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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1358256
審判番号 不服2017-14219  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-26 
確定日 2020-01-07 
事件の表示 特願2014-556707「冷却空洞が改善されたピストン」拒絶査定不服審判事件〔平成25年8月15日国際公開、WO2013/119909、平成27年4月16日国内公表、特表2015-511290〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)2月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年2月10日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成29年1月31日(発送日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年4月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月25日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年5月30日)、これに対し、同年9月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、平成30年3月7日及び同年3月27日に上申書が提出されたものである。

第2 平成29年9月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年9月26日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正前の平成29年4月21日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
内燃機関のためのピストンであって、
筒状の外面を有する本体を備え、前記外面内に延在する環状の最上リング溝と下方リング溝とを有し、トップランドが前記最上リング溝から上部燃焼面へ延在し、前記本体は、ピンボア軸に沿って互いに並んだピンボアを有する一対のピンボスを有し、ピストンはさらに、
前記最上リング溝内に配置される第1のピストンリングと、
前記下方リング溝内に配置される第2のピストンリングとを備え、
前記本体は、環状の封止冷却空洞を有し、そこに冷却媒体が配置され、前記封止冷却空洞は、前記第1のピストンリングと第2のピストンリングとの間に径方向に並んで構成され、前記封止冷却空洞は、最上面と最下面とを有し、前記最上面は、前記最上リング溝と実質的に径方向に並び、前記最下面は、前記下方リング溝の下方を延在する、ピストン。」

(2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下の通り補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
内燃機関のためのピストンであって、
筒状の外面を有する本体を備え、前記外面内に延在する環状の最上リング溝と下方リング溝とを有し、トップランドが前記最上リング溝から上部燃焼面へ延在し、前記本体は、ピンボア軸に沿って互いに並んだピンボアを有する一対のピンボスを有し、ピストンはさらに、
前記最上リング溝内に配置される第1のピストンリングと、
前記下方リング溝内に配置される第2のピストンリングと、
上部燃焼面の平坦な最上部分から垂下する凹んだ燃焼ボウルとを備え、
前記本体は、環状の封止冷却空洞を有し、そこに冷却媒体が配置され、前記封止冷却空洞は、前記第1のピストンリングと第2のピストンリングとの間に径方向に並んで構成され、前記封止冷却空洞は前記燃焼ボウルと前記封止冷却空洞の間にピストン本体の材料の薄い領域を形成するよう構成され、前記封止冷却空洞は、最上面と最下面とを有し、前記最上面は、前記最上リング溝と実質的に径方向に並び、前記最下面は、前記下方リング溝の下方を延在する、ピストン。」

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「上部燃焼面」について「上部燃焼面の平坦な最上部分から垂下する凹んだ燃焼ボウルとを備え」との限定を付加し、さらに「封止冷却空洞」について「封止冷却空洞は前記燃焼ボウルと前記封止冷却空洞の間にピストン本体の材料の薄い領域を形成するよう構成され」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下、「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開平4-265451号公報(公開日、平成4年9月21日)(以下、「引用文献1」という。)には、「二サイクルエンジンのピストン」に関して、図面とともに次の記載が記載されている。

(ア)「【0004】かかる点に鑑み、この発明は、ピストンの頂面付近が受ける熱を下側のスカート方向に拡散させて冷却性を向上し、ピストン重量も軽くできる二サイクルエンジンのピストンを得ることを目的とする。」

(イ)「【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1乃至図3によって説明する。図1及び図2は、本発明の一実施例を示すものである。二サイクルエンジンのピストン1の上部外周2の内側に、空胴部3を設ける。そして、空胴部3に空胴部3の容積の略半分の量のナトリウム4を注入する。ナトリウム4は空胴部3の一端に設けた注入口5から注入して、栓6で塞いで封入する。
【0008】図3は本発明の他の実施例を示すものである。この場合は、二サイクルエンジンのピストン1の上部外周に加えて頂面7の内側にかけて空胴部3を設ける。そして、同様に、空胴部3内に空胴部3の容積の略半分の量のナトリウム4を注入して、栓6で塞いで封入する。」

(ウ)「【0009】空胴部3内に封入したナトリウム4は、93℃の低い融点で、ピストン1の頂面7が受ける燃焼ガスの熱で液化する。そして、空胴部3内をナトリウム4が攪拌され、頂面7が受ける熱を下部のスカート方向に拡散して、頂面7の温度を低下すると共に、ピストン1自体の熱的アンバランスを解消できる。
【0010】
【発明の効果】以上説明したように、この発明は上述のように構成したので、ピストンの上部に設けた空胴部内に封入したナトリウムが、ピストンの温度上昇で液化し、ピストン自体の熱的アンバランスを防ぎ、頂面の温度を下げることができる。そして、ピストンの燃料による冷却の負担を軽くすることができ、同じピストン重量では熱容量を大きくできて、ピストンを軽量化できる。これらによって、ピストンのスカフィングなどのトラブルを防止することができて、耐久性が向上する。」

(エ)図1ないし4の記載から、ピストン1の上部外周2には、頂面7に近い側の溝及び遠い側の溝の二つの溝があること、上部外周2には頂面7に近い側の溝から頂面へ延在する面があること、及び空洞部3は二つの溝と上部外周2に向かう方向に並んでいることが看て取れる。

(オ)図1の縦断正面図を見ると、ピストン1の上部外周2の内部に設けられる空洞部3の下部には一対の孔を有する部位があることが看て取れ、図2の縦断側面図を合わせみると、一対の部位がそれぞれ有する孔は同軸と理解できる。そして、空洞部3を有するピストン1の上部外周2の内部は、ピストン本体を構成していることも理解できる。

(カ)図1の縦断正面図からは、空洞部3は最上面と最下面を有し、ピストン1の上部外周2の内部の左右に設けられていると共に、注入口5及び栓6は設けられていないことが看て取れる。

(キ)図2の縦断側面図からは、空洞部3は最上面と最下面を有し、ピストン1の上部外周2の内部の左右に設けられていると共に、注入口5及び栓6は左方の空洞部3にのみ設けられていることが看て取れる。

(ク)上記(エ)、及び一般にエンジンのピストンの形状は円筒状であり、環状の外周面上にリング溝が設けられ、最も燃焼面に近いリング溝から燃焼面に向けてトップランドが延在するという技術常識から、ピストン1は円筒状で、頂面7に近い側の溝及び遠い側の溝は、いずれも環状のリング溝であること、及び上部外周2にある頂面7に近い溝から頂面に向けて延在する面はトップランドであると理解できる。

(ケ)上記(オ)、及び一般にエンジンのピストン本体の下部にはピンボア軸に沿って互いに並んだピンボアを有する一対のピンボスを備えているという技術常識から、ピストン1の上部外周2の内部に設けられる空洞部3の下部にある、一対の孔を有する部位は、ピンボア軸に沿って互いに並んだピンボアを有する一対のピンボスと理解できる。

(コ)上記(ク)、及び一般にエンジンのリング溝にピストンリングが配置されるという技術常識から、ピストン1の環状リング溝である頂面7に近い側の溝及び遠い側の溝にピストンリングが載置されると理解できる。

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「二サイクルエンジンのピストン1であって、
筒状の上部外周2を有するピストン本体を備え、前記上部外周2内に延在する環状の頂面7に近い側のリング溝と頂面7に遠い側のリング溝とを有し、トップランドが前記頂面7に近い側のリング溝から頂面7へ延在し、前記本体は、ピンボア軸に沿って互いに並んだピンボアを有する一対のピンボスを有し、ピストンはさらに、
前記頂面7に近い側のリング溝内に配置されるピストンリングと、
前記頂面7に遠い側のリング溝内に配置されるピストンリングと、
を備え、
前記本体は、栓6で塞ぐ空洞部3を有し、そこにナトリウムが注入され、前記栓6で塞ぐ空洞部3は、前記頂面7に近い側のリング溝内に配置されるピストンリングと頂面7に遠い側のリング溝内に配置されるピストンリングと径方向に並んで構成され、前記栓6で塞ぐ空洞部3は、最上面と最下面とを有する、二サイクルエンジンのピストン1。」

イ 当審で新たに引用する、本願の優先日前に頒布された、実願昭57-177789号(実開昭59-81758号)の願書に最初に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(公開日、昭和59年6月2日)(以下、「引用文献2」という。)には、「内燃機関用ピストン」に関して、図面とともに次の記載が記載されている。

(サ)「本考案は内燃機関用ピストン、特に運転中のピストン温度の過昇を抑制するように構成されたピストンに関する。」(明細書1ページ9行ないし11行)

(シ)「本考案は上記の如き強制冷却方式を採ることなくピストン自体に優れた伝熱部位を内蔵せしめるのみの簡易な構成をもつピストンを提供することを目的とする。
即ち本考案の要旨は、
ピストン頭部内に該頭部を囲い中空部を形成し、該中空部内に良伝熱性金属を封入したことを特徴とし、該金属の熱対流によつてピストン頂面の熱を、ピストンピン、ピストンスカート部へ流動して低下させることにある。」(明細書3ページ1行ないし10行)

(ス)「第3図に示す本考案によるピストンの第1実施例において、ピストン1はその頭部内に、該頭部の円周方向および半径方向に空洞内に金属ナトリウム或は水銀のような良伝熱性金属Mが封入されている。」(明細書4ページ1ないし5行)

(セ)「4.図面の簡単な説明
第1図および第2図はそれぞれ従来のオイルジェット式ピストン冷却方法の概要図、第3図および第4図は本考案による冷却型ピストンの第1および第2実施例を示す。
1・・・ピストン 2・・・シリンダブロック
3・・・連接棒 4・・・オイルジェット部
5・・・油通路 6・・・ジェットノズル
7、8、9・・・空洞 9・・・伝熱金属」(明細書5ページ5ないし13行)

(ソ)第3図から、ピストン頭部の上部燃焼面は、平坦な最上部分から垂下する凹んだ部分を備えていること、及び凹んだ部分と空洞7の間は薄いことが看て取れる。

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2の記載事項」という。)が記載されている。

「内燃機関のためのピストン1であって、
ピストン頭部を備え、
上部燃焼面の平坦な最上部分から垂下する凹んだ部分を備え、
前記ピストン頭部は、空洞7を有し、そこに良伝導性金属Mが封入され、前記空洞7は前記凹んだ部分と前記空洞7の間が薄いよう構成されるピストン1。」

(3)引用発明1との対比
本件補正発明と引用発明1とを対比すると、後者の「二サイクルエンジン」はその機能、構成および技術的意義からみて前者の「内燃機関」に相当し、以下同様に、「ピストン本体」は「本体」に、「上部外周2」は「外面」に、「頂面7」は「上部燃焼面」に、「頂面7に近い側のリング溝」は「最上リング溝」に、「頂面7に遠い側のリング溝」は「下方リング溝」に、「頂面7に近い側のリング溝内に配置されるピストンリング」は「最上リング溝内に配置される第1のピストンリング」に、「頂面7に遠い側のリング溝内に配置されるピストンリング」は「下方リング溝内に配置される第2のピストンリング」に、「栓6で塞ぐ空洞部3」は「封止冷却空洞」に、「ナトリウムが注入」は「冷却媒体が配置」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「内燃機関のためのピストンであって、
筒状の外面を有する本体を備え、前記外面内に延在する環状の最上リング溝と下方リング溝とを有し、トップランドが前記最上リング溝から上部燃焼面へ延在し、前記本体は、ピンボア軸に沿って互いに並んだピンボアを有する一対のピンボスを有し、ピストンはさらに、
前記最上リング溝内に配置される第1のピストンリングと、
前記下方リング溝内に配置される第2のピストンリングと、
を備え、
前記本体は、封止冷却空洞を有し、そこに冷却媒体が配置され、前記封止冷却空洞は、前記第1のピストンリングと第2のピストンリングと径方向に並んで構成され、前記封止冷却空洞は、最上面と最下面とを有する、ピストン。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
前者は、「上部燃焼面の平坦な最上部分から垂下する凹んだ燃焼ボウル」を備え、「封止冷却空洞は前記燃焼ボウルと前記封止冷却空洞の間にピストン本体の材料の薄い領域を形成するよう構成され」るのに対し、後者は、かかる構成を備えていない点。

[相違点2]
「封止冷却空洞」に関し、前者は、「環状の」封止冷却空洞であるのに対し、後者は、環状であるか否かが不明である点。

[相違点3]
「封止冷却空洞」に関し、前者は、第1のピストンリングと第二のピストンリングと「の間」に構成され、「最上面は、前記最上リング溝と実質的に径方向に並び、前記最下面は、前記下方リング溝の下方を延在する」のに対し、後者は、かかる構成を備えるかが不明である点。

(4)判断
相違点について検討する。
[相違点1の検討]
相違点1について検討するに、本件補正発明と引用文献2の記載事項をと対比すると、後者の「ピストン頭部」はその機能、構成および技術的意義からみて前者の「筒状の外面を有する本体」に相当し、以下同様に、「凹んだ部分」は「凹んだ燃焼ボウル」及び「燃焼ボウル」に相当し、「空洞7」は「封止冷却空洞」に、「良伝導性金属M」は「冷却媒体」に、「前記凹んだ部分と前記空洞7の間が薄いよう構成される」は「前記燃焼ボウルと前記封止冷却空洞の間にピストン本体の材料の薄い領域を形成するよう構成される」に相当する。

してみると、引用文献2の記載事項は、本件補正発明の用語で表すと、次のとおりのものといえる。
「内燃機関のためのピストンであって、
筒状の外面を有する本体を備え、
上部燃焼面の平坦な最上部分から垂下する凹んだ燃焼ボウルを備え、
上記本体は、封止冷却空洞を有し、そこに冷却媒体が配置され、前記封止冷却空洞は前記燃焼ボウルと前記封止冷却空洞の間にピストン本体の材料の薄い領域を形成するよう構成されるピストン。」

そして、引用文献2の記載事項は、ピストン温度の過昇を抑制すること、すなわちピストンの冷却性を向上させるものであって、引用発明1と技術分野及び解決するための課題も共通する。

そうすると、このような引用発明1に引用文献2の記載事項を適用して、上記相違点1にかかる本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

[相違点2の検討]
相違点2について検討するに、上記(2)ア(カ)及び(2)ア(キ)の記載事項、特に(2)ア(キ)にて摘示したナトリウムの注入口5が、空洞部3の左方のみに設けられていることからみて、引用文献1の図1及び図2に記載される空洞部3は互いに独立したものではなく、注入口5からナトリウムを注入することですべての空洞部3にナトリウムが配置されるよう、相互に繋がったものと理解できる。そして、上記(2)ア(イ)の記載事項及び(2)ア(ク)で摘示した技術常識を踏まえると、空洞部3は円筒状のピストン1の上部外周2の内側に互いに繋がり、円筒状の上部外周に沿って設けられるものと解される。
そうすると、このように解される空洞部3を「環状の」空洞部にすることは、ピストン1の頭部の熱的バランス、ナトリウムの注入効率或いは空洞部を形成する際の容易性を踏まえて、当業者の通常の創作活動の範囲内で適宜なし得たことであるから、引用発明1に基づき、上記相違点2にかかる本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

[相違点3の検討]
相違点3について検討するに、引用文献1には、空洞部3の上下方向の具体的な存在範囲は記載されていない。しかしながら、引用文献1の図1及び図2から空洞部3の最上面及び最下面と頂面7に近い側の溝及び遠い側の溝の二つの溝との関係を看て取ると、空洞部3の最上面は、頂面7に近い側の溝と実質的に径方向で並び、最下面は頂面7に遠い側の溝の下方を延在していることが示されている。
そうすると、引用発明1および引用文献1の図1及び図2から看て取れる事項に基づき、上記相違点3にかかる本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明1及び引用文献2の記載事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用文献2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成29年9月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成29年4月21日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2 1.(1)に記載のとおりのものである。

2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献:特開平4-265451号公報

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2[理由]2.(2)アに記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は前記第2[理由]2.で検討した本件補正発明から、「上部燃焼面」についての「上部燃焼面の平坦な最上部分から垂下する凹んだ燃焼ボウルとを備え」との限定及び「封止冷却空洞」についての「封止冷却空洞は前記燃焼ボウルと前記封止冷却空洞の間にピストン本体の材料の薄い領域を形成するよう構成され」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2.(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明1及び引用文献2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-05-23 
結審通知日 2018-05-29 
審決日 2018-06-11 
出願番号 特願2014-556707(P2014-556707)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02F)
P 1 8・ 121- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 麻乃  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 水野 治彦
鈴木 充
発明の名称 冷却空洞が改善されたピストン  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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