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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1358582 |
審判番号 | 不服2018-14323 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-29 |
確定日 | 2020-01-08 |
事件の表示 | 特願2016-240547「プログラム、記録媒体、ゲーム制御方法、情報処理装置及び制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開、特開2017- 97886〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成24年12月28日に出願した特願2012-288489号の一部を,平成27年11月6日に新たな特許出願とした特願2015-218758号の一部をさらに,平成28年12月12日に新たな特許出願としたものであって,平成29年1月6日付けで審査請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,同年12月20日付けで拒絶理由通知(平成30年1月4日発送)がなされ,平成30年3月5日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,同年7月30日付けで拒絶査定(同年8月3日謄本送達)がなされたものである。 これに対して,「原査定を取り消す、この出願の発明はこれを特許すべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,平成30年10月29日付けで本件審判請求がなされ,平成31年1月21日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項6に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記平成30年10月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項6に記載された以下のとおりのものと認める。 「コンピュータに、 ゲームを進行させるゲーム処理と、 前記ゲーム処理によって前記ゲームを進行させることが不能となった場合に、前記ゲームの進行を一時停止させた状態に前記ゲーム処理を制御する制御処理と、 前記制御処理により前記ゲームの進行が一時停止されている状態に前記ゲーム処理が制御された場合に、広告を表示する表示処理と、 を実行させるプログラムであって、 前記表示処理による広告の表示完了後、前記制御処理は、前記ゲームの進行が再開可能な状態に前記ゲーム処理を制御するプログラム。」 第3 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1,5,6に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない,また,該引用文献1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 引用文献1:特表2010-509630号公報 第4 引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 ア 上記平成29年12月20日付けの拒絶理由通知において引用され,本願の出願日前に頒布された刊行物である,特表2010-509630号公報(平成22年3月25日公表,以下,「引用文献」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A 「【0001】 本発明は、ゲームの進行中に別途の動映像広告を露出させる広告サービスに係り、さらに具体的には、端末機で実行されるゲームの進行中に所定の条件が満足された場合、端末機でゲームが中断された後、ゲームと別途の動映像形式の広告を出力させる広告サービス提供方法及びシステムに関する。」 B 「【0020】 図1に図示されたように、本発明の広告サービス提供システム100は、中断部101、出力部103、再進行部105及びメモリ107を有する。広告サービス提供システム100は端末機110に備えられ、通信網を介して広告サーバと接続することなく広告サービス提供システム100自体を作動させる。 【0021】 中断部101は、端末機110で実行されるゲームの進行中に、所定の第1条件が満足された場合に、端末機110でビデオゲーム(以下ゲームと称する)の進行を中断させる。中断部101は、ゲームを構成するあらゆるスレッド(thread)を中止させたり、またはゲーム実行ファイルのうち、特定関数が呼び出されることを中間で横取りする方法によって、ゲーム・プログラム制御権を奪取し、すでに実行中のゲームを中断させる。中断部101はまた、ゲーム・プログラムと連繋し、ゲーム・プログラムに含まれた関数によって、ゲーム・プログラムの動作が中断された後、事前に規定された関数によって、ゲーム・プログラムを再進行させられる制御権を伝達する方式によっても、ゲームを中断させることができる。 【0022】 所定の第1条件は、端末機110にあらかじめ保存された広告の出力条件でありうる。この場合、広告サービス提供システム100は、広告サーバとの連繋なしに、端末機110内部で、自主的に所定の第1条件が満足か否かを判断する。 【0023】 かような広告の出力条件は、端末機110のメモリ107にあらかじめ保存されている。広告の出力条件は、所定の時間や、ゲームの進行段階に係るものでありうる。例えば、中断部101は、メモリ107と連動し、ゲームの実行開始後に所定の時間が経過しているか否か、あるいは端末機110内で、ゲーム内で重要なイベント信号が発生したか否か、またはゲームの章や節が変わる時点に係る信号が発生したか否か、またはあらかじめ規定された中断時点であるか否かを判断し、ゲームの進行を中断させる。 【0024】 出力部103は、中断部101によってゲームの進行が中断された後、動映像を含む形式の広告を出力させる。動映像を含む形式の広告は、ゲームの中断前にあらかじめメモリ107などに一部または全部が保存されており、出力部103は、メモリ107に保存される動映像を含む形式の広告を出力させる。 【0025】 動映像を含む形式の広告は、テレビで提供される広告と類似したレベルの動映像広告であることが望ましく、本発明による広告サービス提供システムは、ゲーム進行中に広告を強制的に露出させるので、テレビの場合のように、ユーザがチャンネルを変えて広告を出力させないような現象を防止する。 【0026】 再進行部105は、出力部103による広告の出力が終了した後、進行が中断されたゲームを再進行させる。このために、再進行部105は、中断部101が中断させたゲーム関連スレッドを活性化させたり、または関数横取りによって奪取された制御権をゲーム実行ファイルに返却し、ゲームが中断された時点から再進行させる。」 C「【0032】 本発明は、広告の対象になるゲームのゲーム実行ファイルの変調を介して、ゲーム実行ファイルに内蔵されたプログラムによって実施され、ゲームの進行のための実行ファイルとは別途の制御ファイルに内蔵されたプログラムによって、実施されもする。」 イ ここで,上記引用文献に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Aの「端末機で実行されるゲームの進行中に所定の条件が満足された場合,端末機でゲームが中断された後,ゲームと別途の動映像形式の広告を出力させる広告サービス提供方法及びシステム」との記載,及び上記Cの「本発明は…(中略)…プログラムによって実施され」との記載からすると,引用文献には,“端末機で実行されるゲームの進行中に所定の条件が満足された場合,端末機でゲームが中断された後,ゲームと別途の動映像形式の広告を出力させる広告サービス提供プログラム”が記載されているものと認められる。 (イ)上記Bの段落【0020】の「本発明の広告サービス提供システム100は、中断部101、出力部103、再進行部105…(中略)…を有する」との記載から,引用文献に記載されている「広告サービス提供システム」は,中断部,出力部,再進行部を有すると認められるところ,上記Cに「本発明は…(中略)…プログラムによって実施され」と記載されるように,当該広告サービス提供システムはプログラムによって実施されることから,上記(ア)で検討した“広告サービス提供プログラム”は,中断部における処理(中断処理),出力部における処理(出力処理),再進行部における処理(再進行処理)を実行させるプログラムであると認められる。 (ウ)上記(イ)の検討内容,及び上記Bの段落【0021】の記載からすると,上記(ア)で検討した“広告サービス提供プログラム”は,“端末機で実行されるゲームの進行中に,所定の第1条件が満足された場合に,端末機でゲームの進行を中断させる中断処理”を実行させるプログラムであると認められる。 (エ)上記(イ)の検討内容,及び上記Bの段落【0024】の記載からすると,上記(ア)で検討した“広告サービス提供プログラム”は,“中断処理によってゲームの進行が中断された後,広告を出力させる出力処理”を実行させるプログラムであると認められる。 (オ)上記(イ)の検討内容,及び上記Bの段落【0026】の記載からすると,上記(ア)で検討した“広告サービス提供プログラム”は,“出力処理による広告の出力が終了した後,中断処理が中断させたゲーム関連スレッドを活性化させたり,または関数横取りによって奪取された制御権をゲーム実行ファイルに返却し,ゲームが中断された時点から再進行させる再進行処理”を実行させるプログラムであると認められる。 ウ 以上,(ア)ないし(オ)で指摘した事項を踏まえると,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「端末機で実行されるゲームの進行中に所定の条件が満足された場合,端末機でゲームが中断された後,ゲームと別途の動映像形式の広告を出力させる広告サービス提供プログラムであって, 前記広告サービス提供プログラムは, 端末機で実行されるゲームの進行中に,所定の第1条件が満足された場合に,端末機でゲームの進行を中断させる中断処理と, 前記中断処理によってゲームの進行が中断された後,動映像を含む形式の広告を出力させる出力処理と, 前記出力処理による広告の出力が終了した後,前記中断処理が中断させたゲーム関連スレッドを活性化させたり,または関数横取りによって奪取された制御権をゲーム実行ファイルに返却し,ゲームが中断された時点から再進行させる再進行処理, を実行させる広告サービス提供プログラム。」 第5 対比 ア ここで,引用発明と本願発明を対比する。 (1)引用発明の「端末機」は,該端末機においてゲームが実行されるものであることから,本願発明の「コンピュータ」に相当する。そして,引用発明の「広告サービス提供プログラム」は,「端末機で実行されるゲームの進行中に所定の条件が満足された場合,端末機でゲームが中断された後,ゲームと別途の動映像形式の広告を出力させる」処理を行うものであることから,ゲーム処理を制御するものといえる。 してみると,引用発明と本願発明は,ともに,“コンピュータに実行させるゲーム処理を制御するプログラム”である点で共通する。 (2)引用発明は,「端末機で実行されるゲームの進行中に,所定の第1条件が満足された場合に,端末機でゲームの進行を中断させ」るものであることから,“端末機でゲームを進行させるゲーム処理”機能を有するものといえる。 してみると,引用発明と本願発明は,ともに,“ゲームを進行させるゲーム処理”を有する点で共通する。 (3)引用発明の「ゲームの進行を中断」することは,本願発明の「ゲームの進行を一時停止」することに相当する。また,引用発明の「中断処理」は,ゲームの進行を制御するものであるから,本願発明の「制御処理」に相当する制御を行っていることは明らかである。 ここで,引用発明の「端末機で実行されるゲームの進行中に,所定の第1条件が満足された場合に,端末機でゲームの進行を中断させる」ことは,“ゲームの進行中に,前記ゲームの進行を一時停止させるための条件が満足された場合に,前記ゲームの進行を一時停止させた状態に前記ゲームを制御する”ことに他ならない。そして,本願発明の「ゲームを進行させることが不能になった場合」というのは,この条件が満たされた場合に「ゲームの進行を一時停止させた状態に前記ゲーム処理を制御する」ことから,“ゲームの進行を一時停止させるための条件が満たされた場合”であるといえる。 してみると,後記する点で相違するものの,引用発明の「端末機で実行されるゲームの進行中に,所定の第1条件が満足された場合に,端末機でゲームの進行を中断させる中断処理」と本願発明の「前記ゲーム処理によって前記ゲームを進行させることが不能となった場合に、前記ゲームの進行を一時停止させた状態に前記ゲーム処理を制御する制御処理」とは,ともに,“ゲームの進行中に,前記ゲームの進行を一時停止させるための条件が満たされた場合に,前記ゲームの進行を一時停止させた状態に前記ゲーム処理を制御する制御処理“を有する点で共通する。 (4)引用発明の「ゲームの進行が中断された後」及び「広告を出力させる出力処理」は,それぞれ,本願発明の「ゲームの進行が一時停止されている状態に前記ゲーム処理が制御された場合」及び「広告を表示する表示処理」に相当する。 してみると,引用発明の「前記中断処理によってゲームの進行が中断された後,広告を出力させる出力処理」は,本願発明の「前記制御工程において前記ゲームの進行が一時停止されている状態に前記ゲーム処理が制御された場合に、広告を表示する表示処理」に相当するといえる。 (5)引用発明の「中断させたゲーム関連スレッドを活性化させたり,または関数横取りによって奪取された制御権をゲーム実行ファイルに返却し,ゲームが中断された時点から再進行させる」ことは,“ゲームの進行が再開可能な状態に制御する”ことに他ならない。そうすると,引用発明の「前記出力処理による広告の出力が終了した後,前記中断処理が中断させたゲーム関連スレッドを活性化させたり,または関数横取りによって奪取された制御権をゲーム実行ファイルに返却し,ゲームが中断された時点から再進行させる」ことは,“前記出力処理による広告の出力が終了した後,再進行処理が,ゲームの進行が再開可能な状態にゲーム処理を制御する”ことであると言い得るから,本願発明の「前記表示処理による広告の表示完了後、前記制御処理は、前記ゲームの進行が再開可能な状態に前記ゲーム処理を制御する」ことに相当するといえる。 イ 以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 (一致点) 「コンピュータに, ゲームを進行させるゲーム処理と, ゲームの進行中に,前記ゲームの進行を一時停止させるための条件が満たされた場合に,前記ゲームの進行を一時停止させた状態に前記ゲーム処理を制御する制御処理と, 前記制御工程において前記ゲームの進行が一時停止されている状態に前記ゲーム処理が制御された場合に、広告を表示する表示処理と, を実行させるプログラムであって, 前記表示処理による広告の表示完了後、前記制御処理は、前記ゲームの進行が再開可能な状態に前記ゲーム処理を制御するプログラム。」 (相違点) 「ゲームの進行を一時停止させるための条件が満たされた場合」について,本願発明が「ゲームを進行させることが不能となった場合」であるのに対して,引用発明は,「所定の第1条件が満足された場合」である点。 第6 判断 ア 上記相違点について検討する。 引用発明の「所定の第1条件」とは,上記Bの段落【0023】に「所定の時間や、ゲームの進行段階に係るものでありうる」,「例えば、中断部101は、メモリ107と連動し、ゲームの実行開始後に所定の時間が経過しているか否か、あるいは端末機110内で、ゲーム内で重要なイベント信号が発生したか否か、またはゲームの章や節が変わる時点に係る信号が発生したか否か、またはあらかじめ規定された中断時点であるか否かを判断し、ゲームの進行を中断させる」と記載されるように,ゲームプログラムの設計者が,「所定の時間や、ゲームの進行段階に係るもの」として,適宜定め得るものである。 してみると,引用発明の「所定の第1条件」として,所定の時間やゲームの進行段階に係るものとして,例えばタイムオーバーやゲームオーバー等により,「ゲームを進行させることが不能となった場合」とすることについても,当業者が必要に応じて,適宜採用し得る設計的事項にすぎず,引用発明においても,本願発明と同様の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 よって,当該相違点は格別なものではない。 イ 小括 上記で検討したごとく,上記相違点は格別のものではなく,本願発明の奏する作用効果についても,上記引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本願発明は,引用発明に基づいて,容易に発明できたものである。 第7 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,本願の出願日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-11-12 |
結審通知日 | 2019-11-15 |
審決日 | 2019-11-26 |
出願番号 | 特願2016-240547(P2016-240547) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 義晴 |
特許庁審判長 |
仲間 晃 |
特許庁審判官 |
山崎 慎一 田中 秀人 |
発明の名称 | プログラム、記録媒体、ゲーム制御方法、情報処理装置及び制御方法 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 下山 治 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 永川 行光 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 大塚 康徳 |