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審決分類 審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A61M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A61M
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A61M
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A61M
管理番号 1358178
審判番号 不服2018-12126  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-10 
確定日 2020-01-14 
事件の表示 特願2015-500490「カテーテルアダプタのポート弁」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月19日国際公開、WO2013/138229、平成27年 4月 2日国内公表、特表2015-509815、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)3月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年(平成24年)3月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年11月12日 :翻訳文の提出
平成28年11月11日付け :拒絶理由通知(以下「最初の拒絶理由通知」という。)
平成29年 2月22日 :意見書及び手続補正書の提出
平成29年 7月27日付け :拒絶理由通知<最後>(以下「最後の拒絶理由通知」という。)
平成29年11月 1日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 4月25日付け :補正の却下の決定、拒絶査定
平成30年 9月10日 :審判請求書の提出

また、本件審判請求の趣旨は、「「原査定を取り消す。本願の発明はこれを特許すべきものとする。」、との審決を求める」ものであり、本件審判請求は、請求の理由の「(5)むすび」において、「本願発明について平成29年11月1日付け手続補正書により行った補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第17条の2第5項の規定の要件を満たすとともに、本願の請求項1および請求項2に係る発明は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであり、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明であり、同法第17条の2第4項に規定する要件を満たしている」と主張するものであることから、平成30年4月25日付けの補正の却下の決定に対して不服の申し立てがあるものと認められる。

第2 平成30年4月25日付けの補正の却下の決定の適否
上記第1のとおり、請求人は平成30年4月25日付けの補正の却下の決定に対して不服の申し立てを主張していると認められるので、上記補正の却下の決定の適否について検討する。

[補正却下の決定の結論]
平成30年4月25日付け補正の却下の決定を取り消す。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
最後の拒絶理由通知後の平成29年11月1日付けの手続補正により補正(以下「本件補正」という。)された特許請求の範囲は、次のとおりである(下線は、補正箇所を明確にするため、当審が付与した。)。
「【請求項1】
末端および基端と、該末端と該基端との間に延びる内腔を有するカテーテルアダプタと、
前記カテーテルアダプタの側壁に配設され、ルアーねじを含むポートの本体を有し、前記内腔と外部環境との間に開口を形成するポートと、
前記ポートに結合され、前記ポートの前記開口を封止するルアーアクセス弁と、
前記カテーテルアダプタの前記内腔内に配設されたセプタムと、
前記セプタムの基端で前記内腔内に配設されたセプタムアクティベータと、
前記カテーテルアダプタの側壁から外側に延び、該カテーテルアダプタの側壁に結合されたボタンであって、前記セプタムアクティベータに結合され、該ボタンが押される場合、前記セプタムを通じて前記セプタムアクティベータを末端方向に移動させるように構成されるボタンと、
を含むカテーテルアッセンブリー。
【請求項2】
前記ボタンが、前記内腔に向かって内側に押されるように構成され、前記セプタムを開くように、前記ボタンの内側への移動を、前記セプタムアクティベータの末端方向の移動に変換する変換機構をさらに含む請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
最初の拒絶理由通知後の本件補正前である平成29年2月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。
「【請求項1】
末端および基端と、該末端と該基端との間に延びる内腔を有するカテーテルアダプタと、
前記カテーテルアダプタの前記内腔内に配設されたセプタムと、
前記セプタムの基端で前記内腔内に配設されたセプタムアクティベータと、
前記カテーテルアダプタの側壁から外側に延び、該カテーテルアダプタの側壁に結合されたボタンであって、前記セプタムアクティベータに結合され、該ボタンが押される場合、前記セプタムを通じて前記セプタムアクティベータを末端方向に移動させるように構成されるボタンと、
を含むカテーテルアッセンブリー。
【請求項2】
前記ボタンが、前記内腔に向かって内側に押されるように構成され、前記セプタムを開くように、前記ボタンの内側への移動を、前記セプタムアクティベータの末端方向の移動に変換する変換機構をさらに含む請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。」

(3)最初の拒絶理由通知前の特許請求の範囲の記載
最初の拒絶理由通知前の平成26年11月12日付けの翻訳文に記載された特許請求の範囲は、次のとおりである。
「【請求項1】
末端および基端と、該末端と該基端との間に延びる内腔と、を有するカテーテルアダプタと、
前記カテーテルアダプタの側壁に配設され、前記内腔と外部環境との間に開口を形成するポートと、
前記ポートに結合され、前記ポートの前記開口を封止する弁と、
を含むカテーテルアッセンブリー。
【請求項2】
前記弁が、二方弁である請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項3】
前記弁が、貫通するスリットを有するエラストマーセプタム含む請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項4】
前記弁が、ルアーアクセス弁であり、前記ポートの本体が、ルアーねじを含む請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項5】
前記ポートの本体が、ルアーねじを含み、前記弁が、前記ルアーねじに選択的に結合されるルアーアクセスコネクタに結合される請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項6】
前記カテーテルアダプタが、
前記ポートの基端の位置で前記内腔内に配設されたニードルセプタムと、
前記カテーテルアダプタの前記末端に結合されたカテーテルと、
をさらに含む請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項7】
前記カテーテルアダプタが、セプタムと、前記内腔内に配設されたセプタムアクティベータと、をさらに含む請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項8】
前記ポートが、前記カテーテルアダプタの縦軸線に対して約15°から約90°までの間の角度で配設される請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項9】
前記弁が、ボール弁、または、アイリスバルブである請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項10】
前記弁が、アイリスバルブである請求項1に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項11】
末端および基端と、該末端と該基端との間に延びる内腔を有するカテーテルアダプタと、
前記カテーテルアダプタの前記内腔内に配設されたセプタムと、
前記セプタムの基端で前記内腔内に配設されたセプタムアクティベータと、
前記カテーテルアダプタの側壁に配設され、前記内腔と外部環境との間に開口を形成するポートと、
前記ポートに結合され、該ポートの前記開口を封止する弁と、
を含むカテーテルアッセンブリー。
【請求項12】
前記弁が、二方弁である請求項11に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項13】
前記ポートが、前記内腔内の前記セプタムの基端にある該内腔に沿った位置に配設されている請求項11に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項14】
前記弁が、貫通するスリットを有するエラストマーセプタムを含むルアーアクセスバルブである請求項11に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項15】
前記ポートの本体部が、1以上のルアーねじを含む請求項13に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項16】
前記カテーテルアダプタが、前記カテーテルアダプタの前記末端に結合されたカテーテルをさらに含む請求項11に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項17】
前記ポートが、前記カテーテルアダプタの縦軸線に対して約15°から約90°までの間の角度で配設される請求項11に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項18】
前記弁が、ボール弁、または、アイリスバルブである請求項11に記載のカテーテルアッセンブリー。
【請求項19】
末端および基端と、該末端と該基端との間に延びる内腔を有するカテーテルアダプタと、
前記カテーテルアダプタの前記内腔内に配設されたセプタムと、
前記セプタムの基端で前記内腔内に配設されたセプタムアクティベータと、
前記カテーテルアダプタの側壁から外側に延び、該カテーテルアダプタの側壁に結合されたボタンであって、前記セプタムアクティベータに結合され、該ボタンが押される場合、前記セプタムを通じて前記セプタムアクティベータを末端方向に移動させるように構成されるボタンと、
を含むカテーテルアッセンブリー。
【請求項20】
前記ボタンが、前記内腔に向かって内側に押されるように構成され、前記セプタムを開くように、前記ボタンの内側への移動を、前記セプタムアクティベータの末端方向の移動に変換する変換機構をさらに含む請求項19に記載のカテーテルアッセンブリー。」

(4)補正事項
上記(1)及び(2)から、本件補正は、以下の補正事項からなるものである。
すなわち、本件補正前の請求項1に記載された「カテーテルアッセンブリー」について、「ポート」及び「ルアーアクセス弁」を含み、当該「ポート」が、「前記カテーテルアダプタの側壁に配設され」たものであること(以下「補正事項1」という。)、「ルアーねじを含むポートの本体を有し、前記内腔と外部環境との間に開口を形成する」ものであること(以下「補正事項2」という。)を特定し、かつ、「ルアーアクセス弁」が、「前記ポートに結合され、前記ポートの前記開口を封止する」ものであること(以下「補正事項3」という。)を特定するものである。

2 最初の拒絶理由通知に記載した理由の概要
最初の拒絶理由通知に記載した理由の概要は、次のとおりである。
「1.(発明の単一性)この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。

2.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(発明の単一性)について
1.特別な技術的特徴に基づく審査対象の決定
請求項1?3に係る発明は、引用文献1により新規性が欠如しており、特別な技術的特徴を有しない。次に、請求項4に係る発明に「弁が、ルアーアクセス弁であり、前記ポートの本体が、ルアーねじを含む」という特別な技術的特徴が発見された。
したがって、それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した請求項1?4に係る発明と、当該特別な技術的特徴と同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する、請求項5-10に係る発明とを、審査対象とする。

2.審査の効率性に基づく審査対象の決定
請求項11-18に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明である。しかしながら、請求項1に係る発明に対して追加された請求項11に係る発明の技術的特徴はセプタムアクティベータであるのに対し、請求項1に係る発明の技術的特徴は弁であるため、両者の技術的関連性は低い。
請求項19-20に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明ではない。そして、請求項11-18、19-20に係る発明は、審査対象とされた発明を審査した結果、実質的に追加的な先行技術調査や判断を必要とすることなく審査を行うことが可能である発明ではなく、当該発明とまとめて審査を行うことが効率的であるといえる他の事情も無い。

したがって、請求項11-18、19-20に係る発明は、特許法第37条以外の要件についての審査対象としない。

この出願は特許法第37条の規定に違反しているので、請求項1-10以外の請求項に係る発明については同法第37条以外の要件についての審査を行っていない。
なお、この出願は出願日が平成19年4月1日以降であるから、補正に当たっては、同法第17条の2第4項に違反する補正とならないよう、注意されたい。

●理由2(新規性)、理由3(進歩性)について
・請求項 1
・引用文献等 1
・備考
引用文献1には、末端および基端と、該末端と該基端との間に延びる内腔と、を有するカテーテルアダプタと、カテーテルアダプタの側壁に配設され、内腔と外部環境との間に開口を形成するポートと、ポートに結合され、ポートの開口を封止する弁と、を含むカテーテルアッセンブリーが、記載されている。(例えば、4頁右上欄及び図6等参照)
よって、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

・請求項 2-3
・引用文献等 1
・備考
引用文献1には、 弁が、二方弁であるカテーテルアッセンブリー、弁が、貫通するスリットを有するエラストマーセプタム含むカテーテルアッセンブリーが、記載されている。

●理由3(進歩性)について
・請求項 4-6
・引用文献等 1
・備考
弁が、ルアーアクセス弁であり、ポートの本体が、ルアーねじを含む点自体は、通常採用される技術である。
引用文献1には、ニードルセプタムと、カテーテルとを含むカテーテルアッセンブリーが、記載されている。

・請求項 7-8
・引用文献等 1-2
・備考
引用文献2には、カテーテルアダプタが、セプタムと、内腔内に配設されたセプタムアクティベータとを含むカテーテルアッセンブリー、ポートが、カテーテルアダプタの縦軸線に対して約15°から約90°までの間の角度で配設されるカテーテルアッセンブリーが、記載されている。(例えば、図21、22等参照)

・請求項 9-10
・引用文献等 1-3
・備考
引用文献3には、 弁が、ボール弁、または、アイリスバルブである点が、記載されている。(例えば、図1-3等参照)

<引用文献等一覧>
1.特開昭62-167571号公報
2.米国特許出願公開第2011/0160662号明細書
3.特表2010-514535号公報」

3 最後の拒絶理由通知に記載した理由の概要
最後の拒絶理由通知に記載した理由の概要は、次のとおりである。
「(発明の特別な技術的特徴を変更する補正)平成29年2月22日付け手続補正書でした補正は、その補正後の下記の請求項に係る発明が下記の点で、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものではないから、同法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。



●理由(発明の特別な技術的特徴を変更する補正)について
・請求項 1-2
1.特別な技術的特徴に基づく審査対象の決定
平成28年11月11日付け拒絶理由通知書においては、補正前の請求項4に係る発明に「弁が、ルアーアクセス弁であり、前記ポートの本体が、ルアーねじを含む」という特別な技術的特徴が発見されたことが記載されている。
そして、請求項1-2に係る発明は、前記特別な技術的特徴と同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する発明ではない。

2.審査の効率性に基づく審査対象の決定
請求項1-2に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明ではない。そして、請求項1-2に係る発明は、審査対象とされた発明を審査した結果、実質的に追加的な先行技術調査や判断を必要とすることなく審査を行うことが可能である発明ではなく、当該発明とまとめて審査を行うことが効率的であるといえる他の事情も無い。

したがって、請求項1-2に係る発明は、特許法第17条の2第4項以外の要件についての審査対象としない。」

4 平成30年4月25日付け補正の却下の決定の概要
平成30年4月25日付け補正の却下の決定の概要は、以下のとおりである。
平成29年11月1日付け手続補正書の請求項1に記載されたセプタムとセプタムアクティベータとボタンを有する点(図10参照)とルアーねじを含むポートとルアーアクセス弁を有する点(図6参照)の両方の構成を備えているカテーテルアッセンブリーは、翻訳文に記載されておらず、また、翻訳文の記載から自明な事項ということはできないから、平成29年11月1日付け手続補正書においてした補正は、新規事項の追加に該当する。
したがって、平成29年11月1日付け手続補正書においてした補正は、翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

5 本件補正の却下の決定の当否についての検討
(1)翻訳文の記載
翻訳文の段落【0022】には「ポート30は、カテーテルアダプタ14の側壁32から外側に延びる1以上の一体化した本体部を有するポート本体36を含むことができる。」及び「ポート本体36は、内腔18の入口44と開口34との間に延びる穴48を画定することができる。」と記載され、段落【0023】には「様々な実施例では、ポート本体36の外面は、はめ合い装置相互間をもたらし連結するように利用できるあらゆるねじ構成で1以上のルアーねじ50を含むことができる。」と記載され、段落【0029】には「ポート30は、取り外し可能な弁40に結合することができる。取り外し可能な弁40は、ルアーねじ50などを介しポート本体36に選択的に結合することができる。例えば、取り外し可能な弁40は、取り外し可能なルアーアクセスコネクタ(luer access connector)80に結合することができる。」と記載され、段落【0030】には「ルアーアクセスコネクタ80をポート本体36のルアーねじ50に選択的に固定することができる。」と記載され、段落【0033】には「図8にさらに示すように、いくつかの実施例では、ポート30および弁40は、血液制御型のカテーテルアッセンブリー10と共に使用される。血液制御型のカテーテルアッセンブリー10は、通常、カテーテルアッセンブリー10の内腔16内に配設された血液制御用セプタム110を含む。この血液制御用セプタム110は、ルアー装置(図示せず)がカテーテルアダプタ14の基端28に挿入されている場合、セプタムアクティベータ112により、開くことができる。」と記載され、段落【0035】には「ここで図8に示した血液制御型のカテーテルアッセンブリー10の構成部品を具体的に参照する。示されるように、カテーテルアッセンブリー14は、カテーテルアダプタ14の内腔16内に配置される血液制御用セプタム110を有することができる。セプタムアクティベータ112は、血液制御用セプタム110の背後の位置で内腔16内に配置可能とされる。」と記載され、段落【0038】には「ここで、図10に変わると、いくつかの実施例では、血液制御型のカテーテルアッセンブリー10のセプタムアクティベータ112は、ポート30にあるボタン130を押すことにより、作動、および/または、作動しないものとされる。」及び「動作時、セプタムアクティベータ112は、ボタン130が最初に押される場合、セプタム110を通じて末端方向に前進可能とされ、ボタン130が2回目に押される場合、セプタム110から引き抜き可能とされる。いくつかの構成では、ボタン130は側壁32に結合され、カテーテルアダプタ14から外側に延在する。」と記載され、段落【0039】には「いくつかの構成は、必要に応じて、血液を制御する弁を手動で作動および作動させない能力を医療従事者にもたらすことができる押しボタンのセプタムアクティベータを含む。」と記載されている。
また図8には、カテーテルアダプタ14の側壁に1つのポート30が設けられたカテーテルアッセンブリー10が、図10にはカテーテルアダプタ14の内腔内にセプタムが配置され、その基端側にセプタムアクティベータ112が配置される点が、図1にはポート本体36の入口44は外部に開口する点、が見て取れる。
ここで、段落【0033】、【0035】、図8の記載から、図8に記載された血液制御型のカテーテルアッセンブリー10は、「末端26および基端28と、該末端26と該基端28との間に延びる内腔16を有するカテーテルアダプタ14と、前記カテーテルアダプタ14の側壁にポート30が設けられ、前記カテーテルアダプタ14の前記内腔16内に配設されたセプタム110と、前記セプタム110の基端で前記内腔16内に配設されたセプタムアクティベータ112と、ルアー装置がカテーテルアダプタ14の基端28に挿入されている場合、前記セプタム110を通じて前記セプタムアクティベータ112を末端26方向に移動させるように構成されるカテーテルアッセンブリー10」、であるといえる。

(2)判断
本件補正により新たに特定された事項を、補正事項1?3に分けて検討する。
ア 補正事項1について
補正事項1について、上記(1)の記載を踏まえると、段落【0038】には、セプタムアクティベータ112は、ポート30にあるボタン130を押すことにより、セプタム110に対して前進や引き抜きが可能である点が記載されるとともに、ボタン130は側壁32に結合され、カテーテルアダプタ14から外側に延在する点が記載されているといえ、段落【0039】には、必要に応じて押しボタンのセプタムアクティベータを含む点が記載されているといえ、図10には、カテーテルアダプタ14の内腔内にセプタムアクティベータ112が設けられる点が見て取れることから、図8に記載されたポート30を有する血液制御型のカテーテルアッセンブリー10において、カテーテルアッセンブリー10のカテーテルアダプタ14の内腔内に設けられたセプタムアクティベータ112を、段落【0038】、【0039】及び図10に記載されるようなセプタムアクティベータ112にするとともに、その動作を側壁32に結合され、カテーテルアダプタ14から外側に延在するボタン130により行い得る構成とすることは、翻訳文及び図面の記載から自明である。
イ 補正事項2について
補正事項2について、上記(1)の記載を踏まえると、段落【0022】には、ポート30がポート本体36を含むとともに、ポート本体36は入口44を有する点が記載されているといえ、段落【0023】には、ポート本体36はルアーねじ50を有する点が記載されているといえ、図1には、ポート本体36の入口44は外部に開口する点が見て取れることから、図8に記載されたポート30を有する血液制御型のカテーテルアッセンブリー10における、その側壁に設けられたポート30について、段落【0022】、【0023】及び図1に記載されるようなルアーねじ50を有するポート本体36を有し、外部に開口する入口44を備えた構成とすることは、翻訳文及び図面の記載から自明である。
ウ 補正事項3について
補正事項3について、上記(1)の記載を踏まえると、段落【0029】の記載から、ルアーアクセスコネクタ(luer access connector)80を備えた取り外し可能な弁40は、ポート30に結合される、といえることから、図8に記載されたポート30を有する血液制御型のカテーテルアッセンブリー10における、その側壁に設けられたポート30について、ポート30の開口を封止する、ルアーアクセスコネクタを備えた弁40をポート30に結合する構成とすることは、翻訳文及び図面の記載から自明である。

上記ア、イから、セプタムとセプタムアクティベータとボタンを有する点と、ルアーねじを含むポートとルアーアクセス弁を有する点の両方の構成を備えているカテーテルアッセンブリーは翻訳文に記載されているといえ、本件補正1?3は翻訳文に記載された範囲内のものであるから、本件補正は翻訳文に記載された範囲内である。

(3)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしている。

6 本件補正の適法性に関する検討
(1)発明の特別な技術的特徴を変更する補正であるか否かの検討
ア 特許法第17条の2第4項は、次の(ア)及び(イ)の発明の間で、同法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならないと規定する。
(ア)補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明
(イ)その後の補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明
そして、「特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明」とは、新規性進歩性等の特許要件についての判断が示された発明をいう(特許法逐条解説第20版を参照。)ことから、本件補正において、上記(ア)の発明とは、最初の拒絶理由通知の前の特許請求の範囲の請求項1?10に係る発明(以下それぞれの発明を「当初発明1」等という。)、つまり、平成26年11月12日付け翻訳文に記載された特許請求の範囲の請求項1?10に係る発明を指し、上記(イ)の発明とは、本件補正後の請求項1、2に係る発明を指すこととなる。
なお、本件補正前の請求項1、2に係る発明は、平成29年7月27日付け最後の拒絶理由通知に「請求項1-2に係る発明は、特許法第17条の2第4項以外の要件についての審査対象としない。」と記載されていることからもわかるとおり、特許要件についての判断がなされていないことから、上記(ア)の発明には該当しない。

イ そこで、当初発明1?10に係る発明と本件補正後の請求項1、2に係る発明について、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たすか否かについて検討する。
その検討において、特許請求の範囲に記載された発明のうち、発明の単一性の要件を満たす一群の発明(同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する一群の発明)のほか、一定の要件を満たす発明については、同法第37条以外の要件についての審理対象とする。そして、当該審理対象とならない発明がある場合にのみ、特許出願が特許法第37条の要件を満たさないと判断する。
したがって、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たすか否かについての検討は、特別な技術的特徴に基づく審理対象の決定及び審理の効率性に基づく審理対象の決定について行う。

(ア)引用文献1の記載事項と引用発明
あ 最初の拒絶理由通知で引用された優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1(特開昭62-167571号公報)には、図面とともに、次の記載がある。
(あ)「本発明によれば、ヒト又は動物の体から液体を採取し又はこれらに液体を注入するために使用する装置であって、流体を受理するためのチャンバー及び該チャンバー及び連絡するカニューレを有し、開放条件下で該チャンバーを液体の供給源又は排出先と連絡しそして閉止条件下でこれらから該チャンバーを封止するように機能する少なくとも1つの弁手段、及び前記チャンバーから空気が脱出することを許容するがしかし該チャンバーから液体が脱出することを防止する少なくとも1つのチャンバーガス抜き手段を含むことを特徴とする装置が開示される。」(第2ページ左下欄第13行?右下欄第4行)
(い)「好ましくは、前記カニューレがチャンバーの1端と連絡し、第1弁手段がチャンバーの反対の末端に位置して長い部材を収容できるようになっており、そして第2弁手段がチャンバーの側方口中の中間的位置に位置している。この配置の利点は、液体を注入又は採取するための第2の手段が、第2弁手段を通して設けられることである。」(第3ページ左上欄第1行?第7行)
(う)「第6図は、シリコンゴム弁(19)を収容する追加の側部口(18)を有する他の装置を示す。」(第4ページ右上欄第3行?第4行)
(え)「チャンバー(1)はカニューレの挿入の際逆流チャンバーとして機能し、従ってチャンバーに血液が入ったことが観察できるようにチャンバーは好ましくは透明材料製である。」(第4ページ右上欄第20行?左下欄第3行)
(お)「第6図


(か)第6図から、側部口はチャンバーの側部に設けられ、外部に開口を有するように形成される点が見て取れる。
(き)(い)の記載から、チャンバーはカニューレと連結する1端、及び、第1弁手段を有する末端を有するといえ、(あ)及び(え)の記載から、チャンバーは流体を受理できるとともにカニューレ及び弁手段と連絡し、チャンバーに血液が入ったことを確認できることから、チャンバーは1端と末端との間に延びる内腔を有する、といえる。

い 上記(あ)?(き)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「1端及び末端と、該1端と該末端との間に延びる内腔と、を有するチャンバーと、
前記チャンバーの側部に設けられ、前記チャンバーと外部との間に開口を形成する側部口と、
前記側部口にシリコンゴム弁が収容される、
液体を採取し又はこれらに液体を注入するために使用する装置。」

(イ)対比・判断
あ 当初発明1について
当初発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「1端」は、その作用及び機能からみて、当初発明1の「末端」に相当し、以下同様に、「末端」は「基端」に、「チャンバー」は「カテーテルアダプタ」に、「側部」は「側壁」に、「外部」は「外部環境」に、「側部口」は「ポート」に、「シリコンゴム弁」は「弁」に、「液体を採取し又はこれらに液体を注入するために使用する装置」は「カテーテルアッセンブリー」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「側部口にシリコンゴム弁が収容される」態様は、上記(ア)あ(あ)の記載から、閉止条件下でチャンバーを封止するように機能するとともに、上記(ア)あ(い)の記載から、弁を介して液体を注入又は採取することができることから、当初発明1の「ポートに結合され、前記ポートの前記開口を封止する」態様に相当する。
そうすると、当初発明1と引用発明とは同一である。
い 当初発明2について
当初発明2と引用発明を対比すると、上記「あ」で示した点で一致し、さらに引用発明の「シリコンゴム弁」は、上記(ア)あ(い)の記載から、弁を介して液体を注入又は採取することができるといえ、当初発明2の「二方弁」に相当する。
そうすると、当初発明2と引用発明とは同一である。

(ウ)特別な技術的特徴に基づく審理対象の決定
上記(イ)のとおり、当初発明1及び2に係る発明は引用発明と同一であり、先行技術に対する貢献がないことから、発明の特別な技術的特徴を有しない。
また、当初発明3?10に係る発明及び本件補正後の請求項1、2に係る発明は、当初発明2に係る発明の発明特定事項の全てを含まないことから、当初発明1?10に係る発明及び本件補正後の請求項1、2に係る発明は、同一の又は対応する発明の特別な技術的特徴を有しない。

(エ)審理の効率性に基づく審理対象の決定
本件補正後の請求項1、2に係る発明は、当初発明1に係る発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明である。
また、当初発明1に係る発明と、本件補正後の請求項1、2に係る発明が解決しようとする課題は、いずれも信頼性の高い封止機能を与えることであり、本件補正後の請求項1、2に係る発明の当初発明1に対して追加された技術的特徴である、カテーテルアダプタの内腔内に配設されたセプタムは、信頼性の高い封止機能を与えるために配設されたものであるといえるから、本件補正後の請求項1、2に係る発明の当初発明1に対して追加された技術的特徴は、当初発明1に係る発明の技術的特徴との技術的関連性が低い、とはいえない。
したがって、本件補正後の請求項1、2に係る発明は、まとめて審理をすることが効率的である発明として特許法第37条の要件以外の要件についての審理対象とするものである。

(オ)小括
上記(エ)のとおり、本件補正後の請求項1、2に係る発明は、まとめて審理をすることが効率的である発明として特許法第37条の要件以外の要件についての審理対象とするものであることから、当初発明1に係る発明と本件補正後の請求項1、2に係る発明は、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定する要件を満たしている。

(2)補正の目的
本件補正は、上記1(4)のとおり、本件補正前の請求項1に記載された「カテーテルアッセンブリー」について、「前記カテーテルアダプタの側壁に配設され、ルアーねじを含むポートの本体を有し、前記内腔と外部環境との間に開口を形成するポートと、前記ポートに結合され、前記ポートの前記開口を封止するルアーアクセス弁と、を含む」ことを付加するものである。
してみると、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項を特定するものであるといえ、そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項2に記載された発明特定事項を特定するものであるといえ、本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1、2に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。

(3)独立特許要件について
ア 本件補正発明
本件補正後の請求項1、2に係る発明(以下それぞれの発明を「本件補正発明1」等という。)は、上記「1(1)」に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載事項と引用発明
引用文献1に記載された引用発明は、上記6(1)イ(ア)い に記載されたとおりのものである。

(ア)引用文献2に記載された技術
最初の拒絶理由通知で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、引用文献2(米国特許出願公開第2011/0160662号明細書)には、図面とともに、次の記載がある。(日本語訳は、当審が付与した。)

あ「[0110] In some embodiments, a blood control valve 710 is positioned within the straight luer portion 720 of the closed IV catheter system 101 , as shown. In other embodiments, a blood control valve 710 is positioned within the y-luer 730 portion of the closed IV catheter system 101 . Still further, in some embodiments a blood control valve 710 is positioned within both the straight 720 and y-luer 730 portions of the IV catheter system 101 (not shown). In some embodiments, the blood control valve 710 comprises a septum 722 disposed within the y-port 700 , wherein valve 710 further comprises a ventilation channel 740 interposed between the septum 722 and the y-port 700 to permit passage of at least one of air and blood at a desired rate of flow.
[0111] Initially, the valve system comes in the unactuated position, as shown in FIG. 21 . The unactuated position allows venting of the closed system in channels 740 located between the luer adapter 720 and the valve septum 722 .」
([0110]いくつかの実施形態では、図示されるように、血液制御弁710は閉じたIVカテーテルシステム101における直線のルアー部分720内に配置される。他の実施形態において、血液制御弁710は閉じたIVカテーテルシステム101におけるY字型のルアー部分730内に配置される。さらに、いくつかの実施形態において、血液制御弁710は閉じたIVカテーテルシステム101における直線のルアー部分720内及びY字型のルアー部分730内に配置される(図示しない)。いくつかの実施形態において、血液制御弁710は、Y字型のポート700内に配置されたセプタム722を含み、ここでバルブ710は、所望の流量で空気および血液の少なくとも1つの通過を可能にするセプタム722とY字型のポート700との間に介在する通気チャネル740を含む。
[0111]最初に図21に示すとおり、弁システムが非作動位置である。この非作動位置において、ルアーアダプタ720とセプタム722の間に位置する通気チャネル740において閉じたシステムの通気が可能になる。)」
い「[0112] ・・・Upon connection of the connecting device 750 , the septum activator of valve 710 is advanced through septum 722 thereby opening valve 710 to allow free flow of fluid and normal infusion therapy practices. 」
([0112]・・・連結装置750の連結時、セプタム可動弁710は、セプタム722を通過するよう前進することにより、開口弁710は流体の自由な流れを可能とし通常の注入療法の実務が可能となる。)
う「図21


え「図22


上記あ?え から、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2技術」という。)が記載されているといえる。
「Y字型のポート700の側壁に配設されるY字型のルアー部分730を有し、前記Y字型のルアー部分730に結合され、前記Y字型のルアー部分730を封止する血液制御弁710と、直線のルアー部分720内に配設されたセプタム722と、前記セプタム722の基端で前記直線のルアー部分720内に配設され、セプタム722を通過するよう前進することにより、開口弁710は流体の自由な流れを可能とするセプタム可動弁710を有する技術」

(イ)引用文献3に記載された技術
最初の拒絶理由通知で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、引用文献3(特表2010-514535号公報)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0001】
本発明は、医療器具を通じる流体の流れを制御するためのバルブアセンブリに関し、より詳細には、流体の流れを制御するためのアイリスバルブを組み込んだ止血バルブアセンブリに関する。」

上記記載から、引用文献3には、次の技術(以下「引用文献3技術」という。)が記載されているといえる。
「流体の流れを制御するため、アイリスバルブが組み込まれた技術」

ウ 対比・判断
(ア)本件補正発明1について
本件補正発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「1端」は、その作用及び機能からみて、本件補正発明1の「末端」に相当し、以下同様に、「末端」は「基端」に、「チャンバー」は「カテーテルアダプタ」に、「側部」は「側壁」に、「外部」は「外部環境」に、「側部口」は「ポート」に、「シリコンゴム弁」は「ルアーアクセス弁」に、「液体を採取し又はこれらに液体を注入するために使用する装置」は「カテーテルアッセンブリー」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「側部口にシリコンゴム弁が収容される」態様は、上記(1)イ(ア)あ(あ)の記載から、閉止条件下でチャンバーを封止するように機能するとともに、上記(1)イ(ア)あ(い)の記載から、弁を介して液体を注入又は採取することができることから、当初発明1の「ポートに結合され、前記ポートの前記開口を封止する」態様に相当する。

以上から、本件補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「末端および基端と、該末端と該基端との間に延びる内腔を有するカテーテルアダプタと、
前記カテーテルアダプタの側壁に配設され、前記内腔と外部環境との間に開口を形成するポートと、
前記ポートに結合され、前記ポートの前記開口を封止するルアーアクセス弁と、
を含むカテーテルアッセンブリー。」

【相違点1】
ポートに関して、本件補正発明1はルアーねじを含むポートの本体を有するのに対して、引用発明ではそのような構成を有するか明らかでない点。
【相違点2】
本件補正発明1は、カテーテルアダプタの前記内腔内に配設されたセプタムと、前記セプタムの基端で前記内腔内に配設されたセプタムアクティベータと、前記カテーテルアダプタの側壁から外側に延び、該カテーテルアダプタの側壁に結合されたボタンであって、前記セプタムアクティベータに結合され、該ボタンが押される場合、前記セプタムを通じて前記セプタムアクティベータを末端方向に移動させるように構成されるボタンを含むのに対して、引用発明ではそのような構成を有しない点。

事案に鑑み、まず上記相違点2について検討すると、引用文献2技術及び引用文献3技術は上記相違点2に係る本件補正発明の構成に相当するものとはいえず、また、これらの引用文献には、「カテーテルアダプタの側壁から外側に延び、該カテーテルアダプタの側壁に結合されたボタンであって、前記セプタムアクティベータに結合され、該ボタンが押される場合、前記セプタムを通じて前記セプタムアクティベータを末端方向に移動させるように構成されるボタンを含む」点について記載も示唆もないし、この点を公知の技術又は周知の技術であるとする証拠も見当たらない。
してみると、上記相違点1について検討するまでもなく、本件補正発明1は、引用発明であるとはいえず、また、引用発明及び引用文献2、3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(イ)本件補正発明2について
本件補正発明2は、請求項1を引用する発明であることから、上記(ア)と同様の理由により、引用発明であるとはいえず、引用発明及び引用文献2、3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

エ 独立特許要件についての判断
以上から、本件補正発明1、2は、引用発明であるとはいえず、引用発明及び引用文献2、3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないので、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるということもできない。
また、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。

(4)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすものといえる。

7 むすび
以上のとおりであるので、本件補正は特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定された要件を満たすものであることから、平成30年4月25日付け補正の却下の決定は取り消すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願の請求項1、2に係る発明
以上のとおり、平成30年4月25日付け補正の却下の決定は取り消されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、本件補正発明1、2である。

2 原査定の概要
この出願については、平成29年7月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶すべきものである。

3 平成29年7月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由
平成29年7月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、次のとおりのものである。
「(発明の特別な技術的特徴を変更する補正)平成29年2月22日付け手続補正書でした補正は、その補正後の下記の請求項に係る発明が下記の点で、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものではないから、同法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。



●理由(発明の特別な技術的特徴を変更する補正)について
・請求項 1-2
1.特別な技術的特徴に基づく審査対象の決定
平成28年11月11日付け拒絶理由通知書においては、補正前の請求項4に係る発明に「弁が、ルアーアクセス弁であり、前記ポートの本体が、ルアーねじを含む」という特別な技術的特徴が発見されたことが記載されている。
そして、請求項1-2に係る発明は、前記特別な技術的特徴と同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する発明ではない。

2.審査の効率性に基づく審査対象の決定
請求項1-2に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明ではない。そして、請求項1-2に係る発明は、審査対象とされた発明を審査した結果、実質的に追加的な先行技術調査や判断を必要とすることなく審査を行うことが可能である発明ではなく、当該発明とまとめて審査を行うことが効率的であるといえる他の事情も無い。

したがって、請求項1-2に係る発明は、特許法第17条の2第4項以外の要件についての審査対象としない。」

4 判断
上記第2の4のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていることから、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

5 むすび
原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-23 
出願番号 特願2015-500490(P2015-500490)
審決分類 P 1 8・ 65- WYA (A61M)
P 1 8・ 113- WYA (A61M)
P 1 8・ 121- WYA (A61M)
P 1 8・ 562- WYA (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 玲子  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 芦原 康裕
沖田 孝裕
発明の名称 カテーテルアダプタのポート弁  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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