• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1357565
審判番号 不服2018-7770  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-06 
確定日 2019-12-04 
事件の表示 特願2016-181628「波長同調発信源装置及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日出願公開,特開2016-213510〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2004年6月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年6月6日,2003年10月27日,ともに米国)を国際出願日とする出願(以下「原出願」という。)の一部を,平成23年8月5日に新たな特許出願としたものについて,さらにその一部を平成28年9月16日に新たな特許出願としたものであって,以降の手続は次のとおりである。

平成29年 7月26日 拒絶理由通知(同年8月1日発送)
同年12月25日 手続補正・意見書提出
平成30年 1月31日 拒絶査定(同年2月6日謄本送達)
同年 6月 6日 審判請求・手続補正


第2 補正の却下の決定
平成30年6月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,本件補正の前後で特許請求の範囲は以下のとおりである(下線は当審で付加したものである。以下同様。)。

〈補正前〉
「【請求項1】
波長掃引光源装置であって,
空洞共振器,利得媒質および内部共振器型掃引フィルターを有する構成であって,約100テラヘルツ毎ミリ秒を超える速度で,特定の方向に掃引する平均周波数を有するために,出射電磁放射のスペクトルを生ずる,構成を備え,
前記構成は,内部共振器型電磁放射の平均周波数を特定の方向にシフトする,装置。」

〈補正後〉
「【請求項1】
波長掃引光源装置であって,
空洞共振器,利得媒質および光学波長走査フィルターを有する構成であって,約100テラヘルツ毎ミリ秒を超える速度で,特定の方向に掃引する平均周波数を有するために,出射電磁放射のスペクトルを生ずる,構成を備え,
前記構成は,前記空洞共振器中の電磁放射の平均周波数を特定の方向にシフトし,
前記構成は,多面体構成部を包含し,該多面体構成部の回転方向,および入射する前記電磁放射の光軸に対する向きは,波長同調の方向に関して波長アップ(正)スキャンとなるように決定される,装置。」

2 補正事項の整理
本件補正の,請求項1についての補正事項は以下のとおりである。
〈補正事項1〉
補正前の「内部共振器型掃引フィルター」を,補正後の「光学波長走査フィルター」に補正する。
〈補正事項2〉
補正前の「内部共振器型電磁放射の平均周波数」を,補正後の「前記空洞共振器中の電磁放射の平均周波数」に補正する。
〈補正事項3〉
補正前の「シフトする,装置。」を,補正後の「シフトし,前記構成は,多面体構成部を包含し,該多面体構成部の回転方向,および入射する前記電磁放射の光軸に対する向きは,波長同調の方向に関して波長アップ(正)スキャンとなるように決定される,装置。」に補正する。

3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討
(1)補正の目的について
補正事項1および2は,用語を補正してその記載を明瞭なものとする補正であるから,特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
補正事項3は,補正前の「空洞共振器,利得媒質および内部共振器型掃引フィルターを有する構成」について,「多面体構成部を包含し,該多面体構成部の回転方向,および入射する前記電磁放射の光軸に対する向きは,波長同調の方向に関して波長アップ(正)スキャンとなるように決定される」ものとして,技術的に限定するものである。よって,補正事項3は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無について
補正事項1及び補正事項2に係る,「光学波長走査フィルター」及び「空洞共振器」は,それぞれ本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落【0043】等の「波長走査フィルター」及び「自由空間レーザー共振器」として記載されているといえるから,補正事項1及び補正事項2に係る事項は,当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
補正事項3に係る事項は,当初明細書等の段落【0043】等記載されているといえるから,補正事項3に係る事項は,当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって,前記補正事項1及び2は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(3)小括
上記のとおり,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むから,以下においては,本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項に規定する独立特許要件を満たすか)どうかについて検討する。

4 独立特許要件についての検討
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は,以下のとおりのものである(再掲。以下「本願補正発明」という。)。
「【請求項1】
波長掃引光源装置であって,
空洞共振器,利得媒質および光学波長走査フィルターを有する構成であって,約100テラヘルツ毎ミリ秒を超える速度で,特定の方向に掃引する平均周波数を有するために,出射電磁放射のスペクトルを生ずる,構成を備え,
前記構成は,前記空洞共振器中の電磁放射の平均周波数を特定の方向にシフトし,
前記構成は,多面体構成部を包含し,該多面体構成部の回転方向,および入射する前記電磁放射の光軸に対する向きは,波長同調の方向に関して波長アップ(正)スキャンとなるように決定される,装置。」

(2)特許法第36条第6項第1号に適合するか否かについての検討
ア 本願明細書には以下の記載がある。
(ア)「【0003】
10GHz程度の線幅は,内部共振型の同調素子(音響光学フィルター,ファブリーペロフィルター,ガルバノメーター駆動の回折格子フィルターなど)を用いれば容易に実現可能である。しかしながら,これまでに示された掃引周波数は,フィルターの同調速度の限界により制限され,1kHzに届いていない。生物医学的アプリケーションにおいては,ビデオ並み(30フレーム毎秒以上)の高解像度での光学的画像診断のために,15kHzを超える繰返し速度でのより高速な同調が求められている。
【0004】
したがって,上記の欠点を克服する必要がある。
【0005】
本発明の例示的概念によれば,広いスペクトル域にわたって15kHzを超える繰返し速度で同調が可能な光学波長フィルターを提供することができる。また,そのような光学フィルターにレーザー利得媒質を合わせて備える波長同調発信装置を提供することができる。このような同調発信装置は,光コヒーレンス断層映像法やスペクトル的にコード化した共焦点顕微鏡など,ビデオ並みの光学的画像診断アプリケーションに有用である。」

(イ)「【課題を解決するための手段】
【0006】
一般的に,本発明のある例示的実施形態にかかる光学フィルターは,回折格子と,回転多面体スキャナーと,テレスコープとを備える。このような光学フィルターは,従来のフィルターに比べて相当規模で高速な同調速度で動作することができる。波長同調光発信装置は,例えばレーザー利得媒質と合わせて前記フィルターを用いることにより実施することができる。さらに,このフィルターと利得媒質をレーザー共振器に組み込むこともできる。例えば,レーザーは中心波長を広い波長域にわたって高い繰返し速度で掃引するような狭帯域のスペクトルを出射することができる。
【0007】
本発明のある例示的実施形態では,平均周波数が時間とともに実質的に連続的に変化するスペクトルの電磁放射線を発する構成を備える装置を提供する。この電磁放射線は,100テラヘルツ毎ミリ秒を超える同調速度を備えてもよい。前記平均周波数は,5キロヘルツを超える繰返し速度で繰り返し変化してもよく,また10テラヘルツを超える範囲で変化してもよい。このスペクトルの同調範囲は,可視光線,近赤外線または赤外線波長の一部にかかってもよい。スペクトルの例として,ほぼ850nm,1300nm,または1700nmの波長に中心をおいてもよい。さらに,前記スペクトルの瞬間輝線幅が100ギガヘルツ未満であってもよい。また前記装置は,往復の長さが5m未満のレーザー共振器を備えてもよい。この装置は,前記発せられた電磁放射線の少なくとも一部を受信し,この一部をさらなる位置へ反射または偏向するように構成することができる多面体スキャナー構成を備えてもよい。また,前記電磁放射線の成分を選択的に受信するビーム分離構成を設けてもよい。
【0008】
本発明の別の例示的実施形態によれば,前記電磁放射線をフィルタリングする装置は,前記電磁放射線の周波数に基づいて前記電磁放射線の1つ以上の成分を物理的に分離するよう構成された少なくとも1つのスペクトル分離構成を備えてもよい。前記装置はまた,物理的に分離された成分を受信し,個々の成分を選択的にビーム選択構成へ導くように構成された,少なくとも1つの連続回転光学構成を備えてもよい。
【0009】
本発明のある変形例では,前記スペクトル分離構成は,回折格子,プリズム,グリズム,音響光学ビーム偏向,バーチャル・フェイズド・アレイ,および/またはアレイ導波路回折格子を含む。前記連続回転光学構成は,多面鏡,回折素子,実質的に透明な領域の配列を有する実質的に不透明な円盤,および/または実質的に反射する領域の配列を有する実質的に透明な円盤であってよい。前記スペクトル分離構成は,前記連続回転光学構成を備える基板上に取り付けられたホログラフィック格子を含んでもよい。
【0010】
本発明の別の変形例では,前記ビーム選択構成は,光ファイバー,光導波路,ピンホール開口,レンズと光ファイバー,導波路又はピンホールを組み合わせたもの,および/または空間フィルターであってもよい。前記ビーム選択構成は複数のビーム選択素子を含み,当該複数のビーム選択素子により透過される前記電磁放射線が結合されてもよい。前記信号は,前記選択構成により受信される前に,複数回,前記連続回転光学構成から反射されてもよい。
【0011】
本発明のさらに別の例示的実施形態によれば,この電磁放射線をフィルタリングする装置は,前記電磁放射線の周波数に基づいて前記電磁放射線の1つ以上の成分を角度分離するよう構成された少なくとも1つのスペクトル分離構成を含んでもよい。このような構成は,回転軸を含み,前記電磁放射線の前記成分を受信し,当該成分をビーム選択構成に導くよう構成された少なくとも1つの角度偏向光学構成を含んでもよい。さらに,この構成は前記電磁放射線の前記成分を受信し,当該成分に関連する1つ以上の分散素子の像を生成するように構成された少なくとも1つの光結像構成を含んでもよい。前記回転軸は,前記分散素子のうち少なくとも1つの実像または虚像の近傍に位置してもよい。
【0012】
本発明のある変形例では,角度偏向光学素子の偏向点は,前記分散素子のうち少なくとも1つの実像と実質的に重なってもよい。前記少なくとも1つの角度偏向光学構成から少なくとも1つの信号を受信するよう構成された少なくとも1つの反射器をさらに設けてもよい。前記分散素子のうち1つ以上は,回折格子,プリズム,グリズム,音響光学ビーム偏光器,バーチャル・フェイズド・アレイ,および/またはアレイ導波路回折格子であってよい。前記角度偏向光学素子は,多面鏡スキャナー,ガルバノ・ミラー・スキャナー,またはピエゾミラースキャナーであってよい。
【0013】
本発明のさらに別の例示的実施形態によれば,電磁放射線をフィルタリングする装置が提供される。この装置は,前記電磁放射線の周波数に基づいて前記電磁放射線の成分を角度分離し,周波数分離した成分を生成するよう構成された少なくとも1つの分散構成を含むことができる。この装置は,角度偏向の回転軸を有する少なくとも1つの角度偏向光学素子を含んでもよい。前記回転軸は,実質的に全ての前記周波数分離した成分が重なる位置に実質的に重なってもよい。
【0014】
本発明の別の例示的実施形態においては,前記電磁放射線の周波数に基づいて前記電磁放射線の1つ以上の成分を物理的に分離するよう構成された少なくとも1つのスペクトル分離構成を設けることができる。また,前記1つ以上の成分に関連する少なくとも1つの信号を受信するよう構成された少なくとも1つの連続回転光学構成を含んでもよい。少なくとも1つのビーム選択構成は前記信号を受信するよう構成されてもよい。前記エミッターは,レーザー利得媒質,半導体光増幅器,レーザーダイオード,スーパールミネッセントダイオード,ドープ光ファイバー,ドープレーザー結晶,ドープレーザーガラス,および/またはレーザー色素であってよい。
【0015】
本発明のさらに別の例示的実施形態においては,発信源構成は電磁放射線を発してもよい。この発信源は,前記電磁放射線のエミッターを少なくとも1つと,前記電磁放射線の周波数に基づいて前記電磁放射線の1つ以上の成分を角度分離するよう構成された少なくとも1つのスペクトル分離構成と,回転軸を含み,前記電磁放射線の前記成分を受信して当該1つ以上の成分に関連する信号を生成するよう構成された少なくとも1つの角度偏向光学構成とを備える。またこの発信源構成は,前記信号を受信し,少なくとも1つの選択された信号を選択的に生成するよう構成された少なくとも1つのビーム選択構成と,前記選択された信号を受信し,前記1つ以上の成分に関連する1つ以上の分散素子の像を生成するように構成された少なくとも1つの光結像構成とを備える。本発明の変形例では,電磁放射線を発する複数のレーザー利得媒質と,前記電磁放射線の周波数に基づいて前記電磁放射線の1つ以上の成分を物理的に分離するよう構成された少なくとも1つのスペクトル分離構成とを設けることができる。本変形例では,各レーザー利得媒質からの電磁放射線の選択された成分は同期しており,個別に,または組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明のさらに別の例示的実施形態において,拡張共振型半導体レーザーの高速同調を提供することができる。このレーザー共振器は,単方向性の光ファイバーリングと,利得媒質として半導体光増幅器と,多面体スキャナーによる走査フィルターとを含んでもよい。1.32μmを中心とした70nmの波長幅にわたって,最大1150nm/ms(繰返し周波数15.7kHz)の可変同調速度を得ることができる。このような同調速度は,従来公知よりも相当規模で高速であり,半導体光増幅器における自己周波数偏移によっていくぶん容易になっている。この発信源の瞬間輝線幅は9-mWcwの出力電力に対し0.1nm未満であってよく,80dBの低い自然放出外来振動を得ることができる。」

(ウ)「【0025】
図1Bに示す光学波長フィルター1’の第2の例示的実施形態において,テレスコープ6’は第1と第2のレンズ20,22を含んでおり,この第1と第2のレンズの中心は実質的に光軸38に沿っている。第1のレンズ20は,波長分散素子4’(例えば,回折格子16)から第1の距離に位置してもよく,この第1の距離は第1のレンズ20の焦点距離F1にほぼ等しい距離とすることができる。第2のレンズ22は,第1のレンズ20から第2の距離に位置してもよく,この第2の距離は第1のレンズ20の焦点距離F1と第2のレンズ22の焦点距離F2の和にほぼ等しい距離とすることができる。このような構成を用いることにより,第1のレンズ20は波長分散素子4’から1つ以上の平行な離散的な光の波長を受光することができ,1つ以上の平行な離散的な光の波長のそれぞれに対して効果的にフーリエ変換を行って,像面IPに投影される1つ以上のほぼ等しい集束ビームを発することができる。
【0026】
像面IPは,第1のレンズ20と第2のレンズ22の間であって第1のレンズ20から所定の距離に位置することが好ましい。本発明のある例示的変形例によれば,このような所定の距離は第1のレンズ20の焦点距離F1によって決まる。この1つ以上の集束ビームが像面IPを介して広がった後,第2のレンズ22で受光される,この1つ以上の集束ビームに等しいまたは対応する1つ以上の発散ビームが形成される。第2のレンズ22はこの発散ビームを受光し,これとほぼ等しい数の,光軸38に対して所定の角度変位を有する平行ビームを発するように構成されている。したがって,第2のレンズ22は,この平行ビームをビーム偏向装置8’の所定の部分に導くことができる。
【0027】
本発明の第2の例示的実施形態にかかるテレスコープ6’は,1つ以上の上述のような特徴を備え,回折格子からの発散した角度分散を,第2のレンズ22の後で,集束する角度分散へと変換する。このような結果はフィルターの適正な動作に有利である。また,テレスコープ6’は,同調範囲や線幅を制御するための調整可能なパラメーターを与えてもよく,ビームの切り落としを防ぐために多面鏡でのビームの大きさを低減できる。図1Bの例示的実施形態に図示されるように,ビーム偏向装置6’(例えば多面鏡または多面体構成24を含んでもよい)は,光軸38に対する多面体構成24の正面の鏡面の角度に応じて狭い通過帯域のスペクトル成分だけを逆反射するように構成されることが好ましい。反射された狭帯域の光は分散されて光ファイバー10により受光される。光軸に対する入射ビーム30の方向性と多面体構成24の回転方向40は,波長同調の方向,例えば波長アップ(正)スキャンか,波長ダウン(負)スキャンかを決定するために用いられる。図1Bに示される構成例では,正の波長掃引を引き起こす。図1Bの多面体構成24には12面あるが,当然ながら,12面よりも少ない,あるいは12面よりも多い面数の多面体構成を用いることもできる。実際の機械的限界については通常考慮しないが,従来の製造技術に基づくならば,任意の用途において用いられる多面体構成24の面の数は,特定の用途に望ましい走査速度および走査範囲による。」

(エ)「【0043】
内部共振型レーザー光の光スペクトルにおける周波数は,バンド内4光波混合現象の結果として,SOA利得媒質を光が通過するときにシフトダウンすることがある。周波数のシフトダウンがおこると,波長走査フィルターを正の波長掃引方向に動作させることにより,大きな出力電力を発生させることができる。図5は,同調速度に応じて正規化されたピーク電力を示す。負の同調速度は,本発明にかかる例示的実施形態の構成の光軸38に対するコリメーターの位置と回折格子の方位を入れ替えることによって,得ることができる。フィルターの物理的なパラメーターを両方の同調方向で同じにすることが好ましい。その結果,曲線120に示すように,自己周波数偏移と正方向同調を組み合わせた働きにより,より高い出力を得ることができ,レーザーをより速い同調速度で動作させることができる。したがって,正方向の波長走査動作が好ましい。同調速度を上げることにより,出力電力を減少させることができる。同調速度に対する出力電力の感度を下げるために,共振器長を短くすることが望ましい。このような場合,自由空間レーザー共振器が好ましい。」

イ 上記ア(ア)の記載からは,以下の事項が把握できる。
(ア)従来のガルバノメーター駆動の回折格子フィルター等の「光学フィルター」では,同調速度が1kHzに届いておらず,ビデオ並みの高解像度での光学的画像診断のためには,15kHzを超える繰返し速度でのより高速な同調が求められていること。
(イ)本発明の目的は,広いスペクトル域にわたって15kHzを超える繰返し速度で同調が可能な光学波長フィルターを提供すること。
(ウ)同調速度とは,繰り返し速度であること。

ウ 上記ア(イ)の記載からは,以下の事項が把握できる。
(ア)「光学フィルター」の例示的実施形態としては,回折格子と,回転多面体スキャナーと,テレスコープとを備えるものがあること。
(イ)レーザー共振器として,単方向性の光ファイバーリングと,利得媒質として半導体光増幅器と,多面体スキャナーによる走査フィルターとを含んだ,拡張共振型半導体レーザーは,1.32μmを中心とした70nmの波長幅にわたって,最大1150nm/ms(繰返し周波数15.7kHz)の可変同調速度を得ることができること。

エ 上記ア(ウ)の記載からは,以下の事項が把握できる。
(ア)図1Bに示される第2の例示的実施形態はテレスコープを備えていること。
(イ)テレスコープは,回折格子からの発散した角度分散を,第2のレンズ22の後で,集束する角度分散へと変換すること。
(ウ)ビーム偏向装置6’は,光軸38に対する多面体構成24の正面の鏡面の角度に応じて狭い通過帯域のスペクトル成分だけを逆反射するように構成されること。
(エ)光軸に対する入射ビーム30の方向性と多面体構成24の回転方向40は,波長同調の方向,例えば波長アップ(正)スキャンか,波長ダウン(負)スキャンかを決定するために用いられること。

オ 上記ア(エ)の記載からは,以下の事項が把握できる。
より高い出力を得るためには,正方向の波長走査動作が望ましいこと。

カ 上記イ及びウから,本願明細書には,従来のガルバノメーター駆動の回折格子フィルター等の「光学フィルター」では達成することのできない「繰返し周波数15.7kHzを超える可変同調速度」を得るためには,従来とは異なる光学フィルター,例えば,例示的実施形態等として記載された「『回折格子と,回転多面体スキャナーと,テレスコープとを備える』光学フィルター」等を利用する必要のあることが記載されているものと認められる。

キ しかしながら,本件補正後の請求項1には,上記カで指摘した,従来とは異なる光学フィルター,例えば,例示的実施形態等として記載された「『回折格子と,回転多面体スキャナーと,テレスコープとを備える』光学フィルター」等を備えることが特定されていない。

ク 請求人は,拒絶査定の理由3(特許法第36条第6項第1号)を解消する意図をもって,本件補正により,請求項1に「多面体構成部」とともに,「前記構成は,多面体構成部を包含し,該多面体構成部の回転方向,および入射する前記電磁放射の光軸に対する向きは,波長同調の方向に関して波長アップ(正)スキャンとなるように決定される」という構成を追加した。

ケ しかしながら,本願明細書においては,前記オで指摘したとおり,より高出力を得るために正方向の波長走査動作が望ましいところ,前記エで指摘したとおり,多面体構成を用いて当該正方向の波長走査動作を行うためには,テレスコープが,回折格子からの発散した角度分散を,第2のレンズ22の後で,集束する角度分散へと変換し,また,光軸に対する入射ビーム30の方向性と多面体構成24の回転方向40が,波長同調の方向を決定するために用いられているとされていることからすると,前記「該多面体構成部の回転方向,および入射する前記電磁放射の光軸に対する向きは,波長同調の方向に関して波長アップ(正)スキャンとなるように決定される」ためには,回折格子及びテレスコープをも用いることが前提とされているといえる。

コ そうすると,本件補正後の請求項1の記載は,前記クで追加された構成は特定するものの,当該構成の前提となる回折格子及びテレスコープを欠くものであるともいえる。

サ 以上のとおり,請求項1には,前記エで指摘した,速い同調速度を達成するとともに,前記ケで指摘した前記クで追加された構成の動作のための手段(構成),(すなわち回折格子及びテレスコープ)が反映されていないところ,本願明細書の記載からは,当該手段(構成)を備えないものが,従来の光学フィルターよりも速い同調速度を達成することができるとは解せないことから,請求項1に係る発明の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。

シ よって,本願補正発明は,発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから,本件補正後の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


(3)本願補正発明に係る優先権主張(2003年6月6日)が認められるか否かについての検討
ア 本願については,2003年6月6日にされた米国出願(60/476600)(以下「基礎米国出願1」という。)を基礎とした優先権主張がされているところ,基礎米国出願1の出願書類の明細書が翻訳されて,本願明細書の一部とされたものと認められる。
すなわち,基礎米国出願1の明細書の1ページ18?28行の記載が,おおむね前記(2)ア(ア)に摘記したものとなり,
基礎米国出願1の明細書の2ページ2?9行の記載が,おおむね前記(2)ア(イ)のうち段落【0006】に摘記したものとなり,
基礎米国出願1の明細書の4ページ26?5ページ27行の記載が,おおむね前記(2)ア(ウ)に摘記したものとなり,
基礎米国出願1の明細書の9ページ1?13行の記載が,おおむね前記(2)ア(エ)に摘記したものとなったといえる。

イ また,基礎米国出願1の書類の14ページ(Abstract)には,本願明細書について前記(2)ウ(イ)で指摘したことと同様に,レーザー共振器として,単方向性の光ファイバーリングと,利得媒質として半導体光増幅器と,多面体スキャナーによる走査フィルターとを含んだ,拡張共振型半導体レーザーが,1.32μmを中心とした70nmの波長幅にわたって,最大1150nm/ms(繰返し周波数15.7kHz)の可変同調速度を得ることが記載されているといえる。
なお,基礎米国出願1のFig.1(図面ページ1/10)及びFig.1A(図面ページ2/10)が,それぞれ本願の図1A及び図1Bに相当する。

ウ よって,本願明細書について,前記(2)イ?オで指摘した事項は,基礎米国出願1の明細書についても同様に指摘できる事項といえる。

エ そして,前記(2)イ?シで検討したとおり,本件補正後の請求項1に係る発明(本願補正発明)は,本願の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから,同様に,本願の発明の詳細な説明の原語文書である基礎米国出願1に係る明細書にも記載されていないものといえる。

カ よって,本願補正発明については,2003年6月6日にされた米国出願(60/476600)を基礎とした優先権主張は認められない。


(4)刊行物等に記載された発明
ア 引用例1: S.H.Yun, et al.,'High-speed wavelength-swept
semiconductor laser with a polygon-scanner-based wavelength filter',OPTICS LETTER, Vol. 28, No. 20, p.1981-1983 (2003年10月15日)
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の第2の優先権主張の日(2003年10月27日)前に外国において頒布された上記刊行物(以下「引用例1」という。)には,図とともに,以下の記載がある。なお,上記(3)のとおり,本願補正発明については,2003年6月6日にされた米国出願を基礎とした優先権主張は認められない。(下線は当審において付加。以下同様。また,日本語訳は,当審で作成した。)
「Ultrahigh-speed tuning of an extended-cavity semiconductor laser is demonstrated. The laser resonator comprises a unidirectional fiber-optic ring, a semiconductor optical amplifier as the gain medium, and a novel scanning filter based on a polygonal scanner. Variable tuning rates up to 1150 nmms (15.7-kHz repetition frequency) are demonstrated over a 70-nm wavelength span centered at 1.32 mm.」(p.1981,Abstract)
(日本語訳:
拡張キャビティ半導体レーザの超高速同調が実証された。レーザ共振器は,単方向性の光ファイバリングと,利得媒質として半導体光増幅器と,多面体スキャナによる新規な走査フィルタとを含んでもよい。1.32μmを中心とした70nmの波長幅にわたって,最大1150nm/ms(繰返し周波数15.7kHz)の可変同調速度を得ることができる。)

「A schematic of the wavelength-scanning filter is presentedin Fig. 1. The reflection-type filter comprises a diffraction grating, an afocal telescope, and a polygonalscanner. The telescope is made from two lenses in an infinite-conjugate configuration with the grating at the front focal plane of the f irst lens (Lens 1) and the polygonal spin axis at the back focal plane of the second lens (Lens 2). The telescope serves two distinct roles: It converts diverging angular dispersion from the grating into converging angular dispersion after the second lens and controls the imaged beam size and convergence angle at the polygon. As is illustratedin Fig. 1, the polygon reflects back only the spectral components within a narrow resolution band normal to the front mirror facet of the polygon. Theref lected component is dispersed again on the second diffraction at the grating and is received by the opticalfiber. The orientation of the beam’s incidence angle and the rotation direction of the polygonal mirror determine the direction of wavelength tuning. The arrangement in Fig. 1 produces a positive (increasingwavelength) sweep.」(p.1981,右欄3行?p.1982,左欄6行)
(日本語訳:
光学波長走査フィルタの模式図を図1に示す。反射型フィルタは,回折格子と,テレスコープと,多面鏡スキャナとを含む。テレスコープは2枚のレンズ,前側焦点面で回折格子と無限共役配置された第1のレンズ(レンズ1)と,後側焦点面で多面鏡の回転軸とと無限共役配置された第2のレンズ(レンズ2)から構成される。テレスコープは,2つの重要な役割を果たす:回折格子からの発散した角度分散を,第2のレンズの後では,多面鏡において集束する角度分散へと変換する。図1に示したように,多面鏡は,鏡面の角度に応じて狭い通過帯域のスペクトル成分だけを逆反射する。反射された光成分は回折格子で再度分散されて光ファイバにより受光される。入射ビームの方向と多面鏡の回転方向は,波長同調の方向を決定する。図1に示される構成では,正の波長掃引(波長が増加する)を引き起こす。)

Fig.1は以下のものである。


イ 以上の記載から,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「拡張キャビティ半導体レーザであって,
そのレーザ共振器は,単方向性の光ファイバリングと,利得媒質として半導体光増幅器と,多面鏡スキャナによる走査フィルタを含み,
1.32μmを中心とした70nmの波長幅にわたって,最大1150nm/ms(繰返し周波数15.7kHz)の可変同調速度を有するものであり,
前記走査フィルタは,反射型フィルタであり,回折格子と,テレスコープと,多面鏡スキャナとを含み,入射ビームの方向と多面鏡の回転方向は,正の波長掃引(波長が増加する)となるように定められている,
拡張共振型半導体レーザ。」


(5)本願補正発明と引用発明との対比・判断
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。

イ 引用発明の「拡張キャビティ半導体レーザ」は,「1.32μmを中心とした70nmの波長幅にわたって,最大1150nm/ms(繰返し周波数15.7kHz)の可変同調速度を有するもの」であるから,本願補正発明の「波長掃引光源装置」に相当する。

ウ 引用発明の「利得媒質として半導体光増幅器」及び「多面鏡スキャナによる走査フィルタ」は,それぞれ本願補正発明の「利得媒質」及び「光学波長走査フィルター」に相当する。

エ 引用発明は「拡張キャビティ半導体レーザ」であるから,「そのレーザ共振器」が,「キャビティ」を有し,本願補正発明の「空洞共振器」を構成していることは明らかである。

オ 前記ウ,エから,引用発明の「そのレーザ共振器」であって,「単方向性の光ファイバリングと,利得媒質として半導体光増幅器と,多面鏡スキャナによる走査フィルタを含」むものは,本願補正発明の「空洞共振器,利得媒質および光学波長走査フィルターを有する構成」に相当する。

カ 引用発明は,「拡張キャビティ半導体レーザであって,」「正の波長掃引(波長が増加する)となるように定められている」ところ,「1.32μmを中心とした70nmの波長幅にわたって,最大1150nm/ms(繰返し周波数15.7kHz)の可変同調速度を有するもの」であり,ここで,当該各数値から換算すると,引用発明の前記構成は,本願補正発明の「約100テラヘルツ毎ミリ秒を超える速度で,特定の方向に掃引する平均周波数を有するために,出射電磁放射のスペクトルを生ずる,構成を備え」ることに相当する。

キ 引用発明の「走査フィルタは,」「多面鏡スキャナとを含み,入射ビームの方向と多面鏡の回転方向は,正の波長掃引(波長が増加する)となるように定められている」ことは,本願補正発明の「前記構成は,多面体構成部を包含し,該多面体構成部の回転方向,および入射する前記電磁放射の光軸に対する向きは,波長同調の方向に関して波長アップ(正)スキャンとなるように決定される」ことに相当する。

ク そうすると,本願補正発明と引用発明とは,
「波長掃引光源装置であって,
空洞共振器,利得媒質および光学波長走査フィルターを有する構成であって,約100テラヘルツ毎ミリ秒を超える速度で,特定の方向に掃引する平均周波数を有するために,出射電磁放射のスペクトルを生ずる,構成を備え,
前記構成は,前記空洞共振器中の電磁放射の平均周波数を特定の方向にシフトし,
前記構成は,多面体構成部を包含し,該多面体構成部の回転方向,および入射する前記電磁放射の光軸に対する向きは,波長同調の方向に関して波長アップ(正)スキャンとなるように決定される,装置。」
である点で一致し,相違するところがない。

カ よって,本願補正発明は,引用例1に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当するから,第29条第1項の規定により,特許を受けることができない。

(6)小括
前記(2)で検討したとおり,本件補正後の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず,また,前記(5)で検討したとおり,本願補正発明は特許法第29条第1項第3号に該当するから,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年6月6日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成29年12月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1により特定される以下のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
波長掃引光源装置であって,
空洞共振器,利得媒質および内部共振器型掃引フィルターを有する構成であって,約100テラヘルツ毎ミリ秒を超える速度で,特定の方向に掃引する平均周波数を有するために,出射電磁放射のスペクトルを生ずる,構成を備え,
前記構成は,内部共振器型電磁放射の平均周波数を特定の方向にシフトする,装置。」


2 特許法第36条第6項第1号に適合するか否かについての検討
ア 本願明細書には,前記第2の4(2)ア(ア)?(イ) に記載したとおりの記載があり,同イ及びウで指摘した事項が把握できる。

イ しかしながら,前記第2の4(2)カ及びキでの指摘と同様に,本願明細書には,従来のガルバノメーター駆動の回折格子フィルター等の「光学フィルター」では達成することのできない「繰返し周波数15.7kHzを超える可変同調速度」を得るためには,従来とは異なる光学フィルター,例えば,例示的実施形態等として記載された「『回折格子と,回転多面体スキャナーと,テレスコープとを備える』光学フィルター」等を利用する必要のあることが記載されているものと認められるところ,請求項1(本願発明)には,従来とは異なる光学フィルター,例えば,例示的実施形態等として記載された「『回折格子と,回転多面体スキャナーと,テレスコープとを備える』光学フィルター」等を備えることが特定されていない。

ウ そして,請求項1(本願発明)には,速い同調速度を達成するための手段(構成),(すなわち回折格子及びテレスコープ)が反映されていないところ,本願明細書の記載からは,当該手段(構成)を備えないものが,従来の光学フィルターよりも速い同調速度を達成することができるとは解せないことから,請求項1に係る発明(本願発明)の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。

エ よって,本願発明は,発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから,本件補正後の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


3 本願発明に係る優先権主張(2003年6月6日)が認められるか否かについての検討
ア 本願については,2003年6月6日にされた米国出願(60/476600)(以下「基礎米国出願1」という。)を基礎とした優先権主張がされているところ,基礎米国出願1の出願書類の明細書が翻訳されて,本願明細書の一部とされたものと認められる。
すなわち,基礎米国出願1の明細書の1ページ18?28行の記載が,おおむね前記第2の4(2)ア(ア)に摘記したものとなり,
基礎米国出願1の明細書の2ページ2?9行の記載が,おおむね前記第2の4(2)ア(イ)のうち段落【0006】に摘記したものとなったといえる。

イ また,基礎米国出願1の書類の14ページ(Abstract)には,本願明細書について前記第2の4(2)ウ(イ)で指摘したことと同様に,レーザー共振器として,単方向性の光ファイバーリングと,利得媒質として半導体光増幅器と,多面体スキャナーによる走査フィルターとを含んだ,拡張共振型半導体レーザーが,1.32μmを中心とした70nmの波長幅にわたって,最大1150nm/ms(繰返し周波数15.7kHz)の可変同調速度を得ることが記載されているといえる。
なお,基礎米国出願1のFIg.1(図面ページ1/10)及びFig.1A(図面ページ2/10)が,それぞれ本願の図1A及び図1Bに相当する。

ウ よって,本願明細書について,前記第2の4(2)イ及びウで指摘した事項は,基礎米国出願1の明細書についても同様に指摘できる事項といえる。

エ そして,前記2 イ?エで検討したとおり,請求項1に係る発明(本願発明)は,本願の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから,同様に,本願の発明の詳細な説明の原語文書である基礎米国出願1に係る明細書にも記載されていないものといえる。

カ よって,本願発明については,2003年6月6日にされた米国出願(60/476600)を基礎とした優先権主張は認められない。


4 引用発明
引用発明は,前記第2の4「(4)刊行物等に記載された発明」に記載したとおりのものである。なお,上記3のとおり,本願発明については,2003年6月6日にされた米国出願を基礎とした優先権主張は認められない。


5 対比・判断
前記第2「1 本件補正の内容」?第2「3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討」において記したように,本願補正発明は,本件補正前の請求項1の「空洞共振器,利得媒質および内部共振器型掃引フィルターを有する構成」について,本件補正後の請求項1の「多面体構成部を包含し,該多面体構成部の回転方向,および入射する前記電磁放射の光軸に対する向きは,波長同調の方向に関して波長アップ(正)スキャンとなるように決定される」ものとして,より限定するものである。
言い換えると,本願発明は,本願補正発明から上記限定事項を除いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定したものである本願補正発明は,前記第2 4「(5)本願補正発明と引用発明との対比・判断」において検討したとおり,引用例1に記載された発明であるから,本願発明も同様に,引用例1に記載された発明である
よって,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に該当するから,第29条第1項の規定により,特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-06-28 
結審通知日 2019-07-02 
審決日 2019-07-19 
出願番号 特願2016-181628(P2016-181628)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01S)
P 1 8・ 113- Z (H01S)
P 1 8・ 537- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
発明の名称 波長同調発信源装置及びその方法  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ