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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1357710
異議申立番号 異議2019-700788  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-03 
確定日 2019-12-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第6493406号発明「非水電解質二次電池用正極活物質」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6493406号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6493406号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)8月5日(優先権主張 2014年(平成26年)8月26日)に国際出願され、2019年(平成31年)3月15日にその特許権の設定登録がされ、2019年(平成31年)4月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、2019年(令和1年)10月3日に特許異議申立人金澤毅(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?5の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
リチウム含有遷移金属酸化物からなる一次粒子が凝集して形成された二次粒子において、
前記二次粒子の表面において隣接する一次粒子間に形成された凹部に、希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子が、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して希土類元素換算で、0.005質量%以上0.5質量%以下、付着しており、且つ、前記希土類化合物の二次粒子は、前記凹部において隣接し合う一次粒子の両方に付着しており、
前記リチウム含有遷移金属酸化物には、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して、0.03モル%以上2.0モル%以下のタングステンが固溶している、
非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記希土類化合物は希土類元素を含み、前記希土類元素が、ネオジム、サマリウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の元素である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記希土類化合物が、水酸化物及びオキシ水酸化物から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム含有遷移金属酸化物に占めるニッケルの割合が、リチウムを除く金属元素の総モル量に対して80モル%以上である、請求項1?3の何れか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム含有遷移金属酸化物に占めるコバルトの割合が、リチウムを除く金属元素の総モル量に対して7モル%以下である、請求項1?4の何れか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。」

第3 申立理由の概要
申立人は、次の甲第1号証?甲第7号証(以下、「甲1」等という。)を提出し、以下の申立理由1?2により、本件発明1?5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

甲1:国際公開第2014/049958号
甲2:特開2012-33397号公報
甲3:特開2004-303673号公報
甲4:特開2006-62911号公報
甲5:国際公開第2005/099022号
甲6:特開2012-252844号公報
甲7:国際公開第2014/050115号

1 申立理由1(進歩性)
本件発明1?3は、それぞれ、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明4?5は、それぞれ、甲1に記載記載された発明、甲2に記載された発明及び甲3?甲7に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1?5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 申立理由2(サポート要件)
請求項1では、「二次粒子の表面において隣接する一次粒子間に形成された凹部に、希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子が、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して希土類元素換算で、0.005質量%以上0.5質量%以下付着しており、・・・前記リチウム含有遷移金属酸化物には、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して、0.03モル%以上2.0モル%以下のタングステンが固溶している」と規定している。
本件特許明細書の段落【0006】には、本件特許発明の課題は、「高温サイクル後の容量維持率が低下する」ことが記載されている。
一方、本件特許明細書では、請求項1に係る発明に対応する実施例は、実施例1のみであり、希土類化合物である水酸化エルビウムの二次粒子の付着量は、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対してエルビウム換算で、約0.15質量%である。リチウム含有遷移金属酸化物の総質量を、リチウム含有遷移金属酸化物の全てのモル比の和としたとき、タングステンの固溶量は、リチウム含有遷移金属の総質量に対して、約0.049モル%である。
上記実施例1の1点において、本件特許発明の課題を解決できたとしても、本件特許発明1の、希土類化合物の二次粒子のリチウム含有遷移金属酸化物への付着量及びタングステンのリチウム含有遷移金属酸化物への固溶量に関して、上記範囲にわたって本件特許発明の課題を解決できるとは、明細書の記載及び出願時の技術常識に照らしても、認められない。
したがって、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2?5についての特許請求の範囲の記載は、サポート要件を充足しない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
以下に述べるように、申立理由1、2によっては,本件特許の請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。

1 甲1及び甲2の記載事項
甲1及び甲2には、それぞれ、以下の記載がある(下線は当審による。以下同じ)。
(1)甲1の記載事項
ア 「ニッケルおよびジルコニウムを含み、一次粒子が凝集した二次粒子から成るリチウム含有遷移金属酸化物と、
上記一次粒子同士が接触する界面、及び/又は、その界面近傍に付着した希土類の化合物と、
を備える非水電解質二次電池用正極活物質。」([請求項1])
イ 「上記希土類の化合物が、希土類の水酸化物、希土類のオキシ水酸化物、又は、希土類の酸化物である、請求項1?4の何れか1項に記載の非水電解質二次電池正極活物質。」([請求項5])
ウ 「上記希土類の化合物中の希土類元素が、ネオジム、サマリウム、又はエルビウムである、請求項1?5の何れか1項に記載の非水電解質二次電池正極活物質。」([請求項6])
エ 「本発明の一形態は、ニッケルおよびジルコニウムを含み、一次粒子が凝集した二次粒子から成るリチウム含有遷移金属酸化物と、上記一次粒子同士が接触する界面、及び/又は、その界面近傍に付着した希土類の化合物と、を備える。
リチウム含有遷移金属酸化物が二次粒子の状態で存在する場合に、一次粒子同士が接触する界面、及び/又は、その界面近傍に希土類の化合物が付着していれば、当該界面及び/又はその近傍には、リチウム含有遷移金属酸化物に含まれたジルコニウムと希土類の化合物とが存在することになる。このため、後述する理由により、上記界面及び/又はその近傍に安定な構造が形成されるので、大電流放電を行った場合であっても、上記二次粒子に粒子割れが生じるのを抑制できる。この結果、大電流放電を伴う条件で充放電を繰り返し行った場合に、サイクル特性が向上し、しかも出力特性の低下を抑制できる。よって、本発明の一形態の電池は、10A、20Aという大電流で放電する必要性がある工具用途等において極めて有用である。」(段落[0010])
オ 「上記リチウム含有遷移金属酸化物が組成式Li_(x)Ni_(y)Zr_(z)M_((1-y-z) O_(2)(0.9<x<1.2、0.3<y≦0.9、0.001≦z≦0.01)で表されることが好ましい。
xの値は0.9<x<1.2が好ましいが、より好ましい値としては、0.98<x<1.05である。xの値が0.95以下であると、結晶構造の安定性が低下するため、サイクル経過時の容量維持や出力特性の低下抑制が十分でなくなる。一方、xの値が1.2以上であるとガス発生が多くなるからである。」(段落[0012])
カ 「yの値を上記のように規制するのは、yの値が0.3以下であると放電容量が低下する。また、yの値が0.9を超えると結晶構造の安定性が低下するため、サイクル経過時の容量維持や出力特性の低下抑制が十分でなくなるからである。 zの値は0.001≦z≦0.01が好ましいが、より好ましい値としては、0.003≦z≦0.007である。zの値が0.001未満であるとジルコニウムの存在効果が低減する。また、zの値が0.01を超えると放電容量が低下するからである。」(段落[0013])
キ 「上記希土類の化合物は、希土類の水酸化物、希土類のオキシ水酸化物、又は希土類の酸化物であることが望ましく、特に、希土類の水酸化物、又は、希土類のオキシ水酸化物であることが望ましい。これらを用いると、上記作用効果が一層発揮されるからである。尚、希土類の化合物には、これらの他に希土類の炭酸化合物や、希土類の燐酸化合物等が一部含まれていてもよい。」(段落[0016])
ク 「上記希土類の化合物に含まれる希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられ、中でも、ネオジム、サマリウム、エルビウムであることが好ましい。ネオジムの化合物、サマリウムの化合物、及びエルビウムの化合物は、他の希土類の化合物に比べて平均粒径が小さく、正極活物質の表面により均一に析出し易いからである。」(段落[0017])
ケ 「上記希土類の化合物の平均粒径は1nm以上100nm以下であることが望ましい。希土類の化合物の平均粒子径が100nmを超えると、希土類の化合物の粒径が大きくなり過ぎるため、希土類の化合物の粒数が減少する。このため、一次粒子同士が接触する界面、及び/又は、その界面近傍に、希土類の化合物が付着する確率が減少する。」(段落[0019])
コ 「上記オキシ水酸化エルビウム等の希土類の化合物をリチウム含有遷移金属酸化物に付着させるには、リチウム含有遷移金属酸化物を分散した溶液に、例えばエルビウム塩を溶解した水溶液を混合し、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に希土類元素の塩を付着させた後、熱処理する方法が挙げられる。熱処理温度としては、120℃以上700℃以下であることが好ましく、さらには250℃以上500℃以下であることが好ましい。120℃未満の場合、活物質に吸着した水分が十分に除去されないために、電池内に水分が混入する恐れがある。一方、700℃を超える場合には、表面に付着した希土類化合物が内部に拡散してしまい、活物質表面に存在しがたくなるため効果が得がたくなる。特に250℃から500℃にしておくと、水分を除去でき、かつ選択的に表面に希土類化合物が付着した状態が形成できる。500℃を超えると、表面の希土類化合物の一部が内部に拡散し、効果が低下するおそれがある。また別の方法としては、リチウム含有遷移金属酸化物を混合しながら、希土類元素の塩(例えば、エルビウム塩)を溶解した水溶液を噴霧した後に、乾燥するという方法もある。さらに別の方法としては、リチウム含有遷移金属酸化物と、希土類の化合物とを、混合処理機を用いて混合し、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に希土類化合物を機械的に付着させる方法もある。上記した別の方法については、さらに熱処理を行っても良い。この場合の熱処理温度は、上記の水溶液を混合する方法の場合の熱処理温度と同様である。」(段落[0021])
サ 「上述した方法の中でも、リチウム含有遷移金属酸化物を分散した溶液に、エルビウム塩等の希土類塩を溶解した水溶液を混合する方法や、リチウム含有遷移金属酸化物を混合しながら、希土類元素の塩を溶解した水溶液を噴霧する方法を用いることが好ましく、特に、リチウム含有遷移金属酸化物を分散した溶液に、エルビウム塩等の希土類塩を溶解した水溶液を混合する方法を用いることが好ましい。この理由としては、当該方法では、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に、希土類の化合物をより均一に分散して付着させることができるからである。この際、リチウム含有遷移金属酸化物を分散した溶液のpHを一定にすることが好ましく、特に1?100nmの微粒子を、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に均一に分散させて析出させるには、pHを6?10に規制することが好ましい。pHが6未満になると、リチウム含有遷移金属酸化物の遷移金属が溶出する恐れがある一方、pHが10を超えると、希土類の化合物が偏析してしまう恐れがある。」(段落[0022])
シ 「〔正極活物質の合成〕 NiとCoとMnとの原子比が55:20:25になるように混合した硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとの混合物1600gを、5Lの水に溶解させて、原料溶液を得た。この原料溶液に、水酸化ナトリウムを200g加えて、沈殿物を生成させた。この沈殿物を十分に水洗し、乾燥させ、共沈遷移金属水酸化物を得た。
この共沈遷移金属水酸化物を750℃で12時間焼成して、遷移金属酸化物を得た。得られた遷移金属酸化物1000gに対して、Li_(2)CO_(3)を515g、ZrO_(2)を8.4g混合した後、950℃で12時間焼成して、リチウム含有遷移金属酸化物を得た。XRD測定の結果、得られたリチウム含有遷移金属酸化物は空間群R3-mに帰属する単一相であることがわかった。また、ICP発光分光分析の結果、LiNi_(0.545)Co_(0.20)Mn_(0.25)Zr_(0.005)O_(2)組成であることを確認した。SEM観察の結果から、リチウム含有遷移金属酸化物は、一次粒子(SEM観察による平均粒径は0.7μm)が凝集した二次粒子からなることを確認した。また、二次粒子の平均粒径(D50)は14μmであった。尚、該二次粒子の平均粒径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、粒径が小さいものから順に粒子の質量を積算していき、積算質量が全粒子の質量の50%になったときの粒径を算出することにより求めた。」(段落[0032])
ス 「上記方法で合成されたリチウム含有遷移金属酸化物の粒子1000gを3リットルの純水に投入し攪拌した後、これに硝酸エルビウム5水和物4.58gを溶解した溶液を加えた。この際、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加え、リチウム含有遷移金属酸化物を含む溶液のpHが9となるように調整した。次いで、吸引濾過、水洗した後、400℃にて5時間焼成して得られた粉末を乾燥し、リチウム含有遷移金属酸化物の表面にオキシ水酸化エルビウムが均一に付着した正極活物質を得た。尚、上記オキシ水酸化エルビウムの付着量は、エルビウム元素換算で、上記リチウム含有遷移金属酸化物の遷移金属の総モル量に対して0.1モル%であった。また、得られた正極活物質をSEM観察したところ、リチウム含有遷移金属酸化物における一次粒子同士が接触する界面、及び/又は、その界面近傍に、オキシ水酸化エルビウムが付着していることを確認した。」(段落[0033])
セ 「

」(段落[0043])
ソ 「上記表1から明らかなように、電池Aは電池Z1?Z3に比べて、70%容量維持率に達するまでのサイクル数が増加し、且つ、サイクル経過に伴う抵抗増加量が小さくなっていることが確認できる。共にオキシ水酸化エルビウムが付着されていない電池Z1と電池Z3とを比較すると、ジルコニウムが含有された電池Z1はジルコニウムが含有されていない電池Z3に比べて、150サイクル後の抵抗増加量は若干小さくなっているものの、未だ不十分である。また、容量維持率が70%に達するまでのサイクル数については、ジルコニウム含有の有無に関わらず、両電池共に極めて少ないことが確認できる。また、共にジルコニウムが含有されていない電池Z2と電池Z3とを比較すると、オキシ水酸化エルビウムが付着された電池Z2はオキシ水酸化エルビウムが付着されていない電池Z3に比べて、容量維持率が70%に達するまでのサイクル数が増加し、サイクル経過に伴う抵抗増加量が小さくなっているものの、未だ不十分である。」(段落[0044])
タ 「以上のことから、単に、リチウム含有遷移金属酸化物にジルコニウムを含有させただけでは、150サイクル後の抵抗増加が飛躍的に低下したり、容量維持率が70%に達するまでのサイクル数が顕著に多くなるといったことはない。また、リチウム含有遷移金属酸化物にオキシ水酸化エルビウムを付着させただけの場合にも、同様である。これに対して、ジルコニウムの含有に加えて、リチウム含有遷移金属酸化物にオキシ水酸化エルビウムを付着(具体的には、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子における一次粒子同士が接触する界面、及び/又は、その界面近傍にオキシ水酸化エルビウムが付着)していれば、特異的に、容量維持率が70%に達するまでのサイクル数が顕著に多くなり、且つ、150サイクル後の抵抗増加が飛躍的に低下する。」(段落[0045])
チ 「この理由について定かではないが、リチウム含有遷移金属酸化物にジルコニウムが含有され、しかも、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子における一次粒子同士が接触する界面、及び/又は、その界面近傍に、オキシ水酸化エルビウムのエルビウム(希土類元素)が付着していれば、一次粒子界面近傍にジルコニウム元素とエルビウム元素とが共存することになる。このため、リチウム含有遷移金属酸化物の粒子表面に安定な構造が形成される結果、リチウム含有遷移金属酸化物の粒子割れが抑制されるからだと考えられる。
一次粒子同士が接触する界面、及び/又は、その界面近傍に希土類の化合物が付着していれば、当該界面及び/又はその近傍に安定な構造が形成される反応機構は定かではないが、以下のように考えられる。リチウム含有遷移金属酸化物にジルコニウムが含有されているとき、ジルコニウムの価数は三価から四価の状態で存在しているため、4d軌道は空の軌道となっている。そのため、希土類元素の特徴である4f軌道の電子と上記空の4d軌道とに相互作用が働き、4f軌道の電子が空の4d軌道に引き寄せられる。この結果、ジルコニウムの4d軌道に存在する電子の影響により、ジルコニウムの周囲に存在する遷移金属(ニッケルであるが、ニッケルの他にコバルト、マンガン等を含んでいれば、これらも含む)の電子状態が安定化するので、遷移金属の価数低下が抑制されて、リチウム含有遷移金属酸化物の表面において安定な構造を維持できると考えられる。」(段落[0046])
ツ 上記ア?チに摘記した事項、特にア、コ、サからみて、甲1には、「ニッケルおよびジルコニウムを含むリチウム含有遷移金属酸化物からなる一次粒子が凝集した二次粒子において、リチウム含有遷移金属酸化物を分散した溶液に、エルビウム塩等の希土類塩を溶解した水溶液を混合し、pHを6?10に規制し、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に希土類元素の塩を付着させた後、熱処理する方法により、上記一次粒子同士が接触する界面、及び/又は、その界面近傍に、希土類の化合物が付着している、非水電解質二次電池用正極活物質。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)甲2の記載事項
ア 「【0031】
上記構成において、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物(Li_(a)(Ni_(b)Co_(c)Mn_(d))_(1-x-y)W_(x)Zr_(y)O_(2))に含まれるタングステン元素Wは、その結晶構造中に固溶し、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物におけるリチウムイオンの挿入・脱離反応を円滑化させるように作用する。また、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物に含まれるジルコニウム元素Zrは、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物表面を被覆して、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物からの遷移金属元素(Ni,Co等)の溶出を抑制するように作用する。これらの作用により、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物と非水電解質との反応が抑制される。」
イ 「【0043】
(実施例1)
〈正極活物質の作製〉
Ni,Co,Mnの混合硫酸塩溶液に、炭酸水素ナトリウムを添加し、Ni,Co,Mnの炭酸塩を共沈させた。この後、共沈炭酸塩を熱分解反応して、遷移金属源としてのNi,Co,Mnの酸化物を得た。」
ウ 「【0044】
上記遷移金属源と、リチウム源としての炭酸リチウムと、添加元素源としての酸化タングステンおよび酸化ジルコニウムと、を乳鉢で混合し、得られた混合物を空気中で焼成して、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を得た。この後、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を平均粒径が10μmになるまで粉砕した。」
エ 「【0072】
(比較例3)
正極活物質として、Li(Ni_(0.3)Co_(0.4)Mn_(0.3))_(0.95)W_(0.05)O_(2)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例3に係る非水電解質二次電池を作製した。」
オ 「【0086】
[負荷放電サイクル特性試験]
上記実施例1?16、比較例1?14と同じ条件で電池をそれぞれ1個作製した。これらの各電池に対して、25℃において、定電流1It(1500mA)で電圧が電圧4.2Vとなるまで充電し、その後定電圧4.2Vで電流が30mAとなるまで充電し、この後、定電流10It(15A)で電圧が2.5Vとなるまで放電する充放電サイクルを200回行った。そして、以下の式によりサイクル容量維持率を算出した。」
カ 「【0089】


キ 「【0092】
上記表1から、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物にタングステンWを含まない比較例1は、高温保存容量維持率が89%、サイクル容量維持率が86%、タングステンWをモル比で0.1含む比較例2は、高温保存容量維持率が87%、サイクル容量維持率が87%であるのに対し、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物にジルコニウムZrとともにタングステンWをモル比で0.001?0.05含む実施例1,2は、高温保存容量維持率がともに93%、サイクル容量維持率が93%、94%であり、実施例1,2のほうが優れていることがわかる。」
ク 「【0093】
また、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物にジルコニウムZrを含まない比較例3は、高温保存容量維持率が84%、サイクル容量維持率が84%、ジルコニウムZrをモル比で0.1含む比較例4は、高温保存容量維持率が89%、サイクル容量維持率が88%であるのに対し、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物にタングステンとともにジルコニウムZrをモル比で0.001?0.05含む実施例2、3は、高温保存容量維持率が93%、94%、サイクル容量維持率が94%、93%であり、実施例2,3のほうが優れていることがわかる。」

2 申立理由1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「ニッケルおよびジルコニウムを含むリチウム含有遷移金属酸化物」は、本件発明1の「リチウム含有遷移金属酸化物」に相当する。
そして、甲1発明の「一次粒子が凝集した二次粒子」は、本件発明1の「一次粒子が凝集して形成された二次粒子」に相当する。
また、隣接する粒子同士が接する部分の近傍では、隣接する粒子が接する部分から離れた位置から隣接する粒子同士が接する部分に近づくにつれて、隣接する粒子の外縁間の距離が小さくなり、全体として凹状の構造をとることが認められるから、甲1発明の「リチウム含有遷移金属酸化物」の「一次粒子同士が接触する界面、及び/又は、その界面近傍」が、本件発明1の「前記二次粒子の表面において隣接する一次粒子間に形成された凹部」を含むといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「リチウム含有遷移金属酸化物」の「二次粒子の表面において隣接する一次粒子間に形成された凹部」に「希土類化合物」が「付着して」いる点で一致する。
これらの事項を考慮して、本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、下記の一致点で一致し、下記の相違点1?4で相違する。

[一致点]
「リチウム含有遷移金属酸化物からなる一次粒子が凝集して形成された二次粒子において、前記二次粒子の表面において隣接する一次粒子間に形成された凹部に希土類化合物が付着している、非水電解質二次電池用正極活物質。」

[相違点1]
本件発明1は、「希土類化合物」が「希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子」を形成するものであるのに対し、甲1発明は、「希土類の化合物」が「二次粒子」を形成しているか不明な点。

[相違点2]
本件発明1は、「希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子」の付着量が、「リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して希土類元素換算で、0.005質量%以上0.5質量%以下」であるのに対し、甲1発明は、「希土類の化合物」の付着量が不明な点。

[相違点3]
本件発明1は、「前記希土類化合物の二次粒子は、前記凹部において隣接し合う一次粒子の両方に付着して」いるものであるのに対し、甲1発明は、「希土類の化合物」が隣接するリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子に対してどのような関係にあるか不明な点。

[相違点4]
本件発明1は、「前記リチウム含有遷移金属酸化物には、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して、0.03モル%以上2.0モル%以下のタングステンが固溶している」ものであるのに対し、甲1発明は、「タングステン」が固溶しているか否か不明な点。

イ 相違点1についての判断
本件特許の発明の詳細な説明には、次の(ア)?(ウ)の記載がある。
(ア)「【0037】
リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子表面に希土類化合物を付着させるにあたり、希土類元素を含む化合物を溶解した水溶液を上記懸濁液に加える間、懸濁液のpHを11.5以上、好ましくはpH12以上の範囲に調整することが望ましい。この条件下で処理することで希土類化合物の粒子がリチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子の表面に偏在して付着した状態となりやすいためである。一方、懸濁液のpHを6以上10以下にすると、希土類化合物の粒子がリチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子の表面全体に均一に付着した状態となってしまい、二次粒子表面における一次粒子界面で生じる表面変質による活物質の割れを十分に抑制することができない恐れがある。また、pHが6未満になると、リチウム含有遷移金属酸化物の少なくとも一部が溶解してしまうことがある。」
(イ)「【0059】
実験例1では、懸濁液のpHが11.5?12.0と高いために、懸濁液中で析出した水酸化エルビウムの一次粒子同士が結合(凝集)して二次粒子を形成したと考えられる。また、実験例1では、Niの割合が94%と高く、3価のNiの割合が多くなるために、リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子界面でLiNiO_(2)とH_(2)Oの間でプロトン交換が起こりやすくなり、プロトン交換反応により生成した多量のLiOHが、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子表面にある一次粒子と一次粒子が隣接している界面の内部から出てくる。これにより、リチウム含有遷移金属酸化物の表面において隣接する一次粒子間におけるアルカリ濃度が高くなるため、懸濁液中で析出した水酸化エルビウム粒子が、アルカリに引き寄せられるようにして、上記一次粒子界面に形成された凹部に凝集するように二次粒子を形成しながら析出したと考えられる。」
(ウ)「【0068】
実験例3では、懸濁液のpHを9にしているために、懸濁液中における水酸化エルビウムの粒子の析出速度が遅くなり、このために水酸化エルビウムの粒子が二次粒子化することなくリチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子の表面全体に均一に析出した状態になったと考えられる。」

そうすると、(ア)?(ウ)の記載からみて、本件発明1の「前記二次粒子の表面において隣接する一次粒子間に形成された凹部に、希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子が、・・・付着しており、且つ、前記希土類化合物の二次粒子は、前記凹部において隣接し合う一次粒子の両方に付着して」いる構成を得るためには、懸濁液のpHを11.5以上とする必要があり、懸濁液のpHを10以下とした場合には、希土類化合物が二次粒子化することなく均一に析出し、上記構成を得ることができないといえる。
一方で、甲1発明は、懸濁液のpHを6?10に規制しているのであるから、甲1発明の製造方法では上記構成を得ることはできず、甲1発明が上記構成を備えるとはいえない。
また、第4 1(1)サに摘記したとおり、甲1の段落[0022]には、「この際、リチウム含有遷移金属酸化物を分散した溶液のpHを一定にすることが好ましく、特に1?100nmの微粒子を、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に均一に分散させて析出させるには、pHを6?10に規制することが好ましい。・・・pHが10を超えると、希土類の化合物が偏析してしまう恐れがある。」ことが記載されているから、甲1発明において、懸濁液のpHを11.5以上といったpHが10を超える高い範囲のpHとすることには阻害要因がある。
したがって、甲1発明において、懸濁液のpH11.5として上記構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
なお、申立人は、特許異議申立書の第24?25頁の「・構成要件(B)について」欄において、「本件特許発明1と甲第1号証の正極活物質とは、いずれも、同様の製造方法により、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に希土類化合物を付着させているので、当然、一次粒子間に形成された凹部に、エルビウム化合物の二次粒子が付着している」旨、主張する。
しかしながら、本件特許に記載の製造方法と甲1発明の製造方法とは、上述のとおり懸濁液のpHの範囲が相違しており、pHの相違を考慮すれば、甲1発明において「一次粒子間に形成された凹部に、エルビウム化合物の二次粒子が付着している」とはいえないことは上述のとおりである。
したがって、申立人の当該主張は採用できない。

ウ 相違点2、3についての判断
イにおいて説示したとおり、甲1発明は、「希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子」を備えるものでなく、甲1発明において、「希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子」を備えるようにすることが、当業者に容易に想到し得ることであるともいえない。
そうすると、「希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子」の含量に関する相違点2及び「希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子」の配置に関する相違点3についても、甲1発明からは、当業者が容易に想到し得るとはいえない。

エ 相違点4についての判断
第4 1(2)ア?クに摘記したとおり、甲2には、リチウムニッケルコバルト含有複合酸化物にタングステンとジルコニウムを含有させることが記載されているから、甲1発明において、甲2に記載の事項に基づいて、ジルコニウムに換えてタングステンを採用することが、当業者が容易になし得ることであるか否かにつき、以下に検討する。
第4 1(1)ア、エ、チに摘記した記載からみて、甲1発明においては、ジルコニウムは必須の成分であり、甲1発明において、ジルコニウムを他の元素に置換することには阻害要因があるといえる。
また、第4 1(1)チにて摘記した甲1の段落[0046]には、ジルコニウムの作用機序として、「リチウム含有遷移金属酸化物にジルコニウムが含有されているとき、ジルコニウムの価数は三価から四価の状態で存在しているため、4d軌道は空の軌道となっている。そのため、希土類元素の特徴である4f軌道の電子と上記空の4d軌道とに相互作用が働き、4f軌道の電子が空の4d軌道に引き寄せられる。この結果、ジルコニウムの4d軌道に存在する電子の影響により、ジルコニウムの周囲に存在する遷移金属(ニッケルであるが、ニッケルの他にコバルト、マンガン等を含んでいれば、これらも含む)の電子状態が安定化するので、遷移金属の価数低下が抑制されて、リチウム含有遷移金属酸化物の表面において安定な構造を維持できると考えられる。」との記載があるが、ジルコニウムの電子構造はタングステンの電子構造とは異なるから、タングステンがジルコニウムと同様の作用機序にて作用し得るとはいえず、ジルコニウムをタングステンにて置換することはできない。
そうすると、甲1発明において、ジルコニウムに換えてタングステンを採用することは、当業者が容易に想到し得ることではない。
なお、申立人は、特許異議申立書の第26?27頁の「・構成要件(D)について」欄において、「すなわち、甲第2号証には、WやZrは、正極活物質の放電サイクル特性を向上させる効果を有することが開示され、WとZrとが等価な材料であることが示されている。」、「甲第1号証に記載の発明において、サイクル特性を向上させるために、遷移金属の元素としてZrに代えてWをリチウム含有遷移金属酸化物に対して0.03モル%以上2.0モル%以下の範囲内でリチウム含有遷移金属酸化物を固溶させることは当業者であれば適宜なし得る程度のことである。」旨、主張する。
しかしながら、上述のとおり、甲1記載の作用機序に関し、タングステンがジルコニウムと同様の機序により作用するとはいえず、両者が等価な材料とはいえないから、甲1発明においてジルコニウムに代えてタングステンを用いることはできない。
したがって、申立人の当該主張は採用できない。

オ 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。

(2)本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むから、本件発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)小括
請求項1?5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

3 申立理由2(サポート要件)について
(1)特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
以下、上記の観点に立って、本件特許の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについて検討する。

(2)本件特許の特許請求の範囲の記載は、第2に示したとおりである。

(3)本件特許の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
ア 「【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示されている技術を用いても、高温サイクル後の容量維持率が低下するという課題があることが分かった。
イ 「【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウム含有遷移金属酸化物からなる一次粒子が凝集して形成された二次粒子において、前記二次粒子の表面において隣接する一次粒子間に形成された凹部に、希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子が、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して希土類元素換算で、0.005質量%以上0.5質量%以下、付着しており、且つ、前記希土類化合物の二次粒子は、前記凹部において隣接し合う一次粒子の両方に付着しており、前記リチウム含有遷移金属酸化物には、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して、0.03モル%以上2.0モル%以下のタングステンが固溶している。」
ウ 「【0014】
上記構成によれば、希土類化合物の二次粒子25が、凹部23において隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20の両方に付着しているので、高温での充放電サイクル時における、これら隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20のいずれの表面においても、表面変質が抑制され、また、凹部23における一次粒子界面からの割れを抑制できる。加えて、希土類化合物の二次粒子25は、隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20同士を固定(接着)する効果も有しているので、高温での充放電サイクル時において正極活物質が膨張収縮を繰り返しても、凹部23において一次粒子界面から割れが生じるのが抑制される。」
エ 「【0015】
また、上記構成によれば、高温になっても、リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20にタングステンが固溶しているので、高温での充放電サイクル時において、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の内部における一次粒子の表面変質及び一次粒子界面からの割れが抑制される。希土類化合物がリチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の表面の一部に存在することで、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の表面全体にリチウムイオン透過性の被膜ができ、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の内部からタングステンが溶出するのが抑制される。」
オ 「【0016】
上述したように、上記構成によれば、高温での充放電サイクル時における、正極活物質の表面変質及び割れが、正極活物質の表面及び内部の両方から抑制される。」
カ 「【0025】
希土類化合物の割合(付着量)は、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して希土類元素換算で、0.005質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.3質量%以下であることがより好ましい。上記割合が0.005質量%未満になると、リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子間に形成された凹部に付着する希土類化合物の量が少なくなるために、希土類化合物による上述の効果が十分に得られず、高温サイクル後の容量維持率の低下が抑制できないことがある。一方、上記割合が0.5質量%を超えると、リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子間のみならず、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子表面を過剰に覆ってしまうため、初期充放電特性が低下することがある。」
キ 「【0026】
タングステンの割合は、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して、0.03モル%以上2.0モル%以下が好ましく、特に0.05モル%以上1.0モル%以下であることがより好ましい。タングステンが0.03モル%未満であると、二次粒子内部の一次粒子表面の変質を抑制する効果が十分に得られなくなる傾向にある。また2.0モル%より多いと、比容量が低下する傾向にある。」
ク 「【0055】
〔第1実験例〕
(実験例1)
[正極活物質の作製]
LiOHと、共沈により得られたNi_(0.94)Co_(0.03)Al_(0.03)(OH)_(2)で表されるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を500℃で酸化物にしたものと酸化タングステン(WO_(3))とを、Liと遷移金属全体(Ni_(0.94)Co_(0.03)Al_(0.03))とWのモル比が1.05:1.0:0.002となるように、石川式らいかい乳鉢にて混合した。次に、この混合物を酸素雰囲気中にて760℃で20時間熱処理後に粉砕することにより、Wを固溶した平均二次粒径が約15μmのLi_(1.05)Ni_(0.94)Co_(0.03)Al_(0.03)O_(2)で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の粒子を得た。」
ケ 「【0057】
このようにして得られたリチウム含有遷移金属酸化物としてのリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物粒子を1000g用意し、この粒子を1.5Lの純水に添加して攪拌し、純水中にリチウム含有遷移金属酸化物が分散した懸濁液を調製した。次に、この懸濁液に、酸化エルビウムを硫酸に溶解して得た0.1 mol/Lの濃度の硫酸エルビウム塩水溶液を複数回にわけて加えた。懸濁液に硫酸エルビウム塩水溶液を加えている間の懸濁液のpHは11.5?12.0であった。次いで、懸濁液を濾過し、真空中200℃で乾燥して正極活物質を作製した。」
コ 「【0058】
得られた正極活物質の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均粒径20?30nmの水酸化エルビウムの一次粒子が凝集して形成された平均粒径100?200nmの水酸化エルビウムの二次粒子が、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子表面に付着していることが確認された。また、水酸化エルビウムの二次粒子の殆どは、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子表面において隣接するリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子間に形成された凹部に付着しており、凹部において隣接し合うこれらの一次粒子の両方に接するように付着していることが確認された。また、エルビウム化合物の付着量を誘導結合プラズマイオン化(ICP)発光分析法により測定したところ、エルビウム元素換算で、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物に対して0.15質量%であった。」
サ 「【0064】
[電池の作製]
このようにして得た正極および負極を、これら両極間にセパレータを配置して渦巻き状に巻回した後、巻き芯を引き抜いて渦巻状の電極体を作製した。次に、この渦巻状の電極体を押し潰して、扁平型の電極体を得た。この後、この偏平型の電極体と上記非水電解液とを、アルミニウムラミネート製の外装体内に挿入し、電池A1を作製した。尚、当該電池のサイズは、厚み3.6mm×幅35mm×長さ62mmであった。また、当該非水電解質二次電池を4.20Vまで充電し、3.0Vまで放電したときの放電容量は950mAhであった。」
シ 「【0065】
(実験例2)
LiOHと、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を500℃で酸化物にしたものとを、石川式らいかい乳鉢にて混合する際に、Wを加えず、Liと遷移金属全体(Ni_(0.94)Co_(0.03)Al_(0.03))とのモル比が1.05:1となるようにしたこと以外は、上記実験例1と同様にして電池A2を作製した。」
ス 「【0070】
(実験例5)
上記実験例1の正極活物質の作製において、硫酸エルビウム塩水溶液を加えず、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子表面に水酸化エルビウムを付着させなかったこと以外は、上記実験例1と同様にして電池A5を作製した。」
セ 「【0077】
電池A1の正極活物質は、図1に示すように、希土類化合物の二次粒子25が凹部23において隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20の両方に付着している。これにより、高温での充放電サイクル時において、これら隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20のいずれの表面においても、表面変質及び一次粒子界面からの割れが抑制できたと考えられる。加えて、希土類化合物の二次粒子25は、隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20同士を固定(接着)する効果も有しているので、凹部23において、一次粒子界面から割れが生じるのを抑制できたと考えられる。」
ソ 「【0078】
電池A1の正極活物質は、リチウム含有遷移金属酸化物にタングステンが固溶している。ここで、電池A1においては、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の表面に希土類化合物が存在するので、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の表面全体にリチウムイオン透過性の被膜が生成される。このため、高温になっても、タングステンがリチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の表面から溶出されるのが抑制される。電池A1においては、高温になっても、リチウム含有遷移金属酸化物に固溶するタングステンにより、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の内部における一次粒子の表面変質及び一次粒子界面からの割れが抑制される。」
タ 「【0079】
このように、電池A1においては、正極活物質の表面変質及び割れが、正極活物質の表面及び内部の両方から抑制されたので、高温サイクル後の容量維持率が高かったと考えられる。」
チ 「【0080】
電池A2で用いた正極活物質は、リチウム含有遷移金属酸化物にタングステンが固溶されていないこと以外は、電池A1で用いた正極活物質と同様である。電池A2で用いた正極活物質は、上述した電池A1の場合と同様、高温での充放電サイクル時において、隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20のいずれの表面においても、表面変質及び一次粒子界面からの割れ(即ち、正極活物質の表面における表面変質及び割れ)が抑制できたと考えられる。ただし、電池A2で用いた正極活物質には、タングステンが固溶されていないため、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の内部における一次粒子の表面変質及び一次粒子界面からの割れ(即ち、正極活物質の内部における表面変質及び割れ)が抑制されない。このため、電池A2においては、電池A1よりも高温サイクル後の容量維持率が低くなったと考えられる。」
ツ 「【0087】
電池A5で用いた正極活物質は、図3に示すように、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21に、希土類化合物は付着していない。電池A5においては、電池A3?A4の場合と同様、隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20の表面変質及び一次粒子界面からの割れが抑制できないので、正極活物質の表面における表面変質及び割れを抑制することができないと考えられる。」
テ 「【0088】
電池A5で用いた正極活物質は、リチウム含有遷移金属酸化物にタングステンが固溶している。電池A5の正極活物質は、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21に希土類化合物が付着しておらず、二次粒子表面全体にリチウムイオン透過性の被膜が生成されないので、高温になるとリチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の表面からタングステンが溶出し、正極活物質の内部における表面変質及び割れが抑制されにくくなる。また、電池A5においては、溶出したタングステンが負極に析出して、負極におけるリチウムの挿入及び脱離が阻害されてしまい、他の電池と比較して高温サイクル後の容量維持率がさらに低下したと考えられる。」

(4)上記(3)アによれば、本件発明1?5の解決しようとする課題は、「高温サイクル後の容量維持率が低下する」ことの防止である。

(5)上記(3)イに摘記した部分は、上記課題を解決するための手段として、「リチウム含有遷移金属酸化物からなる一次粒子が凝集して形成された二次粒子において、前記二次粒子の表面において隣接する一次粒子間に形成された凹部に、希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子が、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して希土類元素換算で、0.005質量%以上0.5質量%以下、付着しており、且つ、前記希土類化合物の二次粒子は、前記凹部において隣接し合う一次粒子の両方に付着しており、前記リチウム含有遷移金属酸化物には、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して、0.03モル%以上2.0モル%以下のタングステンが固溶している」ことという構成が記載されている。

(6)そして、上記(3)ウ?オ、タに摘記した部分には、「高温サイクル後の容量維持率が低下する」ことを防止するという上記課題が解決される機序として、「希土類化合物の二次粒子が、凹部において隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子の両方に付着し」、かつ、「リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子にタングステンが固溶している」ことにより、「高温での充放電サイクル時における、正極活物質の表面変質及び割れが、正極活物質の表面及び内部の両方から抑制される」ことが必要であることが記載されている。

(7)また、上記(3)ク?サ、セ?タに摘記した実験例1についての記載を参照すると、「希土類化合物」の付着量を0.15質量%((3)コ)とし、「タングステン」の固溶量を0.049モル%((3)クの「Liと遷移金属全体(Ni_(0.94)Co_(0.03)Al_(0.03))とWのモル比が1.05:1.0:0.002となるように・・・混合し・・・Wを固溶した平均二次粒径が約15μmのLi_(1.05)Ni_(0.94)Co_(0.03)Al_(0.03)O_(2)で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の粒子を得た。」との記載から、(0.002/(1.05+0.94+0.03+0.03+2))×100≒0.049%として計算。)とした場合、上記課題を解決し得ることが認められる。

(8)さらに、上記(3)シ、チによれば、実験例2に関し、「タングステン」を添加しない場合には、「高温サイクル後の容量維持率」が低下することが記載されているから、「タングステン」を添加しない場合には、上記課題を解決し得ないことが認められる。

(9)また、上記(3)ス、チ、ツによれば、実験例5に関し、「希土類化合物」を添加しない場合には、「高温サイクル後の容量維持率」が低下することが記載されているから、「希土類化合物」を添加しない場合には、上記課題を解決し得ないことが認められる。

(10)そして、上記(3)ウによれば、「希土類化合物の二次粒子が、凹部において隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子の両方に付着している」ことの効果に関し、「希土類化合物の二次粒子25が、凹部23において隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20の両方に付着しているので、高温での充放電サイクル時における、これら隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20のいずれの表面においても、表面変質が抑制され、また、凹部23における一次粒子界面からの割れを抑制できる。加えて、希土類化合物の二次粒子25は、隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20同士を固定(接着)する効果も有しているので、高温での充放電サイクル時において正極活物質が膨張収縮を繰り返しても、凹部23において一次粒子界面から割れが生じるのが抑制される。」として、「リチウム含有遷移金属酸化物」において、「表面変質が抑制」され、「一次粒子界面からの割れを抑制できる」効果及び当該効果が奏される機序が記載されているが、当該機序からみて「希土類化合物の二次粒子が、凹部において隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子の両方に付着している」部分が存在すれば、効果の程度にかかわらず、当該効果自体は奏されるものであり、「希土類化合物の二次粒子が、凹部において隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子の両方に付着している」部分が増加するにつれて当該効果は増加し、全ての「凹部」が「希土類化合物の二次粒子が、凹部において隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子の両方に付着している」状態となるまで、当該効果は増加していくといえる。

(11)そうすると、実験例1における「希土類化合物」の付着量を0.15質量%から減らしても、「希土類化合物」が付着されていれば、その程度にかかわらず上記効果を奏するものといえる。

(12)さらに、付着量について、上記(3)カに摘記した「上記割合が0.005質量%未満になると、リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子間に形成された凹部に付着する希土類化合物の量が少なくなるために、希土類化合物による上述の効果が十分に得られず、高温サイクル後の容量維持率の低下が抑制できないことがある。」との記載を考慮すると、当業者であれば、「希土類化合物の割合は、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して希土類元素換算で、0.005質量%以上」の範囲であれば、上記効果が奏されるものであって、上記課題を解決し得ることを理解し得る。

(13)また、(10)にて上述した機序からみて、全ての「凹部」において「希土類化合物の二次粒子が、凹部において隣接し合うリチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子の両方に付着している」状態となった状態からさらに「希土類化合物」が増加した場合に、「リチウム含有遷移金属酸化物」における、「表面変質」や「一次粒子界面からの割れ」が増加すると考えるべき特段の理由はないから、「希土類化合物」の付着量の増加は、上記効果自体には特段の影響はないといえること、及び、上記(3)カに摘記した「上記割合が0.5質量%を超えると、リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子間のみならず、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子表面を過剰に覆ってしまうため、初期充放電特性が低下することがある。」との記載からは、「希土類化合物」を「0.5質量%」を超えて増加させても「表面変質が抑制」され、「一次粒子界面からの割れを抑制できる」効果への特段の影響は認められないことから、当業者であれば「希土類化合物」の付着量を、実験例1における0.15質量%から0.5質量%程度まで増加した場合でも、実験例1と同様に上記課題を解決し得ることを理解し得る。

(14)そうすると、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載から、「希土類化合物」の付着量としては、実験例1と同一の0.15質量%である場合のみならず、「リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して希土類元素換算で、0.005質量%以上0.5質量%以下」との範囲でも、上記課題を解決し得ることを理解し得る。

(15)また、上記(3)エによれば、「リチウム含有遷移金属酸化物にタングステンが固溶している」ことの効果に関し、「高温になっても、リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子20にタングステンが固溶しているので、高温での充放電サイクル時において、リチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子21の内部における一次粒子の表面変質及び一次粒子界面からの割れが抑制される」と記載されていること、及び、上記(3)キによれば、「タングステンが0.03モル%未満であると、二次粒子内部の一次粒子表面の変質を抑制する効果が十分に得られなくなる傾向にある。」と記載されていることからみて、タングステンが固溶していれば、効果の程度にかかわらず「リチウム含有遷移金属酸化物」において「一次粒子の表面変質及び一次粒子界面からの割れが抑制」される効果自体は奏されるものといえる。

(16)そうすると、実験例1における「タングステン」の固溶量を0.049モル%から減らしても、「タングステン」が固溶していれば、効果の程度にかかわらず上記効果を奏するものといえる。

(17)さらに、上記(3)キに摘記した「タングステンが0.03モル%未満であると、二次粒子内部の一次粒子表面の変質を抑制する効果が十分に得られなくなる傾向にある。」との記載を考慮すると、当業者であれば、「タングステンが0.03モル%」以上の範囲であれば、上記効果が奏されるものであって、上記課題を解決し得ることを理解し得るといえる。

(18)また、(15)にて上述した効果に関し、「タングステン」の固溶量が増加した場合に「リチウム含有遷移金属酸化物」において「一次粒子の表面変質及び一次粒子界面からの割れ」が増加すると考えるべき特段の理由はなく、上記(3)キに摘記した「タングステンが・・・2.0モル%より多いと、比容量が低下する傾向にある。」との記載からも、「タングステン」の固溶量を「2.0モル%」を超えて増加させても「リチウム含有遷移金属酸化物」において「一次粒子の表面変質及び一次粒子界面からの割れ」への特段の影響は認められないことから、当業者であれば、「タングステン」の固溶量が実験例1における0.049モル%から2.0モル%程度まで増加した場合でも、実験例1と同様に上記課題を解決し得ることを理解し得る。

(19)そうすると、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載から、「タングステン」の固溶量としては、実験例1と同一の0.049モル%である場合のみならず、「リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して、0.03モル%以上2.0モル%以下」との範囲でも、上記課題を解決し得ることを理解し得る。

(20)したがって、(5)?(19)、特に、(6)、(14)、(19)より、当業者であれば、本件特許の発明の詳細な説明の記載から、「リチウム含有遷移金属酸化物からなる一次粒子が凝集して形成された二次粒子において、前記二次粒子の表面において隣接する一次粒子間に形成された凹部に、希土類化合物の粒子が凝集して形成された希土類化合物の二次粒子が、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して希土類元素換算で、0.005質量%以上0.5質量%以下、付着しており、且つ、前記希土類化合物の二次粒子は、前記凹部において隣接し合う一次粒子の両方に付着しており、前記リチウム含有遷移金属酸化物には、リチウム含有遷移金属酸化物の総質量に対して、0.03モル%以上2.0モル%以下のタングステンが固溶している」との構成を備えれば、上記課題を解決できることを認識し得る。

(21)そして、本件発明1?5は、(20)に示す構成を備えるものである。

(22)そうすると、本件発明1?5は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものである。

(23)なお、申立人は、異議申立書第31?32頁「(3)サポート要件違反の理由」において、「上記実施例1の1点において、本件特許発明の課題を解決できたとしても、本件特許発明1の、希土類化合物の二次粒子のリチウム含有遷移金属酸化物への付着量及びタングステンのリチウム含有遷移金属酸化物への固溶量に関して、上記範囲にわたって本件特許発明の課題を解決できるとは、明細書の記載及び出願時の技術常識に照らしても、認められない。したがって、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2?5は、サポート要件を充足しない。」と主張する。
しかしながら、本件発明1の希土類化合物の二次粒子のリチウム含有遷移金属酸化物への付着量及びタングステンのリチウム含有遷移金属酸化物への固溶量に関し、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載及び技術常識から、本件特許発明の課題を解決し得ると認識し得ることは上述のとおりである。
したがって、申立人の当該主張は採用できない。

(24)小括
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでなく、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものでない。

第5 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1?5に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由1、2によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-12-13 
出願番号 特願2016-544929(P2016-544929)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01M)
P 1 651・ 537- Y (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 立木 林  
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 北村 龍平
中澤 登
登録日 2019-03-15 
登録番号 特許第6493406号(P6493406)
権利者 三洋電機株式会社
発明の名称 非水電解質二次電池用正極活物質  
代理人 徳田 佳昭  
代理人 西田 浩希  
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