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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01H
管理番号 1357682
異議申立番号 異議2019-700678  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-27 
確定日 2019-12-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第6476282号発明「リフロー型回路保護デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6476282号の請求項13ないし15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6476282号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、2015年5月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年5月2日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成31年2月8日にその特許権の設定登録がされ、同年2月27日に特許掲載公報が発行され、その後、令和1年8月27日に、特許異議申立人シュルター アクチェンゲゼルシャフト(以下、「異議申立人」という。)により請求項13ないし15に対して特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
特許第6476282号の請求項13ないし15の特許に係る発明(以下、「本件発明13」ないし「本件発明15」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項13ないし15に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項13】
回路保護デバイスであって、
基部アセンブリであり、この基部アセンブリは、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1と第2の電極とを隔てる誘電体とを含む基部アセンブリと、及び、
第1の電極と第2の電極との各々の上面の少なくとも一部分に形成された金属層であり、この金属層は第1と第2の電極との間に導電性橋絡を形成するようにされており、この金属層は、リフロー温度よりも低い融点を有する金属により第1及び第2の電極よりも上方の所定位置に保持されている金属層と、
前記基部アセンブリを覆うキャップと、
前記基部アセンブリへ向かって前記キャップの上部から規定された第1の方向に前記キャップへ加えられた力に応じて、リフローの後に、前記回路保護デバイスを起動するための手段とを備える回路保護デバイス。
【請求項14】
請求項13の回路保護デバイスにおいて、前記基部アセンブリは、
前記金属層の上方に配置された橋絡端子であり、この橋絡端子はカンチレバー端部を含み、及び、
前記カンチレバー端部の下方の第1の端部と、第2の端部とを含むスプリングとを備え、
前記回路保護デバイスを起動させる前記手段は、前記キャップに加えられた力に応じて、第1の方向において前記スプリングの第2の端部に力を及ぼすように、前記キャップの内面から延出するリブを含む回路保護デバイス。
【請求項15】
請求項14の回路保護デバイスにおいて、前記基部アセンブリは、保持タブを有する側壁を含むと共に、前記キャップは、このキャップの側壁に規定されて前記保持タブを収容するように形状付けられた第1の保持穴と、この第1の保持穴の下方で前記キャップの側部に規定されて前記保持タブを収容するように形状付けられた第2の保持穴とを含み、好ましくは、第1及び第2の保持穴は前記キャップの側部に位置して、第1の方向に加えられた力が前記保持タブを第1の保持穴へ挿入させる回路保護デバイス。」

第3 申立理由の概要(進歩性について)
異議申立人は、主たる証拠として独国特許出願公開第102008053182号明細書(以下、「引用文献1」という。)並びに従たる証拠として特開2012-18789号公報(以下、「引用文献2」という。)及び米国特許出願公開第2010/0328016号明細書(以下、「引用文献3」という。)を提出し、請求項13ないし15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項13ないし15に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

第4 引用文献の記載等
1 引用文献1
引用文献1には、以下の事項が記載されている。(なお、当審仮訳は異議申立人の和訳に基づいて当審で作成した。当審仮訳の下線は当審で付した。以下同様。)
(1)

(当審仮訳)「[0006]本発明の主要な態様は、プリント基板と別の対象物とが組み合わされる接合運動中に機械的に予荷重が加えられるように設計された温度ヒューズをプリント基板が具備していることにある。つまり、接合運動によって、温度ヒューズに予荷重が加えられる。予荷重を加えるための別の手段、例えばスプリングはもはや不要である。したがって、製造・組付けの手間を大幅に減らすことができる。」

(2)

(当審仮訳)「[0010]対象物は、例えば、ハウジングのカバーであってよい。このカバーは、電子アセンブリをハウジング内に収納した後、電子アセンブリに向かって押圧される。しかしながら、本発明による温度ヒューズには、プリント基板が、例えばハウジング内に押圧されると同時に電気的に接触接続されるプレス嵌めプロセスによって予荷重が加えられてもよい。さらに、温度ヒューズには、電子アセンブリが、例えば別の電子アセンブリ上に載置される場合の組付けプロセスで予荷重が加えられてもよい。」

(3)

(当審仮訳)「[0014]別の実施の形態によれば、温度ヒューズのコンタクト領域が、電子部品、例えばトランジスタに固く結合されていてもよい。温度ヒューズに予荷重が加えられている場合には、部品に、この部品をプリント基板から離れる方向に引っ張る力が作用する。部品をプリント基板に固定しているはんだもしくは接着剤が融解すると、部品がプリント基板から離れ、回路を遮断する。この事例では、温度ヒューズの接着剤が、全く融解しないかまたは部品の接着剤よりも高い温度で初めて融解するように選択されていなければならない。」

(4)

(当審仮訳)「[0017]接着剤として、好ましくは、慣用のはんだが使用される。温度ヒューズのコンタクト領域がプリント基板に直接接合されている場合には、接着剤が導電性でなければならない。」

(5)

(当審仮訳)「[0024]図1には、複数の導体路15を有しており、複数の電子部品14、例えばSMD部品が装着されたプリント基板1を備えている電子アセンブリの斜視図が示してある。」

(6)

(当審仮訳)「[0025]アセンブリを熱による過熱に対して保護するために、温度ヒューズ2が設けられている。この温度ヒューズ2は、はんだ7の融点を超過すると、回路を遮断する。温度ヒューズ2は金属薄板から製造されていて、はんだ7によりプリント基板の表面に固定された面状のコンタクト領域6を有している。図示の状態では、このコンタクト領域6が、互いに絶縁された2つの導体路15を接続している。はんだ7が融解するまで温度が上昇すると、コンタクト領域6がプリント基板1から離れ、電気回路を遮断する。」

(7)

(当審仮訳)「[0026]温度ヒューズ2は、コンタクト領域6に続くベース区分5と、傾斜領域11と、レバーアーム3とを有している。このレバーアーム3は、別の対象物、例えば、制御装置(図2参照)のハウジング8と協働する。温度ヒューズ2には、プリント基板1とハウジング8とが組み合わされる接合運動中、機械的に予荷重が加えられる。このとき、温度ヒューズ2には、コンタクト領域6をプリント基板1から離れる方向に引っ張る力が導入される。このプロセスを以下で図2?図4に基づき詳しく説明する。」

(8)

(当審仮訳)「[0027]図2には、ハウジング8がまだ温度ヒューズ2に対して間隔を置いて位置している状態における図1のプリント基板の側面図が示してある。ここでは、ハウジング8が、レバーアーム3の端部に位置する区分4を操作する輪郭9を有している。ここでは矢印Aにより示した接合運動中、滑動区分4が輪郭9の表面上で滑動し、その際、滑動区分4に機械的に予荷重が加えられる。このとき、符号10で示した電気コンタクトが、プリント基板1に設けられた対応する開口(図示せず)内に走行し、プリント基板1に電気的かつ機械的に接続される。」

(9)

(当審仮訳)「[0028]図3には、温度ヒューズ2に予荷重が加えられた最終的な状態が示してある。温度がはんだ7の融点を上回って上昇すると、コンタクト領域6がプリント基板1から離れ、回路を遮断する。このとき、温度ヒューズ2がその傾斜領域11を中心として作動位置に傾倒する。」

(10)

(当審仮訳)「[0029]図4には、温度ヒューズ2が作動状態で示してある。認めることができるように、コンタクト領域6はプリント基板1に対して間隔を置いて位置している。温度ヒューズ2のベース領域5は、温度ヒューズ2の傾倒を可能にするように形成されている。この目的のために、温度ヒューズ2の、プリント基板に設けられた対応する開口内に突出した両ベース12は、十分な遊びを有している。」

(11)

(当審仮訳)「[0030]代替的には、温度ヒューズ2に応力を加えることが、カバーの上方からの押付けによって行われてもよいし、電子アセンブリが別のアセンブリ上へと押圧される過程で行われてもよい。いずれにせよ、温度ヒューズに応力を加えるために、接合運動以外、更なる付加ステップは不要である。」

(12)上記(6)の「温度ヒューズ2は金属薄板から製造されていて、はんだ7によりプリント基板の表面に固定された面状のコンタクト領域6を有している。図示の状態では、このコンタクト領域6が、互いに絶縁された2つの導体路15を接続している。」(段落[0025])との記載に照らせば、Fig.1(図1)からは、はんだ7により、2つの導体路15よりも上方の位置に、コンタクト領域6が保持されている構成が見て取れる。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本件の請求項13の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「温度ヒューズ2を具備した電子アセンブリであって、
プリント基板1であり、このプリント基板1は、互いに絶縁された2つの導体路15を有したプリント基板1と、及び、
2つの導体路15の各々の上面に形成された温度ヒューズ2の面状のコンタクト領域6であり、このコンタクト領域6は2つの導体路15を電気的に接続しており、このコンタクト領域6は、はんだ7により2つの導体路15よりも上方の位置に保持されているコンタクト領域6と、
プリント基板1に接合されるハウジング8と、
プリント基板1とハウジング8とが組み合わされる接合運動中、温度ヒューズ2の滑動区分4がハウジング8の輪郭9の表面上で滑動し、滑動区分4に機械的に予荷重が加えられる、温度ヒューズ2を具備した電子アセンブリ。」

2 引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
(1)「【0007】
本発明は、一対の端子と、この端子間に接続した低融点金属を含む中継接合体と、中継接合体に弾発力を常時付与するスプリングと、さらに中継接合体をソルダリング完了まで一時固定する制動ピンと、それらを収容した絶縁筐体とを備え、上記の中継接合体は、少なくとも上記両端子との接続部分が低融点金属からなり、フローおよびリフロー・ソルダリング工程に耐え、ソルダリング工程後に制動ピンによる中継接合体の固定を解除して稼動状態にできる温度ヒューズを提供する。」

(2)「【0013】
本発明の温度ヒューズは、一対の端子間に低融点金属可溶体のろう材で接続された中継接合体と、この中継接合体に対して常時弾発力を付与するスプリングと、はんだ処理作業中の高温に対し、この中継接合体の所定位置を確保するように一時的に固定保持するプロテクト治具である制動ピンとを具備する。ここで、中継接合体は少なくとも端子との接続部分が所定動作温度で溶融する低融点金属からなり、制動ピンおよび単一または複数個のスプリングは絶縁筐体に収容される。また、制動ピンは、温度ヒューズを実装時のフローまたはリフロー・ソルダリング処理の間は、少なくとも中継接合体を所定位置に保持する状態で絶縁筐体に収容されるが、実装後は除去されるか回転操作でその状態を変更され、実装された温度ヒューズを所定の動作温度で動作可能にする。従って、本発明の温度ヒューズは実装後の状態に関し、制動ピンはない場合とある場合が生じ、ある場合は制動ピンの位置は実装前の位置と異なる。なお、温度ヒューズは絶縁筐体に中継接合体、スプリングおよび制動ピンを収容し、中継接合体は、少なくとも一対の導出リードの端子にはんだ処理温度以下の融点を有する低融点可溶体で接合され、制動ピンの作用によりフローまたはリフロー・ソルダリング処理に耐え、所定の状態を維持し、実装後に本来の温度ヒューズとして機能する。本発明の温度ヒューズは、特に、第三端子と発熱素子とを組み込んだ発熱抵抗付き温度ヒューズとして有用される。例えば、電池パック用に130℃前後の溶融温度を有する低融点金属を使用した抵抗付き温度ヒューズとして電池パックに利用される。」

3 引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「[0020]The protective member 10 comprises a base 11 and an upper lid 12 coupled to the base 11 . The base 11 has a plurality of notches 111 spaced from each other at a circumferential portion thereof, two corresponding partitions 112 extending upwards, a limit space 113 defined between the partitions 112 , flanges 114 disposed on the partitions 112 and located above the notches 111 , and a recess 115 formed at a middle portion of each of the partitions 112 . The upper lid 12 has tenons 121 and locating holes 122 corresponding in position to the notches 111 and the flanges 114 , respectively, so that the upper lid 12 and the base 11 are connected together.」
(当審仮訳)「[0020]保護部材10は、ベース11およびベース11に連結する上蓋12を備えている。ベース11は、その外周部で互いに離間する複数のノッチ111、上に延びる2つの対応するパーティション112、パーティション112間の制限空間113、パーティション112の上に配置され、ノッチ111の上方に位置するフランジ114、及び、パーティション112のそれぞれの中央部に形成された凹部115とを有する。上蓋12は、ノッチ111及びフランジ114に対応する位置に、ほぞ121、位置決め孔122をそれぞれ有し、該上蓋12とベース11とが互いに接続される。」

第5 当審の判断(進歩性)
1 本件発明13について
(1)対比
本件発明13と引用発明とを対比すると、引用発明の「温度ヒューズ2を具備した電子アセンブリ」と本件発明13の「回路保護デバイス」とは、「保護回路を備えた装置」という限りにおいて共通し、引用発明の「プリント基板1」と本件発明13の「基部アセンブリ」とは「基部」という限りにおいて共通する。
また、引用発明の「面状のコンタクト領域6」は本件発明13の「金属層」に相当する。
そして、電子部品等をプリント基板上に搭載する際に通常行われるリフロー作業は、はんだが溶融する温度以上で行われることから、引用発明の「はんだ7」は、本件発明13の「リフロー温度よりも低い融点を有する金属」に相当するといえる。
そしてまた、引用発明の「2つの導体路15」の各々は、本件発明13の「第1の電極」及び「第2の電極」に相当し、引用発明の「互いに絶縁された2つの導体路15を有したプリント基板1」と本件発明13の「第1と第2の電極とを隔てる誘電体とを含む基部アセンブリ」とは、「第1と第2の電極とを隔てる誘電体とを含む基部」という限りで共通する。

したがって、本件発明13と引用発明とは
「保護回路を備えた装置であって、
基部であり、この基部は、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1と第2の電極とを隔てる誘電体とを含む基部と、及び、
第1の電極と第2の電極との各々の上面の少なくとも一部分に形成された金属層であり、この金属層は第1と第2の電極との間に導電性橋絡を形成するようにされており、この金属層は、リフロー温度よりも低い融点を有する金属により第1及び第2の電極よりも上方の所定位置に保持されている金属層とを備える保護回路を備えた装置。」
の点で一致し、以下の相違点で相違する。

[相違点]
本件発明13は、「回路保護デバイス」であって、
「基部アセンブリ」と、
「基部アセンブリを覆うキャップ」と、
「基部アセンブリへ向かってキャップの上部から規定された第1の方向にキャップへ加えられた力に応じて、リフローの後に、回路保護デバイスを起動するための手段」とを備えるのに対して、
引用発明は、「温度ヒューズ2を具備した電子アセンブリ」であって、
「プリント基板1」と、
「プリント基板1に接合されるハウジング8」と、
「プリント基板1とハウジング8とが組み合わされる接合運動中、温度ヒューズ2の滑動区分4がハウジング8の輪郭9の表面上を滑動し、滑動区分4に機械的に予荷重が加えられる」構成を備えている点。

(2)相違点の検討
上記相違点について検討する。
本件特許の明細書の段落【0002】?【0007】の記載を参照すると、本件発明13は、「或る既存の温度ヒューズはリフロー・オーブンを介して回路パネルに搭載することができ」ない(段落【0006】)ことを解決しようとする課題としたものであり、「基部アセンブリ」と、「基部アセンブリを覆うキャップ」と、「基部アセンブリへ向かってキャップの上部から規定された第1の方向にキャップへ加えられた力に応じて、リフローの後に、回路保護デバイスを起動するための手段」とを備えた「回路保護デバイス」と認められ、回路パネルに搭載される回路保護デバイスであることに鑑みれば、リフロー工程に入る前から「キャップ」を備えていると理解するのが自然である。また、そのような理解は、本件特許の明細書の段落【0056】、【0058】、【0074】の記載とも整合するものである。
これに対して、引用発明のプリント基板1が別のプリント基板に搭載されることは、引用文献1に記載も示唆もされていない。また、引用文献1の「別の対象物、例えば、制御装置(図2参照)のハウジング8」(上記第4の1(7)参照。)との記載、及び、温度ヒューズ2がプリント基板1にはんだ7により固定された後に、ハウジング8とプリント基板1とが接合される旨の記載(上記第4の1(7)、(8)参照。)によれば、引用発明において、他の装置のハウジングであるハウジング8を、プリント基板1と一体としてデバイスを構成するものではなく、ハウジング8は本件発明13の「キャップ」に相当するとはいえない。
引用文献1の記載からみて、引用発明を、リフロー処理により回路パネルに搭載されるデバイスとする動機付けはないといえる。

引用文献2には、一対の端子間に低融点金属可溶体のろう材で接続された中継接合体と、この中継接合体に対して常時弾発力を付与するスプリングと、フローまたはリフローのソルダリング処理中は、この中継接合体を所定位置に固定保持する制動ピンとを絶縁筐体内に備えた温度ヒューズであって、ソルダリング処理の後は制動ピンが除去されるか回転操作でその状態を変更され温度ヒューズを稼働状態とすることが記載されているが(上記第4の2(2)参照。)、制動ピンの除去または回転操作に関し、絶縁筐体に力を加えることは記載も示唆もされていない。
引用文献3は、キャップを基部アセンブリに対して所定の位置に保持することを示すにすぎない。
結局、引用文献2及び3のいずれにも、温度ヒューズを備えた回路保護デバイスにおいて、キャップに基部アセンブリへ向かって力を加えることによって温度ヒューズを起動させる手段について記載も示唆もされていないし、また、他に当該手段が本件特許の優先日前に周知事項であったとする証拠もない。
そうすると、仮に、引用発明において、ハウジング8とプリント基板1とから回路パネルに搭載される回路保護デバイスを構成できたとしても、ハウジング8にプリント基板1に向かって力を加えることによって温度ヒューズ2を起動させる手段を設けることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

異議申立人は、令和1年8月27日付けの特許異議申立書において次のとおり主張している。
「(エ)構成要件D
・・・(前略)・・・また、甲第1号証の段落0010には、「対象物は、例えば、ハウジングのカバーであってよい。」と記載されている。したがって、甲1発明における「ハウジング8」は、本件特許発明13における「前記基部アセンブリを覆うキャップ」に相当する構成である。」(異議申立書第14ページ下から6?末行)
「<相違点3について>
・・・(前略)・・・甲1発明に係る温度ヒューズ2を、本件特許発明13のようにリフロー型回路保護デバイスとして使用した場合、温度ヒューズ2をリフローの後に起動すべきものであることは、例えば甲第2号証に「フローおよびリフロー・ソルダリング工程に耐え、ソルダリング工程後に制動ピンによる中継接合体の固定を解除して稼動状態にできる温度ヒューズ」(段落0007)と記載されているように、従来周知の事項である。・・・(後略)・・・」(異議申立書第17ページ下から6行?第18ページ第5行)
構成要件Dに関する主張について検討すると、引用文献1の段落[0010]全体の記載を参照すると、「ハウジングのカバー」はハウジングとともにケース、筐体を形成していると理解でき、また、カバーがプリント基板1とともにデバイスを構成するものでもないので、ハウジング8に対する判断と同様に、本件発明13の「キャップ」に相当するとはいえない。
相違点3に関する主張について検討すると、上述のとおり、具体的に「基部アセンブリへ向かってキャップの上部から規定された第1の方向にキャップへ加えられた力に応じて、リフローの後に、回路保護デバイスを起動するための手段」との事項を示す証拠はない。
以上のとおりであるので、異議申立人の上記主張を採用することはできない。

そして、上記相違点に係る本件発明13の構成により、本件発明13は「キャップ702は、リフローの間に、リフロー位置にあるので、スプリング732及び734は伸張しておらず、半田結合726がリフローの間に溶融するとき、橋絡端子724は所定位置に留まる。デバイスを冷却するリフローの後、半田結合726は凝固して、再び橋絡端子724を所定位置に保持する。次いでキャップ702が起動位置へ押し下げられて、スプリング732及び734を伸張に置いて、デバイス700を起動させる。」(本件特許の明細書の段落【0058】参照)という作用・効果を奏する。
そうであれば、本件発明13は、引用発明、引用文献2及び3に記載された事項並びに周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本件発明14及び本件発明15について
本件発明14及び本件発明15は、本件発明13の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えた発明であるので、上記1に示した理由と同様の理由により、上記引用発明、引用文献2及び3に記載された事項並びに周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項13ないし15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項13ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-11-20 
出願番号 特願2017-510450(P2017-510450)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H01H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 内田 勝久  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 井上 信
内田 博之
登録日 2019-02-08 
登録番号 特許第6476282号(P6476282)
権利者 リテルヒューズ・インク リテルヒューズ フランス エスエーエス
発明の名称 リフロー型回路保護デバイス  
代理人 山崎 行造  
代理人 内藤 忠雄  
代理人 内藤 忠雄  
代理人 永島 秀郎  
代理人 今井 千裕  
代理人 赤松 利昭  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 今井 千裕  
代理人 山崎 行造  
代理人 赤松 利昭  

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