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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B23K
管理番号 1357513
審判番号 不服2019-5363  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-23 
確定日 2020-01-06 
事件の表示 特願2016-119584「開口部の閉塞方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-221962、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は、平成28年6月16日の出願であって、平成30年7月10日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年9月12日に手続補正書及び意見書が提出され、平成31年2月20日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成31年4月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基づいて、本願の請求項2-3に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-340975号公報
2.特開平11-226759号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2005-66669号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2005/105360号


第3 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成31年4月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ショルダ部と、前記ショルダ部の一方の端部に設けられたプローブピンと、を有する工具を回転させるとともに、部材に形成された開口部の近傍に前記開口部と重ならないように前記プローブピンを挿入する工程と、
前記工具を前記開口部を横切るように移動させることで、前記開口部の内部の空間を残すとともに表面近傍のみを閉塞する閉塞部を形成する工程と、
前記プローブピンが前記部材に挿入されていた穴が前記開口部と繋がらない位置で前記プローブピンを前記部材から引き抜く工程と、
を備え、
前記工具の前記移動方向に直交する方向における前記プローブピンの先端部の外形幅寸法は、前記開口部の断面幅寸法の2倍以上である開口部の閉塞方法。
【請求項2】
前記プローブピンは円錐台形状または円柱形状であり、前記プローブピンの側面は、平滑な曲面となっている請求項1記載の開口部の閉塞方法。
【請求項3】
前記開口部は、前記部材に形成された穴または凹部の開口部である請求項1または2に記載の開口部の閉塞方法。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付与した。

ア.「【0014】図1?図4はこの発明の実施形態を示している。図1において、(1)(2)は2個の長尺平板状のアルミニウム材からなる接合ワーク、(10)は摩擦撹拌接合用の接合工具である。この実施形態は、前記2個の接合ワーク(1)(2)の幅方向の一端面同士を突き合わせ、この突合せ部(3、接合予定部位)を前記接合工具(10)を用いて突合せ接合しようとするものである。この実施形態では、両接合ワーク(1)(2)は左右方向に並んで突き合わされるとともに、突合せ部(3)が前後方向に延びているものとする。この突合せ状態において、両接合ワーク(1)(2)の突合せ部(3)には、厚さ方向に貫通した複数個の隙間(4)が形成されている。この隙間(4)は、各接合ワーク(1)(2)の突合せ面に凹凸が形成されることにより、あるいは各接合ワーク(1)(2)が幅方向に屈曲していることにより、形成されたものである。このような状態で突合せ部(3)を該突合せ部(3)の延びる方向(接合線Pの方向)に摩擦撹拌接合していくと、上述したように該隙間(4)に起因する接合欠陥が発生してしまう。そこで、この実施形態では、この接合欠陥の発生を防止するため、図3に示した接合工具(10)を用いて突合せ接合を行う。
【0015】この接合工具(10)は、径大の円柱状回転子(12)と、該回転子(12)の端面(12a)の回転軸線上に一体に突設された径小のピン状プローブ(13)とを備えたものであって、前記回転子(12)の端部と前記プローブ(13)とを接合ヘッド(11)とするものである。前記回転子(12)とプローブ(13)はともに、両接合ワーク(1)(2)よりも硬質で且つ接合時に発生する摩擦熱に耐えうる耐熱材料から形成されている。また、プローブ(13)の外周面には、撹拌用の凸部(図示せず)が設けられている。」

イ.「【0017】このような接合工具(10)及び遊星歯車機構(20)を用い、次のようにして突合せ部(4)の接合を行う。この接合操作を図1及び図2に基づいて説明すると、接合工具(10)の回転子(12)を回転させることによりプローブ(13)を回転させつつ、該プローブ(13)を接合ワーク(1)(2)の突合せ部(3)に挿入するとともに、回転子(12)の端面(12a)を両接合ワーク(1)(2)の表面に圧接する。そして、この状態で、遊星歯車機構(20)によってプローブ(13)をその軌跡が円を描くように揺動させる。このプローブ(13)の揺動動作により、該プローブ(13)が突合せ部(3)を左右交互に繰返し横断するものとなる。この状態でプローブ(13)を突合せ部(3)に沿って(即ち、接合方向)に移動(その方向イ)させる。このプローブ(13)の移動動作に伴って、図2に示すように、該プローブ(13)の描く軌跡円(ロ)がプローブ移動方向側にずれていく。なお、この発明では、プローブ(13)を揺動させながら突合せ部(3)に挿入しても良いし、プローブ(13)を両接合ワーク(1)(2)の長さ方向の端面から突合せ部(3)に挿入しても良いことはもちろんである。
【0018】すると、プローブ(13)の回転により発生する摩擦熱と、回転子(12)の端面(12a)と両接合ワーク(1)(2)の表面との摺動に伴い発生する摩擦熱とによって、プローブ(13)との接触部分近傍において両接合ワーク(1)(2)は軟化し、且つ該軟化部の肉がプローブ(13)の揺動動作によって隙間(4)内に充填されながら、該軟化部の肉がプローブ(13)の回転力を受けて撹拌混合される。そして、プローブ(13)の移動に伴いこの軟化部の肉がプローブ(13)の通過溝を埋めるように塑性流動したのち、摩擦熱を急速に失って冷却固化される。この現象がプローブ(13)の移動に伴って順次繰り返されていき、最終的に両接合ワーク(1)(2)が突合せ部(3)の全長に亘って接合一体化される。(7)は両接合ワーク(1)(2)の突合せ部(3)に形成された接合部である。
【0019】こうして得られた突合せ継手は、突合せ部(3)に形成された隙間(4)内に両接合ワーク(1)(2)の肉が充填されながら、接合が行われたものであるから、接合部(7)には、トンネル状の内部欠陥や溝状の表面欠陥等、隙間(4)に起因する接合欠陥が発生しておらず、接合状態が良好なものとなっている。」

ウ.「【0026】使用した両接合ワーク(1)(2)はともに板状アルミニウム材(A5083P)からなるもので、その長さ寸法L及び厚さ寸法tはそれぞれ、L=5m及びt=18mmである。また、突合せ部(3)に形成された隙間(4)の最大幅δmaxは4mmであった。
【0027】一方、接合工具(10)として、回転子(12)の端部の径D1が60mmφ、プローブ(13)の径D2が23.5mmφのものを用いた。また、プローブ(13)の揺動幅Wは3mmとした。」

エ.上記イ.の「この状態でプローブ(13)を突合せ部(3)に沿って(即ち、接合方向)に移動(その方向イ)させる。」という記載及び「こうして得られた突合せ継手は、突合せ部(3)に形成された隙間(4)内に両接合ワーク(1)(2)の肉が充填されながら、接合が行われた」という記載から、引用文献1には、ピン状プローブ(13)を突合せ部(3)に沿って移動させることで、隙間(4)を充填する工程が記載されているといえる。

オ.上記イ.の「この発明では、プローブ(13)を揺動させながら突合せ部(3)に挿入しても良いし、プローブ(13)を両接合ワーク(1)(2)の長さ方向の端面から突合せ部(3)に挿入しても良いことはもちろんである。」という記載から、プローブ(13)は、両接合ワークの長さ方向の端面の突合せ部(3)に揺動させながら挿入してもよいことから、長さ方向に対して垂直方向に揺動させることで、突合せ部(3)に形成される隙間(4)と重ならない位置からもプローブ(13)を挿入可能であると考えられる。

カ.上記イ.の「この現象がプローブ(13)の移動に伴って順次繰り返されていき、最終的に両接合ワーク(1)(2)が突合せ部(3)の全長に亘って接合一体化される。」という記載から、プローブ(13)は、両接合ワーク(1)(2)の長さ方向の終端まで移動させており、上記オ.で記載したようにプローブ(13)は長さ方向に対して垂直方向に揺動させているから、突合せ部(3)に形成される隙間(4)と重ならない位置で両接合ワーク(1)(2)からプローブ(13)を引き抜くことも可能であると考えられる。

キ.上記ア.の「両接合ワーク(1)(2)の突合せ部(3)には、厚さ方向に貫通した複数個の隙間(4)が形成されている。」という記載、上記イ.の「このプローブ(13)の揺動動作により、該プローブ(13)が突合せ部(3)を左右交互に繰返し横断するものとなる。」という記載から、接合工具(10)のプローブ(13)は、突合せ部(3)及び隙間(4)を繰り返し横断するように移動させていることがわかる。

ク.したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「円柱状回転子(12)と、前記円柱状回転子(12)の端面の回転軸線上に一体に突設されたピン状プローブ(13)と、を有する接合工具(10)を回転させるとともに、両接合ワーク(1)(2)の突合せ部(3)に形成された隙間(4)と重ならないようにピン状プローブ(13)を挿入する工程と、
前記接合工具(10)を前記隙間(4)を横断するように移動させることで、前記隙間(4)を充填する工程と、
前記ピン状プローブ(13)が前記隙間(4)と重ならない位置で前記ピン状プローブ(13)を両接合ワーク(1)(2)から引き抜く工程と、
を備え、
前記接合工具(10)のピン状プローブ(13)の径D2が23.5mm、隙間(4)の最大幅δmaxが4mmである隙間(4)の充填方法。」

2.引用文献2について
周知技術を示す文献として引用された上記引用文献2の段落【0021】には、「突合わせ部1の摩擦撹拌接合は、図1と同一の態様で行い、接合部Wを形成する。接合部Wに接合開始端、終了端が残らないように、接合前に突合わせ部の中空形材の側面にタブ材6、6を配置し、摩擦撹拌接合の開始端および終了端がタブ材6、6上に来るようにする。」ということが記載されているから、当該引用文献2には、突合わせ部1と重ならない位置であるタブ材6上で摩擦攪拌接合を開始し、突合わせ部1と重ならない位置であるタブ材6上で摩擦攪拌接合を終了するという技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
周知技術を示す文献として引用された上記引用文献3の【請求項2】には、「前記本接合工程により前記被接合部材同士間の記突き合わせ面に沿って形成される本接合部の始端および終端は、前記一対の当て部材の内側に個別に位置している、ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌接合方法。」ということが記載されているから、当該引用文献3には、突き合わせ面と重ならない位置である当て部材で摩擦攪拌接合を開始し、突き合わせ面と重ならない位置である当て部材で摩擦攪拌接合を終了するという技術的事項が記載されていると認められる。


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「円柱状回転子(12)」は、本願発明1の「ショルダ部」に相当する。以下同様に、「ピン状プローブ(13)」は「プローブピン」に、「接合工具(10)」は「工具」に、「隙間(4)」は「開口部」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「両接合ワーク(1)(2)の突合せ部(3)に形成された隙間(4)と重ならないようにピン状プローブ(13)を挿入する工程」と、本願発明1の「部材に形成された開口部の近傍に前記開口部と重ならないように前記プローブピンを挿入する工程」とを対比すると、ピン状プローブ(13)は隙間(4)の近傍に挿入するのは明かであるから、両者は一致している。
さらに、引用発明の「前記接合工具(10)を前記隙間(4)を横断するように移動させることで、前記隙間(4)を充填する工程」と本願発明1の「前記工具を前記開口部を横切るように移動させることで、前記開口部の内部の空間を残すとともに表面近傍のみを閉塞する閉塞部を形成する工程」とを対比すると、両者は「前記工具を前記開口部を横切るように移動させることで、前記開口部を閉塞する閉塞部を形成する工程」を限度として一致している。
また、引用発明の「前記ピン状プローブ(13)が前記隙間(4)と重ならない位置で前記ピン状プローブ(13)を両接合ワーク(1)(2)から引き抜く工程」と本願発明1の「前記プローブピンが前記部材に挿入されていた穴が前記開口部と繋がらない位置で前記プローブピンを前記部材から引き抜く工程」とを対比すると、引用発明では、両接合ワーク(1)(2)にピン状ブローブ(13)が挿入されている穴が存在するのは明らかであるから、両者は一致している。
さらに、引用発明の「前記接合工具(10)のピン状プローブ(13)の径D2が23.5mm、隙間(4)の最大幅δmaxが4mmである」という事項と本願発明1の「前記工具の前記移動方向に直交する方向における前記プローブピンの先端部の外形幅寸法は、前記開口部の断面幅寸法の2倍以上である」という事項を対比すると、ピン状プローブ(13)の径D2は23.5mmであり、隙間(4)の最大幅δmaxが4mmであるから、ピン状プローブ(13)の径D2は、隙間(4)の最大幅の2倍以上となっており、両者は一致している。

そうすると、両発明は以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「ショルダ部と、前記ショルダ部の一方の端部に設けられたプローブピンと、を有する工具を回転させるとともに、部材に形成された開口部の近傍に前記開口部と重ならないように前記プローブピンを挿入する工程と、
前記工具を前記開口部を横切るように移動させることで、前記開口部を閉塞する閉塞部を形成する工程と、
前記プローブピンが前記部材に挿入されていた穴が前記開口部と繋がらない位置で前記プローブピンを前記部材から引き抜く工程と、
を備え、
前記工具の前記移動方向に直交する方向における前記プローブピンの先端部の外形幅寸法は、前記開口部の断面幅寸法の2倍以上である開口部の閉塞方法。」

(相違点)
閉鎖部を閉鎖する工程において、本願発明1は、「前記開口部の内部の空間を残すとともに表面近傍のみを閉塞する」のに対し、引用発明では、単に隙間(4)を充填するのみで、隙間(4)の内部に空間を残していない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、接合ワーク(1)(2)を接合させるために摩擦攪拌接合を用いて、両接合ワーク間に生じる隙間を充填しており、段落【0019】に記載されているように、接合部に、トンネル状の内部欠陥や溝状の表面欠陥等、隙間(4)に起因する接合欠陥を発生させないようにしている。してみると、引用発明において、開口部つまり隙間(4)の内部の空間を残すように接合すると、隙間(4)に起因する接合欠陥が発生することになり、引用発明における接合状態の良好な突合せ継手等を得るという課題を解決できなくなる。したがって、引用発明において、隙間(4)の内部の空間を残すように摩擦攪拌接合することには阻害要因があり、当業者であっても容易に想到できるものではない。
また、上記第4.2.及び第4.3.で記載した引用文献2及び引用文献3にも、開口部の内部の空間を残すように摩擦攪拌接合する点は記載されていない。

(3)引用発明と比較した有利な効果
本願発明1は、「前記工具を前記開口部を横切るように移動させることで、前記開口部の内部の空間を残すとともに表面近傍のみを閉塞する閉塞部を形成する」という構成を備えることで、「流路302が形成された本体部301は、一体構造を有しているので、熱伝達が阻害されるのを抑制することができる。そのため、液冷ジャケットの性能を向上させることができる。また、製造工程の簡略化、製造コストの低減などを図ることができる」という、本願明細書に記載された引用発明と比較した有利な効果を有する。

(4)本願発明1のむすび
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

2.本願発明2及び3について
本願発明2及び3も、本願発明1の「前記開口部の内部の空間を残すとともに表面近傍のみを閉塞する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-3は、当業者が引用発明及び引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-17 
出願番号 特願2016-119584(P2016-119584)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B23K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 黒石 孝志  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 刈間 宏信
小川 悟史
発明の名称 開口部の閉塞方法  
代理人 日向寺 雅彦  
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