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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A24F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A24F
管理番号 1358552
審判番号 不服2018-17441  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-27 
確定日 2020-01-06 
事件の表示 特願2016-558982「非燃焼型香味吸引器及び制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日国際公開、WO2016/076147〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2015年10月30日(優先権主張2014年11月10日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年10月30日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年12月27日に意見書が提出され、平成30年4月12日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年6月11日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年10月31日付け(発送日:平成30年11月6日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

2 審判請求時の補正について
平成30年12月27日にされた審判請求時の補正は、補正前の請求項1?19を削除して、補正前の請求項20?23を、補正後の請求項1?4にしたものであるから、当該補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものである。

3 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、平成30年12月27日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
燃焼を伴わずにエアロゾル源を霧化する霧化部と、
前記霧化部に供給する電力を蓄積する電池と、
前記電池に対する指示として、前記霧化部によって霧化されるエアロゾルの量が所望範囲に収まるように前記電池に指示する所定指示を前記電池に対して出力する制御部とを備え、
前記制御部は、前記霧化部への電力供給を開始してから1.5秒以上2.5秒以下である所定期間が経過した場合に、前記電池から前記霧化部に対する電力供給を停止することを特徴とする非燃焼型香味吸引器。」

4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。
この出願の請求項16?23に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:.米国特許出願公開第2013/0213419号明細書

なお、本願発明は、上記原査定における請求項20に係る発明であり、これは、平成30年4月12日付けの拒絶の理由の通知後の平成30年6月11日に提出された手続補正書において新たに追加されたものであるが、その内容は、上記拒絶の理由の通知前の請求項14の一部を削除したものに相当するから、本願発明に対しても実質的に拒絶の理由は通知されているものである。

5 引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶理由に引用文献1として引用された米国特許出願公開第2013/0213419号明細書には、図面とともに以下の事項が記載されている(ここで()内は当審による翻訳である。)

(1-a)「[0022]Moreover, as shown in FIGS. 1 , 4 , 10 and 11 , the heater 14 extends in a direction transverse to the longitudinal direction and heats the liquid material to a temperature sufficient to vaporize the liquid material and form an aerosol.」
(また、図1、図4、10及び図11に示すように、ヒータ14は、長手方向に対して横断する方向に延びており、液体材料を気化させて、エアロゾルを形成するのに十分な温度に加熱する。)

(1-b)「[0044]Preferably, the electronic cigarette 60 also includes control circuitry including a puff sensor 16 . The control circuitry can include an application specific integrated circuit (ASIC). The puff sensor 16 is operable to sense an air pressure drop and initiate application of voltage from the power supply 1 to the heater 14 . 」
(好ましくは、電子タバコ60が吸煙センサ16を含む制御回路を含む。制御回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことができる。吸い込みセンサ16は、空気圧の低下を検知し、電源1からヒータ14への電圧印加を開始するように動作可能である。)

(1-c)「[0046]A control circuit is integrated with the puff sensor 16 and supplies power to the heater 14 responsive to the puff sensor 16 , preferably with a maximum, time-period limiter.」
(制御回路は、吸煙センサ16と一体に構成され、吸い込みセンサ16に応答してヒータ14に電力を供給し、好ましくは、電力供給の最大時間制限を有する。)

(1-d)「[0047]Alternatively, the control circuitry may include a manually operable switch for a smoker to initiate a puff. The time-period of the electric current supply to the heater may be pre-set depending on the amount of liquid desired to be vaporized. The control circuitry is preferably programmable for this purpose. Alternatively, the circuitry may supply power to the heater as long as the puff sensor detects a pressure drop.」
(あるいは、制御回路は、吸煙を開始するための手動操作可能なスイッチを含むことができる。ヒータへの電流供給の時間は蒸発が望まれる液体量に応じて予め設定されてもよい。制御回路は、この目的のために好ましくはプログラムしておくことが可能である。そうでない場合は、この回路は、吸煙センサが圧力低下を検出している限りヒータに電力を供給することができる。)

(1-e)「[0048]Preferably, when activated, the heater 14 heats a portion of the wick 28 surrounded by the heater for less than about 10 seconds, more preferably less than about 7 seconds. Thus, the power cycle (or maximum puff length) can range in period from about 2 seconds to about 10 seconds (e.g., about 3 seconds to about 9 seconds, about 4 seconds to about 8 seconds or about 5 seconds to about 7 seconds).」
(好ましくは、活性化された場合、加熱器14は、約10秒未満、より好ましくは約7秒未満でヒーターで取り囲まれたウィック28の一部を加熱する。従って、電源サイクル(または最大パフの長さ)は、約2秒?約10秒の範囲であり得る(例えば、約3秒?約9秒、約4秒?約8秒または約5秒?約7秒))。

(1-f)上記(1-d)において、ヒータへ電流を供給することは、ヒータへ電力を供給することであることは明らかである。

上記(1-a)?(1-f)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「液体材料を気化させて、エアロゾルを形成するのに十分な温度に加熱するヒータ14と、
ヒータ14へ電圧を印加する電源1と、
吸い込みセンサ16に応答してヒータ14に電力を供給し、電力供給の最大時間制限を有する制御回路とを備え、
ヒータ14への電力供給の時間は蒸発が望まれる液体量に応じて予め設定され、ヒータ14は、約10秒未満、より好ましくは約7秒未満で加熱され、最大パフ長さは約2秒?約10秒の範囲で、例えば、約3秒?約9秒、約4秒?約8秒または約5秒?約7秒であり得る電子タバコ60。」

6 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「液体材料」、「気化」、「電子タバコ26」は、それぞれ、本願発明の「エアロゾル源」、「霧化」、「非燃焼型香味吸引器」に相当する。また、電子タバコ26である引用発明において「液体材料を気化させて、エアロゾルを形成する」際に燃焼を伴わずに行うことは自明な事項である。
よって、引用発明の「液体材料を気化させて、エアロゾルを形成するのに十分な温度に加熱するヒータ14」は、本願発明の「燃焼を伴わずにエアロゾル源を霧化する霧化部」に相当する。

イ 携帯して使用するものである引用発明において「電圧を印加する電源1」が電力を蓄積するものであることは自明な事項である。
よって、引用発明の「ヒータ14へ電圧を印加する電源1」は、本願発明の「前記霧化部に供給する電力を蓄積する電池」に相当する。

ウ 引用発明の「制御回路」は、「吸い込みセンサ16に応答してヒータ14に電力を供給」するから、ヒータ14に電力を供給する電源1に対して指示を行っているといえる。
よって、引用発明の「吸い込みセンサ16に応答してヒータ14に電力を供給し、電力供給の最大時間制限を有する制御回路」と、本願発明の「前記電池に対する指示として、前記霧化部によって霧化されるエアロゾルの量が所望範囲に収まるように前記電池に指示する所定指示を前記電池に対して出力する制御部」とは、「電池に対する指示を行う制御回路」である点で共通する。

エ 引用発明における、予め設定された「ヒータ14への電力供給の時間」とは、ヒータ14(霧化部)への電力供給が開始してから電力供給が停止するまでの時間に相当するものである。
そして、引用発明において、「ヒータ14への電力供給の時間」と、ヒータ14に電力供給されたことによる「ヒータ14」が「加熱」される「時間」と、喫煙者がヒータ14で加熱されたタバコを吸い込む「最大パフ長さ」とは、ヒータ14への電力供給によるヒータ14の加熱が、喫煙者のタバコを吸い込む動作に応じたものであるから、同様のものであるといえる。
そうすると、引用発明は、予め設定されたヒータ14への電力供給の時間が約2秒?約10秒の範囲の所定期間となるものと解される。
よって、引用発明の「ヒータ14への電力供給の時間は蒸発が望まれる液体量に応じて予め設定され、ヒータ14は、約10秒未満、より好ましくは約7秒未満で加熱され、最大パフ長さは約2秒?約10秒の範囲で、例えば、約3秒?約9秒、約4秒?約8秒または約5秒?約7秒であり得る」点と、本願発明の「前記制御部は、前記霧化部への電力供給を開始してから1.5秒以上2.5秒以下である所定期間が経過した場合に、前記電池から前記霧化部に対する電力供給を停止する」点とは、「前記制御部は、前記霧化部への電力供給を開始してから所定期間が経過した場合に、前記電池から前記霧化部に対する電力供給を停止する」点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「燃焼を伴わずにエアロゾル源を霧化する霧化部と、
前記霧化部に供給する電力を蓄積する電池と、
前記電池に対する指示を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記霧化部への電力供給を開始してから所定期間が経過した場合に、前記電池から前記霧化部に対する電力供給を停止することを特徴とする非燃焼型香味吸引器。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
制御部が行う電池に対する指示に関して、本願発明では、「前記霧化部によって霧化されるエアロゾルの量が所望範囲に収まるように前記電池に指示する所定指示を前記電池に対して出力する」のに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

[相違点2]
電力供給が開始してから停止するまでの所定期間に関して、本願発明では、「1.5秒以上2.5秒以下」であるのに対して、引用発明では、「約2秒?約10秒の範囲」である点。

7 判断
ア 上記[相違点1]について検討する。
本願発明の「所定指示」に関して、本願明細書の段落【0102】には、「電池11に対して出力する所定指示(例えば、デューティ比)を決定する。」と記載されている。
一方、引用発明においては、「吸い込みセンサ16に応答してヒータ14に電力を供給し、電力供給の最大時間制限を有する制御回路とを備え、ヒータ14への電力供給の時間は蒸発が望まれる液体量に応じて予め設定され」るから、1回の電力供給時間におけるエアロゾルの量は所望範囲に収まるように設定されているといえる。
また、ヒータへの電力供給をデューテイ比により制御することは、周知の技術である(例えば、特表2014-501105号公報の段落【0090】、特表2013-545474号公報の段落【0018】?【0020】参照。)。
よって、上記周知の技術を勘案すれば、引用発明において、エアロゾルの量が所望範囲に収まるようにデューティ比等の所定指示を電池に対して出力し、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

イ 上記[相違点2]について検討する。
引用発明は、本願発明と同様に(パフ動作を検知して)霧化部への電力供給を開始してから所定期間が経過した場合に、前記電池から前記霧化部に対する電力供給を停止するものである。
そして、電力供給が開始してから停止するまでの所定期間は、本願発明、引用発明とも「2秒以上2.5秒以下」の範囲を含むものであり、引用発明における「約2秒?約10秒の範囲」の中で、短い期間を採用することを妨げる特段の事情はない。
そうすると、引用発明において、「約2秒?約10秒の範囲」の中の短い期間を採用して「1.5秒以上2.5秒以下」とし、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が格別な創作能力を要さずになし得たことである。

ウ 本願発明が奏する効果について
上記相違点1、2によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び周知の技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「(2-3)本願の請求項1に係る発明と引用文献との差異」において、「引用文献1には、パフセンサ16によってパフ動作が継続している間においてヒータ14への供給が行われることを前提として、パフ動作が10秒(最短で7秒)よりも長い場合に、ヒータ14への電力供給を10秒(最短で7秒)で停止することが開示されております。このような開示から、[0048]に記載の電力サイクル(又は、最大パフ長)という用語については、パフ動作の継続時間を考慮したヒータ14への通電時間を意味していることが明らかであり、引用文献1においては、通電時間の上限として、10秒、9秒、8秒、7秒が例示されているものと思料致します。言い換えると、以下の図に示すように、ヒータ14への電力供給を停止する所定期間(通電時間の上限)が取り得る範囲として、7-10秒が例示されているに過ぎません。
このように、引用文献1においては、ヒータ14への電力供給を停止する所定期間(通電時間の上限)が取り得る範囲として7-10秒が例示されているに過ぎず、所定期間が取り得る1.5-2.5秒という範囲については開示も示唆もされておりません。すなわち、引用文献1に開示された数値範囲は、本願発明の数値範囲とは重複しておりません。」と主張する。
しかしながら、引用例1の[0048]には、”the power cycle (or maximum puff length) can range in period from about 2 seconds to about 10 seconds (e.g., about 3 seconds to about 9 seconds, about 4 seconds to about 8 seconds or about 5 seconds to about 7 seconds)”と記載されているとおり、”the power cycle (or maximum puff length)”(電源サイクル(または最大パフの長さ)は、約2秒?約10秒の範囲であり得る(例えば、約3秒?約9秒、約4秒?約8秒または約5秒?約7秒))と記載されており、確かに、通電時間の上限としては10秒、9秒、8秒、7秒が例示されているが、最大パフ期間に相当するヒータ14への電力供給を停止する所定期間が取り得る範囲としては、約2秒?約10秒の範囲であることが記載されており、本願発明の数値範囲と重複するといえる。

さらに、請求人は、同審判請求書において、「引用文献1においては、7-10秒と比べて極めて短い2.5秒という通電時間の上限(所定期間)を採用するという構成については開示も示唆もされておりません。また、引用文献1においては、通電時間が所定期間に固定されるユーザ数(パフ動作数)を増大するという技術思想についても開示も示唆もされていないことから、7-10秒と比べて極めて短い2.5秒という通電時間の上限(所定期間)を採用する蓋然性についても全くないものと思料致します。」
しかしながら、上記イで検討したとおり、引用発明において、電力を供給する期間として「約2秒?約10秒の範囲」の中の短い期間を採用し、「1.5秒以上2.5秒以下」とすることは、当業者が格別な創作能力を要さずになし得たことである。
そして、ユーザーによりパフ期間が異なることは明らかであるから、通電時間が所定期間に固定されるユーザー数が増大する点は、引用発明において短い時間を採用することにより導かれる事項にすぎない。
よって、請求人の主張は採用できない。

なお、請求人は、令和1年5月14日付けの上申書により、手続補正案を提示しているが、この手続補正案によって結論を左右するものではない。

8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-05 
結審通知日 2019-11-06 
審決日 2019-11-19 
出願番号 特願2016-558982(P2016-558982)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (A24F)
P 1 8・ 121- Z (A24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西田 侑以西尾 元宏  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 平城 俊雅
槙原 進
発明の名称 非燃焼型香味吸引器及び制御方法  
代理人 末松 亮太  
代理人 中西 基晴  
代理人 小野 新次郎  
代理人 宮前 徹  
代理人 山本 修  

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