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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 発明同一  H05K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1357711
異議申立番号 異議2019-700516  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-28 
確定日 2019-12-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6447782号発明「はんだ付け方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6447782号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6447782号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成29年11月6日(優先権主張 平成28年11月22日)に出願され、平成30年12月14日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月9日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和1年6月28日に特許異議申立人中村博章(以下「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、同年9月4日付け当審の取消理由通知に対して同年11月8日付けで意見書が提出されたものである。

第2 本件特許発明
特許第6447782号の請求項1ないし3に係る特許(以下「本件特許発明1ないし3」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
はんだ合金と無残渣用フラックスが混合されてなるはんだペーストを基板上のはんだ付け部に塗布し、当該はんだペースト上に電子部品を載置する第1の工程と、
炉内を真空状態かつ第1の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれる前記無残渣用フラックスを揮発させて無残渣の状態(フラックス残渣の量がフラックス中の1質量%以下)とする第2の工程と、
前記炉内を還元雰囲気で第2の温度として前記基板を加熱することにより少なくとも前記はんだ付け部の酸化膜を除去する第3の工程と、
前記炉内を真空状態でかつ前記第2の温度よりも高い第3の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれるはんだを溶融させる第4の工程と、
を有することを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、前記基板上の前記はんだ付け部に対応する部分が開口された開口部を有するメタルマスクを用いて、前記基板上の前記はんだ付け部に前記はんだペーストを塗布する
ことを特徴とする請求項1に記載のはんだ付け方法。
【請求項3】
前記はんだ合金は、引張強度が55MPa以上、伸びが40%以下、0.2%耐力が40MPa以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のはんだ付け方法。」

第3 取消理由の概要
当審において、本件特許発明1ないし3に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

1.(拡大先願)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願又は実用新案登録出願であって、本件特許出願後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされた下記の特許出願又は実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に記載された発明又は考案と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願又は実用新案登録出願に係る上記の発明又は考案をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願又は実用新案登録出願の出願人と同一でもないから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

・請求項1及び2について、甲第1号証(PCT/JP2016/78961号(国際公開第2017/57651号))

2.(実施可能要件)本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1ないし3に係る発明を当業者が実施できる程度に、明確かつ十分に記載したものでない。

第4 異議申立人が提示された各甲号証の記載
1.甲第1号証(PCT/JP2016/78961号(国際公開第2017/57651号))
甲第1号証には、「還元ガス用ソルダペースト、半田付け製品の製造方法」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。なお、甲第1号証の発明者及び出願人は、本件特許の発明者及び出願人と同一でない。

(1)「[0001] 本発明は還元ガス用ソルダペースト、半田付け製品の製造方法に関し、特に還元剤・活性剤フリーのソルダペースト、それを用いた半田付け製品の製造方法に関する。
背景技術
・・・(中略)・・・
[0023][還元ガス用ソルダペースト]
本発明の第1の実施の形態に係る還元ガス用ソルダペーストを説明する。
本発明の還元ガス用ソルダペーストは、半田粉末と、フラックスとして、チキソ剤、溶剤とを含むが、還元剤、活性剤を含まない。または、含むとしても本発明の効果を妨げない程度の量以下である。
ここで還元剤とは、半田付けの際半田付け対象物の表面や半田粉末の表面の酸化膜を除去する物質であり、例えば、ロジン、ロジン誘導体などである。
活性剤とは、還元性の向上や半田の濡れ性を向上させる物質であり、例えば、アミン-ハロゲン化水素酸塩、有機酸などである。アミン-ハロゲン化水素酸塩としては、例えば、ジエチルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩などが挙げられる。有機酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ステアリン酸、安息香酸などが挙げられる。
なお、本発明の還元ガス用ソルダペーストは、還元剤と活性剤を除き、発明の効果が得られる限りにおいて、半田粉末、チキソ剤、溶剤以外の化合物(添加物等)を含有してもよい。
[0024] 本発明のソルダペーストを用いて半田付けを行う場合、還元には還元ガスを用いる。本発明のソルダペーストに含まれる半田粉末とチキソ剤は、前記還元ガスによる還元温度および還元時の気圧において溶融しないものが好ましい。すなわち、チキソ剤が溶融する温度は、還元温度よりも高い任意の温度である。半田粉末が溶融する温度は、還元温度よりも高い任意の温度であり、本実施の形態では還元温度よりも10?50℃高い温度であることが好ましい。
さらに、溶剤は還元温度以下で蒸発(気化)するものが好ましい。溶剤が蒸発する温度は、還元温度よりも低いまたは同一の任意の温度であり、例えば0?100℃を挙げることができる。雰囲気の圧力を調整する機構により、常圧での沸点が還元温度よりも高い溶剤であっても、溶剤の蒸発温度を還元温度よりも低くすることができる。このように、溶剤は所定の気圧において還元温度以下で蒸発するものであればよい。
すなわち、本発明のソルダペーストは、所定の気圧において、以下の関係を有する材料を含む。
・溶剤の蒸発温度≦還元温度<半田粉末の融点、チキソ剤の融点
上記の「融点」とは、気圧にかかわらず物質が溶融する温度をいう。
このように、還元ガスによる還元時の温度で、半田粉末とチキソ剤は固体であればよく、溶剤は気体であればよく、還元時の温度に合わせて、半田粉末、チキソ剤、溶剤を適宜組合せる。
または、還元時の温度で溶融するチキソ剤であっても、溶融状態において濡れ広がりの小さいチキソ剤であれば、本発明のソルダペーストのチキソ剤として使用することができる。
なお、以下においてチキソ剤をバインダーまたはゲル化剤と称することもあるが、チキソ剤、バインダー、ゲル化剤は同義である。
[0025]・半田粉末
半田粉末の合金組成は特に制限されない。バンプ形成やプリント基板の実装に今日使用されている各種半田合金が使用可能である。例えば、鉛フリー半田として用いられているSn-Ag系半田、Sn-Ag-Cu系半田、Sn-Ag-Cu-Bi系半田、Sn-Ag-In-Bi系半田、Sn-Cu系半田、Sn-Zn系半田、Sn-Bi系半田等の鉛フリー半田合金の粉末や、融点変化型合金A-FAPを挙げることができる。」

(2)「[0030] これらのチキソ剤は、ソルダペーストの粘度を上げる、チキソ比を上げる(印刷性が向上する)、熱ダレ性を向上させることができる。これらのチキソ剤は半田内に残渣として残るが極少量(典型的には1質量%以下)であり、活性物質ではないため半田付け対象物(金属)を腐食させることがない。よって、残渣として残っても洗浄は不要である。
なお、本願のソルダペーストには、粘度調整、印刷性向上、貯蔵安定性という目的で、還元温度よりも低い温度で溶融する低融点のチキソ剤を、還元ガスの還元効果を妨げない範囲において、さらに配合してもよい。
チキソ剤の融点(常圧時)は、例えば80?270℃を挙げることができる。
・・・(中略)・・・
[0033]・還元ガス
還元ガス用ソルダペーストとともに用いる還元ガスとしては、水素、ギ酸などのカルボン酸のガス、カルボン酸以外の有機酸のガス、有機酸以外の有機化合物のガス、有機化合物以外の他の還元性のガスを挙げることができる。
常圧、真空に関わらず、還元時の温度は150?450℃が好ましい。例えば還元ガスがギ酸の場合は、還元時の温度は150?300℃、好ましくは160?250℃、特に好ましくは170?230℃である。還元ガスが水素の場合は、250?450℃、好ましくは260?400℃、特に好ましくは270?350℃である。
・・・(中略)・・・
[0036] 半田粉末、チキソ剤、溶剤の組成比は、半田粉末が80?99質量%、チキソ剤が0.1?2質量%、溶剤が0.9?18質量%であり、好ましくは、半田粉末が85?95質量%、チキソ剤が0.5?1.5質量%、溶剤が4.5?13.5質量%である。例えば、半田粉末が89質量%、チキソ剤が1質量%、溶剤が10質量%、または、半田粉末が90質量%、チキソ剤が1質量%、溶剤が9質量%を挙げることができる。
本願のソルダペーストは、半田粉末、チキソ剤、溶剤を上記割合で混合して、ペースト状にしたものである。なお、チキソ剤や溶剤の量は粘度調整の程度により適宜変更することができる。チキソ剤、溶剤は、加熱しながら撹拌して混合すればよい。半田粉末との混合は、常温で撹拌機を用いて混合すればよい。
・・・(中略)・・・
[0039] 一方で方法Bでは、スクリーン印刷等により半田付け対象物TにソルダペーストSを塗布する(B1)。図1に示す半田付け対象物TとソルダペーストSを加熱すると、溶剤の蒸発が始まる(B2)。さらに還元温度まで加熱し、還元ガスFにより還元する(B3)。さらに半田溶融温度まで加熱し、半田付けを行う(B4)。チキソ剤が残渣として残るが、典型的には1%以下であり活性物質ではないため洗浄は不要である。方法Bでは、半田粉末とチキソ剤は溶融する温度が還元温度よりも高いため、還元時に溶融せず、半田粉末間、チキソ剤間、半田粉末とチキソ剤間に間隙が生じ、還元ガスの浸入、還元を容易にする。または、還元時に溶融するチキソ剤であっても溶融時の濡れ広がりが小さいため、その場に留まり、還元ガスの浸入、還元を妨げない。なお、還元は、溶剤の蒸発と同時であってもよく、蒸発後であってもよい。」

(3)「[0040] 図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る半田付け製品の製造方法をより詳細に説明する。図2は、半田付け製品の製造方法を示すフローチャートである。
以下、図2、3では半田付け対象物TとソルダペーストSに代えて、被接合部材として、図3に示すように基板W、ソルダペーストS、電子部品Pとを用いて説明する。
(1)ソルダペーストの提供工程
ソルダペーストの提供工程とは、上記本発明の第1の実施の形態に係る還元ガス用ソルダペーストを使用できる状態にする工程である。ソルダペーストの製造であっても、すでに製造されたソルダペーストの準備であってもよい。
[0041](2)ソルダペーストの塗布工程
ソルダペーストをソルダペースト印刷機(またはスクリーン印刷機)等を用いて半田付け対象物の上に塗布する。通常はメタルマスクと呼ばれる、例えば、薄さが約30?300μm程度の金属板に穴を開けたマスク(型)を用い、印刷機のスキージを使って印刷を行う。人間の手でスキージを動かす手動の装置を使用してもよい。または、シリンジを用いた塗布であってもよい。
[0042](3)溶剤の蒸発工程、被接合部材の還元工程、半田溶融工程
溶剤の蒸発工程、被接合部材の還元工程、半田溶融工程について、図3に記載の半田付け装置1を用いてより詳細に説明する。
ソルダペーストSを塗布した半田付け対象物として、基板Wと電子部品Pとを用いている。還元ガスとしては、ギ酸ガスを用いている。
なお、以下の説明において、本発明の第2の実施の形態である半田付け製品の製造方法は、半田付け装置1の作用と併せて説明するが、他の装置によって行われるものでもよい。
[0043] まず図3を参照して、半田付け装置1を説明する。図3は、半田付け装置1の概略構成図である。半田付け装置1は、被接合部材の半田接合が行われる空間である処理空間11sを形成するチャンバ11を有する処理部10と、還元ガスとしてのギ酸ガスFをチャンバ11に供給する還元ガス供給部としてのギ酸供給部20と、半田付け装置1内のギ酸ガスFを排出する前に濃度を低下させる還元ガス処理部としての触媒ユニット33と、半田付け装置1の動作を制御する制御装置50と、これらを収容する筐体100とを備えている。」

(4)「[0044] 半田付け装置1は、基板Wと電子部品Pとを、ソルダペーストSで接合する装置となっている。基板Wおよび電子部品Pは、共に、表面に金属部分を有しており、当該金属部分が半田を介して導通するように接合されることとなる。基板Wおよび電子部品Pは、ソルダペーストSを挟んだ状態でチャンバ11に搬入され、チャンバ11内で半田が溶融されて接合される。以下、基板W、ソルダペーストS、電子部品Pが積重されて半田が溶融していない状態のものを被接合部材Bといい、半田が溶融して基板Wと電子部品Pとが接合された状態のものを半田付け製品Cということとする。
・・・(中略)・・・
[0051] 引き続き図4を参照して、本発明の実施の形態に係る半田付け製品Cの製造方法を説明する。図4は、半田付け製品Cの半田接合手順を示すフローチャートである。以下の説明で半田付け装置1の構成について言及しているときは、適宜図3を参照することとする。なお、チキソ剤には還元時の温度よりも高い融点をもつもの、すなわち還元時の温度において個体のものを用いている。
[0052] 半田付け装置1に被接合部材Bを搬入するため、シャッタ11dを開けるボタン(不図示)を押すと、制御装置50は、真空ポンプ31を作動させ、チャンバ11内の気体Gの排気を開始した後(S1)、シャッタ11dを開にする。併せて、キャリアプレート12の大部分がチャンバ11の外側に出るようにキャリアプレート12を移動させる。シャッタ11dを開ける前にチャンバ11内の気体Gをチャンバ11から排出させることで、シャッタ11dを開けてもチャンバ11内の気体Gが搬入出口11aを介して半田付け装置1の外に流出することを防ぐことができる。シャッタ11dが開になり、キャリアプレート12の大部分がチャンバ11の外側に出て、キャリアプレート12に被接合部材Bが載置されたら、キャリアプレート12のチャンバ11内への移動に伴って被接合部材Bがチャンバ11内に搬入される(被接合部材搬入工程:S2)。」

(5)「[0053] 被接合部材Bがチャンバ11内に搬入されたら、制御装置50は、シャッタ11dを閉じて、チャンバ11内を密閉する。次に、シャッタ11dが開の時にチャンバ11内に流入した大気を除去し、不活性ガスの雰囲気とするため、制御装置50は、チャンバ11内の気体Gの排気を行い、その後不活性ガスNを導入する。この工程を繰り返すことにより、チャンバ11内の酸素濃度を低下させる(不活性ガス置換工程:S3)。酸素濃度は5ppm以下が好ましい。不活性ガスNは、例えば窒素ガスである。
[0054] 次に制御装置50は、ヒータ13をONにして、キャリアプレート12の温度、ひいては被接合部材Bの温度を、ソルダペーストSに含まれる溶剤が気化(蒸発)する温度に昇温する(S4)。気化する温度まで昇温するにつれて溶剤が蒸発しソルダペーストSから除去される。本実施の形態では、溶剤の蒸発を促進するため、チャンバ11内の圧力を真空に(減圧)することができる。
本実施の形態では、気化する温度が還元温度よりも低い場合で説明しているが、気化する温度は下記の還元温度と同一でもよい。同一の場合は、溶剤の一部の蒸発と被接合部材の還元が同時に起こることになる。すなわち、(S4)工程と次工程である(S5)工程および(S6)工程が並行する場合が存在する。」

(6)「[0055] 次に制御装置50は、ギ酸ガスFをギ酸供給部20からチャンバ11内に供給する(S5)と共に、ヒータ13をONに維持して、キャリアプレート12の温度、ひいては被接合部材Bの温度を還元温度に昇温する(S6)。還元温度は、ギ酸によって被接合部材Bの酸化物が還元される温度である。ここで、本実施の形態では、還元温度はソルダペーストSに含まれる半田粉末およびチキソ剤の溶融温度よりも低くなっているため、半田粉末およびチキソ剤が溶融せず形成された間隙にギ酸ガスが浸入し易く、被接合部材Bが半田接合される前に酸化膜を好適に除去することができる。ギ酸ガスFの供給は、チャンバ11内を真空にしてから行うことにより、半田粉末、チキソ剤の間隙にギ酸ガスFが浸入し易くなる。ギ酸ガスFをチャンバ11内に供給する工程(S5)および被接合部材Bの温度を還元温度に昇温する工程(S6)が還元工程に相当する。なお、還元温度への昇温が完了後にギ酸ガスFを供給してもよい。」

(7)「[0056] 還元工程(S5、S6)が終了したら、チャンバ11内のギ酸ガスF雰囲気を維持したまま、ヒータ13の出力を上げて、キャリアプレート12の温度、ひいては被接合部材Bの温度を接合温度に昇温して半田を溶融させ、被接合部材Bの半田接合を行う(接合工程:S7)。接合温度は、ソルダペーストSに含まれる半田粉末の溶融温度よりも高い任意の温度であり、本実施の形態では溶融温度よりも30?50℃高い温度としている。
・・・(中略)・・・
[0059] 図5を参照して、本発明の実施の形態に係る半田付け製品Cの他の製造方法を説明する。図5は、半田付け製品Cの半田接合手順を示すフローチャートである。以下の説明で半田付け装置1の構成について言及しているときは、適宜図3を参照することとする。
[0060] (S1)?(S6)は、図4の製造方法と同様である。
(S6)が終了したら、制御装置50は、真空ポンプ31の作動およびメイン排気弁41vを開にすることで、チャンバ11内からギ酸ガスFを排出し、チャンバ11内を減圧する(S7)。チャンバ11内の減圧(真空)を維持したまま、ヒータ13の出力を上げて、キャリアプレート12の温度、ひいては被接合部材Bの温度を接合温度に昇温し(S8)、半田を溶融させ、被接合部材Bの半田接合を行う。被接合部材Bの半田接合を行ったら、制御装置50は、不活性ガスNを導入する(S9)ことで、チャンバ11内の真空を破壊する。制御装置50は、ヒータ13をOFFにする(冷却を開始する(S10))ことで、被接合部材Bの温度が低下し、融点未満になると、半田が固まって、半田付け製品Cとなる。半田付け製品Cが製造されると、制御装置50は、バイパス排気管42を介したチャンバ11内の気体Gの排気を行い、シャッタ11dを開にする。これにより、半田付け製品Cをチャンバ11から取り出すことができる(S11)。
(S12)?(S13)は、図4の製造方法と同様である。
このように半田が溶融した状態で不活性ガスNを導入すると、空洞(ボイド)を圧縮し潰すことができる。空洞を潰した後で半田を固化させると、半田中のボイドによる疲労寿命の低下をさらに抑制することができる。
・・・(中略)・・・
[0063] また以上の説明では、被接合部材Bを、ギ酸ガスFの雰囲気下で昇温しソルダペーストSを溶融することとしたが、真空(例えば100Pa(絶対圧力)程度)中で昇温してソルダペーストSを溶融することとしてもよい。被接合部材Bを真空中で溶融する場合は、処理排出工程(S8、S9)が、還元工程(S5、S6)の後に行われることとなる。なお、半田付け製品Cをチャンバ11から取り出す(S11)ためのシャッタ11dを開ける際に、チャンバ11にギ酸ガスFがほとんど存在しない場合は、チャンバ11内を負圧にせずに(真空ポンプ31を作動させず)、シャッタ11dを開けることとしてもよい。
なお、本発明で使用する還元ガス用ソルダペーストは、従来のソルダペーストよりもフラックス残渣が少ないため、被接合部材Bを真空中で接合した場合でも半田飛散を抑制することができる。
・・・(中略)・・・
[0065] 以上のとおり、本願発明はソルダペーストの組成をよりシンプルなものとし、従来の還元剤および活性剤が担っていた酸化金属の還元や還元性の向上、さらには溶融性の向上を、装置側の還元ガスの導入および真空によって対応できるようにしたものである。
実施例」

(8)甲第1号証の図3によると、ソルダペーストSは、基板W上の一部に塗布されるものである。また、被接合部材Bは、基板W上にソルダペーストSが積重され、ソルダペーストS上に電子部品Pが積重されたものである。

・上記(1)によれば、ソルダペーストは、半田合金粉末と、フラックスとして、チキソ剤、溶剤とを含むものである。
・上記(2)によれば、チキソ剤は、半田付けの際に残渣として残るが極少量(典型的には1質量%以下)である。
・上記(3)及び(8)によれば、半田付け製品の製造方法は、ソルダペーストを基板上の一部に塗布する工程を有するものである。
・上記(4)及び(8)によれば、半田付け製品の製造方法は、基板上にソルダペーストが積重され、ソルダペースト上に電子部品が積重された被接合部材をチャンバ内に搬入する工程を有するものである。
・上記(5)によれば、半田付け製品の製造方法は、チャンバ内を真空にし、被接合部材の温度を、ソルダペーストに含まれる溶剤が蒸発する温度に昇温して、溶剤を蒸発させる工程を有するものである。
・上記(6)によれば、半田付け製品の製造方法は、ギ酸ガスをチャンバ内に供給すると共に、被接合部材の温度を、半田粉末の溶融温度よりも低い還元温度に昇温して、被接合部材の酸化膜を除去する工程を有するものである。
・上記(7)によれば、半田付け製品の製造方法は、チャンバ内の真空を維持したまま、被接合部材の温度を、半田粉末の溶融温度よりも高い接合温度に昇温して、半田を溶融させ、被接合部材の半田接合を行う工程を有するものである。

上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1先願発明」という。)が記載されていると認める。

「半田合金粉末と、フラックスとして、チキソ剤、溶剤とを含むソルダペーストを基板上の一部に塗布する工程と、
前記基板上に前記ソルダペーストが積重され、前記ソルダペースト上に電子部品が積重された被接合部材をチャンバ内に搬入する工程と、
前記チャンバ内を真空にし、前記被接合部材の温度を、前記ソルダペーストに含まれる前記溶剤が蒸発する温度に昇温して、前記溶剤を蒸発させる工程と、
ギ酸ガスを前記チャンバ内に供給すると共に、前記被接合部材の温度を、前記半田合金粉末の溶融温度よりも低い還元温度に昇温して、前記被接合部材の酸化膜を除去する工程と、
前記チャンバ内の真空を維持したまま、前記被接合部材の温度を、前記半田合金粉末の溶融温度よりも高い接合温度に昇温して、半田を溶融させ、前記被接合部材の半田接合を行う工程と、
を有する半田付け製品の製造方法であって、
前記チキソ剤は、半田付けの際に残渣として残るが極少量(典型的には1質量%以下)である、半田付け製品の製造方法。」

2.甲第2号証(特開平6-112644号公報)
甲第2号証には、「プリント配線基板のはんだ付け方法」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(1)「【0005】このフラックスを洗浄する目的は,第1に,フラックス内のハロゲンを取り除いて,プリント配線基板上の銅箔や電子部品電極部等の腐食やマイグレーションを防ぎ,第2に,はんだボールによる配線のパターンショートを防ぎ,第3に,光学系外観検査での樹脂による乱反射を防ぎ,第4に,コンタクトピンの不接触を防ぐことにある。
・・・(中略)・・・
【0010】また,第3と第4の問題は低残渣フラックスを用いることで解決できる。はんだボールの発生メカニズムは,第1に,はんだの量が多過ぎて,はんだ接合部からはみ出ること,第2に,加熱によりはんだペースト中の樹脂分が軟化して,はんだ粒子を接合部以外に押出して,配線パターン間にその粒子が残留すること,第3に,はんだペースト中の溶剤分が加熱で急激に蒸発するため,はんだ粒子をはじき飛ばすこと,第4に,はんだ粒子の表面が酸化しているために,はんだ粒子同士が融合しないこと等である。」

(2)「【0012】プリント配線基板2にスクリーン印刷で供給したはんだペーストが真空排気と加熱温度によって,ペースト中の溶剤を徐々に蒸発させる。これにより,前記の加熱時の第2,第3の問題が解消する。且つ,アルゴン(Ar)と水素(H2)の混合ガスで還元することにより第4の問題が解消し,プリント配線基板2の銅箔や電子部品電極部の酸化物が除去される。」

(3)「【0015】
【作用】本発明では,プリント配線基板に対する電子部品のはんだ付けを還元性ガス雰囲気中で行うため,はんだボールの発生が起こらない。
・・・(中略)・・・
【0018】図1?図2により,本発明の一実施例について説明する。先ず,はんだペーストはスクリーン印刷で, プリント配線基板2の銅箔に供給する。その上に電子部品1を搭載し, コンベア炉式の真空排気機構を有するはんだ付け加熱装置3の基板搬送ベルト5上に載置して装置内に挿入する。
【0019】本装置の加熱チャンバ9内は赤外線加熱ランプ6で加熱されている。装置内の真空排気は0.1Paとし, ガス導入口7より,アルゴンと還元性ガス4である水素の混合ガスを 250?500sccmの割合で導入し, 真空度を1?10Paに保つ。
【0020】入口チャンバ11と出口チャンバ13には加熱機構は取り付けず, 入口チャンバ11, 加熱チャンバ9, 出口チャンバ13の間には,それぞれチャンバ間を遮断するゲートバルブ14を設けてある。
【0021】入口チャンバ11にプリント配線基板2の所定の銅箔上に電子部品1を載置したプリント配線基板2をセットし, 加熱チャンバ9と同じ雰囲気になってからゲートバルブ14を開けて, プリント配線基板2を加熱チャンバ9内に入れる。
【0022】加熱チャンバ9では,プリント配線基板2上のはんだペースト内の溶剤分が真空と加熱により蒸発する。はんだ付けの温度プロファイルは図2に示す通りである。
【0023】先ず, 予備加熱部で40?60秒間に150?160℃まで予備加熱する。続いて, 本加熱部で230?240 ℃に40?80秒間加熱して,電子部品1をプリント配線基板2にはんだ付けする。」

(4)甲第2号証の図1によると、はんだ付け加熱装置3の加熱チャンバ9内の予備加熱部及び本加熱部は、プリント配線基板2を加熱するものであるといえる。

・上記(1)によれば、光学系外観検査での樹脂による乱反射及びコンタクトピンの不接触は、低残渣フラックスを用いることで解決できるものである。
・上記(2)によれば、真空排気と加熱温度により、ペースト中の溶剤を徐々に蒸発させ、且つ、アルゴンと水素の混合ガスで還元することにより、プリント配線基板の銅箔の酸化物が除去されるものである。
・上記(3)及び(4)によれば、はんだ付けを還元性ガス雰囲気中で行う方法は、先ず、はんだペーストをスクリーン印刷でプリント配線基板の銅箔に供給し、その上に電子部品を搭載して、はんだ付け加熱装置内に挿入し、はんだ付け加熱装置内にアルゴンと水素の混合ガスを導入して真空度を1?10Paに保ち、はんだ付け加熱装置の加熱チャンバ内でプリント配線基板上のはんだペースト内の溶剤を真空と加熱により蒸発させ、加熱チャンバ内の本加熱部でプリント配線基板を加熱して電子部品をプリント配線基板にはんだ付けするものである。

上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「はんだペーストをスクリーン印刷でプリント配線基板の銅箔に供給し、その上に電子部品を搭載して、はんだ付け加熱装置内に挿入し、
前記はんだ付け加熱装置内にアルゴンと水素の混合ガスを導入して真空度を1?10Paに保ち、
前記はんだ付け加熱装置の加熱チャンバ内で前記プリント配線基板上の前記はんだペースト内の溶剤を真空と加熱により徐々に蒸発させ、
前記加熱チャンバ内の本加熱部で前記プリント配線基板を加熱して前記電子部品を前記プリント配線基板にはんだ付けする、はんだ付けを還元性ガス雰囲気中で行う方法であって、
前記アルゴンと前記水素の前記混合ガスで還元することにより、前記プリント配線基板の前記銅箔の酸化物が除去され、
低残渣フラックスを用いて、光学系外観検査での樹脂による乱反射及びコンタクトピンの不接触を解決する、
プリント配線基板のはんだ付け方法。」

3.甲第3号証(特開2004-25305号公報)
甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0047】
本発明のソルダペーストを用いて還元性雰囲気でリフローはんだ付けを行う場合、雰囲気ガスが酸化物の除去作用を示すため、フラックス中に活性剤を全く含有させなくてもよい。或いは、カルボン酸またはカルボン酸アミン塩の1種類だけを活性剤として含有させたフラックスであってもよい。リフロー雰囲気が非還元性である場合には、カルボン酸とカルボン酸アミン塩の両方を活性剤として使用することが好ましい。」
「【0068】
【発明の効果】
本発明にかかるソルダペーストは、印刷性が良いにも関わらず、リフロー時にフラックス成分のほとんどが蒸発してしまい、フラックス残渣が残らないことから、フラックス残渣による問題、具体的には、外観、ピンコンタクト性、防湿保護コーティング剤との密着性が良好で、信頼性が要求される電子機器に組み込まれるワークのはんだ付けに無洗浄で使用できる。」

上記段落【0047】及び【0068】によれば、甲第3号証には、「リフロー時にフラックス成分のほとんどが蒸発する無残渣ソルダペーストを用いて還元性雰囲気でリフローはんだ付けを行い、フラックス残渣が残らないようにする」技術事項が記載されている。

4.甲第4号証(特開2015-123503号公報)
甲第4号証には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態としての真空はんだ処理装置及びその制御方法について説明する。図1に示す真空リフロー炉100は、真空はんだ処理装置の一例を構成するものであり、例えば、パワーデバイスやパワーモジュール実装等の表面実装用の部品をプリント基板上の所定の位置に載せて当該部品とプリント基板とをはんだ付け処理する際に、真空中で脱泡・脱気処理するようになされる。はんだ付け処理の対象はプリント基板や、はんだコート部品、その他、半導体ウエハ等であり、以下総称してワーク1という。」

上記段落【0024】によれば、甲第4号証には、「真空中ではんだ付け処理する」技術事項が記載されている。

5.甲第5号証(特開2001-93916号公報)
甲第5号証には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0015】図1(a)に示すように、基板11に設けられた導体12上に、半田ペースト13を厚さ50μm程度塗布する。この半田ペースト13上に、図1(b)に示すように、半導体チップ14を載せる。続いて、この基板11をチャンバ15内に収納し、チャンバ15内を減圧して真空状態にする。
【0016】この真空状態で、半田ペースト13を加熱し、図1(c)に示すように、導体12上に半導体チップ14を半田付けする。その後、チャンバ15内の温度を下げ、さらにチャンバ15内を常圧に戻し、基板11をチャンバ15内から搬出する。」

上記段落【0015】及び【0016】によれば、甲第5号証には、「真空状態で半田付けする」技術事項が記載されている。

6.甲第6号証(特開2014-80688号公報)
甲第6号証には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0062】
本発明は、例えば精密機械などの基板にはんだペーストを印刷する際に用いられるメタルマスクに利用される。」

上記段落【0062】によれば、甲第6号証には、「基板にはんだペーストを印刷する際にメタルマスクを用いる」技術事項が記載されている。

7.甲第7号証(特開2001-96395号公報)
甲第7号証には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0025】本発明に使用する難加工性ハンダは、線引き、押し出し、圧延等によって線ハンダにするのが不可能若しくは極めて困難な素材である。
【0026】このようなものとしては、例えば引張強度60N/mm^(2)以上及び/又は伸び30%以下のハンダが挙げられる。」

上記段落【0025】及び【0026】によれば、甲第7号証には、「難加工性ハンダとしては、引張強度60N/mm^(2)以上及び/又は伸び30%以下のハンダが挙げられる」技術事項が記載されている。

第5 当審の判断
1.取消理由通知に記載した取消理由について
(1)特許法第29条の2について
ア.請求項1に係る発明について
本件特許発明1と甲1先願発明とを対比する。

(ア)甲1先願発明の「半田合金粉末」及び「ソルダペースト」は、本件特許発明1の「はんだ合金」及び「はんだペースト」にそれぞれ相当する。よって、甲1先願発明の「半田合金粉末と、フラックスとして、チキソ剤、溶剤とを含むソルダペースト」と本件特許発明1とは、「はんだ合金と」「フラックスが混合されてなるはんだペースト」である点で共通する。
ただし、フラックスについて、本件特許発明1は「無残渣用」フラックスである旨特定するのに対し、甲1先願発明はそのような特定がない点で相違している。

(イ)甲1先願発明の「基板上の一部」は、ソルダペーストが塗布される部分であるから、本件特許発明1の「基板上のはんだ付け部」に相当する。また、甲1先願発明の「前記ソルダペースト上に電子部品が積重され」ることは、本件特許発明1の「当該はんだペースト上に電子部品を載置する」ことに相当する。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、甲1先願発明の「半田合金粉末と、フラックスとして、チキソ剤、溶剤とを含むソルダペーストを基板上の一部に塗布」し、「前記ソルダペースト上に電子部品が積重され」ることは、本件特許発明1の「はんだ合金と」「フラックスが混合されてなるはんだペーストを基板上のはんだ付け部に塗布し、当該はんだペースト上に電子部品を載置する第1の工程」に相当する。

(エ)甲1先願発明の「チャンバ内」、「真空」、「前記ソルダペーストに含まれる前記溶剤が蒸発する温度」、「昇温」すること及び「蒸発させる」ことは、本件特許発明1の「炉内」、「真空状態」、「第1の温度」、「加熱すること」及び「揮発させ」ることにそれぞれ相当する。よって、甲1先願発明の「前記チャンバ内を真空にし、前記被接合部材の温度を、前記ソルダペーストに含まれる前記溶剤が蒸発する温度に昇温して、前記溶剤を蒸発させる工程」と本件特許発明1とは、「炉内を真空状態かつ第1の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれる前記」「フラックスを揮発させ」「る第2の工程」である点で共通する。
ただし、第2の工程について、本件特許発明1は「前記無残渣用フラックスを揮発させて無残渣の状態(フラックス残渣の量がフラックス中の1質量%以下)とする」のに対し、甲1先願発明はそのような特定がない点で相違している。

(オ)甲1先願発明の「ギ酸ガスを前記チャンバ内に供給する」こと及び「前記半田合金粉末の溶融温度よりも低い還元温度」は、本件特許発明1の「前記炉内を還元雰囲気」にすること及び「第2の温度」にそれぞれ相当する。よって、甲1先願発明の「ギ酸ガスを前記チャンバ内に供給すると共に、前記被接合部材の温度を、前記半田合金粉末の溶融温度よりも低い還元温度に昇温して、前記被接合部材の酸化膜を除去する工程」は、本件特許発明1の「前記炉内を還元雰囲気で第2の温度として前記基板を加熱することにより少なくとも前記はんだ付け部の酸化膜を除去する第3の工程」に相当する。

(カ)甲1先願発明の「前記半田合金粉末の溶融温度よりも高い接合温度」は、還元温度よりも高いから、本件特許発明1の「前記第2の温度よりも高い第3の温度」に相当する。よって、甲1先願発明の「前記チャンバ内の真空を維持したまま、前記被接合部材の温度を、前記半田合金粉末の溶融温度よりも高い接合温度に昇温して、半田を溶融させ、前記被接合部材の半田接合を行う工程」は、本件特許発明1の「前記炉内を真空状態でかつ前記第2の温度よりも高い第3の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれるはんだを溶融させる第4の工程」に相当する。

(キ)甲1先願発明の「半田付け製品の製造方法」は、被接合部材の半田接合を行うことから、本件特許発明1の「はんだ付け方法」に相当する。

そうすると、本件特許発明1と甲1先願発明とは、
「はんだ合金とフラックスが混合されてなるはんだペーストを基板上のはんだ付け部に塗布し、当該はんだペースト上に電子部品を載置する第1の工程と、
炉内を真空状態かつ第1の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれる前記フラックスを揮発させる第2の工程と、
前記炉内を還元雰囲気で第2の温度として前記基板を加熱することにより少なくとも前記はんだ付け部の酸化膜を除去する第3の工程と、
前記炉内を真空状態でかつ前記第2の温度よりも高い第3の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれるはんだを溶融させる第4の工程と、
を有することを特徴とするはんだ付け方法。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
フラックスについて、本件特許発明1は「無残渣用」フラックスである旨特定するのに対し、甲1先願発明はそのような特定がない点。

<相違点2>
第2の工程について、本件特許発明1は「前記無残渣用フラックスを揮発させて無残渣の状態(フラックス残渣の量がフラックス中の1質量%以下)とする」のに対し、甲1先願発明はそのような特定がない点。

上記<相違点2>について検討する。
無残渣用フラックスは、特許権者が令和1年11月8日に提出した特開昭59-19095号公報(ロジンを用いない無残渣型のはんだ付け用フラックス。第1頁左欄第17行ないし第2頁右下欄第8行を参照。乙第5号証。)及び特開平2-290693号公報(ロジンを含まないはんだペースト。第2頁右上欄第12行ないし第3頁右下欄第10行、第1表及び第2表を参照。乙第6号証。)、並びに本件特許明細書の段落【0005】に特許文献1として挙げられた甲第3号証(ロジンを含有しない無残渣ソルダペースト。段落【0008】ないし【0068】を参照。乙第7号証。)に記載されているように、周知の技術事項であると認められる。
しかしながら、はんだを溶融させる工程の以前に、炉内を真空状態として基板を加熱することで、はんだペーストに含まれる無残渣用フラックスを揮発させて無残渣の状態(フラックス残渣の量がフラックス中の1質量%以下)とすることは、乙第5及び6号証及び甲第3号証に記載されておらず、また、本件特許出願前において周知の技術事項であるともいえない。
したがって、上記相違点2は課題解決のための具体化手段における微差(周知技術の付加であって新たな効果を奏するものではないもの)ではないため、上記相違点1について判断するまでもなく、請求項1に係る発明は、甲1先願発明と実質同一ではない。

この点について、異議申立人は、特許異議申立書にて「上記相違点1及び2は、リフロー時におけるはんだの飛散防止、はんだや電極の表面に形成される酸化膜の確実な除去、フラックス洗浄工程の省略という課題解決に何ら影響を与えるものではないから、周知技術の付加であって新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差(実質同一)といえる。」旨を主張している。ここで、相違点1及び2は、上記の<相違点1>及び<相違点2>と実質的に同じものである。
しかしながら、上記に記載したとおり、相違点2は周知の技術事項ではないため、異議申立人の上記主張は採用できない。

イ.請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に対して、さらに「前記第1の工程において、前記基板上の前記はんだ付け部に対応する部分が開口された開口部を有するメタルマスクを用いて、前記基板上の前記はんだ付け部に前記はんだペーストを塗布する」という技術事項を追加したものである。よって、ア.に示した理由と同様の理由により、請求項2に係る発明は、甲1先願発明と実質同一ではない。

ウ.小括
以上のとおり、請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と実質同一ではないので、特許法第29条の2に該当しない。

(2)特許法第36条第4項第1号について
当審は、取消理由通知にて「本件特許発明を当業者が実施しようとする場合、請求項1に記載された『無残渣用フラックス』であって『第1の温度』で『揮発』し、『無残渣の状態(フラックス残渣の量がフラックス中の1質量%以下)』となるものは何が該当し、何が該当しないのかを明示した記載がなされていないことから、請求項1ないし3に係る発明で使用する『はんだペースト』としてどのような材料を用いるべきか不明となるため、当業者が特許発明を実施することができないというべきである。」と通知した。
しかしながら、特許権者の令和1年11月8日提出の意見書における主張及び提出された文献によれば、無残渣用フラックスは、上記「(1)ア.」に記載したとおり、周知の技術事項であると認められ、また、真空状態とすることにより物質の沸点が下がり気化しやすくなることも、技術常識であると認められる。よって、このような周知の技術事項及び技術常識を考慮すれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ充分に記載したものであるといえる。
したがって、請求項1ないし3に係る発明は、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

2.その他の特許異議申立理由について
異議申立人は、本件特許発明1ないし3は、甲第2号証に記載された発明、甲第3、6及び7号証に記載された技術事項、並びに周知技術(甲第4及び5号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。そこで、以下判断をする。

(1)特許法第29条第2項について
ア.請求項1に係る発明について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。

(ア)甲2発明の「はんだペースト内の溶剤」は、はんだペースト内のフラックスと認められる。また、はんだペーストは、一般的にはんだ合金とフラックスとを混合したものであるから、甲2発明と本件特許発明1とは、「はんだ合金と」「フラックスが混合されてなるはんだペースト」である点で共通する。
ただし、フラックスについて、本件特許発明1は「無残渣用」フラックスである旨特定するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点で相違している。

(イ)甲2発明の「スクリーン印刷で」「供給」すること及び「プリント配線基板」は、本件特許発明1の「塗布」すること及び「基板」にそれぞれ相当する。また、甲2発明の「銅箔」は、はんだペーストが供給される部分であるから、本件特許発明1の「はんだ付け部」を含んでいる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、甲2発明の「はんだペーストをスクリーン印刷でプリント配線基板の銅箔に供給し、その上に電子部品を搭載」することは、本件特許発明1の「はんだ合金と」「フラックスが混合されてなるはんだペーストを基板上のはんだ付け部に塗布し、当該はんだペースト上に電子部品を載置する第1の工程」に相当する。

(エ)甲2発明の「加熱チャンバ内」、「真空」及び「蒸発させ」ることは、本件特許発明1の「炉内」、「真空状態」及び「揮発させ」ることにそれぞれ相当する。よって、甲2発明の「前記はんだ付け加熱装置の加熱チャンバ内で前記プリント配線基板上の前記はんだペースト内の溶剤を真空と加熱により徐々に蒸発させ」ることと本件特許発明1とは、「炉内を真空状態かつ第1の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれる前記」「フラックスを揮発させ」「る第2の工程」である点で共通する。
ただし、第2の工程について、本件特許発明1は「前記無残渣用フラックスを揮発させて無残渣の状態(フラックス残渣の量がフラックス中の1質量%以下)とする」のに対し、甲2発明はそのような特定がない点で相違している。

(オ)本件特許発明1は「第2の工程」と「第4の工程」の間に「前記炉内を還元雰囲気で第2の温度として前記基板を加熱することにより少なくとも前記はんだ付け部の酸化膜を除去する第3の工程」を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点で相違している。

(カ)甲2発明の「前記はんだ付け加熱装置内」の「真空度を1?10Paに保ち、」「前記加熱チャンバ内の本加熱部で前記プリント配線基板を加熱して前記電子部品を前記プリント配線基板にはんだ付けする」ことは、はんだ合金が溶融することではんだ付けされるから、本件特許発明1とは、「前記炉内を真空状態でかつ」「第3の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれるはんだを溶融させる第4の工程」である点で共通する。
ただし、第3の温度について、本件特許発明1は「前記第2の温度よりも高い第3の温度」である旨特定するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点で相違している。

(キ)甲2発明の「プリント配線基板のはんだ付け方法」は、本件特許発明1の「はんだ付け方法」に相当する。

そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、
「はんだ合金とフラックスが混合されてなるはんだペーストを基板上のはんだ付け部に塗布し、当該はんだペースト上に電子部品を載置する第1の工程と、
炉内を真空状態かつ第1の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれる前記フラックスを揮発させる第2の工程と、
前記炉内を真空状態でかつ第3の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれるはんだを溶融させる第4の工程と、
を有することを特徴とするはんだ付け方法。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
フラックスについて、本件特許発明1は「無残渣用」フラックスである旨特定するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。

<相違点2>
第2の工程について、本件特許発明1は「前記無残渣用フラックスを揮発させて無残渣の状態(フラックス残渣の量がフラックス中の1質量%以下)とする」のに対し、甲2発明はそのような特定がない点。

<相違点3>
本件特許発明1は「第2の工程」と「第4の工程」の間に「前記炉内を還元雰囲気で第2の温度として前記基板を加熱することにより少なくとも前記はんだ付け部の酸化膜を除去する第3の工程」を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。

<相違点4>
第3の温度について、本件特許発明1は「前記第2の温度よりも高い第3の温度」である旨特定するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。

上記<相違点3>及び<相違点4>について検討する。
甲2発明は、はんだ付け加熱装置内にアルゴンと水素の混合ガスを導入し、該混合ガスで還元することにより、プリント配線基板の銅箔の酸化物を除去するものである。しかしながら、甲第2号証には、該酸化物の除去の処理を、はんだペースト内の溶剤を蒸発させる処理と電子部品をプリント配線基板にはんだ付けする処理との間で行うことが記載されておらず、また、該酸化物の除去の処理を還元雰囲気でプリント配線基板を加熱して行うことも記載されていない。さらに、還元雰囲気でプリント配線基板を加熱する際の温度よりも高い温度でプリント配線基板を加熱して電子部品をプリント配線基板にはんだ付けすることも記載されていない。そして、甲第3ないし5号証にも上記相違点3及び4の構成は記載されておらず、また、本件特許出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、上記相違点1及び2について判断するまでもなく、請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3ないし5号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

この点について、異議申立人は、特許異議申立書にて「本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
・・・(中略)・・・したがって、両者は、以下の点で一致する。
『A はんだペーストを基板上のはんだ付け部に塗布し、当該はんだペースト上に電子部品を載置する第1の工程と、
B 炉内を真空状態かつ第1の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれる溶剤を揮発させる第2の工程と、
C 前記炉内を還元雰囲気で第2の温度として前記基板を加熱することにより少なくとも前記はんだ付け部の酸化膜を除去する第3の工程と、
D 前記炉内を、第2の温度よりも高い第3の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれるはんだを溶融させる第4の工程と、を有することを特徴とするはんだ付け方法。』」旨を主張している。
しかしながら、上記に記載したとおり、甲第2号証には、「第2の工程」と「第4の工程」の間に「前記炉内を還元雰囲気で第2の温度として前記基板を加熱することにより少なくとも前記はんだ付け部の酸化膜を除去する第3の工程」を有することは記載されておらず、また、「前記第2の温度よりも高い第3の温度として前記基板を加熱することにより前記はんだペーストに含まれるはんだを溶融させる」ことも記載されていない。
よって、異議申立人の上記主張は採用できない。

イ.請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に対して、さらに「前記第1の工程において、前記基板上の前記はんだ付け部に対応する部分が開口された開口部を有するメタルマスクを用いて、前記基板上の前記はんだ付け部に前記はんだペーストを塗布する」という技術事項を追加したものである。よって、ア.に示した理由と同様の理由により、請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3ないし6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ.請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明に対して、さらに「前記はんだ合金は、引張強度が55MPa以上、伸びが40%以下、0.2%耐力が40MPa以上である」という技術事項を追加したものである。よって、ア.に示した理由と同様の理由により、請求項3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3ないし5、7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)特許法第36条第6項第1号について
異議申立人は、「無残渣用フラックス」が周知技術でないとすれば、本件特許発明1ないし3は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであると主張している。
しかしながら、無残渣用フラックスは、上記「1.(1)ア.」に記載したとおり、周知の技術事項であると認められ、また、真空状態とすることにより物質の沸点が下がり気化しやすくなることも、技術常識であると認められる。よって、このような周知の技術事項及び技術常識を考慮すれば、本件特許発明1ないし3には、課題を解決するための手段が反映されているといえる。
したがって、請求項1ないし3に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-12-11 
出願番号 特願2018-519977(P2018-519977)
審決分類 P 1 651・ 161- Y (H05K)
P 1 651・ 537- Y (H05K)
P 1 651・ 536- Y (H05K)
P 1 651・ 121- Y (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鹿野 博司  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 佐々木 洋
山澤 宏
登録日 2018-12-14 
登録番号 特許第6447782号(P6447782)
権利者 千住金属工業株式会社
発明の名称 はんだ付け方法  
代理人 特許業務法人山口国際特許事務所  
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