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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1356816 |
異議申立番号 | 異議2018-700865 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-24 |
確定日 | 2019-09-30 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6336355号発明「皮膚用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6336355号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6336355号の請求項1、3に係る特許を維持する。 特許第6336355号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6336355号の請求項1?3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年8月26日に特許出願され、平成30年5月11日にその特許権の設定登録がなされ、同年6月6日に特許掲載公報が発行され、その特許について、同年10月24日に、特許異議申立人石井健治(以下、「申立人A」という。)により、本件特許の全請求項に対して、同年12月6日に特許異議申立人岡ヤエ子(以下、「申立人B」という。)により、本件特許の全請求項に対して、それぞれ特許異議の申立てがされ、平成31年2月5日付けで取消理由が通知され、同年4月1日付けで特許権者より意見書が提出され、同年4月26日付けで申立人Bより上申書が提出され、令和1年5月7日付けで特許権者に取消理由通知(決定の予告)がされ、その指定期間内である同年6月24日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたものである。 なお、申立人A及びBは、令和1年6月28日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである(訂正箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「前記糖誘導体の濃度が0.15質量%以下であり、」とあるのを、「前記糖誘導体の濃度が0.0125質量%?0.05質量%であり、前記グリセリンの濃度が10質量%以上であり、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1又は2記載の」とあるのを、「請求項1記載の」に訂正する。 そして、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-3〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「前記糖誘導体の濃度が0.15質量%以下であり、」とあるのを、「前記糖誘導体の濃度が0.0125質量%?0.05質量%であり、」と訂正し(以下、「訂正事項1-1」という。)、さらに、「前記グリセリンの濃度が10質量%以上であり、」との記載を追加するものである(以下、「訂正事項1-2」という。)。 訂正事項1-1は、訂正前の請求項1における「前記糖誘導体の濃度」の範囲を「0.15質量%以下」から「0.0125質量%?0.05質量%」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1-2は、訂正前の請求項1に係る発明では、「水、糖誘導体、グリセリン及びリン脂質ポリマーを含有する皮膚用組成物」として、皮膚用組成物がグリセリンを含有することを特定していたところ、「グリセリン」について、その濃度を「10質量%以上」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 新規事項追加の有無 (ア)本件特許の願書に添付した明細書には、以下の事項が記載されている。 「【実施例】 【0032】 試験例1 表1に従って精製水及びスイゼンジノリ多糖体を混合して、組成物A0?A8を得た。得られた組成物の皮膚に塗布し、皮膚角質層の水分量を測定した。より詳細には、以下の装置及び手順で測定を行った。 使用装置:水分計・脂分計SKICOS301(株式会社アミックグループ) 手順:1)成人の前腕内側の皮膚を市販のクレンジングシートで清拭し、自然乾燥させた。2)自然乾燥させた皮膚に、上記組成物0.5mLを均一に塗布した。3)10分間自然乾燥した後、SKICOS301を用いて組成物を塗布した部位の角質層の水分量を測定した。水分量の測定を1試料につき3回行い、その平均値を測定値とした。 【0033】 結果を図1に示す。図1から明らかなように、スイゼンジノリ多糖体の濃度が約0.15質量%を超えると、皮膚角質層の水分量が低下する傾向が認められた。 【0034】 【表1】 【0035】 試験例2 表2に従って精製水、スイゼンジノリ多糖体及びグリセリンを混合して、組成物B0?B8、C0?C8及びD0?D8を得た。得られた組成物の皮膚に塗布し、試験例1と同様に皮膚角質層の水分量を測定した。 【0036】 結果を図2に示す。図2から明らかなように、グリセリンを配合すると、スイゼンジノリ多糖体の濃度が高くても、皮膚角質層の水分量が低下せずに維持されることが認められた。 【0037】 【表2】 【0038】 試験例3 試験例1及び2で得た組成物を用いて、角質層の油分量を測定した。使用した装置及び測定の手順は、試験例1と同様である。結果を図3?6に示す。図3から明らかなように、グリセリンを含有しない組成物を塗布した場合、組成物中のスイゼンジノリ多糖体の濃度が高くなるほど油分量が低くなる傾向が認められた。まず、図4?6から明らかなように、グリセリンを含有する組成物を塗布した場合、組成物中のスイゼンジノリ多糖体の濃度が所定値までは油分量が高くなるが、組成物中のスイゼンジノリ多糖体の濃度が所定値を超えると油分量が低くなることが認められた。」 「 【図4】 【図5】 【図6】 」 (イ)訂正事項1-1について 本件特許の願書に添付した明細書の段落【0035】には、精製水、各種濃度のスイゼンジノリ多糖体及び各種濃度のグリセリンを含有する組成物を調製したことが記載され、表2には、当該組成物の組成が示され、図4?6には、当該組成物を皮膚に塗布し、角質層の油分量を測定した結果が示されているところ、スイゼンジノリ多糖体、すなわち、訂正後の請求項1における糖誘導体の濃度の下限値となる0.0125質量%が記載され(表2の組成物B1、C1、D1、図4?6の左から2番目の点)、上限値となる0.05質量%が記載されているから(表2の組成物B3、C3、D3、図3?6の左から4番目の点)、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 (ウ)訂正事項1-2について 本件特許の願書に添付した明細書には、「本発明の皮膚用組成物は、グリセリンを含有する。グリセリンを含有することにより、スイゼンジノリ多糖体を所定の濃度以上含有することによって低下する角質層水分量を向上させることが可能になる。グリセリンの濃度は、角質層水分量を向上させることができる濃度であれば特に限定はされないが、組成物全体に対して10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。」(【0015】)との記載があり、また、表2には、グリセリンの濃度を10、20及び30質量%とすることが記載されているから、訂正事項1-2は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無 上記アで説示したとおり、訂正事項1-1及び訂正事項1-2は、特許請求の範囲を減縮するだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項2によって請求項2を削除するのに伴い、請求項3の引用請求項数を減少するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正後の請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明3」という。)は、令和1年6月24日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 水、糖誘導体、グリセリン及びリン脂質ポリマーを含有する皮膚用組成物であって、 前記糖誘導体は、淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来で、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいて、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占めることを特徴とし、 前記糖誘導体の濃度が0.0125質量%?0.05質量%であり、 前記グリセリンの濃度が10質量%以上であり、 前記リン脂質ポリマーは、ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つである、 皮膚用組成物。 【請求項2】 削除 【請求項3】 前記リン脂質ポリマーがポリクオタニウム-61である、請求項1記載の皮膚用組成物。」 第4 取消理由(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1?3に係る特許に対して、当審が令和1年5月7日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 なお、申立人Bによる特許異議申立ての証拠の甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第8号証、甲第9号証、甲第11号証、甲第14号証をそれぞれ「甲B1」、「甲B2」、「甲B3」、「甲B4」、「甲B6」、「甲B8」、「甲B9」、「甲B11」、「甲B14」という。 (1)取消理由1 請求項1?3に係る発明は、甲B1に記載された発明並びに甲B2、甲B4、甲B6、甲B8、甲B9、甲B11及び甲B14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?3に係る特許は、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2 請求項1?3に係る発明は、甲B3に記載された発明並びに甲B2、甲B4、甲B8、甲B9、甲B11及び甲B14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?3に係る特許は、取り消されるべきものである。 引用文献一覧 甲第1号証:特開2001-64152号公報(甲B1) 甲第2号証:特開2010-43018号公報(甲B2) 甲第3号証:特開2003-238341号公報(甲B3) 甲第4号証:特開2005-68073号公報(甲B4) 甲第6号証:特開2014-152170号公報(甲B6) 甲第8号証:特許第4066443号公報(甲B8) 甲第9号証:"SACRAN From Japanese Pure Water" 大東化成工業株式会社、No.3,(January,2011)(甲B9) 甲第11号証:「研究報告 化粧品用リン脂質コポリマーpoly(MPC-co-BMA)の合成と応用」。FRAGRANCE JOURNAL、1998年7月号97?104頁(甲B11) 甲第14号証:特開2010-43021号公報(甲B14) 参考資料1:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典9」(共立出版株式会社、1989年8月15日縮刷版第32刷発行)64頁及び65頁、「ムコ多糖類」の項 参考資料2:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典8」(共立出版株式会社、1989年8月15日縮刷版第32刷発行)303頁及び304頁、「ヘキソサミン」の項 参考資料3:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典7」(共立出版株式会社、1989年8月15日縮刷版第32刷発行)284頁及び285頁、「ヒアルロン酸」の項 2 甲号証の記載 (1)甲B1 甲B1には、次の事項が記載されている(下線は当審による。以下、同様。)。 (甲B1-1) 「【請求項1】 a.式(I)で示される化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重量比で95/5?10/90として60?100重量%含有する単量体を重合してなるポリマー0.001?10重量%、b.酸性ムコ多糖類0.001?3重量%およびc.多価アルコールまたはその部分エステル化合物0.1?30重量%含有することを特徴とする皮膚化粧料。 【化1】 (R^(1)は水素原子またはメチル基、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は炭素数1?8のアルキル基、nは2?4である。)」 (甲B1-2) 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記課題を解決し、使用時の感触が軽く使用後もべたつかず、保湿効果の持続性および水洗い後の保湿効果に優れ、肌荒れ改善効果に優れるとともに肌にはりを与え、経時安定性にも優れる皮膚化粧料を提供することを目的とする。」 (甲B1-3) 「【0010】 【発明の実施の形態】本発明に用いられる式(I)で示される化合物において、R^(1)は水素原子またはメチル基であり、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は炭素数1?8のアルキル基であり、nは2?4である。その中でも好ましくは式(II)で示される2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)である。 【0011】 【化3】 【0012】本発明に用いられるポリマーは式(I)で示される化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重量比で95/5?10/90として含有し、好ましくは93/7?20/80、更に好ましくは90/10?40/60として含有するポリマー(以下PCポリマーと称する)である。そして、PCポリマー中の式(I)で示される化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量は合わせて60?100重量%であり、好ましくは70?100重量%、更に好ましくは80?100重量%である。式(I)で示される化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重量比が95/5より大きいと、水洗い後の保湿効果が悪くなる。式(I)で示される化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重量比が10/90より少ないか、またはPCポリマー中の式(I)で示される化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量が合わせて60重量%より少ないと、保湿効果の持続性、水洗い後の保湿効果および肌荒れ改善効果が悪くなる。PCポリマーの重量平均分子量は10,000?10,000,000が好ましく、更に好ましくは50,000?5,000,000である。」 (甲B1-4) 「【0014】(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成するアルコールはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの炭素数1?18のアルコールであり、好ましくは炭素数2?12のアルコール、更に好ましくは炭素数3?4のアルコールである。 【0015】一方、本発明に用いられる酸性ムコ多糖類としては例えばヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン等の酸性ムコ多糖類およびそれらと無機または有機のアルカリにより形成される塩であり、好ましくはヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸およびそれらの塩であり、更に好ましくはヒアルロン酸およびその塩である。 【0016】本発明に用いられるc.成分は、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールまたはそれら多価アルコールの酢酸、硫酸、燐酸、脂肪酸等の部分エステル化合物であり、好ましくは多価アルコールまたはその脂肪酸の部分エステル化合物である。」 (甲B1-5) 「【0018】b.成分である酸性ムコ多糖類は組成物全量中に0.001?3重量%であり、好ましくは0.003?2.5重量%、更に好ましくは0.005?2重量%である。0.001重量%未満では肌荒れ改善効果、保湿効果の持続性が弱く、3重量%を超えるとべたつきを伴うだけでなく増粘等を生じて配合が困難になる。」 (甲B1-6) 「【0021】 【実施例】次に実施例によって本発明を更に詳細に説明する。 実施例1?7および比較例1?7 表1?表2に示す透明または半透明化粧水である皮膚化粧料を調整し、下記の方法により評価を行なった。ただし、添加成分として表3に示す4成分を共通添加成分Aとして使用した。結果を表1?2に示す。 ・・・ 【0029】 【表1】 【0030】1)MPC80重量%、メタクリル酸ブチル20重量%の構成単位で重量平均分子量約70万の共重合体 2)MPC70重量%、メタクリル酸ブチル30重量%の構成単位で重量平均分子量約100万の共重合体 3)MPC60重量%、メタクリル酸プロピル30重量%、酢酸ビニル10重量%の構成単位で重量平均分子量約80万の共重合体 4)紀文フードケミファ(株)製 ヒアルロン酸ナトリウム FCH-200 5)生化学工業(株)製 コンドロイチン硫酸ナトリウム 6)MPC5重量%、メタクリル酸ブチル95重量%の構成単位で重量平均分子量約70万の共重合体 7)MPC100重量%の構成単位で重量平均分子量約100万の共重合体」 (甲B1-7) 「【0035】実施例8?10 表4に示す水中油型乳液である皮膚化粧料を調整し、実施例1?7と同様の方法により評価を行なった。ただし、添加成分として表5に示す11成分を共通添加成分Bとして使用した。結果を表4に示す。【0036】 【0037】1)MPC80重量%、メタクリル酸ブチル20重量%の構成単位で重量平均分子量約70万の共重合体 2)MPC70重量%、メタクリル酸ブチル30重量%の構成単位で重量平均分子量約100万の共重合体 3)紀文フードケミファ(株)製 ヒアルロン酸ナトリウム FCH-200 4)生化学工業(株)製 コンドロイチン硫酸ナトリウム 5)分子量1540 6)分子量4000」 (甲B1-8) 「【0047】 【発明の効果】本発明の皮膚化粧料は使用時の感触が軽く使用後もべたつかず、保湿効果の持続性および水洗い後の保湿効果に優れ、肌荒れ改善効果に優れるとともに肌にはりを与え、経時安定性にも優れている。」 (2)甲B2 甲B2には、次の事項が記載されている。 (甲B2-1) 「【請求項1】 平均分子量が10万?100万のメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体若しくは共重合体と、平均分子量が10万?500万のポリエチレングリコールおよび/またはポリオキシエチレンメチルグルコシドを配合することを特徴とするスキンケア組成物。 【請求項2】 メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体若しくは共重合体が、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸アルキル共重合体であることを特徴とする請求項1記載のスキンケア組成物。 【請求項3】 メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸アルキル共重合体が、平均分子量50万?70万のメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体であることを特徴とする請求項2記載のスキンケア組成物。」 (甲B2-2) 「【0011】 本発明に使用できる平均分子量が10万?100万の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体若しくは共重合体は、公知の方法で合成し入手が可能である。(例えば、Polym. J.,22,35,355(1990)、特開平9-3132公報)これら2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体若しくは共重合体は特に限定されるものではないが、具体的には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ラウリル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸トリデシル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ミリスチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸パルミチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ベヘニル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸イソステアリル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸オレイル共重合体が挙げられる。中でも2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸イソステアリル共重合体が好ましく、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体が最も好ましい。2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体若しくは共重合体の分子量は平均10万?100万が好ましく、50万?70万がより好ましい。また、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体若しくは共重合体の配合量は、組成物全量に対して0.01?1.0重量%が好ましく、0.01?0.1重量%がより好ましく、0.01?0.05%が最も好ましい。配合量が0.01%より少ないと十分な効果を得ることができず、1.0%を超えると配合しただけの効果が得られないため経済上の理由から好ましくない。」 (甲B2-3) 「【0023】 [実験例1:摩擦係数の測定による平滑性評価] 表面試験機を用い、20℃、65RH%の環境で調湿した人工皮膚の上に試料0.2mlを塗布後、樹脂製の接触子を置き、25gの荷重条件にて人工皮膚上を一定速度で動かした。測定は、接触子の変位とこれを動かすのに必要な力を0.1秒間隔で検出し、その値を平均摩擦係数(MIU)として求めた。得られたMIU値は、下記に従って評価した。結果を表1に示す。 ◎ MIU値が0.660未満 ○ MIU値が0.660以上0.700未満 × MIU値が0.700以上 【0024】 なお、表1中、A、B、C1、C2、C3については、下記の物質を示す。 A:2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(平均分子量60万) B:ポリオキシエチレンメチルグルコシド(酸化エチレン平均付加モル数 10) C1:ポリオキシエチレングリコール (平均分子量 200万) C2:ポリオキシエチレングリコール (平均分子量 30万) C3:ポリオキシエチレングリコール (平均分子量 4万) 【0025】 【表1】(省略) 【0026】 【表2】 」 (3)甲B3 甲B3には、次の事項が記載されている。 (甲B3-1) 「【請求項1】 皮膚の角質細胞におけるラメラ構造の再生機能を有する親水性ポリマーを配合してなることを特徴とする皮膚外用剤。 【請求項2】 親水性ポリマーが、ヒアルロン酸又はその塩、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートの共重合体、キトサン又はその塩、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム及びアラビアゴムからなる群から選ばれる1種又は2種以上のポリマーであることを特徴とする請求項1記載の皮膚外用剤。」 (甲B3-2) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、保湿効果に優れ、皮膚の乾燥や老化を防ぎ、皮膚にうるおいを与える外用剤に係わり、さらに詳しくは、皮膚表層部における角質細胞間脂質のラメラ構造を再生して皮膚の水分保持機能を高めることができる皮膚外用剤に関するものである。」 (甲B3-3) 「【0010】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明に係わる皮膚外用剤は、角質細胞間脂質のラメラ構造の再生機能を有する親水性ポリマーを配合してなるものであるが、この親水性ポリマーの配合量としては、皮膚外用剤の総量を基準として、質量比で0.001?20%、さらには0.01?10%の範囲とすることがより好ましく、この範囲で上記親水性ポリマーを配合した皮膚外用剤において、目的とする効果が確実なものとなる。 【0011】また、親水性ポリマーとしては、例えば、ヒアルロン酸又はその塩、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートの共重合体、キトサン又はその塩、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム及びアラビアゴムのうちの1種を単独で、あるいはこれらのうちの2種以上を複合的に使用することができる。なお、これら親水性ポリマーの分子量としては、1000?200000の範囲のものが好ましい。」 (甲B3-4) 「【0013】そして、上記の親水性ポリマーの中では、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸ブチル)の共重合体、ヒアルロン酸及びその塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム)が角質細胞間脂質のラメラ構造の再生機能に優れており、これらを配合して皮膚外用剤とすることが特に好ましい。」 (甲B3-5) 「【0015】本発明に係る上皮膚外用剤においては、上記親水性ポリマーに加えて、保湿剤、アミノ酸、ビタミン類、炭化水素、高級脂肪酸、エステル類、シリコーン、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、pH調整剤、水等を必要に応じて適宜配合することができる。これらの成分はそれぞれ一種を用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。 【0016】保湿剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、乳酸ナトリウム、dl- ピロリドンカルボン酸塩、ヨクイニン抽出物、黒糖抽出物、大豆レシチン等が挙げられる。」 (甲B3-6) 「【0028】 【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。 【0029】(1)ラメラ構造再生能試験 〈試験方法〉まず、ヒト前腕内側部の皮膚表面に対し、アセトン-エタノールにより細胞間脂質を取り除き、人工的にラメラ構造が破壊された状態を作り出した。そして、表1に示す各成分の1%水溶液を調製し、これを人工的にラメラ構造を破壊した上記皮膚表面に塗布し、4時間後に塗布部分の角層をテープストリッピングし、ストリッピングした角層をキーエンス社製ビデオマイクロスコープ(VH-Z450:450倍レンズ)で観察し、ラメラ構造の再生状態を評価した。判定基準は、次の5段階とし、5人がラメラ構造の液晶状態を目視評価し、その平均値を評点として、表1に併せて示した。」 (甲B3-7) 「【0033】(2)化粧品のラメラ構造再生能試験 〈試験方法〉表2に示す処方に係わる8種類の化粧品を常法にしたがって調製し、上記した方法によって、各化粧品のラメラ構造再生能を調査したところ、表3に示すような結果が得られた。 【0034】 【表2】 【0035】 【表3】 」 (4)甲B6 甲B6には、次の事項が記載されている。 (甲B6-1) 「【請求項1】 (a)淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体水溶液と、(b)油剤を含有することを特徴とする化粧料。 【請求項2】 界面活性剤を含有しないことを特徴とする請求項1記載の化粧料。」 (甲B6-2) 「【0008】 以下、上記本発明を詳細に説明する。 本発明の化粧料で用いる(a)淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体は、前記特許文献1に記載の方法にて抽出されたものであって、ヘキソース構造をもつ糖構造体およびペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合またはβ-グリコシド結合により直鎖状または分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいては、水酸基100個あたり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5質量%以上を占めることを特徴としている。 【0009】 前記スイゼンジノリ多糖体は水溶液中で棒状(棒状らせん状)の構造をとると考えられている。それは、重量平均分子量が約16,000,000のスイゼンジノリ多糖体水溶液の濃度が、0.2%以上で液晶構造をとるためである。液晶構造を確認するためには、所定の濃度で水溶液を調製し、その溶液を直交偏光系で光をあてて観察する。このとき、直交偏光系で光をあてたときに明るく光り、虹色の輝きを確認したとき、液晶構造をとっていると言える。これは、液晶構造による複屈折カラーである。スイゼンジノリ多糖体ではこのように液晶構造が、0.2質量%以上の水溶液で発現するため、その分子は、棒状(棒状らせん状)であると言える。 【0010】 本発明の化粧料で用いる(b)油剤の例としては、例えばアボガド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、キョウニン油、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、セラックロウ、タートル油、大豆油、荼実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等;炭化水素油として、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等;高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等;高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2-デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、POEコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等;エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、イソノナン酸イソノニル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等;グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル;シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ビフェニルシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、アルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン等が挙げられる。また、グリセリン、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン、マルチトール、マルビット液などの多価アルコールも挙げられる。 【0011】 本発明における化粧料では、通常、化粧料に用いられる粉体、防腐剤、香料、保湿剤、紫外線吸収剤、塩類、溶媒、樹脂、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等の各種成分を、本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。」 (甲B6-3) 「【0015】 【表1】 」 (甲B6-4) 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら淡水性藍藻類スイゼンジノリを由来とする多糖体は、超高分子量であるため水溶液のみを化粧水などの水性化粧料などに配合すると、乾燥後、肌上で皮膜を形成し、つっぱり感を感じるなどの問題があった。そして、そのつっぱり感を解消するために、界面活性剤を用いて油剤を配合した場合、その界面活性剤によるべたつきが生じるなどの問題があった。 【課題を解決するための手段】 【0005】 そこで、本発明人は鋭意検討した結果、(a)淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体の超高分子糖構造体が、界面活性剤を配合しなくても、(b)油剤を安定に含有することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」 (5)甲B8 甲B8には、次の事項が記載されている。 (甲B8-1) 「【請求項1】 淡水性藍藻類スイゼンジノリ Aphanothece sacrum由来で、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいては、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占めることを特徴とする糖誘導体。」 (甲B8-2) 「(7)本発明の糖誘導体は、ティーバッグ法による測定において、重量比で純水に対して5700倍、生理食塩水に対して3300倍の吸収率という非常に優れた吸溶媒性を示すため、吸水・保水・保湿剤として極めて有用である。「ティーバッグ法」とは、以下のような溶媒吸収率測定法である。 即ち、キッチンタウパーで作った袋の中に、純水又は生理食塩水を溶媒とする糖誘導体の溶液を入れる。この袋を同一種類の溶媒を多量に収容したビーカーに浸して2時間放置した後、袋を引き上げて懸垂し、袋から液滴が落下しなくなるまで(通常は、5時間程度)懸垂状態を持続する。その後に袋中の溶液を回収し、溶液10mLの重さWsと、これに含まれる糖誘導体の重さW(このWは溶液を徹底的に真空乾燥した残渣の重量を秤量して求められる)とから、Ws/Wを計算して溶媒吸収率を求める。」 (6)甲B9 甲B9には、次の事項が記載されている。 (甲B9-1)(2頁6行?7行) 「極めて高い保水力を持つ「サクラン」は化粧品への保湿効果が期待できる、貴重な天然素材です。」 (甲B9-2)(4頁10行?19行) 「6100倍の保水力=優れた保湿性 多糖類の一種で、化粧品に多く配合されるヒアルロン酸も、その保水力で有名ですが、その理由は高い分子量にあります。 ヒアルロン酸を上回る分子量を持つ「サクラン」、ヒアルロン酸、キサンタンガムをそれぞれティーパック法で保水性試験を行いました。 結果、ヒアルロン酸、キサンタンガムがそれぞれ1,200倍という値であったのに対し、「サクラン」は6,100倍というヒアルロン酸の5倍以上もの保水力を示しました。」 (甲B9-3)(5頁2行?3行) 「「サクラン」はヒアルロン酸とは異なり、皮膚の上で乾燥した後の感覚が非常にさっぱりとしていることが特徴的です。」 (甲B9-4)(6、7頁) 「SACRAN POWER3 肌への有効性評価:In-Vivo Efficiency Test Result 36?60歳の乾燥肌を持つアジア人女性10名に対する0.2%サクラン配合美容液の有効性評価を行いました。 ・・・ 評価結果:Conclusion 0.2%サクラン美容液を塗布した肌は、未塗布または比較として同量のヒアルロン酸Na美容液を塗布した肌と比較して、優れた保湿性と柔軟性を示しました。 ・・・ 0.2%サクラン美容液を塗布した肌は、しわが減少し、よりキメが整った肌になり、またファンデーションのノリも、未塗布の場合と比較して、より優れていました。」 (7)参考資料1 参考資料1には、次の事項が記載されている。 (参考1-1) 「ムコ多糖類・・・ 元来、動物粘質物の成分である粘ちょうな糖タンパク質ないしその成分である多糖類をばく然とよんだ名称。のち幾人かによって分類と定義が試みられた。・・・のちK.H.Meyerは「ヘキソサミンを成分とする多糖類」とした。この定義ではキチンなどがはいりカロニン硫酸がはいらないなど、本来の概念に合わない点もあるが、類縁物質との関係とともに化学的に明確で最も有力な定義である。」 (8)参考資料2 参考資料2には、次の事項が記載されている。 (参考2-1) 「ヘキソサミン・・・ ヘキソースのアミノ誘導体。ヘキソースのオサミンの意でアルドヘキソサミンとケトヘキソサミンとがあるが、おもなものは前者すなわち2-アミノアルドヘキソースであって最も重要なアミノ糖である。相当するヘキソース名にアミンを付してグルコサミンなどのようによぶ。」 (9)参考資料3 参考資料3には、次の事項が記載されている。 (参考3-1) 「ヒアルロン酸・・・ アミノ糖とウロン酸とから成る複雑な多糖類の一種。コンドロイチン硫酸などとともに主要なムコ多糖類。」 (10)甲B4 甲B4には、次の事項が記載されている。 (甲B4-1) 「【0046】 1.肌のはり、弾性及び肌のしわ、たるみの防止、改善効果 20名のパネル(自己申告で「目元の肌にはり、弾力性がなく、しわやたるみも気になる」と感じている人)による使用テスト(各化粧料を目元の皮膚に連日1ヵ月間使用)を行い、使用した後の肌のはり、弾力性及び肌のしわ、たるみに対する改善効果について、下記の判定基準に基づいて判定してもらった。次いで、各人の判定結果から下記評価基準に基づいて評価した。 【0047】 (判定基準) (肌のはり、弾力性) 著効:肌に非常にはり、弾力性がでた。 有効:肌にはり、弾力性がややでた。 効果なし:肌のはり、弾力性に変化がないか、使用前より悪化した。 【0048】 (肌のしわ、たるみ) 著効:肌のしわ、たるみが非常に改善された。 有効:肌のしわ、たるみがやや改善された。 効果なし:肌のしわ、たるみに変化がないか、使用前より悪化した。 【0049】 (評価基準) ◎:被験者が著効及び有効の示す割合(有効率)が80%以上。 ○:被験者が著効及び有効の示す割合(有効率)が50%以上80%未満。 △:被験者が著効及び有効の示す割合(有効率)が30%以上50%未満。 ×:被験者が著効及び有効の示す割合(有効率)が30%未満。 【0050】 2.使用性、使用感官能試験 各試験品について、20名の専門パネルに、使用性(化粧時の化粧料のよれ)、使用感(化粧によるつっぱり感に基づく不快感)について判定してもらい、下記評価基準に基づいて、各試験品の使用性、使用感を評価した。 【0051】 化粧時の化粧料のよれの評価基準 ◎:化粧料のよれがなく使用性がよいと感じた人が16人以上。 ○:化粧料のよれがなく使用性がよいと感じた人が11人?15人。 △:化粧料のよれがなく使用性がよいと感じた人が6人?10人。 ×:化粧料のよれがなく使用性がよいと感じた人が5人以下。 【0052】 つっぱり感による不快感の評価基準 ◎:つっぱり感による不快感がなく使用感がよいと評価した人が16人以上。 ○:つっぱり感による不快感がなく使用感がよいと評価した人が11人?15人。 △:つっぱり感による不快感がなく使用感がよいと評価した人が6人?10人。 ×:つっぱり感による不快感がなく使用感がよいと評価した人が5人以下。 【0053】 [実施例1?3、比較例1?5] 表1に示す成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)の目元用化粧料(アイクリーム)を以下の方法で調製した。 【0054】 (製造法) (1)?(8)を加熱混合し、70℃に調整した(油相)。次に水相として(9)?(16)を加熱混合して、70℃に調整した。この水相に先の油相を添加して予備乳化を行った。この予備乳化物の乳化粒子をホモミキサーで均一にした後、攪拌冷却を行って室温まで冷却し、所望するクリームを得た。 【0055】 【表1】 【0056】 表1中、 (注1)リピジュア-PMB(日本油脂株式会社製)(配合量はMPCコポリマー固形分としての量を表示した。) (注2)リピジュア-HM-500(日本油脂株式会社製)(配合量はMPCホモポリマー固形分としての量を表示した。) (注3)アセチル化ヒアルロン酸(株式会社資生堂製) 【0057】 上記実施例1?3、比較例1?5の目元用化粧料(アイクリーム)につき効果試験を行い、その評価結果を表2に示す。 【0058】 【表2】 【0059】 表2から分かるように、MPCコポリマー、AcHA、1,3-ブチレングリコール及びグリセリンを配合した実施例1?3のアイクリームは、いずれも優れた効果を有するものであった。これらのうち、特に、PVPをさらに配合した実施例3のアイクリームは、 はり、弾力性防止防止、改善効果、しわ、たるみ防止、改善効果がさらに向上した。」 (11)甲B11 甲B11には、次の事項が記載されている。 (甲B11-1)(97頁右欄10行?98頁左欄8行) 「石原、中林らは生体膜に存在するリン脂質と類似した構造をもつリン脂質極性基を、高分子の側鎖に導入した化合物-2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(MPC)共重合体-の生体適合性に着目してバイオマテリアルとしての可能性を検討している。・・・ 本報告では、非重合性の観点から疎水性モノマーにbutyl methacrylate(BMA)を選択しMPCとモル比8:2の組成で共重合体(以下poly(MPC-co-BMA)と略す)を合成し、次世代の化粧品原料としての諸物性について検討を行ったので以下に述べる。」 (甲B11-2)(102頁左欄12行?右欄14行) 「3-3.poly(MPC-co-BMA)を配合した化粧水モデルの官能評価 化粧品原料として、機能は当然のことながら、官能に与える影響も大きな特性となる。そこで、poly(MPC-co-BMA)を配合した化粧水のモデル(poly(MPC-co-BMA)配合化粧水)を調製し、20才?50才の女性16人のパネラーによる官能評価を行った。また、比較対照としてpoly(MPC-co-BMA)を配合していない化粧水(ベース化粧水)についても同様に官能評価を行った。表3に官能評価で使用した化粧水の組成を示す。なお、化粧水塗布は手および顔で試験した。 図10に官能評価の結果を示す。前述の実験においてpoly(MPC-co-BMA)が高い保湿性を有するという結果から予想したとおりに、0.05wt%poly(MPC-co-BMA)配合化粧水では、ベース化粧水と比較して使用中、使用後においてしっとり感が強いという結果となった。また、触った時に粘度が高く感じるにもかかわらず、使用中での伸びがややよいという高分子系保湿剤に特徴的な効果も示した。これらの特性は、一般的に使用されている高分子系保湿剤と同様のものであり、poly(MPC-co-BMA)を化粧品に配合してもこれらと同等の使用感が得られると思われる。」 (甲B11-3)(98頁左欄13行?14行) 「poly(MPC-co-BMA)は重量平均分子量70万の水溶性物質である。」 (12)甲B14 甲B14には、次の事項が記載されている。 (甲B14-1) 「【実施例1】 【0016】 以下に示す処方に従って、化粧料1を調製した。ア、イ、ウの成分をそれぞれ80℃に加熱し、成分を加熱溶解させて、アの成分を均一に撹拌し、これに撹拌下徐々にイの成分を加え、更にウを加えゲルを形成させ、これを真空下、攪拌冷却し、本発明の化粧料である、化粧料1(エッセンス)を調製した。 【0017】 【表1】 【実施例2】 【0018】 下記に示す処方に従い、化粧料1と同様にして化粧料2を調製した。また、化粧料2のアミグリP30Vをステアリン酸ポリエチレングリコールに置換したものを化粧料3とし調製した。 【表2】 【比較例】 【0019】 化粧料1の固形ワセリン及びセレシンを流動パラフィンに置換したものを比較例1、化粧料1のLipidure-NRを水に置換したものをそれぞれ比較例2とした。」 (甲B14-2) 「【0025】 <使用実感> 化粧料を何も塗布しないコントロールと、化粧料1?3,比較例1及び2について、女性被験者5人により使用実感を検証した。実感は以下の5段階から選択し、点数化し、平均を算出した。結果を表5に示した。 (官能評価の基準) 使用後の被膜感について 1:被膜感が全くない(コントロールと同じ)(5点) 2:やや被膜感を感じるが気にならない(4点) 3:特に被膜感が目立つわけではない(3点) 4:やや被膜感が気になる(2点) 5:被膜感を感じ、あつぼったい気がする(1点) 【0026】 【表5】 」 3 当審の判断 (1)取消理由1(甲B1に記載された発明を引用発明とする進歩性欠如) ア 甲B1に記載された発明 上記記載事項(甲B1-1)によれば、甲B1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「a.式(I)で示される化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重量比で95/5?10/90として60?100重量%含有する単量体を重合してなるポリマー0.001?10重量%、b.酸性ムコ多糖類0.001?3重量%およびc.多価アルコールまたはその部分エステル化合物0.1?30重量%含有することを特徴とする皮膚化粧料。 【化1】 (R^(1)は水素原子またはメチル基、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は炭素数1?8のアルキル基、nは2?4である。)」(以下、「甲B1発明」という。) イ 本件発明1 (ア)対比 本件発明1と甲B1発明を対比すると、甲B1発明の「皮膚化粧料」は、本件発明1の「皮膚用組成物」に相当するものであるから、両者は、「皮膚用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点B1-1 本件発明1は、「淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来で、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいて、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占めること」を特徴とする「糖誘導体」(以下、この特徴を有する糖誘導体を単に「スイゼンジノリ多糖体」という。)を含有するものであって、その濃度が「0.0125質量%?0.05質量%」であるのに対し、甲B1発明では、酸性ムコ多糖類を0.001?3重量%含有する点。 相違点B1-2 本件発明1はグリセリンを含有し、その濃度が10質量%以上であるのに対し、甲B1発明では多価アルコールを0.1?30重量%含有する点。 相違点B1-3 本件発明1は、「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つ」であるリン脂質ポリマーを含有するのに対し、甲B1発明では、式(I)で示される化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合してなるポリマーを含有する点。 (R^(1)は水素原子またはメチル基、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は炭素数1?8のアルキル基、nは2?4である。) 相違点B1-4 本件発明1は水を含有するのに対し、甲B1発明ではそのような特定がない点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 a 相違点B1-3 甲B1には、式(I)で示される化合物として、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)が記載され(段落【0010】及び【0011】)、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成するアルコールとして、ブチルアルコールが記載されており(段落【0014】)、これらを選択した場合の成分aは、本件明細書の段落【0018】の「ポリクオタニウム-51は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体とも呼ばれ」る旨の記載を踏まえれば、ポリクオタニウム-51に対応するものである。そうすると、甲B1発明における成分aとして、ポリクオタニウム-51を使用することは当業者が容易に想到し得ることである。 b 相違点B1-4 甲B1における実施例の組成物はすべて精製水を使用していることを考慮すると(実施例1?14)、甲B1発明において水を含有させることは、当業者が容易に想到し得ることである。 c 相違点B1-1及び相違点B1-2 本件発明1は、角質層の水分量を向上させる又は低下させず、かつ、角質層の油分量を維持するために、10質量%以上の濃度のグリセリンと共に0.0125質量%?0.05質量%のスイゼンジノリを使用するものであるところ、甲B1、甲B2、甲B4、甲B6、甲B11及び甲B14には、上記特定濃度のグリセリンとスイゼンジノリ多糖体を併用することについて記載も示唆もない。なお、確かに、スイゼンジノリ多糖体に保湿効果があることは、甲B8及び甲B9に記載のとおり、本件特許の出願前より公知であるが、そのことが、上記特定濃度のグリセリンとスイゼンジノリ多糖体を併用することを当業者に示唆するものではない。 d 効果 (a)本件明細書には、本件発明1により奏される効果に関して、次の事項が記載されている。 「【発明の効果】 【0011】 本発明に係る皮膚用組成物は、皮膚に塗布した時に角質層の水分量及び油分量を適度に制御し、保湿効果を最大限に発揮することが可能である。また、本発明に係る皮膚用組成物は、皮膚に塗布したときにのび易く、なじみ易く、また塗布後のツッパリ感が少なく、優れた使用性を有する。」 「【0038】 試験例3 試験例1及び2で得た組成物を用いて、角質層の油分量を測定した。使用した装置及び測定の手順は、試験例1と同様である。結果を図3?6に示す。図3から明らかなように、グリセリンを含有しない組成物を塗布した場合、組成物中のスイゼンジノリ多糖体の濃度が高くなるほど油分量が低くなる傾向が認められた。まず、図4?6から明らかなように、グリセリンを含有する組成物を塗布した場合、組成物中のスイゼンジノリ多糖体の濃度が所定値までは油分量が高くなるが、組成物中のスイゼンジノリ多糖体の濃度が所定値を超えると油分量が低くなることが認められた。 【0039】 試験例4 表3に従って精製水、スイゼンジノリ多糖体、グリセリン及びリン脂質ポリマーを混合して、各種組成物を得た。得られた組成物の皮膚に塗布し、使用性を評価した。評価項目は、(1)塗布時ののび易さ及びなじみ易さ、(2)塗布後のツッパリ感のなさである。四段階で評価を行い、具体的には、 ×:使用性が悪い、 △:使用性がやや悪い、 ○:使用性が良好である、 ◎:使用性がとても良好である と評価した。評価結果を表3に示す。表3に示した評価結果から明らかなように、ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つのリン脂質ポリマーを配合することで、組成物の使用性が改善されることが分かった。 【0040】 【表3】 」 「【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 」 (b)本件明細書の図4?図6は、精製水、各種濃度のスイゼンジノリ多糖体及びグリセリンを含有する組成物を皮膚に塗布し、皮膚角質層の油分量を測定した結果である。これによると、スイゼンジノリ多糖体の濃度が0.0125質量%?0.05質量%の範囲にあり、かつ、グリセリンの濃度が10質量%以上にあるときは、スイゼンジノリ多糖体の濃度が0.0125質量%より少ない場合や0.05質量%より多い場合と比較して、皮膚角質層の油分量が増加することが示されている。グリセリンに皮脂の保持効果があることが周知であったとしても、スイゼンジノリ多糖体の濃度を特定の範囲にすることにより、それ以外の範囲の場合と比して、皮脂角質層の油分量が増加するという効果は、甲B1の記載から、当業者が予測できるものとは認められない。 また、甲B2、甲B4、甲B11、甲B14は、ポリクオタニウム-51等のリン脂質ポリマーが化粧料の使用性を改善することは知られていることを示すための証拠であり、甲B6は、0.15質量%の割合でスイゼンジノリ多糖体を使用することが知られていることを示すための証拠であり、甲B8、甲B9は、スイゼンジノリ多糖体が保湿効果に優れることを示すための証拠であるから、本件発明1が奏する上記効果は、これらの甲号証の記載から、上記効果は当業者が予測できるものとは認められない。 なお、この点、申立人Bは、本件明細書の試験例1?3の結果は、スイゼンジノリ多糖体とグリセリンのみを組み合わせた場合におけるものであって、特定のリン脂質ポリマーを含む組成物において、スイゼンジノリ多糖体の配合量を変化させた結果ではなく、他の成分を含む場合には、皮膚角質層の油分量を保持できるという効果は、必ずしもあてはまるものではない旨主張する。 しかしながら、皮膚角質層の油分量がスイゼンジノリ多糖体及びグリセリンの配合量によって増減するものであることは、試験例3から明らかであり、特定のリン脂質ポリマーが、かかる増減の傾向に影響すると認めるべき根拠もないから、申立人Bの主張は採用できるものではない。そして、本件明細書の試験例1?3において、スイゼンジノリ多糖体とグリセリンからなる系において、スイゼンジノリ多糖体の濃度が0.0125質量%?0.05質量%の範囲にあり、かつ、グリセリンの濃度が10質量%以上にあるときは、皮膚角質層の油分量を保持できることを確認している以上、特定のリン脂質ポリマー等の他の成分を加えた場合であっても、同様に顕著な効果が奏されるものと理解できる。 (ウ)よって、本件発明1は、甲B1発明並びに甲B2、B4、B6、B8、B9、B11及びB14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 ウ 本件発明3 本件発明3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲B1発明並びに甲B2、B4、B6、B8、B9、B11及びB14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1及び3に係る特許は、取消理由1によって取り消すべきものではない。 (2)取消理由2(甲B3に記載された発明を引用発明とする進歩性欠如) ア 甲B3に記載された発明 上記記載事項(甲B3-7)の実施例7の記載によれば、甲B3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「1、3-ブチレングリコール 5質量% 1、2-ペンタンジオール 1.5質量% グリセリン 10質量% ブドウ糖 5質量% 精製水 残余 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル重合体 0.01質量% ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量% を含有する皮膚に塗布する化粧品。」(以下、「甲B3発明」という。) イ 本件発明1 (ア)対比 本件発明1と甲B3発明を対比すると、甲B3発明の「精製水」、「皮膚に塗布する化粧品」は、それぞれ、本件発明1の「水」、「皮膚用組成物」に相当する。 上記記載事項(参考3-1)によれば、ヒアルロン酸とは、「アミノ糖とウロン酸とから成る複雑な多糖類の1種」であることから、甲B3発明の「ヒアルロン酸ナトリウム」は、本件発明1の「糖誘導体」に相当する。 また、甲B3発明の「2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル重合体」は、本件明細書の段落【0018】の「ポリクオタニウム-51は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体とも呼ばれ」る旨の記載を踏まえれば、本件発明1の「ポリクオタニウム-51」に相当する。 そうすると、両者は、「水、糖誘導体、グリセリン及びポリクオタニウム-51であるリン脂質ポリマーを含有する皮膚用組成物であって、上記グリセリンの濃度が10質量%である皮膚用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点B3-1 本件発明1は、糖誘導体がスイゼンジノリ多糖体であり、その濃度が0.0125質量%?0.05質量%であるのに対し、甲B3発明はヒアルロン酸ナトリウムであり、その濃度が0.1質量%である点。 (イ)判断 上記相違点B3-1について検討する。 甲B8及び甲B9には、スイゼンジノリ多糖体が保湿効果に優れること(上記記載事項(甲B8-2)、(甲B9-1)及び(甲B9-2))、とりわけ、ヒアルロン酸に比べて保水力に優れることが記載されている(上記記載事項(甲B9-2))。しかし、これらの甲号証には、甲B3発明において、0.1質量%のヒアルロン酸に代えて、又はこれに加えて、0.0125質量%?0.05質量%のスイゼンジノリ多糖体を配合することについて記載も示唆もない。 そして、上記(1)イ(イ)eで説示したように、本件発明1は、スイゼンジノリ多糖体の濃度を0.0125質量%?0.05質量%の範囲とし、かつ、グリセリンの濃度が10質量%以上としたことにより、それ以外の範囲の場合と比して皮脂角質油分量が増加するという、当業者が予測できない顕著な効果を奏するものである。 (ウ)よって、本件発明1は、甲B3発明並びに甲B2、甲B4、甲B8、甲B9、甲B11及び甲B14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 ウ 本件発明3 本件発明3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲B3発明並びに甲B2、甲B4、甲B8、甲B9、甲B11及び甲B14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1及び3に係る特許は、取消理由2によって取り消すべきものではない。 第5 特許異議申立理由の概要及び提出した証拠 1 申立人Aの主張する申立理由 申立人Aは、以下の甲第1?6号証を提出し、以下の申立理由A1及びA2を主張している。なお、以下では、各甲号証を指して、それぞれ、単に「甲A1」?「甲A6」という。 甲第1号証:くまもと工連ニュースNo.204、一般社団法人熊本県工業連合会事務局発行、平成26年3月31日(甲A1) 甲第2号証:咲水シリーズ、リバテープ製薬株式会社、[平成30年9月12日検索]インターネット 甲第3号証:特許第4066443号(甲A3) 甲第4号証:AURAGEのパンフレット、NATURALLYPLUS DIRECT MARKETING PTE,LIMITED平成25年1月1日、 甲第5号証:"SACRAN From Japanese Pure Water" 大東化成工業株式会社、No.3,(January,2011)(甲A5) 甲第6号証:特開2005-189011号公報(甲A6) (1)申立理由A1(進歩性) ・本件発明1及び2は、甲A1に記載された発明及び甲A2に記載された発明並びに甲A3?甲A5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 ・本件発明3は、甲A1に記載された発明及び甲A2に記載された発明並びに甲A3?甲A6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。 (2)申立理由A2(サポート要件) 本件発明1?3は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。 2 申立人Bの主張する申立理由 申立人Bは、以下の甲第1?14号証を提出し、以下の申立理由B1?B3を主張している。なお、以下では、各甲号証を指して、それぞれ、単に「甲B1」?「甲B14」という。 甲第1号証:特開2001-64152号公報(甲B1) 甲第2号証:特開2010-43018号公報(甲B2) 甲第3号証:特開2003-238341号公報(甲B3) 甲第4号証:特開2005-68073号公報(甲B4) 甲第5号証:特開2003-73251号公報(甲B5) 甲第6号証:特開2014-152170号公報(甲B6) 甲第7号証:特開2008-201694号公報(甲B7) 甲第8号証:特許第4066443号公報(甲B8) 甲第9号証:"SACRAN From Japanese Pure Water" 大東化成工業株式会社、No.3,(January,2011)(甲B9) 甲第10号証:日本温泉気候物理医学会雑誌、2008年、71巻、3号、p.173-179(甲B10) 甲第11号証:「研究報告 化粧品用リン脂質コポリマーpoly(MPC-co-BMA)の合成と応用」。FRAGRANCE JOURNAL、1998年7月号 No.211 (Vol.26/No.7)97?104頁(甲B11) 甲第12号証:第33回日本バイオレオロジー学会年会発表資料、2010年6月3日、 甲第13号証:特開平6-157236号公報(甲B13) 甲第14号証:特開2010-43021号公報(甲B14) (1)申立理由B1(新規性) 本件特発明1?3は、甲B1?甲B7それぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。 (2)申立理由B2(進歩性) (申立理由B2-ア) 本件発明1?3は、甲B1に記載された発明並びに甲B2、B4、B6、B8、B9及びB11?甲B14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。 (申立理由B2-イ) 本件発明1?3は、甲B2に記載された発明並びに甲B6及び甲B9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。 (申立理由B2-ウ) 本件発明1?3は、甲B3に記載された発明並びに甲B6及び甲B9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。 (申立理由B2-エ) 本件発明1?3は、甲B4に記載された発明並びに甲B6及び甲B9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。 (申立理由B2-オ) 本件発明1?3は、甲B5に記載された発明並びに甲B6及び甲B9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。 (申立理由B2-カ) 本件発明1?3は、甲B6に記載された発明並びに甲B1?甲B3、甲B4及び甲B11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。 (申立理由B2-キ) 本件発明1?3は、甲B7に記載された発明及び甲B11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。 (3)申立理由B3(サポート要件) 本件発明1?3は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。 第6 甲号証の記載 (1)甲A1 甲A1には、次の事項が記載されている。 (甲A1-1)(2頁6行?9行) 「★熊本県工業対象 リバテープ製薬株式会社 「水前寺海苔『サクラン』の機能性と地産地消に着目した自然派化粧品『咲水(さくすい)』の商品開発」 (甲A1-2)(2頁右欄1段1行?4段8行) 「県工業連合会(・・・)は3日、2013年度の県工業大賞に、県産スイゼンジノリから抽出した保湿成分配合の化粧水「咲水」を開発したリバテープ製薬(・・・)を選んだ。・・・咲水は、ヒアルロン酸の5倍以上の保水力がある保湿成分「スイゼンジノリ多糖体」を使用。原料のスイゼンジノリは地元で養殖され、ほかの成分も無添加にこだわった。12年7月に発売し、これまで化粧水と保湿ジェルで約4千万円を売り上げ、3月には洗顔向け製品も販売予定。」 (2)甲A3 甲A3には、次の事項が記載されている。 (甲A3-1) 「【請求項1】 淡水性藍藻類スイゼンジノリ Aphanothece sacrum由来で、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいては、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占めることを特徴とする糖誘導体。」 (甲A3-2)(10頁下から8行?下から6行) 「(7)本発明の糖誘導体は、ティーバッグ法による測定において、重量比で純水に対して5700倍、生理食塩水に対して3300倍の吸収率という非常に優れた吸溶媒性を示すため、吸水・保水・保湿剤として極めて有用である。」 (3)甲A4 甲A4には、次の事項が記載されている。 (甲A4-1)(23頁5?11行) 「AURAGE 滋養化粧水 水、ブチレングリコール、グリセリン・・・スイゼンジノリ多糖体・・・」 (甲A4-2)(23頁24?30行) 「AURAGE 日中化粧下地 水、ホホバ種子油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル・・・ポリクオタニウム-51・・・」 (4)甲A5 甲A5には、次の事項が記載されている。 (甲A5-1)(6頁) 「SACRAN POWER3 肌への有効性評価:In-Vivo Efficiency Test Result 36?60歳の乾燥肌を持つアジア人女性10名に対する0.2%サクラン配合美容液の有効性評価を行いました。 ・・・ 評価結果:Conclusion 0.2%サクラン美容液を塗布した肌は、未塗布または比較として同量のヒアルロン酸Na美容液を塗布した肌と比較して、優れた保湿性と柔軟性を示しました。」 (5)甲B2 甲B2には、上記第4 2(2)で摘記した事項が記載されている。 (6)甲B4 甲B4には、次の事項が記載されている。 (甲B4-1) 「【請求項1】 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性モノマーの共重合体、アセチル化ヒアルロン酸及び多価アルコールを含有することを特徴とする目元用化粧料。 【請求項2】 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性モノマーの共重合体を目元用化粧料全量中0.1?5質量%、アセチル化ヒアルロン酸を目元用化粧料全量中0.001?5質量%及び多価アルコールを目元用化粧料全量中5?10質量%含有することを特徴とする請求項1記載の目元用化粧料。 【請求項3】 疎水性モノマーがアルキルメタクリレート及び/又はアルキルアクリレートである請求項1又は2記載の目元用化粧料。 【請求項4】 アルキルが炭素数2?6のアルキルである請求項3記載の目元用化粧料。 【請求項5】 疎水性モノマーがブチルメタクリレートである請求項4記載の目元用化粧料。 【請求項6】 さらに、水溶性高分子を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の目元用化粧料。」 (甲B4-2) 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、目元における皮膚のはりの減少、皮膚のしわ、たるみの発生等の目元の皮膚特性の変化を効果的に予防・改善する、使用に際しては、つっぱり感に基づく目元の不快感がなく、また使用性にも優れた、目元用化粧料を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、多価アルコールと共に特定の高分子化合物を配合することにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。」 (甲B4-3) 「【0012】 本発明は、さらに、水溶性高分子を含有することができ、水溶性高分子の配合により目元における皮膚のはりの減少、皮膚のしわ、たるみの発生等の目元の皮膚特性の変化に対する予防・改善効果が相乗的に向上する。」 (甲B4-4) 「【0028】 本発明の目元用化粧料には、さらに多価アルコールが含有される。 【0029】 多価アルコールとしては、化粧料に配合できる多価アルコールであれば特に制限されず、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン等が挙げられる。多価アルコールは1種または2種以上が任意に選択されて配合される。 【0030】 多価アルコールの含有量は、目元用化粧料全量中1?15質量%が好ましい。含有量が1質量%未満では本発明の充分な効果が得られず、また、15質量%を越えて配合すると使用時にべたつきが目立つようになる等使用性が悪くなる傾向がある。さらに好ましい含有量は目元用化粧料全量中5?10質量%である。 【0031】 本発明の目元用化粧料には、さらに前記以外の水溶性高分子(以下、他の水溶性高分子ともいう。)を配合することができ、該水溶性高分子の配合により目元における皮膚のはりの減少、皮膚のしわ、たるみの発生等の目元の皮膚特性の変化に対する予防・改善効果が相乗的に向上する。 【0032】 本発明に配合され得る他の水溶性高分子としては、化粧料に配合できる水溶性高分子であれば特に制限されないが、水溶液から水を除去した後に皮膜を形成する性質を持った皮膜形成性の水溶性高分子が好ましい。他の水溶性高分子の具体例としては、例えば、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、プルラン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸(HA)、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの中では、PVP、PVAが好ましい。他の水溶性高分子は1種または2種以上が任意に選択されて配合することができる。 【0033】 本発明において他の水溶性高分子を配合する場合の配合量は、目元用化粧料全量中、0.005?5質量%が好ましく、さらに好ましくは0.01?2質量%である。0.005質量%未満ではその配合効果が充分発揮されず、5質量%を越えて配合すると塗布時の化粧料によれが生じる等使用性が悪くなるようになる。」 (7)甲B5 甲B5には、次の事項が記載されている。 (甲B5-1) 「【請求項1】 下記(A)及び(B)を含有することを特徴とする皮膚外用剤。 (A)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性モノマーとの共重合体。 (B)美白効果を有する薬剤。 【請求項2】 疎水性モノマーが、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルである請求項1記載の皮膚外用剤。 【請求項3】 疎水性モノマーが、n-ブチルメタクリレートである請求項1記載の皮膚外用剤。」 (甲B5-2) 「【0031】本発明の皮膚外用剤には、上記した成分の他に、通常化粧品、医薬部外品、医薬品等に用いられる他の成分、例えば油分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、水溶性高分子、皮膜剤、非水溶性高分子、粉末、顔料、染料、レーキ、低級アルコール、多価アルコール、糖類、紫外線吸収剤、アミノ酸類、ビタミン類、消炎剤、皮膚賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、抗炎症剤等の薬剤、美白剤以外の植物抽出物、有機酸、有機アミン、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、収斂剤、清涼剤、香料、色素、水等を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。」 (甲B5-3) 「【0037】保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等が挙げられる。保湿剤は、1種または2種以上が任意に選択されて配合することができる。 【0038】増粘剤・水溶性高分子としては、例えば、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が挙げられる。増粘剤・水溶性高分子は、1種または2種以上が任意に選択されて配合することができる。」 (8)甲B7 甲B7には、次の事項が記載されている。 (甲B7-1) 「【請求項1】 クロオコックス科の藍藻植物またはその抽出物を含むことを特徴とする皮膚外用剤。 【請求項2】 前記クロオコックス科の藍藻植物がスイゼンジノリである請求項1記載の皮膚外用剤。」 (甲B7-2) 「【0007】 本発明は、優れた保湿作用、抗老化作用、美白作用、抗酸化作用、抗炎症作用、および痩身作用を有する天然由来成分の開発、ならびに、それらの効果を有する皮膚外用剤および機能性経口用組成物を提供することを課題とする。」 (甲B7-3) 「【0019】 皮膚外用剤または機能性経口用組成物には、クロオコックス科の藍藻植物またはその抽出物の他に、その用途および必要に応じて、通常皮膚化粧料、毛髪用化粧料、医薬部外品、医薬品等の製剤に使用される任意の成分が含まれる。そのような成分としては、水、油剤(油性成分)、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、ゲル化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、キレート剤、薬剤(薬効成分)、香料、樹脂、防菌防黴剤、pH調整剤、酸化防止剤、アルコール類等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の抗老化剤、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、あるいは他の植物またはその抽出物などとの併用も可能である。 飲食品等の経口用組成物の場合も、経口用として通常用いられる各種成分との組合せにおいて、特に限定されるものはない。 【0020】 皮膚外用剤または機能性経口用組成物中のクロオコックス科の藍藻植物またはその抽出物の配合量は、外用剤や経口剤の種類や使用目的等によって調整することができる。一般的な配合量としては、効果や安定性などの点から、全量に対して、固形分換算で0.0001?10質量%が好ましく、より好ましくは0.001?5質量%であり、さらに好ましくは0.01?5質量%であり、一層好ましくは0.1?5質量%である。」 (9)甲B9 甲B9には、上記第4 2(6)で摘記した事項が記載されている。 (10)甲B11 甲B11には、上記第4 2(11)で摘記した事項が記載されている。 第7 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由A1(進歩性) (1)甲A1に記載された発明 申立人Aは、本件発明1が、当業者が容易に想到し得るものである旨主張しているが、その前提となる引用発明の認定、及び本件発明1と引用発明の対比による両者の相違点の認定を欠くため、主張の趣旨が不明であるものの、申立人Aが指摘した記載事項に基づき、一応、当審において、以下の発明を認定するとともに、当該認定に基づく判断を示す。 上記記載事項甲A1-2によれば、甲A1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「スイゼンジノリの多糖体を含有する保湿ジェル。」(以下、「甲A1発明」という。) 申立人Aの主張は、甲A1に甲A2に記載された事項も併せて引用発明を認定するようにも解されるが、甲A2は、ウェブサイト(http://www.libatape.jp/store/product/sakusui02.htlm)を、平成30年9月12日に出力した印刷物であるところ、甲A2には、当該ウェブページがインターネットにて公衆に利用可能になった日が特定されていないから、当該ウェブページに係る内容が、本件出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったとは認められない。したがって、甲A2は引用発明の認定の根拠とすることはできない。 (2)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲A1発明を対比すると、甲A1発明の「保湿ジェル」は皮膚用のものであり、また組成物であるから、本件発明1の「皮膚用組成物」に相当する。また、甲A1発明の「スイゼンジノリの多糖体」は、本件発明1の「淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来」の「糖誘導体」に相当する。 そうすると、両者は、「淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来の糖誘導体を含有する皮膚用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A1-1 淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来の糖誘導体が、本件発明1では、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいて、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占めることを特徴とする糖誘導体を含有するものであって、その濃度が0.0125質量%?0.05質量%であるのに対し、甲A1発明ではその構造が不明であるとともに、その濃度が不明である点。 相違点A-2 本件発明1はグリセリンを含有し、その濃度が10質量%以上であるのに対し、甲A1発明ではグリセリンを含有するか不明である点。 相違点A-3 本件発明1は、「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つ」であるリン脂質ポリマーを含有するのに対し、甲A1発明ではそれらを含有するか不明である点。 相違点A-4 本件発明1は水を含有するのに対し、甲A1発明では水を含有するか不明である点。 イ 判断 相違点A1-3について、申立人Aは、甲A4を参酌すれば、ポリクオタニウム-51を用いることは当業者が容易に想到し得る旨主張するので検討する。 甲A4については、発行日が明確に記載されておらず、本件出願前に頒布された刊行物であるかどうか必ずしも明確ではないが、甲A4の末尾に記載する「2013.01.01」は発行日を表示している蓋然性が高く、そして、通常このようなパンフレットは不特定多数の第三者に配布されるものであるから、平成25年1月1日に頒布されたものであると推認できるので、本件出願前公知の刊行物として取り扱うこととする。 甲A4には、スイゼンジノリ多糖体を含まないが、ポリクオタニウム-51を含む日中用化粧下地が記載されている(上記記載事項(甲A4-2))。しかしながら、市販された製品に基づいて認定された発明である甲A1発明において、別の市販された製品であって、スイゼンジノリ多糖体を含まない甲4に記載された製品に含まれる一成分に過ぎないポリクオタニウム-51を配合しようとする動機付けとなる記載は見当たらない。 他の証拠について検討すると、甲A3には、スイゼンジノリ多糖体が保湿性を有することは記載されているが、ポリクオタニウム-51等であるリン脂質ポリマーを含むものであることは記載されていないし、甲A5には、スイゼンジノリ多糖体であるサクランを含む美容液が記載されているが、ポリクオタニウム-51等であるリン脂質ポリマーを含むものであることは記載されておらず、甲A1発明において、「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つである」リン脂質ポリマーを配合させる動機付けとなる記載は見当たらない。 そして、本件発明1は、「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つである」リン脂質ポリマーを選択したことにより、スイゼンジノリ多糖体とグリセリンを使用したことにより生じるのび難さ、なじみ難さ、ツッパリ感を解消して、優れた使用性を有するという顕著な効果を奏するものである上に、スイゼンジノリ多糖体の濃度を0.0125質量%?0.05質量%とし、かつ、グリセリン濃度を10質量%以上とすることにより、スイゼンジノリ多糖体の濃度がそれ以外の範囲にあるときと比較して、皮膚角質油分量が増加するという顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、相違点A1-1、A1-2及びA1-4について検討するまでもなく、甲A1に記載された発明及び甲A3?甲A5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (3)本件発明3 本件発明3は、本件発明1をさらに限定した発明であり、甲A6にも、甲A1発明において、「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つである」リン脂質ポリマーを配合させる動機付けとなる記載は見当たらないから、本件発明1と同様に、甲A1に記載された発明及び甲A3?甲A6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (4)小括 以上のとおりであるから、申立人Aが主張する申立理由A1は理由がない。 2 申立理由A2(サポート要件) (1)申立人Aの主張 申立人Aは、本件明細書の発明の詳細な説明において、各実施例の組成物を皮膚に塗布して行った使用性の評価試験(試験例4)によれば、良好な評価が得られている組成物は、いずれもグリセリンを30質量%含むものである。そうすると、グリセリン含有量を規定していない請求項1に係る発明には、発明の効果を奏さない組成物も含まれることとなり、本件明細書の開示範囲を超えている旨主張する。 (2)判断 本件訂正請求により、本件発明1は、「グリセリンの濃度が10質量%以上」であることが特定された。 そして、本件明細書の段落【0009】の記載からみて、本件発明1の解決しようとする課題の1つは、のび難く、なじみ難く、また塗布後もツッパリ感があるという使用性が改善された皮膚用組成物を提供することであるところ、本件明細書には、以下の事項が記載されている。 (本件-1) 「【0039】 試験例4 表3に従って精製水、スイゼンジノリ多糖体、グリセリン及びリン脂質ポリマーを混合して、各種組成物を得た。得られた組成物の皮膚に塗布し、使用性を評価した。評価項目は、(1)塗布時ののび易さ及びなじみ易さ、(2)塗布後のツッパリ感のなさである。四段階で評価を行い、具体的には、 ×:使用性が悪い、 △:使用性がやや悪い、 ○:使用性が良好である、 ◎:使用性がとても良好である と評価した。評価結果を表3に示す。表3に示した評価結果から明らかなように、ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つのリン脂質ポリマーを配合することで、組成物の使用性が改善されることが分かった。 【0040】 【表3】 」 このように、本件明細書の試験例4において、0.15質量%のスイゼンジノリ多糖体、30質量%のグリセリン及び精製水を含有する組成物において、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64又はポリクオタニウム-65であるリン脂質ポリマーを添加することにより、のび難さ、なじみ難さ、塗布後のツッパリ感が改善することが具体的に示されている。確かに、試験例4において、スイゼンジノリ多糖体及びグリセリンの濃度は、それぞれ0.15質量%及び30質量%に固定されてはいるが、試験例4により一旦良好な使用性が確認されれば、当該試験の結果を基に、使用性に影響しない範囲で、スイゼンジノリ多糖体及びグリセリンの含有量の変更を行うことは、当業者が適宜なし得ることである。 してみると、本件発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されている範囲内のものである。 よって、本件発明1が本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。 本件発明3についての申立理由A2は、本件発明1についてのそれと趣旨を同じくするものであるから、本件発明1と同様に、本件発明3が本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。 (3)小括 以上のとおりであるから、申立人Aが主張する申立理由A2は理由がない。 3 甲B1に記載された発明を引用発明とする申立理由B1(新規性) (1)甲B1に記載された発明 上記第4 3(1)アで説示したとおり、甲B1には、以下の発明が記載されている。 「a.式(I)で示される化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重量比で95/5?10/90として60?100重量%含有する単量体を重合してなるポリマー0.001?10重量%、b.酸性ムコ多糖類0.001?3重量%およびc.多価アルコールまたはその部分エステル化合物0.1?30重量%含有することを特徴とする皮膚化粧料。 【化1】 (R^(1)は水素原子またはメチル基、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は炭素数1?8のアルキル基、nは2?4である。)」 (2)本件発明1 上記第4 3(1)イ(ア)で説示したとおり、本件発明1と甲B1発明は、以下の相違点B1-1?B1-4で相違する。 相違点B1-1 本件発明1は、「淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来で、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいて、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占めること」を特徴とする「糖誘導体」(以下、この特徴を有する糖誘導体を単に「スイゼンジノリ多糖体」という。)を含有するものであって、その濃度が「0.0125質量%?0.05質量%」であるのに対し、甲B1発明では、酸性ムコ多糖類を0.001?3重量%含有する点。 相違点B1-2 本件発明1はグリセリンを含有し、その濃度が10質量%以上であるのに対し、甲B1発明では多価アルコールを0.1?30重量%含有する点。 相違点B1-3 本件発明1は、「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つ」であるリン脂質ポリマーを含有するのに対し、甲B1発明では、式(I)で示される化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合して成るポリマーを含有する点。 (R^(1)は水素原子またはメチル基、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は炭素数1?8のアルキル基、nは2?4である。) 相違点B1-4 本件発明1は水を含有するのに対し、甲B1発明ではそのような特定がない点。 本件発明1と甲B1発明は、上記の相違点で相違するものであるから、本件発明1は甲B1に記載された発明ということはできない。 (3)本件発明3 本件発明3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1は甲B3に記載された発明ということはできない。 (4)小括 以上のとおりであるから、申立人Bが主張する、甲B1に記載された発明を引用発明とする申立理由B1は理由がない。 4 甲B2に記載された発明を引用発明とする申立理由B1(新規性)及び申立理由B2-イ(進歩性) (1)甲B2に記載された発明 上記記載事項(甲B2-1)によれば、甲B2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体と、平均分子量が10万?500万のポリエチレングリコールおよび/またはポリオキシエチレンメチルグルコシドを配合することを特徴とするスキンケア組成物。」(以下、「甲B2発明」という。) (2)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲B2発明を対比すると、甲B2発明の「メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体」は、本件明細書の段落【0018】における「ポリクオタニウム-51は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体とも呼ばれ」るとの記載を考慮すれば、本件発明1の「ポリクオタニウム-51」に相当する。また、甲B2発明の「スキンケア組成物」は、本件発明1の「皮膚用組成物」に相当する。そうすると、両者は、「ポリクオタニウム-51であるリン脂質ポリマーを含有する皮膚用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点B2-1 本件発明1は、スイゼンジノリ多糖体を含有するものであって、その濃度が0.0125質量%?0.05質量%であるのに対し、甲B2発明ではそのような特定がない点。 相違点B2-2 本件発明1はグリセリンを含有し、その濃度が10質量%以上であるのに対し、甲B2発明ではそのような特定がない点。 相違点B2-3 本件発明1は水を含有するのに対し、甲B2発明ではそのような特定がない点。 イ 判断 (ア)新規性 本件発明1と甲B2発明は、上記の相違点で相違するものであるから、本件発明1は甲B2に記載された発明ということはできない。 (イ)進歩性 相違点B2-1について検討する。 甲B2には、甲B2発明に保湿剤を適宜配合することができる旨記載されており(【0014】)、配合することができる保湿剤として、甲B2の段落【0019】には、以下のとおり記載されている。 「【0019】 保湿剤としては、低分子量のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸塩、コラーゲン類、植物抽出物等が挙げられる。」 このように、甲B2発明に適宜配合することができる保湿剤として具体的に例示されているものの中には、植物抽出物は記載されているものの、具体的にスイゼンジノリ多糖体を記載するものではない。 そして、甲B6には、スイゼンジノリ多糖体を含有する化粧料が記載され(上記記載事項(甲B6-1))、甲B9には、スイゼンジノリ多糖体は保湿性に優れることは記載されているものの(上記記載事項(甲B9-1)、(甲B9-2))、甲B2発明において、数ある保湿剤の中からことさらにスイゼンジノリ多糖体を選択して採用する動機付けがない。 そして、本願発明1は、スイゼンジノリ多糖体を採用し、さらにその濃度を0.0125質量%?0.05質量%とし、かつ、グリセリン濃度を10質量%以上とすることにより、スイゼンジノリ多糖体の濃度がそれ以外の範囲にあるときと比較して、皮膚角質油分量が増加するという顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、相違点B2-2及びB2-3について検討するまでもなく、甲B2、甲B6、甲B9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (3)本件発明3 本件発明3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲B2に記載された発明ということはできないし、また、甲B2に記載された発明及び甲B6、甲B9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。 (4)小括 以上のとおりであるから、申立人Bが主張する、甲B2に記載された発明を引用発明とする申立理由B1及びB2-イは理由がない。 5 甲B4に記載された発明を引用発明とする申立理由B1(新規性)及び申立理由B2-エ(進歩性) (1)甲B4に記載された発明 上記記載事項(甲B4-1)によれば、甲B4には、以下の発明が記載されていると認められる。 「2-メタクリロイルオキシエチルホスホコリンとブチルメタクリレートの共重合体、アセチル化ヒアルロン酸を0.1?5質量%及び多価アルコールを5?10質量%含有する目元用化粧料。」(以下、「甲B4発明」という。) (2)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲B4発明を対比すると、甲B4発明の「2-メタクリロイルオキシエチルホスホコリンとブチルメタクリレートの共重合体」は、本件明細書の段落【0018】における「ポリクオタニウム-51は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体とも呼ばれ」るとの記載を考慮すれば、本件発明1の「ポリクオタニウム-51」に相当する。また、甲B4発明の「目元用化粧料」は、本件発明1の「皮膚用組成物」に相当する。そうすると、両者は、「ポリクオタニウム-51であるリン脂質ポリマーを含有する皮膚用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点B4-1 本件発明1は、スイゼンジノリ多糖体を含有するものであって、その濃度が0.0125質量%?0.05質量%であるのに対し、甲B4発明では、アセチル化ヒアルロン酸を0.1?5質量%含有する点。 相違点B4-2 本件発明1はグリセリンを含有し、その濃度が10質量%以上であるのに対し、甲B4発明では多価アルコールを5?10質量%含有する点。 相違点B4-3 本件発明1は水を含有するのに対し、甲B4発明ではそのような特定がない点。 イ 判断 (ア)新規性 本件発明1と甲B4発明は、上記の相違点で相違するものであるから、本件発明1は甲B4に記載された発明ということはできない。 (イ)進歩性 相違点B4-1について検討する。 甲B4には、水溶性高分子を含有させることができる旨記載されているものの(上記記載事項(甲B4-3))、段落【0032】に具体的に例示されている水溶性高分子の中には、スイゼンジノリ多糖体はない。甲B9には、スイゼンジノリ多糖体は抗しわ作用に優れ、さっぱりとしていることが記載されているものの(上記記載事項(甲B9-3)、(甲B9-4))、甲B4発明において、数ある水溶性高分子の中から、ことさらにスイゼンジノリ多糖体を選択して使用する動機付けとなるものではない。 そして、本願発明1は、スイゼンジノリ多糖体を採用し、さらにその濃度を0.0125質量%?0.05質量%とし、かつ、グリセリン濃度を10質量%以上とすることにより、スイゼンジノリ多糖体の濃度がそれ以外の範囲にあるときと比較して、皮膚角質油分量が増加するという顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、相違点B4-2及びB4-3について検討するまでもなく、甲B4に記載された発明及び甲B6、甲B9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (3)本件発明3 本件発明3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲B4に記載された発明ということはできないし、また、甲B4に記載された発明及び甲B6、甲B9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。 (4)小括 以上のとおりであるから、申立人Bが主張する、甲B4に記載された発明を引用発明とする申立理由B1及びB2-エは理由がない。 6 甲B5に記載された発明を引用発明とする申立理由B1(新規性)及び申立理由B2-オ(進歩性) (1)甲B5に記載された発明 上記記載事項(甲B5-1)によれば、甲B5には、以下の発明が記載されていると認められる。 「2-メタクリロイルオキシエチルホスホコリンとn-ブチルメタクリレートとの共重合体、美白効果を有する薬剤を含有する皮膚外用剤。」(以下、「甲B5発明」という。) (2)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲B5発明を対比すると、甲B5発明の「2-メタクリロイルオキシエチルホスホコリンとn-ブチルメタクリレートとの共重合体」は、本件明細書の段落【0018】における「ポリクオタニウム-51は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体とも呼ばれ」るとの記載を考慮すれば、本件発明1の「ポリクオタニウム-51」に相当する。また、甲B5発明の「皮膚外用剤」は、本件発明1の「皮膚用組成物」に相当するものである。そうすると、両者は、「ポリクオタニウム-51であるリン脂質ポリマーを含有する皮膚用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点B5-1 本件発明1は、スイゼンジノリ多糖体を含有するものであって、その濃度が0.0125質量%?0.05質量%であるのに対し、甲B5発明ではそのような特定はない点。 相違点B5-2 本件発明1はグリセリンを含有し、その濃度が10質量%以上であるのに対し、甲B5発明ではそのような特定はない点。 相違点B5-3 本件発明1は水を含有するのに対し、甲B5発明ではそのような特定がない点。 イ 判断 (ア)新規性 本件発明1と甲B5発明は、上記の相違点で相違するものであるから、本件発明1は甲B5に記載された発明ということはできない。 (イ)進歩性 相違点B5-1について検討する。 甲B5には、増粘剤・水溶性高分子を含有させることができる旨記載されているものの(上記記載事項(甲B5-2))、段落【0038】に具体的に例示されている増粘剤・水溶性高分子の中には、スイゼンジノリ多糖体はない。甲B9には、スイゼンジノリ多糖体は増粘性や保湿性に優れることが記載されているものの(上記記載事項(甲B9-1)、(甲B9-2))、甲B5発明において、数ある増粘剤や水溶性高分子の中から、ことさらにスイゼンジノリ多糖体を選択して使用する動機付けとなるものではない。 そして、本願発明1は、スイゼンジノリ多糖体を選択し、さらにその濃度を0.0125質量%?0.05質量%とし、かつ、グリセリン濃度を10質量%以上とすることにより、スイゼンジノリ多糖体の濃度がそれ以外の範囲にあるときと比較して、皮膚角質油分量が増加するという顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、相違点B5-2及びB5-3について検討するまでもなく、甲B5に記載された発明及び甲B6、甲B9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (3)本件発明3 本件発明3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲B5に記載された発明ということはできないし、また、甲B5に記載された発明及び甲B6、甲B9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (4)小括 以上のとおりであるから、申立人Bが主張する、甲B5に記載された発明を引用発明とする申立理由B1及びB2-オは理由がない。 7 甲B6に記載された発明を引用発明とする申立理由B1(新規性)及び申立理由B2-カ(進歩性) (1)甲B6に記載された発明 上記記載事項(甲B6-1)によれば、甲B6には、以下の発明が記載されていると認められる。 「(a)淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体水溶液と、(b)油剤を含有することを特徴とする化粧料。」(以下、「甲B6発明」という。) (2)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲B6発明を対比すると、甲B6発明の「化粧料」は、本件発明1の「皮膚用組成物」に相当する。甲B6発明は、スイゼンジノリ多糖体水溶液を含むものであることから、水を含むものである。 そうすると、両者は、「水、淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来の糖誘導体を含む皮膚用組成物」である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 相違点B6-1 淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来の糖誘導体が、本件発明1では、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいて、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占めることを特徴とするものであって、その濃度が0.0125質量%?0.05質量%であるのに対し、甲B6発明ではその構造が不明であるとともに、その濃度も特定されていない点。 相違点B6-2 本件発明1はグリセリンを含有するものであって、その濃度が10質量%以上であるのに対し、甲B6発明ではそのような特定がない点。 相違点B6-3 本件発明1は「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つ」であるリン脂質ポリマーを含有するのに対し、甲B6発明ではそのような特定がない点。 イ 判断 (ア)新規性 本件発明1と甲B6発明は、上記の相違点で相違するものであるから、本件発明1は甲B6に記載された発明ということはできない。 (イ)進歩性 相違点B6-3について検討する。 甲B6発明に含まれる油剤について、甲B6の段落【0010】には、以下のとおり記載されている。 「【0010】 本発明の化粧料で用いる(b)油剤の例としては、例えばアボガド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、キョウニン油、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、セラックロウ、タートル油、大豆油、荼実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等;炭化水素油として、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等;高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等;高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2-デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、POEコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等;エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、イソノナン酸イソノニル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等;グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル;シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ビフェニルシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、アルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン等が挙げられる。また、グリセリン、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン、マルチトール、マルビット液などの多価アルコールも挙げられる。」 このように、甲B6発明の油剤として具体的に例示されているものの中には、「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つである」リン脂質ポリマーは記載も示唆もない。そもそも、リン脂質ポリマーは水溶性物質であり(甲B11-3)、疎水性である油剤の代わりにリン脂質ポリマーを用いることを動機付けられることはない。 また、甲B6の段落【0011】において、保湿剤を使用することができることは記載されているものの、具体的な成分は例示さえもなされていない。 この点、申立人Bは、甲B4を参酌すれば、甲B6発明において、ポリクオタニウム-51を採用することは当業者が容易に想到し得る旨主張する。 甲B4には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートの共重合体、すなわち、ポリクオタニウム-51、アセチル化ヒアルロン酸及び多価アルコールを含有する目元化粧料は、つっぱり感に基づく目元の不快感がないという効果を奏する旨記載されているものの、スイゼンジノリ多糖体とグリセリンを配合したことにより生じるのび難さ、なじみ難さ、ツッパリ感を解消できるものであることを予測できる記載は見当たらない。 また、甲B1?B3、甲B11は、特定のリン脂質ポリマーが保湿剤として機能することを示すための証拠であって、スイゼンジノリ多糖体とグリセリンを配合したことにより生じるのび難さ、なじみ難さ、ツッパリ感を解消できるものであることを予測できる記載は見当たらない。 したがって、甲B1?B3、甲B11に記載された事項を参酌しても、甲B6発明において、ポリクオタニウム-51を採用することを動機付けられるものではない。 そして、本件発明1は、「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つである」リン脂質ポリマーを選択したことにより、スイゼンジノリ多糖体とグリセリンを使用したことにより生じるのび難さ、なじみ難さ、ツッパリ感を解消して、優れた使用性を有するという顕著な効果を奏するものである上に、スイゼンジノリ多糖体の濃度を0.0125質量%?0.05質量%とし、かつ、グリセリン濃度を10質量%以上とすることにより、スイゼンジノリ多糖体の濃度がそれ以外の範囲にあるときと比較して、皮膚角質油分量が増加するという顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、相違点B6-1及び相違点B6-2について検討するまでもなく、甲B6に記載された発明並びに甲B1?甲B3、甲B4及び甲B11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (3)本件発明3 本件発明3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲B6に記載された発明ということはできないし、また、甲B6に記載された発明及び甲B2、甲B4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (4)小括 以上のとおりであるから、申立人Bが主張する、甲B6に記載された発明を引用発明とする申立理由B1及びB2-カは理由がない。 8 甲B7に記載された発明を引用発明とする申立理由B1(新規性)及び申立理由B2-キ(進歩性) (1)甲B7に記載された発明 上記記載事項(甲B7-1)によれば、甲B7には、以下の発明が記載されていると認められる。 「スイゼンジノリの抽出物を含む皮膚外用剤。」(以下、「甲B7発明」という。) (2)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲B7発明を対比すると、甲B7発明の「皮膚用外用剤」は本件発明1の「皮膚用組成物」に相当するから、両者は、「スイゼンジノリ由来の成分を含む皮膚用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点B7-1 本件発明1は、スイゼンジノリ多糖体を含有するものであって、その濃度が0.0125質量%?0.05質量%であるのに対し、甲B6発明ではそのような特定がない点 相違点B7-2 本件発明1はグリセリンを含有するものであって、その濃度が10質量%以上であるのに対し、甲B7発明ではそのような特定がない点。 相違点B7-3 本件発明1は「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つ」であるリン脂質ポリマーを含有するのに対し、甲B7発明ではそのような特定がない点。 相違点B7-4 本件発明1は水を含有するのに対し、甲B7発明ではそのような特定がない点。 イ 判断 (ア)新規性 本件発明1と甲B7発明は、上記の相違点で相違するものであるから、本件発明1は甲B7に記載された発明ということはできない。 (イ)進歩性 相違点B7-3について検討する。 甲B7発明には、必要に応じて保湿剤を使用することが可能であることは記載されているものの、保湿剤として使用できる成分について具体的な例示さえもなされていない。甲B11には、ポリクオタニウム-51が保湿剤として機能することが記載されているものの(上記記載事項(甲B11-2))、スイゼンジノリ多糖体とグリセリンを配合したことにより生じるのび難さ、なじみ難さ、ツッパリ感を解消できるものであることを予測できる記載は見当たらない。 したがって、甲B11に記載された事項を参酌しても、甲B7発明において、ポリクオタニウム-51を採用することを動機付けられるものではない。 そして、本件発明1は、「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つである」リン脂質ポリマーを選択したことにより、スイゼンジノリ多糖体とグリセリンを使用したことにより生じるのび難さ、なじみ難さ、ツッパリ感を解消して、優れた使用性を有するという顕著な効果を奏するものである上に、スイゼンジノリ多糖体の濃度を0.0125質量%?0.05質量%とし、かつ、グリセリン濃度を10質量%以上とすることにより、スイゼンジノリ多糖体の濃度がそれ以外の範囲にあるときと比較して、皮膚角質油分量が増加するという顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、相違点B7-1、B7-2、B7-4について検討するまでもなく、甲B7に記載された発明及び甲B11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (3)本件発明3 本件発明3は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲B7に記載された発明ということはできないし、また、甲Bに記載された発明及び甲B11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (4)小括 以上のとおりであるから、申立人Bが主張する、甲B7に記載された発明を引用発明とする申立理由B1及びB2-キは理由がない。 なお、甲B1に記載された発明を引用発明とする申立理由B2-ア及び甲B3に記載された発明を引用発明とする申立理由B2-ウは、上記第4 3(1)において、それぞれ、取消理由1及び取消理由2として検討しており、理由のないものと判断している。 9 申立理由B3(サポート要件) (1)申立人Bの主張 申立人Bは、本件発明の第1の課題は、「角質層の水分量を向上させる又は低下させない皮膚用組成物を提供すること」、第2の課題は、「使用性が改善された皮膚用組成物を提供すること」であるところ、第1の課題について、本件明細書では、スイゼンジノリ多糖体及びグリセリンを含む組成物についてのみ、角質層の水分量を向上させる又は低下させないことが具体的に確認されたに過ぎず、さらにポリオクタニウム51等を含む組成物において、当該課題を解決できることを確認していない旨、及び、第2の課題について、スイゼンジノリ多糖体0.15質量%、グリセリン30質量%という極めて限定された処方(配合割合)についての結果が示されているに過ぎず、当該配合割合以外において、当該課題を解決できることを確認できない旨を主張する。 (2)判断 ア 本件発明1 (ア)第1の課題について 本件明細書の段落【0006】によれば、本件発明1は、「水及びスイゼンジノリ多糖体を含有する皮膚用組成物でありながら、角質層の水分量を向上させる又は低下させない皮膚用組成物を提供すること」を課題の一つとするものである。 本件明細書において、「スイゼンジノリ多糖体」とグリセリンを含む組成物において、角質の水分量を向上させる又は低下させない皮膚用組成物を提供するという課題が解決できることが具体的に確認されている以上(試験例2)、さらにポリクオタニウム-51等のリン脂質ポリマーを配合させた組成物についても、同様に上記の課題が解決できることを当業者であれば理解できるものである。 (イ)第2の課題について 本件明細書の段落【0009】によれば、本件発明1は、「使用性が改善された皮膚用組成物を提供すること」を課題の一つとするものである。 本件明細書の試験例4において、0.15質量%のスイゼンジノリ多糖体、30質量%のスイゼンジノリ多糖体のグリセリン及び精製水を含有する組成物において、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64又はポリクオタニウム-65であるリン脂質ポリマーを添加することにより、のび難さ、なじみ難さ、塗布後のツッパリ感が改善することが具体的に示されている。確かに、試験例4において、スイゼンジノリ多糖体及びグリセリンの濃度は、それぞれ0.15質量%及び30質量%に固定されてはいるが、試験例4により一旦良好な使用性が確認されれば、当該試験の結果を基に、使用性に影響しない範囲で、スイゼンジノリ多糖体及びグリセリンの含有量の変更を行うことは、当業者が適宜なし得ることである。 してみると、本件発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されている範囲内のものである。 (ウ)小括 よって、本件発明1が本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。 イ 本件発明3 本件発明3についての申立理由B3は、本件発明1についてのそれと趣旨を同じくするものであるから、本件発明1と同様に、本件発明3が本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。 (3)小括 以上のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由B3は理由がない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1及び3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項1、3に係る特許について、結論のとおり決定する。 本件請求項2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項2に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 水、糖誘導体、グリセリン及びリン脂質ポリマーを含有する皮膚用組成物であって、 前記糖誘導体は、淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来で、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいて、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占めることを特徴とし、 前記糖誘導体の濃度が0.0125質量%?0.05質量%であり、 前記グリセリンの濃度が10質量%以上であり、 前記リン脂質ポリマーは、ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つである、 皮膚用組成物。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記リン脂質ポリマーがポリクオタニウム-61である、請求項1記載の皮膚用組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-09-10 |
出願番号 | 特願2014-171992(P2014-171992) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 駒木 亮一 |
特許庁審判長 |
關 政立 |
特許庁審判官 |
岡崎 美穂 冨永 みどり |
登録日 | 2018-05-11 |
登録番号 | 特許第6336355号(P6336355) |
権利者 | 久光製薬株式会社 |
発明の名称 | 皮膚用組成物 |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 木元 克輔 |
代理人 | 木元 克輔 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 吉住 和之 |