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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60J |
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管理番号 | 1357249 |
審判番号 | 不服2019-1438 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-01 |
確定日 | 2019-12-10 |
事件の表示 | 特願2014-260920号「自動車用バイザー」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月 7日出願公開、特開2016-120791号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年12月24日の出願であって、平成30年8月10日付けで拒絶理由が通知され、同年10月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、平成31年2月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:.特開2002-200918号公報 引用文献2:.特開2011-251576号公報 第3 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1及び2」という。)は、平成31年2月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 自動車の窓枠に取り付け可能なバイザー本体と、当該バイザー本体に沿って長尺帯状に形成された庇体とからなり、前記庇体の長手方向前後両端部の少なくとも一方に肉厚部を形成してその肉厚部に、前記窓枠への取り付け面に開放する上下に延びる複数の溝を形成した自動車用バイザーであって、 前記肉厚部に、前記複数の溝の下端と連結し、前記肉厚部の外側端縁及び下側端縁と異なる位置で外部に導通する導通溝を設けたことを特徴とする自動車用バイザー。 【請求項2】 前記複数の溝及び/又は前記導通溝の溝の深さが、前記肉厚部の厚みの半分以上であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用バイザー。」 第4 当審の判断 1 引用文献の記載事項等 (1)引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明 (1-1)引用文献1の記載事項 引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 合成樹脂により形成されるバイザーであって、取付部を両面接着テープ等により支持面ヘ接合されるものにおいて、前記取付部を巾方向の中央に形成した溝により2分させて、2分された取付部の肉厚が本体の肉厚と近似したものとなるようにしたことを特徴とする合成樹脂製サイドバイザー。 【請求項2】 前記バイザーにおける取付部の溝の下側部分に溝と外部とを連通させる孔を所要数設けたことを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製サイドバイザー。」 (1b)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車に使用する合成樹脂製バイザーに関する。 【0002】 【従来の技術】現在、自動車に使用される合成樹脂製バイザー7として、図5に示すように本体8と取付部9とにより構成されて、両面接着テープ10により支持部11へ取付けられるものは公知である。 【0003】しかしながら、これらバイザーの取付部は、必要とする接着面積を得るため、その巾を本体の肉厚の3倍かそれ以上に設定してある。このため、取付部の成形収縮率が本体よりも大きくなり、これが原因して製品にひけを生じさせ易いだけでなく、製品に許容値を超える経時的変形が生じて、自動車ヘ取付けた場合に剥落を起こし易い問題点がある。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は前記問題点を解消するためになされたもので、バイザーの取付部と本体との成形収縮率をなるべく近似させて、ひけの発生と経時的な変形を減少させることができる合成樹脂製バイザーを提供することをその課題とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため本発明に係る合成樹脂製バイザーは、合成樹脂により形成されるバイザーであって、取付部を両面接着テープ等により支持面ヘ接合されるものにおいて、前記取付部にその巾を2分させるように溝を形成して、この溝を囲む取付部の肉厚をバイザーの本体の肉厚へ近付ける構成を採用することを特徴とする。 【0006】前記バイザーにおける取付部の溝の下側部分に溝と外部とを連通させる孔を所要数設けるとが好ましい。 【0007】 【発明の実施の形態】以下に本発明に係る合成樹脂製バイザーの実施形態を説明する。 【0008】図1?図3において符号1は合成樹脂製バイザーを示す。このバイザー1は合成樹脂の射出成形により形成される本体2と、この本体2の上部に一体に形成される取付部3とを有する構成である。 【0009】前記バイザー1は図2の円内に示す通り、取付部3に両面接着テープ4を取付けて、この両面接着テープ4により支持面5(ドアバイザーの場合はドアパネルの表面)へ取付ける。しかし、接着は両面接着テープ4によることなく接着剤によって行っても同様の効果が得られる。 【0010】バイザー1の取付部3は必要とする接着面積を得るため、その巾を本体2の厚さの3倍かそれ以上に設定する。このためソリッド構造にすると本体2と体積差が生じて成形収縮率も本体2と相違することになる。そこで、取付部3の肉厚を本体2の肉厚に近付けて本体2と取付部3との成形収縮率を近似したものにする必要がある。 【0011】取付部3の肉厚を本体2の肉厚に近付けるには、前記取付部3を巾方向の中央に形成した溝6により2分させて、2分された取付部3の肉厚が本体2の肉厚と近似したものとなるようにする。こうすればバイザー1は本体2と取付部3との成形収縮率も近似したものになるから、成形の際に取付部3にひけを生ずることがなくなり、成形後の経時的な変形も減少されることになる。 ・・・ 【0016】 【発明の効果】請求項1の効果 バイザーの取付部を溝により2分をさせてこの部分の肉厚と本体の肉厚とを近似したものにすれば、取付部と本体との成形収縮率も近似したものになって、バイザーが成形時にその取付部にひけを生ずることが殆どなくなり、成形後の経時変形も許容値の範囲内に収まるようになるので、成形時の製品の不良率の低減と、市場においての製品クレームの発生防止に大きく貢献する。 【0017】請求項2の効果 取付部に溝を形成してもこの溝に空気が閉じ込められないから、高温時でも空気膨張によるバイザーの剥離が起こらず請求項1に記載の効果を完璧に奏させることができる。」 (1c)引用文献1には、以下の図が示されている。 (1-2)引用文献1に記載された発明 ア 引用文献1(摘示(1a)?(1c))には、「自動車に使用する合成樹脂製バイザーに関する」技術について開示されているところ(【0001】)、その特許請求の範囲の請求項1及び2には、「合成樹脂製サイドバイザー」について、摘示(1a)のとおり記載されている。 イ また、上記「合成樹脂製サイドバイザー」の実施態様(摘示(1b))として、バイザー1は、合成樹脂の射出成形により形成される本体2と、この本体2の上部に一体に形成される取付部3とを有する構成であることが記載され(【0008】)、図1(1)及び図2より、本体2は、長尺帯状に形成されており、本体2の上端部分及び長手方向前後両端部分に渡って取付部3が設けられていること、及び、本体2の上端部分に設けられた取付部3には、長手方向前後に溝6が延びており、本体2の長手方向前後両端部分に設けられた取付部3には、上下方向に溝6が延びていること、が看取できる。 ウ 以上を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「合成樹脂により形成されるバイザー1であって、取付部3を両面接着テープ等により支持面5ヘ接合されるものにおいて、前記取付部3を巾方向の中央に形成した溝6により2分させて、2分された取付部3の肉厚が本体2の肉厚と近似したものとなるようにした、合成樹脂製サイドバイザー1であって、 前記バイザー1における取付部3の溝6の下側部分に溝6と外部とを連通させる孔7を所要数設け、 前記バイザー1は、合成樹脂の射出成形により形成される本体2と、この本体2の上部に一体に形成される取付部3とを有する構成であり、 前記本体2は、長尺帯状に形成されており、本体2の上端部分及び長手方向前後両端部分に渡って取付部3が設けられ、 前記本体2の上端部分に設けられた取付部3には、長手方向前後に溝6が延びており、本体2の長手方向前後両端部分に設けられた取付部3には、上下方向に溝6が延びている、 合成樹脂製サイドバイザー1。」 (2)引用文献2の記載事項 引用文献2には、次の記載がある。 (2a)「【0001】 本発明は、車両に配設されるサイドバイザー、および二つのサイドバイザーを備えるサイドバイザーユニットに関する。 ・・・ 【実施例】 【0023】 以下、本発明のサイドバイザーおよびサイドバイザーユニットを具体的に説明する。 (実施例1) 実施例1のサイドバイザーを模式的に表す要部拡大側面図を図1に示す。実施例1のサイドバイザーを図1中B-B位置で切断した様子を模式的に表す断面図を図2に示す。実施例1のサイドバイザーを図1中A-A位置で切断した様子を模式的に表す断面図を図3に示す。以下、上、下、前、後、外、内、とは図1?3に示す上、下、前、後、外、内を指す。なお、前とは車両進行方向の前側を指し、後とは車両進行方向の後側を指す。外とは車体外側を指し、内とは車体側を指す。さらに、各部材の裏面とは取り付け状態において内側に配置される面であり、各部材の表面とは取り付け状態において外側に配置される面である。 ・・・ 【0025】 実施例1のサイドバイザーは、庇部材3と、取り付け部材4と、接着部材5と、クリップ(図略)とを備える。クリップは、窓枠9に設けられたクリップ穴(図略)に係合する。 ・・・ 【0027】 庇部31のなかでフランジ部30との境界に位置する部分(境界部33)は傾斜し、庇部31の下側部分とフランジ部30とを滑らかに接続している。 図1に示すように、フロントサイドバイザー1の庇部31のなかで後端側に位置する部分はフロントサイドバイザー1の庇端部35(35a)を構成している。リアサイドバイザー2の庇部31のなかで前端側に位置する部分はリアサイドバイザー2の庇端部35(35b)を構成している。図1、2に示すように、各庇端部35における境界部33の裏面上側には、突状のリブ部32が形成されている。図3に示すように、庇部材3のなかで庇端部35よりもさらに端側の部分は、内側に向けて突出する立壁状の覆い部36を構成している。覆い部36の表面は庇端部35の表面と鋭角に交差している。このため庇部材3用の成形型の型割り線(PL)は、図3に示す矢印位置に形成されている。庇部材3におけるフランジ部30の裏面と庇端部35の裏面とは、黒色塗装されている。 取り付け部材4は、AES樹脂製であり、射出成形されてなる。図1、2に示すように、取り付け部材4は、短冊状をなし、取り付け状態において長手方向を上下に向け、窓枠9と庇端部35との間に配置される。取り付け部の上側部分は、先細り形状をなす傾斜部40を構成している。傾斜部40の表面は、境界部33の裏面と対応した傾斜面状をなす。取り付け状態において、傾斜面は境界部33の裏面側に配置される。傾斜部40には、係合凹部41が形成されている。係合凹部41は、傾斜部40の裏面に開口する行き止まり穴状をなす。係合凹部41は、取り付け状態において庇部材3のリブ部32と係合する。取り付け部材4における係合凹部41の下側には、溝状をなす肉抜き凹部42が形成されている。肉抜き凹部42は、内側下方から外側上方に向けて延びる行き止まり穴であり、内側上方から外側下方に向けて延在している。肉抜き凹部42は、取り付け部材4の表面と下面とに開口している。」 (2b)引用文献2には、以下の図が示されている。 3 対比・判断 3-1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明は、「取付部3を両面接着テープ等により支持面5ヘ接合されるもの」であるところ、引用文献1(摘示(1b))の「本発明は、自動車に使用する合成樹脂製バイザーに関する。」(【0001】)及び「前記バイザー1は・・・取付部3に両面接着テープ4を取付けて、この両面接着テープ4により支持面5(ドアバイザーの場合はドアパネルの表面)へ取付ける。」(【0009】)との記載によれば、引用発明の「支持面5」として、自動車のドアパネルの表面が予定されるものであるから、引用発明の「取付部3」が自動車の窓枠に取り付け可能な構成をなすことは技術的に明らかである。 したがって、引用発明の「取付部3」は、本願発明1の「自動車の窓枠に取り付け可能なバイザー本体」に相当するものといえる。 イ 引用発明の「合成樹脂の射出成形により形成される本体2」が庇体を構成することは図1及び図2の図示内容に照らして明らかである。 さらに、引用発明の「本体2」は、「長尺帯状に形成されており、本体2の上端部分及び長手方向前後両端部分に渡って取付部3が設けられ」ていることから、上記「本体2」が上端部分に設けられた取付部3に沿って長尺帯状に形成されていることも技術的に明らかである。 したがって、引用発明の「本体2」は、上記アをも踏まえると、本願発明1の「当該バイザー本体に沿って長尺帯状に形成された庇体」に相当するものといえる。 ウ 引用発明は「前記取付部3を巾方向の中央に形成した溝6により2分させて、2分された取付部3の肉厚が本体2の肉厚と近似したものとなるように」構成されるものであるから、上記「取付部3」が「肉厚」を有する肉厚部として構成されていることは明らかである。 してみると、引用発明において、「本体2」の「長手方向前後両端部分に渡って取付部3が設けられ」という構成は、上記イをも踏まえると、本願発明1における、「前記庇体の長手方向前後両端部の少なくとも一方に肉厚部を形成し」という構成に相当するものといえる。 エ 引用発明は、「取付部3を両面接着テープ等により支持面5ヘ接合」し、「前記取付部3を巾方向の中央に形成した溝6により2分させて」構成するものであって、「本体2の長手方向前後両端部分に設けられた取付部3には、上下方向に溝6が延びて」構成されるものであるから、上記「本体2の長手方向前後両端部分に設けられた取付部3」には、「上下方向に」「延び」る「溝6」が形成されていること、及び上記「溝6」は、支持面5側に開放するように構成されていることが明らかである。 したがって、引用発明において、「本体2の長手方向前後両端部分に設けられた取付部3には、上下方向に溝6が延びて」という構成と、本願発明1の「前記庇体の長手方向前後両端部の少なくとも一方に肉厚部を形成してその肉厚部に、前記窓枠への取り付け面に開放する上下に延びる複数の溝を形成した」という構成とは、上記イ及びウをも踏まえると、「前記庇体の長手方向前後両端部の少なくとも一方に肉厚部を形成してその肉厚部に、前記窓枠への取り付け面に開放する上下に延びる溝を形成した」という構成の限度で共通するものといえる。 オ 上記アのとおり、引用発明の「合成樹脂製サイドバイザー」は、自動車に使用することが明らかであるから、本願発明1の「自動車用バイザー」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明とは、 「自動車の窓枠に取り付け可能なバイザー本体と、当該バイザー本体に沿って長尺帯状に形成された庇体とからなり、前記庇体の長手方向前後両端部の少なくとも一方に肉厚部を形成してその肉厚部に、前記窓枠への取り付け面に開放する上下に延びる溝を形成した自動車用バイザー。」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明1は、溝が「複数」設けられるものであって、「前記肉厚部に、前記複数の溝の下端と連結し、前記肉厚部の外側端縁及び下側端縁と異なる位置で外部に導通する導通溝を設けた」ものであるのに対し、引用発明は、溝6が「取付部3」の「巾方向の中央に形成」され、「取付部3」を「2分させ」るものであって「2分された取付部3の肉厚が本体2の肉厚と近似したものとなるように」構成されるとともに、「前記バイザー1における取付部3の溝6の下側部分に溝6と外部とを連通させる孔7を所要数設け」たものである点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 ア 引用発明は、摘示(1b)に示すとおり、従来技術における「バイザーの取付部は、必要とする接着面積を得るため、その巾を本体の肉厚の3倍かそれ以上に設定してある。このため、取付部の成形収縮率が本体よりも大きくなり、これが原因して製品にひけを生じさせ易いだけでなく、製品に許容値を超える経時的変形が生じて、自動車ヘ取付けた場合に剥落を起こし易い」という問題に鑑み(【0003】)、「バイザーの取付部と本体との成形収縮率をなるべく近似させて、ひけの発生と経時的な変形を減少させることができる合成樹脂製バイザーを提供すること」を課題とするものである(【0004】)。 そして、かかる課題を解決するために、引用発明は、少なくとも「取付部3を両面接着テープ等により支持面5ヘ接合されるものにおいて、前記取付部3を巾方向の中央に形成した溝6により2分させて、2分された取付部3の肉厚が本体2の肉厚と近似したものとなるように」構成したものであり(【0005】)、その効果は、「バイザーの取付部を溝により2分をさせてこの部分の肉厚と本体の肉厚とを近似したものにすれば、取付部と本体との成形収縮率も近似したものになって、バイザーが成形時にその取付部にひけを生ずることが殆どなくなり、成形後の経時変形も許容値の範囲内に収まるようになるので、成形時の製品の不良率の低減と、市場においての製品クレームの発生防止に大きく貢献する。」というものである(【0016】)。 イ 引用文献2には、摘示(2a)のとおり、「車両に配設されるサイドバイザー、および二つのサイドバイザーを備えるサイドバイザーユニット」に関する技術について開示されており(【0001】)、具体的には、庇部材3と、取り付け部材4と、接着部材5と、クリップとを備えるサイドバイザーにおいて(【0025】)、取り付け部材4を短冊状に構成し、取り付け状態において長手方向を上下に向け、窓枠9と庇端部35との間に配置すること、及び、取り付け部材4に溝状をなす肉抜き凹部42を形成し、取り付け部材4の表面と下面とに開口させること(【0027】)、取り付け部材4は、サイドバイザーの長手方向前後両端部に設けられること(図1)、が記載されている。 ウ 以上を踏まえて検討すると、引用発明は、上記アのとおり、少なくとも「前記取付部3を巾方向の中央に形成した溝6により2分させて、2分された取付部3の肉厚が本体2の肉厚と近似したものとなるように」構成すること、要するに、取付部3の幅方向の中央には「1つの溝6」を形成することで上記課題を解決したものであるから、そのような課題解決手段として位置付けられる「1つの溝6」に代えて、あえて「複数の溝」を採用すべき合理的な理由はなく、むしろ、そのような変更には阻害要因が存在するというべきである。 エ また、引用文献2に記載された「取り付け部材4」の構成は、上記イのとおりであるが、かかる取り付け部材4は、サイドバイザーの長手方向前後両端部に設けられるものであって、そもそも引用発明の「本体2の上端部分及び長手方向前後両端部分に渡って」「設けられている」「取付部3」とはその配設態様が異なるものである。さらに、上記引用文献2に記載された「取り付け部材4」は、引用発明における「2分された取付部3の肉厚が本体2の肉厚と近似したものとなるように」構成したものではなく、また、「取付部と本体との成形収縮率も近似したものになって、バイザーが成形時にその取付部にひけを生ずることが殆どなくなり、成形後の経時変形も許容値の範囲内に収まるようになるので、成形時の製品の不良率の低減と、市場においての製品クレームの発生防止に大きく貢献する」といった効果(【0011】、【0016】)を奏するための構成ということもできないから、引用発明の「取付部3」の構成として、引用文献2に記載された「取り付け部材4」の構成を採用すべき動機付けは存在しない。 また、仮に、引用発明の「取付部3」の構成として、引用文献2に記載された「取り付け部材4」の構成を採用することができたとしても、引用文献1及び引用文献2には、そもそも複数の溝の下端と連結し、肉厚部の外側端縁及び下側端縁と異なる位置で外部に導通する導通溝は記載も示唆もないから、上記相違点2に係る本願発明1の「前記肉厚部に、前記複数の溝の下端と連結し、前記肉厚部の外側端縁及び下側端縁と異なる位置で外部に導通する導通溝を設けた」という構成には至らない。 オ 以上のとおり、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たものということはできないから、本願発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3-2 本願発明1について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して発明を特定するものであるから、本件発明1と同様に、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-11-25 |
出願番号 | 特願2014-260920(P2014-260920) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60J)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高島 壮基 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 氏原 康宏 |
発明の名称 | 自動車用バイザー |
代理人 | 石田 喜樹 |