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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1357508
審判番号 不服2018-15626  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-26 
確定日 2019-12-05 
事件の表示 特願2016- 69953「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017-176566〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成28年3月31日の出願であって、平成29年5月30日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年1月16日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年3月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月27日付けで、同年3月19日提出の手続補正書でした補正の却下の決定がされるとともに、同年8月27日付けで拒絶査定がなされた。これに対し同年11月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対して、令和1年6月7日付けで当審において拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年8月2日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?Eは、本願発明を分説するため当審で付与した。)。

(本願発明)
「【請求項1】
A 表示領域を有する表示装置と、
B 複数種の要素演出が複数回発生する可能性がある複合演出を実行することが可能な演出実行手段を備え、
C 前記複数種の要素演出のそれぞれは、互いに異なる態様の演出画像が前記表示領域に表示されることで演出の発生が示されるものであって、前記表示領域における当該演出画像が表示される箇所は、当該演出画像毎に定められており、
D 前記複合演出において、複数種の前記要素演出に含まれる第一要素演出が発生した後、当該第一要素演出とは異なる第二要素演出が発生した場合と、前記第二要素演出が発生した後、前記第一要素演出が発生した場合とでは、前記第一要素演出として表示される前記演出画像である第一演出画像および前記第二要素演出として表示される前記演出画像である第二演出画像のそれぞれが前記表示領域における定められた箇所に表示された状態となって前記複合演出の結末の態様が同じとなっても、当該複合演出の結末の態様が示された後に報知される当否判定結果が当たりとなる蓋然性が異なる場合があることを特徴とする
E 遊技機。」

3 拒絶の理由の概要
当審拒絶理由は、平成30年11月26日に提出された手続補正書により補正がされた請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
また、平成30年11月26日に提出された手続補正書により補正がされた請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。

引用文献:特開2012-238号公報

4 引用文献に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献には、「遊技機」の発明に関し、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された遊技機では、リーチ演出を行う場合の可変表示部における演出を変化させることによって、演出の変化に注目を集めさせ、遊技に対する興趣をある程度向上させることができる。しかし、背景の変化に対応させてリーチ演出を実行しているにすぎず、単調な演出を実行できるにとどまる。そのため、遊技者が演出に対して飽きを感じてしまい、遊技に対する興趣を十分に向上させることができない可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、リーチ演出を行う際に演出を変化させるように構成する場合に、演出態様を多様化できるとともに遊技に対する興趣を向上させることができる遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による遊技機は、各々を識別可能な複数種類の識別情報(例えば、第1特別図柄、第2特別図柄)の可変表示を開始し、表示結果を導出表示する可変表示部(例えば、第1特別図柄表示器8a、第2特別図柄表示器8b)を備え、該可変表示部において導出表示された表示結果があらかじめ定められた特定表示結果(例えば、大当り図柄)となったときに特定遊技状態(例えば、大当り遊技状態)となるとともに、特別条件が成立したこと(例えば、確変大当りや突然確変大当りとなったこと)にもとづいて通常遊技状態であるときに比べて識別情報の可変表示の表示結果が特定表示結果となる確率が向上した高確率状態(例えば、確変状態(高確率状態))となる遊技機において、高確率状態に移行された後、所定回数目(例えば、100回目)の識別情報の可変表示を実行するときに、所定の演出内容(例えば、図43(1)および図44(1)に示すような領域A301で実行される女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出や、領域B302で実行される女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出、領域C303で実行される女性キャラクタC203が買い物をしている態様の演出)を表示可能な複数の表示領域(例えば、図43および図44に示す領域A301?領域C303)においてそれぞれ異なる演出を実行する演出実行手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるスーパーPA3-1?スーパーPA3-19の変動パターンに従ってステップS8003Cで選択したプロセステーブルを用いてステップS8004?S8006,S8101?S8133,S872を実行することによって、擬似連中に領域A?Cに分割して各領域A?Cにおいて所定の演出を実行する部分)と、特定表示結果となるか否かの演出としてリーチ演出(例えば、スーパーリーチの演出)を実行するリーチ演出実行手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるステップS8108で切り替えたプロセスデータに従ってステップS8105を実行する部分)と、を備え、演出実行手段は、複数の表示領域のうち少なくともいずれか1つの表示領域において実行する演出を変化させることが可能であり(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100は、スーパーPA3-1?スーパーPA3-19のいずれかの変動パターンに従って、ステップS8111,S8114,S8117で切り替えたプロセスデータに従ってステップS8105を実行する)、リーチ演出実行手段は、複数の表示領域のうち演出を変化した表示領域における演出の変化態様に応じて異なるリーチ演出を実行し(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100は、ステップS8108で切り替えたプロセスデータを用いてステップS8105を実行することによって、演出が変化した領域に表示されていた女性キャラクタが敵キャラクタとバトルを行うような態様のスーパーリーチの演出を実行する)、複数の表示領域のうち2以上の表示領域において演出が変化した場合には、演出が変化した表示領域それぞれの変化態様の組み合わせに応じた1つのリーチ演出を実行する(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100は、ステップS8108で切り替えたプロセスデータを用いてステップS8105を実行することによって、図43(2)に示すように、領域A301および領域B302の演出が変化したときには、図43(3)?(6)に示すように、領域A301および領域B302に表示されていた女性キャラクタA201および女性キャラクタB202が敵キャラクタ204とバトルを行うような態様の演出を実行する。また、例えば、図44(2)(3)に示すように、領域A301?領域C303全ての演出が変化したときには、図44(4)?(9)に示すように、領域A301?領域C303全てに表示されていた女性キャラクタA201、女性キャラクタB202および女性キャラクタC203が敵キャラクタ204とバトルを行うような態様の演出を実行する。)ことを特徴とする。そのような構成により、複数の表示領域のうちのいずれの表示領域において演出が変化したかによって異なるリーチ演出が実行されるので、リーチ演出を行う際に演出を変化させるように構成する場合の演出態様を多様化することができる。また、遊技者に対していずれかの表示領域において演出の変化が発生するかもしれないという期待感をもたせることができ、遊技に対する興趣を向上させることができる。
・・・
【0012】
遊技機は、特定遊技状態とするか否かを表示結果の導出表示以前に決定する事前決定手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS61を実行する部分)を備え、演出実行手段は、事前決定手段によって特定遊技状態とすると決定された場合と、事前決定手段によって特定遊技状態としないと決定された場合とで、異なる順序で複数の表示領域において実行する演出を変化させる(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、図12および図13に示すように、演出が変化する領域の組み合わせが同じ領域Aおよび領域Bである場合であっても、大当りである場合には、はずれである場合と比較して、領域Aおよび領域Bの順に演出が変化するスーパーPA3-13の変動パターンを、領域Bおよび領域Aの順に演出が変化するスーパーPA3-14の変動パターンよりも高い割合で選択し、演出制御用マイクロコンピュータ100は、遊技制御用マイクロコンピュータ560から受信した変動パターンコマンドで示される変動パターンに従って演出図柄の変動表示を実行する)ように構成されていてもよい。そのような構成によれば、同じ表示領域の組み合わせにおける演出が変化した場合でも、いずれの表示領域から演出が変化したかなど変化の順番に応じて、特定遊技状態となることに対する期待度(信頼度)を異ならせることができるので、遊技に対する興趣を向上させることができる。」

(2)「【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。
【0018】
パチンコ遊技機1は、縦長の方形状に形成された外枠(図示せず)と、外枠の内側に開閉可能に取り付けられた遊技枠とで構成される。また、パチンコ遊技機1は、遊技枠に開閉可能に設けられている額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。遊技枠は、外枠に対して開閉自在に設置される前面枠(図示せず)と、機構部品等が取り付けられる機構板(図示せず)と、それらに取り付けられる種々の部品(後述する遊技盤6を除く)とを含む構造体である。
【0019】
ガラス扉枠2の下部表面には打球供給皿(上皿)3がある。打球供給皿3の下部には、打球供給皿3に収容しきれない遊技球を貯留する余剰球受皿4や、打球を発射する打球操作ハンドル(操作ノブ)5が設けられている。また、ガラス扉枠2の背面には、遊技盤6が着脱可能に取り付けられている。なお、遊技盤6は、それを構成する板状体と、その板状体に取り付けられた種々の部品とを含む構造体である。また、遊技盤6の前面には、打ち込まれた遊技球が流下可能な遊技領域7が形成されている。
・・・
【0022】
遊技領域7の中央付近には、液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9が設けられている。この実施の形態では、演出表示装置9の表示画面は、後述するように、確変状態(高確率状態)中の所定の高確率終了回数目(本例では、100回目)の変動表示が実行される場合には、それぞれ個別に所定の演出が実行される「左」、「中」、「右」の3つの演出領域に分割されることがある。この実施の形態では、「中」の演出領域を領域Aといい、「左」の演出領域を領域Bといい、「右」の演出領域を領域Cという。演出表示装置9では、各領域A?Cにおいて所定のストーリー性を有する演出が実行されるとともに、各領域A?Cにおいてそれぞれ実行する演出を共通の時間軸に従って実行する。例えば、この実施の形態では、領域Aでは、通常、女性キャラクタAが空を飛んでいる態様の演出が実行され、領域Bでは、通常、女性キャラクタBが地面の上を歩いている態様の演出が実行され、領域Cでは、通常、女性キャラクタCが買い物をしている態様の演出が実行される。
・・・
【0028】
演出表示装置9は、演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御される。演出制御用マイクロコンピュータが、第1特別図柄表示器8aで第1特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させ、第2特別図柄表示器8bで第2特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させるので、遊技の進行状況を把握しやすくすることができる。」

(3)「【0172】
図12(A),(B)は、ROM54に記憶されている当り変動パターン判定テーブル137A?137Bを示す説明図である。当り変動パターン判定テーブル137A?137Bは、可変表示結果を「大当り」や「小当り」にする旨の判定がなされたときに、大当り種別や変動パターン種別の決定結果などに応じて、変動パターン判定用の乱数(ランダム3)にもとづいて、変動パターンを複数種類のうちのいずれかに決定するために参照されるテーブルである。各当り変動パターン判定テーブル137A?137Bは、変動パターン種別の決定結果に応じて、使用テーブルとして選択される。すなわち、変動パターン種別をノーマルCA3-1?ノーマルCA3-2、スーパーCA3-3?スーパーCA3-7のいずれかにする旨の決定結果に応じて当り変動パターン判定テーブル137Aが使用テーブルとして選択され、変動パターン種別を特殊CA4-1、特殊CA4-2のいずれかにする旨の決定結果に応じて当り変動パターン判定テーブル137Bが使用テーブルとして選択される。各当り変動パターン判定テーブル137A?137Bは、変動パターン種別に応じて、変動パターン判定用の乱数(ランダム3)の値と比較される数値(判定値)であって、演出図柄の可変表示結果が「大当り」である場合に対応した複数種類の変動パターンのいずれかに対応するデータ(判定値)を含む。
【0173】
なお、図12(A)に示す例では、変動パターン種別として、ノーマルリーチのみを伴う変動パターンを含む変動パターン種別であるノーマルCA3-1と、ノーマルリーチおよび擬似連を伴う変動パターンを含む変動パターン種別であるノーマルCA3-2と、少なくとも領域Aの演出が変化した後にスーパーリーチに発展する変動パターンを含む変動パターン種別であるスーパーCA3-3と、少なくとも領域Bの演出が変化した後にスーパーリーチに発展する変動パターンを含む変動パターン種別であるスーパーCA3-4と、少なくとも領域Cの演出が変化した後にスーパーリーチに発展する変動パターンを含む変動パターン種別であるスーパーCA3-5と、領域A?Cの全ての演出が変化した後にスーパーリーチに発展する変動パターンを含む変動パターン種別であるスーパーCA3-6と、擬似連とともにスーパーリーチを伴う変動パターンを含む変動パターン種別であるノーマルCA3-7とに種別分けされている場合が示されている。
【0174】
この実施の形態では、スーパーCA3-3の変動パターン種別には、領域Aのみの演出が変化した後にスーパーリーチに発展するスーパーPA3-10と、領域Aおよび領域Bの順に演出が変化した後にスーパーリーチに発展するスーパーPA3-13と、領域Bおよび領域Aの順に演出が変化した後にスーパーリーチに発展するスーパーPA3-14と、領域Cおよび領域Aの順に演出が変化した後にスーパーリーチに発展するスーパーPA3-17と、領域Aおよび領域Cの順に演出が変化した後にスーパーリーチに発展するスーパーPA3-18とが割り振られている。また、図12(A)に示すように、この実施の形態では、領域Aのみの演出が変化するスーパーPA3-10と比較して、2つの領域(少なくとも領域Aを含む)の演出が変化するスーパーPA3-13、スーパーPA3-14、スーパーPA3-17またはスーパーパ3-18が選択される割合が高くなっている。また、図12(A)に示すように、この実施の形態では、同じ領域Aおよび領域Bの演出が変化する場合であっても、領域Aおよび領域Bの順に演出が変化するスーパーPA3-13の方が領域Bおよび領域Aの順に演出が変化するスーパーPA3-14よりも選択される割合が高くなっている。また、図12(A)に示すように、この実施の形態では、同じ領域Cおよび領域Aの演出が変化する場合であっても、領域Cおよび領域Aの順に演出が変化するスーパーPA3-17の方が領域Aおよび領域Cの順に演出が変化するスーパーPA3-18よりも選択される割合が高くなっている。
・・・
【0177】
さらに、この実施の形態では、大当りの場合にのみ、図12(A)に示すように、スーパーCA3-6の変動パターン種別が選択され、領域A?Cの全ての演出領域の演出が変化してスーパーリーチに発展するスーパーPA3-19の変動パターンが選択される場合がある。
【0178】
このように、この実施の形態では、大当りである場合には、はずれである場合と比較して、より多くの演出領域で演出が変化する変動パターンが選択される割合が高くなっており、より多くの演出領域で演出が変化するに従って大当りに対する期待度(信頼度)が高くなっている(特に、領域A?Cの全てで演出が変化した場合には大当りが確定するようになっている)。また、この実施の形態では、いずれの領域をいずれの順番で演出を変化させるかに応じて、大当りに対する期待度(信頼度)が異なっている。例えば、この実施の形態では、同じ領域Aおよび領域Bの演出が変化する場合であっても、領域Aおよび領域Bの順に演出が変化する変動パターンの方が、領域Bおよび領域Aの順に演出が変化する変動パターンよりも、大当りに対する期待度(信頼度)が高くなるように、図12および図13に示す変動パターン判定テーブルが割り振られている。」

(4)「【0369】
次に、演出表示装置9の表示画面上の各領域A?Cで実行される所定の演出の演出態様の具体例について説明する。図43および図44は、演出表示装置の表示画面上の各領域A?Cで実行される所定の演出の演出態様の具体例を示す説明図である。このうち、図43は、領域A?Cのうち領域Aおよび領域Bの順に演出が変化する場合の具体例を示している。また、図43は、領域A?Cの全ての演出が変化する場合の具体例を示している。なお、図43および図44において、(1)(2)(3)・・・の順に演出画面の態様が遷移する。
【0370】
なお、この実施の形態では、図43および図44に示すように、演出表示装置9の表示画面が左右方向に分割される場合を示しているが、表示画面の分割方法は、この実施の形態で示したものにかぎられない。例えば、演出表示装置9の表示画面を上下方向に分割してもよい。また、例えば、演出表示装置9の表示画面を中心部から放射状に区切って扇状の領域に分割してもよく、様々な分割方法を用いることができる。
【0371】
まず、図43を用いて、領域A?Cのうち領域Aおよび領域Bの順に演出が変化する場合を説明する。まず、演出図柄の変動表示を開始するときに、図43(1)に示すように、演出表示装置9の表示画面が3つの演出領域(領域A?C)に分割され、各領域A?Cにおいてそれぞれ通常時用の所定の演出が開始される(ステップS8003C,S8005参照)。例えば、図43(1)に示すように、「中」の領域A301では女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出が実行され、「左」の領域B302では女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出が実行され、「右」の領域C303では女性キャラクタC203が買い物をしている態様の演出が実行される。また、演出表示装置9の表示画面の右下の端部分に設けられた演出図柄表示領域400において演出図柄の変動表示が縮小表示される(ステップS8003C,S8005参照)。なお、図43に示す例では、一例として、領域A301および領域B302の順に演出を変化させるスーパーPA3-13の変動パターンを指定する変動パターンコマンドを受信したことにもとづいて、演出図柄の変動表示を実行するものとする。なお、後述する図43(7)や図44(10)に示すように、この実施の形態では、変動表示を終了するときに演出図柄表示領域400が演出表示装置9の表示画面全体に拡大されて最終停止図柄が停止表示される場合を示しているが、常に演出表示装置9の表示画面の右下の端部分に設けられた演出図柄表示領域400において演出図柄の変動表示や最終停止図柄の停止表示を縮小表示させるようにしてもよい。
【0372】
次いで、所定の領域A演出切替時間が経過すると、プロセスデータの切替を行い、図43(2)に示すように、領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わる(ステップS8117,S8105参照)。次いで、領域A301の演出が変化した後、所定の領域B演出切替時間が経過すると、プロセスデータの切替を行い、図43(2)に示すように、領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わる(ステップS8114,S8105参照)。
【0373】
次いで、領域B302の演出が変化した後、所定のスーパーリーチ開始時間が経過すると、プロセスデータの切替を行い、図43(3)に示すように、領域A301?領域C303が合体して1つの演出領域となり、その合体した1つの演出領域においてスーパーリーチの演出が開始される(ステップS8108,S8105参照)。なお、図43に示す例では、領域A301および領域B302の2つの領域の演出が変化しているので、図43(3)に示すように、領域A301に表示されていた女性キャラクタ201と領域B302に表示されていた女性キャラクタ202とが敵キャラクタ204とバトルを開始する態様の演出が開始される。なお、演出表示装置9の表示画面の右下の端部分に設けられた演出図柄表示領域400では、左右が同じ図柄(本例では、同じ「7」の図柄)で停止表示されてリーチ状態となる。」

【図43】



(5)図43(1)から、「中」の領域301において女性キャラクタ201(当審注:「女性キャラクタ201」については、引用文献の【0371】等に記載される「女性キャラクタA201」と同じものを指していることは明らかである。)が空を飛んでいる態様の演出が実行され、「左」の領域302では女性キャラクタ202(当審注:「女性キャラクタ202」については、引用文献の【0371】等に記載される「女性キャラクタB202」と同じものを指していることは明らかである。)が地面の上を歩いている態様の演出が実行され、「右」の領域303では女性キャラクタ203(当審注:「女性キャラクタ203」については、引用文献の【0371】等に記載される「女性キャラクタC203」と同じものを指していることは明らかである。)が買い物をしている態様の演出が実行されている態様を看て取ることができる。

(6)図43(2)から、「中」の領域301の演出態様が、女性キャラクタ201が滝に打たれて鍛錬を行う態様であり、「左」の領域B302の演出態様が、女性キャラクタ202が滝に打たれて鍛錬を行う態様であることを看て取ることができる。

(7)図43(3)から、領域301?領域303が1つの演出領域となり、その1つの演出領域において、女性キャラクタ201と女性キャラクタ202とがキャラクタ204とバトルを開始する態様の演出を看て取ることができる。

(8)図43(1)?(6)から、女性キャラクタ201はハチマキをしてスカートをはいたキャラクタであり、女性キャラクタ202は髪を結びパンツをはいたキャラクタである態様を看て取ることができる。

そして、上記記載事項(1)?(4)に記載された事項及び図面に記載された事項(5)?(8)を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?eは、本願発明のA?Eに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、引用文献における引用箇所を示す。)。

(引用発明)
「a パチンコ遊技機1は、ガラス扉枠2を有し(【0018】)、
ガラス扉枠2の背面には、遊技盤6が着脱可能に取り付けられ(【0019】)、
遊技盤6の前面には、打ち込まれた遊技球が流下可能な遊技領域7が形成され(【0019】)、
遊技領域7の中央付近には、液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9が設けられ(【0022】)、
演出表示装置9の表示画面は、それぞれ個別に所定の演出が実行される「左」、「中」、「右」の3つの演出領域に分割されることがあり(【0022】)、
「中」の演出領域を領域Aといい、「左」の演出領域を領域Bといい、「右」の演出領域を領域Cといい(【0022】)、

bc 演出表示装置9では、各領域A?Cにおいて所定のストーリー性を有する演出が実行されるとともに、各領域A?Cにおいてそれぞれ実行する演出を共通の時間軸に従って実行し、領域Aでは、通常、女性キャラクタAが空を飛んでいる態様の演出が実行され、領域Bでは、通常、女性キャラクタBが地面の上を歩いている態様の演出が実行され、領域Cでは、通常、女性キャラクタCが買い物をしている態様の演出が実行され(【0022】)、
変動パターン種別には、領域Aのみの演出が変化した後にスーパーリーチに発展するスーパーPA3-10と、領域Aおよび領域Bの順に演出が変化した後にスーパーリーチに発展するスーパーPA3-13と、領域Bおよび領域Aの順に演出が変化した後にスーパーリーチに発展するスーパーPA3-14とが割り振られ(【0174】)、
領域A?Cのうち領域Aおよび領域Bの順に演出が変化する場合(【0371】)、
まず、演出図柄の変動表示を開始するときに、演出表示装置9の表示画面が3つの演出領域(領域A?C)に分割され、各領域A?Cにおいてそれぞれ通常時用の所定の演出が開始され、「中」の領域A301では女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出が実行され、「左」の領域B302では女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出が実行され、「右」の領域C303では女性キャラクタC203が買い物をしている態様の演出が実行され(【0371】、図43(1))、
次いで、所定の領域A演出切替時間が経過すると、領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わり(【0372】、図43(2))、
次いで、領域A301の演出が変化した後、所定の領域B演出切替時間が経過すると、領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わり(【0372】、図43(2))、
次いで、領域B302の演出が変化した後、所定のスーパーリーチ開始時間が経過すると、領域A301?領域C303が合体して1つの演出領域となり、その合体した1つの演出領域においてスーパーリーチの演出が開始され、領域A301に表示されていた女性キャラクタA201と領域B302に表示されていた女性キャラクタB202とが敵キャラクタ204とバトルを開始する態様の演出が開始され(【0373】、図43(3))、
女性キャラクタA201はハチマキをしてスカートをはいたキャラクタであり、女性キャラクタB202は髪を結びパンツをはいたキャラクタであり、(図43(1)?(6))
演出表示装置9は、演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御され(【0028】)、
演出制御用マイクロコンピュータが、第1特別図柄表示器8aで第1特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させ、第2特別図柄表示器8bで第2特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させ(【0028】)、

d 領域A301および領域B302の2つの領域の演出が変化していると(【0373】)、領域A301の演出態様は、女性キャラクタA201が滝に打たれて鍛錬を行う態様であり(図43(2))、領域B302の演出態様は、女性キャラクタB202が滝に打たれて鍛錬を行う態様であり(図43(2))、
いずれの領域をいずれの順番で演出を変化させるかに応じて、大当りに対する期待度(信頼度)が異なり(【0178】)、
同じ領域Aおよび領域Bの演出が変化する場合であっても、領域Aおよび領域Bの順に演出が変化する変動パターンの方が、領域Bおよび領域Aの順に演出が変化する変動パターンよりも、大当りに対する期待度(信頼度)が高くなる(【0178】)、

e パチンコ遊技機1(【0017】、【0018】)。」

5 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを分説にしたがって対比する。

(a)引用発明の構成aの「演出表示装置9」は、本願発明の構成Aの「表示装置」に相当する。
そして、引用発明の構成aの「演出表示装置9」は、「パチンコ遊技機1」が「有」する「ガラス扉枠2」「の背面」に「着脱可能に取り付けられ」る「遊技盤6」「の前面」に「形成され」る「遊技領域7」「の中央付近に」「設けられ」たものであるのだから、「演出表示装置9」(表示装置)は、「パチンコ遊技機1」に「備え」られたものということができる。
また、引用発明の構成aの「領域A」、「領域B」及び「領域C」は、「演出表示装置9の表示画面」が「それぞれ個別に所定の演出が実行される「左」、「中」、「右」の3つ」に「分割され」た「演出領域」なのだから、いずれも本願発明の構成Aの「表示装置」が「有する」「表示領域」に相当する。
してみると、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

(b)(c)
ア 引用発明の構成bcの「「中」の領域A301では女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出が実行され、」「次いで、所定の領域A演出切替時間が経過すると」「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること、及び
「「左」の領域B302では女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出が実行され、」「次いで、領域A301の演出が変化した後、所定の領域B演出切替時間が経過すると」「領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ることは、いずれも、本願発明の構成Bの「要素演出」に相当する。

イ 引用発明の構成bcの、
「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること、及び
「領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ることは、それぞれ異なる種類の演出であるといえるから、両者で引用発明の構成Bの「複数種の要素演出」に相当する。

ウ 引用発明の構成bcは、「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」り、「領域A301の演出が変化した後、所定の領域B演出切替時間が経過」すると、
「領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」るのだから、
「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること(要素演出)、及び
「領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること(要素演出)は、異なるタイミングで別々に発生するものということができる。
そうすると、引用発明の構成bcにおける、
「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」り、「領域A301の演出が変化した後、所定の領域B演出切替時間が経過」すると、
「領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ることは、本願発明の構成Bの「複数種の要素演出が複数回発生する」「複合演出」に相当する。

エ 引用発明の構成bcの「演出表示を実行させ」る「演出制御用マイクロコンピュータ」は、本願発明の構成Bの「演出を実行することが可能な演出実行手段」に相当する。

オ 引用発明の構成bcの「女性キャラクタA201」及び「女性キャラクタB202」は、それぞれ本願発明の構成Cの「演出画像」に相当する。
そして、引用発明の構成bcの「女性キャラクタA201」は「ハチマキをしてスカートをはいたキャラクタ」であり、「女性キャラクタB202」は「髪を結びパンツをはいたキャラクタ」であるのだから、「女性キャラクタA201」と「女性キャラクタB202」の両者は本願発明の構成Cの「互いに異なる態様の演出画像」に相当する。

カ 引用発明の構成bcの「「中」の領域A301では女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出が実行され」ることは、「女性キャラクタA201」を表示しているのだから、本願発明の構成Cの「演出画像が前記表示領域に表示されること」に相当する。
そして、引用発明の構成bcの「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること(要素演出)は、そもそも「「中」の領域A301」(表示領域)に「女性キャラクタA201」を「空を飛んでいる態様」で表示しないことには、切り替わる前提が存在しないこととなるのだから、引用発明の構成bcの「「中」の領域A301で」「女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出が実行され」ること(演出画像が前記表示領域に表示されること)は、「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること(要素演出)の「発生」を示したものということができる。

同様に、引用発明の構成bcの「「左」の領域B302では女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出が実行され」ること(演出画像が前記表示領域に表示されること)もまた、「領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること(要素演出)の「発生」を示したものということができる。

キ 引用発明の構成bcの「領域A301」は、「女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出が実行され、」「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」るのだから、本願発明の構成Cの「表示領域における当該演出画像が表示される箇所」に相当する。
同様に、引用発明の構成bcの「領域B302」もまた、本願発明の構成Cの「表示領域における当該演出画像が表示される箇所」に相当する。

ク 引用発明の構成bcの
「「中」の領域A301では女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出が実行され、」「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること、及び
「「左」の領域B302では女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出が実行され、」「領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ることから、「領域A301」(表示領域における当該演出画像が表示される箇所)には「女性キャラクタA201」(演出画像)が定められ、「領域B302」(表示領域における当該演出画像が表示される箇所)には「女性キャラクタB202」(演出画像)が定められているといえるから、引用発明の構成bcの上記事項は、本願発明の構成Cの「前記表示領域における当該演出画像が表示される箇所は、当該演出画像毎に定められており」との構成に相当する。

ケ 上記ア?クで検討したとおり、引用発明の構成bcは、本願発明の構成B、Cに相当する。

(d)
ア 引用発明の構成dの「領域A301」「の演出が変化する」ことは、同構成bcにおける「領域A301」の「演出が変化した」ことであるから、同構成bcの「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること(要素演出)である。
そうすると、引用発明の構成dの「領域A301」「の演出が変化する」ことは本願発明の構成B、Cの「要素演出」に相当するものであって、本願発明の構成Dの「第一要素演出」に相当するものである。
そして、引用発明の構成dの「領域A301」「の演出が変化する」こと(第一要素演出)は、引用発明の構成bcの「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること(同第一要素演出)であるから、「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」る際に表示されている「女性キャラクタA201」(演出画像)は、本願発明の構成Dの「第一要素演出として表示される前記演出画像」である「第一演出画像」に相当する。

同様に、引用発明の構成dの「領域B302」「の演出が変化する」ことは本願発明の構成B、Cの「要素演出」に相当するものであって、本願発明の構成Dの「第二要素演出」に相当し、
「領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」る際に表示されている「女性キャラクタB202」は、本願発明の構成Dの「第二要素演出として表示される前記演出画像」である「第二演出画像」に相当する。

イ 上記アをふまえると、引用発明の構成dの
「領域Aおよび領域Bの順に演出が変化する変動パターン」
は、本願発明の構成Dの「第一要素演出が発生した後、当該第一要素演出とは異なる第二要素演出が発生した場合」に相当し、引用発明の構成dの
「領域Bおよび領域Aの順に演出が変化する変動パターン」
は、本願発明の構成Dの「前記第二要素演出が発生した後、前記第一要素演出が発生した場合」に相当する。

ウ 上記(b)(c)クをふまえると、引用発明の構成dの「女性キャラクタA201」が表示される「領域A301」および「女性キャラクタB202」が表示される「領域B302」は、いずれも「表示領域における定められた箇所」に相当する。
そして、引用発明の構成dの「領域A301および領域B302の2つの領域の演出が変化して」いて、「領域A301の演出態様は、女性キャラクタA201が滝に打たれて鍛錬を行う態様であり、領域B302の演出態様は、女性キャラクタB202が滝に打たれて鍛錬を行う態様であ」る状態は、本願発明の構成Dの、
「第一演出画像および」「第二演出画像のそれぞれが前記表示領域における定められた箇所に表示された状態」に相当するとともに、本願発明の構成Dの「複合演出の結末の態様」に相当する。

エ 引用発明の構成dの「領域Aおよび領域Bの順に演出が変化する変動パターン」(第一要素演出が発生した後、当該第一要素演出とは異なる第二要素演出が発生した場合)であっても、同構成dの「領域Bおよび領域Aの順に演出が変化する変動パターン」(前記第二要素演出が発生した後、前記第一要素演出が発生した場合)であっても、いずれも「領域A301および領域B302の2つの領域の演出が変化」すれば、「領域A301の演出態様は、女性キャラクタA201が滝に打たれて鍛錬を行う態様」となり「領域B302の演出態様は、女性キャラクタB202が滝に打たれて鍛錬を行う態様」となることは明らかなのだから、引用発明の構成dにおいて、「領域Aおよび領域Bの順に演出が変化する変動パターン」(第一要素演出が発生した後、当該第一要素演出とは異なる第二要素演出が発生した場合)であっても、同構成dの「領域Bおよび領域Aの順に演出が変化する変動パターン」(前記第二要素演出が発生した後、前記第一要素演出が発生した場合)であっても、「領域A301および領域B302の2つの領域の演出が変化して」いて、「領域A301の演出態様は、女性キャラクタA201が滝に打たれて鍛錬を行う態様であり、領域B302の演出態様は、女性キャラクタB202が滝に打たれて鍛錬を行う態様であ」る状態(複合演出の結末の態様)は「同じ」であるといえる。

オ 引用発明の構成dの「大当りに対する期待度(信頼度)」は、本願発明の構成Dの「当否判定結果が当たりとなる蓋然性」に相当する。
また、引用発明の構成bcの、
「領域A301の演出態様が、女性キャラクタA201が空を飛んでいる態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」り、「領域A301の演出が変化した後、所定の領域B演出切替時間が経過」すると「領域B302の演出態様が、女性キャラクタB202が地面の上を歩いている態様の演出から、バトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様の演出に切り替わ」ること(複合演出)に「次いで」、「スーパーリーチの演出が開始され」ることと、「スーパーリーチ」の後でなければ「当否判定結果」が報知されないことが技術常識であることをさらにふまえると、引用発明において、「複合演出の結末の態様が示された後」に「当否判定結果」が「報知される」ことは明らかである。
そして、引用発明の構成dの
「領域Aおよび領域Bの順に演出が変化する変動パターンの方が、領域Bおよび領域Aの順に演出が変化する変動パターンよりも、大当りに対する期待度(信頼度)が高くなる」ことは、本願発明の構成Dの
「複合演出の結末の態様が示された後に報知される当否判定結果が当たりとなる蓋然性が異なる」ことに相当する。

カ してみると、上記ア?オから、引用発明の構成dは、本願発明の構成Dに相当する。

(e)引用発明の構成eの「パチンコ遊技機1」は、本願発明の構成Eの「遊技機」に相当する。
引用発明の構成eは、本願発明の構成Eに相当する。

6 当審の判断
してみると、上記「5 本願発明と引用発明の対比」(a)?(e)によれば、本願発明と引用発明との間に差異はなく、本願発明と引用発明は同一である。

7 本願発明が奏する効果について
引用文献の【0012】には、
「同じ表示領域の組み合わせにおける演出が変化した場合でも、いずれの表示領域から演出が変化したかなど変化の順番に応じて、特定遊技状態となることに対する期待度(信頼度)を異ならせることができるので、遊技に対する興趣を向上させることができる。」
との作用効果が記載されており、当該効果は、本願の明細書の【0006】に記載される、
「要素演出が発生する順番によっても当否判定結果が当たりとなる蓋然性が示唆されるという従来にない面白みのある演出とすることが可能である。」
との作用効果と、実質的に同じものである。
さらに他に本願発明が奏する作用効果について検討してみても、本願発明が奏する作用効果は、当業者が、引用発明から予測し得るものであって、格別のものということはできない。

8 請求人の主張について
(1)審判請求人は、令和1年8月2日提出の意見書の「3.拒絶理由に対する反論」にて、
引用発明(図43)の「領域A301に表示される「女性キャラクタA201がバトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様」の画像」、「領域B302に表示される「女性キャラクタB202がバトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様」の画像」が、それぞれ、本願発明の第一演出画像、第二演出画像に相当するとした上で、
本願発明は、「前記表示領域における当該演出画像が表示される箇所は、当該演出画像毎に定められて」いる、「第一演出画像および・・・第二演出画像のそれぞれが前記表示領域における定められた箇所に表示された状態とな」ることを特定するゆえ、第一演出画像が表示される箇所として定められた箇所には、他の演出画像が表示されないし、第二演出画像が表示される箇所として定められた箇所には、他の演出画像が表示されない旨を主張している。

しかし、上記「5 本願発明と引用発明の対比」の(c)にて説示のとおり、引用発明の構成bcの「女性キャラクタA201」及び「女性キャラクタB202」が、それぞれ本願発明の構成Cの「演出画像」に相当するとともに、同(d)アにて説示のとおり、引用発明の構成dの「女性キャラクタA201」(演出画像)が本願発明の「第一演出画像」に相当するものであり、同イにて説示のとおり、「女性キャラクタB202」(演出画像)が、本願発明の「第二演出画像」に相当するものである。
そうすると、引用文献に記載の発明の「領域A301に表示される「女性キャラクタA201がバトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様」の画像」、「領域B302に表示される「女性キャラクタB202がバトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様」の画像」が、それぞれ、本願発明の第一演出画像、第二演出画像に相当することを前提とした審判請求人の上記主張は採用できない。

ところで、本願発明の「演出画像」について、上記意見書の「2.補正の概要」には、
「今般同時提出の手続補正書により、請求項1にかかる発明を補正しました。・・・
・・・具体的には、明細書に記載されるキャラクタ(の画像)を一般化したものが演出画像に相当し、段落0034の記載から各キャラクタ(演出画像)が表示される箇所はキャラクタ(演出画像)毎に定められているといえます。
・・・
・・・段落0034の記載から各演出画像(キャラクタ)が表示される箇所は定められているといえるため、段落0050、図6に記載される例(第一演出例、第二演出例)では、第一演出画像(キャラクタC)と第二演出画像(キャラクタF)のそれぞれが定められた箇所に表示された状態で複合演出の結末の態様が同じとなっていることは明らかであります。」
と記載されている。
そうすると、令和1年8月2日提出の手続補正書による補正によって特許請求の範囲の請求項1に加えられた「演出画像」、「第一演出画像」及び「第二演出画像」について、「キャラクタ」自体が「演出画像」、「第一演出画像」及び「第二演出画像」に相当することは、審判請求人もまた認めていることは明らかである。

(2)審判請求人は、同意見書において、「引用文献の図44(2)(3)において、領域A301や領域B302に「「女性キャラクタA201がバトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様」の画像」や「「女性キャラクタB202がバトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様」の画像」とは異なる態様の画像が表示されていることや、段落0384の記載に照らせば、領域A301には「「女性キャラクタA201がバトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様」の画像」以外の画像が表示されることがあり、領域B302には「「女性キャラクタB202がバトルに備えて滝に打たれて鍛錬を行う態様」の画像」以外の画像が表示されることがあるといえます。」と主張している。

そこで、本願発明を再度みると、同発明の構成Dは、
「D 前記複合演出において、複数種の前記要素演出に含まれる第一要素演出が発生した後、当該第一要素演出とは異なる第二要素演出が発生した場合と、前記第二要素演出が発生した後、前記第一要素演出が発生した場合とでは、前記第一要素演出として表示される前記演出画像である第一演出画像および前記第二要素演出として表示される前記演出画像である第二演出画像のそれぞれが前記表示領域における定められた箇所に表示された状態となって前記複合演出の結末の態様が同じとなっても、当該複合演出の結末の態様が示された後に報知される当否判定結果が当たりとなる蓋然性が異なる場合があることを特徴とする」
ものであって、本願発明の上記構成Dは、
「前記複合演出において、複数種の前記要素演出に含まれる第一要素演出が発生した後、当該第一要素演出とは異なる第二要素演出が発生した場合と、前記第二要素演出が発生した後、前記第一要素演出が発生した場合とでは、前記第一要素演出として表示される前記演出画像である第一演出画像および前記第二要素演出として表示される前記演出画像である第二演出画像のそれぞれが前記表示領域における定められた箇所に表示された状態となって前記複合演出の結末の態様が同じとなっても、当該複合演出の結末の態様が示された後に報知される当否判定結果が当たりとなる蓋然性が異なる」
場合がありさえすればよいと解するのが相当である。

そうすると、引用文献において図44及び図44に係る記載があったとしても、上記引用発明の構成dの「場合」が存在していることに変わりはないのだから、図44に基づいた審判請求人の主張は、構成Dについて本願発明の構成に基づいた主張ではなく、採用できない。

9 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-01 
結審通知日 2019-10-08 
審決日 2019-10-23 
出願番号 特願2016-69953(P2016-69953)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 祐一  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 島田 英昭
石井 哲
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人上野特許事務所  

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