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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05H
管理番号 1357316
審判番号 不服2018-10837  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-08 
確定日 2019-11-22 
事件の表示 特願2016-197827「プラズマ処理装置の制御方法、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 69209〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月29日(優先権主張 平成25年2月12日)に出願した特願2013-112562号(以下「原出願」という。)の一部を平成28年10月6日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成29年 8月16日付け:拒絶理由通知書
平成29年11月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 4月25日付け:拒絶査定
平成30年 8月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年8月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年8月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項10の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項10】
被処理物がプラズマ処理されるプラズマ処理室と、前記プラズマ処理室の内部に高周波を放射する平板状の第一の電極と、前記第一の電極に高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記第一の電極と対向し前記被処理物が載置される第二の電極と、前記第二の電極に高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流が流れる経路上の第一の高周波電圧の位相と前記第二の電極に印加される第二の高周波電圧の位相との差である位相差を検知し、前記検知された位相差が前記第一の高周波電圧の極大値に対応する位相差の値となるように前記第一の高周波電圧を制御するためのリアクタンスを制御する制御部をさらに備え、
前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流の値は、前記第二の高周波電源から前記第二の電極に向かって流れる電流の値から、前記第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流の値を減じた値であることを特徴とするプラズマ処理装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の、平成29年11月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項10の記載は次のとおりである。

「【請求項10】
被処理物がプラズマ処理されるプラズマ処理室と、前記プラズマ処理室の内部に高周波を放射する平板状の第一の電極と、前記第一の電極に高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記第一の電極と対向し前記被処理物が載置される第二の電極と、前記第二の電極に高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記第二の電極に印加される第一の高周波電圧の位相と前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流が流れる経路上の第二の高周波電圧の位相との差である位相差を検知し、前記検知された位相差が前記第二の高周波電圧の極大値に対応する位相差の値となるように前記第二の高周波電圧を制御するためのリアクタンスを制御する制御部をさらに備えることを特徴とするプラズマ処理装置。」

2 補正の適否
本件補正のうち請求項10についての補正は、本件補正前の請求項10に記載された発明を特定するために必要な事項である「第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流」について、「前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流の値は、前記第二の高周波電源から前記第二の電極に向かって流れる電流の値から、前記第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流の値を減じた値である」と限定するものであって、本件補正前の請求項10に記載された発明と本件補正後の請求項10に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正における請求項10に係る発明の補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、
また、本件補正前の請求項10の「第二の電極に印加される第一の高周波電圧の位相」を「第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流が流れる経路上の第一の高周波電圧の位相」、「第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流が流れる経路上の第二の高周波電圧の位相」を「第二の電極に印加される第二の高周波電圧の位相」、「第二の高周波電圧の極大値」を「第一の高周波電圧の極大値」、「第二の高周波電圧を制御するためのリアクタンスを制御する」を「第一の高周波電圧を制御するためのリアクタンスを制御する」とそれぞれ明りょうにするものであって、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項10に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された原出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、「特開2002-343768号公報」(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。

「【0015】また、本発明は、サセプタに接続されサセプタと電界発生手段との間にバイアスを印加する電源と、電界発生手段と接地との間に接続され回路特性が変更自在な第2のフィルタとを更に備え、制御手段は、センサから出力される検出結果により第2のフィルタの回路特性を制御するようにしてもよい。サセプタと電界発生手段との間にバイアスを印加することにより、プラズマのエネルギー及び異方性を制御することができる。このとき、サセプタから電界発生手段及び第2のフィルタを経て接地に至る第2の経路のインピーダンスをプラズマの状態に応じて調整できるので、プラズマが発生してイオンシースができ、またこのイオンシースの状態が変化しても、その影響を受けずに、正確な制御ができる。ここで、センサは、例えば、第2のフィルタを流れる電流の値、第2のフィルタにかかる電圧の値、上記電流と電圧との位相差、サセプタに流れる電流の値、サセプタにかかる電圧の値、第2のフィルタの電流・電圧とサセプタの電流・電圧との位相差などを検出するものであればよい。また、処理室の壁(サセプタ及び対向電極を除く)や窓に取り付けたセンサの出力信号を第2のフィルタの制御に用いてもよい。また、これらを共用してもよい。」

「【0020】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ここでは、本発明をエッチング装置に適用した場合を例に説明する。
(第1の実施の形態)図1は、本発明の第1の実施の形態であるエッチング装置の構成を示す図である。この図では一部構成について断面構造が示されている。
【0021】このエッチング装置の処理室11は、気密に閉塞自在な円筒形状の処理容器12内に形成される。この処理容器12は、アルミニウムなどの導電材料で形成されている。処理容器12の底部には、真空ポンプ(図示せず)に通ずる排気口13が設けられており、処理室11を所望の真空度にすることができる。また、処理容器12の底部には、絶縁板23を介して支持台22が設けられてており、この支持台22上に円柱状のサセプタ21が固定されている。このサセプタ21はエッチング対象のウェーハ(被処理体)Wを置くための水平な載置面を有している。サセプタ21は下部電極を兼ねており、アルミニウムなどの導電材料で形成される。
【0022】処理室11の上部空間には、複数の貫通孔31Aが設けられた円盤状の上部電極31が、サセプタ21の載置面と平行に配置されている。この上部電極31は単結晶シリコンなどの導電材料で形成され、支持体32の下部に固定されている。支持体32はアルミニウムなどの導電材料で形成され、上部電極31を底面として内部に中空円柱を構成している。そして、絶縁リング33を介して処理容器12の上部開口を閉塞するように取り付けられている。支持体32の上面中央にはガス導入口32Aが設けられ、このガス導入口32Aにはガス導入管39が接続されている。このガス導入管39からAr及びO_(2) などのプロセスガスが導入される。
【0023】また、上部電極31と同電位の支持体32には高周波電源34が接続されている。この高周波電源34は、数十MHz程度の周波数で、電力値が5kW程度の高周波電力を出力するものであればよい。ここでは周波数が60MHz、電力値が3.3kWの高周波電力を出力するものとする。また、この高周波電源34と支持体32との間には、これらのインピーダンスを整合させるマッチング回路35が接続されている。このマッチング回路35は例えば可変コンデンサで構成され、その容量はコントローラ36で制御される。
【0024】一方、サセプタ21は、リアクタンスが変更自在な共振回路からなる第1のフィルタ27を介して接地されている。上部電極31からサセプタ21及びフィルタ27を経て接地に至る経路を第1の経路と呼ぶ。フィルタ27のリアクタンスを変更することにより、上部電極31に供給される高周波電力の周波数(60MHz)に対する第1の経路のインピーダンスを調整することができる。さらに、処理室11内で発生するプラズマPの状態に基づいてフィルタ27に流れる電気信号を検出するセンサ28と、このセンサ28から出力される検出結果によりフィルタ27のリアクタンスを制御する制御手段が設けられている。図1に示したエッチング装置では、フィルタ27の制御手段の機能をマッチング回路35のコントローラ36にもたせているが、フィルタ27の制御手段を別個に設けてもよい。」

「【0037】この状態で高周波電源34から周波数が60MHz、電力値が3.3kWの高周波電力を上部電極31に供給する。この高周波電力は処理室11内に周波数が60MHzの交流電界を形成し、サセプタ21又は処理容器12から接地に抜ける。処理室11内に形成された電界は、処理室11内に供給されたガスを電離させてプラズマPを生成する。このときプラズマPの外周部に電界を伴うイオンシースSHができ、このイオンシースSHにより上部電極31とサセプタ21との間に新たにおよそ200pFの容量C_(SH)が発生する。」

「【0050】(第3の実施の形態)図6は、本発明の第3の実施の形態であるエッチング装置の構成を示す図である。この図において、図1と同一部分を同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。
【0051】図6に示したエッチング装置は、プラズマPを励起するための高周波電力を供給する高周波電源34の他に、上部電極31とサセプタ21との間にバイアスを印加するための高周波電力を供給する高周波電源24を有する2周波数型のエッチング装置である。上部電極31とサセプタ21との間にバイアスを印加することにより、プラズマPのエネルギー及び異方性を制御しつつエッチングをすることができる。高周波電源24は、100kHz?13MHz程度の周波数で、電力値が1.0?5.0kW程度の高周波電力を出力するものであればよい。ここでは周波数が2MHz、電力値が1.5kWの高周波電力を出力するものとする。なお、クリーニング時には高周波電源24の出力は停止されるか、又は100?500Wの低パワーの出力となる。この高周波電源24はマッチング回路25を介してサセプタ21に接続されている。このマッチング回路25は、高周波電源24とサセプタ21のインピーダンスを整合させるものであり、例えば可変コンデンサで構成され、その容量はコントローラ26で制御される。
【0052】一方、上部電極31と同電位の支持体32は、リアクタンスが変更自在な共振回路からなる第2のフィルタ37とを介して接地されている。サセプタ21から上部電極31,支持体32,フィルタ37を経て接地に至る経路を第2の経路と呼ぶ。フィルタ37のリアクタンスを変更することにより、サセプタ21に供給される高周波電力の周波数(2MHz)に対する第2の経路のインピーダンスを調整することができる。
【0053】さらに、フィルタ37に流れる電気信号を検出するセンサ38と、このセンサ38から出力される検出結果によりフィルタ37のリアクタンスを制御する制御手段が設けられている。図6に示したエッチング装置では、フィルタ37の制御手段の機能をマッチング回路25のコントローラ26にもたせている。センサ38及びコントローラ26については、それぞれ図1に示したセンサ28及びコントローラ36と同様に構成され、同様の機能を有している。ただし、フィルタ37の制御手段としてのコントローラ26は、サセプタ21に供給される高周波電力の周波数に対する第2の経路のインピーダンスが小さくなる方向にフィルタ37のリアクタンスを制御する機能を有していればよい。
【0054】ここで、フィルタ37について更に説明する。図7は、フィルタ37の構成を示す回路図である。このフィルタ37は、直流成分の通過を阻止する第1のモジュール37Aと、サセプタ21に供給される高周波電力の周波数に対するリアクタンスが変更自在な第2のモジュール37Bと、上部電極31に供給される高周波電力の周波数(60MHz)の通過を阻止する第3のモジュール37Cとを有している。高周波電源24からサセプタ21に高周波電力を供給すると、上部電極31には数百V程度の直流電圧が発生する。第1のモジュール37Aは例えばコンデンサ37pからなり、上部電極31から接地への直流成分の通過を阻止することにより、直流成分の短絡を防止できる。
【0055】また、第2のモジュール37Bは、例えばコイル37rとコンデンサ37qとの直列回路(LC直列共振回路)で構成される。この場合、コイル37rのインダクタンス及びコンデンサ37qの容量の少なくとも一方を可変とすればよい。ここではコイル37rのインダクタンスを可変とし、コンデンサ37qの容量を固定とする。なお、第2のモジュール37Bが図7に示すようなLC直列共振回路の場合には、第2のモジュール37Bのコンデンサ37qで第1のモジュール37Aのコンデンサ37pを兼ねてもよい。また、第3のモジュール37Cは、例えばコイル37tとコンデンサ37sとの並列回路で構成され、上部電極31に供給される高周波電力の周波数(60MHz)近傍に対して高いインピーダンスをもつように設計される。これにより、上部電極31に供給された高周波電力のフィルタ37への流入を防止できる。
【0056】第1,第2のモジュール37A,37Bと第3のモジュール37Cとの間には、静電的遮蔽又は電磁的遮蔽を行うアルミニウム製又は鉄製の遮蔽板37Dが配置されている。第3のモジュール37Cと第1,第2のモジュール37A,37Bとの間に電気的な干渉が発生した場合、第3のモジュール37Cの帯域阻止能力が大幅に低下し、フィルタ37によるパワーロスが発生して電力効率の低下を招くばかりか、場合によってはフィルタ37に過度の電流が流れてフィルタ37を焼損することも起こりうる。遮蔽板37Dを設けることにより、このような問題を防ぐことができる。
【0057】このような構成のフィルタ37のリアクタンスは、所定のプロセス条件の下で上記第2の経路の共振周波数f_(2) がサセプタ21に供給される高周波電力の周波数(2MHz)と等しくなり、その周波数に対するインピーダンスが最小となるように設計される。プロセス条件に応じてイオンシースSHによるインダクタンスL_(SH)及び容量C_(SH)が変化した場合でも上記第2の経路のインピーダンスを最小とすることができるようにリアクタンスの範囲が設定されることも、図1に示したフィルタ27と同様である。
【0058】例えば、次のようなプロセス条件の下でf_(2) =2MHzとするためには、C=1500pF、1μH≦L≦50μHとすればよい。
・上部電極31に供給される高周波電力
周波数:60MHz、電力値:1.0?5.0kW
・サセプタ21に供給される高周波電力
周波数:2MHz、電力値:1.0?5.0kW
・処理圧力:0.6?10Pa
・プロセスガス:Ar=200?400sccm、O_(2) =5?20sccm
あるいは、イオンシースSHによるインダクタンスL_(SH)の変動範囲上限よりも十分に大きい固定インダクタンスL(例えば5μH以上)、又はイオンシースSHによる容量C_(SH)の変動範囲下限よりも十分に小さい固定容量C(例えば200pF以下)を用いて、フィルタ37を構成してもよい。
【0059】なお、高周波電源24からサセプタ21に供給された2MHzの高周波電力が、やはりサセプタ21に接続されたフィルタ127に流入しないように、フィルタ127は図2に示した第1,第2のモジュール27A,27Bに、2MHzの周波数の通過を阻止する第3のモジュール(図示せず)が直列接続された構成をしている。この場合、フィルタ127のリアクタンスは、第3のモジュールを含めた第1の経路全体の共振周波数f_(1) が上部電極31に供給される高周波電力の周波数(60MHz)と等しくなるように設計される。また、第1,第2のモジュール27A,27Bと第3のモジュールとの間に、静電的遮蔽又は電磁的遮蔽を行うアルミニウム製又は鉄製の遮蔽板を配置することにより、電力効率の低下と焼損を防止できる。また、図8に示すように、フィルタ127を含んだマッチング回路125を用いてもよい。
【0060】エッチング装置に上述した構成をもたせ、フィルタ37を通過する電流に基づいて上記第2の経路全体の2MHzに対するインピーダンスが小さくなる方向に制御することにより、サセプタ21に供給された高周波電力のうち処理容器12に向かう割合が減少し、上部電極31に向かう割合が増大する。これにより、バイアス印加によるプラズマPのエネルギー及び異方性の制御を従来よりも正確に行うことができる。また、プロセス条件を変更してイオンシースSHの状態が変化した場合でも、プラズマPのエネルギー及び異方性の制御を同じ正確さで行うことができる。なお、上部電極31とサセプタ21との間に印加するバイアスは直流又はパルスバイアスであってもよいので、高周波電源24に代えて直流電源を用いてもよい。また、プラズマPの状態を検出するセンサとして、図5に示したQMSなどのように処理容器12の内壁面に設置されたセンサを用いてもよい。」

イ したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「プラズマPが発生する処理室11と、処理室11の上部空間にサセプタ21の載置面と平行に配置されている円盤状の上部電極31と、エッチング対象のウェーハ(被処理体)Wを置くための水平な載置面を有し、下部電極を兼ねているサセプタ21と、プラズマPを励起するための高周波電力を供給する高周波電源34と、上部電極31とサセプタ21との間にバイアスを印加するための2MHzの高周波電力を供給する高周波電源24を有するエッチング装置であって、
第2のフィルタ37のリアクタンスを変更することにより、サセプタ21から上部電極31,支持体32,第2のフィルタ37を経て接地に至る第2の経路のインピーダンスを調整し、
センサ38は、第2のフィルタ37の電圧とサセプタの電圧との位相差を検出し、
センサ38から出力される検出結果により第2のフィルタ37のリアクタンスを制御する制御手段が設けられ、第2のフィルタ37の制御手段の機能をコントローラ26にもたせており、
第2のフィルタ37は、変更自在な第2のモジュール37Bを有し、
第2のモジュール37Bは、コイル37rのインダクタンス及びコンデンサ37qの容量の少なくとも一方を可変とし、
第2のフィルタ37のリアクタンスは、所定のプロセス条件の下で第2の経路の共振周波数がサセプタ21に供給される高周波電力の周波数と等しくなり、その周波数に対するインピーダンスが最小となるように設計され、
プロセス条件に応じてイオンシースによるインダクタンス及び容量が変化した場合でも第2の経路のインピーダンスを最小とするリアクタンスの範囲が設定され、
第2の経路全体の2MHzに対するインピーダンスが小さくなる方向に制御することにより、サセプタ21に供給された高周波電力のうち処理容器12に向かい接地に抜ける割合が減少し、上部電極31に向かう割合が増大するエッチング装置。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「プラズマPが発生する処理室11」は、本件補正発明の「被処理物がプラズマ処理されるプラズマ処理室」に、
引用発明の「処理室11の上部空間にサセプタ21の載置面と平行に配置されている円盤状の上部電極31」は、本件補正発明の「プラズマ処理室の内部に高周波を放射する平板状の第一の電極」に、
引用発明の「『サセプタ21の載置面』は『上部電極31』『と平行に配置され』、『エッチング対象のウェーハ(被処理体)Wを置くための水平な載置面を有し、下部電極を兼ねているサセプタ21』」は、本件補正発明の「第一の電極と対向し前記被処理物が載置される第二の電極」に、
引用発明の「プラズマPを励起するための高周波電力を供給する高周波電源34」は、本件補正発明の「第一の電極に高周波電力を供給する第一の高周波電源」に、
引用発明の「上部電極31とサセプタ21との間にバイアスを印加するための2MHzの高周波電力を供給する高周波電源24」は、本件補正発明の「第二の電極に高周波電力を供給する第二の高周波電源」に、
引用発明の「エッチング装置」は、本件補正発明の「プラズマ処理装置」に、
引用発明の「『リアクタンスを制御する制御手段』『の機能を』『もたせて』いる『コントローラ26』」は、本件補正発明の「リアクタンスを制御する制御部」に、
に、それぞれ相当する。

(イ)引用発明の「センサ37は、第2のフィルタ37の電圧とサセプタの電圧との位相差を検出し」は、本件補正発明の「前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流が流れる経路上の第一の高周波電圧の位相と前記第二の電極に印加される第二の高周波電圧の位相との差である位相差を検知し」とは、「第一の高周波電圧の位相と前記第二の電極に印加される第二の高周波電圧の位相との差である位相差を検知し」の点で一致する。

(ウ)電力は、電流と電圧の積で表される。
そうすると、引用発明の「『サセプタ21に供給された高周波電力』における電流の値」は、本件補正発明の「前記第二の高周波電源から前記第二の電極に向かって流れる電流の値」に、
引用発明の「『上部電極31に向かう割合』の『高周波電力』における電流の値」は、本件補正発明の「前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流の値」に、
引用発明の「『サセプタ21に供給された高周波電力のうち処理容器12に向かい接地に抜ける割合』の『高周波電力』における電流の値」は、本件補正発明の「前記第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流の値」に、それぞれ相当する。

(エ)引用発明の「第2の経路全体の2MHzに対するインピーダンスが小さくなる方向に制御することにより、サセプタ21に供給された高周波電力のうち処理容器12に向かい接地に抜ける割合が減少し、上部電極31に向かう割合が増大する」との特定から、「サセプタ21に供給された高周波電力」における電流は、「サセプタ21に供給された高周波電力のうち処理容器12に向かい接地に抜ける」電力における電流と「『サセプタ21に供給された高周波電力のうち』『上部電極31に向かう』」電力における電流に分かれることが把握できる。
そうすると、引用発明の「第2の経路全体の2MHzに対するインピーダンスが小さくなる方向に制御することにより、サセプタ21に供給された高周波電力のうち処理容器12に向かい接地に抜ける割合が減少し、上部電極31に向かう割合が増大する」は、本件補正発明の「前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流の値は、前記第二の高周波電源から前記第二の電極に向かって流れる電流の値から、前記第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流の値を減じた値である」に、相当する。

なお、補足すれば、平成30年8月8日付けで提出された審判請求書において、「『前記第二の高周波電流の値は、前記第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流の値と前記第一の高周波電流の値の和である』の補正の根拠は、同上書の段落[0021]、添付図面の図1等の記載にあると思料する。例えば、段落[0021]には、『このようなウェハステージ120に印加された高周波バイアスの電流は、Siウェハ117上のプラズマシースを介して、エッチングチャンバー108の内壁に存在するアースとして設置されているアース内筒107に向かってプラズマ内を伝播する。』と記載されている。」と補正の根拠が記載されていることからも、前記第二の高周波電源から前記第二の電極に向かって流れる電流(ウェハステージ120に印加された高周波バイアスの電流)は、前記第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流(Siウェハ117上のプラズマシースを介して、エッチングチャンバー108の内壁に存在するアースとして設置されているアース内筒107に向かってプラズマ内を伝播する電流)と前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流に分かれて伝播している。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「被処理物がプラズマ処理されるプラズマ処理室と、前記プラズマ処理室の内部に高周波を放射する平板状の第一の電極と、前記第一の電極に高周波電力を供給する第一の高周波電源と、前記第一の電極と対向し前記被処理物が載置される第二の電極と、前記第二の電極に高周波電力を供給する第二の高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
第一の高周波電圧の位相と前記第二の電極に印加される第二の高周波電圧の位相との差である位相差を検知し、リアクタンスを制御する制御部をさらに備え、
前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流の値は、前記第二の高周波電源から前記第二の電極に向かって流れる電流の値から、前記第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流の値を減じた値であるプラズマ処理装置。」

【相違点1】
本件補正発明では「第一の高周波電圧」が、「第二の電極から第一の電極に向かって流れる高周波電流が流れる経路上」の電圧であるのに対し、引用発明では「第2のフィルタ37の電圧」が、そのようなものであるのか明らかでない点で一応相違する。

【相違点2】
リアクタンスを制御する制御部について、本件補正発明では「検知された位相差」が、「第一の高周波電圧の極大値に対応する位相差の値となるように前記第一の高周波電圧を制御する」ものであるのに対し、引用発明では「『検出』された『位相差』」を用いて、そのような制御をするものであるのか明らかでない点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)本願発明には「前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流の値は、前記第二の高周波電源から前記第二の電極に向かって流れる電流の値から、前記第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流の値を減じた値である」と特定されている。
そうすると、「前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流」は、第二の高周波電源から前記第二の電極に向かって流れる電流の値から、第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流の値を減じた結果、流れる電流であり、第二の電極から第一の電極に向かって流れる高周波電流が流れる経路は、前記減じた結果の電流が流れる経路と考えられる。
そして、引用発明において、上部電極31に向かう電流は、サセプタ21から上部電極31,支持体32,第2のフィルタ37を経て接地に至る経路に電流が流れることから、引用発明の「第2のフィルタ37の電圧」は、本件補正発明の「第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流が流れる経路上の第一の高周波電圧」に相当する。

(イ)また、当該電流が流れる経路上の第一の高周波電圧について、本願の明細書を参酌した場合についても、更に検討する。
本願の明細書の【0048】には「なお、実施例1と同様、バイアス電流の位相差だけでなくバイアス電圧同士の位相差で制御しても制御方法は同様である。ただし、共振点となる位相差は、測定する電圧の場所に応じて変化するため、必ずしも-90°ではないので使用する装置の構成に応じて事前に調査しておく必要がある。」と記載され、また、本願の明細書の【0035】には「対向バイアス電流が流れる経路上の地点(例えば図2中の符号208)とアースとの間の電圧や共振用コイル201両端の電圧をモニタ、図4に示すように対向バイアスのピーク間電圧402と可変コンデンサ202は対向バイアス電流の挙動とまったく同じになる。したがって、モニタ信号として、対向バイアス電圧値を用いても同様に制御できる。」、【0063】には「対向バイアス制御機構内の電圧測定ポイント208での対向バイアス電圧Vpp304もプロットしてあるが、対向バイアス電流Ipp302との挙動は一致するので、以下、対向バイアス電圧Vpp304を検知する場合に置き換えて説明する。」、【0066】には「RFバイアス整合器121で検知したRFバイアス電圧Vpp513、対向バイアス制御機構内の電圧測定ポイント208で検知した対向バイアス電圧Vpp514」と記載されていることから、当該電流が流れる経路上の第一の高周波電圧は、対向バイアス電流が流れる経路上の地点(例えば図2中の符号208)とアースとの間の電圧、共振用コイル201両端の電圧、又は、対向バイアス制御機構内の電圧測定ポイント208での対向バイアス電圧Vpp304である。
そうすると、引用発明のサセプタ21から上部電極31,支持体32,第2のフィルタ37を経て接地に至る経路上の「第2のフィルタ37の電圧」は、対向バイアス電流が流れる経路上の地点の電圧に相当し、本件補正発明の「第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流が流れる経路上の第一の高周波電圧」に相当する。

(ウ)上記(ア)、(イ)からして、本件補正発明の「第二の電極から第一の電極に向かって流れる高周波電流が流れる経路上」の電圧である「第一の高周波電圧」と、引用発明の「第2のフィルタ37の電圧」との事項は実質的な相違点にならない。

イ 相違点2について
(ア)引用発明において「第2の経路全体の2MHzに対するインピーダンスが小さくなる方向に制御することにより、サセプタ21に供給された高周波電力のうち処理容器12に向かい接地に抜ける割合が減少し、上部電極31に向かう割合が増大する」ように制御していることから、サセプタ21から上部電極31,支持体32,第2のフィルタ37を経て接地に至る第2の経路の高周波電力が増大するように制御しているものと認められる。

(イ)引用発明における「第2のフィルタ37のリアクタンスは、所定のプロセス条件の下で第2の経路の共振周波数がサセプタ21に供給される高周波電力の周波数と等しくなり、その周波数に対するインピーダンスが最小となるように設計され、プロセス条件に応じてイオンシースによるインダクタンス及び容量が変化した場合でも第2の経路のインピーダンスを最小とするリアクタンスの範囲が設定され」との事項は、共振点となるように制御していることにほかならない。

(ウ)引用発明は「第2のフィルタ37は、変更自在な第2のモジュール37Bを有し、第2のモジュール37Bは、コイル37rのインダクタンス及びコンデンサ37qの容量の少なくとも一方を可変とし」と特定していることから、共振点となるように制御する場合には、「コイル37rのインダクタンス」「を可変と」すると「第2のフィルタ37の電圧」の極小値に対応するような制御をし、「コンデンサ37qの容量」「を可変と」すると「第2のフィルタ37の電圧」の極大値に対応するような逆の制御をすることとなる。
そうすると、コンデンサ37qの容量を可変とし「第2のフィルタ37の電圧」の極大値に対応するように制御することは、当業者が適宜選択する事項にすぎない。

(エ)上記ア及び上記(ア)?(ウ)から考えて、引用発明における「第2のフィルタ37は、変更自在な第2のモジュール37Bを有し、第2のモジュール37Bは、コイル37rのインダクタンス及びコンデンサ37qの容量の少なくとも一方を可変とし、」「センサ38は、第2のフィルタ37の電圧とサセプタの電圧との位相差を検出し、センサ38から出力される検出結果により第2のフィルタ37のリアクタンスを制御する制御手段が設けられ、第2のフィルタ37の制御手段の機能をコントローラ26にもたせており」での制御を、センサ38は、第2のフィルタ37の電圧とサセプタの電圧との位相差を検出し、センサ38から出力される検出結果により第2のフィルタ37の電圧の極大値に対応するように制御するようになすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)請求人の主張について
ア 本件請求人は、平成30年8月8日付けで提出された審判請求書において、
(ア)「 『前記第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流』は、引用文献1に開示も示唆も無いと言える。」、
(イ)「引用文献1の段落[0031]には、『コントローラ36は、センサ28が検出した電流及び電圧から両者の位相差を求めてフィルタ27の消費電力値を算出する機能と、検出した電流値又は電圧値と算出した電力値とを基にフィルタ27のリアクタンスを制御する機能とを有している。』と記載されており、この記載によれば、引用文献1における『位相差』は、『センサ28が検出した電流及び電圧から両者の位相差を求めてフィルタ27の消費電力値を算出する』ことのために用いられているだけであり、リアクタンスの制御に用いられていないと解釈できる。」、
(ウ)「引用文献1の段落[0016]には、『センサが第2のフィルタに流れる電流の値を検出するものである場合、制御手段は、電流の値が大きくなる方向に第2のフィルタの回路特性を制御するようにしてもよい。また、センサが第2のフィルタにかかる電圧の値を検出するものである場合、制御手段は、電圧の値が小さくなる方向に第2のフィルタの回路特性を制御するようにしてもよい。』と記載されており、引用文献1において電圧制御する場合は、電圧の値が小さくなる方向に第2のフィルタの回路特性を制御することになっているが、本願発明の電圧制御の場合、極大値を基に制御しているため、本願発明と引用文献1では電圧制御の方向性が異なっている。」、と本件補正発明の進歩性に関し、主張している。

イ 上記主張について以下検討する。
(ア)上記(ア)については、上記(3)ア(ウ)の対比で検討したとおりである。

(イ)引用文献1の【0031】に記載の「位相差」は、電流及び電圧から両者の位相差を求めてたものであり、上記引用発明で認定した「第2のフィルタ37の電圧とサセプタの電圧との位相差」とは、異なるものであり、また、引用文献1の【0031】に記載の「フィルタ27」は、上記引用発明のサセプタ21から上部電極31,支持体32,第2のフィルタ37を経て接地に至る経路の第2の経路の第2のフィルタ37とは異なるものであることから、引用文献1の【0031】は、第2のフィルタ37の電圧とサセプタの電圧との位相差から第2のフィルタ37の消費電力値を算出することについて記載されたものではない。

(ウ)上記(ウ)については、上記(4)の判断で検討したとおり、引用発明において、第2のフィルタ37は共振回路であり、共振点で制御していること、第2のモジュール37Bは、コンデンサ37qの容量を可変とすることも含むから、第2のフィルタ37の電圧の極大値に対応するように制御するようになすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、参考までに、本願の明細書の【0025】?【0027】には、可変リアクタンス素子が、コンデンサの場合とコイルの場合が記載され、本願の明細書の【0063】には「図10は、対向バイアス制御機構104内の可変コンデンサ202の静電容量を変化させた時の、対向バイアス電流Ipp302の変化を対向バイアス電流検知回路203で測定した実測データである。バイアス電流が最大となる点が共振点であるので可変コンデンサ202の容量に対して、対向バイアス電流値は極大値を持つことがわかる。また、この極大値となる可変コンデンサの容量や対向バイアス電流の極大値は、シャワープレート上に形成されるシースの電気容量(Csh)の変化、つまり、プラズマ条件(ソース用電源101の出力パワー、処理圧力、RFバイアス電源123のパワー等)が変わると50pF程度の範囲で変化する。符号301は非共振点、符号303は共振点を示す。また、図10のグラフには、対向バイアス制御機構内の電圧測定ポイント208での対向バイアス電圧Vpp304もプロットしてあるが、対向バイアス電流Ipp302との挙動は一致するので、以下、対向バイアス電圧Vpp304を検知する場合に置き換えて説明する。」と記載され、図10には、共振点303に対応して、対向バイアス電流Ipp302、対向バイアス電圧Vpp304は、ともに極大値となることが見て取れる。そうすると、本願において、可変リアクタンス素子が、可変コンデンサ202の場合には、共振点303に対応して、対向バイアス電流Ipp302、対向バイアス電圧Vpp304は、ともに極大値となっている。

してみれば、請求人の上記主張は、採用することができない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年8月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年11月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項10に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項2、3、5、10、11に係る発明は、その原出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2002-343768号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流」について、「前記第二の電極から前記第一の電極に向かって流れる高周波電流の値は、前記第二の高周波電源から前記第二の電極に向かって流れる電流の値から、前記第二の電極から前記プラズマ処理室の内壁に配置されたアースに向かって流れる電流の値を減じた値である」との限定事項を削除し、明りょうでない記載にしたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加し明りょうにしたものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-20 
結審通知日 2019-09-24 
審決日 2019-10-08 
出願番号 特願2016-197827(P2016-197827)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 波多江 進  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 近藤 幸浩
野村 伸雄
発明の名称 プラズマ処理装置の制御方法、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置  
代理人 ポレール特許業務法人  

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