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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1358577
審判番号 不服2018-8533  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-21 
確定日 2020-01-08 
事件の表示 特願2013-241708「多層基板」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月10日出願公開、特開2014-131017〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月22日(パリ条約による優先権主張2012年12月31日、韓国)に出願したものであって、平成29年8月18日付け拒絶理由通知に対して同年10月27日付けで手続補正がなされたが、平成30年3月13日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年6月21日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成30年6月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年6月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正について
平成30年6月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、特許請求の範囲については、
本件補正前に、
「 【請求項1】
上部面に微細パターン層が形成される第2絶縁層と、
前記微細パターン層のパターンピッチより大きいパターンピッチを有する回路パターン層が上部面に形成され、前記第2絶縁層と異なる材料からなる第3絶縁層と、
を含み、
前記第3絶縁層は、前記第2絶縁層に比べて前記多層基板の外部面に近く配置され、
前記第2絶縁層が芯材を含まず、かつ、前記第3絶縁層が芯材を含む多層基板。
【請求項2】
前記第3絶縁層は、前記第2の絶縁層よりも熱膨張率が小さい又は前記第2の絶縁層よりも大きい剛性を有していることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記第2絶縁層は、前記第3絶縁層に比べて表面粗さが小さいことを特徴とする請求項2に記載の多層基板。
【請求項4】
前記芯材は、ガラス繊維を含む物質からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の多層基板。
【請求項5】
前記第2絶縁層は、ポリイミドからなることを特徴とする請求項4に記載の多層基板。
【請求項6】
前記第2絶縁層は、フィラーを含むことを特徴とする請求項4に記載の多層基板。
【請求項7】
前記第2絶縁層はABFからなり、前記第3絶縁層はPPGからなることを特徴とする請求項6に記載の多層基板。
【請求項8】
前記フィラーは、直径が5μm未満であることを特徴とする請求項6に記載の多層基板。
【請求項9】
前記フィラーは、扁平度が0.5未満であることを特徴とする請求項6に記載の多層基板。
【請求項10】
キャビティが備えられた第1絶縁層と、
前記キャビティに少なくとも一部が挿入され、表面に外部電極が備えられた電子部品と、
をさらに含み、
前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層上で前記電子部品をカバーし、
前記微細パターン層と前記外部電極は、ビアにより直接連結されることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項11】
前記第1絶縁層の表面には導体パターン層がさらに備えられ、
前記微細パターン層と前記導体パターン層は、ビアにより直接連結されることを特徴とする請求項10に記載の多層基板。
【請求項12】
前記第3絶縁層は、前記多層基板の最外郭に少なくとも一層で備えられることを特徴とする請求項10に記載の多層基板。
【請求項13】
前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層から前記多層基板の最外郭方向に少なくとも二層で備えられることを特徴とする請求項10に記載の多層基板。
【請求項14】
前記第1絶縁層は、金属材を含むメタルコアを有することを特徴とする請求項10に記載の多層基板。
【請求項15】
前記微細パターン層のパターンピッチは10μm以下であり、前記回路パターン層のパターンピッチは15μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項16】
前記微細パターン層の線幅は10μm以下であり、前記回路パターン層の線幅は15μm以上であることを特徴とする請求項15に記載の多層基板。
【請求項17】
前記微細パターン層は、セミアディティブ法(Semi Additive Process;SAP)により形成され、
前記回路パターン層は、モディファイドセミアディティブ法(Modified Semi Additive Process;MSAP)により形成されることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。」とあったところを、

本件補正により、
「 【請求項1】
上部面に微細パターン層が形成される第2絶縁層と、
前記微細パターン層のパターンピッチより大きいパターンピッチを有する回路パターン層が上部面に形成され、前記第2絶縁層と異なる材料からなる第3絶縁層と、
を含む、多層基板であって、
前記第3絶縁層は、前記第2絶縁層に比べて前記多層基板の外部面に近く配置され、
前記第2絶縁層が芯材を含まず、かつ、前記第3絶縁層が芯材を含み、
前記芯材は、ガラス繊維を含む物質からなり、
前記第2絶縁層は、フィラーを含み、
前記第2絶縁層はABFからなり、前記第3絶縁層はPPGからなる、多層基板。
【請求項2】
前記第3絶縁層は、前記第2絶縁層よりも熱膨張率が小さい又は前記第2絶縁層よりも大きい剛性を有していることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記第2絶縁層は、前記第3絶縁層に比べて表面粗さが小さいことを特徴とする請求項2に記載の多層基板。
【請求項4】
前記第2絶縁層は、ポリイミドからなることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項5】
前記フィラーは、直径が5μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項6】
前記フィラーは、扁平度が0.5未満であることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項7】
キャビティが備えられた第1絶縁層と、
前記キャビティに少なくとも一部が挿入され、表面に外部電極が備えられた電子部品と、
をさらに含み、
前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層上で前記電子部品をカバーし、
前記微細パターン層と前記外部電極は、ビアにより直接連結されることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項8】
前記第1絶縁層の表面には導体パターン層がさらに備えられ、
前記微細パターン層と前記導体パターン層は、ビアにより直接連結されることを特徴とする請求項7に記載の多層基板。
【請求項9】
前記第3絶縁層は、前記多層基板の最外郭に少なくとも一層で備えられることを特徴とする請求項7に記載の多層基板。
【請求項10】
前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層から前記多層基板の最外郭方向に少なくとも二層で備えられることを特徴とする請求項7に記載の多層基板。
【請求項11】
前記第1絶縁層は、金属材を含むメタルコアを有することを特徴とする請求項7に記載の多層基板。
【請求項12】
前記微細パターン層のパターンピッチは10μm以下であり、前記回路パターン層のパターンピッチは15μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項13】
前記微細パターン層の線幅は10μm以下であり、前記回路パターン層の線幅は15μm以上であることを特徴とする請求項12に記載の多層基板。
【請求項14】
前記微細パターン層は、セミアディティブ法(Semi Additive Process;SAP)により形成され、
前記回路パターン層は、モディファイドセミアディティブ法(Modified Semi Additive Process;MSAP)により形成されることを特徴とする
請求項1に記載の多層基板。」とするものである。なお、下線は補正箇所を示す。

上記の補正は、
・芯材について「ガラス繊維を含む物質からなり」と限定し、第2絶縁層について「フィラーを含み、」「ABFからなり」と限定し、第3絶縁層について「PPGからなる」と限定し(本件補正の請求項1)、
・「前記第2の絶縁層」を「前記第2絶縁層」として誤記の訂正をし(本件補正の請求項2)、
・本件補正前の請求項4、6及び7を削除し、
・請求項の削除に伴い、項番を整理(本件補正の請求項4ないし14)
したものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、同項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件について
そこで、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正の請求項1及び4に記載された発明(以下、「本願補正発明1及び4」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。

(1)本願補正発明4について

請求項4には「前記第2絶縁層は、ポリイミドからなる」と特定されている一方、請求項4が引用する請求項1では「第2絶縁層はABFからな」ることが特定されている。ここで、ABFがエポキシ樹脂製であることを踏まえると、両者の記載は整合せず、この点において請求項4に係る発明は明確なものでない。

よって、本件補正の請求項4に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2)本願補正発明1について

ア.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2010/010911号(以下、「引用文献」という。)には、「半導体装置及びその製造方法」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

(ア)「[0021] 図1?図10、図21?図23に示すように、本発明の一実施形態の半導体装置は、電極端子14を表面に有する1以上の半導体素子13と、半導体素子13を内蔵するコアレス配線基板31であって積層された複数の配線層(17、20、23)及び絶縁層(15、18、21)と配線層に設けられた配線(17、20、23)と絶縁層に設けられ絶縁層上下の配線を電気的に接続するビア(16、19、22、30)とを有し表面に外部接続端子23が設けられたコアレス配線基板31と、を含む半導体装置12であって、半導体素子13は絶縁層に埋設され、外部接続端子23と電極端子14とが、配線またはビアの少なくとも一つを介して電気的に導通し、絶縁層(15、18、21)と配線層(17、20、23)とが半導体素子13の片面に積層され、ビア(16、19、22、30)または配線(17、20、23)の少なくとも一つが、他の絶縁層または配線層に設けられたビアまたは配線と異なる断面形状を有する。」

(イ)「[0041][実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1による半導体装置を示す断面図である。図1の半導体装置12は、半導体素子13の側面と電極端子14を有する面の少なくとも一部が絶縁層A(15)に接しており、電極端子14の上面側に、電極端子14と半導体装置12の外部接続端子である配線C(23)とを電気的に接続するビアA(16)、配線A(17)、絶縁層B(18)、ビアB(19)、配線B(20)、絶縁層C(21)、ビアC(22)が設けられている。また、半導体素子13の電極端子14が設けられた面の反対面が、絶縁層A(15)から露出している構造である。
[0042] 図1では、層数が3層であるが、それに限るものではなく、複数層であれば何層でも構わない。本実施形態では、配線層3層、絶縁層3層とした。
[0043] また、図1では、ビアA(16)、ビアB(19)、ビアC(22)の順でビア断面形状が拡大し、配線A(17)、配線B(20)、配線C(23)の順で配線断面形状が拡大し、電極端子14と配線A(17)間の絶縁層A(15)、絶縁層B(18)、絶縁層C(21)の順で絶縁層が厚くなっている。ただし、この様な構成には限定されない。ビア断面形状、配線断面形状、絶縁層厚は必要に応じて各層で最適な構成を選択すればよい。ビア断面形状が電極端子側より外部接続端子側で拡大し、かつ、絶縁層が電極端子側より外部接続端子側で厚くなるものであってもよい。また、配線断面形状が、電極端子側より外部接続端子側で拡大するものであってもよい。
[0044] ここで、ビア断面形状とは、ビアのトップ径とボトム径と高さのことを示す。ビア断面形状の拡大とはそれらのうち1以上が拡大しているだけでも構わない。ビア径が大きい方をビアのトップとし、ビア径が小さい方をビアのボトムとする。ビアのボトム側が狭ピッチな半導体素子との接続箇所となることが望ましいがその反対でも構わない。中でも、半導体素子の近接層から、ビア断面形状が相似的に拡大していることが信号品質の点で望ましい。各層のビアは、ビアの径に対する高さの比率であるアスペクト比が、0.3乃至3である範囲から外れないことが望ましい。アスペクト比が0.3未満となった場合には、ビアの径に対する高さ(絶縁層の厚さ)が層間ショートを引き起こしたり、ビア径が大きくなりすぎるため、高密度化の障害となったりする。一方、アスペクト比が3を超える場合は、ビア内への配線形成が困難になり断線不良が懸念される。アスペクト比は理想的には1前後が望ましいので、層毎にビア径を拡大する場合には、ビア径の拡大と同時にビア高さ(絶縁層の厚さ)も同時に拡大することが望ましい。
[0045] 配線断面形状とは、最小配線幅、配線間の最小ピッチ、所謂、配線ルールと、配線の厚みのことを示し、それらのうち1以上が拡大しているだけで構わない。配線断面形状の拡大とは、配線ルールにおいては、狭ピッチ・狭幅から緩ピッチ・緩幅へ移行することを示し、配線厚においては、薄いものから厚いものへ移行することを示している。半導体素子の近接層から、配線断面形状が徐々に拡大していることが望ましい。
[0046] 高歩留まりの半導体装置の実現のために望ましいのは、半導体素子13に近い層から徐々にビア断面形状、配線断面形状それぞれが大きくなり、それに伴い絶縁層が厚くなること、つまり、半導体素子13の近接層から配線ルールは狭ピッチ・狭幅から緩ピッチ・緩幅へ、ビア径は小径から大径へ、絶縁層は薄いものから厚いものへ移行することが望ましいが、それに限ることはない。また、配線層、絶縁層が多層に及ぶ場合は、必ずしも各層毎に、ビア断面形状、配線断面形状、絶縁層厚を変える必要はなく、半導体素子13の近接層から外部接続端子に向けて何層か毎に段階的にビア断面形状、配線断面形状、絶縁層厚を変えるものであってもよい。
[0047] また、配線ルールは狭ピッチ・狭幅から緩ピッチ・緩幅へ、ビア径は小径から大径へ、絶縁層厚は薄いものから厚いものへ移行することで、半導体装置12の信頼性を向上させることができる。
[0048] 半導体素子13は、厚さを狙いの半導体装置の厚さに応じて調整することができる。本実施形態では、半導体素子13の厚みは30?50μmとした。図1では、半導体素子13の数は、ひとつだが複数でも構わない。半導体素子13の電極端子14が設けられた面の反対面(以後、半導体素子13の裏面)と、絶縁層A(15)が同一平坦面となっていることから、この面にヒートシンクや他の部品を安定して高精度に接続することができる。一方で、半導体素子13の裏面が絶縁層A(15)よりも突出していれば、半導体素子13の露出面が多くなるため、放熱特性が向上する。また、突出部を加工することで半導体素子13の厚さを調整することができる。更に、半導体素子13の裏面が絶縁層A(15)よりも窪んでいれば、半導体素子13の端部から発生する剥離、チッピングを回避することができる。本実施形態では、半導体素子13の裏面は絶縁層A(15)と同一平坦面とした。また、図1では、外部接続端子23が絶縁層C(21)より突出しているが、電極端子14と絶縁層A(15)の関係と同様に、外部接続端子23は絶縁層C(21)と略平面としてもよいし、絶縁層C(21)より窪んでいてもよい。」

(ウ)「[0049] 絶縁層A(15)、絶縁層B(18)、絶縁層C(21)は、例えば、感光性又は非感光性の有機材料で形成されており、有機材料は、例えば、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、BCB(benzocyclobutene)、PBO(polybenzoxazole)、ポリノルボルネン樹脂等や、ガラスクロスやアラミド繊維などで形成された織布や不織布にエポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、BCB(benzocyclobutene)、PBO(polybenzoxazole)、ポリノルボルネン樹脂等を含浸させた材料を用いる。」

(エ)「[0050] また、各絶縁層は、上記有機材料以外にも、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、窒化ホウ素、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、ステアタイト、酸化亜鉛、などの酸化物系、水酸化物系、炭化物系、炭酸塩系、窒化物系、ハロゲン化物系、リン酸塩系のセラミックスおよび上記セラミックスやガラスなどをフィラーに含むコンポジット材料または、カーボンナノチューブ、ダイヤモンドライクカーボン、パリレンなどの材料を用いることもできる。
[0051] 高歩留まりの半導体装置の実現のために望ましいのは、最も微細なビア径・配線ルール、薄い絶縁層が求められる半導体素子の近接層の絶縁層には感光性樹脂を採用し、その次の層にはUV-YAGレーザーでビアが形成可能な非感光性樹脂を採用し、最も大きいビア径・最も緩い配線ルール、厚い絶縁層が求められる外部接続端子の近接層の絶縁材にはCO2レーザーでビアが形成可能なガラスクロス等の補強材を含浸した非感光性樹脂を採用することが望ましい。このように各層で求められる配線ルール、ビア断面形状、絶縁層厚に適した絶縁材料・プロセスを適宜採用することで、高歩留まりだけでなく、低コストを実現できる。
[0052] また、各層で絶縁材料を変化させることで、様々な効果が期待できる。例えば、微細ビアが必要な層では低弾性の絶縁材を採用することで信頼性を向上させることができる。また、厚い絶縁層では高弾性率の絶縁材を採用することで半導体装置の低反り化が実現できる。本実施形態では、絶縁層A(15)、絶縁層B(18)、絶縁層C(21)は、非感光性樹脂のエポキシ樹脂を用いた。」

(オ)図1によると、絶縁層21は、コアレス配線基板31の表面側に配置されるものである。また絶縁層18は、上面に配線20が形成され、絶縁層21は、上面に配線23が形成されるものである。

・上記(ア)によれば、コアレス配線基板31は、積層された絶縁層18と絶縁層21を有するものである。
・上記(イ)によれば、配線20及び配線23は、配線20、配線23の順で配線間の最小ピッチ(配線断面形状)が拡大するものである。
・上記(ウ)によれば、絶縁層18及び絶縁層21は、エポキシ樹脂等の非感光性の有機材料を用いるものである。
・上記(オ)によれば、絶縁層21は、コアレス配線基板31の表面側に配置されるものである。また絶縁層18は、上面に配線20が形成され、絶縁層21は、上面に配線23が形成されるものである。

上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「積層された絶縁層18及び絶縁層21を有するコアレス配線基板31であって、
前記絶縁層18は、上面に配線20が形成され、
前記絶縁層21は、上面に配線23が形成され、
前記配線20及び前記配線23は、前記配線20、前記配線23の順で配線間の最小ピッチが拡大し、
前記絶縁層18及び前記絶縁層21は、エポキシ樹脂等の非感光性の有機材料を用い、
前記絶縁層21は、前記コアレス配線基板31の表面側に配置される、コアレス配線基板31。」

イ.対比
そこで、本願補正発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「積層された絶縁層18と絶縁層21を有するコアレス配線基板31」は、多層に形成された基板といえるから、本願補正発明1の「多層基板」に相当する。

(イ)引用発明の「上面」、「絶縁層18」及び「絶縁層21」は、本願補正発明1の「上部面」、「第2絶縁層」及び「第3絶縁層」にそれぞれ相当する。また引用発明の「配線20」及び「配線23」は、配線20、配線23の順で配線間の最小ピッチが拡大するものである。これは配線20が相対的にパターンピッチの小さいパターン層で、配線23が相対的にパターンピッチの大きいパターン層を指すものと解されるから、本願補正発明1の「微細パターン層」及び「前記微細パターン層のパターンピッチより大きいパターンピッチを有する回路パターン層」にそれぞれ相当する。
よって、引用発明の「上面に配線20が形成され」る「絶縁層18」及び「上面に配線23が形成され」る「絶縁層21」は、本願補正発明1の「上部面に微細パターン層が形成される第2絶縁層」及び「前記微細パターン層のパターンピッチより大きいパターンピッチを有する回路パターン層が上部面に形成され」る「第3絶縁層」にそれぞれ相当する。
ただし、第3絶縁層について、本願補正発明1は「前記第2絶縁層と異なる材料からなる」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

(ウ)引用発明の「前記絶縁層21は、前記コアレス配線基板31の表面側に配置され」ることは、本願補正発明1の「前記第3絶縁層は、前記第2絶縁層に比べて前記多層基板の外部面に近く配置され」ることに相当する。

(エ)本願補正発明1は「前記第2絶縁層が芯材を含まず、かつ、前記第3絶縁層が芯材を含み、前記芯材は、ガラス繊維を含む物質からな」るのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

(オ)本願補正発明1は「前記第2絶縁層は、フィラーを含」むのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

(カ)本願補正発明1は「前記第2絶縁層はABFからな」るのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

(キ)本願補正発明1は「前記第3絶縁層はPPGからなる」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

そうすると、本願補正発明1と引用発明とは、
「上部面に微細パターン層が形成される第2絶縁層と、
前記微細パターン層のパターンピッチより大きいパターンピッチを有する回路パターン層が上部面に形成される第3絶縁層と、
を含む、多層基板であって、
前記第3絶縁層は、前記第2絶縁層に比べて前記多層基板の外部面に近く配置される、多層基板。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
第3絶縁層について、本願補正発明1は「前記第2絶縁層と異なる材料からなる」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

<相違点2>
本願補正発明1は「前記第2絶縁層が芯材を含まず、かつ、前記第3絶縁層が芯材を含み、前記芯材は、ガラス繊維を含む物質からな」るのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

<相違点3>
本願補正発明1は「前記第2絶縁層は、フィラーを含」むのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

<相違点4>
本願補正発明1は「前記第2絶縁層はABFからな」るのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

<相違点5>
本願補正発明1は「前記第3絶縁層はPPGからなる」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

ウ.判断
上記相違点について検討する。

<相違点1>ないし<相違点5>について
上記「第2[理由]2.(2) ア.(エ)」によれば、半導体素子の近接層の次の層は、非感光性樹脂を採用し、外部接続端子の近接層は、ガラスクロス等の補強材(本願補正発明1の「ガラス繊維を含む物質からな」る「芯材」に相当。)を含浸した非感光性樹脂を採用することが望ましいのだから、半導体素子13の近接層の次の層である引用発明の絶縁層18として、ガラスクロス等の補強材を含まない非感光性樹脂を採用し、外部接続端子23の近接層である引用発明の絶縁層21として、ガラスクロス等の補強材を含浸した非感光性樹脂を採用し、絶縁層18と絶縁層21を異なる材料からなるようにして、相違点1、2及び5の構成とすることは当業者が容易になし得た事項である。
なお、一般的にガラスクロス等に樹脂を含浸させたものは、PPG(プリプレグ)を指すものであるから、引用文献の「ガラスクロス等の補強材を含浸した非感光性樹脂」は、本願補正発明1の「PPG」に相当することを付記しておく。
そして、引用発明の絶縁層18の非感光性樹脂の材料として何を用いるかはコスト、性能及び基板の用途等を考慮して当業者が適宜選択すれば良いところ、層間絶縁材料としてABFを用いることは、例えば原査定の拒絶に引用された特開2010-103548号公報(ABFを積層する点。段落【0042】及び【0049】並びに図3を参照。)に記載されているように周知の技術事項であり、また上記「第2[理由]2.(2) ア.(エ)」によれば、絶縁層についてフィラーを含むコンポジット材料を用いることが可能である。してみれば、引用発明の絶縁層18として、フィラーを含み、ABFからなるようにして、相違点3及び4の構成とすることは当業者が容易になし得た事項である。

したがって、本願補正発明1は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が容易になし得たものである。
そして、本願補正発明1の作用効果も、引用文献及び周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

エ.むすび
以上のとおり、本件補正の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
平成30年6月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成29年10月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
上部面に微細パターン層が形成される第2絶縁層と、
前記微細パターン層のパターンピッチより大きいパターンピッチを有する回路パターン層が上部面に形成され、前記第2絶縁層と異なる材料からなる第3絶縁層と、
を含み、
前記第3絶縁層は、前記第2絶縁層に比べて前記多層基板の外部面に近く配置され、
前記第2絶縁層が芯材を含まず、かつ、前記第3絶縁層が芯材を含む多層基板。」

2.引用文献(引用発明)
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、上記「第2[理由]2.(2)ア.(ア)ないし(オ)」に記載したとおりであり、引用発明は以下のとおりである。

「積層された絶縁層18及び絶縁層21を有するコアレス配線基板31であって、
前記絶縁層18は、上面に配線20が形成され、
前記絶縁層21は、上面に配線23が形成され、
前記配線20及び前記配線23は、前記配線20、前記配線23の順で配線間の最小ピッチが拡大し、
前記絶縁層18及び前記絶縁層21は、エポキシ樹脂等の非感光性の有機材料を用い、
前記絶縁層21は、前記コアレス配線基板31の表面側に配置される、コアレス配線基板31。」

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「積層された絶縁層18と絶縁層21を有するコアレス配線基板31」は、多層に形成された基板といえるから、本願発明の「多層基板」に相当する。

(2)引用発明の「上面」、「絶縁層18」及び「絶縁層21」は、本願発明の「上部面」、「第2絶縁層」及び「第3絶縁層」にそれぞれ相当する。また引用発明の「配線20」及び「配線23」は、配線20、配線23の順で配線間の最小ピッチが拡大するものである。これは配線20が相対的にパターンピッチの小さいパターン層で、配線23が相対的にパターンピッチの大きいパターン層を指すものと解されるから、本願発明の「微細パターン層」及び「前記微細パターン層のパターンピッチより大きいパターンピッチを有する回路パターン層」にそれぞれ相当する。
よって、引用発明の「上面に配線20が形成され」る「絶縁層18」及び「上面に配線23が形成され」る「絶縁層21」は、本願発明の「上部面に微細パターン層が形成される第2絶縁層」及び「前記微細パターン層のパターンピッチより大きいパターンピッチを有する回路パターン層が上部面に形成され」る「第3絶縁層」にそれぞれ相当する。
ただし、第3絶縁層について、本願発明は「前記第2絶縁層と異なる材料からなる」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

(3)引用発明の「前記絶縁層21は、前記コアレス配線基板31の表面側に配置され」ることは、本願発明の「前記第3絶縁層は、前記第2絶縁層に比べて前記多層基板の外部面に近く配置され」ることに相当する。

(4)本願発明は「前記第2絶縁層が芯材を含まず、かつ、前記第3絶縁層が芯材を含む」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「上部面に微細パターン層が形成される第2絶縁層と、
前記微細パターン層のパターンピッチより大きいパターンピッチを有する回路パターン層が上部面に形成される第3絶縁層と、
を含み、
前記第3絶縁層は、前記第2絶縁層に比べて前記多層基板の外部面に近く配置される多層基板。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点6>
第3絶縁層について、本願発明は「前記第2絶縁層と異なる材料からなる」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

<相違点7>
本願発明は「前記第2絶縁層が芯材を含まず、かつ、前記第3絶縁層が芯材を含む」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。

4.判断
上記<相違点6>及び<相違点7>は、「第2[理由]2.(2)ウ.」で<相違点1>及び<相違点2>として検討したように、当業者が容易になし得た事項である。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が容易になし得たものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用文献及び周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-08-07 
結審通知日 2019-08-13 
審決日 2019-08-26 
出願番号 特願2013-241708(P2013-241708)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 貴志  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 五十嵐 努
佐々木 洋
発明の名称 多層基板  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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