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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B65B
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B65B
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B65B
管理番号 1357084
審判番号 訂正2019-390072  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2019-06-26 
確定日 2019-10-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5467126号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5467126号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第5467126号(以下「本件特許」という。)は、平成11年8月26日(優先権主張 平成11年2月3日、平成11年6月11日)を出願日とする特願平11-240126号の一部を平成22年2月16日に新たな特許出願(特願2010-31285号)とし、その一部を平成24年2月2日に新たな特許出願(特願2012-21236号)とし、その一部を平成24年6月26日に新たな特許出願(特願2012-142821号)としたものである。その後、平成26年1月31日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成26年4月9日)がされ、令和元年6月26日に本件訂正審判が請求されたものであり、令和元年6月26日付けで上申書が提出され、令和元年7月25日付けの当審よりの審尋に対して、令和元年7月31日に請求人から回答書(以下、「回答書」という。)が提出されたものである。さらに、令和元年9月6日に電話応対を行い、その記録を作成したものである。

第2 請求の趣旨
本件訂正審判は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書(以下、「請求書」という。)に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める、との審決を求めるものであって、その請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(なお、下線は訂正箇所を示す。)

1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「紙管と、」と記載されているのを、「磁気検出手段を備える薬剤包装装置に装着可能な分包紙ロールであって、紙管と、」に訂正する。

2.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記紙管は、軸方向一端側と他端側とに磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで磁石の取付角度が異なる」と記載されているのを、「前記紙管は、軸方向一端側と他端側とに前記磁気検出手段で検出されるための磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで前記磁石の取付角度が異なる」に訂正する。

3.訂正事項3
願書に添付した明細書の段落[0008]に「また、本発明に係る分包紙ロールは、紙管と、紙管に巻き回される分包紙とを有し、前記紙管は、軸方向一端側と他端側とに磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで磁石の取付角度が異なることを特徴とする。」と記載されているのを、「また、本発明に係る分包紙ロールは、磁気検出手段を備える薬剤包装装置に装着可能な分包紙ロールであって、紙管と、紙管に巻き回される分包紙とを有し、前記紙管は、軸方向一端側と他端側とに前記磁気検出手段で検出されるための磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで前記磁石の取付角度が異なることを特徴とする。」と訂正する。

第3 当審の判断
1.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項2の「分包紙ロール」を、「磁気検出手段を備える薬剤包装装置に装着可能な分包紙ロール」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書」という。)の段落[0040]には、「また、さらに、識別子を設ける形態として、図7の(b)に示したように、永久磁石21を紙管9の端面に設けるとともに、読取手段としてのホールセンサ等の磁気検出手段22を、前記永久磁石21による磁界を検出し得るべく紙管9に対向するように配設して本薬剤包装装置を構成することもできる。」及び「そして、紙管9を紙管ドラム7に装着したとき、本薬剤包装装置に適合した紙管を識別でき、適正な分包紙を識別できるとともに、適正な装着状態を確認できるという利点がある。」と記載されており、薬剤包装装置が磁気検出手段を備えること、及び、紙管(分包紙ロールの構成部材)が紙管ドラム(薬剤包装装置の構成部材)に装着可能であることが記載されているから、薬剤包装装置が磁気検出手段を備え、薬剤包装装置に分包紙ロールが装着可能である構成が本件特許明細書に記載されているといえる。よって、訂正事項1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
さらに、訂正事項1によって、「分包紙ロール」の技術的事項は減縮されるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるので、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2の「紙管」に「軸方向一端側と他端側とに」「複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで」「取付角度が異なる」「磁石」を、薬剤包装装置に備えられた「磁気検出手段で検出されるための」ものに限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許明細書の段落[0040]には、「また、さらに、識別子を設ける形態として、図7の(b)に示したように、永久磁石21を紙管9の端面に設けるとともに、読取手段としてのホールセンサ等の磁気検出手段22を、前記永久磁石21による磁界を検出し得るべく紙管9 に対向するように配設して本薬剤包装装置を構成することもできる。」及び「例えば、図7の(b)に示したように紙管9の両端面に永久磁石21を複数個ずつ設けるものとし、しかも、一端側21aと他端側21bとでその個数、磁力の大小及び取付角度ψを異ならせるように設定することもできる。」と記載されているから、紙管に軸方向一端側と他端側とに複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで取付角度が異なる磁石が磁気検出手段で検出されるために設けられ、薬剤包装装置に備えられた磁気検出手段によって磁石が検出される構成が本件特許明細書に記載されているといえる。よって、訂正事項2は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
さらに、訂正事項2によって、「磁石」の技術的事項は減縮されるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるので、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項1及び2において特許請求の範囲の請求項2を訂正することに伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために、明細書の段落[0008]について、訂正事項1及び2と同様の訂正をするものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1及び2と同様の理由により、訂正事項3は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

2.明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項3による明細書の訂正と関係する請求項は、訂正事項3に係る明細書の段落[0008]が、請求項2の記載をそのまま転記したものであること、及び、令和元年9月6日の電話応対による確認によれば、請求人が意図する関係する請求項は請求項2のみであり、本件訂正に係る請求は特許法第126条第4項に規定する、明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われたものである。

3.独立特許要件について
本件訂正の訂正事項1及び2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)本件訂正発明について
訂正後の請求項2に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、次のとおりである。

[請求項2]
磁気検出手段を備える薬剤包装装置に装着可能な分包紙ロールであって、
紙管と、
紙管に巻き回される分包紙とを有し、
前記紙管は、軸方向一端側と他端側とに前記磁気検出手段で検出されるための磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで前記磁石の取付角度が異なることを特徴とする分包紙ロール。

(2)「独立特許要件」についての請求人の主張の概要
ア.請求書での主張
本件訂正の訂正事項1及び2について、訂正事項1は、分包紙ロールが、磁気検出手段を備える薬剤包装装置に装着可能である構成に限定するものであり、訂正事項2は、磁石が磁気検出手段で検出されるために設けられる構成に限定するものである。よって、本件訂正の訂正事項1及び2により、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、本件訂正により特許法第36条第4項第1号又は第6項(第4号を除く)に規定する要件を満たさなくなるものでもないから、独立特許要件を満たす。

イ.回答書での主張
本件特許に関し、大阪地方裁判所において特許権侵害行為差止等請求事件(平成30年(ワ)第3461号)が係属中であるところ、令和元年7月25日付けで、当審より、請求人に対して、当該事件において、特許無効の抗弁に係る被告の主張内容や当該主張を裏付けるための証拠について審尋したところ、令和元年7月31日付けの回答書に添付して、甲第1?8号証が提出された。

当該無効の抗弁に係る理由の概要は次のとおりである。
理由1:甲第2号証から、または甲第2号証および甲第4号証から、当業者が容易に想到できる発明であり、進歩性を欠く。
理由2:甲第5号証、甲第6号証および甲第7号証から、当業者が容易に想到できる発明であり、進歩性を欠く。
理由3:サポート要件違反

そこで当審は、上記理由1-3について、本件訂正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討する。

(3)甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明について
請求人は、上記回答書に添付して、次の甲第1?8号証を提出している。
甲第1号証:大阪地方裁判所平成30年(ワ)第3461号特許権侵害行為差止等請求事件の平成30年9月14日付け被告準備書面(2)
甲第2号証:登録実用新案第3042041号公報
甲第3号証:「科学大辞典」、丸善株式会社、平成17年2月28日発行、第2版、342、609頁
甲第4号証:実公昭61-45074号公報
甲第5号証:特開平7-172649号公報
甲第6号証:特許第2882221号公報
甲第7号証:特開平4-220384号公報
甲第8号証:大阪地方裁判所平成30年(ワ)第3461号特許権侵害差止等請求事件の令和元年7月5日付け原告第7準備書面

なお、甲第6号証の特許第2882221号公報は本件訂正発明の優先日(平成11年2月3日)より後に発行されたものであるが、特許第2882221号公報に対応する公開特許公報である特開平6-179278号公報は本件訂正発明の優先日以前に発行されている。そこで、甲第6号証については、以降、特開平6-179278号公報に記載の事項で検討することとする。

以下、「甲第○号証」を「甲○」といい、甲○に記載された発明を甲○発明という。
ア.甲2の記載事項及び甲2発明について
甲2には、以下の記載がある。
「[0018]
[実施の形態]
以下、この考案の実施形態について図面を参照して説明する。図1は薬剤分包機の主として給紙部と分包部とを取り出した概略構成図である。給紙部は水平に支持された支持軸1に芯管Pに薬剤分包用のシートをロール状に巻いたロールペーパRが回転自在に装着され、上記ロールペーパRから引き出された包装シートSが送りローラ2、3を通り、次の分包部へ供給されるように形成されている。
[0019]
分包部は、三角板4で2つ折りにされた際にホッパ5から所定量の薬剤が投入された後ミシン目カッタを有する加熱ローラ6により所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシールするように設けられている。なお、分包部はこれ以外の構成部材も多数あるが、複雑になるのを避けるため必要な部材のみを示している。
[0020]
図2は給紙部にロールペーパRと芯管Pを装着した状態の主縦断面図である。図示のように、支持軸1はその一端がナットにより支持板11に取付固定された中心軸1aと、これに一体に嵌合された外軸1bと、上記外軸1bの左右両端寄り位置に設けた軸受12、12を介して回転自在に取り付けられる中空軸1cとから成る。
[0021]
13は中心軸1aの片端の軸ヘッド、14は外軸1bの片端のフランジ部である。中空軸1cの反対側端にもフランジ部15が設けられている。上記支持軸1に芯管Pとこれに巻回されたロールペーパRが装着されると中空軸1cにより回転自在に支持されると共に、フランジ部15の内径面に適宜間隔に配置された複数個の磁石16とこれに対向して予め芯管Pの端面円周に沿って配設された強磁性体(鉄部)17に対する吸着力により、装着された芯管PとロールペーパRが中空軸1cに着脱自在に固定される。」
「[0044]
図7に示すように、この第2実施形態の芯管Pの内周沿いと支持軸1の片端にそれぞれ設けられる磁石24とホール素子センサ25は、4つの磁石24が1つの基点から67.5°ずつ位置が異なる各4点に配置され、4つのホール素子センサ25は上記基点を通る中心線とこれに直交する中心線上の4つの位置に配置されている。」
「[0048]
図6は図2の矢視V1-V1から見た側面図であり、主として上記包装シートのずれ検出センサの配置を示すためのものである。この例では支持板11に1つの近接スイッチ26が設けられ、支持軸1の回転する中空軸1c端のフランジ部15に16ケの突起27が形成されている。」
「[0069]
しかし、上述した各直流電圧によるモータブレーキの回転抵抗が適当でなく、例えばある張力レベルN=2において張力がやや強過ぎたとするとロールペーパRと芯管Pが一体となって強く回転し、例えば磁石16による強磁性体17への吸着固定位置がずれたりすると、ホール素子センサ25による信号は各22.5°の角度ずつのパルス信号を発するが、近接スイッチ26によるパルス信号は上記ずれによって同じ位置で2つが重なり、次の角度位置ではパルス信号が出ないということがある。」
図2から、芯管Pの軸方向一端側に磁石24が設けられ、軸方向他端側に強磁性体(鉄部)17が設けられていることが看取できる。
図6から、芯管Pの端面円周に沿って、4つの磁石16が90°ずつ位置が異なる4点に配置されていることが看取でき、段落[0021]の、磁石16と対向して強磁性体(鉄部)17が芯管Pの端面円周に沿って配設されているとの記載とあわせて、芯管Pの端面円周に沿って、4つの強磁性体(鉄部)17が90°ずつ位置が異なる4点に配置されていることが看取できる。

上記の各記載事項を整理すると、甲2には、次の甲2発明が記載されている。
「ホール素子センサを備える薬剤分包機に装着可能な芯管に薬剤分包用のシートをロール状に巻いたロールペーパであって、芯管と、芯管に巻き回される薬剤分包用のシートとを有し、前記芯管は、軸方向一端側に前記ホール素子センサで検出されるための磁石が複数個設けられ、軸方向他端側に強磁性体(鉄部)が複数個設けられ、しかも軸方向一端側の前記磁石の取付角度が67.5°であり、軸方向他端側の前記強磁性体(鉄部)の取付角度が90°である、芯管と当該芯管に薬剤分包用のシートをロール状に巻いたロールペーパ。」

イ.甲3の記載事項について
甲3には、以下の記載がある。
「きょうじせい 強磁性 [ferromagnetism] 外からの磁場によって大きな磁化を示す物質の磁性。強磁性を示す物質を強磁性体という.磁気ヒステリシスを示し,外部磁場を再び0にしても磁化が残る(残留磁化).局在した電子スピンまたは金属中の自由電子のスピンが,交換相互作用によって平行に並び,磁区構造をもっている.金属では鉄,非金属ではCrO_(2)などが強磁性体の典型的な例である.」(342頁右欄第26?32行)
「きょうじせいたい 強磁性体 [ferromagnetic materials]
⇒強磁性」(342頁右欄第54?55行)
「じせいざいりょう 磁性材料 [magnetic material] 金属が示す磁性,すなわち物質を磁場中におくと磁気を帯びたり,磁場中におかなくても自発的に磁気を帯びていることを利用して,色々な機能を行わせる材料の総称.磁気誘導を利用する高透磁率合金,ケイ素鋼板,ソフトフェライト,自発磁気を利用する永久磁石材料,磁化に伴う変形を利用する磁歪材料,そのほか磁気記録材料,磁性流体,磁気バブルメモリー材料などがある.」(609頁右欄第46?53行)

ウ.甲4の記載事項について
甲4には、以下の記載がある。
「筒体支持軸と、この支持軸の外側に回転可能に嵌合した筒体と、この筒体に回転方向の負荷を付与する制動機構と、上記筒体の外側に対して着脱可能な巻芯とから成り、前記筒体と、この筒体の外側に嵌合した上記巻芯とを磁力結合したことを特徴とする巻芯の支持装置。」(第1欄第2?7行)
「そこで、この考案は上記の欠点を解決し、巻芯の着脱操作が簡単に行なえ、しかも巻芯の支持用筒体に作用する回転方向の負荷が設定値を超えた場合にも巻戻したペーパが紙切れするようなことのない巻芯の支持装置を提供することを目的としている。」(第2欄第8?13行)
「上記筒体2の端面には、この筒体2の外側に嵌合されるロールペーパ4の差し込み量を規制する円板5がねじ止め等の手段で固定され、この円板5とロールペーパ4の巻芯6とが磁力結合されるようになつている。
磁力結合する手段は、図示のように、円板5の片面に複数の永久磁石7を環状に設け、一方巻芯6の端面には鉄板などの強磁性板8を取付けるようにしてもよく、あるいは永久磁石7と強磁性板8との取付位置を逆としてもよい。また、極性の異なる永久磁石を対応面間に取付けるようにしてもよい。さらに永久磁石はリング状であつてもよい。」(第3欄第5?17行)

エ.甲5の記載事項及び甲5発明について
甲5には、以下の記載がある。
「[0001]
[産業状の利用分野]本発明は、例えば、ロール状に巻かれた長尺の記録媒体を使用して、当該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置等における、記録媒体の残量を検出するための残量検出装置に関する。」
「[0016]カラー静電プロッタでは、記録紙として普通紙(静電記録紙)の他に、近年ではトレーシングペーパや、フィルム、あるいは化学合成紙等、材質の異なる種々のロール巻き記録媒体が利用される。そして、媒体材質を目的に応じて使い分けるために、ロール巻き記録媒体は、幾らか使用したものを取り外して、別の記録媒体と取り替えたり、また、取り替えたものが全くの未使用品ではなく、前に使用したことのあるロールであったりすることから、残量が全く判らないケースが多い。」
「[0018]ロール状に巻かれた記録媒体は、巻き芯の径が判れば、外径で残り量がある程度は見当付けが可能である。しかし、プリントに使用される記録媒体は様々な材質があり、記録媒体の材質が異なればその厚みも異なる。従って、簡単には残量が判らない。しかも、記録媒体はプロッタ内に装填されてしまうので、外からは見えず、また、機械的に記録媒体のロール径を計測してもその数値は残量の情報を示す尺度としては全く用をなさない。」
「[0095]記録紙巻き芯1aにはその片方の端部の側面に永久磁石によるチップ1b,1cが埋め込まれている。埋め込まれる位置と数は当該記録紙巻き芯1aに巻かれた記録紙の種別により、決められている。
[0096]受け部41aには記録紙巻き芯1aと係合する側の面にスイッチSWA、SWBが設けられている。このスイッチSWA、SWBは記録紙ロール1の巻き芯1aに取り付けられている磁石のチップ1b,1cの有無を検出するものであり、リードスイッチになっている。
[0097]従って、記録紙ロール1の巻き芯1aに、記録紙の種類に応じて磁石のチップをつける/つけないを決めておき、スイッチSWA、SWBの検出出力を元に種別を、マシンの制御部35で判別させるようにする。スイッチSWA、SWBの検出出力にて2ビットの信号を構成するから、この2ビットの信号により4種類の記録紙を判別することができる。
[0098]磁石によるチップ1b,1cと、スイッチSWA、SWBの取付に状態について詳細に記述しておく。図6(b)は記録紙ロール1の巻き芯1aであり、パイプ状であって一般に紙管と呼んでいる。巻き芯1aにはその一端側に一箇所、溝1dが彫られている。
[0099]図6(c)はその巻き芯1aに記録紙2が巻き付けられた状態を示している。それを図6(d)に示す用紙ホルダ41の凸部41cに係合させる。用紙ホルダ41の凸部41cには周面の1か所に突起41eがあり、巻き芯1aに彫られた溝1dがこの突起41eにぴたりと嵌合する。
[0100]図6(e)は巻き芯1aの端面に埋め込まれた磁石チップ1b,1cを示している。図6(f)は用紙ホルダ41にリードスイッチによるスイッチSWA,SWBが取り付けられている様子を示している。スイッチSWA,SWBの出力は制御部35に与えられる。
[0101]このような構成にすれば、記録紙ロール1を用紙ホルダ41にセットすると、記録紙ロール1の巻き芯1aは用紙ホルダ41と固有の位置関係を必ず保つ状態で係合することになり、スイッチSWA,SWBと磁石チップ1b,1cとが対向する。記録紙種別に応じて磁石チップ1b,1cの有無が決められているので、スイッチSWA,SWBの動作による出力を記録紙種別を示す2ビット信号として利用することができる。」

上記の各記載事項を整理すると、甲5には、次の甲5発明が記載されている。
「磁石のチップの有無を検出するスイッチを備えるカラー静電プロッタに装着可能な記録紙ロールであって、紙管と、紙管に巻き回される記録紙とを有し、前記紙管は、片方の端部に前記磁石のチップの有無を検出するスイッチで検出されるための永久磁石によるチップが2個設けられる記録紙ロール。」

オ.甲6(特開平6-179278号公報)の記載事項について
甲6には、以下の記載がある。
「[0006]図1は本発明の第1の実施例を示す構成図であり、図2はこの実施例で使用されるインクリボンの主要構成を示す図である。図1および図2を参照すると、この実施例の熱転写カラープリンタのリボン識別装置において、インクリボン1は供給側コア3から巻き取り側コア2に巻かれる。供給側コア3の両端にはスプール4および5がそれぞれ嵌め込まれていて、それらをプリンタ本体側の軸受7が回転自在に保持している。スプール4にはつば6が取り付けられている。右センサ8および左センサ9は光結合素子であってスプール4および5のつば6の有無を検出する。この右センサ8および左センサ9で検出された信号はリボン種類判別回路10に送られる。リボン種類判別回路10は装着されているインクリボン1が3色、4色およびモノクロリボンのいずれであるかを判別した信号をプリンタ制御回路11に送出する。
[0007]図3は、インクリボン1の種類と、装着されるスプールの種類と、つばの有無を検出する右センサ8および左センサ9の出力信号とを表にまとめたものである。」
「[0017]上述の熱転写カラープリンタのリボン識別装置においては、インクリボン種類を識別するスプールは供給側コアの両端に嵌め込まれているが、片方向に取り付けられていても良い。」

カ.甲7の記載事項について
甲7には、以下の記載がある。
「[0001]
[産業上の利用分野]本発明は、転写型カラープリンタに装着されるインクリボンのリボンタイプ自動検知方法に関する。」
「[0016]40はインクリボンロールであって、その両端開口の筒体である巻芯41の端部は、リボンタイプに応じて、表1に示すごとく、そのままの開口端であるか、あるいは図3に示す巻芯蓋42で、一端もしくは両端が蓋された閉鎖端となっている。この巻芯蓋42のプレート43は光反射率の高い色、例えば、銀色もしくは白色のプレートにしてある。
[0017]この構成において、今、巻芯左端を蓋42で閉鎖し、巻芯右端は開口したままであるインクリボンロール40が供給側インクリボンロール受け部20A、20Bにセットされたものとする。
[0018]プリンタ制御回路30が図示しないキーボーからリボンタイプ検知要求を受けると、CPU34が光学センサ24A、24Bに作動指令を与えて投光させる。これにより、光学センサ24Aはプレート43による反射光を受光するが、光学センサ24への反射光は無いので、光学センサ24AはONし、光学センサ24BはOFFとなる。
[0019]CPU34は光学センサ24A、24Bの出力を読み込むとともに、テーブルメモリ35にアクセスして、光学センサ24A、24Bの出力「1」、「0」の組を上記リボンタイプ判別テーブルと照合し、この出力「1」、「0」の組と一致する値を持つタイプデータを読み込み、今のインクリボンタイプが4色リボンであることを検知する。」

(4)理由1(甲2を主引用例とする進歩性について)
ア.理由1の概要
本件訂正発明は、甲2発明の単なる設計変更か、または、甲2発明に甲4の記載事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.判断
(ア)対比
甲2発明の「ホール素子センサ」は本件訂正発明の「磁気検出手段」に相当し、同様に、「薬剤分包機」は「薬剤包装装置」に相当し、「芯管と当該芯管に薬剤分包用のシートをロール状に巻いたロールペーパ」は「分包紙ロール」に相当し、「薬剤分包用のシート」は「分包紙」に相当する。
また、甲2発明の「芯管」と本件訂正発明の「紙管」とは、巻き芯という限りにおいて一致する。
また、甲2発明の「強磁性体(鉄部)」と本件訂正発明の「磁石」とは、磁性材料という限りにおいて一致する。
また、甲2発明の「軸方向一端側の前記磁石の取付角度が67.5°であり、軸方向他端側の前記強磁性体(鉄部)の取付角度が90°である」と本件訂正発明の「軸方向一端側と他端側とで前記磁石の取付角度が異なる」とは、軸方向一端側の前記磁石と軸方向他端側の前記磁性材料とで取付角度が異なるという限りにおいて一致する。

したがって、本件訂正発明と甲2発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
磁気検出手段を備える薬剤包装装置に装着可能な分包紙ロールであって、巻き芯と、巻き芯に巻き回される分包紙とを有し、前記巻き芯は、軸方向一端側に前記磁気検出手段で検出されるための磁石が複数個設けられ、軸方向他端側に磁性材料が複数個設けられ、しかも軸方向一端側の前記磁石と軸方向他端側の前記磁性材料とで取付角度が異なる分包紙ロール。

[相違点1]
巻き芯が、本件訂正発明では紙管であるのに対して、甲2発明では芯管である点。

[相違点2]
軸方向他端側に設けられる磁性材料が、本件訂正発明では磁石であり、薬剤包装装置に備えられる磁気検出手段により検出されるためのものであるのに対して、甲2発明では強磁性体(鉄部)であって、薬剤包装装置に備えられる磁気検出手段により検出されるためのものではない点。

(イ)相違点2について
事案に鑑みて、相違点2について検討する。
甲2の段落[0021]の記載事項(上記3.(3)ア参照)からみて、甲2発明は、分包紙ロールを薬剤包装装置に着脱自在に固定するために、薬剤包装装置側に配置された磁石との間で吸着力を生じさせるべく強磁性体(鉄部)を配設しているものである。また、甲2の段落[0069]の「しかし、上述した各直流電圧によるモータブレーキの回転抵抗が適当でなく、例えばある張力レベルN=2において張力がやや強過ぎたとするとロールペーパRと芯管Pが一体となって強く回転し、例えば磁石16による強磁性体17への吸着固定位置がずれたりすると、」という記載からみて、甲2発明の磁石と強磁性体(鉄部)とはそれらの間で吸着力を生じさせるためのものであり、平常時に両者の位置がずれることは想定していない。すなわち、甲2発明の強磁性体(鉄部)は、分包紙ロールを薬剤包装装置に着脱自在に固定するために、薬剤包装装置側に配置された磁石との間で吸着力を生じさせるためのものであって、薬剤包装装置に備えられる磁気検出手段により検出するためのものではないから、甲2発明には、上記相違点2において本件訂正発明に係る構成を備えることの動機付けはなく、甲2発明から本件訂正発明の上記相違点2に係る構成には至らない。
また、上記甲4をはじめ、甲1?8のいずれにも、薬剤包装装置に備えられる磁気検出手段により検出されるための磁石を、軸方向一端側の磁石に加えて、軸方向他端側にも設けることの記載や示唆する記載は見当たらない。
これに対し、本件訂正発明は、「薬剤包装装置において分包紙を識別することを課題と」し(段落[0006])、「軸方向一端側と他端側とに前記磁気検出手段で検出されるための磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで前記磁石の取付角度が異なる」ことで、「読取パターンの情報量を多くし、分包紙情報を表すに足る情報量を紙管ドラム7に設定し得るので、部品コストの上昇を最低限にして分包紙情報を設定できる」(段落[0040])という格別な作用効果を奏する。
よって、甲2発明において上記相違点2に係る本件訂正発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(ウ)小括
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)理由2(甲5を主引用例とする進歩性について)
ア.理由2の概要
本件訂正発明は、甲5発明に甲6及び甲7の記載事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.判断
(ア)対比
甲5発明の「磁石のチップの有無を検出するスイッチ」は本件訂正発明の「磁気検出手段」に相当し、同様に、「紙管」は「紙管」に相当し、「片方の端部」は「軸方向一端側」に相当し、「永久磁石」は「磁石」に相当し、「2個」は「複数個」に相当する。
また、甲5発明の「カラー静電プロッタ」と本件訂正発明の「薬剤包装装置」とは、ロールからシートを繰り出す装置という限りにおいて一致する。
また、甲5発明の「記録紙ロール」と本件訂正発明の「分包紙ロール」とは、ロールという限りにおいて一致する。
また、甲5発明の「記録紙」と本件訂正発明の「分包紙」とは、シートという限りにおいて一致する。

したがって、本件訂正発明と甲5発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
磁気検出手段を備えるロールからシートを繰り出す装置に装着可能なロールであって、紙管と、紙管に巻き回されるシートとを有し、前記紙管は、軸方向一端側に前記磁気検出手段で検出されるための磁石が複数個設けられるロール。

[相違点3]
本件訂正発明では、ロールが分包紙を巻き回した分包紙ロールであり、シートが分包紙であって、当該ロールが薬剤包装装置に装着可能なものであるのに対して、甲5発明では、ロールが記録紙を巻き回した記録紙ロールであり、シートが記録紙であって、当該ロールがカラー静電プロッタに装着可能なものである点。

[相違点4]
磁石が、本件訂正発明では軸方向他端側にも複数個設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで取付角度が異なるのに対して、甲5発明では軸方向他端側には設けられていない点。

(イ)相違点4について
事案に鑑みて、相違点4について検討する。
甲6には、甲6の段落[0006]の記載事項(上記3.(3)オ参照)からみて、インクリボンの供給側コアの両端に嵌め込まれたスプールのそれぞれのつばの有無をセンサで検出して、その検出有無によってインクリボンの種類を特定する技術事項が記載されており、甲7には、甲7の段落[0016]-[0019]の記載事項(上記3.(3)カ参照)からみて、インクリボンロールの巻心の両端の蓋の有無をセンサで検出して、その検出有無によってインクリボンタイプを特定する技術的事項が記載されている。しかし、甲6及び甲7のものは、芯材の各端部にセンサで検出されるための複数の識別子が設けられるものではなく、それらの識別子の取付角度を各端部で異なるようにするものでもないから、甲5発明に甲6および甲7の技術的事項を組み合わせたとしても、本件訂正発明の上記相違点4に係る構成を想到することはできない。甲5の段落[0096]-[0101]の記載事項(上記3.(3)エ参照)からみて、甲5発明は、ある角度をなして配置される複数の磁気検出手段に対向して紙管端部に複数の磁石を配置し、その検出有無で記録紙の種類を特定するものであるので、仮に甲6および甲7の技術的事項を組み合わせて、紙管の他端側にも複数の磁石を設けることまでは容易に想到し得るとしても、その場合は該他端側についても、ある角度をなして配置される複数の磁気検出手段に対向して複数の磁石を配置し、この有無を検出することになるだけであるから、あえて両端側で磁石のなす角度を相互に異ならせることに技術的な意義がない。よって、あえて両端で磁石の角度を変える動機付けがない。
そして、上記甲5?7をはじめ、甲1?8のいずれにも、両端部に複数個設けた識別子の取付角度を異なる角度にしようとする技術的思想は存在しない。
これに対し、本件訂正発明は、「薬剤包装装置において分包紙を識別することを課題と」し(段落[0006])、「軸方向一端側と他端側とに前記磁気検出手段で検出されるための磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで前記磁石の取付角度が異なる」ことで、「読取パターンの情報量を多くし、分包紙情報を表すに足る情報量を紙管ドラム7に設定し得るので、部品コストの上昇を最低限にして分包紙情報を設定できる」(段落[0040])という格別な作用効果を奏する。
よって、甲5発明において上記相違点4に係る本件訂正発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(ウ)小括
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件訂正発明は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)理由3(サポート要件について)
ア.理由3の概要
本件訂正発明は、薬剤包装装置において分包紙に対応した設定を自動で行うために、分包紙毎に異なる設定を識別子から読み取ることを課題としていると認められ、両端に異なる取付角度で複数の磁石が設けられた紙管に対して、これらの両端の磁石配置によって特定される分包紙が巻き付けられており、かつ、この両端の磁石配置を薬剤包装装置によって識別して分包紙を特定することによって初めて、本件訂正発明の課題は解決される。しかし、本件訂正発明においては、両端の磁石配置によって特定される分包紙が巻き付けられていることも、この両端の磁石配置を薬剤包装装置によって識別して温度制御等の制御がおこなわれていることも、いずれも特定されていない。

イ.判断
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(平成17年(行ケ)第10042号知財高裁特別部判決(平成17年11月11日)参照)。

この点について以下に検討する。

本件訂正発明は、「分包紙の材質や厚さの判別は、人手によって行われており、分包紙を交換する際、その材質や厚さが交換前の分包紙と同一か否か等は、人が確認しなければならない」(段落[0003])という問題点、及び、「分包紙の材質や厚さによって熱溶着する温度が異なるが、分包紙の材質や厚さに適合していないヒートローラの温度に設定されると、分包紙が正しく溶着されない」(段落[0004])という問題点を解決するために、「薬剤包装装置において分包紙を識別すること」(段落[0006])を課題としている。
そして、本件訂正発明において、「軸方向一端側と他端側とに前記磁気検出手段で検出されるための磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで前記磁石の取付角度が異なる」構成が特定されている。
一方、本件特許明細書には、「紙管9の両端面に永久磁石21を複数個ずつ設けるものとし」(段落[0040])、「一端側21aでは、例えば、0度と60度、他端側21bでは0度と90度というように取付角度ψを変えて設定する」(段落[0040])ことで、「読取パターンの情報量を多くし、分包紙情報を表すに足る情報量を紙管ドラム7に設定し得るので、部品コストの上昇を最低限にして分包紙情報を設定できる」(段落[0040])ことが記載されており、「薬剤包装装置において分包紙を識別する」という上記課題は、本件訂正発明において上記構成を採用することで解決されることは、当業者にとって明らかである。
そうすると、本件訂正発明は、当業者が本件特許明細書の記載により本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
したがって、本件訂正発明は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるといえるから、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
よって、理由3には理由がない。

(7)また、他に本件訂正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第7項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
薬剤包装装置、薬剤包装装置の制御方法、分包紙及び分包紙用紙管
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤包装装置、薬剤包装装置の制御方法、分包紙及び分包紙用紙管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤を包装する薬剤包装装置として、薬剤を投入するホッパーと、筒状体に巻回された分包紙を引き込み、熱シールするヒートローラ又は熱圧着装置とが設けられ、薬剤を分包紙に投入し、該薬剤が投入された分包紙をヒートローラで熱溶着又は熱圧着等することにより、薬剤を分包するものが用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来の薬剤包装装置によれば、分包紙の材質や厚さの判別は、人手によって行われており、分包紙を交換する際、その材質や厚さが交換前の分包紙と同一か否か等は、人が確認しなければならない。
【0004】
また、前記従来の薬剤包装装置によれば、分包紙の材質や厚さによって熱溶着する温度が異なるが、分包紙の材質や厚さに適合していないヒートローラの温度に設定されると、分包紙が正しく溶着されないという問題がある。
【0005】
更に、ヒートローラの温度を変更するには、ヒートローラにかける電圧を変更する必要があるが、使用状況に応じて経験的知見により変更を行うので、この電圧の変更の設定はユーザーには困難であり、薬剤包装装置のメーカー等の専門の作業者に設定をしてもらわなければならず、面倒である。また、ヒートローラが分包紙を引き込む量が一定であるのに対し、分包紙の残量は次第に少なくなるため、分包紙にかかるテンションが変化し、溶着(圧着)位置がずれたり、溶着(圧着)不良を発生するという問題もある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、薬剤包装装置において分包紙を識別することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る薬剤包装装置は、薬剤の投入された分包紙を熱溶着する熱溶着手段と、分包紙が巻回されている紙管に設けられる磁石を検出して読取パターンとして読み取る読取手段と、読取手段による読取パターンに対応して熱溶着手段の温度を設定する温度制御手段とを備え、前記紙管には、軸方向一端側と他端側とに磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで磁石の取付角度が異なることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る分包紙ロールは、磁気検出手段を備える薬剤包装装置に装着可能な分包紙ロールであって、紙管と、紙管に巻き回される分包紙とを有し、前記紙管は、軸方向一端側と他端側とに前記磁気検出手段で検出されるための磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで前記磁石の取付角度が異なることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る紙管は、分包紙が巻き回される紙管であって、軸方向一端側と他端側とに磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで磁石の取付角度が異なることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るリサイクル用紙管は、分包紙が巻き回される紙管であって、軸方向一端側と他端側とに磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで磁石の取付角度が異なることを特徴とする。
また、本発明に係る紙管のリサイクル方法は、分包紙が巻き回される紙管であって、軸方向一端側と他端側とに磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで磁石の取付角度が異なる紙管を用い、前記紙管に先に巻き回されていた分包紙を使い終えた後に、該紙管に新しい分包紙を巻き回すことを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る薬剤包装装置によれば、読取手段によって分包紙の種類を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る薬剤包装装置の一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1の要部拡大斜視図。
【図3】マイクロコンピュータの接続関係を示すブロック図。
【図4】(イ)及び(ロ)は、識別子の更に他の実施形態を示す斜視図。
【図5】識別子の更に他の実施形態を示す斜視図。
【図6】(イ)及び(ロ)は、識別子の設けられた分包紙の他の実施形態を示す斜視図であり、(イ)は外周側を示し、(ロ)は内周側を示す。
【図7】(イ)及び(ロ)は、識別子の設けられた分包紙の他の実施形態を示す斜視図であり、(イ)は分包紙有り、(ロ)は分包紙無しの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明の薬剤包装装置の一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1の紙管ドラム付近を示す要部拡大斜視図である。
【0014】
図1に示す薬剤包装装置には、略円筒状の紙管9に巻回された分包紙10の略中央部に設けられた略円筒形の空洞部10aに挿入されており、分包紙10を排出すべく回転可能な紙管ドラム7と、分包紙10の排出される速度を制御する分包紙制御手段としてのブレーキ板8と、分包紙10をホッパー1まで導出するためのローラ6と、薬剤を分包紙10に投入するための薬剤投入手段としてのホッパー1と、熱溶着手段(熱圧着手段)としてのヒータ2と、操作盤(図示せず)とが設けられている。分包紙は、グラシン紙やセロハン等の一面にポリエチレン等の合成樹脂が塗工されたもの等が用いられる。また、本実施形態においては、ヒータ2が分包紙10を引き込むことにより、紙管ドラム7が回転して分包紙10を巻回された状態から開放する。即ち、紙管ドラム7には、該紙管ドラム7自身を回転させるための駆動装置は設けられていない。尚、紙管ドラム7には公知の紙切れ検知ピンを設けることがある。この紙切れ検知ピンは、紙管9に巻回された分包紙10が紙管ドラム7に装着されて分包紙10切れを検出することができる。
【0015】
また、分包紙10の一側面、即ち図1及び図2においては右側の側面に分包紙の材質や厚さ、或いは溶着のために適切に設定されるべき温度等の分包紙情報を示す識別子の一例としての記号11(図2においては、小文字のアルファベットの組み合わせで表現されている)が印刷されており、該記号11の印刷には、波長が300?400nm程度の近紫外線を照射した場合にのみ発光して視認可能となる、例えば蛍光塗料が用いられている。
【0016】
また、本発明に係る薬剤包装装置には、図1に記載のように、記号11が印刷されている側の分包紙10の側面を照射すべく、近紫外線を照射する、例えば、ブラックライト5と、該ブラックライト5に近紫外線を照射されて発光した記号11を受光し、記号11を読み取る読取手段としてのイメージセンサ4とが、分包紙10に近接して設けられている。尚、近紫外線を照射する手段としては、キセノンランプにフィルタを付けたものや、又は紫外線LED等を用いることもできる。
【0017】
そして、薬剤包装装置には、マイクロコンピュータ(図1には図示せず)が設けられており、本薬剤包装装置において好適に用いられる分包紙の分包紙情報が記憶されている。そして、イメージセンサ4で読み取られた記号11に関するデータがマイクロコンピュータに伝送される。図3は、マイクロコンピュータ12の接続関係を示すブロック図であり、以下、図3を参照してマイクロコンピュータ12について説明する。第1に、マイクロコンピュータ12には、図3に示すようにヒータ2が接続されいるとともに、予め記号11毎に、即ち分包紙10の分包紙情報毎にヒータ2の適切な温度が記憶されており、イメージセンサ4で読み取られた記号11に対応してヒータ2の温度が設定される。
【0018】
第2に、マイクロコンピュータ12は、図3に示すように、ブレーキ板8に接続されており、分包紙10が紙管ドラム7から排出されヒータ2に引込まれるときの紙送りの速度が所定速度として予め設定されて記憶されている。従って、ヒータによる分包紙10の引込み速度が実質的に紙送り速度にほぼ等しいのである。そして、マイクロコンピュータ12はイメージセンサ4から入力される記号11の読取速度(後述)をマイクロコンピュータ12で検知し、紙送りの速度が前記所定速度となり、しかも、分包紙10のテンションが一定になるよう、ブレーキ板8の分包紙10に対する押圧力の強弱を制御する。つまり、本薬剤包装装置においては、ヒータ2が分包紙10を引込んでいくことによって分包紙10が紙送りされるので、分包紙10の残量が少なくなり紙管ドラム7にかかる重量が軽くなるとテンションが低下し、紙送りが早くなる傾向があるので、紙送り速度の制御は、ブレーキ板8の押圧力の強弱の制御によって達せられるのである。
【0019】
このように構成される薬剤包装装置による薬剤の包装方法を次に示す。まず、分包紙10が巻回された紙管ドラム7を所定位置に取付けし、分包紙10をローラ6の位置まで取り付ける。そして、使用者による操作が可能に設けられた操作盤等に取り付けられているスイッチ等により、ブラックライト5とイメージセンサ4のスイッチをオンにする。
【0020】
そして、イメージセンサ4は、常時受像するように設定されており、イメージセンサ4によって分包紙10の記号11を読み取り、そのデータをマイクロコンピュータ12に伝送する。マイクロコンピュータ12は、イメージセンサ4で読み取った記号11の表す分包紙情報を識別し、予めマイクロコンピュータ12に記憶されている分包紙情報と異なる場合には、マイクロコンピュータ12は、操作盤等に取り付けられている警報手段としての表示装置(図示せず)にエラーを表示するよう表示信号を発したのち、薬剤包装装置の動作を停止させる。
【0021】
このように、イメージセンサ4が読み取った記号11がマイクロコンピュータ12に記憶されているものと一致している場合には、次に紙送り速度が検出される。つまり、マイクロコンピュータ12は、記号11が読み取られる読取速度、換言すると、マイクロコンピュータ12に記号11のデータが伝送される間隔(タイミング)、をマイクロコンピュータ12内で検知し、その検知された読取速度が所定速度の範囲内であるか否かを検出する。即ち、記号11は分包紙10の一側面に、図2、図4及び図5に示したように文字又はバーコードが直径方向に印刷されていて、分包紙10の外周側ほど文字同士又はバーコード同士の間隔が広がっている配置とされている。ここで、バーコードの各一組は、その一組を構成する太い線分、細い線分及びその空白部のそれぞれが互いに平行であり、通常のバーコード読取装置で読取ることができる様式で印刷されている。そこで、文字等の印刷されている位置が外周寄りか、又は、内周寄りかによって文字同士又はバーコード同士の間隔部分の長さが異なることとなる。従って、この間隔部分の長さを検出することにより、分包紙10の速度を間接的に検出出来ることとなるのである。即ち、マイクロコンピュータ12は、イメージセンサ4が記号11を読み取る読取速度を検知する速度検知手段としての役割を果たす。
【0022】
ここで、読取速度が変化して、読取速度が所定速度であるか否かを検出した後のマイクロコンピュータ12による薬剤包装装置の制御について説明する。まず、記号11が読み取られる読取速度が所定速度の範囲を超えている場合、例えば、速い場合には、該読取速度を所定速度の範囲内にすべく、ブレーキ板8の分包紙10に対する押圧力を強める調整がされ、所定速度の範囲を超えていなければ、そのままの速度で分包紙10を排出させる。また、読取速度が所定速度よりも遅い場合には、ブレーキ板8の押圧力を弱める調整がされて分包紙10を排出させる。
【0023】
更に、マイクロコンピュータ12は、前記読取速度が所定速度の範囲を超えた時点で、読取速度と、分包紙の排出開始からの所要時間とから分包紙の残量を算出する。そして、前記読取速度が所定速度の範囲を超えた時から、所定時間を超えると分包紙の残量を数段階に区分して表示するとともに、その残量が分包溶着を継続するのに不十分となった時点で、前記表示装置(図示せず)にエラーを表示する。尚、残量を検出するためには、巻回された分包紙の巻き始めから所定量の巻数分の位置には識別子を設ける範囲がかからないようにしておき、この前記所定量の巻数分を残量とし、この所定量の巻数に達したとき(識別子を検出しなくなったとき)をもって残量なしと確認することもできる。更に別の手段として、所定量の巻数の位置に特定の識別子を設定し、この特定の識別子を検出したときをもって残量を段階的に表示することもできる。このようにブレーキ板8の押圧力が調整されることにより、分包紙10の弛みや張り等を防止することができ、分包紙10のテンションはほぼ一定に保たれる。従って、紙管ドラム7に巻回されている分包紙10のテンションが不安定となることにより従来生じていた、溶着位置がずれる等の不良を生じる可能性が低く、包装の精度を向上させることができる。
【0024】
次に、イメージセンサ4が記号11を読み取る読取速度が所定速度の範囲であれば、ホッパー1から分包紙に薬剤を投入し、ヒータ2側に分包紙10が搬送される。
【0025】
ヒータ2の温度は、イメージセンサ4で読み取られた記号11によりマイクロコンピュータ12で設定され、分包紙10の材質に適当な温度に制御されており、このように温度が制御されたヒータ2に分包紙10が搬送されて、薬剤が分包紙10に密封される。このように、マイクロコンピュータ12により分包紙の材質及び厚さに応じた温度にヒータが制御されるので、溶着不足等を生じることなく、正しく溶着を行うことができる。尚、マイクロコンピュータ12は、このようにヒータ2の温度を設定し、制御する温度制御手段としての役割も果たす。
【0026】
このようにして、薬剤包装装置により薬剤が分包される。
【0027】
尚、本実施形態においては、複数の分包紙の材質等を所定の分包紙情報としてマイクロコンピュータ12に予め記憶したが、薬剤の種類によっては、包装すべき分包紙の材質が予め決定されている場合があり、この場合には、決定されている材質を示す識別子をマイクロコンピュータ12に記憶しておき、この記憶された識別子とは異なる識別子がイメージセンサで読み取られた場合にはエラーとして表示させることもできる。このとき、薬剤包装装置の作動を停止させてもよい。このように分包紙の材質等に応じて薬剤包装装置の作動を制御することにより、確実に薬剤の種類に応じた正しい分包紙に薬剤を包装することができる。
【0028】
また、前記実施形態の薬剤包装装置に、分包紙に服用時間等を印字する印字装置を設け、予めマイクロコンピュータ12に印字位置等の印字設定を記号11毎に記憶させておくことにより、分包紙の種類に対応して印字設定するという設定をマイクロコンピュータ12により自動的に行うことができる。即ち、マイクロコンピュータ12に印字制御手段としての役割をもたせることも可能である。
【0029】
また、前記実施形態においては、分包紙の識別子を読み取ることにより、マイクロコンピュータ12がヒータの温度設定、分包紙の排出量の調整、印字位置の設定等を全て行ったが、これら全ての設定が必ずしも行われなければならないものではなく、上記設定のうち、少なくとも何れか1つが行われるよう、マイクロコンピュータ12が設定されていればよい。
【0030】
また、図1においては、図1の手前側にイメージセンサ4を、奥側にブラックライト5が設置されたが、イメージセンサとブラックライトの位置関係は図1の逆であってもよく、また、上下に配置されてもよい。
【0031】
尚、前記実施形態においては、読取手段をイメージセンサで形成したが、読取手段としては、例えばフォトダイオード等の受光素子等、適宜変更可能である。このようにフォトダイオードを使用する場合、例えばフォトダイオードを2個使用し、且つ識別子をバーコードのように線分と空白との組合せで示すことによって、前記2個のフォトダイオードで線分の有無の間隔が検知される構成とすれば、イメージセンサで読取手段を構成するよりも安価に読取手段を構成することができる。また、フォトダイオードの数は、上記2個に限定されず、適宜変更可能であり、識別子を読み取る方法も、適宜変更可能である。
【0032】
また、上記実施形態においては、紫外線を照射するブラックライトが薬剤包装装置に設けられ、ブラックライトが分包紙に照射されることにより発光した識別子を、読取手段としてのイメージセンサで読み取ったが、読取手段はこれに限定されない。読取手段は、識別子の形態に応じて変更可能であり、例えば識別子がバーコードで形成されていれば、読取手段は、バーコード読取装置とすることができ、ブラックライトを設けなくともよい。
【0033】
更に、読取手段としては、識別子を取り込み、予め記憶している識別子と比較し、一致した場合に、その記号の意味を検出する装置として、例えば画像処理装置も適用可能である。
【0034】
更に、識別子は印刷によって分包紙に設ける形態でなくとも、例えば分包紙の形成のため、熱溶着するための合成樹脂をグラシン紙等に塗工する場合に、分包紙の端縁部等に蛍光塗料を選択的に設けたり、蛍光塗料を識別子の形状に形成して分包紙本体10aの端縁部等に貼着してもよい。また、識別子は、図2に示すようなアルファベットの組み合わせに限定されず、例えば図4(イ)に示すように、丸形、三角形等の幾何学記号11aで形成したり、図4(ロ)に示すように、バーコード11bで形成したり、或いは図5に示すように、社名等のロゴ11cで形成する等適宜変更可能であり、要は分包紙の種類等を示すことができるものであればよい。尚、図5に示すようなロゴ11c等、同じ記号の配列を異なる種類の分包紙全てに共通して識別子として用いることもでき、この場合には、分包紙10の材質や厚さ等の種類毎に、ロゴ等の記号の配列の字間や大きさを異ならせ、読取手段で、その種類を判別させることにより、識別子としての役割を果たすことができる。
【0035】
また、識別子を印刷するためのインクは、蛍光塗料等の蛍光体に限定されず、通常の黒インクや、磁気インク等であってもよい。
【0036】
しかし、識別子を上述の蛍光塗料等の蛍光体で形成すれば、分包紙に印字を施す場合にあっても、識別子が印字を遮るなど、印字に影響を及ぼすことがなく、見栄えよく分包紙を形成することができるという利点がある。
【0037】
また、識別子の示す分包紙情報は、上述の材質、厚さ、溶着の温度等に限定されず、分包紙の幅等、分包紙に関する情報であれば適宜追加等変更可能であり、更に、分包紙情報は、上述の全ての情報でなくとも、分包紙の材質、厚さ、幅等のうち少なくとも1個を含む情報であればよい。
【0038】
前記実施形態においては、略円筒状に巻回された分包紙の側面に識別子を印刷したが、識別子の印刷位置は側面に限定されることなく、例えば図6に示すように分包紙の一表面における側縁10bであってもよい。但し、このとき、識別子同士の間隔部分は、図2、図4及び図5に示した場合と同様に、分包紙を紙管ドラムに巻回したときに内周側では密(図6の(ロ))となり、外周側では疎(図6の(イ))となるように印刷したものを巻回して分包紙10の外周側ほど文字同士又はバーコード同士の間隔が広がっている配置とする。また、識別子の印字位置は両側縁、表面の中央部等であってもよく、更に、一表面のみならず両面に印刷されていてもよい。
【0039】
上述のように印刷されている場合には、識別子の読取手段の設置位置を識別子の印刷されている位置に応じて変更すればよい。
【0040】
また、さらに、識別子を設ける形態として、図7の(b)に示したように、永久磁石21を紙管9の端面に設けるとともに、読取手段としてのホールセンサ等の磁気検出手段22を、前記永久磁石21による磁界を検出し得るべく紙管9に対向するように配設して本薬剤包装装置を構成することもできる。この場合、分包紙10の種類等ごとに永久磁石21の個数や極性、磁力の大小、間隔等の組合せを前記バーコード(「磁力の大小」が線分の太細に対応、「間隔」が空白部に対応)のように設定し、その各組が各識別子に一対一対応するようにして、その設定に従って永久磁石21を紙管9の側面や端面(円周曲面の一端部分)に配設することにより、ホールセンサが前記磁界をディジタル的に読み取って、読取パターンとして検出できるので、その読取パターンによって分包紙の種類等を識別させることができる。かかる永久磁石21を紙管9に設けるには、紙管9に埋め込むようにしたり、いわゆるシート状マグネットを利用したりすることができる。例えば、図7の(b)に示したように紙管9の両端面に永久磁石21を複数個ずつ設けるものとし、しかも、一端側21aと他端側21bとでその個数、磁力の大小及び取付角度ψを異ならせるように設定することもできる。即ち、一端側21aでは、例えば、0度と60度、他端側21bでは0度と90度というように取付角度ψを変えて設定する等して読取パターンの情報量を多くし、分包紙情報を表すに足る情報量を紙管ドラム7に設定し得るので、部品コストの上昇を最低限にして分包紙情報を設定できる。このように、両端面を利用すると、識別子の配設によって設定できる情報量が多くなり、種々の分包紙の種類に対応できる。そして、紙管9を紙管ドラム7に装着したとき、本薬剤包装装置に適合した紙管を識別でき、適正な分包紙を識別できるとともに、適正な装着状態を確認できるという利点がある。また、このような永久磁石21に対して、読取手段4としての磁気検出手段22は、その磁気情報を読取るものとしてイメージセンサの場合と同様に紙管9に近接して設けられるが、さらに、図7の(a)に示すように、この磁気検出手段22の近傍に前記永久磁石21に対する磁界集束用の永久磁石23を設けることができる。ここで、近傍とは、例えば、永久磁石21からみて磁気検出手段22の背後側でもよく、永久磁石21の磁気強度に応じて永久磁石21からの距離が永久磁石21による磁界に作用し得る距離に設定されればよいという意味である。このように永久磁石21に対する磁界集束用の永久磁石23を設けると、永久磁石21によって分包紙情報を表すに足る情報量を設定できるとともに、前記磁界集束用の永久磁石23が、永久磁石21による磁界(磁力線)を誘引して集束する作用を発揮することにより、永久磁石21によって表される磁気情報を磁気検出手段22が確実に検出できる利点がある。
【0041】
尚、この永久磁石21を紙送り速度検出に用いることもできる。この場合、前記読取パターンが繰り返し検出されることとなるが、その繰り返しの周期を検出すれば紙送り速度が簡便に検出できるという利点がある。さらに別の識別子の形態として永久磁石21の代わりに金属片(図示せず)を利用し、磁気検出手段の代わりに金属検出手段を配設するようにしてもよい。
【0042】
このように、識別子を、薬剤を包装する分包紙本体の所定位置に設ける構成により、分包紙を、分包紙本体を含めた単位で特定できるので、衛生管理や在庫管理を実施しやすい。そして前記識別子を紙管の端面に設けると、分包紙を、紙管9を含めた単位で特定できる。従って、紙管9をリサイクルする形態の生産管理等にも好都合である。尚、熱溶着手段としては、上述のヒータに限定されず、例えば、圧着シール装置等、従来より一般的に用いられている熱圧着装置等適宜変更可能である。
【0043】
更に、エラーが発生した場合、上記実施形態においては表示装置に表示させたが、警報手段としては、ブザー等適宜変更可能である。
【0044】
尚、識別子を設けた分包紙を工場等の特定の場所で製造して販売すれば、この識別子を製造ロット番号の如く製造管理に利用することができ、販売ルートを把握でき、衛生管理や在庫管理が容易となる。
【0045】
尚、薬剤包装装置は、分包紙10に薬剤を投入する薬剤投入手段1と、薬剤の投入された該分包紙10を熱溶着して密封する熱溶着手段2とを具備する薬剤包装装置であって、分包紙10が分包紙情報を示す識別子11を有しており、該識別子11を読み取る読取手段4が前記薬剤包装装置に設けられてなることを特徴とすることができる。ここで、分包紙情報とは、例えば分包紙の種類、グラシン紙、セロハン等の分包紙の材質に関わる情報、及び分包紙の厚さに関わる情報等の分包紙に関わる情報を意味する。このように読取手段4が設けられていると、分包紙10の種類等を読取手段4で読み取り、分包紙10を特定することができる。
【0046】
また、薬剤包装装置は、前記読取手段4で読み取った識別子11の分包紙情報に対応して熱溶着手段2の温度を設定する温度制御手段が設けられていると、分包紙10の種類等に対応した熱溶着手段2の熱溶着の温度を温度制御手段により適切に制御することができ、分包紙の材質、厚さ等に適した熱溶着の温度を確実に且つ容易に設定できる。
【0047】
更に、薬剤包装装置は、前記読取手段4が識別子11を読み取る読取速度を検知する速度検知手段と、該速度検知手段の検知した読取速度の変化に応じて分包紙10の残量を算出し、分包紙10の残量に応じて分包紙10の排出量を制御する分包紙制御手段が設けられていると、分包紙10が安定したテンションで熱溶着手段2へ供給される。従って、溶着する位置がずれたりする等の分包の不良を生じることを防止することができる。
【0048】
また、薬剤包装装置は、前記分包紙10に所定のデータを印字する印字装置と、前記読取手段4で読み取った識別子11の分包紙情報に対応して前記印字装置の印字設定を制御する印字制御手段とが設けられていると、分包紙10の種類等に応じた印字位置等の設定を印字制御手段で行うことができる。
【0049】
また、薬剤包装装置は、前記分包紙10の残量が所定量以下になると、警報を発する警報手段が設けられていると、分包紙10を取り替える時期を警報手段で使用者に知らせることができる。また、薬剤包装装置は、前記識別子11が永久磁石21からなり、該永久磁石21が前記分包紙10の紙管9に設けられており、しかも前記読取手段4の近傍に前記永久磁石21に対する磁界集束用の永久磁石23が設けられてなるので、分包紙情報を表すに足る情報量を設定できるとともに、前記磁界集束用の永久磁石23が永久磁石21による磁界を誘引することにより、紙管の永久磁石によって表される磁気情報を確実に検出できる。
【0050】
また、薬剤包装装置の制御方法は、分包紙10に薬剤を投入する薬剤投入手段1と、薬剤の投入された該分包紙10を熱溶着して密封する熱溶着手段2とを具備する薬剤包装装置の制御方法であって、分包紙10が識別子11を有しており、前記分包紙10の識別子11を読み取り、該読み取った識別子11の分包紙情報に対応して熱溶着手段4の温度を設定すると、分包紙10の種類等に対応した熱溶着の温度を、分包紙10の識別子11を読み取ることによって設定することができる。従って、分包紙10の材質、厚さ等に対応して確実に温度を設定することができる、不良品の数を低減させることができる。
【0051】
更に、薬剤包装装置の制御方法は、前記分包紙10の識別子11を読み取る読取速度を検知し、該検知した読取速度の変化に応じて分包紙10の残量を算出し、分包紙の残量に応じて分包紙の排出量を制御するようにすることができる。このように、分包紙10が識別子11を有しており、前記分包紙10の識別子を読み取り、読み取る読取速度を検知し、該検知した読取速度の変化に応じて分包紙10の残量を算出し、分包紙の残量に応じて分包紙10の排出量を制御すると、分包紙10の残量に応じて、安定したテンションで分包紙10を熱溶着手段2へ供給することができ、従って包装の精度が向上する。
【0052】
また、薬剤包装装置の制御方法は、前記分包紙10に所定のデータを印字する印字装置が薬剤包装装置に設けられており、前記読み取った分包紙10の識別子11に対応して印字位置を設定すると、分包紙10の識別子11の分包紙情報を読み取ることによって、分包紙10の種類等に対応した印字位置を設定することができる。
【0053】
また、分包紙には、薬剤を包装する分包紙が巻回された分包紙本体10aの所定位置に、分包紙情報を示す識別子11が設けられており、分包紙を、分包紙本体10aを含めた単位で特定できるので、衛生管理や在庫管理を実施しやすい。また、分包紙は、前記識別子11を紙管9に設けることができ、分包紙を、紙管9を含めた単位、具体的には、紙管ドラムを含めた単位で特定できるので、紙管ドラムをリサイクルする形態の生産管理等にも好都合である。また、分包紙は、前記識別子11を永久磁石21で構成することもでき、分包紙情報を表すに足る情報量を紙管9、具体的には紙管ドラムに設定し得るので、部品コストの上昇を最低限にして分包紙情報を設定できる。また、分包紙用紙管は、薬剤を包装する分包紙10が巻回されてなり、分包紙情報を示す識別子11が設けられてなり、薬剤包装装置に適合した紙管を識別できるので、適正な分包紙を識別できるとともに紙管が紙管ドラムに正しく装着されたか否かを確認できる。
【符号の説明】
【0054】
1…ホッパー、2…ヒータ、4…イメージセンサ、7…紙管ドラム、8…ブレーキ板、9…紙管、10…分包紙、11…記号、12…マイクロコンピュータ、21…永久磁石、22…磁気検出手段
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の投入された分包紙を熱溶着する熱溶着手段と、
分包紙が巻回されている紙管に設けられる磁石を検出して読取パターンとして読み取る読取手段と、
読取手段による読取パターンに対応して熱溶着手段の温度を設定する温度制御手段とを備え、
前記紙管には、軸方向一端側と他端側とに磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで磁石の取付角度が異なることを特徴とする薬剤包装装置。
【請求項2】
磁気検出手段を備える薬剤包装装置に装着可能な分包紙ロールであって、
紙管と、
紙管に巻き回される分包紙とを有し、
前記紙管は、軸方向一端側と他端側とに前記磁気検出手段で検出されるための磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで前記磁石の取付角度が異なることを特徴とする分包紙ロール。
【請求項3】
分包紙が巻き回される紙管であって、
軸方向一端側と他端側とに磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで磁石の取付角度が異なることを特徴とする紙管。
【請求項4】
分包紙が巻き回される紙管であって、軸方向一端側と他端側とに磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで磁石の取付角度が異なることを特徴とするリサイクル用紙管。
【請求項5】
分包紙が巻き回される紙管であって、軸方向一端側と他端側とに磁石が複数個ずつ設けられ、しかも軸方向一端側と他端側とで磁石の取付角度が異なる紙管を用い、
前記紙管に先に巻き回されていた分包紙を使い終えた後に、該紙管に新しい分包紙を巻き回すことを含むことを特徴とする紙管のリサイクル方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-09-19 
結審通知日 2019-09-24 
審決日 2019-10-08 
出願番号 特願2012-142821(P2012-142821)
審決分類 P 1 41・ 851- Y (B65B)
P 1 41・ 853- Y (B65B)
P 1 41・ 856- Y (B65B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 武内 大志
久保 克彦
登録日 2014-01-31 
登録番号 特許第5467126号(P5467126)
発明の名称 薬剤包装装置、薬剤包装装置の制御方法、分包紙及び分包紙用紙管  
代理人 特許業務法人藤本パートナーズ  
代理人 特許業務法人藤本パートナーズ  
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