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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08G
管理番号 1357204
審判番号 不服2018-16736  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-14 
確定日 2019-12-03 
事件の表示 特願2015-218628「情報表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017- 91093、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月6日の出願であって、平成30年2月6日付けの拒絶理由の通知に対し、同年4月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年9月28日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年12月14日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年9月28日付け)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1?2に係る発明は、以下の引用文献1?4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-80422号公報
2.特開2009-51346号公報
3.特開2015-81057号公報
4.国際公開第2012/169352号

第3 本願発明
本願の請求項1?2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明2」という。)は、平成30年4月13日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
車両の車載表示器に画像を表示させる情報表示装置であって、
平面視した前記車両に対応する車両オブジェクトと、前記車両の前方に対応する前記車両オブジェクトの前方表示領域と、前記車両の後方に対応する前記車両オブジェクトの後方表示領域と、前記車両の左側に対応する前記車両オブジェクトの左側表示領域と、前記車両の右側に対応する前記車両オブジェクトの右側表示領域と、前記車両オブジェクトを囲み、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域を横断するように配置される円形の円オブジェクトとを前記車載表示器に表示させる表示制御部と、
前記車両の周囲の物体を検出するセンサの検出結果に基づいて、前記車両の周囲の物体が前記車両に接近するリスクを示すリスク度を、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域ごとに算出するリスク度算出部と、
前記リスク度算出部によって算出された前記リスク度に基づいて、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域の表示色を決定する表示色決定部と、
前記車両を自動運転制御する自動運転システムから前記自動運転制御中の前記車両の車線変更方向又は右左折方向を示す進行方向情報を取得する取得部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域のうち少なくとも前記円オブジェクトの内側を前記表示色決定部により決定された表示色で表示させ、前記取得部により取得された前記進行方向情報に基づいて、前記左側表示領域及び前記右側表示領域のうち前記車両の車線変更方向又は右左折方向に対応する表示領域の少なくとも前記円オブジェクトの内側に前記車両の車線変更方向又は右左折方向を表す方向オブジェクトを表示させる、
情報表示装置。
【請求項2】
前記左側表示領域及び前記右側表示領域のそれぞれは、前記前方表示領域よりも大きい請求項1に記載の情報表示装置。」

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下、同様。)。

ア 「【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両用表示装置10は、制御部11、車両情報検出部12、情報通信部13、記憶部14、表示出力部15、音声出力部16などを備えている。
制御部11は、図示しないCPU、RAM、ROMおよびI/Oバスなどを有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御部11は、ROMあるいは記憶部14などの記憶媒体に記憶されているコンピュータプログラムに従って、情報通信動作や情報管理動作、ならびに、詳しくは後述する警報表示動作など車両用表示装置10の動作全般を制御する。また、この制御部11は、コンピュータプログラムを実行することにより、情報送信処理部21、情報受信処理部22、方角特定処理部23、距離特定処理部24、表示制御処理部25、危険度特定処理部26をソフトウェアによって仮想的に実現する。なお、方角特定処理部23は、特許請求の範囲に記載した方角特定手段に相当し、距離特定処理部24は、特許請求の範囲に記載した距離特定手段に相当し、表示制御処理部25は、特許請求の範囲に記載した表示制御手段に相当し、危険度特定処理部26は、特許請求の範囲に記載した危険度特定手段に相当する。」

イ 「【0018】
表示出力部15は、特許請求の範囲に記載した表示部に相当するものであり、この場合、図2に示すように、車両用表示装置10の本体に一体的に組み込まれている。この表示出力部15は、自車両マーク15aと、この自車両マーク15aの周囲に環状、この場合、円環状に設けられた発光表示領域15bとから構成されている。自車両マーク15aは、車両用表示装置10が搭載された車両、つまり、自車両を概念的に示すマークである。発光表示領域15bは、例えばLEDなどの複数の発光素子が円環状に配列されて構成されたものであり、制御部11から与えられる発光出力指令信号に応じて発光することで、他車両の存在を、詳しくは後述する種々の表示態様によって提示する機能を担う。なお、この場合、車両用表示装置10の上下方向が自車両の前後方向に対応し、車両用表示装置10の左右方向が自車両の左右方向に対応している。なお、本実施形態では、表示出力部15を上記したようにメカニカルな構成とする例を示したが、表示出力部15は、例えば、図示しない液晶パネルなどに画像として設ける構成としてもよい。」

ウ 「【0020】
情報受信処理部22は、情報通信部13を介して、他車両から送信される当該他車両の車両情報を受信する情報受信処理を実行する。制御部11は、この情報受信処理部22が受信した他車両の車両情報を、他車両情報リストに格納して記憶部14に格納する。
方角特定処理部23は、自車両の現在位置情報および他車両の現在位置情報に基づいて、自車両に対して他車両が存在する方角を特定する方角特定処理を実行する。また、距離特定処理部24は、自車両の現在位置情報および他車両の現在位置情報に基づいて、自車両と他車両との間の距離を特定する距離特定処理を実行する。
【0021】
表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち方角特定処理部23によって特定される方角、つまり、自車両に対して他車両が存在する方角に対応する部分を、距離特定処理部24によって特定される距離、つまり、自車両と他車両との間の距離に応じた長さで表示、この場合、発光させる発光制御処理を実行する。即ち、この発光制御処理では、表示制御処理部25は、図3に示すように、自車両の現在位置を原点とする固定座標系に、自車両の包囲領域を示す円C_(HOST)、および、他車両の包囲領域を示す円C_(REMOTE)を配置する。この場合、自車両に対して他車両が存在する方角は角度θによって特定することができ、自車両と他車両との間の距離は、距離dによって特定することができる。そして、表示制御処理部25は、自車両の包囲領域を示す円C_(HOST)の中心、つまり、自車両の現在位置から他車両の包囲領域を示す円C_(REMOTE)に接線Lcを引く。そして、その接線Lcによって円C_(HOST)を切り取り、その切り取った円弧状の部分を、発光制御処理によって発光させる発光部分Eとして特定する。そして、表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち発光部分Eに対応する部分を所定の発光色によって発光させる。このようにして、表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち方角特定処理部23によって特定される方角に対応する部分を、距離特定処理部24によって特定される距離に応じた長さで、所定の発光色によって発光させるようになっている。
【0022】
危険度特定処理部26は、自車両に対する他車両の「危険度」を特定する危険度特定処理を実行する。この「危険度」とは、この場合、他車両に自車両が衝突する可能性を示すパラメータであり、危険度が高いほど、他車両に自車両が衝突する可能性が高く、危険度が低いほど、他車両に自車両が衝突する可能性が低い。制御部11は、危険度特定処理部26によって特定された「危険度」に応じて、光の三原色であるRGB(R:Red、G:Green、B:Blue)の各成分を調整することにより、発光表示領域15bの発光部分Eの発光色を設定するようになっている。この場合、制御部11は、危険度が高いほど発光色のR成分を大きくし、危険度が低いほど発光色のB成分を大きくする調整する。また、制御部11は、危険度判定周期をカウントする図示しないタイマを有しており、このタイマによるカウント値が所定値に達するごとに、危険度特定処理部26による危険度特定処理を周期的に実行するように構成されている。なお、制御部11は、危険度特定処理部26による危険度特定処理を周期的に実行するのではなく、例えば、他車両の車両情報を受信するごとに実行するように構成してもよい。」

エ 「【0077】
発光表示領域15bは、環状に設けるのであれば、円環状に限られるものではない。従って、発光表示領域を、例えば、楕円環状や多角形環状に設けてもよい。また、発光表示領域を、連続的に環状に設けるのではなく、断続的に環状に設けてもよい。
上記した車両用表示装置10は、主として単体の装置として実現されるものであるが、これに限られるものではなく、他の装置と連携して実現する構成としてもよい。即ち、車両用表示装置10は、例えばカーナビゲーション装置などの車載装置に無線あるいは有線の通信回線を介して接続する構成とし、表示出力部15を車載装置の画面上に表示画面として設ける構成としてもよい。また、車両用表示装置10は、例えば多機能型携帯通信端末などに無線あるいは有線の通信回線を介して接続する構成とし、表示出力部15を多機能型携帯通信端末の画面上に表示画面として設ける構成としてもよい。」

オ 前記記載事項ア及びエによると、車両用表示装置10は、車載装置の画面上に表示画面として設けられる表示出力部15を備えていると理解できる。

カ 前記記載事項ア、イ及びエによると、表示出力部15を車載装置の画面上に表示画面として設けるものであるから、車載装置の画面上に表示出力部15を設けるための表示制御を行う必要があり、この表示制御は表示制御処理部25で実行されるものと解される。すると、表示制御処理部25は、自車両マーク15aと、自車両マーク15aの周囲に円環状に設けられた発光表示領域15bとから構成されている表示出力部15を車載装置の画面上に表示画面として設けていると理解できる。

キ 前記記載事項ウによると、制御部11は、危険度特定処理部26によって特定された危険度に応じて、発光表示領域15bの発光部分Eの発光色を設定していると理解できる。

ク 前記記載事項ウによると、表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち、自車両に対して他車両が存在する方角に対応する部分を、自車両と他車両との間の距離に応じた長さで発光させる発光制御処理を実行するものであり、その発光色は、制御部11で設定した発光部分Eの発光色であると解される。すると、表示制御処理部25は、発光表示領域15bのうち、自車両に対して他車両が存在する方角に対応する部分を、自車両と他車両との間の距離に応じた長さで、かつ制御部11で設定した発光色で発光させる発光制御処理を実行するものと理解できる。

(2)引用発明
したがって、前記引用文献1の記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明、(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車載装置の画面上に表示画面として設けられる表示出力部15を備えた車両用表示装置10であって、
自車両マーク15aと、前記自車両マーク15aの周囲に円環状に設けられた発光表示領域15bとから構成されている前記表示出力部15を前記車載装置の画面上に表示画面として設ける表示制御処理部25と、
自車両に対する他車両の危険度を特定する危険度特定処理を実行する危険度特定処理部26と、
前記危険度特定処理部26によって特定された危険度に応じて、前記発光表示領域15bの発光部分Eの発光色を設定している制御部11と、
を備え、
前記表示制御処理部25は、前記発光表示領域15bのうち、自車両に対して他車両が存在する方角に対応する部分を、自車両と他車両との間の距離に応じた長さで、かつ前記制御部11で設定した前記発光色で発光させる発光制御処理を実行する、
車両用表示装置10」

2 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載され、自車両の周囲の障害物の画像などを表示できる周辺監視用表示制御装置及び画像表示制御システムに関する。」

イ 「【0031】
よって、例えば図2に示す様に、電子カメラ11によって、車両の前方の領域Aを撮影することにより、領域Aの走行環境を把握(その領域に存在する障害物の位置や速度等の状態を認識)することができる。レーダー5やレーザー7により、車両前後の領域Bの走行環境を把握することができる。電子カメラ11やレーザー7により、車両左右後方の領域Cの走行環境を把握することができる。電子カメラ11やレーザー7や超音波ソナー9により、車両左右の領域Dの走行環境を把握することができる。なお、車両の周辺を監視する装置は、表示内容に応じて、適宜選択すればよい。
【0032】
従って、前記周辺監視用表示制御装置1では、後に詳述する様に、レーダー5、レーザー7、超音波ソナー9、電子カメラ11、路車間通信装置13、車速センサ15、シフトポジションセンサ17、ウインカスイッチ19等から得られる情報などに基づいて、走行環境の認識(周囲の認識)や自車両の走行状態の認識を行い、その認識結果に基づいて、自車両や障害物(他車両や人や固定物など)を模式的に示すマークを表示するための処理を行い、その処理結果に基づいて、ディスプレイ21に自車両や障害物などのマークの表示を行う。」

ウ 「【0060】
なお、本実施形態では、後方車両の接近速度に応じて表示レンジを切り換えたが、例えば、自車両と後方車両との相対位置及び相対速度に応じて表示レンジを切り換えてもよい。例えば車間時間(=相対位置/相対速度)が大きいほど、表示レンジを大きくするように切り換えてもよい。」

3 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、推測された乗員の意図に応じた進行方向へ車両が移動することを乗員に提示する車両用表示装置に関する。」

イ 「【0015】
本実施形態の提示装置30は、自車両が備える自動運転制御装置200の自動運転機能が動作しているときに、自動運転機能のタスク情報を提示する。本実施形態におけるタスク情報とは、自動制御装置200の制御装置(コンピュータ)の自動運転機能が実行中乃至実行しようとする仕事(制御内容)の情報である。タスク情報は、仕事(制御内容)ごとに定義される。本実施形態のタスク情報は、発進、加速、減速、停止などのタスク(制御内容)、右折、左折、右レーンへの車線変更、左レーンへの車線変更などのタスク(制御内容)、追い越しなどのタスクを含む。
【0016】
本実施形態の提示装置30は、自車両が走行する経路上に検出された分岐路の手前、つまり自車両の現在位置と分岐地点との距離が所定距離以下に接近した場合において、分岐路において自車両を操作する乗員が意図すると推測された進行方向へ自車両を移動させるタスクを提示する。
【0017】
乗員が意図すると推測された進行方向とは、乗員が運転する車両の進行方向である。乗員が意図すると推測された進行方向の求め方は特に限定されないが、例えば、乗員が入力した目的地等に基づいてナビゲーション装置70が算出した現在位置における進行方向であってもよい。また、乗員が過去に走行した道路(リンク)ごとに記憶された走行履歴回数(又は走行履歴頻度)に基づいて、走行履歴回数(又は走行履歴頻度)が高い経路へ向かう際の進行方向であってもよい。
【0018】
本実施形態の提示装置30は、ナビゲーション装置70の地図情報71を参照し、現在位置から推測された目的地に至るまでの経路上に存在する分岐地点を抽出し、その分岐地点に所定距離以内に接近したときに、進行方向へ自車両を移動させるタスクを提示する。本実施形態の提示装置30は、これから自車両を移動させる進行方向を示すことにより、進行方向へ自車両を移動させるタスクを提示する。車両運転中の乗員に進行方向を示せば、乗員は、これから車両がその方向に移動するであろうことを理解できるからである。」

ウ 「【0020】
図2Aに示すように、本実施形態の提示装置30は、6つの矢印によって「所定の進行方向へ自車両を移動させるタスク」を示す。1の符号が付された矢印は、自車両を直進させるタスクを示す。2の符号が付された矢印は、自車両を右レーンに車線変更させるタスクを示す。3の符号が付された矢印は、自車両を左レーンに車線変更させるタスクを示す。4の符号が付された矢印は、自車両を次の交差点で右折させるタスクを示す。5の符号が付された矢印は、自車両を次の交差点で左折させるタスクを示す。6の符号が付された矢印は、自車両を一時停止させるタスクを示す。本実施形態の提示装置30は、実行されるタスクに応じて1?6の符号が付された矢印が識別できるように表示する。表示の態様は特に限定されず、各矢印が識別できればよい。」

4 引用文献4の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「[0001]本発明は、周辺監視装置、特に、作業車両の周囲を監視して監視結果を表示装置に表示する周辺監視装置に関する。」

イ 「[0041]なお、俯瞰画像50上においては、各カメラ11?16の撮影範囲11C?16Cに対応する複数の領域が区画されて表示される。区画された領域を図6に示している。図6において、「前」、「右前」、「左前」、「右後」、「左後」、「後」が、それぞれ第1?第6カメラ11?16の撮影範囲11C?16Cに対応している。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
以下、本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「車両用表示装置10」は、本願発明1の「情報表示装置」に相当し、引用発明の「車載装置の画面上に表示画面として設けられる表示出力部15を備えた車両用表示装置10」は、車載装置の表示画面に表示出力部15を画像として表示するものであるから、本願発明1の「車両の車載表示器に画像を表示させる情報表示装置」に相当する。
引用発明の「自車両マーク15a」は、引用文献1の図2の図示内容を考慮すると、車両を平面視したものといえるから、本願発明1の「平面視した前記車両に対応する車両オブジェクト」に相当する。また、引用発明の「前記自車両マーク15aの周囲に円環状に設けられた発光表示領域15b」は、車両の前方表示領域、後方表示領域、左側表示領域及び右側表示領域に対応する表示領域から構成されているとみることができ、発光表示領域15bの最も外側を規定する円は、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域を横断するとともに、これらと自車両マーク15aとを囲むように配置されているといえるから、引用発明の「前記自車両マーク15aの周囲に円環状に設けられた発光表示領域15b」の最も外側を規定する円は、本願発明1の「前記車両の前方に対応する前記車両オブジェクトの前方表示領域と、前記車両の後方に対応する前記車両オブジェクトの後方表示領域と、前記車両の左側に対応する前記車両オブジェクトの左側表示領域と、前記車両の右側に対応する前記車両オブジェクトの右側表示領域と、前記車両オブジェクトを囲み、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域を横断するように配置される円形の円オブジェクト」に相当する。さらに、引用発明の「表示制御処理部25」は、本願発明1の「表示制御部」に相当するから、引用発明の「前記車載装置の画面上に表示画面として設ける表示制御処理部25」は、本願発明1の「前記車載表示器に表示させる表示制御部」に相当する。
引用発明の「自車両」及び「他車両」は、それぞれ本願発明1の「車両」及び「車両の周囲の物体」に相当する。そして、引用発明の「自車両に対する他車両の危険度を特定する危険度特定処理を実行する危険度特定処理部26」で特定される「危険度」は、前記第4 1(1)の記載事項ウによると、他車両に自車両が衝突する可能性を示すパラメータであるから、他車両が自車両に接近する可能性を示しているともいえる。すると、引用発明の「危険度」は、本願発明1の「リスク度」に相当し、引用発明の「自車両に対する他車両の危険度を特定する危険度特定処理を実行する危険度特定処理部26」と本願発明1の「前記車両の周囲の物体を検出するセンサの検出結果に基づいて、前記車両の周囲の物体が前記車両に接近するリスクを示すリスク度を、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域ごとに算出するリスク度算出部」とは、「前記車両の周囲の物体が前記車両に接近するリスクを示すリスク度を算出するリスク度算出部」である点で共通する。
引用発明の「前記危険度特定処理部26によって特定された危険度に応じて、前記発光表示領域15bの発光部分Eの発光色を設定している制御部11」及び「前記表示制御処理部25は、前記発光表示領域15bのうち、自車両に対して他車両が存在する方角に対応する部分を、自車両と他車両との間の距離に応じた長さで、かつ前記制御部11で設定した前記発光色で発光させる発光制御処理を実行する」という事項は、危険度特定処理部26によって特定された危険度に応じて、発光表示領域15bの各部分の表示色を決定していると解されるから、本願発明1の「前記リスク度算出部によって算出された前記リスク度に基づいて、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域の表示色を決定する表示色決定部」に相当する。
引用発明の「前記表示制御処理部25は、前記発光表示領域15bのうち、自車両に対して他車両が存在する方角に対応する部分を、自車両と他車両との間の距離に応じた長さで、かつ前記制御部11で設定した前記発光色で発光させる発光制御処理を実行する」という事項は、さらに、発光表示領域15bの最も外側を規定する円の内側を、制御部11で設定された発光色で発光させるものであるから、本願発明1の「前記表示制御部は、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域のうち少なくとも前記円オブジェクトの内側を前記表示色決定部により決定された表示色で表示させ」るという事項に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「車両の車載表示器に画像を表示させる情報表示装置であって、
平面視した前記車両に対応する車両オブジェクトと、前記車両の前方に対応する前記車両オブジェクトの前方表示領域と、前記車両の後方に対応する前記車両オブジェクトの後方表示領域と、前記車両の左側に対応する前記車両オブジェクトの左側表示領域と、前記車両の右側に対応する前記車両オブジェクトの右側表示領域と、前記車両オブジェクトを囲み、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域を横断するように配置される円形の円オブジェクトとを前記車載表示器に表示させる表示制御部と、
前記車両の周囲の物体が前記車両に接近するリスクを示すリスク度を算出するリスク度算出部、
前記リスク度算出部によって算出された前記リスク度に基づいて、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域の表示色を決定する表示色決定部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域のうち少なくとも前記円オブジェクトの内側を前記表示色決定部により決定された表示色で表示させる、
情報表示装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
リスク度算出部について、本願発明1においては、「前記車両の周囲の物体を検出するセンサの検出結果に基づいて」、リスク度を、「前記前方表示領域、前記後方表示領域、前記左側表示領域及び前記右側表示領域ごとに」算出しているのに対し、引用発明においては、そのようなセンサを備えておらず、また、前方表示領域、後方表示領域、左側表示領域及び右側表示領域ごとにリスク度を算出しているかが明確でない点。

[相違点2]
方向オブジェクトの表示について、本願発明1においては、「前記車両を自動運転制御する自動運転システムから前記自動運転制御中の前記車両の車線変更方向又は右左折方向を示す進行方向情報を取得する取得部」を備え、表示制御部は、「前記取得部により取得された前記進行方向情報に基づいて、前記左側表示領域及び前記右側表示領域のうち前記車両の車線変更方向又は右左折方向に対応する表示領域の少なくとも前記円オブジェクトの内側に前記車両の車線変更方向又は右左折方向を表す方向オブジェクトを表示させる」のに対し、引用発明においては、そのような事項を有しない点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点2から検討する。
前記第4 3の記載事項ア?ウ、及び引用文献3の図2A?図2Eの図示内容によると、引用文献3には、自動運転制御装置200の自動運転機能が動作しているときに、自動運転機能の右折、左折、右レーンへの車線変更、左レーンへの車線変更などのタスク情報を、矢印によって提示する提示装置30が記載されている。
そして、引用発明と引用文献3に記載された事項とは、ともに車両用の表示装置に関するものである点で共通するものの、引用発明は、自車両が自動運転されるものであるか言及されていないのに対し、引用文献3に記載された事項は、自動運転状態時の表示に関するものであるから、この点で両者は異なり、また、引用発明は「自車両の近くに存在する他車両のみならず自車両の遠くに存在する他車両を認識するための情報も表示することができ、しかも、その情報をより把握し易い態様で表示することができる車両用表示装置を提供すること」(引用文献1の段落【0005】)を課題とするのに対し、引用文献3に記載された事項は「車載システムの動作に対して乗員が違和感を感じないようにすること」(引用文献3の段落【0005】)を課題としており、両者が解決しようとする課題も異なるものである。これらを総合すると、自動運転されるものであるか言及されていない引用発明に対し、自動運転状態時の表示に関する引用文献3に記載された事項を適用する動機付けは存在しない。
仮に、発光表示領域15bを危険度に応じて設定された発光色で発光させる引用発明に、引用文献3に記載された自動運転機能の右折、左折、右レーンへの車線変更、左レーンへの車線変更などのタスク情報を矢印によって提示するという事項の適用を試みたとしても、このような矢印を、発光表示領域15bの最も外側を規定する円の内側に表示させることまでは、当業者といえども、容易に想到することはできないものである。
また、引用文献2,4には、車両の車線変更方向又は右左折方向を表す方向オブジェクトを表示させることについて、何等、記載されておらず、引用文献2,4に記載された事項を勘案しても、本願発明1の前記相違点2に係る発明特定事項を設けることは、当業者といえども、容易に想到することができないものである。

したがって、本願発明1は、相違点1について検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項及び引用文献4に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
請求項2は請求項1を引用するものであり、本願発明2も、本願発明1の前記相違点2に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2は、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項及び引用文献4に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?本願発明2(請求項1?2に係る発明)は、当業者が引用発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項及び引用文献4に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-19 
出願番号 特願2015-218628(P2015-218628)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 純一  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 柿崎 拓
窪田 治彦
発明の名称 情報表示装置  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 大森 鉄平  
代理人 黒木 義樹  
代理人 小飛山 悟史  

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