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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1357134 |
審判番号 | 不服2018-9082 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-02 |
確定日 | 2019-11-14 |
事件の表示 | 特願2013- 90882「撮像装置及び撮像システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-216734〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年4月24日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年11月25日付け:拒絶理由通知 平成29年 1月30日 :意見書の提出、手続補正 平成29年 8月31日付け:拒絶理由通知(最後) 平成29年10月30日 :意見書の提出、手続補正 平成30年 3月26日付け:平成29年10月30日の手続補正につい ての補正の却下の決定、拒絶査定 平成30年 7月 2日 :審判請求、手続補正 第2 平成30年7月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年7月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、請求項1についての以下の補正を含むものである。 本件補正による特許請求の範囲の請求項1及び本件補正前の平成29年1月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。(下線部は、補正箇所である。) なお、本件補正後の請求項1及び本件補正前の請求項1の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成Fと称する。 (本件補正後の請求項1) 「【請求項1】 (A)被写体を撮像して可視光信号と非可視光信号を得る撮像部と、 (B)前記撮像部から出力される前記可視光信号を用いて可視光輝度信号を生成する第一輝度生成部と、 (C)前記撮像部から出力される前記非可視光信号を用いて非可視光輝度信号を生成する第二輝度生成部と、 (D)前記第一輝度生成部にて生成された前記可視光輝度信号と前記第二輝度生成部にて生成された前記非可視光輝度信号とを用いて補正処理を行う画像補正処理部と、 (E)少なくとも前記画像補正処理部を制御する制御部と、を備え、 前記撮像部は、 (A1)可視光の光源と、 (A2)非可視光の光源と、 (A3)同一の撮像素子上にそれぞれ異なる波長域に感度を持つ複数の画素が配置された撮像素子群と、を備え、 (A31)前記撮像素子群の各撮像素子は、前記可視光のうち赤の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち青の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち緑の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記非可視光に感度をもつ画素と、を備え、 (E1)前記制御部は、前記可視光の光源及び前記非可視光の光源の点灯を、それぞれの露光時間の間、同期させて、行い、 (A4)前記撮像部は、前記撮像素子群により、前記可視光信号と前記非可視光信号とを、前記点灯に同期して取得し、 (D1)前記画像補正処理部は、前記非可視光輝度信号を用いて生成された補正信号を、前記可視光輝度信号に加算することで前記補正処理を行う (F)ことを特徴とする撮像装置。 ることを特徴とする撮像装置。 」 (本件補正前の請求項1) 「【請求項1】 (A)被写体を撮像して可視光信号と非可視光信号を得る撮像部と、 (B)前記撮像部から出力される前記可視光信号を用いて可視光輝度信号を生成する第一輝度生成部と、 (C)前記撮像部から出力される前記非可視光信号を用いて非可視光輝度信号を生成する第二輝度生成部と、 (D)前記第一輝度生成部にて生成された前記可視光輝度信号と前記第二輝度生成部にて生成された前記非可視光輝度信号とを用いて補正処理を行う画像補正処理部と、 (E)少なくとも前記画像補正処理部を制御する制御部と、を備え、 前記撮像部は、 (A1)可視光の光源と、 (A2)非可視光の光源と、 (A3)同一の撮像素子上にそれぞれ異なる波長域に感度を持つ複数の画素が配置された撮像素子群と、を備え、 (A32)前記複数の画素のうち、少なくとも1つの画素は、前記可視光の波長域に、少なくとも1つの画素は、前記非可視光の波長域に感度を有し、 (E1)前記制御部は、前記可視光の光源及び前記非可視光の光源の点灯を、それぞれの露光時間の間、同期させて、行い、 (A4)前記撮像部は、前記撮像素子群により、前記可視光信号と前記非可視光信号とを、前記点灯に同期して取得し、 (D1)前記画像補正処理部は、前記非可視光輝度信号を用いて生成された補正信号を、前記可視光輝度信号に加算することで前記補正処理を行う (F)ことを特徴とする撮像装置。」 2 補正の適否 (1)補正事項 本件補正は、請求項1に係る次の補正事項を含むものである。 (補正事項1) 本件補正前の請求項1の「前記複数の画素のうち、少なくとも1つの画素は、前記可視光の波長域に、少なくとも1つの画素は、前記非可視光の波長域に感度を有し」(構成A32)を、「前記撮像素子群の各撮像素子は、前記可視光のうち赤の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち青の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち緑の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記非可視光に感度をもつ画素と、を備え」(構成A31)に変更する補正。 (補正事項2) 本件補正前の請求項1に「ることを特徴とする撮像装置。」を追加する補正。 (2)補正の目的について (2-1)補正事項1について 補正事項1は、本件補正前の構成A32が、 (イ)前記複数の画素のうち、少なくとも1つの画素は、前記可視光の波長域に感度を有し、 (ロ)前記複数の画素のうち、少なくとも1つの画素は、前記非可視光の波長域に感度を有し、 という構成であったものを、本件補正後の構成A31の (ハ)前記撮像素子群の各撮像素子は、 (ニ)前記可視光のうち赤の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、 (ホ)前記可視光のうち青の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、 (ヘ)前記可視光のうち緑の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、 (ト)前記非可視光に感度をもつ画素と、を備え、 という構成とする補正である。 構成A32の(イ)、(ロ)の「前記複数の画素」は、構成A3の「撮像素子群」の「複数の画素」であるから、構成A31の(ハ)「前記撮像素子群の各撮像素子」は、「複数の画素」が「前記撮像素子群の各撮像素子」であることを特定したものである。 次に、構成A32の(イ)「前記複数の画素のうち、少なくとも1つの画素は、前記可視光の波長域に感度を有」することは、構成A31の(ニ)「前記可視光のうち赤の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素」、(ホ)「前記可視光のうち青の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素」、(ヘ)「前記可視光のうち緑の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素」と補正され、可視光に感度を有する画素が、赤、青、緑に感度を有し、それぞれ非可視光に感度を有さない3つの画素であると限定された。 さらに、構成A32の(ロ)「前記複数の画素のうち、少なくとも1つの画素は、前記非可視光の波長域に感度を有する」ことは、構成A31の(ト)「前記非可視光に感度をもつ画素」と補正され、「波長域」という文言が省かれているが、非可視光が波長域を有することは技術常識であるから、本件補正前と本件補正後で、実質的な構成が変わるものではない。 以上より、補正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえる。 (2-2)補正事項2について 補正事項2は、当該補正事項2による「ることを特徴とする撮像装置。」の直前の記載である「ことを特徴とする撮像装置。」と重複する内容であるので、誤記と認められるところ、一応、本件補正前の請求項1に構成を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえる。 (2-3)まとめ 本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わるものではなく、同一であるといえるから、補正事項1及び2は、特許法第17条の2第5項第2号の規定に該当するものである。 (3)補正の範囲及び単一性について 補正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落0012、0014、0015、0017の記載に基づくものである。 補正事項2は、上記(2)で述べたように誤記と認められ、同じ構成が重複したのみのものであるから、当初明細書等の記載に基づくものであることは明らかである。 よって、請求項1に係る補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。 また、上記(2)のとおり、補正事項1及び2は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載された発明は、発明の単一性の要件を満たすものといえ、請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について 以上のように、請求項1に係る補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 (4-1)本件補正発明 本件補正後の請求項1には、「ることを特徴とする撮像装置。」と記載されているが、上記(2)で述べたように誤記と認められるので、本件補正発明は、次のとおりのものであると認める。 なお、本件補正発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成Fと称する。 「【請求項1】 (A)被写体を撮像して可視光信号と非可視光信号を得る撮像部と、 (B)前記撮像部から出力される前記可視光信号を用いて可視光輝度信号を生成する第一輝度生成部と、 (C)前記撮像部から出力される前記非可視光信号を用いて非可視光輝度信号を生成する第二輝度生成部と、 (D)前記第一輝度生成部にて生成された前記可視光輝度信号と前記第二輝度生成部にて生成された前記非可視光輝度信号とを用いて補正処理を行う画像補正処理部と、 (E)少なくとも前記画像補正処理部を制御する制御部と、を備え、 前記撮像部は、 (A1)可視光の光源と、 (A2)非可視光の光源と、 (A3)同一の撮像素子上にそれぞれ異なる波長域に感度を持つ複数の画素が配置された撮像素子群と、を備え、 (A31)前記撮像素子群の各撮像素子は、前記可視光のうち赤の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち青の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち緑の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記非可視光に感度をもつ画素と、を備え、 (E1)前記制御部は、前記可視光の光源及び前記非可視光の光源の点灯を、それぞれの露光時間の間、同期させて、行い、 (A4)前記撮像部は、前記撮像素子群により、前記可視光信号と前記非可視光信号とを、前記点灯に同期して取得し、 (D1)前記画像補正処理部は、前記非可視光輝度信号を用いて生成された補正信号を、前記可視光輝度信号に加算することで前記補正処理を行う (F)ことを特徴とする撮像装置。」 (4-2)引用文献 ア 引用文献8の記載事項 原査定の拒絶の理由で主引用例の一つとして引用された引用文献8である特開2009-66121号公報には、「撮像装置」(発明の名称)に関し、図面とともに次の記載がある。 なお、下線は説明のために当審にて付したものである。 (ア)「【0010】 本実施形態は、ICGを蛍光造影剤として血管投与した人体等の被写体から可視光像と赤外光像との合成画像を撮影する内視鏡用撮像装置である。図1は、本実施形態に係る撮像装置の概略の構成を示すブロック図である。本撮像装置は、例えば、撮像部2と表示部4とに分けられ、撮像部2は、光源6、光学系8、光学フィルタ10、CCDイメージセンサ12、駆動回路14、信号処理回路16及び制御回路18を含んで構成される。撮像部2は内視鏡の先端部に設けられる。ここで、先端部をできるだけ小型にし被検者の負担を軽減するために、撮像部2のうち例えば、光源6、光学系8、光学フィルタ10、CCDイメージセンサ12を含む一部分のみ先端部に格納し、他の部分は体腔外のユニットに設ける構成とすることができる。この場合、先端部内の光源6及びCCDイメージセンサ12と体腔外のユニットとは、内視鏡のケーブル状の挿入部内を通された信号線で接続される。また、光源6は、発光部を体腔外に設け、発光部にて生じた光をグラスファイバ等で先端部に導く構成とすることもできる。表示部4は体腔外に置かれ、医師等に体腔内の画像を提供する。 【0011】 光源6は、R(赤),G(緑),B(青)各色に跨る比較的広帯域の可視光を出射する可視光源20と、ICGの励起波長を含む比較的狭帯域の光を出射する励起光源22とからなる。本撮像装置では、可視光像及び赤外光像の撮像を時分割でCCDイメージセンサ12により行う。これに対応して、可視光源20及び励起光源22は別々に点灯することができる。可視光源20として、例えば、キセノンランプや白色LED(Light Emitting Diode)などを用いることができる。励起光源22は、ICGの励起波長に対応して、例えば、780nmにピーク波長を有するLED等の半導体発光デバイスを用いることができる。特に、780nm帯の発光デバイスとして、GaAs系等のレーザダイオード(LD)がCD(Compact Disc)の読み取りに用いられており、これを本装置においても採用することができる。」 (イ)「【0016】 CCDイメージセンサ12は、駆動回路14からの各種クロックに基づいて動作し、被写体に応じた画像信号を生成する。図3はCCDイメージセンサ4の概略の構成を示す模式的な平面図である。図3に示すCCDイメージセンサ12はフレーム転送型であり、半導体基板上に形成される撮像部12i、蓄積部12s、水平転送部12h、及び出力部12dを含んで構成される。 」 (ウ)「図3 」 (エ)「【0017】 撮像部12iを構成する垂直シフトレジスタの各ビットは、それぞれ画素を構成する受光画素として機能する。各受光画素はカラーフィルタを配置され、そのカラーフィルタの透過特性に応じて、受光画素が感度を有する光成分が定まる。撮像部12iはベイヤー配列のカラーフィルタアレイを配置される。 【0018】 カラーフィルタは例えば、着色した有機材料で形成され、それぞれ対応する色の可視光を透過するが、その材質上、赤外光も透過する。例えば、図4は、RGB各フィルタの分光透過特性を示す模式的なグラフであり、同図はフォトダイオードの分光感度特性も併せて示している。各色のカラーフィルタの透過率は、可視光領域ではそれぞれの着色に応じて固有の分光特性を示すが、赤外光領域では互いに類似した分光特性を示す。」 (オ)「図4 」 (カ)「【0021】 駆動回路14は、制御回路18からのタイミング制御信号等を受けて、CCDイメージセンサ12を駆動する各種クロック信号を生成しCCDイメージセンサ12に供給する。また、駆動回路14は、制御回路18の指示を受け、例えば、CCDイメージセンサ12での撮像動作に連動して可視光源20及び励起光源22それぞれのオン/オフを制御する。具体的には、可視光像の撮像時には可視光源20がオンされ、励起光源はオフされ、一方、赤外光像の撮像時には励起光源22がオンされ、可視光源20はオフされる。 【0022】 信号処理回路16は、CCDイメージセンサ12が時分割で撮像し出力する可視光像及び赤外光像それぞれの画像信号に基づいて、可視光像と赤外光像とが合成された合成画像を表す画像信号を生成する。信号処理回路16は、アナログ信号処理回路、A/D変換回路及びデジタル信号処理回路を含んで構成される。 」 (キ)「【0025】 また、デジタル信号処理回路は、可視光像、赤外光像それぞれに対して所定の処理を施して、それらを重ね合わせた合成画像の輝度データや色データを生成する。 」 (ク)「【0032】 制御回路18は、例えば、ユーザにより目標値αT1,αT2を設定される。制御回路18は、可視光像及び赤外光像の撮像が交互に行われるように、駆動回路14及び信号処理回路16を制御する。例えば、第kフレームの可視光像P1(k)、第kフレームの赤外光像P2(k)、第(k+1)フレームの可視光像P1(k+1)、第(k+1)フレームの赤外光像P2(k+1)の順に撮像が行われ、P1(k)とP2(k)とが合成されて第kフレームの合成画像Pc(k)が生成され、P1(k+1)とP2(k+1)とが合成されて第(k+1)フレームの合成画像Pc(k+1)が生成される。ここでkは整数である。」 イ 引用文献8に記載された発明 引用文献8に記載された発明を以下に認定する。 (ア)上記ア(ア)によると、引用文献8には、「ICGを蛍光造影剤として血管投与した人体等の被写体から可視光像と赤外光像との合成画像を撮影する内視鏡用撮像装置」に関する発明が、記載されている。 (イ)上記ア(ア)によると、本撮像装置は、撮像部2と表示部4とに分けられる。 (ウ)上記ア(ア)によると、撮像部2は、光源6、CCDイメージセンサ12、駆動回路14、信号処理回路16及び制御回路18を含んで構成される。 (エ)上記ア(ア)によると、撮像部2のうち光源6、CCDイメージセンサ12を含む一部分のみ先端部に格納される。 (オ)上記ア(ア)によると、光源6は、可視光を出射する可視光源20と、ICGの励起波長を含む比較的狭帯域の光を出射する励起光源22とからなり、励起光源22は、ICGの励起波長に対応して、780nmにピーク波長を有するLED等の半導体発光デバイスを用いることができる。 (カ)上記ア(イ)によると、CCDイメージセンサ12は、撮像部12iを含み、上記ア(エ)によると、撮像部12iを構成する垂直シフトレジスタの各ビットは、それぞれ画素を構成する受光画素として機能する。各受光画素はカラーフィルタを配置され、そのカラーフィルタの透過特性に応じて、受光画素が感度を有する光成分が定まる。撮像部12iはベイヤー配列のカラーフィルタアレイを配置される。 ここで、ベイヤー配列は、上記ア(ウ)にも示されているように、1列目G、B、2列目R、Gのフィルタを1組として複数配置する配列である。 (キ)上記ア(エ)によると、カラーフィルタは、それぞれ対応する色の可視光を透過するが、その材質上、赤外光も透過する。また、上記ア(オ)によると、Rフィルタは、可視光のうち赤の光の波長域を透過し、赤外光の波長域を透過し、Gフィルタは、可視光のうち緑の光の波長域を透過し、赤外光の波長域を透過し、Bフィルタは、可視光のうち青の光の波長域を透過し、赤外光の波長域を透過する。 (ク)上記ア(カ)によると、駆動回路14は、制御回路18の指示を受け、CCDイメージセンサ12での撮像動作に連動して可視光源20及び励起光源22それぞれのオン/オフを制御し、可視光像の撮像時には可視光源20がオンされ、励起光源はオフされ、一方、赤外光像の撮像時には励起光源22がオンされ、可視光源20はオフされる。 (ケ)上記ア(カ)によると、信号処理回路16は、CCDイメージセンサ12が時分割で撮像し出力する可視光像及び赤外光像それぞれの画像信号に基づいて、可視光像と赤外光像とが合成された合成画像を表す画像信号を生成する。 (コ)上記ア(カ)によると、信号処理回路16は、デジタル信号処理回路を含んで構成され、上記ア(キ)によると、デジタル信号処理回路は、可視光像、赤外光像それぞれに対して所定の処理を施して、それらを重ね合わせた合成画像の輝度データや色データを生成する。 (サ)上記ア(ク)によると、制御回路18は、信号処理回路16を制御する。 (シ)まとめ 上記(ア)ないし(サ)によると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、引用発明の各構成の符号は、説明のために当審にて付したものであり、以下、構成aないし構成kと称する。 (引用発明) (a)ICGを蛍光造影剤として血管投与した人体等の被写体から可視光像と赤外光像との合成画像を撮影する内視鏡用撮像装置であって、 (b)本撮像装置は、撮像部2と表示部4とに分けられ、 (c)撮像部2は、光源6、CCDイメージセンサ12、駆動回路14、信号処理回路16及び制御回路18を含んで構成され、 (d)撮像部2のうち、光源6、CCDイメージセンサ12を含む一部分のみ先端部に格納し、 (e)光源6は、可視光を出射する可視光源20と、ICGの励起波長を含む比較的狭帯域の光を出射する励起光源22とからなり、励起光源22は、ICGの励起波長に対応して、780nmにピーク波長を有するLED等の半導体発光デバイスを用いることができ、 (f)CCDイメージセンサ12は撮像部12iを含み、撮像部12iを構成する垂直シフトレジスタの各ビットは、それぞれ画素を構成する受光画素として機能し、各受光画素はカラーフィルタを配置され、そのカラーフィルタの透過特性に応じて、受光画素が感度を有する光成分が定まり、撮像部12iはベイヤー配列のカラーフィルタアレイを配置され、ここで、ベイヤー配列は、1列目G、B、2列目R、Gのフィルタを1組として複数配置する配列であり、 (g)カラーフィルタは、それぞれ対応する色の可視光を透過するが、その材質上、赤外光も透過し、Rフィルタは、可視光のうち赤の光の波長域を透過し、赤外光の波長域を透過し、Gフィルタは、可視光のうち緑の光の波長域を透過し、赤外光の波長域を透過し、Bフィルタは、可視光のうち青の光の波長域を透過し、赤外光の波長域を透過し、 (h)駆動回路14は、制御回路18の指示を受け、CCDイメージセンサ12での撮像動作に連動して可視光源20及び励起光源22それぞれのオン/オフを制御し、可視光像の撮像時には可視光源20がオンされ、励起光源はオフされ、一方、赤外光像の撮像時には励起光源22がオンされ、可視光源20はオフされ、 (i)信号処理回路16は、CCDイメージセンサ12が時分割で撮像し出力する可視光像及び赤外光像それぞれの画像信号に基づいて、可視光像と赤外光像とが合成された合成画像を表す画像信号を生成し、 (j)信号処理回路16は、デジタル信号処理回路を含んで構成され、デジタル信号処理回路は、可視光像、赤外光像それぞれに対して所定の処理を施して、それらを重ね合わせた合成画像の輝度データや色データを生成し、 (k)制御回路18は、信号処理回路16を制御する (a)内視鏡用撮像装置。 ウ 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1である特開2010-161459号公報には、「赤外線照射式撮像装置」(発明の名称)に関し、図面とともに次の記載がある。 なお、下線は、強調のために当審で付したものである。 (ア)「【0011】 図1は、本発明による赤外線照射式撮像装置の構成を示すブロック図である。 【0012】 図1に於いて、この赤外線照射式撮像装置は、赤外線発光ダイオード(赤外線照射手段)1と、レンズ(光学手段)2と、赤外線カットフィルタ3と、赤外線照射制御部(赤外線照射制御手段)4と、イメージセンサ(撮像手段)5と、ホワイトバランス処理部(ホワイトバランス処理手段)6と、赤外線成分分離部(赤外線成分分離手段)7と、可視光画像処理部(可視光画像処理手段)8と、赤外線画像処理部(赤外線画像処理手段)9と、輝度画像合成器(輝度画像合成手段)10と、合成比率調整操作部(合成比率調整操作手段)11と、より構成されている。 」 (イ)「【0017】 イメージセンサ5は、光学像を光電変換してRGB各色毎に撮像信号RGBxy、または、撮像信号RGBAxyを生成するものである。ホワイトバランス処理部6は、可視光撮像条件にて生成される撮像信号RGBxyのRGB各色毎にホワイトバランスを処理し、ホワイトバランス撮像信号wRGBxyを生成するものである。 【0018】 赤外線成分分離部7は、前述した撮像信号RGBxy、及び、撮像信号RGBAxyを分析して、この分析結果に基づいて赤外線照射撮像条件にて生成される撮像信号RGBAxyを可視光成分撮像信号[RGBxy]と、赤外線成分撮像信号[Axy]と、に分離するものである。 【0019】 可視光画像処理部8は、可視光成分撮像信号[RGBxy]のRGB各色毎の平面位相xyを同位相xyにリサンプリングし、マトリクス演算して輝度信号Bxyとクロマ信号Txyとを生成し、このクロマ信号Txyに対してホワイトバランス撮像信号wRGBxyに基づいて色調整を施して色調クロマ信号Cxyを生成するものである。 【0020】 また、可視光画像処理部8は、この輝度信号Bxyと色調クロマ信号Cxyとに増幅(GAIN)処理を含む画像処理を施して可視光輝度信号Yxyとクロマ画像信号(Cb,Cr)xyとを生成するものである。 」 (ウ)「【0025】 赤外線画像処理部9は、赤外線成分撮像信号[Axy]に画像処理を施して赤外線輝度信号Axyを生成するものである。輝度画像合成器10は、可視光輝度信号Yxyと赤外線輝度信号Axyとを合成して輝度画像信号Y’xyを生成するものである。 【0026】 合成比率調整操作部11は、可視光輝度信号Yxyと赤外線輝度信号Axyとの合成比率Y:Aを調整操作するものであって、この合成比率Y:Aに基づいて、赤外線照射制御部4に対して赤外線の照射量を設定するものである。この赤外線照射量の設定に基づいて、赤外線照射制御部4によって赤外線発光ダイオード1に対する点滅照射のためのPWM制御が為されるのである。 【0027】 また、この合成比率Y:Aに基づいて赤外線輝度信号Axyを演算によってアッテネートさせるように輝度画像合成器10に対して制御するようにしても良い。または、前述した赤外線照射量の設定と、このアッテネートとを合わせて合成比率Y:Aを形成するようにしても良い。」 エ 引用文献1に記載された技術 上記ウ(ウ)の「赤外線輝度信号Axyを演算によってアッテネートさせる」ことは、赤外線輝度信号Axyから演算によってアッテネートさせた補正信号を生成することであるといえる。 輝度信号同士を合成する処理として加算を行うことは慣用技術であり、上記ウ(ウ)の可視光輝度信号Yxyと赤外線輝度信号Axyとを「合成」する処理として「加算」を行うことは、当業者にとって自明な事項である。 また、上記ウ(ウ)の「輝度画像合成器10」は、「可視光輝度信号Yxyと赤外線輝度信号Axyとを合成」するものであって、「赤外線輝度信号Axyを演算によってアッテネートさせる」ものであるから、文献1技術の「輝度画像合成器10」は、赤外線輝度信号Axyを演算によってアッテネートさせて、可視光輝度信号Yxyと合成するものである。 そうすると、文献1技術の「輝度画像合成器10」は、赤外線輝度信号Axyを用いて生成された補正信号を、可視光輝度信号Yxyに加算するものであるといえる。 したがって、上記ウ(ア)?(ウ)によれば、引用文献1には、以下の技術が記載されていると認められる。 (文献1技術) 「赤外線照射式撮像装置において、 可視光成分撮像信号[RGBxy]から可視光輝度信号Yxyを生成する可視光画像処理部8と、 赤外線成分撮像信号[Axy]から赤外線輝度信号Axyを生成する赤外線画像処理部9と、 可視光輝度信号Yxyと赤外線輝度信号Axyとを合成して輝度画像信号Y’xyを生成する輝度画像合成器10と、を設け、 輝度画像合成器10は、赤外線輝度信号Axyを用いて生成された補正信号を、可視光輝度信号Yxyに加算する技術。」 オ 周知文献の記載事項 本願出願前に頒布された特開2012-209913号公報(以下、「周知文献」という。)には、「個体撮像装置及びカメラモジュール」(発明の名称)に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。 (ア)「【0044】 図7に示すように、本実施形態のイメージセンサは、ベイヤー配列を構成する2行2列の画素ブロック中、2個のG用画素のうちの一つが赤外(IR)用画素に置き換えられた構成をなしている。本実施形態のイメージセンサは、4画素を1組として、RGBの3つの色情報の他に赤外光の情報を取得する。カメラモジュールは、赤外光の情報を利用する画像処理を可能とする。 【0045】 イメージセンサは、R光を検出するR用画素セルと、G光を検出するG用画素セルと、B光を検出するB用画素セルと、赤外光を検出するIR用画素セルと、を備える。R用画素セル、G用画素セル、B用画素セルは、可視光であるRGBの信号レベルを分担して検出する可視光用画素セルである。本実施形態において、可視光用画素セルは、例えば第1の実施形態の各色光用画素セルと同様に構成されている。 【0046】 IR用画素セルは、各色光用画素セルにおけるカラーフィルタ25及びIRカットフィルタ26(図1参照)に代えて、IR透過フィルタが設けられている。IR透過フィルタは、赤外光を透過させ、R、G、Bの各色光を遮蔽する。 」 (イ)「【0049】 B用画素セルでは、第1の実施形態と同様、570nm付近から長波長となるにしたがって、図中実線で示すように分光透過率を徐々に減衰させる。さらに、B用画素セルには、670nmから730nmのうちのいずれか(例えば730nm)より長波長の光を完全にカット可能とする特性を持たせる。 【0050】 G用画素セルでは、第1の実施形態と同様、640nm付近から長波長となるにしたがって、図中実線で示すように分光透過率を徐々に減衰させる。さらに、G用画素セルには、B用画素セルと同様、670nmから730nmのうちのいずれか(例えば730nm)より長波長の光を完全にカット可能とする特性を持たせる。 【0051】 R用画素セルでは、第1の実施形態と同様、660nm付近から長波長となるにしたがって、図中実線で示すように分光透過率を徐々に減衰させる。さらに、R用画素セルには、B用画素セル及びG用画素セルと同様、670nmから730nmのうちのいずれか(例えば730nm)より長波長の光を完全にカット可能とする特性を持たせる。 【0052】 IR用画素セルのIR透過フィルタは、730nm以上の波長を持つ光を透過させる特性を持たせる。IR透過フィルタの分光透過率は、800nm付近で最大となる。イメージセンサは、画素アレイ内にIR用画素セルを配置し、かつIR用画素セルにて検出対象とする波長の光を可視光用画素セルではカットする。イメージセンサは、可視光である各色光の情報を可視光用画素セルにより取得するとともに、IR用画素セルにより赤外光の情報を取得することができる。 」 カ 周知文献に記載された技術 上記オ(イ)の「IR用画素セルのIR透過フィルタは、730nm以上の波長を持つ光を透過させる特性を持たせ」ることから、「730nm以上の波長を持つ光」は、「IR用画素セル」が検出する「赤外光」である。そして、上記オ(イ)の「R用画素セル」、「G用画素セル」、及び「B用画素セル」に関して、「730nmより長波長の光を完全にカット可能とする特性を持たせ」ることは、「赤外光に感度を持たない」ことであるといえる。 そうすると、上記オ(ア)、(イ)によれば、周知文献には、以下の技術が記載されていると認められる。 (周知文献技術) 「可視光である各色光の情報を可視光用画素セルにより取得するとともに、IR用画素セルにより赤外光の情報を取得するイメージセンサにおいて、画素ブロック中、R光を検出するR用画素セルと、G光を検出するG用画素セルと、B光を検出するB用画素セルと、赤外光を検出するIR用画素セルと、を設け、R用画素セル、G用画素セル、及びB用画素セルは、赤外光に感度を持たない技術。」 (4-3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 構成A1、A2について 構成eの「可視光源20」は、構成A1の「可視光の光源」に相当する。 構成A2の「非可視光の光源」について、本願明細書の段落0009に「非可視光とは赤外または近赤外(以下IR)の光の波長帯域のことを言うこととする。」と記載されていること、「近赤外光」の波長帯域は700nm?2500nmであることは、技術常識であることから、構成A2の「非可視光の光源」は、700nm?2500nmの波長帯域の光を意味するものといえる。 よって、構成eの「励起光源22」である「780nmにピーク波長を有するLED等の半導体発光デバイス」は、構成A2の「非可視の光源」に相当する。 イ 構成A3、A31について 構成fの「受光画素」は、構成A3の「画素」に相当する。 構成fによると、「受光画素」が「感度」を有する光成分は、配置された「カラーフィルタ」の透過特性に応じて定まるものであり、さらに、構成gによると、「カラーフィルタ」として、可視光のうち赤の光の波長域を透過し、赤外光の波長域を透過するRフィルタ、可視光のうち緑の光の波長域を透過し、赤外光の波長域を透過するGフィルタ、及び可視光のうち青の光の波長域を透過し、赤外光の波長域を透過するBフィルタを用いている。 また、構成fの「ベイヤー配列」は、1列目G、B、2列目R、Gのフィルタを1組として配置する配列である。 そうすると、構成fの「各受光画素」は、可視光のうち緑の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と、可視光のうち青の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と、可視光のうち赤の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と、可視光のうち緑の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素とを、同一の組に配置したものであり、「同一の撮像素子上にそれぞれ異なる波長域に感度を持つ複数の画素が配置された」ものであるといえる。 さらに、構成fの「ベイヤー配列」は、上述した組を複数配置する配列であるから、構成fの「各受光画素」は、複数の「撮像素子」、つまり「撮像素子群」に配置されたものであるといえる。 したがって、構成fの「各受光素子」は、構成A3の「同一の撮像素子上にそれぞれ異なる波長域に感度を持つ複数の画素が配置された撮像素子群」に相当する。 また、構成fと構成A31とは、「前記撮像素子群の各撮像素子は、4つの画素を備え」る点で共通する。 ただし、当該「4つの画素」が、本件補正発明では、「前記可視光のうち赤の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち青の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち緑の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記非可視光に感度をもつ画素と」であるのに対して、引用発明では、「可視光のうち緑の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と、可視光のうち青の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と、可視光のうち赤の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と、可視光のうち緑の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と」である点で、両発明は相違する。 ウ 構成Aについて 構成iの「CCDイメージセンサ12」が時分割で撮像し出力する「可視光像」の「可視光」は、構成Aの「可視光」に相当するものであり、「赤外光像」の「赤外光」は、上述したように本願明細書の段落0009に「非可視光とは赤外または近赤外(以下IR)の光の波長帯域のことを言うこととする。」と記載されていることから、構成Aの「非可視光」に相当するものである。 よって、構成iの「可視光像及び赤外光像それぞれの画像信号」は、構成Aの「可視光信号と非可視光信号」に相当する。 構成iの「CCDイメージセンサ12」は、可視光像の画像信号と赤外光像の画像信号を得るものであり、CCDイメージセンサが被写体を撮像することは技術常識である。 そして、構成dの「内視鏡の先端部」は、「CCDイメージセンサ12」を含むから、被写体を撮像して可視光像の画像信号と赤外光像の画像信号を得るものであるといえ、構成Aの「撮像部」に相当する。 よって、本件補正発明と引用発明とは、「被写体を撮像して可視光信号と非可視光信号を得る撮像部」を有する点で一致する。 エ 構成B、C、D、D1について 構成iの「信号処理回路16」の「合成画像を表す画像信号を生成」することは、可視光像の画像信号と赤外光像の画像信号とを合成することであって、可視光像の画像信号と赤外光像の画像信号とを用いて一方の画像信号を他方の画像信号を用いて補正する補正処理であるといえる。 ただし、合成される可視光像の画像信号と赤外光像の画像信号とが「輝度」信号であることまでは特定されておらず、また、合成する具体的な方法として、「前記非可視光輝度信号を用いて生成された補正信号を、前記可視光輝度信号に加算すること」までは特定されていない。 よって、構成iの「信号処理回路16」と構成Dの「画像補正処理部」とは、「前記可視光信号と前記非可視光信号とを用いて補正処理を行う」点で共通する。 ただし、「補正処理」に用いる信号が、構成Dの「画像補正処理部」では、「前記可視光輝度信号」と「前記非可視光輝度信号」であるのに対し、構成iの「信号処理回路16」では、「可視光像及び赤外光像それぞれの画像信号」である点、及び「補正処理」が、構成D1の「画像補正処理部」では、「前記非可視光輝度信号を用いて生成された補正信号を、前記可視光輝度信号に加算すること」で行われるのに対して、構成iの「信号処理回路16」では、そのように行われていない点で、両発明は相違し、 当該相違に伴い、本件補正発明においては「前記撮像部から出力される前記可視光信号を用いて可視光輝度信号を生成する第一輝度生成部」(構成B)と「前記撮像部から出力される前記非可視光信号を用いて非可視光輝度信号を生成する第二輝度生成部」(構成C)とを備えるのに対して、引用発明では、そのような「第一輝度生成部」と「第二輝度生成部」とを備えていない点で、両発明は相違する。 オ 構成Eについて 構成kの「制御回路18」は、「信号処理回路16」を制御するものである。 したがって、構成kの「制御回路18」は、「少なくとも前記画像補正処理部制御する制御部」に相当する。 カ 構成E1、A4について 上記アと同様に、構成hの「可視光源20」は、構成E1の「可視光の光源」に、構成hの「励起光源22」は、構成E1の「非可視の光源」に相当する。 構成hの「制御回路18」は、可視光源20及び励起光源22それぞれのオン/オフの指示を行うものであって、可視光源20及び励起光源22それぞれの点灯を行うものであるといえる。 構成hの「制御回路18」は、可視光源20及び励起光源22それぞれのオン/オフの指示を、CCDイメージセンサ12での撮像動作に連動して行うものであって、具体的には、可視光像の撮像時には可視光源20がオンされ、励起光源はオフされ、一方、赤外光像の撮像時には励起光源22がオンされ、可視光源20はオフされるように、行うものである。そうすると、「制御回路18」は、可視光源20及び励起光源22のオンを、可視光像の撮像及び赤外光像の撮像に対して、タイミングを合わせて、すなわち同期させて、行うものである。ここで、撮像が露光時間の間行われることは、技術常識である。 また、構成hの「制御回路18」による、以上のような、可視光源20及び励起光源22のオンの制御が行われる結果、構成hの「CCDイメージセンサ12」は、可視光像の撮像及び赤外光像の撮像を、可視光源20及び励起光源22のオンに同期して行うものであるといえる。 したがって、構成E1及びA4と構成hとは、「前記制御部は、前記可視光の光源及び前記非可視光の光源の点灯を、それぞれの露光時間の間、同期させて、行い」の点で一致し、さらに、「前記撮像部は、前記撮像素子群により、前記可視光信号と前記非可視光信号とを、前記点灯に同期して取得」する点で一致する。 キ 構成Fについて 構成aの「内視鏡用撮像装置」は、「撮像装置」である。 構成Fの「撮像装置」は、構成A?E1を含むものであるが、構成A?E1については上記ア?カのとおりであり、構成Fと構成aとは、本件補正発明の構成A31、B、C、D、D1を除いて、「撮像装置」である点で共通する。 ク まとめ 以上によると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 [一致点] (A)被写体を撮像して可視光信号と非可視光信号を得る撮像部と、 (D’)前記可視光信号と前記非可視光信号とを用いて補正処理を行う画像補正処理部と、 (E)少なくとも前記画像補正処理部を制御する制御部と、を備え、 (A)前記撮像部は、 (A1)可視光の光源と、 (A2)非可視光の光源と、 (A3)同一の撮像素子上にそれぞれ異なる波長域に感度を持つ複数の画素が配置された撮像素子群と、を備え、 (A31’)前記撮像素子群の各撮像素子は、4つの画素を備え、 (E1)前記制御部は、前記可視光の光源及び前記非可視光の光源の点灯を、それぞれの露光時間の間、同期させて、行い、 (A4)前記撮像部は、前記撮像素子群により、前記可視光信号と前記非可視光信号とを、前記点灯に同期して取得し、 (F)ことを特徴とする撮像装置。」 [相違点] (相違点1)「補正処理」に用いる信号が、本件補正発明では、「前記可視光輝度信号」と「前記非可視光輝度信号」であるのに対し、引用発明では、「可視光像及び赤外光像それぞれの画像信号」である点、「補正処理」が、本件補正発明では、「前記非可視光輝度信号を用いて生成された補正信号を、前記可視光輝度信号に加算すること」で行われるのに対して、引用発明では、そのように行われていない点で、両発明は相違し、 当該相違に伴い、本願発明においては「前記撮像部から出力される前記可視光信号を用いて可視光輝度信号を生成する第一輝度生成部」と「前記撮像部から出力される前記非可視光信号を用いて非可視光輝度信号を生成する第二輝度生成部」とを備えるのに対して、引用発明では、そのような「第一輝度生成部」と「第二輝度生成部」とを備えていない点で、両発明は相違する。 (相違点2)「前記撮像素子群の各撮像素子」が備える「4つの画素」が、本件補正発明では、「前記可視光のうち赤の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち青の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち緑の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記非可視光に感度をもつ画素と」であるのに対して、引用発明では、「可視光のうち緑の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と、可視光のうち青の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と、可視光のうち赤の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と、可視光のうち緑の光の波長域に感度を有し、赤外光の波長域に感度を有する受光画素と」である点で、両発明は相違する。 (4-4)判断 ア 相違点1について 上記(4-2)エで述べたように、引用文献1には、以下の文献1技術が記載されている。 (文献1技術) 「赤外線照射式撮像装置において、 可視光成分撮像信号[RGBxy]から可視光輝度信号Yxyを生成する可視光画像処理部8と、 赤外線成分撮像信号[Axy]から赤外線輝度信号Axyを生成する赤外線画像処理部9と、 可視光輝度信号Yxyと赤外線輝度信号Axyとを合成して輝度画像信号Y’xyを生成する輝度画像合成器10と、を設け、 輝度画像合成器10は、赤外線輝度信号Axyを用いて生成された補正信号を、可視光輝度信号Yxyに加算する技術。」 引用発明は、可視光像、赤外光像それぞれに対して所定の処理を施して、それらを重ね合わせた合成画像の輝度データを生成するものであるが(構成j)、その具体的な手法として、文献1技術を適宜採用することにより、相違点1に係る「補正処理」に用いる信号を、「前記可視光輝度信号」と「前記非可視光輝度信号」とし、「補正処理」が、「前記非可視光輝度信号を用いて生成された補正信号を、前記可視光輝度信号に加算すること」で行われる構成としつつ、「前記撮像部から出力される前記可視光信号を用いて可視光輝度信号を生成する第一輝度生成部」と「前記撮像部から出力される前記非可視光信号を用いて非可視光輝度信号を生成する第二輝度生成部」とを備える構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、相違点1に係る構成は、引用発明及び文献1技術に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。 イ 相違点2について 上記(4-2)カで述べたように、周知文献に周知文献技術として、「可視光である各色光の情報を可視光用画素セルにより取得するとともに、IR用画素セルにより赤外光の情報を取得するイメージセンサにおいて、画素ブロック中、R光を検出するR用画素セルと、G光を検出するG用画素セルと、B光を検出するB用画素セルと、赤外光を検出するIR用画素セルと、を設け、R用画素セル、G用画素セル、及びB用画素セルは、赤外光に感度を持たない技術」が記載されているように、「可視光である各色光の情報を可視光用画素により取得するとともに、IR用画素により赤外光の情報を取得するイメージセンサの画素ブロック中に、R光を検出するR用画素と、G光を検出するG用画素と、B光を検出するB用画素と、赤外光を検出するIR用画素と、を設け、R用画素、G用画素、及びB用画素は、赤外光に感度を持たない」ことは周知技術に過ぎない。 引用発明において、「前記撮像素子群の各撮像素子」が備える「4つの画素」として、当該周知技術を適宜採用し、相違点2に係る「前記可視光のうち赤の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち青の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち緑の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記非可視光に感度をもつ画素と」を用いる構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、相違点1に係る構成は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。 ウ 効果等について 本件補正発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本件補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものではない。 (4-5)まとめ 以上のように、本件補正発明は、引用文献8に記載された発明、引用文献1に記載された技術、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年7月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年1月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?10に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1-11に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 そして、請求項1に係る発明は、引用文献7?11の各々に記載された発明に、引用文献1、2、5に記載された技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 引用文献1.特開2010-161459号公報 引用文献2.特開2008-252639号公報 引用文献5.特開2007-215088号公報 引用文献7.特表2003-529432号公報 引用文献8.特開2009-066121号公報 引用文献9.特開2009-182379号公報 引用文献10.特開2011-120916号公報 引用文献11.特開2010-022700号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8に記載された発明(引用発明)は、上記第2の[理由]2(4)(4-2)イの「引用文献8に記載された発明」に認定したとおりである。 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載された技術(文献1技術)は、上記第2の[理由]2(4)(4-2)エの「引用文献1に記載された技術」に認定したとおりである。 本願出願前に頒布された周知文献に記載された技術(周知文献技術)は、は、上記第2の[理由]2(4)(4-2)カの「周知文献に記載された技術」に認定したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記撮像素子群の各撮像素子は、前記可視光のうち赤の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち青の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記可視光のうち緑の光の波長域に感度を持ち、前記非可視光には感度を持たない画素と、前記非可視光に感度をもつ画素と、を備え」に係る限定事項を、当該限定事項よりも上位概念である「前記複数の画素のうち、少なくとも1つの画素は、前記可視光の波長域に、少なくとも1つの画素は、前記非可視光の波長域に感度を有し」に変更したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を実質的に全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(4)(4-3)、(4-4)に記載したとおり、引用文献8に記載された発明、引用文献1に記載された技術、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献8に記載された発明、引用文献1に記載された技術、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献8に記載された発明、引用文献1に記載された技術、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-09-04 |
結審通知日 | 2019-09-10 |
審決日 | 2019-09-30 |
出願番号 | 特願2013-90882(P2013-90882) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉川 康男 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
藤原 敬利 小池 正彦 |
発明の名称 | 撮像装置及び撮像システム |
代理人 | 特許業務法人 武和国際特許事務所 |