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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1357436
審判番号 不服2018-1787  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-08 
確定日 2019-11-27 
事件の表示 特願2017-108076「プログラム、情報処理装置、及び制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018-201668〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月31日の出願であって、平成29年7月21日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月25日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年11月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年2月8日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成31年3月26日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、令和1年5月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、令和1年5月17日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
ゲームを実行する情報処理装置に、
第1ゲーム媒体を用いて対戦相手と対戦するゲームパートの処理に用いられる1つ以上のパラメータそれぞれの上限値を決定するステップと、
前記ゲームパートを開始するステップと、
前記情報処理装置に、前記第1ゲーム媒体に対応する少なくとも一のGUIを表示するステップと、
前記GUIに含まれる一の特定のGUIに対する一のユーザ操作が検出されると、第1条件が満たされる場合に、前記第1ゲーム媒体の状態を切り替える第1処理を実行し、前記第1条件が満たされず且つ第2条件が満たされる場合に、前記第1ゲーム媒体に対応するゲーム効果を発生させる第2処理を実行する処理ステップと、
前記第1ゲーム媒体の状態が切り替わると、前記パラメータの上限値を変化させる変化ステップと、
を実行させる、プログラム。」(以下「本願発明」という。)


第3 引用刊行物等
1.引用刊行物等の記載
(1)引用例
当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である2015年8月8日に頒布された刊行物である「株式会社Wright Flyer Studios 監修,消滅都市 Everything in its right place 最強攻略BOOK,日本,株式会社宝島社 蓮見清一,2015年8月8日,p.6-18,256」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.「消滅都市 Everything in its right place 最強攻略BOOK」(表紙)
イ.「始める前に押さえておきたい基本情報

タマシイを強化・編成してクエストクリアを目指す
クエストクリアのためにもタマシイの強化・編成は重要
クエストへ出発する前にタマシイを編成。リーダーを1体選び最大5体のタマシイを組み合わせてチームを作ろう。クエスト中は、スクーターを操作し、スフィアを集めて敵を攻撃。ボスを倒せばクリアだ。タマシイは、強化することで能力をアップさせることも可能。」
ウ.「タマシイは強化や進化アビリティ覚醒することで能力を上げられる」(008頁上段右)
エ.「タマシイステータスの見方

●3 タマシイのHP。チーム全員の総HPがクエスト時のHPとなる(審決注:黒丸数字を「●+数字」で表記する。以下同。)

●9 タマシイのNo.とタイプ」(008頁中段右)
オ.「クエスト開始前に助っ人を選択
自チームに、選択した助っ人をプラスしてクエストが始まる。能力の高いタマシイを助っ人に選べばクエストが有利になる。また、フレンド以外を助っ人に選ぶとクリア時にフレンド申請が行える。リーダースキルの性能が高い助っ人を見つけたら必ず申請しよう。」(009頁中下段左)
カ.「出現するスフィアを集めて敵を攻撃し、ボスを倒せばクリア。HPが0になるとゲームオーバーとなる。クエスト中の画面には、さまざまな情報が表示されているので、意味を把握しおこう。
クエスト画面の見方
●1 自分の残りHP/最大HP
●2 敵のタマシイ名、残りHP/最大HP
●3 敵の攻撃ゲージ。ゲージ満タンで攻撃
●4 現在のチェイン数&攻撃力アップ率
●5 攻撃までに必要なスフィア量。ゲージ満タンで攻撃
●6 スキル発動までの攻撃回数
●7 タッチするとクエストを一時停止できる」(010頁中段左)
キ.「タマシイのゲージが満タンになると攻撃」(010頁下段左)
ク.「タマシイ右上の回数分攻撃後にタマシイをタップすればスキル発動」(014頁上段左)
ケ.「タマシイは、一定のタマシイExpを取得することでレベルアップする。レベルが上がれば各ステータスもアップし、タマシイが強化されるので積極的にタマシイのレベルを上げていこう。」(016頁上段右)
コ.「●ゲームの内容などについては、ゲーム内より下記方法にてお問い合わせください。
方法(1)…ゲームTOP⇒その他⇒お問い合わせ⇒お問い合わせフォーム
方法(2)…タイトル画面⇒サポート⇒お問い合わせ」(256頁下段)
サ.上記ア乃至コを含む引用例の全記載から、引用例には、ゲーム「消滅都市」の内容、すなわち、ゲーム「消滅都市」のゲームプログラムが記載されているものと認められる。

上記ア乃至サの記載から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「タマシイを強化・編成してクエストクリアを目指すゲームであって、
クエストへ出発する前にタマシイを編成し、リーダーを1体選び最大5体のタマシイを組み合わせてチームを作り、
クエスト中は、スクーターを操作し、スフィアを集めて敵を攻撃し、ボスを倒せばクリアするものであって、
自チームに、選択した助っ人をプラスしてクエストが始まり、能力の高いタマシイを助っ人に選べばクエストが有利になり、チーム全員の総HPがクエスト時のHPとなり、
クエスト画面には、自分の残りHP/最大HP、攻撃までに必要なスフィア量、ゲージ満タンで攻撃、スキル発動までの攻撃回数が表示され、
出現するスフィアを集めて敵を攻撃し、ボスを倒せばクリアし、HPが0になるとゲームオーバーとなり、
タマシイ右上の回数分攻撃後にタマシイをタップすればスキル発動する、ゲーム「消滅都市」のゲームプログラム。」


第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
1.後者の「ゲーム「消滅都市」のゲームプログラム」は、前者の「プログラム」に相当する。そして、後者の「ゲーム「消滅都市」」が、「ゲームを実行する情報処理装置」にゲームプログラムに伴う処理ステップを実行させることにより実現されるものであることは明らかであるから、前者の「プログラム」と、後者の「ゲーム「消滅都市」のゲームプログラム」とは、「ゲームを実行する情報処理装置に、処理ステップを実行させるプログラム」との概念で共通する。
2.後者の「タマシイ」、「敵」及び「クエスト」は、それぞれ、前者の「第1ゲーム媒体」、「対戦相手」及び「ゲームパート」に相当する。
3.本願発明の「第1ゲーム媒体を用いて対戦相手と対戦するゲームパートの処理に用いられる1つ以上のパラメータそれぞれの上限値を決定するステップ」とは、本願明細書の「【0036】HPは、対戦ゲームパートの実行中に用いられるユーザの第1パラメータの上限値を決定するために用いられるパラメータである。本実施形態において、デッキに含まれる全ての第1ゲーム媒体のHPの合計が、対戦ゲームパートの開始時におけるユーザの第1パラメータの上限値として用いられる。」を参酌すると、‘対戦相手と対戦するゲームパートの処理に用いるデッキに含まれる全ての第1ゲーム媒体のHPの合計値で定めること’が包含される。
そうすると、後者の「HP」は、前者の「ゲームパートの処理に用いられるパラメータ」に相当するから、後者の「チーム全員の総HP」は、前者の「パラメータの上限値」に相当することとなる。
してみると、後者の「チーム全員の総HPがクエスト時のHPとな」ることは、前者の「第1ゲーム媒体を用いて対戦相手と対戦するゲームパートの処理に用いられる1つ以上のパラメータそれぞれの上限値を決定する」ことに相当する。
4.後者の「クエストが始まり」は、前者の「ゲームパートを開始する」に相当する。
5.後者の「タマシイ」は、タップするとスキル発動するものであるから、前者の「第1ゲーム媒体」に相当すると共に、前者の「表示」される「GUI」に相当する。
6.後者の「タマシイをタップ」は、最大5体のタマシイを組み合わせたチームの1のタマシイをタップすることは明らかであるから、前者の「GUIに含まれる一の特定のGUIに対する一のユーザ操作」に相当する。また、後者の「スキル発動」は、前者の「ゲーム効果」に相当する。してみると、後者の「タマシイをタップすればスキル発動する」は、前者の「GUIに含まれる一の特定のGUIに対する一のユーザ操作が検出されると、前記第1ゲーム媒体に対応するゲーム効果を発生させる処理を実行する」ことに相当する。

したがって、両者は、
「ゲームを実行する情報処理装置に、
第1ゲーム媒体を用いて対戦相手と対戦するゲームパートの処理に用いられる1つ以上のパラメータそれぞれの上限値を決定するステップと、
前記ゲームパートを開始するステップと、
前記情報処理装置に、前記第1ゲーム媒体に対応する少なくとも一のGUIを表示するステップと、
前記GUIに含まれる一の特定のGUIに対する一のユーザ操作が検出されると、前記第1ゲーム媒体に対応するゲーム効果を発生させる処理を実行する処理ステップと、
を実行させる、プログラム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
GUIに含まれる一の特定のGUIに対する一のユーザ操作が検出されると、本願発明は、「第1条件が満たされる場合に、前記第1ゲーム媒体の状態を切り替える第1処理を実行し、前記第1条件が満たされず且つ第2条件が満たされる場合に、前記第1ゲーム媒体に対応するゲーム効果を発生させる第2処理を実行する処理ステップと、前記第1ゲーム媒体の状態が切り替わると、前記パラメータの上限値を変化させる変化ステップ」を実行するものであるのに対し、引用発明は、タマシイ右上の回数分攻撃後にスキル発動するものである点。


第5 判断
上記[相違点]について、以下、検討する。
本願の出願日前である平成28年3月28日に頒布された刊行物である「パズル&ドラゴンズ,月刊アプリスタイル,第3巻 第4号,日本,株式会社アプリスタイル,p.042-043」(以下「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。
「バトルでのスキル使用ルール
○1バトル中、【スキル1】の発動ターン数が溜まると、【スキル1】が発動できるようになる。(審決注:白丸数字を「○+数字」で表記する。以下同。)
○2【スキル1】を使用しないまま【スキル2】の発動ターン数が溜まると、【スキル2】が発動できるようになる。【スキル2】が発動可能になって以降は、【スキル1】が発動できなくなる。
※【スキル1】【スキル2】ともに、発動すると再度1からスキルターンを溜め直し。」(043頁中段右)
そうすると、上記刊行物からは、「【スキル2】の発動ターン数が溜まると、【スキル2】が発動できるようになり、【スキル2】を発動すると、再度1からスキルターンを溜め直すのであるから、【スキル2】の発動ターン数は発動条件を満たさなくなる。そして、その状況で、【スキル1】の発動ターン数が溜まると、【スキル1】が発動できるようになる,とのスキルの使用形態。」との技術事項(以下「技術事項」という。)が把握できる。
そうすると、上記技術事項から、「第1条件が満たされる場合(【スキル2】の発動ターン数が溜まる)に、前記第1ゲーム媒体の第1処理(【スキル2】が発動できる)を実行し、前記第1条件が満たされず(【スキル2】の発動ターン数は発動条件を満たさなくなる)且つ第2条件が満たされる場合(その状況で、【スキル1】の発動ターン数が溜まる)に、前記第1ゲーム媒体に対応するゲーム効果を発生させる第2処理(【スキル1】が発動できるようになる)を実行する処理ステップ」は、本願の出願前において周知技術(以下、「周知技術1」という。)であるといえる。
また、ゲームプログラムの分野において、ユーザの操作に応じて自身又は味方のキャラクタの状態を切り替え、パラメータの上限値を変化させることは周知技術である(例えば、「シフタ・デバンドの効果と仕様,PSO2初心者の疑問答えてゆきます(仮),2017年4月8日,[平成31年3月14日検索]、インターネット<URL:https://pso2-beginner.com/blog-entry-94.html>」(特に、第3頁に記載の「デバンドタフネス」を参照。)、「ごえモン,【FGO攻略】エイリークは最大HP増加スキル“血畷の獣斧”を取得,電撃App,2016年8月4日,[平成31年3月14日検索],インターネット<URL:http://dengekionline.com/elem/000/001/333/1333471/>」(特に、1頁「第3のスキル“血畷の獣斧”を習得します。効果は自身の弱体状態を解除&最大HPが増える状態を付与(3ターン)で、CTは8です。」との記載を参照。)以下、「周知技術2」という。)。
そして、ゲームプログラムにおいて、変化に富んだゲーム展開を実現することは、周知の課題であるから、引用発明に、上記周知技術1を適用することは、当業者が容易に想起し得るものである。
そして、「タマシイをタップ」した際に実行する処理の選択肢として、「スキル発動」のほかに自身又は味方のキャラクタの「状態を切り替える処理」とすることは、上記周知技術2に照らせば、当業者が適宜選択し得る事項にすぎない。

そうすると、本願発明は、引用発明、上記周知技術1及び2より、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明、上記周知技術1及び2から、当業者が予測し得る範囲内のものである。

請求人は、周知技術1には、「スキル1を使用しないままスキル2の発動ターン数がたまると、スキル2が発動できるようになる。」との記載から、スキル1の発動条件を満たさずスキル2の発動条件だけが満たされるという状態はあり得ません。 したがって、周知技術1には、本願発明1の「前記第1条件が満たされず且つ第2条件が満たされる場合に、前記第1ゲーム媒体に対応するゲーム効果を発生させる第2処理を実行する」という構成は開示されていません。 したがって、本願請求項1の上記構成は、周知技術ではありません。」旨主張する。
しかし、上記で検討したように、上記技術事項の「【スキル2】の発動ターン数が溜まる」は本願発明の「第1条件が満たされる場合」に対応付けることができ、同様に、「【スキル2】が発動できる」は「第1ゲーム媒体の状態を切り替える第1処理」に、「【スキル2】の発動ターン数は発動条件を満たさなくなる」は「第1条件が満たされず」に、「その状況で、【スキル1】の発動ターン数が溜まる」は「且つ第2条件が満たされる場合」に、「第1ゲーム媒体に対応するゲーム効果を発生させる第2処理」は「【スキル1】が発動できるようになる」に対応付けることが出来るから、「第1条件が満たされる場合に、前記第1ゲーム媒体の第1処理を実行し、前記第1条件が満たされず且つ第2条件が満たされる場合に、前記第1ゲーム媒体に対応するゲーム効果を発生させる第2処理を実行する処理ステップ」は周知技術であるといえる。
よって、上記請求人の主張は採用できない。

よって、本願発明は、引用発明、上記周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、上記周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-09-30 
結審通知日 2019-10-01 
審決日 2019-10-15 
出願番号 特願2017-108076(P2017-108076)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 537- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 泰  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
清水 康司
発明の名称 プログラム、情報処理装置、及び制御方法  
代理人 高梨 玲子  

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