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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1357995
審判番号 不服2019-4285  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-03 
確定日 2020-01-14 
事件の表示 特願2013- 84571号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月30日出願公開、特開2014-204870号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月15日の出願であって、平成29年3月31日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年5月31日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年10月23日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成29年12月25日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年5月28日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年7月31日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年12月28日付け(送達日:平成31年1月8日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成31年4月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年12月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明と、以下の引用文献2に記載された公知事項及び以下の引用文献3及び引用文献4に記載又は示唆された周知事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-110483号公報
2.特開2012-213561号公報
3.特開2011-229667号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-162225号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成31年4月3日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。(当審においてA?Fに分説した。)

「【請求項1】
A 遊技領域に設けられた第1経路または第2経路に遊技媒体を発射することにより遊技を行い、前記第2経路に発射された遊技媒体が入賞可能な第1状態と、前記第2経路に発射された遊技媒体が入賞不可能または入賞困難な第2状態と、に変化する変動入賞装置を備え、可変表示を行い、前記変動入賞装置を第1状態に変化させる有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されているときに、遊技媒体を前記第2経路に発射すべきことを遊技者に指示する報知演出を実行する報知手段を備え、
前記報知手段は、
B1 前記報知演出を、遊技者に付与される価値に応じた複数種類の演出態様で実行可能であり、
B2 前記有利状態に制御されている期間において、前記報知演出を、演出態様を変更して実行可能であり、
B3 前記報知演出の実行中に前記遊技機への電力供給が停止した後、電力供給が再開された際には、前記報知演出を、電力供給の停止前の演出態様にかかわらず特定の演出態様で実行し、
C 可変表示に関する情報を保留記憶情報として記憶する保留記憶手段と、
D 前記有利状態となるかを判定する判定手段と、
E 前記有利状態において前記変動入賞装置に遊技媒体が入賞したことにもとづいて、有利状態中演出を実行する有利状態中演出実行手段と、を更に備え、
E1 前記有利状態中演出実行手段は、前記判定手段により前記有利状態となると判定されたことに対応する保留記憶情報が前記保留記憶手段に記憶されているときは前記有利状態が終了した後も前記有利状態中演出を継続する、
F ことを特徴とする遊技機。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

「【0001】
本発明は、パチンコ遊技機等の遊技機に係り、詳しくは、遊技領域に遊技媒体を発射することにより遊技を行い、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行い表示結果を導出する可変表示手段を備え、識別情報の可変表示結果として予め定められた特定表示結果が導出されたときに、遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機に関する。」

「【0006】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、払出条件の成立タイミングを容易に把握することができる遊技機の提供を目的とする。
【0007】
(1) 上記目的を達成するため、本願発明に係る遊技機は、遊技領域に遊技媒体(例えば遊技球など)を発射することにより遊技を行い、各々を識別可能な複数種類の識別情報(例えば特別図柄や飾り図柄など)の可変表示を行い表示結果を導出する可変表示手段(例えば第1及び第2特別図柄表示装置4A、4Bや画像表示装置5など)を備え、識別情報の可変表示結果として予め定められた特定表示結果(例えば大当り図柄や大当り組合せの確定飾り図柄など)が導出されたときに、遊技者にとって有利な特定遊技状態(例えば大当り遊技状態など)に制御する遊技機(例えばパチンコ遊技機1など)であって、前記遊技領域における所定領域(例えば右遊技領域2Bなど)に設けられ、遊技媒体が進入可能な第1状態(例えば開放状態など)と、遊技媒体が進入不可能または進入困難な第2状態(例えば閉鎖状態など)とに変化する変動入賞装置(例えば特別可変入賞球装置7など)と、前記特定遊技状態であるときに、前記変動入賞装置を、遊技媒体が進入しやすい第1変化態様(例えば29秒間あるいは10個の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態する態様など)と、該第1変化態様よりも遊技媒体が進入しにくい第2変化態様(例えば0.5秒間だけ大入賞口を開放状態とする態様など)とのうち、いずれかの変化態様で前記第1状態と前記第2状態とに制御可能な変動入賞制御手段(例えばステップS114?S117の処理を実行する遊技制御用マイクロコンピュータ100のCPU104など)と、前記変動入賞制御手段により前記変動入賞装置が前記第1状態に制御されることに基づいて、遊技媒体を前記所定領域に発射すべきことを遊技者に報知する報知手段(例えば画像表示装置5やスピーカ8L、8R、遊技効果ランプ9の一部または全部を用いて右打ち指示報知AR1、AR2を行う部分など)と、遊技媒体が前記変動入賞装置に進入することを含む所定の遊技結果に応じて景品として所定数の遊技媒体(例えば10個の賞球など)を払い出すための払出条件が成立したことに基づいて、該払出条件が成立したことを示す払出条件成立信号を遊技機の外部に出力するための信号出力処理を実行する信号出力処理手段(例えばステップS137?S145、S147の処理を実行する遊技制御用マイクロコンピュータ100のCPU104など)と、前記報知手段により、前記変動入賞装置の変化態様が前記第1変化態様であることに対応して第1報知(例えば右打ち指示報知AR1など)を行う一方で、前記変動入賞装置の変化態様が前記第2変化態様であることに対応して前記第1報知とは異なる第2報知(例えば右打ち指示報知AR2など)を行う報知制御手段(例えばステップS607、S612の処理を実行する演出制御用マイクロコンピュータ120のCPU120Aなど)とを備える。
【0008】
このような構成によれば、変動入賞装置の変化態様が第1変化態様であることに対応して第1報知が行われ、第2変化態様であることに対応して第2報知が行われる。また、所定の払出条件が成立したときに、その払出条件が成立したことを示す払出条件成立信号を外部出力するための信号出力処理が実行される。これにより、遊技機の外部において、払出条件の成立タイミングを正確に把握することができる。さらに、遊技者に適切な発射操作を指示するとともに、変動入賞装置の変化態様を認識させることができる。」

「【0013】
(4) 上記(1)から(3)のうちいずれかの遊技機において、前記遊技領域には、第1遊技領域(例えば左遊技領域2A)と第2遊技領域(例えば右遊技領域2B)とがあり、前記第1遊技領域へと誘導された遊技媒体は前記第2遊技領域へと誘導されにくく(例えば釘の配列PLに沿って遊技球が誘導される)、前記第1遊技領域には常時遊技媒体が進入可能な第1始動入賞装置(例えば普通入賞球装置6Aなど)が設けられる一方で、前記第2領域には前記第1状態と前記第2状態とに変化する第2始動入賞装置(例えば普通可変入賞球装置6Bなど)が設けられ、前記変動入賞装置は、前記第2遊技領域における所定位置に設けられ、前記報知手段は、前記変動入賞制御手段により前記変動入賞装置を前記第1状態とする制御が終了した後に、遊技媒体を前記第1遊技領域に発射すべきことを遊技者に報知する事後発射領域報知(例えば左打ち指示報知AL1、AL2など)を行い、前記報知制御手段は、前記第1報知が行われた後に前記事後発射領域報知を行うときの報知態様(例えば左打ち指示報知AL1となる演出画像の表示態様など)を、前記第2報知が行われた後に前記事後発射領域報知を行うときの報知態様(例えば左打ち指示報知AL2となる演出画像の表示態様など)とは異ならせてもよい。」

「【0021】
遊技盤2の所定位置(図1に示す例では、遊技領域の左下方)には、第1特別図柄表示装置4Aと、第2特別図柄表示装置4Bとが設けられている。第1特別図柄表示装置4Aと第2特別図柄表示装置4Bはそれぞれ、例えば7セグメントやドットマトリクスのLED(発光ダイオード)等から構成され、可変表示ゲームの一例となる特図ゲームにおいて、各々が識別可能な複数種類の識別情報(特別識別情報)である特別図柄(「特図」ともいう)を、変動可能に表示(可変表示)する。」

「【0032】
普通可変入賞球装置6Bの下方には、特別可変入賞球装置7が設けられている。すなわち、特別可変入賞球装置7は、第2遊技領域となる右遊技領域2Bに設けられている。特別可変入賞球装置7は、図2に示す大入賞口扉用のソレノイド82によって開閉駆動される大入賞口扉を備え、その大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する大入賞口を形成する。一例として、特別可変入賞球装置7では、大入賞口扉用のソレノイド82がオフ状態であるときに大入賞口扉が大入賞口を閉鎖状態にする。その一方で、特別可変入賞球装置7では、大入賞口扉用のソレノイド82がオン状態であるときに大入賞口扉が大入賞口を開放状態にする。特別可変入賞球装置7に形成された大入賞口に進入した遊技球は、例えば図2に示すカウントスイッチ23によって検出される。カウントスイッチ23によって遊技球が検出されたことに基づき、所定個数(例えば14個)の遊技球が賞球として払い出される。」

「【0136】
遊技制御用マイクロコンピュータ100が備えるRAM106には、パチンコ遊技機1における遊技の進行などを制御するために用いられる各種のデータを保持する領域として、例えば図10に示すような遊技制御用データ保持エリア590が設けられている。遊技制御用データ保持エリア590は、第1特図保留記憶部591Aと、第2特図保留記憶部591Bと、遊技制御フラグ設定部592と、遊技制御タイマ設定部593と、遊技制御カウンタ設定部594と、遊技制御バッファ設定部595とを備えている。
【0137】
第1特図保留記憶部591Aは、普通入賞球装置6Aが形成する第1始動入賞口を遊技球が通過(進入)したことによる始動入賞の発生に対応して第1始動条件は成立したが第1開始条件は成立していない特図ゲーム(第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図を用いた特図ゲーム)の保留データを記憶する。一例として、第1特図保留記憶部591Aは、第1始動入賞口への入賞順に保留番号と関連付けて、その入賞による第1始動条件の成立に基づいてCPU104により取得(抽出)された各種の乱数値を示す数値データを保留データとし、その記憶数が所定の上限値(例えば「4」)に達するまで記憶する。この実施の形態では、特図表示結果決定用の乱数値MR1を示す数値データと、大当り種別決定用の乱数値MR2を示す数値データと、変動パターン種別決定用の乱数値MR3を示す数値データとが、保留データとして第1特図保留記憶部591Aに記憶される。
【0138】
第2特図保留記憶部591Bは、普通可変入賞球装置6Bが形成する第2始動入賞口を遊技球が通過(進入)したことによる始動入賞の発生に対応して第2始動条件は成立したが第2開始条件は成立していない特図ゲーム(第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図を用いた特図ゲーム)の保留データを記憶する。一例として、第2特図保留記憶部591Bは、第2始動入賞口への入賞順に保留番号と関連付けて、その入賞による第2始動条件の成立に基づいてCPU104により取得(抽出)された各種の乱数値を示す数値データを保留データとし、その記憶数が所定の上限値(例えば「4」)に達するまで記憶する。この実施の形態では、特図表示結果決定用の乱数値MR1を示す数値データと、大当り種別決定用の乱数値MR2を示す数値データと、変動パターン種別決定用の乱数値MR3を示す数値データとが、保留データとして第2特図保留記憶部591Bに記憶される。」

「【0185】
次に、本実施例におけるパチンコ遊技機1の動作を説明する。主基板11では、電源基板10からの電力供給が開始されて遊技制御用マイクロコンピュータ100が起動すると、CPU104が所定のセキュリティチェック処理を実行した後などに、図20のフローチャートに示すような遊技制御メイン処理を実行する。
・・・・
【0192】
ステップS7でクリアスイッチ501がオンでない場合には、パチンコ遊技機1への電力供給が停止したときにバックアップRAM領域のデータ保護処理(例えばパリティデータの付加等の電力供給停止時処理)が行われたか否か確認する(ステップS8)。この実施の形態では、電力供給の停止が生じた場合には、バックアップRAM領域のデータを保護するための処理が行われている。そのような電力供給停止時処理が行われていたことを確認した場合に、CPU104は、電力供給停止時処理が行われた、すなわち電力供給停止時の制御状態が保存されていると判定する。電力供給停止時処理が行われていないことを確認した場合には、CPU104は初期化処理を実行する。
・・・・
【0194】
電力供給停止時の制御状態が保存されていると判定したら、CPU104は、バックアップRAM領域のデータチェック(この例ではパリティチェック)を行う(ステップS9)。
・・・・
【0196】
チェック結果が正常であれば、CPU104は、遊技制御手段の内部状態と演出制御手段等の電気部品制御手段の制御状態を電力供給停止時の状態へと戻すために、電断復旧時の設定を行う(ステップS91)。具体的には、ROM105に格納されているバックアップ時設定テーブルの先頭アドレスをポインタに設定し、バックアップ時設定テーブルの内容を順次作業領域(RAM106内の領域)に設定する。作業領域はバックアップ電源によって電源バックアップされている。バックアップ時設定テーブルには、作業領域のうち初期化してもよい領域についての初期化データが設定されている。これによって、作業領域のうち初期化してはならない部分については、保存されていた内容がそのまま残る。初期化してはならない部分とは、例えば、電力供給停止前の遊技状態を示すデータ(特別図柄プロセスフラグなど)、出力ポートの出力状態が保存されている領域(出力ポートバッファ)、未払出賞球数を示すデータが設定されている部分などである。」

「【0246】
図24は、特別図柄通常処理として、図22のステップS110にて実行される処理の一例を示すフローチャートである。図24に示す特別図柄通常処理において、CPU104は、まず、第2特図保留記憶数が「0」であるか否かを判定する(ステップS231)。
・・・・
【0255】
ステップS240にて特図表示結果を決定した後には、その特図表示結果が「大当り」であるか否かを判定する(ステップS241)。そして、「大当り」であると判定された場合には(ステップS241;Yes)、遊技制御フラグ設定部592に設けられた大当りフラグをオン状態にセットする(ステップS242)。・・・・」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「a 遊技領域には、左遊技領域2Aと右遊技領域2Bとがあり、前記左遊技領域2Aへと誘導された遊技球は右遊技領域2Bへと誘導されにくく、右遊技領域2Bに設けられ、遊技球が進入可能な開放状態と、遊技球が進入不可能または進入困難な閉鎖状態とに変化する特別可変入賞球装置7に形成された大入賞口を備え、特別図柄の可変表示を行い、大当り図柄が導出されたときに、遊技者にとって有利な大当り遊技状態に制御し、前記大当り遊技状態であるときに、前記大入賞口を、前記開放状態に制御可能なパチンコ遊技機1であって(【0007】、【0013】、【0032】)、

b 前記大入賞口が前記開放状態に制御されることに基づいて、遊技球を前記右遊技領域2Bに発射すべきことを遊技者に報知する報知手段により、右打ち指示報知AR1、右打ち指示報知AR2を行う演出制御用マイクロコンピュータ120のCPU120Aを備え(【0007】)、

b1 前記大入賞口の変化態様が、29秒間あるいは10個の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態する態様で、遊技球が進入しやすい第1変化態様であることに対応して右打ち指示報知AR1を行う一方で、0.5秒間だけ大入賞口を開放状態とする態様で、第1変化態様よりも遊技球が進入しにくい第2変化態様であることに対応して、前記右打ち指示報知AR1とは異なる右打ち指示報知AR2を行い(【0007】)、大入賞口に進入した遊技球は、カウントスイッチ23によって検出され、検出されたことに基づき、14個の遊技球が賞球として払い出され(【0032】)、

b3’ 電力供給の停止が生じた場合には、バックアップRAM領域のデータを保護するための電力供給停止時処理が行われ(【0192】)、電源基板10からの電力供給が開始されて遊技制御用マイクロコンピュータ100が起動すると、遊技制御用マイクロコンピュータ100のCPU104が遊技制御メイン処理を実行し(【0007】、【0185】)、ステップS7でクリアスイッチ501がオンでない場合には、パチンコ遊技機1への電力供給が停止したときにバックアップRAM領域のデータ保護処理が行われたか否か確認し(ステップS8)、電力供給停止時処理が行われた、すなわち電力供給停止時の制御状態が保存されていると判定したら(【0192】)、バックアップRAM領域のデータチェックを行い(ステップS9)(【0194】)、チェック結果が正常であれば、CPU104は、遊技制御手段の内部状態と演出制御手段等の電気部品制御手段の制御状態を電力供給停止時の状態へと戻すために、電断復旧時の設定を行い(ステップS91)(【0196】)、

c 遊技制御用マイクロコンピュータ100が備えるRAM106は、第1特図保留記憶部591Aと、第2特図保留記憶部591Bとを備え(【0136】)、第1特図保留記憶部591Aは、普通入賞球装置6Aが形成する第1始動入賞口を遊技球が進入したことによる始動入賞の発生に対応して第1始動条件は成立したが第1開始条件は成立していない、第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図を用いた可変表示ゲームである特図ゲームの保留データを記憶し、第2特図保留記憶部591Bは、普通可変入賞球装置6Bが形成する第2始動入賞口を遊技球が進入したことによる始動入賞の発生に対応して第2始動条件は成立したが第2開始条件は成立していない、第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図を用いた可変表示ゲームである特図ゲームの保留データを記憶し(【0021】、【0137】-【0138】)、

d CPU104は、ステップS240にて特図表示結果を決定した後に、その特別図柄表示結果が「大当り」であるか否かを判定する(ステップS241)(【0246】、【0255】)、

f パチンコ遊技機1。」

2 引用文献2について
引用文献2には、「演出制御部130は、8R確変大当たりに当選して第1特別遊技が行われる際に8R確変大当たりとなる特別図柄抽選が保留された場合に、液晶表示器5において、計8ラウンドからなる第1特別遊技の間、ラウンド数を示す文字を表示させ、8ラウンドの第1特別遊技が終了した後も、本来であれば、ラウンド数を示す文字が「1ラウンド」から順に表示されるところが「9ラウンド」から順に表示される第2演出を継続する、パチンコ遊技機1(【0016】、【0043】、【0051】、【0053】)」が記載されている。

3 引用文献3、引用文献4について
引用文献3には、「遊技球を遊技領域に発射し(【0002】)、始動入賞口に遊技球が入賞したことにもとづいて可変表示部において開始される特別図柄の可変表示の表示結果として、あらかじめ定められた特定の表示態様が導出表示された場合に、大当りである特定遊技状態が発生し(【0004】)、
特別可変入賞球装置20が設けられ、特別可変入賞球装置20は開閉板を備え、第1特別図柄表示器8aに大当り図柄が導出表示されたとき、および第2特別図柄表示器8bに大当り図柄が導出表示されたときに生起する特定遊技状態においてソレノイド21によって開閉板が開放状態に制御されることによって、入賞領域となる大入賞口が開放状態になる(【0036】)パチンコ遊技機(【0001】)であって、
演出表示装置9は、第1特別図柄表示器8aでの第1特別図柄の可変表示時間中、および第2特別図柄表示器8bでの第2特別図柄の可変表示時間中に、演出用の図柄としての演出図柄の可変表示を行い(【0026】)、演出表示装置9において演出図柄の可変表示を行う演出モードとして、遊技状態が通常状態または確変状態に移行されているときの演出モードである通常モードと、通常モードよりも確変状態に移行されている可能性が高いことを示す演出モードである潜伏モードと、潜伏モードよりも確変状態に移行されている可能性が高いことを示す演出モードである高期待度モードとが設けられ(【0108】)、通常演出モードとして、移行条件が成立しなくても演出モード制御手段が潜伏モードに制御し得る第1通常演出モードと、移行条件が成立してから所定期間が経過した後に制御され得、移行条件が成立しなければ演出モード制御手段が潜伏演出モードに制御し得ない第2通常演出モードとが設けられ、演出モード移行決定手段は、電力供給が停止したときにいずれの演出モードに制御されていたかにかかわらず、電力供給が開始されたときに第2通常演出モードに制御し、遊技機への電力供給が開始されたときにいずれの遊技状態に制御されているかについて察知されるのを防ぐことができる(【0010】、【0014】)パチンコ遊技機。」が記載されている。

引用文献4(【0001】?【0002】、【0004】、【0012】、【0014】?【0015】、【0026】、【0036】、【0103】)にも、同様のパチンコ遊技機が記載されている。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。(見出し(a)?(f)は、本願発明1の特定事項A?Fに対応する。)。

(a、f)引用発明1の構成a、fにおける「左遊技領域2A」、「右遊技領域2B」、「進入可能」「大当り遊技」、「パチンコ遊技機1」は、それぞれ、本願発明1の構成A、Fの「第1経路」、「第2経路」、「入賞可能」、「有利状態」、「遊技機」に相当する。
してみると、引用発明1の構成a、fは、本願発明1の構成A、Fに相当する。

(b)引用発明1の構成bにおける「右打ち指示報知AR1、右打ち指示報知AR2」は、「遊技球を前記右遊技領域2Bに発射すべきことを遊技者に報知する」ものであって、引用発明1の構成bの「発射すべきことを」「報知」することは、本願発明Bの「発射すべきことを」「指示する報知演出」に相当するから、本願発明の構成Bの「遊技球を前記第2経路に発射すべきことを遊技者に指示する報知演出」に相当する。
また、引用発明1の構成bにおける「演出制御用マイクロコンピュータ120のCPU120A」は、本願発明の構成Bの「報知手段」に相当する。
してみると、引用発明1の構成bは、本願発明1の構成Bに相当する。

(b1)引用発明1の構成b1において、「遊技球」が「大入賞口に進入」すると、「14個の遊技球が賞球として払い出され」ることは、本願発明の構成Bにおいて、「遊技者に」「価値」が「付与される」ことに相当する。
そして、引用発明1の構成b1において、「29秒間あるいは10個の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態する態様で、遊技球が進入しやすい第1変化態様」と、「0.5秒間だけ大入賞口を開放状態とする態様で、第1変化態様よりも遊技球が進入しにくい第2変化態様」とでは、前者の方が後者より多くの「遊技球」が「大入賞口に進入」するので、「賞球として払い出され」る「遊技球」の個数が多いことは明らかであるから、遊技者に付与される価値が異なるといえる。
よって、引用発明1の構成b1における、「右打ち指示報知AR1」及び「右打ち指示報知AR2」は、本願発明の構成B1の「遊技者に付与される価値に応じた複数種類の演出態様」に相当する。
してみると、引用発明1の構成b1は、本願発明1の構成B1に相当する。

(b3’)引用発明1の構成b3’において、「電力供給停止時処理」は、「電力供給の停止が生じた場合」に行われる。したがって、「電力供給停止時処理」が行われた後に「電源基板10からの電力供給が開始され」ることは、本願発明の構成B3の「遊技機への電力供給が停止した後、電力供給が再開され」ることに相当する。
しかし、引用発明1の構成b3’において、「遊技機への電力供給が停止した後、電力供給が再開された際」に、「遊技制御用マイクロコンピュータ100のCPU104」は「演出制御手段・・の制御状態を電力供給停止時の状態へと戻すために、電断復旧時の設定を行」っているものの、「報知演出」に対してどのような設定をするのかは特定されておらず、また、「報知手段」がどのような制御を行っているのかについても、特定されていない。
してみると、引用発明1の構成b3’は、本願発明1の構成B3と、「遊技機への電力供給が停止した後、電力供給が再開された際には、電断復旧処理を行」う点で共通する。

(c)引用発明1の構成cにおける、「第1始動条件は成立したが第1開始条件は成立していない、第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図を用いた可変表示ゲームである特図ゲームの保留データ」及び「第2始動条件は成立したが第2開始条件は成立していない、第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図を用いた可変表示ゲームである特図ゲームの保留データ」は、本願発明1の構成Cの「可変表示に関する情報」に相当するから、引用発明1の構成cにおける「第1特図保留記憶部591A」及び「第2特図保留記憶部591B」は、本願発明1の構成Cの「保留記憶手段」に相当する。
してみると、引用発明1の構成cは、本願発明1の構成Cに相当する。

(d)引用発明1の構成aより、「特図表示結果が「大当り」」になると、遊技者にとって有利な大当り遊技状態に制御されることから、引用発明1の構成dにおける「特図表示結果が「大当り」であるか否かを判定」することは、本願発明1の構成Dの「有利状態となるか否かを判定」することに相当する。
よって、引用発明1の構成dにおける「CPU104」は、本願発明1の構成Dの「判定手段」に相当する。
してみると、引用発明1の構成dは、本願発明1の構成Dに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「A 遊技領域に設けられた第1経路または第2経路に遊技媒体を発射することにより遊技を行い、前記第2経路に発射された遊技媒体が入賞可能な第1状態と、前記第2経路に発射された遊技媒体が入賞不可能または入賞困難な第2状態と、に変化する変動入賞装置を備え、可変表示を行い、前記変動入賞装置を第1状態に変化させる有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されているときに、遊技媒体を前記第2経路に発射すべきことを遊技者に指示する報知演出を実行する報知手段を備え、
前記報知手段は、
B1 前記報知演出を、遊技者に付与される価値に応じた複数種類の演出態様で実行可能であり、
B3’ 遊技機への電力供給が停止した後、電力供給が再開された際には、電断復旧処理を行い、
C 可変表示に関する情報を保留記憶情報として記憶する保留記憶手段と、
D 前記有利状態となるかを判定する判定手段と、
を更に備える、
F 遊技機。」

(相違点)
・相違点1(特定事項B2)
本願発明は、「前記有利状態に制御されている期間において、前記報知演出を、演出態様を変更して実行可能」であるのに対し、引用発明1は、それに対応する構成を備えていない点。

・相違点2(特定事項B3)
本願発明は、「前記遊技機への電力供給が停止した後、電力供給が再開された際」に行う「電断復旧処理」について、「前記報知演出の実行中」を対象として「前記報知演出を、電力供給の停止前の演出態様にかかわらず特定の演出態様で実行」するのに対し、引用発明1は、それに対応する構成を備えていない点。

・相違点3(特定事項E,E1)
本願発明は、「前記有利状態において前記変動入賞装置に遊技媒体が入賞したことにもとづいて、有利状態中演出を実行する有利状態中演出実行手段と、を更に備え、
前記有利状態中演出実行手段は、前記判定手段により前記有利状態となると判定されたことに対応する保留記憶情報が前記保留記憶手段に記憶されているときは前記有利状態が終了した後も前記有利状態中演出を継続する」のに対し、引用発明1は、それに対応する構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。

(ア)原査定においては、引用文献3及び引用文献4は周知例として扱われているものの、これらは同一出願人による、ほぼ同一の実施例が記載された文献であるから、周知例として扱うことは適切でなく、当審では、引用文献3及び引用文献4に記載の技術事項が引用されたものとして審理した。

(イ)上記「第4 引用文献、引用発明等」の「3 引用文献3、引用文献4について」に説示のとおり、引用文献3及び引用文献4には、遊技機において、確変状態に移行されている可能性を示す、第1通常演出モード、第2通常演出モード、潜伏モード、高期待度モードのいずれかの演出モードに制御されているときに、電力供給が停止し、電力供給が開始された場合、いずれの遊技状態に制御されているかを察知されるのを防ぐために、電力供給が停止したときにいずれの演出モードに制御されていたかにかかわらず、第2通常演出モードに制御する技術、が記載されているといえる(以下、「引用文献3及び引用文献4に記載の技術」という。)。
ここで、上記引用文献3及び引用文献4に記載の技術における、「電力供給が停止し、電力供給が開始された場合」、「電力供給が停止したときにいずれの演出モードに制御されていたかにかかわらず、第2通常演出モードに制御」することは、本願発明1の構成B3の「遊技機への電力供給が停止した後、電力供給が再開された際」、「電力供給の停止前の演出態様にかかわらず特定の演出態様で実行」することに相当する。
しかるに、上記引用文献3及び引用文献4に記載の技術における「演出モード」に「制御」することは、「確変状態に移行されている可能性を示す」ものを知らせるものである一方、本願発明1の「報知演出」は、「遊技媒体を」「第2経路に発射すべきことを遊技者に指示する」もの、すなわち、遊技者に遊技媒体を発射すべき方向を指示するものであるから、上記引用文献3及び引用文献4に記載の技術において「演出モード」に「制御」することは、本願発明1の「遊技媒体を」「第2経路に発射すべきことを遊技者に指示する」「報知演出」と、「演出」である点で共通するといえるものの、「遊技媒体を」「第2経路に発射すべきことを遊技者に指示する」「報知」を行っておらず、本願発明1の「報知演出」に相当するものとはいえない。
したがって、電断復旧処理について、「遊技媒体を」「第2経路に発射すべきことを遊技者に指示する」「報知演出の実行中」を対象として、「前記報知演出を、特定の演出態様で実行」するという上記相違点2に係る構成は、引用文献3及び引用文献4に示されていない。

(ウ)また、引用文献1に記載の「右打ち指示報知AR1、右打ち指示報知AR2」は、「遊技球を前記右遊技領域2Bに発射すべきことを遊技者に報知する」ものであって、遊技者に発射領域の指示を与え、「右遊技領域2B」に設けられた「大入賞口」への「入賞」を促す機能を有すると認められる一方、引用文献3及び引用文献4に記載の「演出モード」は、遊技者に「確変状態に移行されている可能性」を演出するものであって、遊技者に何ら指示報知をするものではないから、両者は、演出の機能が異なるものである。
よって、引用発明1に、上記引用文献3及び引用文献4に記載の技術を適用する動機付けも存在しない。

(エ)したがって、相違点2に係る構成は、引用発明1と、上記引用文献3及び引用文献4に記載の技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(オ)そして、「第4 引用文献、引用発明等」の「2 引用文献2について」に説示のとおり、引用文献2には、本願発明の構成B3の前提となる、本願発明の構成Bの「遊技媒体を前記第2経路に発射すべきことを遊技者に報知する報知演出を実行する報知手段」がそもそも特定されておらず、相違点2に係る構成は、引用発明1、上記引用文献3及び引用文献4に記載の技術に加え、引用文献2に記載の公知技術を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものとはいえないことは明らかである。

したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明と、引用文献2?引用文献4に記載の公知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1 理由(特許法第29条第2項)について
本願発明1は、上記「第5 対比・判断 」で示したとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-20 
出願番号 特願2013-84571(P2013-84571)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古屋野 浩志  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 蔵野 いづみ
赤坂 祐樹
発明の名称 遊技機  

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