組み合せにより32種類の遊技状態を出現させることが可能であって、その中から任意の遊技状態を選択的に出現させることを特徴とする。このようにすると、遊技状態のバリエーションが飛躍的に増えるので、従来にはない遊技状態の組み合せパターンを実現し、新規なゲーム性の弾球遊技機を提供することが可能になる。
また、特別図柄始動口と、普通図柄始動口と、特別図柄始動口を開放又は拡大させる普通電動役物と、特別図柄始動口に対する遊技球の入賞に応じて、大当り状態を発生させるか否かという特別図柄抽選を行うと共に、普通図柄始動口に対する遊技球の入賞に応じて、普通電動役物を開放動作させるか否かという普通図柄抽選を行う制御部と、特別図柄抽選が行われた後から計時される時間が第一時間に達した際に、制御部によって抽選結果の表示がなされる特別図柄表示部と、普通図柄抽選が行われた後から計時される時間が第二時間に達した際に、制御部によって抽選結果の表示がなされる普通図柄表示部とを備える弾球遊技機において、前記制御部には、少なくとも、二種類定められた抽選確率のうちいずれを特別図柄抽選に適用するかを決める特別図柄確率変動フラグと、特別図柄抽選によって大当り状態を発生させないという決定がされた際に、二種類定められた第一時間選択テーブルのうちいずれを適用するかを決める特別図柄変動時間短縮フラグと、二種類定められた抽選確率のうちいずれを普通図柄抽選に適用するかを決める普通図柄確率変動フラグと、普通図柄抽選によって前記開放動作させるという決定がされた際に、二種類定められた第二時間選択テーブルのうちいずれを適用するかを決める普通図柄変動時間短縮フラグと、二種類定められた時間のうちいずれを普通電動役物の開放時間に適用するかを決める開放延長機能作動フラグと、が定義されており、制御部は、普通図柄確率変動フラグ、普通図柄変動時間短縮フラグ及び開放延長機能作動フラグが、全てON、全てOFF以外の遊技状態を出現させることを特徴とする。このようにすると、従来にはない方法で始動口への入賞容易性を高くしたり、複数の入賞容易性を段階的に設定することが可能になるので、始動口への入賞容易性が高くなる遊技状態に変化を与えることができる。
また、前記制御部は、特別図柄確率変動フラグがON、特別図柄変動時間短縮フラグがOFF、普通図柄確率変動フラグがON、普通図柄変動時間短縮フラグがOFF、開放延長機能作動フラグがOFFという組み合せからなる遊技状態を出現させることを特徴とする。このようにすると、普通図柄表示部における複数回の表示結果に基づいて遊技者が普通図柄抽選確率の解析を行うことができるので、特別図柄抽選に適用する抽選確率が通常時よりも高確率であることを遊技者が判断可能な新規な遊技状態を出現させることができる。そのため、弾球遊技機に攻略的な面白味を付加することが可能になる。
【発明の効果】
【0007】
以上のような本発明によれば、遊技状態のバリエーションを飛躍的に増やすことにより、従来にはない遊技状態の組み合せパターンを実現可能にし、新規なゲーム性の弾球遊技機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[パチンコ遊技機の全体構成]
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はパチンコ遊技機(弾球遊技機)であって、該パチンコ遊技機1は、パチンコ島に固定される外枠2に対して、開閉自在に取り付けられている。パチンコ遊技機1の側方隣接位置には、台間玉貸し機3が並設され、この台間玉貸し機3に、現金又はプリペイドカードを投入することにより、台間玉貸し機3又はパチンコ遊技機1から遊技球が貸し出され、遊技球を用いたパチンコ遊技が可能になる。
・・・略・・・
【0010】
図3に示すように、遊技盤4には、始動口(特別図柄始動口)14、大入賞口15、入賞口(図示せず)、ゲート(普通図柄始動口)G、アウト口16、遊技釘17などが配置されており、遊技盤4に発射された遊技球は、遊技釘17によって各口14?16、Gに誘導される。また、遊技盤4には、特別図柄表示装置(特別図柄表示部)18、演出図柄表示装置19、普通図柄表示装置20等の表示装置が配置されている。特別図柄表示装置18は、特別図柄を形式的に変動表示した後に特別図柄抽選の結果である特別図柄を停止表示する表示装置であり、例えば、7セグLEDや複数のLEDで構成される。演出図柄表示装置19は、特別図柄に対応した演出図柄を変動表示する表示装置であり、例えば、液晶パネル、リールユニット、ドットマトリクスLED表示器などで構成され、スーパーリーチ演出表示を含む演出図柄の変動表示や停止表示の他、リーチ予告演出表示、大当り演出表示などを行う。普通図柄表示装置20は、普通図柄を変動表示した後に普通図柄抽選の結果である普通図柄を停止表示する表示装置であり、例えば、7セグLEDや複数のLEDで構成される。
【0011】
[パチンコ遊技機の基本動作]
上皿6に遊技球が貯留された状態で発射ハンドル8を回し操作すると、遊技盤4に向けて遊技球が発射される。発射された遊技球が始動口14や入賞口(図示せず)に入賞した場合は、所定個数の遊技球が賞球として払い出される。また、遊技球が始動口14に入賞した場合は、所定の抽選確率で特別図柄抽選が行われと共に、抽選後から計時される時間が第一時間TA1に達した際に、特別図柄表示装置18(演出図柄表示装置19)にて抽選結果の表示がなされる。そして、抽選結果が当りの場合は、前記した抽選結果の表示後に大当り状態などの遊技者にとって有利な状態を出現させる。例えば、特別電動役物15aの開放動作により大入賞口15をnラウンド開放させ、遊技者に多くの遊技球を獲得させる。また、遊技球がゲートGを通過したときは、所定の抽選確率で普通図柄抽選が行われと共に、抽選後から計時される時間が第二時間TB1に達した際に、普通図柄表示装置20にて抽選結果の表示がなされる。そして、抽選結果が当りの場合は、前記した抽選結果の表示後に普通電動役物14aの開放動作により始動口14の入口の大きさが拡がり、始動口14への入賞が容易になる。
・・・略・・・
【0016】
[特別図柄抽選処理]
次に、主制御基板23が行う各種処理(特別図柄抽選処理、特別図柄表示処理、普通図柄抽選処理、普通図柄表示処理、普通電動役物動作処理、遊技状態切換処理)について順次説明する。主制御基板23は、始動口14に対する遊技球の入賞に応じて、大当り状態を発生させるか否か及び複数設定された大当りの種別を何にするかという特別図柄抽選に用いる数値(乱数値、カウンタ値)を取得し、取得した数値を設定された上限個数(本実施形態では、各4個)を限度として所定の記憶領域に記憶する。そして、各記憶領域に記憶された数値を記憶領域に記憶された順に読み出して、読み出した数値に基づいて特別図柄抽選を行い、次いで、抽選が終了した数値を記憶領域から削除していくようになっている。特別図柄抽選に適用する抽選確率は、二種類定められており、特別図柄確率変動機能によって、低確率と高確率との二段階に切り換えられるようになっている。なお、特別図柄確率変動機能がON状態の際に特別図柄抽選に適用する抽選確率が高確率になるようになっている。ここで、本実施形態では、高確率時は、低確率時よりも10倍ほど当りやすくなるように当選確率が設定されるが(例えば、低確率=1/300、高確率=1/30)、当り易さにほとんど差がない確率設定であってもよい(例えば、低確率=1/300、高確率=1/299)。しかしながら、当選の割合の方が不当選の割合よりも必ず少なくなるように設定されている。
【0017】
[特別図柄表示処理]
主制御基板23は、特別図柄抽選が行われた後から計時される時間が第一時間TA1(図柄変動表示時間)に達した際に、特別図柄抽選の抽選結果を特別図柄表示装置18に表示させる。抽選後、特別図柄表示装置18に抽選結果が表示されるまでの前記時間TA1は、特別図柄抽選の結果に基づいて複数設定されている時間の中から選択される時間となっている。また、抽選結果は、所定時間TA2(図柄停止表示時間)が経過するまで特別図柄表示装置18に表示させる。つまり、一回の抽選に係る特別図柄表示装置18の図柄表示時間TAは、図柄変動表示時間であるTA1と図柄停止表示時間であるTA2とを加算した時間であり、これらの時間を主制御基板23のタイマにより計時し、特別図柄表示装置18の表示時間を管理するようになっている。ここで、特別図柄抽選によって大当り状態を発生させないという決定がされた際の第一時間TA1、つまりハズレ変動に係る第一時間TA1は、特別図柄変動時間短縮機能がON状態とOFF状態の場合とで選択される時間の選択率が異なるようになっている。以下、前記選択率について具体的に説明する。まず、主制御基板23は、特別図柄の変動開始時に0?9までの数値の中から一つを取得する。そして、主制御基板23は取得した数値に対応した第一時間TA1を決定する。この第一時間TA1の決定には、第一時間選択テーブルが用いられる。この第一時間選択テーブルは、前記した0?9までの数値に個別に対応して第一時間TA1が設定されている。例えば、ハズレ変動に係る第一時間TA1が、5秒、10秒、15秒、30秒の中から選択されるものである場合について説明する。まず、特別図柄変動時間短縮機能がOFF状態において、選択された前記数値が0、1の際には第一時間TA1を5秒に、選択された前記数値が2、3、4の際には第一時間TA1を10秒に、選択された前記数値が5、6、7の際には第一時間TA1を15秒に、選択された前記数値が8、9の際には第一時間TA1を30秒に、決定するようになっている。他方、特別図柄変動時間短縮機能がON状態において、選択された前記数値が0?8の際には第一時間TA1を5秒に、選択された前記数値が9の際には第一時間TA1を30秒に、決定するようになっている。つまり、特別図柄変動時間短縮機能がOFF状態における5秒の選択率は20%、10秒の選択率は30%、15秒の選択率は30%、30秒の選択率は20%となっており、特別図柄変動時間短縮機能がON状態における5秒の選択率は90%、10秒の選択率は0%、15秒の選択率は0%、30秒の選択率は10%となっている。そして、特別図柄変動時間短縮機能がOFF状態における特別図柄抽選によって大当り状態を発生させないという決定がされた際の平均第一時間TA1は14.5秒となっており、特別図柄変動時間短縮機能がON状態における特別図柄抽選によって大当り状態を発生させないという決定がされた際の平均第一時間TA1は7.5秒となっている。このように前記選択率、つまり第一時間選択テーブルを特別図柄変動時間短縮機能がON状態とOFF状態とで異なるようにすることで、特別図柄の変動時間を総じて長くしたり短くしたりすることができるようになっている。なお、本発明は前記した数値、特別図柄変動時間、選択率に限定されるものではなく、特別図柄変動時間短縮機能がOFF状態時とON状態時とで、同一の前記した数値を選択した場合に決定される第一時間TA1と、平均特別図柄変動時間と、がそれぞれ異なるようになっていればよい。また、特別図柄抽選によって大当り状態を発生させるという決定がされた際に特別図柄変動時間短縮機能がOFF状態時とON状態時と異なる第一時間選択テーブルを用いても良いし、同一の第一時間選択テーブルを用いても良い。
【0018】
[普通図柄抽選処理]
主制御基板23は、ゲートGにおける遊技球の通過に応じて、普通電動役物14aを開放動作させるか否かという普通図柄抽選に用いる数値(乱数値、カウンタ値)を取得し、取得した数値を設定された上限個数(本実施形態では、各4個)を限度として所定の記憶領域に記憶する。そして、各記憶領域に記憶された数値を記憶領域に記憶された順に読み出して、読み出した数値に基づいて普通図柄抽選を行い、次いで、抽選が終了した数値を記憶領域から削除していくようになっている。普通図柄抽選に適用する抽選確率は、二種類定められており、普通図柄確率変動機能によって、低確率と高確率との二段階に切り換えられるようになっている。なお、普通図柄確率変動機能がON状態の際に普通図柄抽選に適用する抽選確率が高確率になるようになっている。例えば、低確率時における普通図柄抽選の抽選確率を1/5、高確率時における普通図柄抽選の抽選確率を4/5とすることができる。
【0019】
[普通図柄表示処理]
主制御基板23は、普通図柄抽選が行われた後から計時される時間が第二時間TB1(図柄変動表示時間)に達した際に、普通図柄抽選の抽選結果を普通図柄表示装置20に表示させる。また、抽選結果は、所定時間TB2(図柄停止表示時間)が経過するまで普通図柄表示装置20に表示させる。つまり、一回の抽選に係る普通図柄表示装置20の図柄表示時間TBは、図柄変動表示時間であるTB1と図柄停止表示時間であるTB2とを加算した時間であり、これらの時間を主制御基板23のタイマにより計時し、普通図柄表示装置20の表示時間を管理するようになっている。ここで、普通図柄抽選によって前記開放動作させるという決定がされた際の前記第二時間TB1は、普通図柄変動時間短縮機能がON状態とOFF状態の場合とで選択される時間の選択率が異なるようになっている。以下、前記選択率について具体的に説明する。まず、主制御基板23は、普通図柄の変動開始時に0?9までの数値の中から一つを取得する。そして、主制御基板23は取得した数値に対応した第二時間TB1を決定する。この第二時間TB1の決定には、第二時間選択テーブルが用いられる。この第二時間選択テーブルは、前記した0?9までの数値に個別に対応して第二時間TB1が設定されている。例えば、普通図柄変動に係る第二時間TB1が、0.5秒、5秒の中から選択されるものである場合ついて説明する。まず、普通図柄変動時間短縮機能がON状態において、選択された前記数値が0?9の際には第二時間TB1を0.5秒に決定するようになっている。他方、普通図柄変動時間短縮機能がOFF状態において、選択された前記数値が0?9の際には第二時間TB1を5秒に決定するようになっている。つまり、普通図柄変動時間短縮機能がOFF状態における0.5秒の選択率が0%、5秒の選択率が100%であり、普通図柄変動時間短縮機能がON状態における0.5秒の選択率が100%、5秒の選択率が0%でとなっている。このように普通図柄抽選によって前記開放動作させるという決定がされた際の選択率、つまり第二時間選択テーブルを普通図柄変動時間短縮機能がON状態とOFF状態とで異なるようにすることで、普通図柄の変動時間を総じて長くしたり短くしたりすることができるようになっている。なお、本発明は前記した数値、普通図柄変動時間、選択率に限定されるものではなく、普通図柄抽選によって前記開放動作させるという決定がされた際に普通図柄変動時間短縮機能がOFF状態時とON状態時とで、同一の前記した数値を選択した場合に決定される第二時間TA1と、平均特別図柄変動時間と、がそれぞれ異なるようになっていればよい。また、普通図柄抽選によって前記開放動作をさせないという決定がされた際に普通図柄変動時間短縮機能がOFF状態時とON状態時とで異なる第二時間選択テーブルを用いても良いし、同一の第一時間選択テーブルを用いても良い。しかしながら、普通図柄抽選によって前記開放動作をさせないという決定がされた場合において、普通図柄変動時間短縮機能ON状態時の平均普通図柄変動時間をOFF状態時の平均普通図柄変動時間よりも短くすると、より効果的に普通図柄の変動時間を総じて長くしたり短くしたりすることができるようになっている。
【0020】
[普通電動役物動作処理]
主制御基板23は、普通図柄表示装置20に当りの普通図柄を表示させた後、所定時間TCが経過するまで普通電動役物14aを開放動作させる。普通電動役物14aの開放時間TCは、二種類定められており、開放延長機能がON状態の際に時間が長い開放時間TCを実行するようになっている。例えば、開放延長機能がON状態の際は、開放時間TCが5秒程度であり、開放延長機能がOFF状態の際は、開放時間TCが0.5秒程度となっている。なお、開放延長機能がON状態の際に普通電動役物の開放動作を複数回行わせて、開放時間TCの総時間を開放延長機能がOFF状態の際よりも長く設定しても良い。
【0021】
[遊技状態切換処理]
主制御部23は、後述する遊技状態切替条件が成立した際に、遊技状態の切換えを行うようになっている。そして遊技状態の切換えは、各種機能フラグのON/OFFにより行われるようになっており、主制御部23には、遊技状態の切換えを行うために、少なくとも下記のフラグが定義されている。
(1)二種類定められた抽選確率のうちいずれを特別図柄抽選に適用するかを決める特別図柄確率変動フラグ
(2)特別図柄抽選によって大当り状態を発生させないという決定がされた際に、二種類定められた時間のうちいずれを第一時間TA1に適用するかを決める特別図柄変動時間短縮フラグ
(3)二種類定められた抽選確率のうちいずれを普通図柄抽選に適用するかを決める普通図柄確率変動フラグ
(4)普通図柄抽選によって普通電動役物14aを開放動作させるという決定がされた際に、二種類定められた時間のうちいずれを第二時間TB1に適用するかを決める普通図柄変動時間短縮フラグ
(5)二種類定められた時間のうちいずれを普通電動役物14aの開放時間TCに適用するかを決める開放延長機能作動フラグ
【0022】
これにより、主制御基板23は、図5に示すように、5つのフラグのON/OFFの組み合せにより32種類の遊技状態を出現させることが可能であって、その中から任意の遊技状態を選択的に出現させるようになっている。すなわち、本発明のパチンコ遊技機1では、普通図柄に関する変更要素である普通図柄抽選確率、普通図柄変動時間及び普通電動役物開放時間を、従来のように一括で変更するのではなく、個別に変更することにより、遊技状態のバリエーションを飛躍的に増やしている。その結果、従来にはない遊技状態の組み合せパターンを実現し、新規なゲーム性のパチンコ遊技機1を提供することが可能になる。」

(2)「【図5】



(3)上記(2)(【図5】)の図示内容から、以下の点が看取できる。
・項番19、20、23、24、27、28、31、32が付された行より、特別図柄確率変動フラグがOFF状態の場合に、開放延長機能作動フラグをOFF状態とすることが可能である点。
・項番1、2、5、6、9,10、13、14が付された行より、特別図柄確率変動フラグがON状態の場合に、開放延長機能作動フラグをON状態とすることが可能である点。
・項番17ないし32が付された行より、特別図柄確率変動フラグがOFF状態の場合に、特別図柄変動時間短縮フラグをON状態またはOFF状態とすることが可能である点。
・項番17ないし32が付された行より、特別図柄確率変動フラグがOFF状態の場合に、普通図柄変動時間短縮フラグをON状態またはOFF状態とすることが可能である点。
・項番1ないし16が付された行より、特別図柄確率変動フラグがON状態の場合に、特別図柄変動時間短縮フラグをON状態またはOFF状態とすることが可能である点。
・項番1ないし16が付された行より、特別図柄確率変動フラグがON状態の場合に、普通図柄変動時間短縮フラグをON状態またはOFF状態とすることが可能である点。

(4)上記(1)ないし(3)の記載内容からみて、引用例には、実施形態として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、aないしkについては本願発明のAないしKに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 始動口(特別図柄始動口)14を備え(【0006】、【0010】)、ここで、抽選結果が当りの場合は、抽選結果の表示後に普通電動役物の開放動作により始動口14の入口の大きさが拡がり、始動口14への入賞が容易になり(【0011】)、
bないしf 特別図柄抽選処理、特別図柄表示処理、普通図柄抽選処理、普通図柄表示処理、普通電動役物動作処理のような各種処理を行う主制御基板23を備え(【0016】)、
主制御基板23は、
特別図柄抽選処理において、始動口14に対する遊技球の入賞に応じて、大当り状態を発生させるか否か及び複数設定された大当りの種別を何にするかという特別図柄抽選を行い(【0016】)、
特別図柄表示処理において、特別図柄抽選が行われた後から計時される時間が図柄変動表示時間に達した際に、特別図柄抽選の抽選結果を特別図柄表示装置18に表示させ(【0017】)、ここで、特別図柄を形式的に変動表示した後に特別図柄抽選の結果である特別図柄を停止表示し(【0010】)、
普通図柄抽選処理において、ゲートGにおける遊技球の通過に応じて、普通電動役物14aを開放動作させるか否かという普通図柄抽選を行い(【0018】)、
普通図柄表示処理において、普通図柄抽選が行われた後から計時される時間が図柄変動表示時間に達した際に、普通図柄抽選の抽選結果を普通図柄表示装置20に表示させ(【0019】)、ここで、普通図柄を変動表示した後に普通図柄抽選の結果である普通図柄を停止表示し(【0010】)、
普通電動役物動作処理において、普通図柄表示装置20に当りの普通図柄を表示させた後、所定時間TCが経過するまで普通電動役物14aを開放動作させ(【0020】)、
g 普通電動役物動作処理において、普通電動役物14aの開放時間TCは、二種類定められており、開放延長機能がON状態の際に時間が長い開放時間TCを実行するようになっており、例えば、開放延長機能がON状態の際は、開放時間TCが5秒程度であり、開放延長機能がOFF状態の際は、開放時間TCが0.5秒程度となっており(【0020】)、
h 特別図柄表示処理において、特別図柄変動時間短縮機能がON状態とOFF状態の場合とで選択される時間の選択率が異なるようになっており、それにより、特別図柄の変動時間を総じて長くしたり短くしたりすることができ(【0017】)、
i 普通図柄表示処理において、普通図柄変動時間短縮機能がON状態とOFF状態の場合とで選択される時間の選択率が異なるようになっており、それにより、普通図柄の変動時間を総じて長くしたり短くしたりすることができ(【0019】)、
j 特別図柄抽選処理において、特別図柄抽選に適用する抽選確率は、二種類定められており、特別図柄確率変動機能によって、低確率と高確率との二段階に切り換えられるようになっており、ここで、特別図柄確率変動機能がON状態の際に特別図柄抽選に適用する抽選確率が高確率になるようになっており(【0016】)、
g-1、h-1、i-1 主制御基板23は、遊技状態切換処理も行い(【0016】)、遊技状態切換処理において、遊技状態の切換えは、各種機能フラグのON/OFFにより行われるようになっており、主制御基板23には、遊技状態の切換えを行うために、特別図柄確率変動フラグ、開放延長機能作動フラグ、特別図柄変動時間短縮フラグ及び普通図柄変動時間短縮フラグが定義されており(【0021】)、
特別図柄確率変動フラグがOFF状態の場合に、開放延長機能作動フラグをOFF状態とすることが可能であり(上記(3)、図5)、
特別図柄確率変動フラグがON状態の場合に、開放延長機能作動フラグをON状態とすることが可能であり(上記(3)、図5)、
特別図柄確率変動フラグがOFF状態の場合に、特別図柄変動時間短縮フラグをON状態またはOFF状態とすることが可能であり(上記(3)、図5)、
特別図柄確率変動フラグがOFF状態の場合に、普通図柄変動時間短縮フラグをON状態またはOFF状態とすることが可能であり(上記(3)、図5)、
h-2及びi-2 さらに、特別図柄確率変動フラグがON状態の場合に、特別図柄変動時間短縮フラグをON状態またはOFF状態とすることが可能であり(上記(3)、図5)、
特別図柄確率変動フラグがON状態の場合に、普通図柄変動時間短縮フラグをON状態またはOFF状態とすることが可能である(上記(3)、図5)、
k パチンコ遊技機1(【0008】)。」

5 対比及び判断
(1)本願発明と引用発明を対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(k)は、本願発明のAないしKに対応させている。

(a)引用発明において、「特別図柄始動口14」が、「普通電動役物の開放動作により」「入賞が容易」な状態を形成するものであるところ、「普通電動役物」が「開放動作」でない場合には、相対的に「入賞が容易」でない状態となることは自明である。そうすると、引用発明の「特別図柄始動口14」は、「入賞が容易」でない状態と、それと比較して「入賞が容易」な状態とを形成するものといえるところ、前者の状態が本願発明の「閉止状態」に相当し、後者の状態が本願発明の「開放状態」に相当するといえるから、本願発明の「可変入賞装置」に相当するといえる。したがって、引用発明の特定事項aは、本願発明の特定事項Aに相当する。

(b)上記(a)で示したように、引用発明の「特別図柄始動口14」は、本願発明の「可変入賞装置」に相当する。また、引用発明の「遊技球」、「大当たり状態」は、それぞれ順に、本願発明の「遊技球」、「特賞状態」に相当するといえる。そうすると、引用発明の「特別図柄抽選」は、始動口14(「可変入賞装置」)への遊技球(「遊技球」)の入賞を契機として、大当り状態(「特賞状態」)を生起させるか否かを決定するものといえるから、本願発明の「特図抽選」に相当するといえる。そして、引用発明の「主制御基板23」は、特別図柄抽選(「特図抽選」)を行うための「特別図柄抽選処理」を実行するものであるから、本願発明の「特図抽選手段」に相当する構成を備えるといえる。したがって、引用発明の特定事項bないしfは、本願発明の特定事項Bを具備する。

(c)上記(b)で示したように、引用発明の「特別図柄抽選」は、本願発明の「特図抽選」に相当する。また、引用発明の「特別図柄抽選の抽選結果」は、本願発明の「特図抽選の結果」に相当するといえるから、引用発明の「特別図柄抽選の抽選結果である特別図柄」は、本願発明の「特図抽選の結果に対応する態様」に相当するといえる。そうすると、引用発明において、「特別図柄表示処理」は、特別図柄抽選(「特図抽選」)が実行された場合に、特別図柄抽選(「特図抽選」)に係る特別図柄の変動表示を行った後に、特別図柄抽選の抽選結果である特別図柄(「特図抽選の結果に対応する態様」)にて該特別図柄の停止表示を行うものといえる。そして、引用発明の「主制御基板23」は、その「特別図柄表示処理」を実行するものであるから、本願発明の「特図表示制御手段」に相当する構成を備えるといえる。したがって、引用発明の特定事項bないしfは、本願発明の特定事項Cを具備する。

(d)上記(a)及び(b)で示したように、引用発明の「特別図柄始動口14」、「遊技球」、「入賞が容易」でない状態、「入賞が容易」な状態は、それぞれ順に、本願発明の「可変入賞装置」、「遊技球」、「閉止状態」、「開放状態」に相当する。また、引用発明の「ゲートG」は、本願発明の「所定領域」に相当するといえる。そうすると、引用発明において、「普通図柄抽選」は、遊技球(「遊技球」)によるゲートG(「所定領域」)の通過を契機として、特別図柄始動口14(「可変入賞装置」)を入賞が容易でない状態(「閉止状態」)から入賞が容易な状態(「開放状態」)へと変位させる遊技を生起させるか否かを決定するものといえる。ここで、当該遊技は本願発明の「入賞口開放遊技」に相当するといえるから、引用発明の「普通図柄抽選」は、本願発明の「普図抽選」に相当するといえる。そして、引用発明の「主制御基板23」は、普通図柄抽選(「普図抽選」)を行うための「普通図柄抽選処理」を実行するものであるから、本願発明の「普図抽選手段」に相当する構成を備えるといえる。したがって、引用発明の特定事項bないしfは、本願発明の特定事項Dを具備する。

(e)上記(d)で示したように、引用発明の「普通図柄抽選」は、本願発明の「普図抽選」に相当する。また、引用発明の「普通図柄抽選の結果」は、本願発明の「普図抽選の結果」に相当するといえるから、引用発明の「普通図柄抽選の結果である普通図柄」は、本願発明の「普図抽選の結果に対応する態様」に相当するといえる。そうすると、引用発明において、「普通図柄表示処理」は、普通図柄抽選(「普図抽選」)が実行された場合に、普通図柄抽選(「普図抽選」)に係る普通図柄の変動表示を行った後に、普通図柄抽選の抽選結果である普通図柄(「普図抽選の結果に対応する態様」)にて普通図柄の停止表示を行うものといえる。そして、引用発明の「主制御基板23」は、その「普通図柄表示処理」を実行するものであるから、本願発明の「普図表示制御手段」に相当する構成を備えるといえる。したがって、引用発明の特定事項bないしfは、本願発明の特定事項Eを具備する。

(f)上記(d)で示したように、引用発明の「普通図柄抽選」は、本願発明の「普図抽選」に相当し、さらに、引用発明における、「特別図柄始動口14」を「入賞が容易」ではない状態から「入賞が容易」な状態へと変位させる遊技は、本願発明の「入賞口開放遊技」に相当する。また、引用発明の「当りの普通図柄」は、本願発明の「普通図柄が当選となる態様」に相当するといえる。そうすると、引用発明において、「普通電動役物動作処理」は、当りの普通図柄(「普通図柄が当選となる態様」)にて停止表示された場合に、普通電動役物14aを開放動作させることにより、特別図柄始動口14(「可変入賞装置」)を入賞が容易でない状態(「閉止状態」)から入賞が容易な状態(「開放状態」)へと変位させる遊技(「入賞口開放遊技」)を生起させるものといえる。そして、引用発明の「主制御基板23」は、その「普通電動役物動作処理」を実行するものであるから、本願発明の「入賞口開放遊技制御手段」に相当する構成を備えるといえる。したがって、引用発明の特定事項bないしfは、本願発明の特定事項Fを具備する。

(g)上記(d)で示したように、引用発明における、「特別図柄始動口14」を「入賞が容易」ではない状態から「入賞が容易」な状態へと変位させる遊技は、本願発明の「入賞口開放遊技」に相当する。また、上記(a)で示したように、引用発明の「特別図柄始動口14」、「入賞が容易」な状態は、それぞれ順に、本願発明の「可変入賞装置」、「開放状態」に相当する。ここで、引用発明において、「普通電動役物動作処理」で「開放延長機能」により切り換え可能な「ON状態」と「OFF状態」とは、特別図柄始動口14(「可変入賞装置」)を入賞が容易でない状態(「閉止状態」)から入賞が容易な状態(「開放状態」)へと変位させる遊技(「入賞口開放遊技」)について、その入賞が容易な状態(「開放状態」)とされる時間を長くしたり短くしたりすることができるものであるから、前者の「ON状態」が本願発明の「延長状態」に相当し、後者の「OFF状態」が本願発明の「通常状態」に相当するといえる。そうすると、引用発明の「普通電動役物動作処理」は、入賞が容易な状態(「開放状態」)とされる時間が開放延長機能のOFF状態(「通常状態」)と比較して延長された開放延長機能のON状態(「延長状態」)にて実行する動作であるから、その「普通電動役物動作処理」を制御する「主制御基板23」は、本願発明の「開放時間制御手段」に相当する構成を備えるといえる。したがって、引用発明の特定事項gは、本願発明の特定事項Gに相当する。

(h)引用発明において、「特別図柄表示処理」で「特別図柄変動時間短縮機能」により切り換え可能な「ON状態」と「OFF状態」とは、特別図柄の変動時間を総じて長くしたり短くしたりすることができるものであるから、前者の「ON状態」が本願発明の「特図変動時間短縮状態」に相当し、後者の「OFF状態」が本願発明の「特図変動時間通常状態」に相当するといえる。そうすると、引用発明の「特別図柄表示処理」は、変動表示が行われる時間が特別図柄変動時間短縮機能のOFF状態(「特図変動時間通常状態」)と比較して短縮された特別図柄変動時間短縮機能のON状態(「特図変動時間短縮状態」)にて実行する動作であるから、その「特別図柄表示処理」を制御する「主制御基板23」は、本願発明の「特図変動時間制御手段」に相当する構成を備えるといえる。したがって、引用発明の特定事項hは、本願発明の特定事項Hに相当する。

(i)引用発明において、「普通図柄表示処理」で「普通図柄変動時間短縮機能」により切り換え可能な「ON状態」と「OFF状態」とは、普通図柄の変動時間を総じて長くしたり短くしたりすることができるものであるから、前者の「ON状態」が本願発明の「普図変動時間短縮状態」に相当し、後者の「OFF状態」が本願発明の「普図変動時間通常状態」に相当するといえる。そうすると、引用発明の「普通図柄表示処理」は、変動表示が行われる時間が普通図柄変動時間短縮機能のOFF状態(「普図変動時間通常状態」)と比較して短縮された普通図柄変動時間短縮機能のON状態(「普図変動時間短縮状態」)にて実行する動作であるから、その「普通図柄表示処理」を制御する「主制御基板23」は、本願発明の「普図変動時間制御手段」に相当する構成を備えるといえる。したがって、引用発明の特定事項iは、本願発明の特定事項Iに相当する。

(j)上記(b)で示したように、引用発明の「特別図柄抽選」、「大当たり状態」は、それぞれ順に、本願発明の「特図抽選」、「特賞状態」に相当する。また、引用発明において、「特別図柄抽選処理」で「特別図柄確率変動機能」により切り換え可能な「低確率」と「高確率」とは、特別図柄抽選(「特図抽選」)時に大当たり状態(「特賞状態」)が生起される確率を高くしたり低くしたりすることができるものである。ここで、引用発明において、「特別図柄確率変動機能」が「ON状態」の際に「高確率」となるようにしていることから、「ON状態」でない際に「低確率」となること、すなわち、「OFF状態」の際に「低確率」となることは明らかである。そうすると、引用発明における「特別図柄確率変動機能」の「ON状態」と「OFF状態」とは、それぞれ順に、本願発明の「第2抽選確率状態」と「第1抽選確率状態」とに相当するといえる。そうすると、引用発明の「特別図柄抽選処理」は、特別図柄抽選(「特図抽選」)にて大当たり状態(「特賞状態」)を生起させる確率が特別図柄確率変動機能のOFF状態(「第1抽選確率状態」)と比較して高く設定された特別図柄確率変動機能のON状態(「第2抽選確率状態」)にて実行する動作であるから、その「特別図柄抽選処理」を制御する「主制御基板23」は、本願発明の「抽選確率制御手段」に相当する構成を備えるといえる。したがって、引用発明の特定事項jは、本願発明の特定事項Jに相当する。

(g-1)上記(d)で示したように、引用発明における、「特別図柄始動口14」を「入賞が容易」ではない状態から「入賞が容易」な状態へと変位させる遊技は、本願発明の「入賞口開放遊技」に相当する。また、上記(j)で示したように、引用発明における「特別図柄確率変動機能」の「ON状態」と「OFF状態」とは、それぞれ順に、本願発明の「第2抽選確率状態」と「第1抽選確率状態」とに相当する。さらに、上記(g)で示したように、引用発明における「開放延長機能」の「ON状態」と「OFF状態」とは、それぞれ順に、本願発明の「延長状態」と「通常状態」とに相当する。ここで、引用発明において、遊技状態の切換えは、各種機能フラグのON/OFFにより行われるものであるところ、「特別図柄確率変動機能」及び「開放延長機能」による「ON状態」と「OFF状態」との切り換えが、それぞれ順に、「特別図柄確率変動フラグ」及び「開放延長機能作動フラグ」のON/OFFにより行われることは明らかである。そうすると、引用発明の「主制御基板23」は、「遊技状態切換処理」も行うものであるところ、その「遊技状態切換処理」により、特別図柄確率変動機能のOFF状態(「第1抽選確率状態」)が生起される際に、開放延長機能のOFF状態(「通常状態」)にて、特別図柄始動口14を入賞が容易ではない状態から入賞が容易な状態へと変位させる遊技(「入賞口開放遊技」)を実行可能とし、特別図柄確率変動機能がON状態(「第2抽選確率状態」)が生起される際に、開放延長機能がON状態(「延長状態」)にて前記遊技(「入賞口開放遊技」)を実行可能とするものであるから、本願発明の特定事項G-1を具備するものといえる。したがって、引用発明の特定事項g-1、h-1、i-1は、本願発明の特定事項G-1を具備する。

(h-1)上記(j)で示したように、引用発明における「特別図柄確率変動機能」の「OFF状態」は、本願発明の「第1抽選確率状態」に相当する。また、上記(h)で示したように、引用発明における「特別図柄変動時間短縮機能」の「ON状態」と「OFF状態」とは、それぞれ順に、本願発明の「特図変動時間短縮状態」と「特図変動時間通常状態」とに相当する。ここで、引用発明において、遊技状態の切換えは、各種機能フラグのON/OFFにより行われるものであるところ、「特別図柄確率変動機能」及び「特別図柄変動時間短縮機能」による「ON状態」と「OFF状態」との切り換えが、それぞれ順に、「特別図柄確率変動フラグ」及び「特別図柄変動時間短縮フラグ」のON/OFFにより行われることは明らかである。そうすると、引用発明の「主制御基板23」は、「遊技状態切換処理」も行うものであるところ、その「遊技状態切換処理」により、特別図柄確率変動機能のOFF状態(「第1抽選確率状態」)が生起される際に、特別図柄変動時間短縮機能のOFF状態(「特図変動時間通常状態」)またはON状態(「特図変動時間短縮状態」)にて特別図柄の変動表示を実行可能とするものであるから、引用発明は、本願発明における「前記特図変動時間制御手段は、前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記特図変動時間通常状態または前記特図変動時間短縮状態にて前記特別図柄の変動表示を実行可能と」することを具備するといえる。したがって、引用発明の特定事項g-1、h-1、i-1は、本願発明の特定事項H-1を具備する。

(i-1)上記(j)で示したように、引用発明における「特別図柄確率変動機能」の「OFF状態」は、本願発明の「第1抽選確率状態」に相当する。また、上記(i)で示したように、引用発明における「普通図柄変動時間短縮機能」の「ON状態」と「OFF状態」とは、それぞれ順に、本願発明の「普図変動時間短縮状態」と「普図変動時間通常状態」とに相当する。ここで、引用発明において、遊技状態の切換えは、各種機能フラグのON/OFFにより行われるものであるところ、「特別図柄確率変動機能」及び「普通図柄変動時間短縮機能」による「ON状態」と「OFF状態」との切り換えが、それぞれ順に、「特別図柄確率変動フラグ」及び「普通図柄変動時間短縮フラグ」のON/OFFにより行われることは明らかである。そうすると、引用発明の「主制御基板23」は、「遊技状態切換処理」も行うものであるところ、その「遊技状態切換処理」により、特別図柄確率変動機能のOFF状態(「第1抽選確率状態」)が生起される際に、普通図柄変動時間短縮機能のOFF状態(「普図変動時間通常状態」)またはON状態(「普図変動時間短縮状態」)にて普通図柄の変動表示を実行可能とするものであるから、引用発明は、本願発明の「前記普図変動時間制御手段は、前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記普図変動時間通常状態または前記普図変動時間短縮状態にて前記普通図柄の変動表示を実行可能とする」ことを具備するといえる。したがって、引用発明の特定事項g-1、h-1、i-1は、本願発明の特定事項I-1を具備する。

(k)引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本願発明の「遊技機」に相当するといえる。そうすると、引用発明の特定事項kは、本願発明の特定事項Kに相当する。

(2)上記(1)からみて、本願発明と引用発明とは、
「A 遊技球の入賞が困難な閉止状態と、前記閉止状態と比較して遊技球の入賞が容易な開放状態と、を形成することが可能な可変入賞装置と、
B 前記可変入賞装置への遊技球の入賞を契機として、特賞状態を生起させるか否かを決定する特図抽選を実行する特図抽選手段と、
C 前記特図抽選が実行された場合に、該特図抽選に係る特別図柄の変動表示を行った後に、該特図抽選の結果に対応する態様にて該特別図柄の停止表示を行う特図表示制御手段と、
D 遊技球による所定領域の通過を契機として、前記可変入賞装置を前記閉止状態から前記開放状態へと変位させる入賞口開放遊技を生起させるか否かを決定する普図抽選を行う普図抽選手段と、
E 前記普図抽選が実行された場合に、該普図抽選に係る普通図柄の変動表示を行った後に、該普図抽選の結果に対応する態様にて該普通図柄の停止表示を行う普図表示制御手段と、
F 前記普通図柄が当選となる態様にて停止表示された場合に、前記入賞口開放遊技を生起させる入賞口開放遊技制御手段と、
G 前記入賞口開放遊技を、前記可変入賞装置が前記開放状態とされる時間が通常状態と比較して延長された延長状態にて実行可能に制御する開放時間制御手段と、
H 前記特別図柄の変動表示を、該変動表示が行われる時間が特図変動時間通常状態と比較して短縮された特図変動時間短縮状態にて実行可能に制御する特図変動時間制御手段と、
I 前記普通図柄の変動表示を、該変動表示が行われる時間が普図変動時間通常状態と比較して短縮された普図変動時間短縮状態にて実行可能に制御する普図変動時間制御手段と、
J 前記特図抽選を、前記特賞状態を生起させる確率が第1抽選確率状態と比較して高く設定された第2抽選確率状態にて実行可能に制御する抽選確率制御手段と、を備え、
G-1 前記開放時間制御手段は、
前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記通常状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、前記第2抽選確率状態が生起される際に、前記延長状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、
H-1 前記特図変動時間制御手段は、
前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記特図変動時間通常状態または前記特図変動時間短縮状態にて前記特別図柄の変動表示を実行可能とし、
I-1 前記普図変動時間制御手段は、
前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記普図変動時間通常状態または前記普図変動時間短縮状態にて前記普通図柄の変動表示を実行可能とする
K 遊技機。」
である点で一致し、相違するところはない。

したがって、本願発明は、引用発明と同一であり、引用例に記載された発明である。

(3)また、仮に、本願発明の特定事項G-1(「前記開放時間制御手段は、前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記通常状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、前記第2抽選確率状態が生起される際に、前記延長状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、」)を、「特別図柄抽選に当選する確率に関する遊技状態(第1抽選確率状態または第2抽選確率状態)に依存して、普通図柄に関する遊技状態(ここでは、普図抽選に当選した場合に生起される入賞口開放遊技の状態)が変化する構成」と限定的に解釈した場合について更に検討する。
この場合において、本願発明の特定事項G-1は、特別図柄抽選に当選する確率が通常時の確率である遊技状態(第1抽選確率状態)、換言すれば、遊技者に有利でない遊技状態、が生起される際には、普図抽選に当選した場合に生起される入賞口開放遊技の状態を通常状態、換言すれば、遊技者に有利でない遊技状態、とする一方で、特別図柄抽選に当選する確率が相対的に高い確率である遊技状態(第2抽選確率状態)、換言すれば、遊技者に有利な遊技状態、が生起される際には、普図抽選に当選した場合に生起される入賞口開放遊技の状態を延長状態、換言すれば、遊技者に有利な遊技状態、とすることを特定するものといえる。
すなわち、当該特定事項G-1は、特別図柄抽選に当選する確率に関する遊技状態と、普図抽選に当選した場合に生起される入賞口開放遊技の遊技状態との組合せとして、遊技者に有利な遊技状態同士や遊技者に有利でない遊技状態同士を用いるものであるといえる。
そして、そのような遊技状態の組合せを用いることは、本願明細書の段落【0003】に、背景技術として、「この遊技機では、特別図柄抽選に当選する確率が高確率に設定される確率変動状態が生起されている場合には、・・・可変入賞装置が第2状態となる時間が延長される開放時間延長状態が生起される」と記載されていたり、引用文献1の【図5】(上記4の(2)を参照)に、「確率変動状態」(項番1)や「通常状態」(項番32)として示されていたりするように、弾球遊技機の分野においてごく一般的なものであって、特殊なものではない。

(4)ここで、引用発明は、「図5に示すように、5つのフラグのON/OFFの組み合せにより32種類の遊技状態を出現させることが可能であって、その中から任意の遊技状態を選択的に出現させるようになっている」(段落【0022】を参照)もの(なお、ここでいう「32種類の遊技状態」の「遊技状態」とは、上記(3)でいう、遊技状態の組合せ、に対応するものである。)である。
そして、引用発明において、前記32種類の遊技状態のうち、どのような遊技状態を出現させるかは、データ容量等の仕様上の制約を当然に考慮しつつ、遊技の興趣が向上するように、当業者が適宜選択し得ることであって、その際に、一般的な遊技状態、例えば、遊技者に有利な遊技状態同士の組合せや遊技者に有利でない遊技状態同士の組合せ等、を選択することに格別な困難性は認められない。

(5)したがって、本願発明は、引用発明に基づき、当業者が容易に想到し得ることにすぎない。

(6)効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明に記載された技術事項の奏する作用効果や、弾球遊技機の分野における周知の知見から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

6 請求人の主張について
(1)審判請求人は、令和1年7月22日付け意見書において、概略以下のとおり主張している。

「2-3.前審の拒絶理由通知書における拒絶の理由について
審判長殿は、上拒絶理由通知書の末尾において「なお、平成30年2月16日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由1及び2(新規性及び進歩性)については、前述のとおり、請求項に係る発明がサポート要件を満たしていないため、その結論を留保している。補正や意見書による釈明によっては、平成30年2月16日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由1及び2(新規性及び進歩性)が解消されずに維持され、拒絶審決となる可能性があるので、この点留意されたい」と指摘されております。
このため、以下、補正後の本願請求項1に係る発明が前審の拒絶理由通知書(平成30年2月16日付け拒絶理由通知書)における拒絶理由1及び2(新規性及び進歩性)を解消していることについて意見を述べます。なお、以下の意見は、平成30年11月30日付け庁提出の審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において述べた内容と同様の主旨です。
補正後の本願請求項1に係る発明は、「前記開放時間制御手段は、前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記通常状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、前記第2抽選確率状態が生起される際に、前記延長状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能」であるという補正前と同様の特徴的構成を有しております。
つまり、補正後の本願請求項1に係る発明は、特別図柄抽選に当選する確率に関する遊技状態(第1抽選確率状態または第2抽選確率状態)に依存して、普通図柄に関する遊技状態(ここでは、普図抽選に当選した場合に生起される入賞口開放遊技の状態)が変化する構成を有します。
また、上記補正前と同様の特徴的構成を有する補正後の本願請求項1に係る発明は、特別図柄抽選に当選する確率に関する遊技状態に依存して普通図柄に関する遊技状態を変化させるため、遊技状態管理のためのデータ量が増大することを防止することができるという効果を有します。遊技状態は、遊技規則により規格が定められた主制御装置400において管理されるため、遊技状態の管理に用いるデータ量が増大すると、主制御装置400のデータ容量の圧迫を招くおそれがあります。つまり、補正後の本願請求項1に係る発明は、上記効果により、主制御装置400のデータ容量が圧迫されるおそれを低減することができます。
これに対し、前審の拒絶理由通知書の引用文献1(特開2008-125582号公報)には、特別図柄に関する遊技状態および普通図柄に関する遊技状態のそれぞれの組合せが開示されているものの(図5等)、各遊技状態は、5つのフラグ(特別図柄確率変動フラグ、特別図柄変動時間短縮フラグ、普通図柄確率変動フラグ、普通図柄変動時間短縮フラグ、開放延長機能作動フラグ)のON/OFFの組み合せ(段落[0021])によって管理されているに過ぎません。
つまり、前審の引用文献1に記載の発明は、特別図柄抽選に当選する確率に関する遊技状態に依存して普通図柄に関する遊技状態が変化する構成は有しておらず、前審の引用文献1には補正後の本願請求項1に係る発明の上記補正前と同様の特徴的構成が開示も示唆もされておりません。
また、引用文献1に記載の発明は、上記補正前と同様の特徴的構成を有していないため、補正後の本願請求項1に係る発明の上記効果が得られません。その上、引用文献1に記載の発明では、特別図柄に関する遊技状態および普通図柄に関する遊技状態の全ての組合せ(32種類の遊技状態)をフラグ管理するため、全組合せについてのフラグデータを持つ必要があることから、データ量が増大します。つまり、引用文献1に記載の発明は、遊技状態のフラグ管理によってデータ量が増大し、主制御基板23のデータ容量の圧迫を招くおそれがあるため、現実的ではありません。
・・・略・・・
従いまして、補正後の本願請求項1に係る発明は、前審の引用文献1および2に記載された発明と比較した有利な効果であって技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果を有します。このため、補正後の本願請求項1に係る発明は前審の引用文献1および2に記載された発明に対して進歩性を有します。
また、新たな本願請求項2に係る発明も、補正後の本願請求項1に係る発明と同様に「前記開放時間制御手段は、前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記通常状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、前記第2抽選確率状態が生起される際に、前記延長状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能」であるという特徴的構成を有しております。このため、新たな本願請求項2に係る発明についても、前審の引用文献1および2に記載された発明に対し、本願請求項1に係る発明と同様の議論が成り立ちます。
従いまして、補正後の本願請求項1に係る発明および新たな本願請求項2に係る発明は、上記前審の拒絶理由通知書の拒絶の理由1及び2には該当しないものと思料致します。」

(2)しかしながら、本願発明には、審判請求人が令和1年7月22日付け意見書において主張するような、「特別図柄抽選に当選する確率に関する遊技状態(第1抽選確率状態または第2抽選確率状態)に依存して、普通図柄に関する遊技状態(ここでは、普図抽選に当選した場合に生起される入賞口開放遊技の状態)が変化する構成」が反映されているとはいえない。

(3)すなわち、本願発明における特定事項G-1(「前記開放時間制御手段は、前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記通常状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、前記第2抽選確率状態が生起される際に、前記延長状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、」)は、「前記第1抽選確率状態が生起される際に」おいて、「前記通常状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能」であることを特定したものであって、「前記延長状態にて前記入賞口開放遊技を実行」することを排除するものではないし、さらに、「前記第2抽選確率状態が生起される際に」おいても、「前記延長状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能」であることを特定したものであって、「前記通常状態にて前記入賞口開放遊技を実行」することを排除するものではない。

(4)したがって、審判請求人の主張は、請求項1の記載に基づくものであるとは認められない。

(5)また、仮に、本願発明における特定事項G-1(「前記開放時間制御手段は、前記第1抽選確率状態が生起される際に、前記通常状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、前記第2抽選確率状態が生起される際に、前記延長状態にて前記入賞口開放遊技を実行可能とし、」)を、「特別図柄抽選に当選する確率に関する遊技状態(第1抽選確率状態または第2抽選確率状態)に依存して、普通図柄に関する遊技状態(ここでは、普図抽選に当選した場合に生起される入賞口開放遊技の状態)が変化する構成」と限定的に解釈したとしても、上記5の(3)ないし(6)で示したとおり、本願発明は、引用発明に基づき、当業者が容易に想到し得ることであって、さらに、それらの作用効果も格別顕著なものということはできない。

(6)したがって、上記(2)ないし(5)で示したように、令和1年7月22日付け意見書における審判請求人の主張は、いずれも理由がない。

7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-06 
結審通知日 2019-09-10 
審決日 2019-09-24 
出願番号 特願2017-98153(P2017-98153)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 有賀 綾子  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 島田 英昭
川崎 優
発明の名称 遊技機  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 森 哲也  

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