ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01D |
---|---|
管理番号 | 1358440 |
審判番号 | 不服2019-1307 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-01-31 |
確定日 | 2020-01-21 |
事件の表示 | 特願2014-228844号「位置検出装置、レンズ装置、撮像装置、および指令装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月23日出願公開、特開2016-90534号、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年11月11日にされた特許出願であって、平成29年11月22日に手続補正書が提出され、平成30年1月29日付けの拒絶理由通知に対し、同年4月2日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月8日付けの拒絶理由通知に対し、同年8月10日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ(原査定の謄本の送達日:同年11月1日)、これに対して、平成31年1月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明14」という。)は、平成30年8月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 第1要素に対する第2要素の位置の検出を行う位置検出装置であって、 前記第1要素及び前記第2要素のうち一方に備えられた、互いに異なる複数の周期をそれぞれ有する複数のパターン列を含み、前記複数のパターン列および前記位置に基づいて変化する、前記複数のパターン列にそれぞれ対応する複数の変位信号を、切替えをして順次出力するセンサと、 前記センサにより順次出力された前記複数の変位信号に基づいて、前記複数のパターン列にそれぞれ対応する複数の相対位置信号を得、該複数の相対位置信号に基づいて前記位置としての第1位置を得、前記第1位置に対する相対位置を前記複数の相対位置信号のうちの第1相対位置信号に基づいて得る処理部と、 を有し、 前記処理部は、前記相対位置を得た後に、前記複数の相対位置信号のうちの前記第1相対位置信号とは異なる第2相対位置信号の値としての第1の値および第2の値と、前記第1相対位置信号の値としての第3の値とを、この順に得、前記第1の値および前記第2の値のうち一方と、前記第3の値とに基づいて、前記第1要素に対する前記第2要素の位置としての第2位置を得、前記相対位置と、前記第1の値および前記第2の値とに基づいて、前記相対位置の更新値を得、前記第2位置と前記更新値とに基づいて、前記第1要素に対する前記第2要素の位置を得る処理を行う、 ことを特徴とする位置検出装置。 【請求項2】 第1要素に対する第2要素の位置の検出を行う位置検出装置であって、 前記第1要素及び前記第2要素のうち一方に備えられた、互いに異なる複数の周期をそれぞれ有する複数のパターン列を含み、前記複数のパターン列および前記位置に基づいて変化する、前記複数のパターン列にそれぞれ対応する複数の変位信号を、切替えをして順次出力するセンサと、 カウンタと、 前記センサにより順次出力された前記複数の変位信号に基づいて、前記複数のパターン列にそれぞれ対応する複数の相対位置信号を得、該複数の相対位置信号に基づいて前記位置としての第1位置を得、前記第1位置に対する相対位置を前記複数の相対位置信号のうちの第1相対位置信号に基づいて得る処理部と、 を有し、 前記処理部は、前記複数の変位信号のうち前記第1相対位置信号を得るための変位信号に基づく計数を前記カウンタに行わせ、該計数と前記第1相対位置信号とに基づいて前記相対位置を得、 前記処理部は、前記相対位置を得た後に、前記カウンタの行う計数の停止を行い、前記複数の相対位置信号のうちの前記第1相対位置信号とは異なる第2相対位置信号の値としての第1の値および第2の値と、前記第1相対位置信号の値としての第3の値とを、この順に得、前記第1の値および前記第2の値のうち一方と、前記第3の値とに基づいて、前記第1要素に対する前記第2要素の位置としての第2位置を得、前記停止における前記カウンタの計数値と前記第1の値および前記第2の値とに基づいて更新された前記カウンタの計数値と、前記第3の値とに基づいて前記相対位置の更新値を得、前記カウンタの行う計数を開始し、前記第2位置と前記更新値とに基づいて、前記第1要素に対する前記第2要素の位置を得る処理を行う、 ことを特徴とする位置検出装置。 【請求項3】 前記第1相対位置信号の、前記位置に基づく変化の周期は、前記第2相対位置信号の、前記位置に基づく変化の周期より短いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の位置検出装置。 【請求項4】 前記第1相対位置信号の、前記位置に基づく変化の周期は、前記複数の相対位置信号それぞれの、前記位置に基づく変化の周期の中で最も短いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1項に記載の位置検出装置。 【請求項5】 前記第2相対位置信号の、前記位置に基づく変化の周期は、前記複数の相対位置信号それぞれの、前記位置に基づく変化の周期の中で最も長いことを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1項に記載の位置検出装置。 【請求項6】 前記センサは、前記第1要素及び前記第2要素のうち他方に備えられた、前記複数のパターン列で反射された光を受光する受光部を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちいずれか1項に記載の位置検出装置。 【請求項7】 前記第2相対位置信号を得るための、前記複数の変位信号のうちの変位信号は、前記位置に応じて単調増加又は単調減少する信号を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項6のうちいずれか1項に記載の位置検出装置。 【請求項8】 前記センサが前記複数の変位信号を、前記切替えをして順次出力するように、切替え信号を出力する切替え部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載の位置検出装置。 【請求項9】 前記処理部は、前記第1の値および前記第2の値に基づく、前記相対位置に対する変位量に基づいて、前記更新値を得ることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。 【請求項10】 前記処理部は、前記第2位置と前記更新値とに基づいて、異常を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項9のうちいずれか1項に記載の位置検出装置。 【請求項11】 前記処理部は、前記異常を検出するのに、前記第2位置と前記更新値とを比較することを特徴とする請求項10に記載の位置検出装置。 【請求項12】 可動の光学部材と、該光学部材の位置を検出する請求項1ないし請求項11のうちいずれか1項に記載の位置検出装置と、を備えることを特徴とするレンズ装置。 【請求項13】 請求項12に記載のレンズ装置と、該レンズ装置からの光を受光する撮像素子と、を備えることを特徴とする撮像装置。 【請求項14】 可動の光学部材を有するレンズ装置の該光学部材を駆動操作するための指令装置であって、請求項1ないし請求項11のうちいずれか1項に記載の位置検出装置を備えることを特徴とする指令装置。」 第3 原査定の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 理由3(進歩性) 本願発明1?11は、下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本願発明12?14は、下記の引用文献1?4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2014-134493号公報 引用文献2:特開2014-190905号公報 引用文献3:特開2005-345375号公報 引用文献4:特開2014-126492号公報 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1 上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 「【実施例1】 【0013】 図1は、本発明の実施例1である位置制御装置の構成を示している。 【0014】 図1において、101は位置制御対象物であり、後述するモータ109によりその位置が移動可能になっている。102はエンコーダであり、位置制御対象物101の移動に応じてインクリメンタル信号を出力する。エンコーダ102は位置検出信号出力手段を構成する。また、インクリメンタル信号は、位置制御対象物101の移動に伴い周期的に変化する位置検出信号に相当する。出力されたインクリメンタル信号はA/D変換部103によりデジタル変換され、マイクロコンピュータ104に入力されて、インクリメンタル位置エンコード処理(相対位置演算処理)に用いられる。マイクロコンピュータ104はROM105に格納されたプログラムに従い、RAM106をワークメモリとして用いて、位置制御装置各部の制御を行う。モータ制御信号出力部107は、モータ駆動部108に対してモータ109を駆動させるためのマイクロコンピュータ104から命令された制御信号を出力する。モータ109はDCモータやボイスコイルモータ等のモータであり、これを駆動することで位置制御対象物101の位置を移動させることができる。以上に述べた位置制御対象物101、エンコーダ102からモータ109までの構成要素は全体としてフィードバックループを構成しており、公知のフィードバック制御手法に基づいて、マイクロコンピュータ104で実行されるプログラムに従い位置制御対象物101が所望の位置に移動・停止するように構成されている。マイクロコンピュータ104は位置制御手段を構成する。 【0015】 マイクロコンピュータ104からは、ピッチ切り替え信号出力部110を介してエンコーダ102にピッチ切り替え信号が出力される。ピッチ切り替え信号出力部110は信号切替手段を構成する。エンコーダ102は、ピッチ(周期)の異なる複数のインクリメンタル信号のうち、ピッチ切り替え信号により指示されたピッチのインクリメンタル信号を出力する。マイクロコンピュータ104はピッチ切り替え信号によりピッチの異なる複数のインクリメンタル信号を順次検出し、後述するアブソリュート位置エンコード処理により位置制御対象物の絶対位置の演算を行う。 【0016】 (省略) 【0017】 次に、図2と図3を用いてインクリメンタル位置エンコード処理について説明する。 【0018】 図2は、インクリメンタル位置エンコード処理の概念図である。図2(A)の縦軸は10bitのA/D変換値、横軸は位置制御対象物101の位置で、201と202は位置制御対象物101の移動に応じて出力される2相のインクリメンタル信号を表している。ここで201と202は位相が90°異なっている。図2(B)の縦軸は角度ラジアン、横軸は位置制御対象物101の位置で、203は移動に応じてインクリメンタル信号201と202間の逆正接関数として0から2πまでに正規化され演算される逆正接関数演算結果を表している。図2(C)の縦軸はインクリメンタル位置エンコード値、横軸は位置制御対象物101の位置で、204は逆正接関数演算結果203が0を跨いだ時、LSBが2πに相当する上位桁を増減させるインクリメンタル位置エンコード値を表している。 【0019】 図3はインクリメンタル位置エンコード処理のフローチャートである。以下の処理はマイクロコンピュータ104にて、所定の周期で反復実行される。 【0020】 図3のステップS301では、図2(A)の201、202で示した2相のインクリメンタル信号のA/D変換値を取得する。ここでA/D変換値はA/D変換部103での変換値を直接読みだしてもよいし、あらかじめ取得されRAM106に保存されているA/D変換値を読みだしてもよい。次にステップS302にて、取得したインクリメンタル信号のオフセット除去演算、ゲイン調整演算を行う。これらの演算は、逆正接関数演算を行うために2相のインクリメンタル信号の振幅(ゲイン)とオフセットをそろえるために行うものであり、公知であるので説明は省略する。さらにステップS303にて、図2(B)の逆正接関数演算結果203をRAM106へ保存し、ステップS304に進む。ステップS304では、前回のエンコード処理時にRAM106に保存されていた前回の逆正接関数演算結果と、今回の逆正接関数演算結果の差が3π/8より小さいかどうかを判断し、小さければステップS305へ処理を移し、以上であればステップS311へ処理を移す。ステップS305ではマイクロコンピュータ104は逆正接関数演算結果203が移動で0を跨いだかどうかを判定する。0を跨いでいればステップS306へ処理を移し、いなければステップS308へ処理を移す。ステップS306では、今回の逆正接関数演算結果が前回の逆正接関数演算結果より小さいかどうかを判別する。今回の結果が前回の結果より小さければステップS307へ処理を移し、以上であればステップS308へ処理を移す。ステップS307では、2π単位である上位桁へ1を加算して、ステップS309へ処理を移す。ここで上位桁とは、インクリメンタル位置エンコード値の2π以上の桁である。一方ステップS308では、2π単位である上位桁から1を減算して、ステップS309へ処理を移す。ステップS309では2π単位である上位桁と今回結果を加算し、図2(C)の上位桁を含むインクリメンタル位置エンコード値204(相対位置演算結果)として求め、ステップS310へ処理を移す。ステップS310では、今回と前回の移動が3π/8より小さく、移動方向が正しく判別されていることから、移動方向判別エラーフラグをクリアし、今回の処理を終了する。一方ステップS311では、今回と前回の移動が3π/8以上であるので、移動方向が増加方向か減少方向かの判別ができないことから、移動方向判別エラーフラグをセットして処理を終了する。以上の処理により、インクリメンタル信号からインクリメンタル位置エンコード値204を生成して位置制御に用いることができる。なお、前記の移動方向判別エラーフラグは、インクリメンタル位置エンコード処理が正しく実行できたかを判別する情報として、マイクロコンピュータ104で実行される他のプログラム処理において参照される。 【0021】 インクリメンタル位置エンコード処理を行うマイクロコンピュータ104は、相対位置を演算する相対位置演算手段を構成する。次に、図4と図5を用い、ピッチ(周期)の異なる複数のインクリメンタル信号により位置制御対象物101の絶対位置を求める、アブソリュート位置エンコード処理について説明する。以下では3種類のピッチのインクリメンタル信号を用いた場合について説明しているが、ピッチが4種類以上でも、2種類でも原理は同じである。なお以下では、3種類のピッチを、ピッチが小さい方から順にピッチα、ピッチβ、ピッチγと表記する。ピッチαは第1の周期に相当し、ピッチβ、ピッチγは異なる2以上の第2の周期を構成する。 【0022】 図4は、アブソリュート位置エンコード処理の概念図である。図4(A)の縦軸は角度ラジアン、横軸は位置で、401は移動に応じて逆正接関数として0から2πまでに正規化され演算される、ピッチαの逆正接関数演算結果を表している。ピッチαは3種類のうちの最少のピッチであり、絶対位置検出が可能な全ストローク長において21周期出現する。以下の説明では、この結果をp1と記載する。同様に図4(B)の402はピッチβの逆正接関数演算結果を表しており、全ストロークで10周期出現する。以下ではこの結果をp2と記載する。図4(C)の403はピッチγの逆正接関数演算結果を表しており、全ストロークで4周期出現する。以下ではこの結果をp3と記載する。 【0023】 図4(D)の404は、ピッチαから得られたp1とピッチβから得られたp2とから式(1)で演算されたph1を、0から2πまでに正規化した結果を表している。前記したように全ストロークでp1は21周期、p2は10周期出現するので、p2を2倍したものとp1とは全ストロークで1周期分の差分を持つので、ph1は全ストロークで1周期出現する。 式(1) ph1=p1-2×p2 【0024】 同様に図4(E)の405は、ピッチβから得られたp2とピッチγから得られたp3とから式(2)で演算されたph6を、0から2πまでに正規化した結果を表している。 10周期と4周期の差分であるので、全ストロークで6周期出現する。 式(2) ph6=p2-p3 【0025】 また図4(F)の406は、ピッチαから得られたp1とピッチγから得られたp3とから式(3)で演算されたph13を、0から2πまでに正規化した結果を表している。21周期と、4周期の2倍との差分であるので、全ストロークで13周期出現する。 式(3) ph13=p1-2×p3 【0026】 図5はアブソリュート位置エンコード処理のフローチャートである。以下の処理はマイクロコンピュータ104にて、位置制御対象物101の絶対位置を演算する際に実行される。ここで理論上は、前記のph1にて位置制御対象物101の絶対位置を得ることができるが、全ストロークを1周期とした信号であるので分解能が粗く、そのままでは信号のノイズなどにより高精度な位置検出ができない。一方、p1?p3やph6、ph13などは信号の周期が細かいので精度は高くなるが、全ストローク中の何番目の周期にあるかが判別できないため絶対位置を得ることができない。そこで以下に述べる処理により、粗い周期の信号から得た絶対位置を細かい周期の絶対位置に順次対応させていき、最終的にもっとも細かいp1の信号の分解能で絶対位置が得られるようにする。なお、以下の説明では、各ピッチのインクリメンタル信号のA/D変換値はあらかじめ取得され、RAM106に保存されているものとする。 【0027】 図5のステップS501では、RAM106の保存されているピッチαの2相信号のA/D変換値を取得し、オフセット除去演算、ゲイン調整演算、逆正接関数演算を行った結果をp1としてRAM106へ保存する。ここでの処理は図3のステップS302、S303と同様である。以下、ステップS502、S503にて、それぞれピッチβ、ピッチγについて同様の演算を行い、それぞれの結果をp2、p3としてRAM106へ保存し、ステップS504に処理を移す。 【0028】 ステップS504では、RAM106に保存されているp1、p2、p3から、前記した式(1)から式(3)に従ってph1、ph6、ph13の演算、正規化を行い、RAM106に保存する。さらにp1をph21としてRAM106に保存し、ステップS505に処理を移す。ここでph21は前記のように全ストロークで21周期出現する。 【0029】 ステップS505では、RAM106に保存されているph1から式(4)で得られるabs6を演算し、RAM106に保存してS506に進む。ここでabs6はph1を、周期2πの6分の1で割ったものである。前記したようにph1は全ストロークで1周期なので、ここで得られたabs6は位置検出対象物の位置が、全ストロークを6分割した領域のうち何番目の領域にあるかを示している。 式(4) abs6=ph1/(2π/6) 【0030】 次にステップS506では、RAM106に保存されているph6およびabs6から式(5)で得られるabs13を演算し、RAM106に保存してステップS507に進む。前記のようにabs6は全ストロークを6分割した領域のうち何番目の領域にあるかを示しており、ph6はabs6番目の領域内のどの位置にあるかを示しているので、式(5)の分子はph6の分解能で表された絶対位置に相当する。そしてこれを2π×6/13で割ったabs13は、全ストロークを13分割した領域のうち何番目の領域にあるかを示している。 式(5) abs13=(2π×abs6+ph6)/(2π×6/13) 【0031】 次にステップS507では、RAM106に保存されているph13およびabs13から式(6)で得られるabs21を演算し、RAM106に保存してS508に進む。 前記したS506の説明と同様の理由により、ここで演算されたabs21は、全ストロークを21分割した領域のうち何番目の領域にあるかを示している。 式(6) abs21=(2π×abs13+ph13)/(2π×13/21) 【0032】 ステップS508では、RAM106に保存されているph21およびabs21から式(7)で得られるFullABSを演算し、RAM106に保存して処理を終了する。ph21はもっとも細かいピッチαから得られた位置情報であるので、ここで演算されたFullABSは、もっとも細かいピッチαの分解能を持つ絶対位置情報(絶対位置演算結果)となる。 式(7) FullABS=(2π×abs21+ph21) 【0033】 以上に述べたように、ピッチの異なる3種類のインクリメンタル信号を合成することで、更にピッチの異なるインクリメンタル信号を合成することができる。そして前記したアブソリュート位置エンコード処理を行うことで、最小ピッチの分解能で位置制御対象物101の絶対位置を求めることができる。 【0034】 アブソリュート位置エンコード処理を行うマイクロコンピュータ104は、絶対位置を演算する絶対位置演算手段を構成する。 【0035】 ところで、以上に述べたアブソリュート位置エンコード処理では、演算に用いるピッチα、β、γの各信号が、すべて位置制御対象物101が同一位置にある時のものであることを前提としている。すなわちピッチα、β、γの各信号は制御対象が静止した状態で取得されていなければならない。なお、前記同一位置とは略同一位置を包含するものである。 【0036】 以下では、本発明の特徴であるところの、ピッチαの信号を用いたフィードバック制御により制御対象物を静止させつつ、フィードバック制御処理を実行していない期間にピッチβ、γの信号を検出する処理について説明する。 【0037】 図6は、実施例1における位置制御処理のフローチャートである。以下の処理はマイクロコンピュータ104にて実行される。 【0038】 図6のステップS601では、マイクロコンピュータ104からピッチ切り替え信号出力部110を介して、ピッチをαに設定する信号がエンコーダ102に出力される。これによりエンコーダ102からはピッチαのインクリメンタル信号が出力される。 【0039】 次にステップS602では、位置制御処理のフィードバック制御を一定周期で実行するために、制御周期を規定する割り込み要求が発生しているかどうかを判別する。一般にフィードバック制御は、制御対象物や駆動部の物理的・電気的特性や、位置制御装置に要求される制御応答性・安定性などから規定される所定の周期で反復実行される。そしてこの制御周期を規定するために、マイクロコンピュータ104の内部または外部に備えられたタイマー回路により、既定の周期でトリガー信号が発生するように構成される。このトリガー信号によりマイクロコンピュータ104のCPUに割り込み処理要求を発生させることで、CPUに処理周期を通知し、一定周期のフィードバック制御処理が実行される。ステップS602で割り込みが発生されていないと判別された場合は、次の処理には進まず、割り込みが発生されるまで待機または位置制御処理以外の処理が実行される。そして割り込みが発生するとステップS603に処理を移す。 【0040】 ステップS603では、前記のステップS601でエンコーダ102の出力をピッチαに切り替えてから、出力信号が静定するまでの所定の時間が経過したかを判別する。本実施例1ではピッチの異なる複数のインクリメンタル信号を同一の信号線に出力する構成としているため、ピッチを切り替えた際、切り替え後のピッチの信号が正しく読み取れる状態になるまでには、信号回路の電気特性に応じた所定の時間を要する。そこでステップS603では所定の静定時間が経過したかを判別し、経過していない場合は次の処理には進まず待機する。そして静定時間が経過したらステップS604に処理を移す。 【0041】 ステップS604では、ピッチαの2相のインクリメンタル信号のA/D変換値を取得してRAM106へ保存し、ステップS605に進む。ステップS605は図3で説明したインクリメンタル位置エンコード処理であり、ここでの処理により前記したインクリメンタル位置エンコード値が得られる。 【0042】 次にステップS606では、位置制御目標値を取得する。この位置制御目標値は位置制御対象物101を移動または停止させたい位置を表すものであり、位置制御装置の制御目的に応じて、マイクロコンピュータ104で実行される他のプログラム処理により決定されるものである。そしてステップS605で得られたインクリメンタル位置エンコード値(制御対象物101の現在位置)と位置制御目標値との差分を演算し、ステップS607に処理を移す。ステップS607では、ステップS606で演算された差分に基づき、差分を0とするためのモータ制御量を、公知のフィードバック制御手法に基づいて演算する。そして演算されたモータ制御量を、モータ制御信号出力部107を介してモータ駆動部108に出力して、ステップS608に進む。 【0043】 ステップS608では、位置制御対象物101の絶対位置の検出を実行するかどうかが判別される。前記したように絶対位置の検出は、位置制御対象物101が静止した状態でピッチの異なる複数のインクリメンタル信号を検出する必要があるため、位置制御装置が位置制御対象物101を移動させている状態では実行できない。このため位置制御装置の動作中に常時実行されるのではなく、装置の起動時や、何らかの外乱や故障によりインクリメンタル位置エンコード値が異常となった場合などの際に実行するよう制御される。この異常の判定は、例えば前記した移動方向判別エラーフラグがセットされているかどうかや、インクリメンタル信号のA/D変換値が異常値になっているかなどを判別することにより行うことができる。また位置制御装置に衝撃が加わったことを加速度センサやジャイロセンサなどで検出してもよい。このような絶対位置検出の実行判定はマイクロコンピュータ104で実行される他のプログラム処理により行われ、RAM106に最新の判定結果が保存されているものとする。そしてステップS608では保存されている判定結果を読み出し、絶対位置検出を実行すると判別した場合はステップS609へ処理を移し、実行しないと判別した場合はステップS602に戻る。なお、ここまでに説明した処理により、ピッチαのインクリメンタル信号を用いてフィードバック制御を行い、位置制御対象物101の位置制御を行うことができる。また、前記したように絶対位置の検出は位置制御対象物101が静止した状態で実行する必要があるため、絶対位置検出を実行すると判定されている状態では、ステップS606で取得される位置制御目標値も絶対位置検出が完了するまで同一位置で保持されていることとする。そして、ステップS604でピッチαの2相のインクリメンタル信号のA/D変換値を取得したときの位置は、位置制御目標値と同一位置になっている。 【0044】 ステップS609では、マイクロコンピュータ104からピッチ切り替え信号出力部110を介して、ピッチをβに設定する信号がエンコーダ102に出力される。これによりエンコーダ102からはピッチβのインクリメンタル信号が出力される。次にステップS610では、ステップS603と同様に所定の静定時間が経過したかを判別し、静定時間が経過したらステップS611に処理を移す。ステップS611ではピッチβの2相のインクリメンタル信号のA/D変換値を取得してRAM106へ保存し、ステップS612に進む。ステップS612?S614では、ピッチγに対して前記したステップS609 ?S611と同様の処理を行う。ここまでの処理により、ピッチα、β、γの各ピッチのインクリメンタル信号のA/D変換値が取得され、RAM106に保存された状態となる。 【0045】 ステップS615は図5で説明したアブソリュート位置エンコード処理であり、ここでの処理により前記したアブソリュート位置エンコード値、すなわち位置制御対象物101の絶対位置が得られる。 【0046】 ステップS616では、ステップS615で得られた絶対位置を用いて、フィードバック制御に用いられるインクリメンタル位置エンコード値(相対位置)の補正を行う。前記したように絶対位置の検出は位置制御装置の起動時や、インクリメンタル位置エンコード値が異常となった場合などに実行されるが、ここでの処理によりインクリメンタル位置エンコード値を補正することで絶対位置に基づくフィードバック制御が実行可能になる。なお、補正の手法としては、相対位置そのものを絶対位置で書き換えてもよいし、相対位置と絶対位置の差分を記憶し、その差分情報を用いて以後の相対位置を絶対位置に換算してもよい。そして以上の処理を実行後、ステップS601に戻る。 【0047】?【0051】 (省略) 【0052】 なお、絶対位置検出の処理中に位置制御装置に衝撃などが加わると、制御対象物を静止させるように制御していても制御対象物の位置が変化してしまう場合がある。このような場合に絶対位置の演算が誤って実行されないようにするために、以上で説明した複数のインクリメンタル信号の検出と絶対位置検出処理を複数回連続して実行し、結果が一致または所定の閾値内に入っているかどうかを判定するようにしてもよい。結果が不一致であれば再度検出処理を実行することで、絶対位置の演算が誤って実行されることを防ぐことができる。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図4】 」 「【図6】 」 ア 上記【0013】及び【0014】より、引用文献1には、モータ109を駆動させることで位置制御対象物101の位置を移動させ、エンコーダ102により前記位置制御対象物101の位置を検出し、位置制御手段であるマイクロコンピュータ104により前記位置制御対象物101が所望の位置に移動・停止するようにフィードバック制御される位置制御装置が記載されている。 イ 上記【0014】及び【0018】より、引用文献1には、エンコーダ102は、位置検出信号出力手段であり、前記位置制御対象物101の移動に応じて位置検出信号であるインクリメンタル信号を出力すること、前記インクリメンタル信号は位相が90°異なる2相の周期的に変化する信号201、202であることが記載されている。 ウ 上記【0015】より、引用文献1には、エンコーダ102は、ピッチ(周期)の異なる複数のインクリメンタル信号のうち、ピッチ切り替え信号により指示されたピッチのインクリメンタル信号を出力することが記載されている。 エ 上記【0015】及び【0022】より、引用文献1には、マイクロコンピュータ104は、3種類の異なるピッチα、β、γについて、2相のインクリメンタル信号の逆正接関数演算結果p1、p2、p3をそれぞれ求めることが記載されている。 オ 上記【0015】及び【0021】より、引用文献1には、マイクロコンピュータ104は、ピッチ切り替え信号によりピッチの異なる複数のインクリメンタル信号を順次検出し、アブソリュート位置エンコード処理により位置制御対象物101の絶対位置の演算を行うことが記載されている。 カ 上記【0022】?【0034】より、引用文献1には、アブソリュート位置エンコード処理は、3種類の異なるピッチα、β、γについて得られた、2相のインクリメンタル信号の逆正接関数演算結果p1、p2、p3を基にして、位置制御対象物101の絶対位置を求めるものであることが記載されている。 キ 上記【0017】?【0021】、【0037】?【0042】より、引用文献1には、マイクロコンピュータ104は、ピッチαの2相のインクリメンタル信号の逆正接関数演算結果に基づいて得られたインクリメンタル位置エンコード値を位置制御対象物101の相対位置演算結果とし、インクリメンタル位置エンコード値と位置制御目標値との差分を演算し、この差分が0となるように演算されたモータ制御量をモータ駆動部108に出力して、フィードバック制御する位置制御処理を行うことが記載されている。 ク 上記【0043】?【0046】より、引用文献1には、装置の起動時や、何らかの外乱や故障によりインクリメンタル位置エンコード値が異常となった場合などの際には、位置制御処理においてアブソリュート位置エンコード処理により位置制御対象物101の絶対位置の検出が実行され、得られた絶対位置を用いて、フィードバック制御に用いられるインクリメンタル位置エンコード値(相対位置)を絶対位置に換算する補正が行われることが記載されている。 ケ 上記【0052】より、引用文献1には、絶対位置検出の処理中に位置制御装置に衝撃などが加わり、位置制御対象物101の位置が変化してしまう場合に、絶対位置の演算が誤って実行されないようにするために、複数のインクリメンタル信号の検出と絶対位置検出処理を複数回連続して実行し、結果が一致または所定の閾値内に入っているかどうかを判定し、結果が不一致であれば再度検出処理を実行することで、絶対位置の演算が誤って実行されることを防ぐことが記載されている。 コ 上記ア?ケにおいて認定した記載内容を総合すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「モータ109を駆動させることで位置制御対象物101の位置を移動させ、エンコーダ102により前記位置制御対象物101の位置を検出し、位置制御手段であるマイクロコンピュータ104により前記位置制御対象物101が所望の位置に移動・停止するようにフィードバック制御される位置制御装置において、 前記エンコーダ102は、位置検出信号出力手段であり、前記位置制御対象物101の移動に応じて位置検出信号であるインクリメンタル信号を出力するものであり、前記インクリメンタル信号は位相が90°異なる2相の周期的に変化する信号201、202であり、 前記エンコーダ102は、ピッチ(周期)の異なる複数のインクリメンタル信号のうち、ピッチ切り替え信号により指示されたピッチのインクリメンタル信号を出力するものであり、 前記マイクロコンピュータ104は、3種類の異なるピッチα、β、γについて、2相のインクリメンタル信号の逆正接関数演算結果p1、p2、p3をそれぞれ求めるものであり、 前記マイクロコンピュータ104は、ピッチ切り替え信号によりピッチの異なる複数のインクリメンタル信号を順次検出し、アブソリュート位置エンコード処理により前記位置制御対象物101の絶対位置の演算を行うものであり、 前記アブソリュート位置エンコード処理は、3種類の異なるピッチα、β、γについて得られた、2相のインクリメンタル信号の逆正接関数演算結果p1、p2、p3を基にして、前記位置制御対象物101の絶対位置を求めるものであり、 前記マイクロコンピュータ104は、ピッチαの2相のインクリメンタル信号の逆正接関数演算結果に基づいて得られたインクリメンタル位置エンコード値を位置制御対象物101の相対位置演算結果とし、インクリメンタル位置エンコード値と位置制御目標値との差分を演算し、この差分が0となるように演算されたモータ制御量をモータ駆動部108に出力して、フィードバック制御する位置制御処理を行うものであり、 装置の起動時や、何らかの外乱や故障によりインクリメンタル位置エンコード値が異常となった場合などの際には、位置制御処理においてアブソリュート位置エンコード処理により位置制御対象物101の絶対位置の検出が実行され、得られた絶対位置を用いて、フィードバック制御に用いられるインクリメンタル位置エンコード値(相対位置)を絶対位置に換算する補正が行われ、 絶対位置検出の処理中に位置制御装置に衝撃などが加わり、前記位置制御対象物101の位置が変化してしまう場合に、絶対位置の演算が誤って実行されないようにするために、複数のインクリメンタル信号の検出と絶対位置検出処理を複数回連続して実行し、結果が一致または所定の閾値内に入っているかどうかを判定し、結果が不一致であれば再度検出処理を実行することで、絶対位置の演算が誤って実行されることを防ぐ、 位置制御装置。」 2 引用文献2 上記引用文献2には、以下の2つの技術事項(以下、「引用文献2記載事項1」及び「引用文献2記載事項2」という。)が記載されていると認められる。(下線は当審で付した。)。 [引用文献2記載事項1] 「固定要素22に対する可動要素21の所定の基準位置に対する変位量である絶対位置Pabsの検出を行う位置検出手段であって、 (【0012】、【図2】) 前記可動要素21に備えられた、等間隔の反射パターン列をそれぞれ有し、全長でスリット数の異なる第一のトラックパターン203a(P1間隔)及び第二のトラックパターン203b(P2間隔)を含み、前記第一及び第二のトラックパターン203a、203b及び前記絶対位置Pabsに基づいて変化する、前記第一及び第二のトラックパターン203a、203bにそれぞれ対応する複数の変位信号(第一のA、B相変位信号S1rA、S1rB及び第二のA、B相変位信号S2rA、S2rB)を、スケール切替え部103からの切替え信号に応じて、切り替えて順次出力するABSセンサー104と、(【0015】?【0020】、【図1】、【図3】) 前記ABSセンサー104により出力された前記第一のA、B相変位信号S1rA、S1rBに基づいて、前記第一のトラックパターン203aに対応する第一の相対位置信号Inc1を得、 (【0026】?【0033】、【図7】) 前記第二のA、B相変位信号S2rA、S2rBに基づいて、前記第二のトラックパターン203bに対応する第二の相対位置信号Inc2を得、 (【0035】?【0042】、【図7】) 前記第一及び第二の相対位置信号Inc1、Inc2に基づいて前記絶対位置Pabsを算出するABS算出部102と、を有し、 (【0026】、【0046】?【0056】、【図8】) 信号レベルの取得のタイミングがT1、T2、T3の順であるとき、T1において取得された前記第一の相対位置信号Inc1の信号レベルV1inc1と、T3において取得された前記第一の相対位置信号Inc1の信号レベルV3inc1を用いて、移動量算出部106により、T3とT2の間において可動要素21が移動した移動量ΔPvを算出し、 (【0045】、【0057】?【0065】、【図9】、【図10】) 前記移動量ΔPvを用いて、T2において取得された前記第二の相対位置信号Inc2の信号レベルV2inc2に対して外挿処理(移動量補正)を行って、T3における前記第二の相対位置信号Inc2の信号レベルV3inc2を外挿値として算出し、 (【0045】、【0066】?【0068】、【図9】、【図10】) T3において取得した前記第一の相対位置信号Inc1の信号レベルV3inc1と、外挿計算によって求めた前記第二の相対位置信号Inc2の信号レベルV3inc2から、全長に対して1周期ののこぎり波となるバーニア信号Pv1を算出し、絶対位置Pabsを算出することにより、 (【0046】?【0047】、【0074】、【図5】、【図6】) スケール切替え部103によるスケール切替えのための信号取得遅延時間Tsにおける可動要素21の移動により発生する誤差成分Emを0として、絶対位置の誤検出が発生しないようにした、(【0074】) 位置検出手段。」 [引用文献2記載事項2] 「【0099】 なお、実施例1では、Inc1、Inc2、Inc1の順で信号を取得し、時間の異なる2点(最初と最後)においてサンプリングされた2つのInc1に基づいて、2回目のInc1データ採取時には採取していないInc2を外挿により算出した。これは、信号を取得する間の総移動量を計測し平均化できるため、可動要素の移動量(位置)を測定する場合においては理想的な信号の取得順である。データ採取の周期内での可動要素の移動量を特定する場合において、短周期の(スケール全長Lmax内での周期の数が多い)信号(Inc1又はInc2)を使用すると分解能は上がる。しかし、データ採取の周期内での可動要素の移動量が複数の周期に跨る程度に大きい場合には、移動量の特定が単純にはできなくなる。従って、そのような場合には、長周期の(スケール全長Lmax内での周期の数が少ない)信号(Inc1又はInc2)を使用し、データ採取の周期内での可動要素の移動量が1周期内にあり、簡易な方法で移動量を特定することが可能となる。このように、移動量補正はInc1で行いたいが、絶対位置を算出した後の相対位置の検出をInc2で行いたい場合は、Inc1、Inc1、Inc2の順で信号を取得し、最初と最後から2番目で取得した2つの時間におけるInc1から最後のInc2を取得したタイミングにおけるInc1を外挿して求めてもよい。このようにすることで、絶対位置算出から相対位置算出に切替わる際に、スケール切替え部103によるスケール切替えのための信号取得遅延時間をなくすことができる。」 3 引用文献3 上記引用文献3には、以下の技術事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [引用文献3記載事項] 「微細スケール13A、中間スケール13B、粗スケール13Cの3つのインクリメンタルスケールを含むエンコーダパターン10と、 エンコーダパターン10のインデックススケール16の送信コイル18をLCR共振によって駆動するための駆動回路20と、 前記微細スケール13A、中間スケール13B、粗スケール13Cからの受信信号をそれぞれ受信する受信回路30A、30B、30Cと、 該受信回路30A、30B、30Cからの出力に基づいて、電源投入時に全てのスケールを検出し、絶対位置を求めてカウンタ42にプリセットし、それ以降は、最下位の微細スケール13Aのみを検出し、前記カウンタ42のプリセット値に対するインクリメンタル計数を行なうことによって、絶対位置を求める演算回路40と、 を備えた電磁誘導式ABSエンコーダにおいて、 (【0016】?【0020】) 微細スケール13Aによるインクリメンタル計数と並行して、微細スケール13Aと他のスケール(例えば中間スケール13B又は粗スケール13C)による絶対位置検出を行い、これらを相互に比較することにより、位置の照合を行なうようにした、(【0021】) 電磁誘導式ABSエンコーダ。」 4 引用文献4 上記引用文献4には、以下の技術事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [引用文献4記載事項] 「周期の異なる複数のパターンを有するスケール部213と、当該スケール部213に対向して配置され、スケール部213が有するパターンを読み取り複数のアナログ信号を出力する信号出力部211を有するアブソリュートエンコーダユニット21を備え、ズームリング11を動かすことで、ズームレンズ10のズーミングが可能となるレンズ装置において、 (【0014】) ズームリング11の回転位置の変化に伴って信号出力部211から出力される信号から、ズームリング11の絶対位置を算出して、その絶対位置を基準位置として設定できる場合、 (【0017】?【0018】、【0031】) その基準位置と、相対位置検出手段231で得た相対位置カウンタ値とから、ズームリング11の位置の算出を行うこと。 (【0034】?【0039】)」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「位置制御対象物101」は、「モータ109を駆動させることで」「位置」が「移動」するものであるところ、「位置制御対象物101」の「位置」は、基準となる何らかの物(基準物)に対する位置であると認められるから、当該基準物と「位置制御対象物101」とが、それぞれ本願発明1の「第1要素」及び「第2要素」に相当する。 イ 引用発明の「エンコーダ102」は、「前記位置制御対象物101の位置を検出」するものであり、上記アにおいて述べたとおり、「位置制御対象物101」の「位置」は、基準物に対する位置であるから、このような「前記位置制御対象物101の位置を検出」する「エンコーダ102」を備えた引用発明の「位置制御装置」は、本願発明1の「第1要素に対する第2要素の位置の検出を行う位置検出装置」に相当する。 ウ 引用発明の「エンコーダ102」が「出力」する「位置検出信号であるインクリメンタル信号201、202」は、「位相が90°異なる2相の周期的に変化する信号」であるから、本願発明1の「変位信号」に相当し、引用発明の「ピッチ(周期)の異なる複数のインクリメンタル信号」は、本願発明1の「互いに異なる複数の周期」に「それぞれ対応する複数の変位信号」に相当する。 エ 引用発明の「エンコーダ102」は、「ピッチ切り替え信号により指示されたピッチのインクリメンタル信号を出力するもの」であるから、本願発明1の「互いに異なる複数の周期」に「それぞれ対応する複数の変位信号を、切替えをして順次出力するセンサ」に相当する。 オ 引用発明の「マイクロコンピュータ104」が求める「2相のインクリメンタル信号の逆正接関数演算結果」は、本願発明1の「変位信号に基づいて」得られた「相対位置信号」に相当し、引用発明の「逆正接関数演算結果p1、p2、p3」は、本願発明1の「複数の相対位置信号」に相当する。 カ 引用発明の「マイクロコンピュータ104」は、「ピッチ切り替え信号によりピッチの異なる複数のインクリメンタル信号を順次検出」し、「3種類の異なるピッチα、β、γ」に対応して「逆正接関数演算結果p1、p2、p3をそれぞれ求めるもの」であるから、本願発明1の「前記センサにより順次出力された前記複数の変位信号に基づいて」、「それぞれ対応する複数の相対位置信号を得」る「処理部」に相当する。 キ 引用発明の「前記位置制御対象物101の絶対位置」は、「3種類の異なるピッチα、β、γについて得られた、2相のインクリメンタル信号の逆正接関数演算結果p1、p2、p3を基にして」求められるから、本願発明1の「該複数の相対位置信号に基づいて」得られる「前記位置としての第1位置」に相当する。 したがって、引用発明の「前記位置制御対象物101の絶対位置の演算を行う」「マイクロコンピュータ104」は、本願発明1の「該複数の相対位置信号に基づいて前記位置としての第1位置を得」る「処理部」に相当する。 ク 引用発明の「ピッチαの2相のインクリメンタル信号の逆正接関数演算結果」は、本願発明1の「前記複数の相対位置信号のうちの第1相対位置信号」に相当し、引用発明の「位置制御対象物101の相対位置演算結果」である「インクリメンタル位置エンコード値」は、本願発明1の「相対位置」に相当する。 そして、引用発明では、「位置制御対象物101の絶対位置の検出が実行され」た場合に「得られた絶対位置を用いて」、「インクリメンタル位置エンコード値(相対位置)を絶対位置に換算する補正が行われ」ており、絶対位置に対する相対位置を得ているといえるから、このことは、本願発明1の「前記第1位置に対する相対位置」を「得る」ことに相当する。 そうすると、このような「位置制御処理」を行う、引用発明の「マイクロコンピュータ104」は、本願発明1の「前記第1位置に対する相対位置を前記複数の相対位置信号のうちの第1相対位置信号に基づいて得る処理部」に相当する。 ケ 上記ア?クより、本願発明1と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。 [一致点] 「第1要素に対する第2要素の位置の検出を行う位置検出装置であって、 互いに異なる複数の周期にそれぞれ対応する複数の変位信号を、切替えをして順次出力するセンサと、 前記センサにより順次出力された前記複数の変位信号に基づいて、それぞれ対応する複数の相対位置信号を得、該複数の相対位置信号に基づいて前記位置としての第1位置を得、前記第1位置に対する相対位置を前記複数の相対位置信号のうちの第1相対位置信号に基づいて得る処理部と、 を有する、 位置検出装置。」 [相違点1] 本願発明1では、「センサ」が、「前記第1要素及び前記第2要素のうち一方に備えられた、互いに異なる複数の周期をそれぞれ有する複数のパターン列を含み」、「複数の変位信号」が、「前記複数のパターン列および前記位置に基づいて変化する、前記複数のパターン列にそれぞれ対応する」ものであり、「複数の相対位置信号」が、「前記複数のパターン列にそれぞれ対応する」ものであるのに対して、引用発明では、そのような構成を備えているか明らかではない点。 [相違点2] 本願発明1では、「前記処理部は、前記相対位置を得た後に、前記複数の相対位置信号のうちの前記第1相対位置信号とは異なる第2相対位置信号の値としての第1の値および第2の値と、前記第1相対位置信号の値としての第3の値とを、この順に得、前記第1の値および前記第2の値のうち一方と、前記第3の値とに基づいて、前記第1要素に対する前記第2要素の位置としての第2位置を得、前記相対位置と、前記第1の値および前記第2の値とに基づいて、前記相対位置の更新値を得、前記第2位置と前記更新値とに基づいて、前記第1要素に対する前記第2要素の位置を得る処理を行う」ものであるのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。 (2)判断 上記相違点1及び2について検討する。 ア まず、上記相違点1について検討すると、引用文献2記載事項1において、「位置検出手段」の「ABSセンサー104」は、「前記可動要素21に備えられた、等間隔の反射パターン列をそれぞれ有し、全長でスリット数の異なる第一のトラックパターン203a(P1間隔)及び第二のトラックパターン203b(P2間隔)を含」むものであり、また、「ABSセンサー104」が「順次出力」する「複数の変位信号(第一のA、B相変位信号S1rA、S1rB及び第二のA、B相変位信号S2rA、S2rB)」は、「前記第一及び第二のトラックパターン203a、203bにそれぞれ対応する」ものであり、さらに、「第一の相対位置信号Inc1」及び「第二の相対位置信号Inc2」は、それぞれ「第一のトラックパターン203a」及び「第二のトラックパターン203b」に「対応する」ものである。 そして、引用発明と上記引用文献2記載事項1とは、いずれも固定要素に対する可動要素の絶対位置の検出を行う位置検出手段であるという点で共通するから、上記引用文献2記載事項1を引用発明に適用することにより、上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ 次に、上記相違点2について検討すると、上記引用文献2記載事項1において、「信号レベルの取得のタイミングがT1、T2、T3の順であるとき」、「第一の相対位置信号Inc1の信号レベルV1inc1」を「T1において取得」し、「第二の相対位置信号Inc2の信号レベルV2inc2」を「T2において取得」し、「第一の相対位置信号Inc1の信号レベルV3inc1」を「T3において取得」しているから、相対位置信号の値の取得順序は、Inc1、Inc2、Inc1であって、本願発明1のようにInc2(「第1の値」)、Inc2(「第2の値」)、Inc1(「第3の値」)の取得順序にはなっていない。 したがって、上記引用文献2記載事項1を引用発明に適用しても、上記相違点2に係る本願発明1の構成である「前記複数の相対位置信号のうちの前記第1相対位置信号とは異なる第2相対位置信号の値としての第1の値および第2の値と、前記第1相対位置信号の値としての第3の値とを、この順に得、」を得ることはできない。 ウ もっとも、上記引用文献2記載事項2には、「Inc1、Inc2、Inc1の順で信号を取得」する代わりに、「移動量補正はInc1で行いたいが、絶対位置を算出した後の相対位置の検出をInc2で行いたい場合」には、「Inc1、Inc1、Inc2の順で信号を取得」することが開示されている。 エ しかしながら、上記引用文献2記載事項1において、T1、T2、T3にInc1、Inc2、Inc1の信号レベルをそれぞれ取得するのは、T3で取得したInc1の信号レベルV3inc1(取得値)と、外挿処理で算出したInc2の信号レベルV3inc2(外挿値)から、絶対位置Pabsを算出することにより、スケール切替え部103によるスケール切替えのための信号取得遅延時間Tsにおける可動要素21の移動により発生する誤差成分Emを0として、絶対位置の誤検出が発生しないようにするためである。 そして、引用文献2記載事項2においても、「Inc1、Inc1、Inc2の順で信号を取得し、最初と最後から2番目で取得した2つの時間におけるInc1から最後のInc2を取得したタイミングにおけるInc1を外挿して求めてもよい。このようにすることで、絶対位置算出から相対位置算出に切替わる際に、スケール切替え部103によるスケール切替えのための信号取得遅延時間をなくすことができる。」とあるから、上記引用文献2記載事項1及び2を合わせて引用発明に適用して、Inc2、Inc2、Inc1の取得順序にしたとしても、それによって得られるのは、最初のInc2と2番目のInc2の取得値から、最後タイミングにおけるInc2を外挿値として算出し、このInc2の外挿値と最後のタイミングで取得したInc1の値から、絶対位置Pabsを算出することであって、本願発明1のように、「前記第1の値および前記第2の値のうち一方と、前記第3の値とに基づいて、前記第1要素に対する前記第2要素の位置としての第2位置を得」るものではなく、「前記相対位置と、前記第1の値および前記第2の値とに基づいて、前記相対位置の更新値を得」るものでもない。 オ また、上記引用文献3記載事項や上記引用文献4記載事項の開示内容に照らしても、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることができるとはいえない。 カ そうすると、引用発明並びに引用文献2記載事項1、引用文献2記載事項2、引用文献3記載事項及び引用文献4記載事項に基づいて、上記相違点2に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえないから、本願発明1は、当業者であっても、容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2?14について 本願発明2?14も、上記相違点2に係る本願発明1の構成と実質的に同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 小括 上記1及び2において検討したとおりであるから、本願発明1?14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 第6 原査定について 原査定は、上記第5の1(1)において示した相違点2について、当業者が容易に想到し得たものである旨の判断をした上で、本願発明1?14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとしている。 しかしながら、上記第5の1(2)イ?カにおいて述べたとおり、上記相違点2に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえないから、原査定の拒絶の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-01-07 |
出願番号 | 特願2014-228844(P2014-228844) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01D)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉田 久 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 中塚 直樹 |
発明の名称 | 位置検出装置、レンズ装置、撮像装置、および指令装置 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 齋藤 正巳 |
代理人 | 吉澤 弘司 |