ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
---|---|
管理番号 | 1357279 |
審判番号 | 不服2017-15602 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-20 |
確定日 | 2019-11-20 |
事件の表示 | 特願2015-533251「ビデオコーディングにおけるアクセスユニット非依存コード化ピクチャバッファ除去時間」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月27日国際公開、WO2014/047577、平成27年11月16日国内公表、特表2015-533056〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)年9月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年9月24日、米国、2012年10月1日、米国、2013年9月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成27年 5月21日 :手続補正 平成28年 8月25日 :手続補正 平成28年12月12日 :手続補正 平成28年12月22日付け:拒絶理由通知 平成29年 5月29日 :意見書の提出、手続補正 平成29年 6月12日付け:拒絶査定 平成29年10月20日 :審判請求、手続補正 平成30年10月 4日付け:拒絶理由通知(当審) 平成31年 2月 5日 :意見書の提出、手続補正 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成31年2月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?41に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 なお、本願発明の各構成の符号(A)?(G)は、説明のために当審において付したものであり、以下、構成A?構成Gと称する。 (本願発明) 「(A) アクセスユニットレベルとサブピクチャレベルとを有するコード化ピクチャバッファ(CPB)を用いてビデオデータを復号するための方法であって、 (B) (B-1)アクセスユニット(AU)中の第1の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間と前記AU中の第2のDUのCPB除去時間との間の持続時間を復号することと、(B-2)ここにおいて、前記第2のDUは、復号順序において、前記第1のDUの後であり、前記第1のDUと同じAU中にあり、(B-3)これによって、前記AU中の前記第1のDUと前記第2のDUについてのタイミング情報が、前記AUとは異なる第2のAUからのタイミング情報に依存しない構成とされ、 (C) 前記復号された持続時間に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することと、 (D) 前記CPB除去時間に、前記CPBから前記第1のDUに関連付けられたビデオデータを除去し、前記第1のDUに関連付けられた前記ビデオデータを復号することとを備え、 (E) 前記第2のDUは、復号順序において、前記AU中の前記第1のDUの直後であり、 (F) 前記決定することは、(F-1)前記第1のDUの前記CPB除去時間を、前記第2のDUの前記CPB除去時間と、前記第1のDUの前記CPB除去時間との間の前記持続時間、(F-2)または、前記AU中の最後のDUのCPB除去時間と、前記第1のDUの前記CPB除去時間との間の持続時間、(F)のいずれかに基づいて復号することを含み、 (G) 前記方法は、1つまたは複数のサブピクチャレベルCPBパラメータを復号することをさらに備え、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することは、前記復号された持続時間および前記1つまたは複数のサブピクチャレベルCPBパラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することを備える、(A)方法。」 第3 当審における拒絶の理由 平成30年10月4日の当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、概略次のとおりのものである。 本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1?5、7?14、16?28、30?37、39?48に対して 引用文献1 ・請求項6、15、29、38に対して 引用文献1、2 引用文献1:特開2010-232720号公報 引用文献2:Benjamin Bross et al., "High efficiency video coding (HEVC) text specification draft 8", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 10th Meeting: Stockholm, SE, 2012-07-28, [JCTVC-J1003_d7] (version 8), p.53 第4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明 1.引用文献1の記載事項 当審における拒絶の理由に引用した引用文献1には、「画像符号化方法および画像復号化方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 なお、下線は強調のために当審で付したものである。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、動画像の符号化を行う画像符号化方法および画像の復号化を行う動画像復号化方法に関する。 【背景技術】 【0002】 動画像符号化の国際標準規格として広く普及しているISO/IEC 13818-2(非特許文献1)(以下MPEG2)や、ITU-T Rec. H.264(非特許文献2)(以下H.264)では、圧縮単位である画像フレームまたはフィールドをピクチャと定義し、ピクチャをエンコード及びデコードのアクセス単位(アクセスユニット)としている。通常のエンコードでは、ピクチャ毎に、画像複雑度や符号化モード(フレーム内符号化、前方予測符号化、双方向符号化など)などにより符号量が変動する。 【0003】 固定ビットレートの伝送路や最大伝送レートが定められた伝送路で、破綻無く伝送及び再生を実現するため、各国際標準規格では、仮想デコーダモデルを規定し、仮想デコーダにおける受信バッファモデルにおいてオーバーフローやアンダーフローが発生しないように、ピクチャ単位の符号量変動を制御することがエンコーダに義務付けられている。仮想デコーダモデルは、MPEG2ではVBV(Video Buffering Verifier)、H.264ではHRD(Hypothetical Reference Decoder)と呼ばれ、VBVモデルでは仮想受信バッファをVBVバッファ、HRDモデルではCPB(Coded Picture Buffer)と呼んでいる。これらの仮想受信バッファモデルでは、ピクチャをアクセス単位とする動作が定義されている。」 「【0018】 (第1の実施の形態) 第1の実施の形態にかかるエンコーダは、フレーム内予測またはフレーム間予測を用いた動画像符号化を行う。さらに、符号化に際し、デコーダにおいてピクチャ単位だけでなくスライス単位でデコードおよび表示を行うことができる符号化データを生成し、出力する。エンコーダ100は、図1に示すように、エンコーダコア110と、VLC(Variable Length Code)部120と、ストリームバッファ130と、記憶部140と、制御部150とを備えている。エンコーダコア110は、制御部150の制御の下、入力画像信号500を取得し、入力画像信号500をスライスに分割する。そして、DCTなどエンコードに関わる信号処理を行う。 【0019】 VLC部120は、エンコーダコア110による処理後のデータ502を取得し、スライス単位で可変長符号化や算術符号化などのエントロピー符号化を行い、符号化データを得る。なお、データ502には、DCT係数など信号処理結果を示す情報のほか、符号化データをスライス単位で復号化するタイミングを示すタイミング情報、符号化データをピクチャ単位で復号化するタイミングを示すタイミング情報など符号化すべきデータが含まれている。タイミング情報については後述する。エントロピー符号化により得られた符号化データ504は、ストリームバッファ130を介して出力される。VLC部120は、またエントロピー符号化における発生符号量を示す符号量情報506を制御部150に出力する。 【0020】 記憶部140は、スライス単位の仮想バッファモデルおよびピクチャ単位の仮想バッファモデルの2つの仮想バッファモデルを記憶している。ピクチャ単位の仮想バッファモデルは、ピクチャに関する符号化データを入出力単位とするバッファモデルである。スライス単位の仮想バッファモデルはスライスに関する符号化データを入出力単位とするバッファモデルである。なお、スライスは、ピクチャを構成する単位であり、本実施の形態においては、スライス単位とは、1スライス単位であってもよく、また、ピクチャに比べて小さい単位である複数のスライスを1単位としてもよい。記憶部140は、具体的には、スライス単位の仮想バッファモデルのバッファサイズx1と、ピクチャ単位の仮想バッファモデルのバッファサイズx2(x1<x2)を記憶している。なお、ピクチャ単位の仮想バッファモデルは、第2仮想バッファモデルに相当し、スライス単位の仮想バッファモデルは第1仮想バッファモデルに相当する。」 「【0022】 図2は、符号化データを受信した際の、2つの仮想バッファモデル(仮想受信バッファモデル)の動作例を示す図である。図2に示すグラフの横軸は時間を示している。グラフの縦軸は、バッファ占有量を示している。仮想バッファは、H.264であれば、CPB(Coded Picture Buffer)、MPEG2であれば、VBV(Video Buffering Verifier)バッファに相当する。なお、本実施の形態においては、H.264においてCPBを採用する場合を例に説明する。 【0023】 図2に示すx2は、ピクチャを単位とする仮想バッファモデルのバッファサイズ、x1は、スライスを単位とする仮想バッファモデルのバッファサイズを示している。点線610は、ピクチャを単位とする仮想バッファモデルにおける符号化データを示している。実線620は、スライスを単位とする仮想バッファモデルにおける符号化データを示している。なお、説明の便宜上、図2においては4スライスが1つのピクチャを構成する場合の例を示している。 【0024】 ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおいては、第1ピクチャに関する符号化データ611は、第1ピクチャのデコードタイミングt4まで仮想バッファに蓄積され、タイミングt4において瞬時に出力され、デコード処理が行われる。同様に、第2ピクチャの符号化データ612は、デコードタイミングt8まで仮想バッファに蓄積され、タイミングt8において瞬時に出力され、デコード処理が行われる。なお、これは従来のモデルに対応するものである。 【0025】 制御部150は、記憶部140からピクチャ単位の仮想バッファモデルのバッファサイズx2を取得する。そして、バッファサイズx2に対して、上記仮想バッファモデルの動作において、オーバーフローおよびアンダーフローしないようにピクチャ単位の符号化データのデータ量を制御する。 【0026】 また、スライス単位の仮想バッファモデルにおいては、第1スライスに関する符号化データ621は、第1スライスのデコードタイミングt1まで仮想バッファに蓄積され、タイミングt1において瞬時に出力され、デコード処理が行われる。同様に第2スライスの符号化データ622はデコードタイミングt2まで仮想バッファに蓄積され、タイミングt2において瞬時に出力され、デコード処理が行われる。 【0027】 制御部150は、記憶部140からスライス単位の仮想バッファモデルのバッファサイズx1を取得する。そして、バッファサイズx1に対して、上記仮想バッファモデルの動作において、オーバーフローおよびアンダーフローしないようにスライス単位の符号化データのデータ量を制御する。」 「【0030】 図3に示すデコード画像711およびデコード画像712は、それぞれ図1の仮想バッファモデル610において点線611、612で示す第1ピクチャおよび第2ピクチャの符号化データから得られるデコード画像である。制御部150は、第1ピクチャを復号化するタイミングであるt4、第2ピクチャを復号化するタイミングであるt8をそれぞれピクチャ単位のタイミング情報とする。このように、制御部150は、ピクチャ単位の符号化データとともに、復号化するタイミングを示すタイミング情報を、ピクチャ単位のタイミング情報として生成して出力する。」 「【0032】 図3に示すデコード画像721、722、723、724は、図1において実線で示したスライス単位の仮想バッファモデル620において実線621、622、623、624で示す第1スライス?第4スライスの符号化データから得られるデコード画像である。制御部150は、第1スライスを復号化するタイミングであるt1、第2スライスを復号化するタイミングであるt2など各スライスを復号化するタイミングを示すタイミング情報を、スライス単位のタイミング情報として生成する。すなわち、制御部150は、1スライス分の符号化データとともに、復号化するタイミングを示すタイミング情報を、スライス単位のタイミング情報として生成して出力する。 【0033】 制御部150は、具体的には、ピクチャ単位のスライス情報に基づいて、スライスを含むピクチャの復号化のタイミングからの差分値として各スライスの復号化のタイミングを規定する。例えば、図3に示す第1スライス721?第4スライス724のタイミングt1?t4は、それぞれ第1ピクチャの復号化のタイミングt4を基準とし、t4との差分として規定する。また、第5スライス725?第8スライス728のタイミングt5?t8はそれぞれ、第2ピクチャの復号化のタイミングt8を基準とし、t8との差分として規定する。なお、第4スライス724のタイミングt4と第1ピクチャのタイミングt4は等しく差分は0となる。第8スライス728と第2ピクチャのタイミングについても差分は0となる。」 「【0036】 本実施の形態にかかるエンコーダ100においては、従来のピクチャ単位での仮想バッファモデルに対するタイミング情報に加えてスライス単位の仮想バッファモデルに対するタイミング情報を付与した符号化データを生成し出力する。これにより、デコード処理においては、スライス単位でのデコードタイミング制御が可能となり、この場合には、より低遅延で画像を復号化、表示することができる。さらに、スライス単位だけでなくピクチャ単位のタイミング情報も付与されているので、ピクチャ単位でのデコードタイミング制御を行う従来の装置において従来通りの処理によりデコードすることも可能である。 【0037】 以下、エンコーダ100により生成された1ピクチャに対する符号化データのデータ構成について説明する。符号化データは、図4に示すように、「Access unit delimiter」、「SPS (Sequence parameter Set)」、「PPS (Picture Parameter Set)」、「Buffering period SEI (Supplemental Enhancement Information)」、「Picture timing SEI」を含んでいる。さらに、これに続いて「Slice timing SEI」および「Slice data」をそれぞれ1ピクチャに含まれるスライスの数(n)だけ含んでいる。」 「【0039】 「Picture timing SEI」は、ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおける復号化および表示のタイミングを示すタイミング情報である。「Slice timing SEI」は、スライス単位の仮想バッファモデルにおける復号化および表示のタイミングを示すタイミング情報である。「Slice data」は、当該ピクチャをn(n≧1)分割した各スライスの圧縮画像データである。」 「【0047】 図4に示す「Slice timing SEI」について詳述する。図8に示す「slice_hrd_flag」は、ピクチャ単位の仮想受信バッファモデルに加えて、スライス単位の仮想バッファモデルが有効であることを示すフラグである。本実施の形態においては、ピクチャ単位の仮想受信バッファモデル及びスライス単位の仮想受信バッファモデルはそれぞれ1つに限定される。図5における「cpb_cnt_minus1」は仮想受信バッファモデル数から1減算した値を示すものであるが、「slice_hrd_flag」が有効の場合、「cpb_cnt_minus1」は0とする。 【0048】 また、ピクチャ単位の仮想受信バッファのサイズ及びスライス単位の仮想受信バッファのサイズは同一とし、図5における「cpb_size_value_minus1」においてこのバッファサイズが示される。図6に示す「slice_cpb_removal_delay_offset」は、スライスを復号化するタイミングを示すスライス単位のタイミング情報を示している。「slice_cpb_removal_delay_offset」は、前述のように、当該スライスが含まれるピクチャの、ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおける復号化のタイミング、すなわちデコード時刻からの差分値としてスライス単位のタイミング情報を示している。 【0049】 スライス単位の仮想バッファモデルでは、ピクチャ単位の仮想バッファモデルよりも早い時刻にデコードを開始する。そして、「slice_cpb_removal_delay_offset」の値が大きいほど、デコード開始時刻が早いことを意味している。なお、ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおけるデコード時刻は、「initial_cpb_removal_delay」および「cpb_removal_delay」から、非特許文献2に示される方法と同様にして計算される。 【0050】 ここで、スライス単位の仮想バッファモデルにおける復号化のタイミングの算出処理について説明する。エンコーダ100の制御部150は、(式1)によりピクチャnにおけるi番目のスライスのデコード開始時刻 【数1】 から、「slice_cpb_removal_delay_offset(i)」を算出する。また、デコーダの制御部は、受信した「slice_cpb_removal_delay_offset(i)」から、(式1)によりピクチャnにおけるi番目のスライスのデコード開始時刻 【数2】 を算出する。 【数3】 ここで、t_(r)(n)は、ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおけるデコード開始時刻を示している。「slice_cpb_removal_delay_offset(i)」は、「Slice timing SEI」で符号化されるスライスiの復号化時刻、すなわち復号化のタイミングを示すタイミング情報である。t_(c)はタイミング情報の単位時間を示す定数である。」 「【0063】 次に、符号化データを取得し、これをデコードし、表示するデコーダについて説明する。なお、本実施の形態にかかるデコーダは、スライス単位での復号化、表示およびピクチャ単位での復号化、表示の両方のタイミング制御を行うことができる。図13に示すように、デコーダ200は、ストリームバッファ210と、パーサ220と、制御部230と、デコーダコア240と、表示バッファ250とを備えている。 【0064】 符号化データ800は、ストリームバッファ210に入力され、パーサ220に渡される。パーサ220は、図4から図8参照しつつ説明したデータ構造の符号化データの解読を行う。これにより、ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおけるタイミング情報およびスライス単位の仮想バッファモデルのタイミング情報を抽出し、これら2種類のタイミング情報801を制御部230に出力する。制御部230は、取得したタイミング情報801に基づいて、ピクチャ単位の仮想バッファモデルおよびスライス単位の仮想バッファモデルのうちいずれのモデルでの復号化および表示を行うかを決定し、復号化および表示のタイミングを制御するための制御情報802,803をそれぞれデコーダコア240および表示バッファ250に出力する。」 「【図2】 」 「【図3】 」 「【図8】 」 2.引用文献に記載された発明 引用文献1に記載された発明を以下に認定する。 (1)動画像復号化方法及び仮想バッファモデル 引用文献1の段落【0001】、【0003】、【0018】、【0020】の記載によれば、引用文献1には、動画像符号化方法及び動画像復号化方法におけるCPB(Coded Picture Buffer)と呼ばれる仮想バッファモデルに関する発明が記載されている。 そして、段落【0018】、【0020】、【0036】、【0063】、【0064】の記載によれば、引用文献1には、仮想バッファモデルは、スライス単位の仮想バッファモデルとピクチャ単位の仮想バッファモデルの2つの仮想バッファモデルを有していること、また、スライス単位とピクチャ単位のいずれかの仮想バッファモデルでの符号化データの生成及び符号化データの復号化を行うことが記載されている。 以上のことから、引用文献1には、『スライス単位とピクチャ単位のいずれかの仮想バッファモデル(CPB(Coded Picture Buffer))により符号化データの復号を行う動画像復号化方法』の発明が記載されている。 (2)ピクチャ及びスライスの出力及び復号化のタイミング 引用文献1の段落【0030】、【0032】、【0033】、【図3】の記載によれば、引用文献1には、第1ピクチャのデコード画像711は第1スライス?第4スライスのデコード画像721?724により構成され、第2ピクチャのデコード画像712は第5スライス?第8スライスのデコード画像725?728により構成されること、さらに、第1スライス721?第4スライス724の復号化のタイミングt1?t4は、それぞれ第1ピクチャの復号化のタイミングt4を基準とし、t4との差分として規定され、第5スライス725?第8スライス728の復号化のタイミングt5?t8は、それぞれ第2ピクチャの復号化のタイミングt8を基準とし、t8との差分として規定されることが記載されている。 また、引用文献1の段落【0022】、【0024】、【0026】、【図2】の記載によれば、引用文献1には、ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおいては、第1ピクチャに関する符号化データ611は、第1ピクチャのデコードタイミングt4まで仮想バッファに蓄積され、タイミングt4において瞬時に出力され、デコード処理が行われ、スライス単位の仮想バッファモデルにおいては、第1スライスに関する符号化データ621は、第1スライスのデコードタイミングt1まで仮想バッファに蓄積され、タイミングt1において瞬時に出力され、デコード処理が行われることが記載されている。 すなわち、ピクチャ及びスライスの復号化のタイミングt1?t8は、それぞれピクチャ単位及びスライス単位の仮想化バッファからの出力と復号化を行うタイミングである。 ここで、第1スライス?第8スライスは、【図2】、【図3】に示される時間軸を鑑みれば、第1から第8の順に復号されるものであることは明かである。 以上のことから、引用文献1には、『第1ピクチャは第1スライス?第4スライスにより、第2ピクチャは第5スライス?第8スライスにより構成され、第1スライス?第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t4は、それぞれ第1ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4を基準とし、t4との差分として規定され、第5スライス?第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t8は、それぞれ第2ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8を基準とし、t8との差分として規定され、第1スライス?第8スライスは、第1から第8の順に復号されるものであること』が記載されている。 (3)タイミング情報 引用文献1の段落【0019】、【0037】、【0039】、【0047】、【0048】、【図8】の記載によれば、符号化データは、スライス単位の仮想バッファモデルにおける復号化および表示のタイミングを示すタイミング情報である「Slice timing SEI」を有しており、「Slice timing SEI」は、スライスを復号化するタイミングを示すスライス単位のタイミング情報を示す「slice_cpb_removal_delay_offset」を有している。 また、引用文献1の段落【0064】の記載によれば、符号化データはパーサにより解読され、ピクチャ単位及びスライス単位の仮想バッファモデルのタイミング情報が抽出される。 すなわち、引用文献1には、『符号化データをパーサにより解読し、スライスを復号化するタイミングを示すスライス単位のタイミング情報である「Slice timing SEI」及び「Slice timing SEI」に含まれる「slice_cpb_removal_delay_offset」を抽出すること』が記載されている。 (4)タイミングの算出 引用文献1の段落【0050】の記載によれば、デコーダの制御部は、受信した「slice_cpb_removal_delay_offset(i)」とピクチャ単位の仮想バッファモデルにおけるデコード開始時刻t_(r)(n)から、 により、ピクチャnにおけるi番目のスライスのデコード開始時刻ts^(i)_(r)(n)を算出する。 ここで、t_(c)はタイミング情報の単位時間を示す定数であるから、ts^(i)_(r)(n)はt_(r)(n)から「slice_cpb_removal_delay_offset(i)」で規定される時間を減算することにより算出される。 すなわち、引用文献1には、『ピクチャnにおけるi番目のスライスのデコード開始時刻ts^(i)_(r)(n)は、ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおけるデコード開始時刻t_(r)(n)から「slice_cpb_removal_delay_offset(i)」により規定される時間を減算することにより算出される』ことが記載されている。 (5)まとめ 上記(1)?(4)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、引用発明の各構成を、それぞれに付した符号(a)?(g)により、以下、構成a?構成gと称する。 (引用発明) 「(a)スライス単位とピクチャ単位のいずれかの仮想バッファモデル(CPB(Coded Picture Buffer))により符号化データの復号を行う動画像復号化方法であって、 (b)第1ピクチャは第1スライス?第4スライスにより、第2ピクチャは第5スライス?第8スライスにより構成され、 (c)第1スライス?第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t4は、それぞれ第1ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4を基準とし、t4との差分として規定され、 (d)第5スライス?第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t8は、それぞれ第2ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8を基準とし、t8との差分として規定され、 (e)第1スライス?第8スライスは、第1から第8の順に復号されるものであり、 (f)符号化データをパーサにより解読し、スライスを復号化するタイミングを示すスライス単位のタイミング情報である「Slice timing SEI」及び「Slice timing SEI」に含まれる「slice_cpb_removal_delay_offset」を抽出し、 (g)ピクチャnにおけるi番目のスライスのデコード開始時刻ts^(i)_(r)(n)は、ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおけるデコード開始時刻t_(r)(n)から「slice_cpb_removal_delay_offset(i)」により規定される時間を減算することにより算出される (a)動画像復号化方法。」 第5 対比・判断 1.本願発明の選択的構成について 本願発明は、構成C及び構成Fの「前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定すること」について、「前記第1のDUの前記CPB除去時間を、前記第2のDUの前記CPB除去時間と、前記第1のDUの前記CPB除去時間との間の前記持続時間」(構成F-1)または、「前記AU中の最後のDUのCPB除去時間と、前記第1のDUの前記CPB除去時間との間の持続時間」(構成F-2)、のいずれかに基づいて復号すること、という選択的記載を有しており、複数の発明を含むものである。 なお、構成F-2の「前記AU中の最後のDUのCPB除去時間と、前記第1のDUの前記CPB除去時間との間の持続時間」という構成は、構成B-1の「第1の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間と前記AU中の第2のDUのCPB除去時間との間の持続時間」及び構成Eの「前記第2のDUは、復号順序において、前記AU中の前記第1のDUの直後であり」という構成で特定される『第1のDUのCPB除去時間とその直後の第2のDUのCPB除去時間との間の持続時間』という構成と整合しない、第2のDUが第1のDUの直後とならない場合が存在する。よって、構成F-2を備えた発明は技術的な矛盾を含む発明であり、発明の特定が困難である。 そこで、当審は、本願発明の複数の発明のうち、構成F-1を有する発明(以下、「本願第1発明」という。)について進歩性の検討を行う。 (本願第1発明) 「(A) アクセスユニットレベルとサブピクチャレベルとを有するコード化ピクチャバッファ(CPB)を用いてビデオデータを復号するための方法であって、 (B) (B-1)アクセスユニット(AU)中の第1の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間と前記AU中の第2のDUのCPB除去時間との間の持続時間を復号することと、(B-2)ここにおいて、前記第2のDUは、復号順序において、前記第1のDUの後であり、前記第1のDUと同じAU中にあり、(B-3)これによって、前記AU中の前記第1のDUと前記第2のDUについてのタイミング情報が、前記AUとは異なる第2のAUからのタイミング情報に依存しない構成とされ、 (C) 前記復号された持続時間に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することと、 (D) 前記CPB除去時間に、前記CPBから前記第1のDUに関連付けられたビデオデータを除去し、前記第1のDUに関連付けられた前記ビデオデータを復号することとを備え、 (E) 前記第2のDUは、復号順序において、前記AU中の前記第1のDUの直後であり、 (F) 前記決定することは、(F-1)前記第1のDUの前記CPB除去時間を、前記第2のDUの前記CPB除去時間と、前記第1のDUの前記CPB除去時間との間の前記持続時間、(F)に基づいて復号することを含み、 (G) 前記方法は、1つまたは複数のサブピクチャレベルCPBパラメータを復号することをさらに備え、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することは、前記復号された持続時間および前記1つまたは複数のサブピクチャレベルCPBパラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することを備える、(A)方法。」 2.対比 本願第1発明と引用発明とを対比する。 (1)本願第1発明の構成Aについて 引用発明は、スライス単位とピクチャ単位のいずれかの仮想バッファモデル(CPB(Coded Picture Buffer))により符号化データの復号を行う動画像復号化方法(構成a)の発明である。 ここで、動画像符号化技術においては、スライスはサブピクチャとも称されるものである。また、アクセスユニット(AU)はピクチャの符号化データにより構成され、復号ユニット(DU)は、スライス(サブピクチャ)の符号化データにより構成されることは技術常識である。 したがって、引用発明の構成aは、サブピクチャ単位とアクセスユニット単位のいずれかのコード化ピクチャバッファ(CPB)により符号化データの復号を行う動画像復号化方法であり、本願第1発明の「アクセスユニットレベルとサブピクチャレベルとを有するコード化ピクチャバッファ(CPB)を用いてビデオデータを復号するための方法」に相当する。 (2)本願第1発明の構成B-1について ア.「アクセスユニット(AU)中の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間」について 引用発明は、構成bのように「第1ピクチャは第1スライス?第4スライスにより、第2ピクチャは第5スライス?第8スライスにより構成され」ているから、第1スライス?第4スライスは第1ピクチャの中に存在し、第5スライス?第8スライスは第2ピクチャの中に存在する。 ここで、「スライス」が「復号ユニット(DU)」に対応し、「ピクチャ」が「アクセスユニット(AU)」に対応することは、上記(1)において検討したとおりであるから、引用発明の「第1スライス?第4スライス」及び「第5スライス?第8スライス」は、本願第1発明の「アクセスユニット(AU)中の復号ユニット(DU)」に相当する。 引用発明において、構成cの「第1スライス?第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t4」及び構成dの「第5スライス?第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t8」は、それぞれ仮想化バッファからスライスの符号化データを出力し復号化するタイミングである。 仮想化バッファからスライスの符号化データを出力し復号化するときに、スライスの符号化データを仮想化バッファから除去することは動画像符号化技術の技術常識であり、仮想化バッファはコード化ピクチャバッファ(CPB)であるから、引用発明の上記「タイミングt1?t4及びタイミングt5?t8」は、本願第1発明の「コード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間」に相当する。 以上のことから、引用発明の「第1スライス?第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t4」及び「第5スライス?第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t8」は、本願第1発明の「アクセスユニット(AU)中の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間」に相当する。 イ.「持続時間」について 引用発明において、構成cは、「第1スライス?第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t4」は、「第1ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4」を基準とし、t4との「差分」として規定されることを示しており、構成dは、「第5スライス?第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t8」は、「第2ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8」を基準とし、t8との「差分」として規定されることを示している。 ここで、「第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4」は「第1ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4」と同一であり、「第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8」は「第2ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8」と同一である。 したがって、「第1スライス?第3スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t3」の各々は、実質的に「第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4」との「差分」で規定され、同じく「第5スライス?第7スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t7」の各々は、実質的に「第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8」との「差分」で規定される。 ここで、上記(1)において検討したよう、引用発明の「スライス」は本願第1発明の「復号ユニット(DU)」に対応するものであり、上記アにおいて検討したように、引用発明の「第1スライス?第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t4」及び「第5スライス?第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t8」は、本願第1発明の「アクセスユニット(AU)中の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間」に相当する。 また、「第1スライス?第3スライス」の各々及び「第5スライス?第7スライス」の各々を「第1の復号ユニット(DU)」と称し、「第4スライス」及び「第8スライス」を「第2の復号ユニット(DU)」と称することは任意である。 よって、引用発明の上記「差分」は、「第1の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間」と「第2の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間」との時間的差分を示すものであり、本願第1発明の「持続時間」に相当するものである。 すなわち、引用発明における「第1スライス?第3スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t3」の各々と「第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4」との「差分」及び「第5スライス?第7スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t7」と「第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8」との「差分」は、本願第1発明の「アクセスユニット(AU)中の第1の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間と前記AU中の第2のDUのCPB除去時間との間の持続時間」に相当するものである。 ウ.「持続時間を復号すること」について 引用発明の構成gの「ピクチャnにおけるi番目のスライスのデコード開始時刻ts^(i)_(r)(n)」は、構成cの「第1スライス?第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t4」及び構成dの「第5スライス?第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t8」であり、構成gの「ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおけるデコード開始時刻t_(r)(n)」は、構成cの「第1ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4」及び構成dの「第2ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8」である。 そして、「ピクチャnにおけるi番目のスライスのデコード開始時刻ts^(i)_(r)(n)」は、「ピクチャ単位の仮想バッファモデルにおけるデコード開始時刻t_(r)(n)」から、「slice_cpb_removal_delay_offset(i)」により規定される時間を減算することにより算出されるものであるから、「slice_cpb_removal_delay_offset(i)」は、構成c及び構成dの「差分」を表すものである。 引用発明の構成fによれば、「slice_cpb_removal_delay_offset」は、符号化データをパーサにより解読することによって、符号化データから抽出されるものであるから、「slice_cpb_removal_delay_offset」、すなわち「差分」は、符号化データを復号して得られるものである。 そして、上記イにおいて検討したように、引用発明の「差分」は、本願第1発明の「持続時間」に相当するものであるから、引用発明は「持続時間」を復号するものといえる。 エ.まとめ 以上のア?ウの検討を踏まえると、引用発明は、本願第1発明の構成B-1の「アクセスユニット(AU)中の第1の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間と前記AU中の第2のDUのCPB除去時間との間の持続時間を復号すること」を備えているといえる。 (3)本願第1発明の構成B-2について 引用発明は、構成eのように「第1スライス?第8スライスは、第1から第8の順に復号されるもの」であり、上記(2)イにおいて検討したように、「第1スライス?第3スライス」の各々及び「第5スライス?第7スライス」の各々が「第1の復号ユニット(DU)」であり、「第4スライス」及び「第8スライス」が「第2の復号ユニット(DU)」であるから、引用発明において、第2のDUは、復号順序において、第1のDUの後である。 また、引用発明は、構成bのように第1スライス?第4スライスは第1ピクチャの中に存在し、第5スライス?第8スライスは第2ピクチャの中に存在するから、第2のDUは、第1のDUと同じAU中にある。 したがって、引用発明は、本願第1発明の構成B-2の「ここにおいて、前記第2のDUは、復号順序において、前記第1のDUの後であり、前記第1のDUと同じAU中にあり」という構成を備えているといえる。 (4)本願第1発明の構成B-3について 引用発明は、第1スライス?第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t4は、それぞれ第1ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4を基準とし、t4との差分として規定され(構成c)、第5スライス?第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t8は、それぞれ第2ピクチャのピクチャ単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8を基準とし、t8との差分として規定され(構成d)るものであるから、AU中の第1のDUと第2のDUについてのタイミング情報は、当該AUとは異なる第2のAUからのタイミング情報に依存しないものである。 したがって、引用発明は、本願第1発明の構成B-3の「これによって、前記AU中の前記第1のDUと前記第2のDUについてのタイミング情報が、前記AUとは異なる第2のAUからのタイミング情報に依存しない構成とされ」という構成を備えているといえる。 (5)本願第1発明の構成Cについて 上記(2)イにおいて検討したように、引用発明において、「第1スライス?第3スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t3」の各々及び「第5スライス?第7スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t7」の各々は、「第1の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間」に相当するものであって、「持続時間」に相当する「差分」により規定されるものである。 また、上記(2)ウにおいて検討したように、「持続時間」に相当する「差分」は符号化データを復号して得られるものである。 したがって、引用発明は、本願第1発明の構成Cの「前記復号された持続時間に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定すること」という構成を備えているといえる。 (6)本願第1発明の構成Dについて 上記(2)イにおいて検討したように、引用発明において、「第1スライス?第3スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t3」の各々及び「第5スライス?第7スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t7」の各々は、「第1の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間」に相当するものであり、上記(2)アにおいて検討したように、「タイミングt1?t3」及び「タイミングt5?t7」において、それぞれ仮想化バッファからスライスの符号化データを出力して除去し、復号化するものである。 したがって、引用発明は、本願第1発明の構成Dの「前記CPB除去時間に、前記CPBから前記第1のDUに関連付けられたビデオデータを除去し、前記第1のDUに関連付けられた前記ビデオデータを復号すること」という構成を備えているといえる。 (7)本願第1発明の構成Eについて 「持続時間」によってそれぞれの「CPB除去時間」の対応関係が規定される「第1のDU」と「第2のDU」について、引用発明においては、上記(2)イにおいて検討したように、「第1のDU」は、「第1スライス?第3スライス」の各々及び「第5スライス?第7スライス」の各々に相当するものであり、「第2のDU」は、各ピクチャの最後のスライスの「第4スライス」及び「第8スライス」に相当するものである。 ここで、「第4のスライス」及び「第8スライス」は、復号順序において、「第3のスライス」及び「第7スライス」の直後であるが、「第1のスライス」、「第2のスライス」及び「第5スライス」、「第6スライス」の直後ではない。 したがって、本願第1発明では、「前記第2のDUは、復号順序において、前記AU中の前記第1のDUの直後であり」という関係が特定されているのに対し、引用発明では、「第2のDU」は、各ピクチャの最後のスライスの「第4スライス」及び「第8スライス」であるため、そのような関係とはならない点で両者は相違する。 (8)本願第1発明の構成F及び構成F-1について まず、本願第1発明の構成Fの「DUのCPB除去時間」を、「持続時間に基づいて復号すること」という構成について確認する。 本願発明の構成Fは、平成29年5月29日付けの手続補正により付加された構成であり、同日付けの意見書には、当該補正の根拠は、本願明細書の段落0015の「AUの現在のDUについてのCPB除去時間が、AU中の、復号順序において次のDUと現在のDUとのCPB除去時間の間の持続時間、またはAU中の最後のDUと現在のDUとのCPB除去時間の間の持続時間のいずれかに基づいてシグナリングされる」であると記載されている。 段落0015の記載は、DUのCPB除去時間が持続時間に基づいてシグナリングされるということであり、復号側においては、シグナリングされる持続時間を復号してCPB除去時間を取得することであると認められる。 したがって、構成Fの「CPB除去時間」を、「持続時間に基づいて復号すること」という構成は、『CPB除去時間を、復号した持続時間に基づいて取得すること』を意味するものと解釈することができる。 上記(2)イ及び(5)において検討したように、引用発明において、「第1のDUのCPB除去時間」に相当する「第1スライス?第3スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t3」の各々及び「第5スライス?第7スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t7」の各々は、「第2のDUのCPB除去時間」に相当する「第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4」及び「第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8」との「差分」により規定され、「差分」は「持続時間」に相当するものである。 そして、上記(2)ウ及び(5)において検討したように、「持続時間」に相当する「差分」は符号化データを復号して得られるものである。 すなわち、引用発明は、「第1のDUのCPB除去時間」を、「第2のDUのCPB除去時間」と、「第1のDUのCPB除去時間」との間の復号した「持続時間」に基づいて決定するものといえる。 したがって、引用発明は、「第1のDUのCPB除去時間を、第2のDUのCPB除去時間と、第1のDUのCPB除去時間との間の持続時間に基づいて復号することにより決定する」ものであり、本願第1発明の構成F及び構成F-1を備えているといえる。 (9)本願第1発明の構成Gについて 引用発明は、構成fのように『符号化データをパーサにより解読し、スライスを復号化するタイミングを示すスライス単位のタイミング情報である「Slice timing SEI」及び「Slice timing SEI」に含まれる「slice_cpb_removal_delay_offset」を抽出』するものである。 ここで、「Slice timing SEI」は、スライス単位、すなわちサブピクチャ単位のパラメータであり、構成c及び構成dのように、仮想化バッファモデル(CPB)からスライスの符号化データを出力し復号化するタイミングを示すタイミング情報であるから、本願第1発明の「サブピクチャレベルCPBパラメータ」に相当するものである。 そして、符号化データをパーサにより解読し、「Slice timing SEI」を抽出することは、「Slice timing SEI」を復号することである。 よって、引用発明は、「サブピクチャレベルCPBパラメータを復号する」構成を備えているといえる。 また、上記(8)において検討したように、引用発明は、「復号した持続時間に基づいて、第1のDUのCPB除去時間を決定する」ものであり、「持続時間」に相当する「slice_cpb_removal_delay_offset」は、「Slice timing SEI」に含まれるものであるから、引用発明は、「サブピクチャレベルCPBパラメータ」に相当する「Slice timing SEI」に基づいて、第1のDUのCPB除去時間を決定するものともいえる。 以上のことから、引用発明は、本願第1発明の構成Gの「前記方法は、1つまたは複数のサブピクチャレベルCPBパラメータを復号することをさらに備え、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することは、前記復号された持続時間および前記1つまたは複数のサブピクチャレベルCPBパラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することを備える」という構成を備えているといえる。 (10)まとめ 上記(1)?(9)の対比結果を踏まえると、本願第1発明と引用発明の一致点及び相違点は次の通りである。 [一致点] (A) アクセスユニットレベルとサブピクチャレベルとを有するコード化ピクチャバッファ(CPB)を用いてビデオデータを復号するための方法であって、 (B) (B-1)アクセスユニット(AU)中の第1の復号ユニット(DU)のコード化ピクチャバッファ(CPB)除去時間と前記AU中の第2のDUのCPB除去時間との間の持続時間を復号することと、(B-2)ここにおいて、前記第2のDUは、復号順序において、前記第1のDUの後であり、前記第1のDUと同じAU中にあり、(B-3)これによって、前記AU中の前記第1のDUと前記第2のDUについてのタイミング情報が、前記AUとは異なる第2のAUからのタイミング情報に依存しない構成とされ、 (C) 前記復号された持続時間に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することと、 (D) 前記CPB除去時間に、前記CPBから前記第1のDUに関連付けられたビデオデータを除去し、前記第1のDUに関連付けられた前記ビデオデータを復号することとを備え、 (F) 前記決定することは、(F-1)前記第1のDUの前記CPB除去時間を、前記第2のDUの前記CPB除去時間と、前記第1のDUの前記CPB除去時間との間の前記持続時間、(F)に基づいて復号することを含み、 (G) 前記方法は、1つまたは複数のサブピクチャレベルCPBパラメータを復号することをさらに備え、(H)前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することは、前記復号された持続時間および前記1つまたは複数のサブピクチャレベルCPBパラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記第1のDUの前記CPB除去時間を決定することを備える、(A)方法。 [相違点] 「持続時間」によってそれぞれの「CPB除去時間」の対応関係が規定される「第1のDU」と「第2のDU」について、本願第1発明では、「前記第2のDUは、復号順序において、前記AU中の前記第1のDUの直後であり」(構成E)という関係が特定されているのに対し、引用発明では、「第2のDU」は、各ピクチャの最後のスライスの「第4スライス」及び「第8スライス」であるため、そのような関係とはならない点。 3.相違点の判断 上記相違点を検討すると、上記相違点は、要するに、本願第1発明は、第1のDUのCPB除去時間が、復号順序において直後である第2のDUのCPB除去時間との間の持続時間により、順に決定されるというものであるのに対し、引用発明は、「第1のDUのCPB除去時間」に相当する「第1スライス?第3スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt1?t3」の各々及び「第5スライス?第7スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt5?t7」の各々が、「第2のDUのCPB除去時間」に相当する「第4スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt4」及び「第8スライスのスライス単位の仮想化バッファからの出力及び復号化のタイミングt8」との「差分」により、直接的に決定されるものであるということである。 一般的に、時間的に並ぶ複数の時刻情報を、基準となる時刻情報からの差分で直接的に示す手法と、基準から順に差分を加算して相対的に示す手法は、それぞれ置換可能な周知の手法であるといえる。 したがって、引用発明において、各スライスのタイミングを、基準となる第4スライス及び第8スライスのタイミングから直接的に決定することに代えて、基準となる第4スライス及び第8スライスのタイミングから、順に差分を加算して相対的に決定することに置き換えることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。 そして、引用発明において、そのような構成を採用することにより、第1スライス?第3スライス及び第5スライス?第7スライスのタイミングは、それぞれ復号順序において直後のスライスのタイミングから順に決定する構成となるため、上記相違点に係る本願第1発明の「前記第2のDUは、復号順序において、前記AU中の前記第1のDUの直後であり」という構成は、当業者が容易に想到し得ることである。 4.効果について 本願第1発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願第1発明が奏する効果は、当業者が予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものがあるとは認められない。 5.まとめ 以上のとおりであるから、本願第1発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.本願発明について 本願発明は、上記1において述べたように複数の発明を含むものである。 そして、そのうちの一つの発明である本願第1発明が、上記2?5において検討したように、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明は進歩性を有していない発明である。 第7 むすび 以上のように、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2019-06-20 |
結審通知日 | 2019-06-25 |
審決日 | 2019-07-09 |
出願番号 | 特願2015-533251(P2015-533251) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂東 大五郎 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
清水 正一 小池 正彦 |
発明の名称 | ビデオコーディングにおけるアクセスユニット非依存コード化ピクチャバッファ除去時間 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 井関 守三 |