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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1358529
審判番号 不服2018-11021  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-10 
確定日 2020-01-06 
事件の表示 特願2015-549716「向上された送達能力を有する管腔内デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日国際公開、WO2014/100422、平成28年 3月10日国内公表、特表2016-507271〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は,2013年(平成25年)12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年12月20日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成29年9月15日付けの拒絶の理由の通知に対し,意見書が提出されることなく,平成30年4月9日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成30年8月10日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年8月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年8月10日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「近位区画と,遠位区画と,それらの間の中央区分とを備える撮像カテーテルであって,前記近位区画は,切削終端部分を有するハイポチューブを備え,前記遠位区画は,撮像要素を備え,前記中央区分は,可変剛性要素を備え,
前記可変剛性要素が,
前記ハイポチューブの前記切削終端部分に接合されるテーパ状ワイヤ,又は
前記ハイポチューブの前記切削終端部分に接合される渦巻切込管,
を有する,撮像カテーテル。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,国際出願日における国際特許出願の特許請求の範囲の翻訳文の請求項1の記載は次のとおりである。
「近位区画と,遠位区画と,それらの間の中央区分とを備える撮像カテーテルであって,前記近位区画は,ハイポチューブを備え,前記遠位区画は,撮像要素を備え,前記中央区分は,可変剛性要素を備える,撮像カテーテル。」

2 本件補正の適否
本件補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である,ハイポチューブに関し,「切削終端部分を有する」ものであると特定し,さらに,可変剛性要素に関し,「ハイポチューブの切削終端部分に接合されるテーパ状ワイヤ,又はハイポチューブの切削終端部分に接合される渦巻切込管を有する」ものであると特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とするものに該当する。そして,本件補正は,同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち同条第6項において準用する同法第126条第7項に規定される特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件に適合するものであるかについて検討する。

(1)補正発明
補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載及び引用発明
(2-1)引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された,本件出願の優先日前に頒布された特表2003-525638号公報(平成15年9月2日公表。以下,「引用文献1」という。)には,「脈管内画像ガイドワイヤ」に関して,図面とともに以下の事項が記載されている。

A 「【0002】
発明の技術分野
本発明は,脈管内画像ガイドワイヤ・システムおよびその使用法と製法に関し,さらに詳しくは,カテーテルを身体の血管内の所望の位置に向けるガイド・ルーメンを有する治療用カテーテルを受け取るために用いることのできる画像ガイドワイヤに関する。」

B 「【0030】
ガイドワイヤ本体16には,基部端22および末端部24を有する主要本体20が含まれる。主要本体20は,その基部端22での画像コア18のコネクタ40から,その末端部24でのガイドワイヤ10の末端部14から所定距離まで,好ましくは,およそ15乃至20cm延びる。主要本体20は,好ましくは,ニチノール・ハイポチューブ(nitinol hypotube)から形成される。というのは,それは,ガイドワイヤ本体において望まれる強度および柔軟性の特性を示すからである。ニチノールはまた,それがよじれを最小限化するので好ましいものであり,それ未満では,「柔らかい」状態へと,それが遷移してしまう便利な遷移温度(transition temperature)を有しており,特定の温度条件の下で曲げられた後,それはその元の形に戻るような形状記憶合金である。その他の超弾性材料,その他の金属合金およびプラスティックが含まれるその他の材料もまた使っても良いということを,当業者は理解するであろう。ニチノールが好ましい材料として特定されながらも,代わりの超弾性材料,金属合金,合成材料およびプラスティックが含まれるその他の材料もまた使用されて良いことが理解される。例えば,主要本体20は,編まれたポリイミド(braided polyimide),ポリエチレン,ピーク・ブレイド(peek braids)またはステンレス・スチールから形成されても良いということが考えられる。ニチノール主要本体20は,好ましくは,およそ0.035インチの外径を有している。
【0031】
ガイドワイヤ本体16の画像部分26は,主要本体20の末端部24へと接続され,そしてガイドワイヤ本体16の末端部14へと延びる。画像部分26は,画像コア18の画像デバイス42によって送信され,および/または受信される画像信号に対して実質的に透明である。好ましい形状において,画像部分26は,主要本体20の末端部24上に締まりばめ(interference fit)されるポリエチレンのプラスティック・チューブから形成される。代わりに,接着剤,機械的コネクタ等のような他の適切な取り付け方法が使用されても良い。さらに別の実施例において,画像部分26は,同時押し出し成形された,多層材または複合材料であっても良い。例として,画像部分26は,ポリエステル,ナイロン,高分子のストランド(strands)または長いピッチの金属ブレイド(braid)であって良い。
【0032】
しなやかな先端(floppy tip)28は,好ましくは,画像部分26の内側であって末端部に配置される。しなやかな先端28は,大動脈への外傷を防止し,かつ患者の血管を通して画像ガイドワイヤ10を操るのに役立つように設計されている。いくつかの実施例において,しなやかな先端28は,カテーテルを回転することによって,または舵取り機構(図示されていない)を稼働させることによって,異なる方向に向けることができる。しなやかな先端28は,好ましくは,透視診断法(fluoroscopy)のもとで見ることができるように,放射線不透過性の(radiopaque)柔軟なコイル・スプリングから形成されている。しなやかな先端28は,しなやかな先端28の上に画像部分26を熱的に形成することによって,または代わりに接着剤,プレスばめ,コネクタ,ファスナーなどのようなその他の適切な取り付け技術を用いることによって所定位置に保持される。代わりに,しなやかな先端28は,高分子化合物のコイル,ポリエチレン・カバーを備えるタングステン・コアまたはレーク・リージョン社(Lake Region, Inc.)によって生産されるもののような標準ガイドワイヤ先端であって良い。
【0033】
別の形態においては,ガイドワイヤ10は,しなやかな先端28無しで,末端の先により大きな柔軟性を残したまま構成されている。この場合には,放射線不透過性の製造者バンド(maker band)が画像部分26の末端部に配置される。
【0034】
画像コア18は,主として,ドライブ・シャフト44の末端部に取り付けられる画像デバイス46および,ドライブ・シャフト44の基部端に取り付けられるコネクタ40を有する管状ドライブ・シャフト44からなる。ドライブ・シャフト44は,単一の管状部材(図示されていない)からなっていて良く,または好ましくは,それは図1A乃至図2において示されるように,一緒に取り付けられるいくつかの素子であっても良い。ドライブ・シャフト44は,好ましくは,およそ0.022インチの外径を有するニチノール・チューブから形成され,そして図2に例示されるもののように現在好ましいいくつかの実施例において,テレスコープ型の部分48が含まれていても良い。」

C 「【0036】
画像デバイス42は,図1A乃至図1Cに示されるように,ドライブ・ケーブル50の末端部に取り付けられる。画像デバイス42は,画像が取られるべき身体組織の高品質の画像信号を作り出すいかなるタイプのデバイスであっても良いが,好ましくは超音波画像デバイスである。画像デバイス42には,超音波トランスデューサー56が載置されるハウジング54が含まれている。超音波画像デバイスの設計,構造および使用は,一般に周知の技術であって,それ故に詳細な説明はここには含まれていない。超音波トランスデューサー56は,放射状に外方向に画像を取るように配向され,そしてドライブ・シャフト44で回転されるとき取り囲んでいる組織の360度の放射状のスキャンを作り出す。代わりに,超音波トランスデューサー56は,前方を向く方向,または後方を向く方向,もしくはその間の任意の角度でそれが画像を取るように配向されても良い。」

D 「【0055】
図6および図7には,ガイドワイヤ本体16の堅固な主要本体20から柔らかでしなやかな画像部分26へと遷移する点に改良点を有する本発明の画像ガイドワイヤ10が示されている。主要本体20と画像部分26とで固さにかなりの差異があると,接続点でのストレスを起こすものを作り出しかねず,それは柔軟な画像部分26が,ガイドワイヤが小さな半径の経路を通って経路付けされるとき,鋭く曲がるおよび/または捩れるものとする傾向にある。この状態から開放するために,前述のように画像部分26を直接主要本体20に結合する代わりに,短い遷移チューブ108からなる段階的な遷移部120が主要本体20の末端部24に取り付けられ,そして画像部分26が,遷移チューブ108の他方の端部に取り付けられている。遷移チューブは,主要本体20の固さと画像部分26の固さとの間の固さを有するような材料から作られ,そしてそのように構成されている。
【0056】
図8および図9には,遷移チューブ110の末端部が自由にされたままとなっていることを除いて,図6および図7に関して記述されたものと同様である別の構成が,主要本体20と画像部分26との間の段階的な遷移部120について示されている。主要本体20の外径は,前述されたものから低減されていて,薄いプラスティックの層,好ましくはポリエチレンからなる,完全な長さのジャケット112が,主要本体20の全長を覆って形成されるように適応させている。主要本体20の低減された好適な厚さは,約0.0015インチのジャケット110の厚さに対して約0.032インチである。画像部分26とジャケット112は,厚さが変化する単一材料から形成されていて良い。この構成において,遷移チューブ110は,構造および材料において前述の遷移チューブ108に類似している。」

E 「【0057】
主要本体20と画像部分26との間の段階的な遷移部120の別のバリエーションが,図10および図11に示されている。図10および図11の画像ガイドワイヤ10は,主要本体20の末端部24がそれが末端方向に延びるにつれて,ピッチが増大しながら,螺旋形状114に構成されているということを除いて,図1乃至図3に示されているものと同一である。そして画像部分26は,螺旋形状114の上に延びている。螺旋形状114は,主要本体20のより柔軟な部分を作り出しており,それは,前述したものと同様の段階的に遷移する機能を果たしている。」

(イ)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は,脈管内画像ガイドワイヤに関するものである(【0002】)。
b 脈管内画像ガイドワイヤは,主要本体20と画像部分26と,それらの間の遷移部120とを備える(【0055】)。
c 主要本体20は,末端部24を有し(【0055】),ニチノール・ハイポチューブから形成される(【0030】)。
d 画像部分26は,画像デバイス42を備える(【0031】,【0034】,【0036】)。
e 遷移部120は,遷移チューブ110を備える(【0056】)。
f 遷移チューブ110は,主要本体20であるニチノール・ハイポチューブの末端部24に取り付けられる遷移チューブ110である(【0055】,【0056】)。

(ウ)上記(ア),(イ)から,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「主要本体20と画像部分26と,それらの間の遷移部120とを備える脈管内画像ガイドワイヤであって,前記主要本体20は,末端部24を有し,ニチノール・ハイポチューブから形成され,前記画像部分26は,画像デバイス42を備え,前記遷移部120が遷移チューブ110を備え,
前記遷移チューブ110は,
前記主要本体20である前記ニチノール・ハイポチューブの前記末端部24に取り付けられる遷移チューブ110,
である,脈管内画像ガイドワイヤ。」

(2-2)引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された,本件出願の優先日前に頒布された特表平9-511159号公報(平成9年11月11日公表。以下,「引用文献2」という。)には,「ハイポチューブを備えるバルーン拡張カテーテル」に関して,図面とともに以下の事項が記載されている。

F 「図2は,治療用カテーテルおよびガイドワイヤを示し,その両方が案内カテーテル内部の管腔内へ挿入される。案内カテーテルは,図2-図8には図示されていない。図2は,治療用カテーテル全体を示す。図3は,治療用カテーテルの遠位端を示す。カテーテルは,相対的により可撓性のある遠位本体管部分を提供するために,例えば,70/30のポリエチレン管(70%の高密度ポリエチレンおよび30%の低密度ポリエチレンを利用する)で作成される遠位本体管部分40から形成される。遠位本体管部分40の近位端には,近位本体管部分42が溶着され,2つは溶着域44(図3)で互いに溶着される。近位本体管部分42はより剛性であり,90/10ポリエチレン管(90%の高密度ポリエチレンおよび10%の低密度ポリエチレン)で作成される。
遠位本体管40の遠位端には,46でのように,膨張可能壁50および遠位端52を備える拡大可能拡張バルーン48が接着される。スリット60が,遠位本体管と近位本体管の間の溶着域44に形成される。可撓性案内管62は,拡張バルーン内で軸方向に延長し,その遠位端64は膨張バルーンの遠位端52に接着され,これを封止する。。案内管62は,拡張バルーンの近位端並びに遠位本体管40を通ってスリット60まで近位に延長する。このスリットは,遠位管部分と近位管部分との間の溶着域の壁にガイドワイヤ口を規定する。案内管の近位開放端は,ガイドワイヤ口60に封止される。
治療用カテーテルを使用する場合,ガイドワイヤ26(図1および図2に図示されるが,他の図には図示されない)は,近位本体管42の外面に沿って,ガイドワイヤ口60を通り,案内管62を通り,さらに案内管の遠位開放端64を通って延長し,拡張バルーンの遠位端を越えて外方に延長するガイドワイヤ遠位部分30(図1)を提供する。放射線不透過性バンド70は,バルーン内の案内管62の中間域を取り囲み,案内管60の一部および放射線不透過性バンド70上に延長するスリーブ(図示せず)などの適切な手段によりそれに固定される。
近位本体管42内に取り付けられ,その近位端近くの点から遠位に溶着域44に向かって延長するのが,薄い壁で形成される,中空でステンレス・スチール製の比較的剛性の管から形成されるハイポチューブ76である。ハイポチューブは,遠位開口部80で形成され,それに固定される遠位補強部分84を有する遠位端78(図3)を有する。ハイポチューブの遠位端は傾斜して切断され,遠位先端部で高さ約0.016インチ(0.41mm)のハイポチューブの端の一部と遠位開口部80とをその遠位端に残す。約0.003インチ(0.076mm)の細い方の遠位端および約0.016インチ(0.41mm)の太い方の近位端を持つ中実な先細ステンレス・スチール製ワイヤ84は,その近位端をハイポチューブの遠位端78の中に配置され,その遠位端78に溶接され(図4および図5を参照),ハイポチューブに中実な先細カテーテル補強拡張部を提供する。このようにして,ハイポチューブの遠位端部分は,ハイポチューブの内部(および遠位本体管部分40の内部)と連通する開口部80,および中実な補強先細ワイヤ部分84の両方を具備する。先細ワイヤ部分84は,ハイポチューブの遠位端から,溶着域44の長さ全体を遠位に横切って,溶着域の遠位の点まで延長する。図5に図示されるように,中実な先細ワイヤ84は,ハイポチューブの上方に開放する遠位端78の中に定置し,そこに溶接されている。先細補強ワイヤ84は,ガイドワイヤ口60を完全に横切ってその下を,その両方の側面を越えて延長し,ガイドワイヤ口が内部に形成されるカテーテルの部分に改善された剛性を与える。これにより,以下にさらに特に説明するように,(口60により)弱められたカテーテルの領域が,治療用カテーテルがガイドワイヤに沿って案内カテーテルに出入りするに従ってねじれる傾向が最小限となる。」(10頁25行-12頁17行)

(イ)上記記載から,引用文献2には,次の技術が記載されていると認められる。
「ハイポチューブの遠位端に溶接される先細補強ワイヤを有するカテーテル。」

(3)対比及び判断
ア 対比
補正発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「主要本体20」は,その文言の意味,機能又は構成等からみて,補正発明の「近位区画」に相当する。以下同様に,「画像部分26」は「遠位区画」に,「遷移部120」は「中央区分」に,「脈管内画像ガイドワイヤ」は各図面より管状要素を備えていることが明らかであるので「撮像カテーテル」に,「遷移チューブ110」は「可変剛性要素」に,「末端部24」は「切削終端部分」に,「ニチノール・ハイポチューブ」は「ハイポチューブ」に,「主要本体20は,末端部24を有し,ニチノール・ハイポチューブから形成され」という態様は「近位区画は,切削終端部分を有するハイポチューブを備え」という態様に,「画像デバイス42」は「撮像要素」に,「取り付けられる」という態様は「接合される」という態様に,それぞれ相当する。
また,引用発明の「遷移チューブ110」と補正発明の「テーパ状ワイヤ」及び「渦巻切込管」とは,「遷移部材」という概念で共通し,よって,引用発明の「遷移チューブ110は,主要本体20であるニチノール・ハイポチューブの末端部24に取り付けられる遷移チューブ110,である」という態様と補正発明の「可変剛性要素が,ハイポチューブの切削終端部分に接合されるテーパ状ワイヤ,又はハイポチューブの切削終端部分に接合される渦巻切込管,を有する」という態様とは,「可変剛性要素が,ハイポチューブの切削終端部分に接合される遷移部材,を有する」という概念で共通する。

してみると,補正発明と引用発明とは,以下の点において一致する。
「近位区画と,遠位区画と,それらの間の中央区分とを備える撮像カテーテルであって,前記近位区画は,切削終端部分を有するハイポチューブを備え,前記遠位区画は,撮像要素を備え,前記中央区分は,可変剛性要素を備え,
前記可変剛性要素が,
前記ハイポチューブの前記切削終端部分に接合される遷移部材,
を有する,撮像カテーテル。」

そして,補正発明と引用発明とは,以下の点において相違する。
[相違点]
遷移部材に関し,補正発明は,「テーパ状ワイヤ」又は「渦巻切込管」であるのに対し,引用発明は,「遷移チューブ110」である点。

イ 判断
上記相違点について,以下検討する。
引用文献2には,剛性を適切に遷移させるために,ハイポチューブの遠位端に溶接される先細補強ワイヤを有するカテーテルの技術が記載されている。
当該先細補強ワイヤは,その機能,構造からみて,補正発明のテーパ状ワイヤに相当するものである。
引用発明も引用文献2記載の技術も,共に近位区画と遠位区画との剛性を適切に遷移させるという課題が共通しているので,引用発明の「遷移チューブ110」に替えて引用文献2記載の「先細補強ワイヤ」を採用し,上記相違点に係る発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得ることであり,また,そのことを阻害する要因は見当たらない。
そして,補正発明は,全体としてみても,引用発明及び引用文献2記載の技術から当業者が予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって,補正発明は,引用発明及び引用文献2記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)本件補正についての結び
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反している。よって,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,本件補正は却下すべきものである。
よって,上記[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
本件補正が上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?45に係る発明は,国際出願日における国際特許出願の特許請求の範囲の翻訳文の請求項1?45に記載された事項により特定されるとおりのものであって,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記第2 1(2)に示すとおりのものであると認める。

第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち本願発明に対する理由は,「この出願の請求項1に係る発明は,優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない」,というものである。

第5 引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項並びに引用発明は,上記第2 2(2)(2-1)に示したとおりである。

第6 対比及び判断
本願発明は,補正発明から,ハイポチューブに関し「切削終端部分を有する」という発明特定事項を削除し,さらに,可変剛性要素に関し,上記相違点に係る発明特定事項である「ハイポチューブの切削終端部分に接合されるテーパ状ワイヤ,又はハイポチューブの切削終端部分に接合される渦巻切込管」であるという発明特定事項を削除したものである。すなわち,本願発明と引用発明とは,相違する点がなく,全ての点において一致する。
よって,本願発明は,引用発明であり,特許法第29条第1項第3号に該当する。

第7 結び
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-08-07 
結審通知日 2019-08-08 
審決日 2019-08-26 
出願番号 特願2015-549716(P2015-549716)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61M)
P 1 8・ 575- Z (A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川島 徹  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 倉橋 紀夫
沖田 孝裕
発明の名称 向上された送達能力を有する管腔内デバイス  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 笛田 秀仙  

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