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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1358454
審判番号 不服2019-4165  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-29 
確定日 2020-01-28 
事件の表示 特願2017- 64012「疑似白色系LED装置及びシリコーンキャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月25日出願公開、特開2018-166199、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成29年3月28日を出願日とする出願であって平成30年2月20日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年4月26日に意見書が提出されると共に手続補正がされ、平成30年9月28日付けで最後の拒絶理由通知がされ、平成30年12月7日に意見書が提出されたが、平成30年12月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年3月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成30年12月26日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

本願請求項8、9に係る発明は、以下の引用文献1ないし11に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2007-95998号公報
2.特開2011-249573号公報
3.特開平10-190065号公報
4.特開2010-100743号公報
5.国際公開第2016/056316号
6.特開2014-36083号公報
7.国際公開第2011/148674号
8.特開2015-195377号公報
9.特表2014-514614号公報
10.特開2008-10749号公報
11.米国特許出願公開第2015/0221835号明細書


第3 本願発明

1 本願発明について

本願請求項1-9に係る発明(以下「本願発明1」などという。)は、平成30年3月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定される発明であり、本願発明8,9は以下のとおりの発明である。


【請求項8】
請求項1に記載の疑似白色系LED装置の前記シリコーンキャップであり、前記青色LED素子と前記青色LED素子を収容する凹部を備える上面視したときに前記矩形のパッケージ部材と前記凹部に収容されたLED素子を封止して前記発光面を形成する前記透明樹脂封止材とを備える前記青色LED装置の、前記発光面を覆うように被せられる、YAG系蛍光体と光拡散材とシリコーンポリマーとを少なくとも含むシリコーンキャップであって、
前記発光面から発せられる光を透過させて出射する出射面領域を含み、前記出射面領域は厚さ0.7?1.5mmの厚肉部を少なくとも含み、
前記シリコーンポリマー100質量部に対して2?20質量部の前記光拡散材を含有し、
前記出射面領域が、平面,凸面,凹面,またはそれらの組み合わせによる立体曲面を含むことを特徴とするシリコーンキャップ。

【請求項9】
前記発光面上で前記矩形の中心を原点とし、前記矩形の長径方向にX軸、短径方向に前記X軸と直交するY軸を設定し、前記X軸と前記Y軸に直交する軸をZ軸とした場合、
前記出射面領域の周囲に前記パッケージ部材の側面に当接する周辺領域を有し、前記周辺領域の厚さt2が前記出射面領域の前記Z軸上の厚さt1の1/5?1/2である請求項8に記載のシリコーンキャップ。



2 本願発明8について
(1)
本願発明8は「請求項1に記載の疑似白色系LED装置の前記シリコーンキャップであり、前記青色LED素子と前記青色LED素子を収容する凹部を備える上面視したときに前記矩形のパッケージ部材と前記凹部に収容されたLED素子を封止して前記発光面を形成する前記透明樹脂封止材とを備える前記青色LED装置の、前記発光面を覆うように被せられる、YAG系蛍光体と光拡散材とシリコーンポリマーとを少なくとも含むシリコーンキャップであって」と特定されており、請求項1を引用した発明である。

(2)
そのため、本願発明8は「YAG系蛍光体と光拡散材とシリコーンポリマーとを少なくとも含むシリコーンキャップであって、発光面から発せられる光を透過させて出射する出射面領域を含み、出射面領域は厚さ0.7?1.5mmの厚肉部を少なくとも含み、シリコーンポリマー100質量部に対して2?20質量部の光拡散材を含有し、出射面領域が、平面,凸面,凹面,またはそれらの組み合わせによる立体曲面を含むシリコーンキャップ」のうち、請求項1の記載に基づく、「青色LED素子と青色LED素子を収容する凹部を備える上面視したときに矩形のパッケージ部材と凹部に収容されたLED素子を封止して発光面を形成する透明樹脂封止材とを備える青色LED装置」に被せて用いた場合に「発光面上で矩形の中心を原点とし、矩形の長径方向にX軸、短径方向にX軸と直交するY軸を設定し、X軸とY軸に直交する軸をZ軸とした場合、Z軸の正方向を配光角0°とした場合、X軸の方向とY軸の方向の何れにおいても配光角-90?90°の全範囲において、XYZ表色系の色度座標(x,y)のx値の最大値と最小値との差及びy値の最大値と最小値との差が、何れも0.06以下であり、出射光がX軸の方向とY軸の方向の何れにおいても135°以上の半値角を有する」ものと解するのが相当である。


第4 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審で付加。以下同様。)

(1)

【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばLED(Light Emitting Diode)素子のような発光素子から出射する青色光、紫外光等の励起光によって蛍光体を励起させ、上記発光素子の発光色とは異なる発光色を得る波長変換型の発光装置に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、LED素子を光源とし、このLED素子からの発光によりその周りに配置された蛍光体を励起し、LED素子の本来の発光色と異なる発光(蛍光)色を出射させる波長変換型LEDが種々に検討されてきた。例えば、GaN系LED素子からの青色光によりYAG(Yttrium Aluminum Garnet)系の蛍光体を励起し、黄色系の蛍光を出射させ白色光にする発光装置が実用化されている。このような波長変換型LEDの発光装置は、大型ディスプレイ、自動車の計器類および音響装置等の表示装置、あるいはバックライトをはじめとする照明灯のような照明装置に好適である。

【0003】
上記発光装置の主要部は、通常、図6に示すような断面構造をしている(例えば、参考文献1参照)。リードフレームを固定する例えば樹脂から成るケース体101が略すり鉢状の凹部102を有するように形成され、LED素子103が、上記凹部102の底部にある第1のリード104のダイパッド部でマウントされている。この第1のリード104は外部接続用の一電極としてケース体101の外部に取り出される。そして、LED素子103上部は、上記リードフレームの第2のリード105にボンディングワイヤ106により接続され、この第2のリード105が外部接続用の他電極としてケース体101の外部に取り出されている。

【0004】
そして、蛍光体107を含有する透明樹脂108をケース体101の凹部102に充填し、LED素子103を封止している。このようにして波長変換型LEDの発光装置の要部が構成されている。ここで、発光装置の輝度ムラを小さくするために透明樹脂108に光の分散材が適量に添加される場合もある。

【0005】
しかし、上記発光装置の構造では、LED素子103から出射した発光がケース体101の外部に出るまでの透明樹脂108内の光路により、蛍光体107の励起される量が異なってくる。例えば、図6に示すような光路109よりも光路110の方が、LED素子103からの発光の通光する距離が長くなる。このために、上記光路110の通光による蛍光体107からの蛍光量が多くなり、ケース体101の外部に出てくる蛍光体107からの発光色の色ムラの発生が、その程度差を別にして不可避的となる。

【0006】
そこで、上記問題を解決する手段として、図7に示すような発光装置の構造が提案されている。この発光装置は、ケース体101の凹部102に上から蓋をするように例えば平板状の略肉厚が一定のシリコンキャップ111を被覆させる構造になっている。ここで、シリコンキャップ111中には、蛍光体112が添加されている。なお、その他の部位の構造は図6で説明した発光装置の場合と同様になっている。
この場合、LED素子103から出射する発光のシリコンキャップ111中での通光距離は、図6の場合と較べてその一様性が増す。このために、シリコンキャップ111内の蛍光体112からの発光色の色ムラは大幅に低減するようになる。そして、この構造の場合、シリコンキャップ111内における蛍光体112の面内分布を調整することにより、更にその色ムラを低減させることが可能になる。



(2)以上(1)の記載のうち図7に示される記載をまとめると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「発光素子(LED素子103)から出射する青色光の励起光によって蛍光体を励起させ、上記発光素子の発光色とは異なる発光色を得る波長変換型の発光装置のシリコンキャップであって、([0002])
発光装置は、ケース体101が凹部102を有するように形成され、LED素子103が、上記凹部102の底部にある第1のリード104のダイパッド部でマウントされており、([0003])
発光装置は、ケース体101の凹部102に上から蓋をするように平板状の略肉厚が一定のシリコンキャップ111で被覆され、([0006])
シリコンキャップ111中には、蛍光体112が添加されており、([0006])
蛍光体はYAG(Yttrium Aluminum Garnet)系の蛍光体である([0002])
発光装置のシリコンキャップ。」


2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
この発明は、発光ダイオード(LED)などの光源を用いた発光装置に関する。

【背景技術】
【0002】
LEDなどの光源が放射する単色光と、蛍光体が放射する蛍光とを混合することにより、擬似白色光を得る技術がある。

【0004】
従来の技術により得られる擬似白色光は、演色性が低い場合がある。また、演色性を高めようとすると、発光効率が犠牲になる場合や、構成が複雑になり製造コストが高くなる場合がある。
この発明は、例えば上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で、高い発光効率を維持したまま、演色性の高い光を得ることを目的とする。

【0022】
波長変換シート106に含まれる蛍光体108の平均粒径(D50)は、例えば5?20μm[マイクロメートル]である。波長変換シート106の膜厚は、例えば100?300μmである。
粒径が大きい方が一般的には発光効率が高い。しかし、透過型シートの場合、平均粒径が大きすぎると発光効率が低下する。また、平均粒径が小さすぎると蛍光体が劣化しやすくなる。このため、蛍光体108の平均粒径は、5?20μmであることが望ましい。

【0048】
図14は、この実施の形態における波長変換シート106の形状の更に別の例を示す側面視断面図である。
波長変換シート106は、半球状の部分を有し、その下から直接、白色LEDパッケージ102と嵌合する部分を設ける構成であってもよい。

【0050】
また、実施の形態1と同様、波長変換シート106は、拡散フィラーや、ガラスビーズ、二酸化チタンのような透過性がある粒体を内部に含有する構成であってもよい。あるい
は、波長変換シートを固定する接着剤(接着層107)の中に、拡散フィラーや透過性がある粒体を含有させる構成であってもよい。これにより、発光効率を高めることができる。



3 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の記載がある。

【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体含有組成物の製造方法に関する。より詳しくは、蛍光体が凝集することなく、また硬化させた硬化物中に、気泡が混入すること等が少ない蛍光体含有組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置は、通常、半導体発光素子(以下、適宜「LED」ともいう。)上に蛍光体及び液状媒体を含有する蛍光体含有組成物を塗布・乾燥し、これを硬化することによりLEDを封止して製造される。また、LED上に蛍光体を含有しない液状媒体を塗布・乾燥・硬化し、さらに蛍光体及び液状媒体を含有する蛍光体含有組成物を塗布・乾燥した多層構造によりLEDを封止する場合もある。いずれの場合にも、蛍光体を蛍光体含有組成物中に均一に分散させる目的、または蛍光体含有組成物の硬化物における散乱効果や上記硬化物に対する導電性を付与する目的等により、蛍光体とともにフィラーを蛍光体含有組成物に含有させることがある。なお、蛍光体含有組成物が溶剤を含有しない場合には、乾燥工程は省略される。このような、蛍光体含有組成物については、蛍光体や液状媒体の物性、性質などを考慮した種々の組成が開示されている(特許文献1?4参照)。

【0028】
((A)フィラーの含有率)
本発明の蛍光体含有組成物における無機粒子の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、その適用形態により自由に選定できる。例えば、(A)フィラーを光散乱剤として用いる場合は、その含有率は0.01重量%以上10重量%以下が好適である。また、例えば、(A)フィラーを骨材として用いる場合は、その含有率は1重量%以上50重量%以下が好適である。また、例えば、(A)フィラーを増粘剤(チキソ剤)として用いる場合は、その含有率は0.1重量%以上20重量%以下が好適である。また、例えば、(A)フィラーを屈折率調整剤として用いる場合は、その含有率は10重量%以上80重量%以下が好適である。(A)フィラーの量が少なすぎると所望の効果が得られなくなる可能性があり、多すぎると硬化物の密着性、透明性、硬度等の諸特性が低下する可能性がある。



4 引用文献10について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献10には、図面とともに次の記載がある。

【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光の波長を蛍光体で変換することによって所望の色調の光を発光する発光装置に関する。

【0024】
透光部30は、蛍光部20のLEDチップ11側の第1の面26に形成される。透光部30は、第1の面26全体を覆うように形成されることが生産性から好ましいが、LEDチップ11の発光を効率よく受光できる範囲例えば発光方向前方に部分的に形成してもよい。透光部30は樹脂成形体14の外表面16に密着し、蛍光部20は透光部30を挟んで樹脂成形体14を覆うように配置される。このように、透光部30が第1の面26に形成されることで、第1の面26においてLEDチップ11からの光が反射することを低減させ、発光装置40の輝度を向上させることができる。特に、透光部30の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.2mm以上1.0mm以下である。透光部30の厚さが0.1mm以上になると発光装置40の輝度が向上し、透光部30の厚さが1.0mmを超えると輝度向上効果に対して透光性材料のコスト増が大きくなるため、透光部30の厚さは1.0mm以下であることが好ましい。


5 引用文献11について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献11には、図面とともに次の記載がある。(訳文は、当審が作成した。)。

FIELD OF THE INVENTION

[0002]
In various embodiments, the present invention generally relates to light sources, and more specifically to phosphor-converted light sources.

[0261]
(・・・)FIG. 18B indicates for relatively large facet angles, the best spatial color uniformity is achieved in thin frame dies, whereas for relatively small facet angles the best spatial color uniformity is achieved at frame die heights in the range of about 0.4 mm to about 1.8 mm, or in the range of about 0.4 times to about 1.8 times the frame size 262 , or in the range of about 0.8 mm to about 1.6 mm or in the range of about 0.8 times to about 1.6 times the frame size 262 .(・・・)

(日本語訳:
発明の分野
[0002]
様々な実施形態において、本発明は光源に関し、より詳細には、蛍光体変換された光源に関するものである。

[0261]
(・・・)図18Bは、比較的大きなファセット角度において、最良の空間的色均一性は、薄いフレームダイにおいて達成されているのに対して、比較的小さなファセット角度に対する最良の空間的色均一性は、ダイの高さは約0.4mm?約1.8mmの範囲内、フレームサイズ262の約0.4倍から約1.8倍の範囲内、又は約0.8mm?約1.6mmの範囲、フレームサイズ262の約0.8倍?約1.6倍の範囲内で達成されることが示されている。(・・・)



第5 対比・判断

1 本願発明8について

(1)対比
本願発明8と引用発明1とを対比する。


引用発明1の発光装置は「青色光の励起光によって蛍光体を励起させ、上記発光素子の発光色とは異なる発光色を得る波長変換型の発光装置」であり、本願発明8の疑似白色系LED装置は「青色発光ダイオード(青色LED素子)の青色光をYAG:Ce蛍光体等のYAG系蛍光体で黄色に変換し、青色光と黄色光を混色することにより調色」(本件明細書の[0002])するものであるから、引用発明1の発光装置は本願発明8の疑似白色系LED装置に相当する。


上記アのとおりであるから、引用発明1の発光装置のシリコンキャップ111は、本願発明8のシリコーンキャップと疑似白色系LED装置に用いる点で共通する。


引用発明1の発光素子(LED素子103)は青色光を出射するものであるから、引用発明1の発光素子は本願発明8の青色LED素子に相当する。


引用発明1の発光装置はケース体101が凹部102を備え、LED素子103が凹部102の底部にマウントされているから、引用発明1のケース体101は本願発明8のパッケージ部材と、「青色LED素子を収容する凹部を備える」点で共通する。


引用発明1の発光装置は、LED素子103とケース体101とからなる部分を有しており、本願発明8の疑似白色系LED装置の青色LED装置と「青色LED素子と青色LED素子を収容する凹部を備える矩形のパッケージ部材備える」点で共通する。


引用発明1の発光装置は、ケース体101の凹部102に上から蓋をするように平板状の略肉厚が一定のシリコンキャップ111で被覆されているから、引用発明1の「シリコンキャップ111」は、本願発明8の「シリコーンキャップ」と青色LED装置を覆うように被せられている点で共通する。


引用発明1の「シリコンキャップ111中には蛍光体112が添加されて」、さらに、「蛍光体はYAG(Yttrium Aluminum Garnet)系の蛍光体である」から、引用発明1の「シリコンキャップ111」は、本願発明8の「前記シリコーンキャップは、YAG系蛍光体を含」むことで共通する。


引用発明1のシリコンキャップ111はLED素子103の光を透過させて出射する面を備えているから、引用発明1のシリコンキャップ111は、本願発明8のシリコーンキャップと、「青色LED装置から発せられる光を透過させて出射する出射面領域を備える」ことで共通する。


引用発明1のシリコンキャップ111は「平板状の略肉厚が一定」であるから、本願発明8の「前記出射面領域が、平面,凸面,凹面,またはそれらの組み合わせによる立体曲面を含む」シリコーンキャップの出射面領域が平面であるものに相当する。


したがって、本願発明8と引用発明1とは、次の(一致点で)一致し、(相違点1)ないし(相違点6)で相違する。

(一致点)
「疑似白色系LED装置のシリコーンキャップであり、青色LED素子と前記青色LED素子を収容する凹部を備えるパッケージ部材とを備える前記青色LED装置を覆うように被せられる、YAG系蛍光体とシリコーンポリマーとを少なくとも含むシリコーンキャップであって、
前記青色LED装置から発せられる光を透過させて出射する出射面領域を含み
前記出射面領域が、平面,凸面,凹面,またはそれらの組み合わせによる立体曲面を含むことを特徴とするシリコーンキャップ。」

(相違点1)
本願発明8のパッケージ部材は「上面視したときに矩形」である一方、引用発明1にはケース体101の形状について明記されていない点。

(相違点2)
本願発明8の青色LED装置は凹部に収容された青色LED素子を「封止して前記発光面を形成する前記透明樹脂封止材」を備えている一方、引用発明1にはこの点について特定されていない点。

(相違点3)
本願発明8の青色LED装置に覆うように被せられたシリコーンキャップは青色LED装置の「発光面」を覆っている一方、引用発明1のシリコンキャップ111はケース体101の凹部に上から蓋をするもので、「発光面」を覆っているか不明な点。

(相違点4)
本願発明8のシリコーンキャップは、「光拡散材」を含み、「前記シリコーンポリマー100質量部に対して2?20質量部の前記光拡散材を含有」する一方、引用発明1にはこの点が特定されていない点。

(相違点5)
本願発明8は「前記出射面領域は厚さ0.7?1.5mmの厚肉部を少なくとも含」む一方、引用発明1にはこの点が特定されていない点。

(相違点6)
本願発明8は疑似白色系LED装置のシリコーンキャップが「請求項1に記載の」疑似白色系LED装置のシリコーンキャップであり「青色LED素子と青色LED素子を収容する凹部を備える上面視したときに矩形のパッケージ部材と凹部に収容されたLED素子を封止して発光面を形成する透明樹脂封止材とを備える青色LED装置」に被せて用いた場合に「発光面上で矩形の中心を原点とし、矩形の長径方向にX軸、短径方向にX軸と直交するY軸を設定し、X軸とY軸に直交する軸をZ軸とした場合、Z軸の正方向を配光角0°とした場合、X軸の方向とY軸の方向の何れにおいても配光角-90?90°の全範囲において、XYZ表色系の色度座標(x,y)のx値の最大値と最小値との差及びy値の最大値と最小値との差が、何れも0.06以下であり、出射光がX軸の方向とY軸の方向の何れにおいても135°以上の半値角を有する」一方、引用発明1にはこの点が特定されていない点。


(2)判断
ア (相違点1)について検討する。
引用文献1の図5には発光装置10のケース体11の上面図が開示されており、ケース体11は「上面視したときに矩形」であることが見て取れる。


そうすると、引用発明1においてもケース体101を「上面視したときに矩形」とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。

イ (相違点2)について検討する。
引用文献1の[0004]には「蛍光体107を含有する透明樹脂108をケース体101の凹部102に充填し、LED素子103を封止している。」と記載され[0006]には「そこで、上記問題を解決する手段として、図7に示すような発光装置の構造が提案されている。(・・・)ここで、シリコンキャップ111中には、蛍光体112が添加されている。なお、その他の部位の構造は図6で説明した発光装置の場合と同様になっている。」と記載されている。
ここで、LEDチップは透明樹脂で封止されるのが一般的であるから、引用発明1(図7の例)の凹部102も図6と同様に透明樹脂108が充填されている蓋然性がきわめて高く、仮にそうでないとしても凹部102を透明樹脂で封止することは当業者にとって容易に想到し得ることである。
また、透明樹脂を充填するにあたって、図6の例において透明樹脂108に含まれていた蛍光体107は、図7の例ではシリコンキャップ111中に含まれるのであるから、図7の例の凹部に充填される透明樹脂には蛍光体が含まれていないことは明らかである。

ウ (相違点3)について検討する。
本願発明8の発光面は、請求項8の記載に基づけば、凹部に収容されたLED素子を封止する透明樹脂封止材により形成されるものである。
そして、上記イで教示したことに基づいて透明樹脂を充填することがなされれば、引用発明1においてシリコンキャップ111はケース体101の凹部に上から蓋をするのであるから、発光面を覆っているといえる。
したがって、(相違点3)は実質的でない。

エ (相違点4)について検討する。
引用文献1の[0004]には「ここで、発光装置の輝度ムラを小さくするために透明樹脂108に光の分散材が適量に添加される場合もある。」と記載されており、ここで、上記イの蛍光体と同様に、図6の例において透明樹脂108に備えられた分散材を引用発明1(図7の例)においてシリコンキャップ111に備えるよう構成することは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
また、分散材の濃度をいかほどにするかは、当業者が適宜決定すべき設計事項であるところ、上記3で示したとおり、引用文献4には蛍光体含有組成物を有する半導体発光素子において、蛍光体含有組成物にフィラーを含有させること、及び、「(A)フィラーを光散乱剤として用いる場合は、その含有率は0.01重量%以上10重量%以下が好適である」([0028])と記載されているから、引用発明1においても、シリコンキャップ111に分散剤を相違点4に係る構成程度の含有率で備えるよう構成することは、当業者にとって容易に想到し得ることである。

オ (相違点5)及び(相違点6)について検討する。
(ア)
まず、相違点6について検討する。

引用文献2にはLED光源において、演色性を高めることや、光の色にグラデーション状の効果を得ることが、引用文献10にはLEDを用いた発光装置において、発光強度を向上させることが、引用文献11にはLED光源において、フレームダイの厚みを約0.4mm?約1.8mmの範囲とすると照射光の色均一性が達成されることが記載されているものの、いずれの文献にも配光角に基づくXYZ表色系の色度座標や出射光における半値角についての開示はない。
また、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3-9にも、配光角に基づくXYZ表色系の色度座標や出射光における半値角については記載されていない。

したがって、相違点6に係る構成は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-11に記載された事項に基づいて、容易に発明できたものではない。


(イ)
次に、相違点5について検討する。

a 引用文献2について検討する。
(a)
引用文献2には、LEDなどの光源が放射する単色光と、蛍光体が放射する蛍光とを混合することにより、擬似白色光を得るための波長変換シート106において、「波長変換シート106は、半球状の部分を有し、その下から直接、白色LEDパッケージ102と嵌合する部分を設ける構成であってもよい。([0048])」、「波長変換シート106は、拡散フィラーや、ガラスビーズ、二酸化チタンのような透過性がある粒体を内部に含有する構成であってもよい。([0050])」ことが記載されている。

(b)
ここで「波長変換シート106は、拡散フィラーや、ガラスビーズ、二酸化チタンのような透過性がある粒体を内部に含有する構成であってもよい。([0050])」という記載から、引用文献2の波長変換シート106は引用発明1のシリコンキャップ111と同等の構成と認められる。

(c)
しかしながら、引用文献2には「波長変換シート106の膜厚は、例えば100?300μmである。」([0022])と記載されているものの、「波長変換シート106が半球状の部分を有する」場合の厚みについては明記されていない。
また、引用文献2に記載の発明は「高い発光効率を維持したまま、演色性の高い光を得る」([0004])ための発明であり、「波長変換シート106が半球状の部分を有する」ことでどのような効果が得られるのかについて、特に言及されていない。
そうすると、引用文献2には波長変換シート106の厚みを100?300μmより厚くする必要性は読み取れない。

(d)
したがって、引用文献2に記載された事項を引用発明1に適用したとしても、シリコンキャップ111の厚さを本願発明8の厚さにすることは導き出せない。


b 引用文献10について検討する。
引用文献10には、光源からの光の波長を蛍光体で変換することによって所望の色調の光を発光する発光装置において、蛍光体が含まれている層とは異なる透光部30の厚さは好ましくは、0.2mm以上1.0mm以下であることが記載されている。
しかしながら、引用文献10に記載の透光部30は分散剤及び蛍光体を含有するものではなく、引用発明1のシリコンキャップ111に相当する部材ではない。
よって、引用文献10に透光部30の厚みとして上記のとおり記載があったところで、引用発明1の分散材及び蛍光体を含むシリコンキャップ111の厚みを同じ程度とする動機付けがあるとはいえない。


c 引用文献11について検討する。
引用文献11にはLED光源において、図18Bなどを参照すればフレームダイの厚みを約0.4mm?約1.8mmの範囲とすると照射光の色均一性が達成されることが記載されている。
引用文献11の図18Bに示されるグラフがどの実施形態について検討したものか明記されていないが、図1A、図1D、図1E、図1F、図1G、図1Hなどにおけるフレームダイの厚みについて検討していると考えられる。
しかしながら、フレームダイの厚みとは上記図中のどの部材のどの部分の厚みを意味しているのか必ずしも明らかではない。
よって、引用文献11にフレームダイの厚みとして上記のとおり記載があったところで、引用発明1の分散材及び蛍光体を含むシリコンキャップ111の厚みを相違点5に係る構成と同じ程度とする動機付けがあるとはいえない。

d 引用文献3-9について検討する。
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3-9にも、分散剤及び蛍光体を有する層の厚みをいかほどにするかは記載されていない。



したがって、引用文献2-11の記載があったとしても、引用発明1において「前記シリコーンキャップは、前記発光面を覆う出射面領域を有し、前記出射面領域は厚さ0.7?1.5mmの厚肉部を少なくとも含」むよう構成することは、当業者であっても容易に発明できたものとはいえない。


よって、本願発明8は引用発明1及び引用文献2-11に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


2 本願発明9について

本願発明9は、本願発明8に従属し、本願発明8の発明特定事項をすべて含むものである。
したがって、本願発明8と同じ理由(上記1参照)により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-11に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび

以上のとおり、本願発明8,9は、当業者が引用発明1及び引用文献2-11に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-01-14 
出願番号 特願2017-64012(P2017-64012)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 瀬川 勝久
田中 秀直
発明の名称 疑似白色系LED装置及びシリコーンキャップ  
代理人 江川 勝  
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