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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1357318
審判番号 不服2018-13727  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-16 
確定日 2019-11-22 
事件の表示 特願2014-212223「液晶組成物および液晶表示素子」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月16日出願公開、特開2016- 79292〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月17日の出願であって、平成30年6月19日付けの拒絶理由通知に対して、その指定期間内の平成30年8月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月16日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 平成30年10月16日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成30年10月16日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
特許法第17条の2第1項第4号に該当する手続補正である、平成30年10月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、そのうち請求項1についての補正は以下のとおりである。
(1-1)本件補正前の請求項1(すなわち、平成30年8月21日付け手続補正書の請求項1)
「 【請求項1】
第一成分として式(1-1)から式(1-3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。

式(1-1)から式(1-3)において、R^(1)およびR^(2)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。
ただし、前記液晶組成物は下記の式で表される化合物を含まない。

上式において、n、mはそれぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5を意味する。」
(1-2)本件補正後の請求項1(すなわち、平成30年10月16日付け手続補正書の請求項1)
「 【請求項1】
第一成分として式(1-1)から式(1-3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。

式(1-1)から式(1-3)において、R^(1)は、炭素数1から12のアルキルであり;
R^(2)は、炭素数1から12のアルコキシである。
ただし、前記液晶組成物は下記の式で表される化合物を含まない。

上式において、n、mはそれぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5を意味する。」(以下、「本件補正発明」ともいう。)
本件補正の前後の両請求項を対比すると、本件補正は、補正前の請求項1における発明を特定するために必要な事項である
「R^(1)およびR^(2)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである」
なる事項について、「R^(1)は、炭素数1から12のアルキルであり;
R^(2)は、炭素数1から12のアルコキシである」に限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号にいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
そこで、上記本件補正発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(すなわち、いわゆる独立特許要件を満たすか)について以下検討する。

2.独立特許要件の検討
(2-1)引用刊行物及びその記載事項
刊行物A:特表2009-504814号公報(原査定の引用文献6)
刊行物B:特表平2-501071号公報(周知技術を示す文献)

A 特表2009-504814号公報
(A-1)「【請求項1】
極性化合物の混合物を基礎とする負の誘電異方性を有する液晶媒体であって、媒体に基づいて30重量%以上の量で式Iの化合物を少なくとも1種類含む液晶媒体。
【化1】

(式中、
R^(11)は、4個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCF_(3)によって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH_(2)基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-O-、-S-、
【化2】

-C≡C-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
R^(12)は、5個までの炭素原子を有するアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCF_(3)によって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH_(2)基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-O-、-S-、
【化3】

-C≡C-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよい。)
・・・
【請求項10】
以下の式の化合物:
【化9】

、および/または以下の式の化合物:
【化10】

を含むことを特徴とする請求項1ないし9の一項以上に記載の液晶媒体。」
(A-2)「【0027】
本発明の混合物は、70℃以上の透明点と共に非常に広い範囲でネマチック相を示し、非常に好ましい値の容量閾値、比較的高い値の保持率および同時に-30℃および-40℃において非常に良好な低温安定性を示し、非常に低い回転粘度および短い応答時間を有する。本発明の混合物、特に30重量%以上の
【0028】
【化4】

を含むものは、回転粘度γ1の改良に加え、弾性率K33の上昇が応答時間の改良に寄与している事実によって区別される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の混合物の好ましい実施形態の幾つかを以下に示す。」
(A-3)「【0065】
p)式T-1?T-22の1種類以上のフッ素化されたターフェニル類を付加的に含む液晶媒体。
【0066】
【化20.1】

【0067】
【化20.2】

【0068】
【化20.3】

式中、
Rは、R^(2)に示される意味を有し、
Rは、好ましくは、それぞれの場合で1?6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル、アルコキシまたはアルコキシアルキル、2?6個の炭素原子を有するアルケニルまたはアルケニルオキシである。Rは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはペントキシを表す。」
(A-4)「【0161】
<混合物例>
<例1>
【0162】
【表3】

<例2>
【0163】
【表4】

<例3>
【0164】
【表5】
・・・
<例4>
【0165】
【表6】

<例5>
【0166】
【表7】

<例6>
【0167】
【表8】

<例7>
【0168】
【表9】

<例8>
【0169】
【表10】


B 特表平2-501071号公報
(B-1)「式Iで示されるトリフッ素化ターフェニル化合物の好ましい総括的構造は、部分式I、7?I、12で示される構造に相当する:
・・・

」(第4ページ右下欄最終行?第5ページ左上欄下から5行)
(B-2)「式Iで示される化合物は、液晶混合物、好ましくはねじれセルの原則、ゲスト-ホスト効果、整列相の変形の効果または動的散乱の効果にもとづく表示体用の液晶混合物の成分として使用することができる。誘電率の負の異方性[Δε=ε_(?)-ε_(⊥)<(式中、ε_(?)は分子の軸に対して平行の誘電率を表わし、そしてε_(⊥)はこの軸に対して垂直の誘電率を表わす)]を有する、式Iで示される化合物は適用された電場に対して垂直に整列される。」 (第5ページ左下欄第5?12行)

(2-2)刊行物Aに記載された発明
上記刊行物Aの請求項1を引用する請求項10には、「極性化合物の混合物を基礎とする負の誘電異方性を有する液晶媒体であって、媒体に基づいて30重量%以上の量で式Iの化合物(具体的な化合物は摘記(A-1)参照。以下同様。)を少なくとも1種類含み、以下の式の化合物:
【化9】

、および/または以下の式の化合物:
【化10】

を含むことを特徴とする液晶媒体。」が記載されており、【0029】、【0065】?【0068】には、好ましい実施形態としてT1?T22のフッ素化されたターフェニルを付加的に含むことが記載されているから、刊行物Aには、次の発明が記載されているものといえる。
「以下の式の化合物:
【化9】

、および/または以下の式の化合物:
【化10】

及びT-1?T-22の1種類以上のフッ素化されたターフェニルを含むことを特徴とする液晶媒体。」(以下、「引用発明」という。)

(2-3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「負の誘電異方性を有する液晶媒体」は本件補正発明の「負の誘電率異方性を有する液晶組成物」に相当する。
引用発明の「

」は本件補正発明の式(2)で表される化合物」に相当する。
そうすると、本願補正発明と上記引用発明は、
「負の誘電率異方性を有する液晶組成物。」
である点で一致し、次の点で相違している。

<相違点1>
本件補正発明は、第一成分として式(1-1)から式(1-3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有するのに対し、引用発明はT1?T22の1種類以上のフッ素化されたターフェニルを含有する点。

<相違点2>
本件補正発明は、第二成分として式(2)で表される化合物を含有するのに対して、引用発明は
以下の式の化合物:
【化9】

、および/または以下の式の化合物:
【化10】

を含有する点。

<相違点3>
本件補正発明は、液晶化合物が下記の式で表される化合物を含まないのに対し、引用発明はそれら化合物を含まないことが明示されていない点。


(2-4)相違点の検討
<相違点1について>
刊行物Aには、刊行物Aに記載の液晶媒体に式T-5及びT-6等のフッ素化されたターフェニル類を付加的に含むことが、記載されている(摘記(A-3)参照)。ここで、式T-5、T-6のRは炭素数1?6のアルキルであってよく、(O)はOであってよく、mの定義は明示されていないものの、Rと同様に1?6程度であってよいと認められるから、本件補正発明の式(1-1)で表される化合物は式T-5のフッ素化されたターフェニルに包含され、本件補正発明の式(1-2)で表される化合物は式T-6のフッ素化されたターフェニルに包含されているといえる。
そうすると、引用発明におけるT1?T22の1種類以上のフッ素化されたターフェニルは、本件補正発明の第1成分である式(1-1)及び式(1-2)の化合物を包含する。

<相違点2について>
引用発明は、【化9】又は【化10】の化合物を選択肢として含んでおり、そのうち【化9】は、本件補正発明の第二成分である式(2)で表される化合物である。
よって、引用発明は、本件補正発明の式(2)で表される化合物を用いる態様を包含している。

<相違点3について>
刊行物Aには前述の3つの化合物を用いることについて記載がないから、引用発明においてそれらを用いないことは明示的には記載されていないものの、この点において両者に実質的な差異はない。

以上のとおり、本件補正発明において第一成分として式(1-1)又は(1-2)を用いたものは、引用発明に下位概念として包含されている関係にあり、引用発明の選択肢となっている。
一方、刊行物Aの実施例を見ても、本件補正発明に相当する液晶組成物は具体的に開示されていないので、両者が同一であるとまではすることができない。
そこで、本件補正発明が選択発明として進歩性を有するか、その効果について検討する。

まず、特許に係る発明が、先行の公知文献に記載された発明にその下位概念として包含されるときは、当該発明は、先行の公知となった文献に具体的に開示されておらず、かつ、先行の公知文献に記載された発明と比較して顕著な特有の効果、すなわち先行の公知文献に記載された発明によって奏される効果とは異質な効果、又は同質の効果であるが際立って優れた効果を奏する場合を除き、進歩性を有しないと解すべきである。

これについて、請求人は、審判請求書において、「これに対し、出願人は、本願明細書に記載される各実施例で確認された効果が、第二の成分とともに式(1-1)?式(1-3)で表される第一の成分を含有したことによって発現したものであることを裏付けるため、本審判請求書の末尾に実験結果を掲載いたしました。この実験結果で立証されておりますように、2種類の成分のうち第二の成分(3-HH-V)のみを含有する引用文献3?8に記載の液晶組成物は、さらに第一の成分(3-BB2(F)B(2F、3F)-O2)を添加した検討例1?5の液晶組成物に比べて、明らかに負の誘電率異方性Δεが小さく、上限温度NIが低い値になっています。このことから、第二の成分のみでは負に大きな誘電率異方性と高い上限温度を十分に引き出すことができず、第二の成分と第一の成分を併用して初めて、小さな粘度と負に大きな誘電率異方性および高い上限温度の全てが十分に発現することを確認することができます。これに対して、引用文献3?8で評価を行っているのは、2種類の成分のうち第二の成分(各引用文献のCC-3-V)のみを含有する液晶組成物です。そして、第一の成分に対応する、式T-4または式T-5で表される化合物であって、左末端基がアルキル基、右末端基がアルコキシ基であるものについては、その具体的な構造式すら記載されておりません。よって、引用文献3?8からは、本願請求項1に記載される化合物の組み合わせにより、上記のような優れた効果が認められることは予測の範囲外です。」として、本願補正発明の有利な効果を主張している。
しかし、小さな粘度を有するという効果については、刊行物Aには、引用発明は、非常に低い回転粘度を有し、回転粘度γ1の改良に寄与していることが、記載されているし(摘記(A-2)参照)、引用発明の実施例に記載の回転粘度γ1も十分に低いことから(摘記(A-4)参照)、刊行物Aに記載された事項から当業者が予測できない効果を奏したものとも認められない。
また、負に大きな誘電率異方性についても、本件補正発明の式(1-2)で表される化合物のようなターフェニル類は、誘電率の負の異方性を有することは、周知であり(摘記(B-1)(B-2)参照)、引用発明において、第一成分として式(1-1)、式(1-2)で表される化合物を含有するものとすれば、負の誘電率異方性を有することは、当業者にとって明らかであり、刊行物Aに記載された事項から当業者が予測できない効果を奏したものとも認められない。
さらに、第一の成分を追加することによる高い上限温度については実際にこれを裏付ける具体的な実施例や比較例が出願当初明細書中には何も示されていないため、請求人の主張する上記の「有利な効果」を確認することができない。よって、明細書の記載に基づくものではない請求人の上記主張は理由のないものである。
したがって、本願発明は、刊行物Aに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-5)小括
したがって、本件補正発明は、刊行物Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
上記第2のとおり,平成30年10月16日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項に係る発明は,同年8月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるとおりのものであって,その請求項1は次のとおりである。
「 【請求項1】
第一成分として式(1-1)から式(1-3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。

式(1-1)から式(1-3)において、R^(1)およびR^(2)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。
ただし、前記液晶組成物は下記の式で表される化合物を含まない。

上式において、n、mはそれぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5を意味する。」(以下,「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、「平成30年6月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由2」であって、要するに、この出願の請求項1?18に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
そして、該拒絶の理由において引用された刊行物は次のとおりである。

<引用文献等一覧>
3.特開2013-144796号公報
4.特表2014-516365号公報
5.特表2014-516366号公報
6.特表2009-504814号公報
7.特開2012-167279号公報
8.特表2008-505235号公報

3 引用刊行物
査定の拒絶の理由で引用された刊行物6は、上記刊行物Aにほかならず、刊行物Aの記載事項は、前記「2(2-1)A」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2 1(1-1)」で検討した本件補正発明の液晶組成物について、「R^(1)は、炭素数1から12のアルキルであり;
R^(2)は、炭素数1から12のアルコキシである」との事項が「R^(1)およびR^(2)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである」に拡張されたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記事項によって限定したものに相当する本件補正発明が、前記「第2(2-5)」に記載したとおり、刊行物Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、刊行物Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-20 
結審通知日 2019-09-24 
審決日 2019-10-09 
出願番号 特願2014-212223(P2014-212223)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 建二  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 瀬下 浩一
牟田 博一
発明の名称 液晶組成物および液晶表示素子  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
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