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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1358335
審判番号 不服2019-8168  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-19 
確定日 2020-01-21 
事件の表示 特願2017-153640号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月28日出願公開、特開2017-225833号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成28年6月20日に出願した特願2016-122180号(以下、「原出願」という。)の一部を平成29年8月8日に新たな特許出願(特願2017-153640号)としたものであって、同年12月8日に手続補正書が提出され、平成30年9月25日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年11月29日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年3月8日付け(送達日:同年3月19日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、令和1年6月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

理由1.(新規性)本件出願の請求項1に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2011-72477号公報

3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年11月29日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(A、B等の記号は、本願発明を分説するために合議体で付した)。

「【請求項1】
A 第1識別情報を変動表示させる第1識別情報表示手段と、
B 第2識別情報を変動表示させる第2識別情報表示手段と、
C 前記第1識別情報または前記第2識別情報が特定態様で表示される場合に、可変入球口が入球可能状態となる特定遊技を実行する特定遊技実行手段と、
を備え、
D 複数の遊技状態を設定可能であり、
E 前記複数の遊技状態のうち所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示していない場合は、前記第2識別情報を前記第1識別情報よりも大きく表示するものであり、
F 前記所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示する場合は、前記第1識別情報が変動表示する前よりも前記第1識別情報を大きく表示する
G ことを特徴とする遊技機。」

4 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、原出願の出願(出願日:平成28年6月20日)前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-72477号公報(平成23年4月14日出願公開、以下「引用例」という。)には、遊技機に関し、図面と共に次の事項が記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様)。

(1)「【0021】
図1は、本実施形態における遊技機1の一例を示す正面図である。遊技機1は、遊技者の指示操作により打ち出された遊技球が各種入賞口に入球すると賞球を払い出すように構成された弾球式の遊技機である。この遊技機1は、透明ガラス板2aが嵌め込まれた窓部2を有する前枠部材3と、その前枠部材3の窓部2を介して視認可能に取り付けられた遊技盤10とを備えている。尚、遊技盤10は、前枠部材3の背面側に設けられる本体枠に対して着脱自在に取り付けられる。
・・・略・・・
【0064】
図5は、メイン制御基板100における主たる機能構成を模式的に示したブロック図である。メイン制御基板100のCPU101は、所定のプログラムを実行することにより、遊技機1における動作全般を統括的に制御する遊技制御部110として機能する。この遊技制御部110は、遊技の進行状況に応じて種々の処理部として機能する。またメイン制御基板100のRAM103は、種々のデータを記憶するが、その一部について例を挙げると、図5に示すように、乱数格納領域104と第1特別図柄変動保留記憶部105と第2特別図柄変動保留記憶部106とを備えている。乱数格納領域104には遊技データとなる種々の乱数が格納されているが、図5においては大当たり乱数RN1、図柄乱数RN2およびリーチ乱数RN3が格納されている場合を例示している。
・・・略・・・
【0070】
そして遊技制御部110は、第1特別図柄表示器63における第1特別図柄及び第2特別図柄表示器65における第2特別図柄の一方を当選図柄で停止させた場合、遊技機1における遊技状態を大入賞口開放遊技へと移行させ、その大入賞口開放遊技が終了するまで第1特別図柄表示器63及び第2特別図柄表示器65のそれぞれにおける次回の変動表示を中断する。
・・・略・・・
【0072】
図6は、遊技機1における遊技状態の移行を示す状態遷移図である。この遊技機1には、主として、通常遊技状態ST1、大入賞口開放遊技状態ST2、時短遊技状態ST3、確変遊技状態ST4、及び、潜伏確変遊技状態ST5の5つの遊技状態がある。このうち、通常遊技状態ST1、時短遊技状態ST3、確変遊技状態ST4、及び、潜伏確変遊技状態ST5の4つの遊技状態は、第1始動口19又は第2始動口21に遊技球を入球させることによって大当たり抽選を行いながら遊技を進行させる遊技状態である。これに対し、大入賞口開放遊技状態ST2は、通常遊技状態ST1、時短遊技状態ST3、確変遊技状態ST4、及び、潜伏確変遊技状態ST5のそれぞれにおいて小当たり又は大当たりに当選した場合にそれらの遊技状態から移行し、大入賞口22を開放させる遊技状態である。」

(2)「【0208】
図32は、画像表示器8における保留状態を反映した表示態様の一例を示す図である。この例では、画像表示器8の表示画面を、上下2つの表示領域に分割しており、表示画面の上部にある第1の演出画像表示領域8aは、第1特別図柄の変動表示に対応した演出画像を表示する。すなわち、この第1の演出画像表示領域8aでは、第1の演出画像として、例えば第1装飾図柄81の変動表示が行われる。また表示画面の下部にある第2の演出画像表示領域8bは、第2特別図柄の変動表示に対応した演出画像を表示する。すなわち、この第2の演出画像表示領域8bでは、第2の演出画像として、例えば第2装飾図柄82の変動表示が行われる。そして、これら2つの表示領域8a,8bの分割位置が、第1特別図柄又は第2特別図柄の変動表示の保留状態に応じて変動するようになっている。例えば、第1の演出画像表示領域8aと、第2の演出画像表示領域8bとの間には、領域の境界を示す境界線85が表示されており、第1特別図柄の変動表示の保留数と、第2特別図柄の変動表示の保留数との多寡に応じて、この境界線85の位置が上下に変動する。より具体的な例を挙げると、第1特別図柄の変動表示の保留数が第2特別図柄の変動表示の保留数よりも多い場合には、境界線85の位置が下方に移動し、第1特別図柄の変動表示の保留数が第2特別図柄の変動表示の保留数よりも少ない場合には、境界線85の位置が上方に移動する。したがって、画像表示器8に表示される境界線85の位置により、第1特別図柄又は第2特別図柄の変動表示の保留状態を把握することができるようになる。
【0209】
尚、図例では、第1装飾図柄81及び第2装飾図柄のいずれも、数字などを付した3列の図柄が表示される場合を示している。そして、それら3列の図柄が全て同じ図柄で揃った状態で停止すれば「大当たり」となる。また例えば、左右2つの図柄が揃った状態で停止し、中央の図柄が左右の図柄に対して1だけ異なる数字の図柄で停止すれば「小当たり」となる。
【0210】
例えば、図32(a)は、第1特別図柄の変動表示の保留数と、第2特別図柄の変動表示の保留数とが同数である場合を示している。したがって、第1特別図柄及び第2特別図柄の変動表示の保留数が同数であれば、第1の演出画像表示領域8aと第2の演出画像表示領域8bとがほぼ同じ表示サイズとなり、各領域で表示される第1装飾図柄81と第2装飾図柄82もほぼ同じ大きさで表示される。このとき、境界線85は、表示画面のほぼ中央に位置している。
【0211】
また、図32(b)は、例えば、第1特別図柄の変動表示の保留数が4個であり、第2特別図柄の変動表示の保留数が1個である場合を示している。このように、第1特別図柄の変動表示の保留数が、第2特別図柄の変動表示の保留数よりも多い場合には、第1の演出画像表示領域8aが第2の演出画像表示領域8bよりも大きな表示サイズとなり、第1装飾図柄81は第2装飾図柄82よりも大きく表示される。このとき、境界線85は、表示画面の中央よりも下方に位置している。
【0212】
また、図32(c)は、例えば、第1特別図柄の変動表示の保留数が2個であり、第2特別図柄の変動表示の保留数が3個である場合を示している。このように、第2特別図柄の変動表示の保留数が、第1特別図柄の変動表示の保留数よりも多い場合には、第2の演出画像表示領域8bが第1の演出画像表示領域8aよりも大きな表示サイズとなり、第2装飾図柄82は第1装飾図柄81よりも大きく表示される。このとき、境界線85は、表示画面の中央よりも上方に位置している。
【0213】
また、図32(d)は、例えば、第1特別図柄の変動表示の保留数が0個であり、第2特別図柄の変動表示の保留数が1個以上である場合を示している。このように、第1特別図柄の変動表示の保留数が0個となり、第1特別図柄の変動表示が行われない状態において、第2特別図柄の変動表示のみが行われる場合、第1特別図柄に対応した演出画像を表示する第1の演出画像表示領域8aが所定の最小サイズに縮小され、図例のように、画像表示器8の画面右上などに小さく表示された状態となる。これに対し、変動表示が行われる第2特別図柄に対応した演出画像を表示する第2の演出画像表示領域8bは、画像表示器8の画面サイズとほぼ等しいサイズにまで拡大され、画像表示器8のほぼ全体で、第2特別図柄の変動表示に対応した第2装飾図柄82の変動表示が行われる。そのため、この場合は、第2特別図柄の変動表示に対応した演出画像を画像表示器8のほぼ全体を利用して効果的に表示することができるようになり、第2装飾図柄82の変動表示だけでなく、その他種々の演出画像も効果的に表示することが可能になる。これにより、遊技者は、画像表示器8のほぼ全体で表示される第2特別図柄の変動表示に対応した演出画像に集中することができるようになるので、演出そのものを楽しみながら遊技を行うことができる。例えば、時短遊技状態ST3又は確変遊技状態ST4において、第2始動口21に遊技球が連続的に入球し、第1始動口19には遊技球が入球しないような場合に、図32(d)のような表示態様となる。
【0214】
また、図32(e)は、例えば、第1特別図柄の変動表示の保留数が1個以上であり、第2特別図柄の変動表示の保留数が0個である場合を示している。このように、第2特別図柄の変動表示の保留数が0個となり、第2特別図柄の変動表示が行われない状態において、第1特別図柄の変動表示のみが行われる場合、第2特別図柄に対応した演出画像を表示する第2の演出画像表示領域8bが所定の最小サイズに縮小され、図例のように、画像表示器8の画面右下などに小さく表示された状態となる。これに対し、変動表示が行われる第1特別図柄に対応した演出画像を表示する第1の演出画像表示領域8aは、画像表示器8の画面サイズとほぼ等しいサイズにまで拡大され、画像表示器8のほぼ全体で、第1特別図柄の変動表示に対応した第1装飾図柄81の変動表示が行われる。そのため、この場合は、第1特別図柄の変動表示に対応した演出画像を画像表示器8のほぼ全体を利用して効果的に表示することができるようになり、第1装飾図柄81の変動表示だけでなく、その他種々の演出画像も効果的に表示することが可能になる。これにより、遊技者は、画像表示器8のほぼ全体で表示される第1特別図柄の変動表示に対応した演出画像に集中することができるようになるので、演出そのものを楽しみながら遊技を行うことができる。例えば通常遊技状態ST1又は潜伏確変遊技状態ST5において第2始動口21に遊技球が入球しない場合には、図32(e)に示すような表示態様となる。
【0215】
このように、演出制御部203は、第1特別図柄及び2特別図柄の変動表示の保留状態に応じて、第1の演出画像表示領域8aの表示サイズと、第2の演出画像表示領域8bの表示サイズとを決定し、画像制御基板140に対してそれらの表示サイズを指示することにより、画像表示器8における表示態様を制御する。つまり、第1特別図柄及び2特別図柄の変動表示の保留状態が変動すれば、それに応じて境界線85が移動し、画像表示器8における表示態様が変動する。そのため、遊技者は、画像表示器8の表示態様、特に第1及び第2の演出画像表示領域8a,8bのそれぞれの表示サイズを確認することにより、第1特別図柄及び2特別図柄の変動表示の保留状態がどのような状態であるかを把握することが可能である。」

(3)「【図6】



(4)「【図32】



(5)上記(1)の【0072】に、「この遊技機1には、主として、通常遊技状態ST1、大入賞口開放遊技状態ST2、時短遊技状態ST3、確変遊技状態ST4、及び、潜伏確変遊技状態ST5の5つの遊技状態がある」という記載があるところ、上記(3)(【図6】)の図示内容から、遊技機1がそれら5つの遊技状態のいずれかに設定されることが看取できるから、通常遊技状態ST1、大入賞口開放遊技状態ST2、時短遊技状態ST3、確変遊技状態ST4、及び、潜伏確変遊技状態ST5の5つの遊技状態に設定可能であることは明らかである。

(6)上記(1)ないし(5)の記載内容からみて、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、a、b等の記号については本願発明のA、B等の記号に対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。

(引用発明)
「a、b 表示画面の上部にある第1の演出画像表示領域8aは、第1特別図柄の変動表示に対応した第1装飾図柄81の変動表示が行われ、表示画面の下部にある第2の演出画像表示領域8bは、第2特別図柄の変動表示に対応した第2装飾図柄82の変動表示が行われ(【0208】)、
c 第1特別図柄及び第2特別図柄の一方を当選図柄で停止させた場合、遊技機1における遊技状態を大入賞口開放遊技へと移行させる遊技制御部110として機能するメイン制御基板100のCPU101(【0064】、【0070】)を備え、
d 通常遊技状態ST1、大入賞口開放遊技状態ST2、時短遊技状態ST3、確変遊技状態ST4、及び、潜伏確変遊技状態ST5の5つの遊技状態に設定可能であり(上記(5)、【0072】、【図6】)、
e 第1特別図柄の変動表示の保留数が0個となり、第1特別図柄の変動表示が行われない状態において、第2特別図柄の変動表示のみが行われる場合、第1特別図柄に対応した演出画像を表示する第1の演出画像表示領域8aが所定の最小サイズに縮小され、画像表示器8の画面右上などに小さく表示された状態となるのに対し、変動表示が行われる第2特別図柄に対応した演出画像を表示する第2の演出画像表示領域8bは、画像表示器8の画面サイズとほぼ等しいサイズにまで拡大され、画像表示器8のほぼ全体で、第2特別図柄の変動表示に対応した第2装飾図柄82の変動表示が行われる表示態様となり、例えば、時短遊技状態ST3又は確変遊技状態ST4において、このような表示態様となり(【0213】、図32(d))、
第2特別図柄の変動表示の保留数が0個となり、第2特別図柄の変動表示が行われない状態において、第1特別図柄の変動表示のみが行われる場合、第2特別図柄に対応した演出画像を表示する第2の演出画像表示領域8bが所定の最小サイズに縮小され、画像表示器8の画面右下などに小さく表示された状態となるのに対し、変動表示が行われる第1特別図柄に対応した演出画像を表示する第1の演出画像表示領域8aは、画像表示器8の画面サイズとほぼ等しいサイズにまで拡大され、画像表示器8のほぼ全体で、第1特別図柄の変動表示に対応した第1装飾図柄81の変動表示が行われる表示態様となり、例えば通常遊技状態ST1又は潜伏確変遊技状態ST5においてこのような表示態様となる(【0214】、図32(e))、
g 遊技機1(【0021】)。」

5 対比・判断
(1)本願発明と引用発明を対比する。なお、以下の見出しの(a)、(b)等は、本願発明のA、B等の記号に対応させている。

(a)(b)引用発明の「第1装飾図柄81」及び「第2装飾図柄82」のうち、一方が本願発明の「第1識別情報」に相当し、他方が本願発明の「第2識別情報」に相当する。
そうすると、引用発明の「第1の演出画像表示領域8a」及び「第2の演出画像表示領域8b」のうち、一方が本願発明の「第1識別情報表示手段」に相当し、他方が「第2識別情報表示手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成a、bは、本願発明の構成A、Bに相当する。

(c)引用発明において、「メイン制御基板100のCPU101」は、第1特別図柄及び第2特別図柄の一方を当選図柄で停止させた場合、遊技機1における遊技状態を大入賞口開放遊技へと移行させるものである。ここで、引用発明の「当選図柄」、「大入賞口開放遊技」は、それぞれ、本願発明の「特定態様」、「可変入球口が入球可能状態となる特定遊技」に相当する。
そうすると、引用発明の「メイン制御基板100のCPU101」は、本願発明の「特定遊技実行手段」に相当する構成を備えるものといえる。
したがって、引用発明の構成cは、本願発明の構成Cに相当する。

(d)引用発明における「通常遊技状態ST1、大入賞口開放遊技状態ST2、時短遊技状態ST3、確変遊技状態ST4、及び、潜伏確変遊技状態ST5の5つの遊技状態に設定可能であ」ることは、本願発明における「複数の遊技状態を設定可能であ」ることに相当する。
したがって、引用発明の構成dは、本願発明の構成Dに相当する。

(e)引用発明において、第1特別図柄の変動表示が行われない状態にて、第2特別図柄の変動表示のみが行われる場合(以下、「第1の場合」という。)には、第1特別図柄に対応した演出画像、すなわち、第1装飾図柄81(当該第1の場合においては「第1識別情報」に相当する。)の変動表示が行われない一方で、第2特別図柄に対応した演出画像、すなわち、第2装飾図柄82(当該第1の場合においては「第2識別情報」に相当する。)の変動表示が行われることとなるから、当該第1の場合は、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)の変動表示が行われない状態にて、第2装飾図柄82(「第2識別情報」)の変動表示のみが行われる場合ともいえる。
そして、引用発明において、上記第1の場合、換言すれば、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)の変動表示が行われない状態にて、第2装飾図柄82(「第2識別情報」)の変動表示のみが行われる場合、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)を表示する第1の演出画像表示領域8a(「第1識別情報表示手段」)が所定の最小サイズに縮小される一方で、変動表示が行われる第2装飾図柄82(「第2識別情報」)を表示する第2の演出画像表示領域8b(「第2識別情報表示手段」)は画像表示器8の画面サイズとほぼ等しいサイズにまで拡大されるのであるから、当該場合は、第2装飾図柄82(「第2識別情報」)を第1装飾図柄81(「第1識別情報」)よりも大きく表示するといえる。
そして、このような表示態様は、例えば、時短遊技状態ST3又は確変遊技状態ST4において行われるから、引用発明の「時短遊技状態ST3又は確変遊技状態ST4」は、本願発明の「前記複数の遊技状態のうちの所定の遊技状態」に相当する。

また、引用発明において、第2特別図柄の変動表示が行われない状態にて、第1特別図柄の変動表示のみが行われる場合(以下、「第2の場合」という。)、換言すれば、第2装飾図柄82(当該第2の場合においては「第1識別情報」に相当する。)の変動表示が行われない状態にて、第1装飾図柄81(当該第2の場合においては「第2識別情報」に相当する。)の変動表示のみが行われる場合にも同様に、第1装飾図柄81(「第2識別情報」)を第2装飾図柄82(「第1識別情報」)よりも大きく表示するといえ、さらに、このような表示態様を実施する遊技状態として例示された「通常遊技状態ST1又は潜伏確変遊技状態ST5」は、本願発明の「前記複数の遊技状態のうちの所定の遊技状態」に相当する。

そうすると、引用発明は、上記第1、2の場合のいずれにおいても、本願発明における「前記複数の遊技状態のうち所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示していない場合は、前記第2識別情報を前記第1識別情報よりも大きく表示するものであ」る構成を備えるものである。

したがって、引用発明の構成eは、本願発明の構成Eに相当する。

(g)引用発明の「遊技機1」は、本願発明の「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明の構成gは、本願発明の構成Gに相当する。

(2)上記(1)からみて、本願発明と引用発明とは、
「A 第1識別情報を変動表示させる第1識別情報表示手段と、
B 第2識別情報を変動表示させる第2識別情報表示手段と、
C 前記第1識別情報または前記第2識別情報が特定態様で表示される場合に、可変入球口が入球可能状態となる特定遊技を実行する特定遊技実行手段と、
を備え、
D 複数の遊技状態を設定可能であり、
E 前記複数の遊技状態のうち所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示していない場合は、前記第2識別情報を前記第1識別情報よりも大きく表示するものである、
G 遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点](構成F)
本願発明では、「前記所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示する場合は、前記第1識別情報が変動表示する前よりも前記第1識別情報を大きく表示する」のに対して、
引用発明では、そのような特定がない点。

(3)上記相違点について検討する。
ア 本願発明の「前記所定の遊技状態」について、上記「(1)(e)」で説示したように、上記第1の場合には、引用発明の「時短遊技状態ST3又は確変遊技状態ST4」が相当し、上記第2の場合には、引用発明の「通常遊技状態ST1又は潜伏確変遊技状態ST5」が相当する。

イ まず、上記第1の場合について検討する。
(ア)引用例には、
上記「4(2)」の【0208】に、「第1の演出画像表示領域8aと、第2の演出画像表示領域8bとの間には、領域の境界を示す境界線85が表示されており、第1特別図柄の変動表示の保留数と、第2特別図柄の変動表示の保留数との多寡に応じて、この境界線85の位置が上下に変動する。より具体的な例を挙げると、第1特別図柄の変動表示の保留数が第2特別図柄の変動表示の保留数よりも多い場合には、境界線85の位置が下方に移動し、第1特別図柄の変動表示の保留数が第2特別図柄の変動表示の保留数よりも少ない場合には、境界線85の位置が上方に移動する。」と記載されている。
ここで、第1の演出画像表示領域8aの大きさは、境界線85の位置によって規定されるものであるところ、当該境界線85は、第1特別図柄の変動表示の保留数と第2特別図柄の変動表示の保留数との多寡に応じて上下に変動するのであるから、第1の演出画像表示領域8aの表示サイズは、第1特別図柄の変動表示の保留数が第2特別図柄の変動表示の保留数よりも多いか少ないかに応じて定まるものであると認められる。
また、第1の演出画像表示領域8aは、第1特別図柄に対応した第1装飾図柄81(「第1識別情報」)を表示する領域であるから、第1の演出画像表示領域8aの表示サイズに合わせて、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)の表示サイズが変化することは明らかであって、第1の演出画像表示領域8aの表示サイズが小さくなれば、それに伴い、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)の表示サイズも小さくなり、第1の演出画像表示領域8aの表示サイズが大きくなれば、それに伴い、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)の表示サイズも大きくなる。
そうすると、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)の表示サイズも、第1特別図柄の変動表示の保留数が第2特別図柄の変動表示の保留数よりも多いか少ないかに応じて定まるものであるといえる。

(イ)また、引用例には、
上記「4(2)」の【0213】に、「図32(d)」「のように、第1特別図柄の変動表示の保留数が0個となり、第1特別図柄の変動表示が行われない状態において、第2特別図柄の変動表示のみが行われる場合、第1特別図柄に対応した演出画像を表示する第1の演出画像表示領域8aが所定の最小サイズに縮小され、画像表示器8の画面右上などに小さく表示された状態となるのに対し、変動表示が行われる第2特別図柄に対応した演出画像を表示する第2の演出画像表示領域8bは、画像表示器8の画面サイズとほぼ等しいサイズにまで拡大され、画像表示器8のほぼ全体で、第2特別図柄の変動表示に対応した第2装飾図柄82の変動表示が行われる。」「例えば、時短遊技状態ST3又は確変遊技状態ST4において、第2始動口21に遊技球が連続的に入球し、第1始動口19には遊技球が入球しないような場合に、図32(d)のような表示態様となる。」と記載され、
上記「4(2)」の【0212】に、「図32(c)」「のように、第2特別図柄の変動表示の保留数が、第1特別図柄の変動表示の保留数よりも多い場合には、第2の演出画像表示領域8bが第1の演出画像表示領域8aよりも大きな表示サイズとなり、第2装飾図柄82は第1装飾図柄81よりも大きく表示される。このとき、境界線85は、表示画面の中央よりも上方に位置している。」とも記載されている。
ここで、図32(c)のような表示態様となる遊技状態として、「時短遊技状態ST3又は確変遊技状態ST4」等のような特定の遊技状態は例示されていない。

(ウ)上記(ア)及び(イ)の記載に基づけば、引用発明において、例えば、第1特別図柄の変動表示の保留数が0個であって、第1特別図柄の変動表示が行われない状態から、第1始動口19に遊技球が入球し、第1特別図柄の変動表示が開始された場合(以下、「第1-1の場合」という。)であれば、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)を表示する第1の演出画像表示領域8aを、【図32】(d)に示されるような所定の最小サイズから、【図32】(c)に示されるような表示サイズに変更するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。ここで、【図32】(c)に示されるような表示サイズは、【図32】(d)に示されるような所定の最小サイズよりも大きい表示であるところ、上記(ア)で説示したように、当該第1の演出画像表示領域8aの表示サイズが大きくなることに伴い、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)の表示サイズも大きくなることは明らかである。

(エ)しかしながら、引用発明は、上記(ア)で説示したように、両特別図柄の保留数の大小関係に応じて表示サイズが変わることを前提とするものであって、引用例には、いずれか一方の図柄の変動表示が開始された場合に、当該図柄の表示サイズが他方の図柄に比べて大きくなるように表示する構成は記載されていない。
その一方で、本願発明の構成F(「前記所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示する場合は、前記第1識別情報が変動表示する前よりも前記第1識別情報を大きく表示する」)は、両特別図柄の保留数の大小関係にかかわらず、一方の図柄の変動表示が開始された場合に、当該図柄の表示サイズが他方の図柄に比べて大きくなるように表示する旨の構成を特定したものと認められる。

(オ)そして、本願発明の構成Fにおける「第1識別情報が変動表示する場合」には、上記第1-1の場合だけでなく、例えば、第1特別図柄及び第2特別図柄の保留数がともに1個以上であって、第1特別図柄の変動表示が既に行われている状態から、当該変動表示が終了して次の新たな第1特別図柄の変動表示が開始された場合(以下、「第1-2の場合」という。)も含まれることは明らかである。
そのため、引用発明に基づいて、上記第1-1の場合のような特定の場合にのみ、「前記複数の遊技状態のうち所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示していない場合は、前記第2識別情報を前記第1識別情報よりも大きく表示」可能であることにとどまらず、本願発明の構成Fが当業者にとって容易であるか否かを判断するため、上記第1-2の場合についても更に検討する。

(カ)上記(エ)で説示したとおり、引用発明は、両特別図柄の保留数の大小関係に応じて表示サイズが変わることを前提としたものである。
そうすると、引用発明において、上記第1-2の場合には、(a)いずれか一方の図柄の変動表示が開始される前後で、両特別図柄の保留数の大小関係が変わらなければ、すなわち、第1特別図柄の保留数が第2特別図柄の保留数よりも多いまま、同数のまま又は少ないままであれば、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)の表示サイズは変わらないし、(b)当該開始の前には第1特別図柄の保留数が第2特別図柄の保留数よりも多かったものの、当該開始のタイミングで第2始動口21に遊技球が入球したことにより両図柄の保留数の大小関係が当該変動の前から逆転したのであれば、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)の表示サイズは小さくなる。
このように、引用発明は、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)が変動表示する場合に、両特別図柄の保留数の大小関係によっては、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)の表示サイズが変わらなかったり(上記(a))、小さくなったり(上記(b))するものであるから、引用発明において、第1装飾図柄81(「第1識別情報」)が変動表示する場合は、両特別図柄の保留数の大小関係にかかわらず、当該第1装飾図柄81(「第1識別情報」)が変動表示する前よりも第1装飾図柄81(「第1識別情報」)を大きく表示するように構成することは、当業者にとって容易であるとはいえない。

(キ)したがって、引用発明に基づいて、上記第1-1の場合のような特定の場合にのみ、「前記複数の遊技状態のうち所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示していない場合は、前記第2識別情報を前記第1識別情報よりも大きく表示」可能とすることは、当業者にとって容易であるといえるものの、本願発明の構成F(「前記複数の遊技状態のうち所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示していない場合は、前記第2識別情報を前記第1識別情報よりも大きく表示するものであり」)のように構成することは、当業者にとって容易であるとはいえない。

ウ 次に、上記第2の場合について検討する。
引用例には、「図32(e)」「のように、第2特別図柄の変動表示の保留数が0個となり、第2特別図柄の変動表示が行われない状態において、第1特別図柄の変動表示のみが行われる場合」(上記「4(2)」の【0213】)や、「図32(b)」「のように、第1特別図柄の変動表示の保留数が、第2特別図柄の変動表示の保留数よりも多い場合」(上記「4(2)」の【0211】)について記載されているが、上記イで説示した上記第1の場合と同様の理由により、引用発明において、第2装飾図柄82(「第1識別情報」)が変動表示する前よりも第2装飾図柄82(「第1識別情報」)を大きく表示するということを特定することは、当業者にとって容易であるとはいえない。

エ 上記イ及びウのとおり、上記第1、2の場合のいずれであっても、引用発明において、本願発明の構成F(「前記所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示する場合は、前記第1識別情報が変動表示する前よりも前記第1識別情報を大きく表示する」)に相当する構成を備えることは、当業者にとって容易ではない。

オ また、本願発明は、保留数にかかわらず、第1識別情報の変動表示の開始を遊技者に認識しやすくするという、引用発明が有さない効果を奏する。

カ 以上のとおり、本願発明は、引用発明と同一ではなく、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものでもない。

6 原査定について
(1)原査定では、
「例えば、[図32](d)に示されるように、第1特別図柄の変動表示が行われない状態において、第1始動口19に遊技球が入球し、第1特別図柄の変動表示が開始されれば、ほぼ[図32](c)に示される大きさの第1の演出画像表示領域8aで第1装飾図柄81が表示され、当該第1の演出画像表示領域8aは、最小サイズよりは大きくなるものと認められる」として、
引用発明の【図32】(d)の表示態様が、本願発明の構成E(「前記複数の遊技状態のうち所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示していない場合は、前記第2識別情報を前記第1識別情報よりも大きく表示するものであり」)に相当し、
引用発明の【図32】(c)の表示態様が、本願発明の構成F(「前記所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示する場合は、前記第1識別情報が変動表示する前よりも前記第1識別情報を大きく表示する」)に相当するとした上で、
本願発明は引用発明であると判断している。

(2)ここで、本願発明は、構成Eで、「前記複数の遊技状態のうち所定の遊技状態において」と特定した上で、構成Fで、「前記所定の遊技状態において」と特定しているのであるから、構成Eと構成Fとが、同じ「所定の遊技状態において」なされるものであることは明らかである。
しかしながら、引用例には、【図32】(d)の表示態様と【図32】(c)の表示態様について、上記「5(3)イ(イ)」で示したように、その具体例が個別に説明されているのみであって、それらの表示態様が同じ「所定の遊技状態」において行われる旨の明示的な記載はない。また、仮に、同じ遊技状態において【図32】(d)の表示態様から【図32】(c)の表示態様に移行することが、引用例に記載されているに等しい事項であると認められるとしても、両特別図柄の保留数の大小関係にかかわらず、本願発明の構成Fのように、いずれか一方の装飾図柄の変動表示の前後で、当該図柄の表示サイズが他方の図柄の表示サイズよりも大きくなることは、引用例に明示的に記載されていない上に、記載されているに等しい事項であるとも認められない。

(3)そうすると、上記「5(1)」及び「5(2)」で説示したように、引用発明は、本願発明の構成F(「前記所定の遊技状態において、前記第1識別情報が変動表示する場合は、前記第1識別情報が変動表示する前よりも前記第1識別情報を大きく表示する」)に相当する構成を備えているとはいえず、本願発明と引用発明とが相違点を有することは明らかである。

(4)そして、その相違点についての判断は、上記「5(3)」で説示したとおりである。

7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-01-07 
出願番号 特願2017-153640(P2017-153640)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 武田 知晋  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 田邉 英治
島田 英昭
発明の名称 遊技機  
代理人 三林 大介  

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