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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1358146
審判番号 不服2018-9924  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-20 
確定日 2019-12-12 
事件の表示 特願2013- 16272「画像生成装置および放射線断層撮影装置並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月21日出願公開、特開2014-147418〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年1月31日の出願であって、平成28年12月5日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月3日付けで意見書が提出され、同年7月11日付けで拒絶理由が通知され、同年10月17日付けで意見書が提出され、平成30年3月12日付けで拒絶査定されたところ、同年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後当審において平成31年3月29日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和元年6月21日付けで意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、平成30年7月20日付けの手続補正(以下、単に「手続補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの本願発明4は、次のとおりのものである。
「【請求項4】
放射線焦点から放射線を放射する放射線源と、
検出素子がチャネル方向およびスライス方向に複数配列された検出器モジュールがチャネル方向およびスライス方向に複数配設されており、スライス方向の検出器モジュール間に間隙が形成されている放射線検出器と、
前記放射線源および放射線検出器を用いたスキャンにより得られた投影データに基づいて画像再構成する再構成手段と、を備えた放射線断層撮影装置であって、
個々の検出素子の位置情報を記憶する記憶手段を備え、
前記再構成手段は、前記放射線焦点から画像再構成空間における再構成対象の画素を通って直線的に延びる放射線パスと前記放射線検出器の検出面との交差点の近傍に位置する複数の検出素子により得られた各実データを、前記交差点の位置情報と前記記憶手段に記憶されている該複数の検出素子の位置情報とを基に定められた重み係数により加重加算する補間を行って、前記放射線パスによる投影データを生成し、該投影データに基づいて3次元画像再構成法により前記再構成対象の画素を再構成する、放射線断層撮影装置。」

第3 拒絶の理由
当審拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。

1.(新規性進歩性)本願発明1?7は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。または、本願発明1?7は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1 刊行物等一覧
引用文献1:国際公開第2010/150717号

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)

(1)「[0001] 本発明は、X線CT装置における再構成像の画質向上技術に関し、特に、X線を検出するX線検出素子がマトリクス状に配列されたX線検出器を備えるマルチスライスX線CT装置におけるアーチファクト低減技術に関する。」

(2)「[0015] <<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態の説明に用いる外観図、断面図、説明図は、本発明の一例であり、本発明を限定するものではない。
[0016] 図1は、本実施形態のX線CT装置の概略図である。本図に示すように、本実施形態のX線CT装置10は、X線源100、X線検出器104、信号収集装置109、中央処理装置105、表示装置106、入力装置107、制御装置108、回転台101、及び寝台天板103を備える。X線検出器104は、X線源100を略中心とした円弧状に複数配置され、X線源100と共に回転台101に搭載される。なお、本明細書では、X線源100及び回転台101の回転方向をチャネル方向112、回転方向に垂直な方向をスライス方向111と呼ぶ。
[0017] 図1では、説明を簡単にするために、チャネル方向112にX線検出器104を8個備える場合を例示する。実際のX線CT装置では、X線検出器104は、例えば、チャネル方向112に40個程度備える。また、X線検出器104の前面には散乱X線コリメータ120(ここでは、不図示。後述の図2参照。)が設置される。散乱X線コリメータ120は、X線源100から照射されたX線のうち、被写体102などで散乱されたX線が、X線検出器104に入射するのを防ぐ。」

(3)「[0020] 次に、図2及び図3を用いて、X線検出器104の構造を説明する。図2は、本実施形態のX線検出器104の外観の一例を説明するための外観図である。また、図3は、X線検出器104の断面構造の一例を説明するための図であり、図2の位置1000での断面図である。」

(4)「[0025] ここでは、一例として、検出器モジュール400が2つの場合を例に挙げて、以下説明する。両者を区別する必要がある場合は、2つの検出器モジュール400にそれぞれ1、2の検出器モジュール番号を付す。また、各検出器モジュール400を構成する各要素についても同様で、区別する必要がある場合は、これらの検出器モジュール番号を符号の後に付加して記す。例えば、散乱X線コリメータ120の場合、120-1、120-2と記す。また、マトリックス状に配置された各X線検出素子161のスライス方向111の段数をスライス数、チャネル方向112の列数をチャネル数と呼ぶ。また、本実施形態では、一例として、1の検出器モジュール400内ではX線検出素子161が、スライス方向111に等間隔に配置される場合を例にあげて説明する。」

(5)「[0034] 本実施形態では、以上の工程に従ってX線検出器104を作製する。従って、検出器モジュール400の端部に特別な処理を施す工程がないため、例えば、検出器モジュール400内での光反射材132の厚さ201と検出器モジュール400端部での光反射材132の厚さ202とを一致させ、端部でのシンチレータ素子131の幅206と端部以外でのシンチレータ素子131の幅205とも一致させて作製することができる。ただし、検出器モジュール400間には隙間401が存在する。ここで、厚さ201は、検出器モジュール400内でのシンチレータ素子131間の距離203でもあり、また、厚さ202は、シンチレータ素子131から検出器モジュール400端部までの距離204でもある。以下、本実施形態では、端部のシンチレータ素子131(X線検出素子161)と検出器モジュール400の端部との距離204と、検出器モジュール400内でのシンチレータ素子131(X線検出素子161)間の距離201とが等しい場合を例にあげて説明する。従って、本実施形態では、検出器モジュール400-1と400-2とにまたがって隣接するX線検出素子161の中心211間の距離(モジュール間素子間距離)213は、検出器モジュール400内で隣接するX線検出素子161の中心間の距離(モジュール内素子間距離)212に比べて隙間401分広い。
[0035] また、本実施形態のX線検出器104では、各検出器モジュール400において、他の検出器モジュール400と隣接する面と反対側の面に、作製時の基準位置、すなわち、マーカ142及びマーカ143が設けられる。従って、検出器モジュール400の隣接面と反対の端部に近いX線検出素子161ほど、精度良く位置を決定できる。以下、本実施形態では、2つの検出器モジュール400が互いに隣接する側の面を隣接面と呼ぶ。
[0036] 次に、以上のように製造され、構成されるX線検出器104で検出した電気信号を信号収集装置109がデジタル信号に変換して得たローデータに対し、中央処理装置105が施すデータ処理について説明する。なお、本実施形態では、図7(a)は、本実施形態の中央処理装置105の機能ブロック図である。図7(b)は、中央処理装置105におけるデータの処理の流れを説明するための図である。本実施形態のX線CT装置10の中央処理装置105は、上述のように、ローデータから投影データを生成し、投影データに対して画像処理を行い再構成像を生成する。このため、図7(a)に示すように、ローデータから投影データを生成する補正部510と、投影データから再構成像を生成する再構成部520とを備える。また、補正部510が補正処理を施すために必要な補正用データを記憶する補正用データ記憶部530を備える。」

(6)「[0038] 図7(b)において、実線701は実計測時のデータの流れを示し、点線702は、補正用のデータの流れを示す。本図に示すように、信号収集装置109で生成されたローデータは、中央処理装置105に転送される。中央処理装置105では、補正部510が補正用データを用いてローデータに対し補正処理を行い、投影データを作成する。ローデータ、補正用データ及び補正処理の詳細については後述する。その後、再構成部520が、投影データに対し、コンボルーション(畳み込み)やバックプロジェクション(逆投影)等の処理を行い、再構成像を生成する。生成された再構成像は、表示装置106に表示される。」

(7)「[0041] また、各検出器モジュール400がスライス方向に隙間なくタイリングされた場合に想定されるスライス位置を、正規のスライス位置と呼び、実際にデータを取得したスライス位置を実スライス位置と呼ぶ。ここで所定倍率とは、例えば隙間を介した検出器モジュール400にそれぞれ設けられた基準位置と、所定倍された後に検出器モジュールが隙間無く配置されたときの基準位置とが一致する倍率である。なお、所定倍率は1倍を含み、検出器モジュール400の所定倍率だけ大きな検出器モジュールが、検出器モジュール400と同じサイズでも良い。」

(8)「[0076] なお、本実施形態では、図2と図3とに示すように、6チャネル4スライスのX線検出素子161を有する検出器モジュール400を2つタイリングして、6チャネル8スライスのX線検出器104を実現しているが、これらのチャネル数、スライス数、検出器モジュール400は一例であり、これに限られない。例えば、3つ以上の検出器モジュール400をスライス方向にタイリングして構成してもよい。」

(9)「[0092] さらに、上記実施形態では、位置補正処理を、補正部510で、他の補正処理の中で行うよう構成しているが、これに限られない。例えば、再構成部520が行うよう構成してもよい。この場合の処理の流れを図16に示す。本図に示すように、補正部510においては、オフセット補正処理(ステップS801)とリファレンス補正処理(ステップS803')と感度補正処理(ステップS804')とファントムキャリブレーション(ステップS805')とを行い投影データ923を生成する。得られた投影データ923に対し、再構成部520において、位置補正を行いながら、再構成像を生成する(再構成処理)。本構成は、例えば、ヘリカルスキャンにて、投影データを推定する際に有効である。これを、図17を用いて説明する。
[0093] 図17は、ヘリカルスキャンを行った際に得られるスキャンダイヤグラムであり、縦軸が被写体102に対する回転台101の回転角度、横軸が被写体102の回転軸方向(スライス方向111))の位置を表す。ここでは、X線検出器104のスライス数が8の場合を例示する。また、第m(m=1、2、...、8)番目のスライスの実データの取得位置(実スライス位置)を471-mと記す。
[0094] 図17に示すように、取得した実データから、例えば、位置470の再構成像は、図中で位置470に交差する複数のスライスの実データを用いる。再構成像を得る位置が、位置475のように、信号取得を行っていない位置の場合には、同一角度で撮影した近傍の複数のスライスの信号から、位置475での信号を推定する。ここでは、例えば、第2スライス471-2の位置476で得た信号と、第3スライス471-3の位置477で得た信号とから、線形補間により推定する。同様に、位置474においても信号を推定する必要がある。例えば、第4スライス471-4の位置472で得た信号と、第5スライス471-5の位置473で得た信号とから、線形補間により推定する。このとき、隙間値データ902を用い、隙間401の幅Dを考慮した座標にて推定を行うことにより、位置補正を行う。上記推定方法は一例であり、これに限られない。例えば、3スライス以上の信号を用いて、推定を行っても良い。この際、2次以上の多項式の補間関数を用いて推定してもよい。また、フィッティング関数を決定し、これを基に推定するよう構成してもよい。」


2 引用発明
上記1からみて、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。

「X線源100、X線検出器104、信号収集装置109、中央処理装置105、表示装置106、入力装置107、制御装置108、回転台101、及び寝台天板103を備えるヘリカルスキャンを行うX線CT装置10であって、
マトリックス状に配置された各X線検出素子161のスライス方向111の段数をスライス数、チャネル方向112の列数をチャネル数と呼び、6チャネル4スライスのX線検出素子161を有する検出器モジュール400を2つタイリングして、検出器モジュール400間には隙間401が存在する、6チャネル8スライスのX線検出器104を実現し、そのX線検出器104をチャネル方向112に8個備え、
中央処理装置105は、ローデータから投影データを生成する補正部510と、投影データから再構成像を生成する再構成部520と、補正部510が補正処理を施すために必要な補正用データを記憶する補正用データ記憶部530を備え、
補正部510から得られた投影データ923に対し、再構成部520において、位置補正を行いながら、投影データに対し、コンボルーション(畳み込み)やバックプロジェクション(逆投影)の処理を行い、再構成像を生成する(再構成処理)もので、
再構成部520は、ヘリカルスキャンを行った際に得られる、縦軸が被写体102に対する回転台101の回転角度、横軸が被写体102の回転軸方向(スライス方向111))の位置を表すスキャンダイヤグラム(第m(m=1、2、...、8)番目のスライスの実データの取得位置(実スライス位置)を471-mと記す。)において、取得した実データから、例えば、位置470の再構成像は、図中で位置470に交差する複数のスライスの実データを用い、再構成像を得る位置が、位置475のように、信号取得を行っていない位置の場合には、同一角度で撮影した近傍の複数のスライスの信号から、位置475での信号を推定する、例えば、第2スライス471-2の位置476で得た信号と、第3スライス471-3の位置477で得た信号とから、線形補間により推定し、同様に、位置474においても信号を推定する、例えば、第4スライス471-4の位置472で得た信号と、第5スライス471-5の位置473で得た信号とから、線形補間により推定し、このとき、隙間値データ902を用い、隙間401の幅Dを考慮した座標にて推定を行うことにより、位置補正を行う、
ヘリカルスキャンを行うX線CT装置10。」

第5 対比
1 本願発明4と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

(1)引用発明の「X線源100」及び「マトリックス状に配置された各X線検出素子161のスライス方向111の段数をスライス数、チャネル方向112の列数をチャネル数と呼び、6チャネル4スライスのX線検出素子161を有する検出器モジュール400」が、それぞれ、本願発明4の「放射線焦点から放射線を放射する放射線源」及び「検出素子がチャネル方向およびスライス方向に複数配列された検出器モジュール」に相当する。

(2)引用発明の「検出器モジュール400を2つタイリングして、検出器モジュール400間には隙間401が存在する、6チャネル8スライスのX線検出器104を実現し、そのX線検出器104をチャネル方向112に8個備え」たものが、本願発明4の「検出器モジュールがチャネル方向およびスライス方向に複数配設されており、スライス方向の検出器モジュール間に間隙が形成されている放射線検出器」に相当する。

(3)引用発明の「ローデータ」は「X線源100」及び「X線検出器104」を使用した「ヘリカルスキャン」により得られたものであるから、「ローデータから」「生成」された「投影データ」が、本願発明4の「前記放射線源および放射線検出器を用いたスキャンにより得られた投影データ」に相当する。
すると、引用発明の「投影データから再構成像を生成する再構成部520」が、本願発明4の「前記放射線源および放射線検出器を用いたスキャンにより得られた投影データに基づいて画像再構成する再構成手段」に相当する。

(4)引用発明は、「ヘリカルスキャンを行うX線CT装置10」であって、「コンボルーション(畳み込み)やバックプロジェクション(逆投影)の処理を行い、再構成像を生成する(再構成処理)もので」であるから、「X線検出素子161」の位置を記憶する記憶部を備えることは自明である。
すると、引用発明は、本願発明4の「個々の検出素子の位置情報を記憶する記憶手段」に相当する構成を備えているといえる。

(5)引用発明の「スキャンダイヤグラム」における「第m(m=1、2、...、8)番目のスライスの実データの取得位置(実スライス位置)」「471-m」は、それぞれ、「6チャネル8スライスのX線検出器104」の「スライス方向111」に並べた8つの「X線検出素子161」で実データを取得する位置を示すものである。
また、引用発明では、「投影データに対し、コンボルーション(畳み込み)やバックプロジェクション(逆投影)の処理を行い、再構成像を生成する(再構成処理)もので」あるから、「再構成像を得る」「位置470」、「位置475」及び「位置474」は、本願発明4の「前記放射線焦点から画像再構成空間における再構成対象の画素を通って直線的に延びる放射線パスと前記放射線検出器の検出面との交差点」に相当するといえる。
すると、引用発明の「位置475」についての「同一角度で撮影した近傍」である「第2スライス471-2の位置476」と「第3スライス471-3の位置477」、及び「位置474」についての「同一角度で撮影した近傍」である「第4スライス471-4の位置472」と「第5スライス471-5の位置473」が、本願発明4の「前記放射線焦点から画像再構成空間における再構成対象の画素を通って直線的に延びる放射線パスと前記放射線検出器の検出面との交差点の近傍」に相当し、そして、引用発明4の「位置476」、「位置477」、「位置472」及び「位置473」「で得た信号」が、本願発明4の「交差点の近傍に位置する複数の検出素子により得られた各実データ」に相当する。
また、引用発明の「線形補間により推定」することが、本願発明4の「前記交差点の位置情報と前記記憶手段に記憶されている該複数の検出素子の位置情報とを基に定められた重み係数により加重加算する補間」に相当することは、当業者には明らかである。
以上の検討から、引用発明の「再構成像を得る位置が、位置475のように、信号取得を行っていない位置の場合には、同一角度で撮影した近傍の複数のスライスの信号から、位置475での信号を推定する、例えば、第2スライス471-2の位置476で得た信号と、第3スライス471-3の位置477で得た信号とから、線形補間により推定し、同様に、位置474においても信号を推定する、例えば、第4スライス471-4の位置472で得た信号と、第5スライス471-5の位置473で得た信号とから、線形補間により推定し、このとき、隙間値データ902を用い、隙間401の幅Dを考慮した座標にて推定を行うことにより、位置補正を行う」が、本願発明4の「前記放射線焦点から画像再構成空間における再構成対象の画素を通って直線的に延びる放射線パスと前記放射線検出器の検出面との交差点の近傍に位置する複数の検出素子により得られた各実データを、前記交差点の位置情報と前記記憶手段に記憶されている該複数の検出素子の位置情報とを基に定められた重み係数により加重加算する補間を行って、前記放射線パスによる投影データを生成」することに相当する。

(6)引用発明の「再構成部520において、」「投影データに対し、コンボルーション(畳み込み)やバックプロジェクション(逆投影)の処理を行い、再構成像を生成する(再構成処理)」ことが、本願発明4の「前記再構成手段は、」「該投影データに基づいて」「前記再構成対象の画素を再構成する」ことに相当する。

(7)引用発明の「X線源100、X線検出器104、信号収集装置109、中央処理装置105、表示装置106、入力装置107、制御装置108、回転台101、及び寝台天板103を備えるヘリカルスキャンを行うX線CT装置10」が本願発明4の「放射線源と、」「放射線検出器と、」「再構成手段と、を備えた放射線断層撮影装置」に相当する。

(8)したがって、本願発明4と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

2 一致点
「放射線焦点から放射線を放射する放射線源と、
検出素子がチャネル方向およびスライス方向に複数配列された検出器モジュールがチャネル方向およびスライス方向に複数配設されており、スライス方向の検出器モジュール間に間隙が形成されている放射線検出器と、
前記放射線源および放射線検出器を用いたスキャンにより得られた投影データに基づいて画像再構成する再構成手段と、を備えた放射線断層撮影装置であって、
個々の検出素子の位置情報を記憶する記憶手段を備え、
前記再構成手段は、前記放射線焦点から画像再構成空間における再構成対象の画素を通って直線的に延びる放射線パスと前記放射線検出器の検出面との交差点の近傍に位置する複数の検出素子により得られた各実データを、前記交差点の位置情報と前記記憶手段に記憶されている該複数の検出素子の位置情報とを基に定められた重み係数により加重加算する補間を行って、前記放射線パスによる投影データを生成し、該投影データに基づいて前記再構成対象の画素を再構成する、放射線断層撮影装置。」

3 相違点
投影データに基づいて前記再構成対象の画素を再構成するために用いる手法が、本願発明4では、「3次元画像再構成法」であるのに対して、
引用発明では、「投影データに対し、コンボルーション(畳み込み)やバックプロジェクション(逆投影)の処理を行い、再構成像を生成する(再構成処理)」ではあるが、3次元画像再構成法であるかは不明である点。

第6 判断
(1)相違点について
本願の明細書には「画像再構成には、3次元画像再構成法を用いる。本例では、3次元画像再構成法として、コーンビーム画像再構成法などの3次元逆投影法を用いる。」(段落【0033】)と記載されている。
そして、引用発明1は、「バックプロジェクション(逆投影)の処理を行」うものであり、また、引用発明1のようなマルチスライスヘリカルスキャンX線CT装置では、照射されるX線はコーンビームであることは技術常識であることから、コーンビーム再構成法のような3次元画像再構成法により画像再構成を行っているものと解するのが、当業者には自然な解釈である。
そうすると、引用発明の「再構成像を生成する(再構成処理)」は3次元画像再構成法であると認められる。
よって、上記相違点は、実質的な相違点ではない。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明である。
仮に、引用発明の「再構成像を生成する(再構成処理)」が、本願発明1の「3次元画像再構成法」でなかったとしても、画像再構成法として、3次元画像再構成法は普通に用いられているから、引用発明の「再構成像を生成する(再構成処理)」として、3次元画像再構成法を採用して相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)効果について
このように構成したことによる作用効果は、当業者の予測の範囲を超えるものではない。

(3)請求人の主張について
請求人は、令和1年6月21日付け意見書で、本願発明について、「引用発明の段落0094に記載された「再構成像を得る位置」は、段落0094の記載から、図17に示された位置470であり、被写体102において再構成像を得るスライス面の位置であるので、本願発明における「再構成対象」(本願の図4及び明細書の段落0036等における「再構成対象の断層像G」に相当)に該当する。
従って、引用発明の「再構成像を得る位置」は、本願発明の「前記放射線焦点から画像再構成空間における再構成対象の画素を通って直線的に延びる放射線パスと前記放射線検出器の検出面との交差点」に相当するものではない。」と主張するが、「位置470」は「スキャンダイヤグラム」上の位置であるから、「再構成対象」ではないことは明らかであり、請求人が何を主張しているのか不明であり、採用できない。
さらに、「引用発明では、上記拒絶理由通知書においても指摘されているように、「再構成像を得る位置が、位置475のように、信号取得を行っていない位置の場合には、同一角度で撮影した近傍の複数のスライスの信号」である「第2スライス471-2の位置476で得た信号と、第3スライス471-3の位置477で得た信号」とから、「位置475での信号を、」「線形補間により推定」し、「同様に、」「第4スライス471-4の位置472で得た信号と、第5スライス471-5の位置473で得た信号と」(拒絶理由通知書においては「第2スライス471-2の位置476で得た信号と、第3スライス471-3の位置477で得た信号と」とあるがこれは誤記と思われる)から、「隙間値データ902を用い、隙間401の幅Dを考慮した座標にて」、「位置474」の「信号を推定し」、「再構成部520において、位置補正を行いながら、再構成像を生成する(再構成処理)」ようになっている。このような再構成法において、位置475の信号を補間によって推定する際に用いられる第2スライス471-2の位置476及び第3スライス471-3の位置477は、位置475をX線検出器104の検出面に対して垂直な方向に投影してX線検出器104と交差する位置の近傍の位置である。同様に、位置474の信号を補間によって推定する際に用いられる第4スライス471-4の位置472と、第5スライス471-5の位置473についても、位置475をX線検出器104の検出面に対して垂直な方向に投影してX線検出器104と交差する位置の近傍の位置である。従って、引用発明において、放射線焦点から再構成対象の画素を通って直線的に延びる放射線パスは想定されておらず、コーン角を考慮した3次元画像再構成法ではない。」とも主張するが、「位置475」も「スキャンダイヤグラム」上の位置であるから、「位置475をX線検出器104の検出面に対して垂直な方向に投影して」という記載(「位置474」についても同様)の意味が不明であって、請求人が何を主張しているのか不明であり、採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明4は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、または、本願発明4は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-07-11 
結審通知日 2019-07-16 
審決日 2019-07-30 
出願番号 特願2013-16272(P2013-16272)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A61B)
P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 信田 昌男
▲高▼見 重雄
発明の名称 画像生成装置および放射線断層撮影装置並びにプログラム  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小島 猛  
代理人 澤木 亮一  

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