• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1358588
異議申立番号 異議2018-700510  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-20 
確定日 2019-11-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6250258号発明「高吸収性ポリマーおよび有機UV遮断剤を含む化粧品組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6250258号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-13]について訂正することを認める。 特許第6250258号の請求項1、5?7、9、10、12、13に係る特許を維持する。 特許第6250258号の請求項2?4、8、11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6250258号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成22年6月23日(優先権主張 平成21年6月24日)に特許出願され、平成29年12月1日にその特許権の設定登録がなされ、同年12月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成30年6月20日に特許許異議申立人 猪瀬則之(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続は以下のとおりである。

平成30年10月 2日付け :取消理由通知書
同 年12月28日 :訂正請求書、意見書(特許権者)
(平成31年1月4日受付)
平成31年 3月13日 :意見書(申立人)
(同年3月14日受付)
令和 1年 5月20日付け :審尋(特許権者)
同 年 6月 7日 :回答書(特許権者)
(同年6月10日受付)
同 年 6月21日付け :取消理由通知書
同 年 9月20日 :訂正請求書、意見書(特許権者)
(同年9月24日受付)

なお、令和1年9月20日付け訂正請求がされたため、平成30年12月28日付け訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、令和1年9月20日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の訂正事項2(請求項1中の記載を「前記高吸収性ポリマーが・・・100?1000倍の水を自然に吸収することができ」と訂正するもの)による訂正後の請求項1の内容は、平成30年12月28日付け訂正請求(以下、「最初の訂正請求」という。)の訂正事項2(請求項1中の記載を「前記高吸収性ポリマーが・・・100?1500倍の水を自然に吸収することができ」と訂正するもの)による訂正後の請求項1の内容(吸水能の範囲)を更に限定したものであり、その余の訂正事項は本件訂正請求と最初の訂正請求とで同じであり、かつ、最初の訂正請求に対する意見書において申立人は「本件特許の取消理由に関する主張は、すべて異議申立書に詳細に記載したとおりであり、取消理由通知の内容に鑑みれば、審判官殿もその趣旨を十分にご理解頂いているものと思いますので、今回の訂正を踏まえて新たに追加・補足する事項はございません。」と主張するのみで特段新たな主張を行っていないことに鑑み、本件訂正請求については、「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特段の事情」(特許法第120条の5第5項ただし書後段)があるものと判断した。


第2 訂正請求について
1 本件訂正請求による訂正及び訂正事項
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、一群の請求項である請求項1?13に対するものであり、本件特許明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求める、というものであって、その具体的な内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を表す。)。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「少なくとも1つの水相を形成する成分および少なくとも1つの脂肪相を形成する成分、高吸収性ポリマーおよび少なくとも1種の有機UV遮断剤を含むエマルジョンの形態の化粧品組成物であって、」
と記載されているのを、
「少なくとも1つの水相を形成する成分および少なくとも1つの脂肪相を形成する成分、高吸収性ポリマー、シリカ、少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤、および少なくとも1種の親油性有機UV遮断剤を含むO/Wエマルジョンの形態の化粧品組成物であって、」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項5?7、9、10、12、及び13も同様に訂正する。)

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記高吸収性ポリマーが、乾燥状態で、ポリマー自体の重量の100?2000倍の水を自然に吸収することができ」
と記載されているのを、
「前記高吸収性ポリマーが、乾燥状態で、ポリマー自体の重量の100?1000倍の水を自然に吸収することができ」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項5?7、9、10、12、及び13も同様に訂正する。)

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「かつ架橋アクリルホモポリマーまたはコポリマーから選択されるポリマーである、化粧品組成物。」
と記載されているのを、
「かつ架橋ポリアクリル酸ナトリウムから選択されるポリマーである、化粧品組成物。」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項5?7、9、10、12、及び13も同様に訂正する。)

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物」
と記載されているのを、
「請求項1に記載の組成物」
に訂正する。
(請求項5の記載を引用する請求項6、7、12、及び13も同様に訂正する。)

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物」
と記載されているのを、
「請求項1または5に記載の組成物」
に訂正する。
(請求項6の記載を引用する請求項7、12、及び13も同様に訂正する。)

(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物」
と記載されているのを、
「請求項1、5、および6のいずれか一項に記載の組成物」
に訂正する。
(請求項7の記載を引用する請求項12及び13も同様に訂正する。)

(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項8に記載の組成物」
と記載されているのを、
「請求項1に記載の組成物」
に訂正する。
(請求項9の記載を引用する請求項10、12、及び13も同様に訂正する。)

(12) 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項8または9に記載の組成物」
と記載されているのを、
「請求項1または9に記載の組成物」
に訂正する。
(請求項10の記載を引用する請求項12及び13も同様に訂正する。)

(13) 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項11を削除する。

(14) 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物」
と記載されているのを、
「請求項1、5?7、9および10のいずれか一項に記載の組成物」
に訂正する。
(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。)

(15) 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項13に
「請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物」
と記載されているのを、
「請求項1、5?7、9、10、および12のいずれか一項に記載の組成物」に訂正する。

(16) 訂正事項16
明細書の段落【0016】の「水溶液」および「溶液」を「水」に訂正する。

(17) 訂正事項17
明細書【0016】の「非吸収されなかった」を「吸収されなかった」に訂正する。

2 訂正要件の検討
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る本件訂正は、有機UV遮断剤の種類、エマルジョンの形態を限定すると共に、化粧品組成物をシリカを配合するものに限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、
有機UV遮断剤として、少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤及び少なくとも1種の親油性有機UV遮断剤を用いる点は訂正前の請求項8及び請求項11に各有機UV遮断剤を含むことが記載されており、また、エマルジョンの形態を「O/Wエマルジョン」とすることは特許明細書の段落【0105】に記載されており、シリカの配合については段落【0106】の表1に記載されている。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に係る本件訂正は、化粧品組成物を更に限定するものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る本件訂正は、高吸収性ポリマーの水の吸収量の範囲について、その上限値を訂正前の2000倍から1000倍へと限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
本件特許明細書の段落【0015】には、「高吸収性ポリマーは、それ自体の重量の20?2000倍(すなわち、吸収性ポリマー1グラム当たりに吸収される水が20g?2000g)、好ましくは30?1500倍、さらには50?1000倍の吸水能を有することができる。」と記載されている。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2に係る本件訂正は、化粧品組成物を更に限定するものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3に係る本件訂正は、訂正前の「架橋アクリルホモポリマー、またはコポリマーから選択されるポリマー」を「架橋アクリル酸ナトリウムから選択されるポリマー」に限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項3は、訂正前の請求項4に記載されている。
よって、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3に係る本件訂正は、化粧品組成物を更に限定するものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4) 訂正事項4?6、10、13について
ア 訂正の目的
訂正事項4?6、10、13に係る本件訂正は、請求項2?4、8、11を削除するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項4?6、10、13は、請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4?6、10、13に係る本件訂正は、請求項を削除するものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(5) 訂正事項7?9、11、12、14、15について
ア 訂正の目的
訂正事項7?9に係る本件訂正は、訂正前の請求項5?7において、訂正前の請求項1?4を引用していたところ、上記(4)の訂正により請求項2?4が削除されたため、引用する請求項から削除された請求項を除いて限定して整合をとったものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項11、12は、訂正前の請求項9、10において訂正前の請求項8が引用されていたところ、上記(1)の訂正により訂正前の請求項8に記載されていた事項が訂正後の請求項1に追加され、請求項8が削除されたため、訂正後の請求項9、10において請求項1を引用することとして整合をとったものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
訂正事項14、15は、訂正前の請求項12及び13において請求項1?11又は1?12が引用されていたところ、上記(4)の訂正により訂正後の請求項2?4、8、11が削除されたため、引用する請求項から削除された請求項を除いて限定して整合をとったものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項7?9、11、12、14、15は、他の請求項の削除又は他の請求項の限定にともなって当該請求項の記載を整合させるだけのものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7?9、11、12、14、15に係る本件訂正は、他の請求項の削除又は他の請求項の限定にともなって、当該請求項の記載を整合させるだけのものであるから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(6) 訂正事項16について
ア 訂正の目的
訂正事項16に係る本件訂正は、請求項1に規定される高吸水性ポリマーの吸水能の値(ポリマー自体の重量の100?1000倍)の測定方法について、不明瞭な記載であった段落【0016】の「水溶液」及び「溶液」との記載を「水」とすることにより当該記載の意味を明瞭とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、
段落【0016】は高吸水性ポリマーの吸水能の値の測定方法について、「吸水されなかった水を秤量する」と記載されており、この記載から当該段落に記載の「水溶液」及び「溶液」が「水」を意味することは明らかであるから、訂正事項16は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項16に係る本件訂正は、不明瞭な記載を明瞭にするだけのものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(7) 訂正事項17について
ア 訂正の目的
訂正事項17に係る本件訂正は、本件外国語書面の第3頁第18行の「nonabsorpted」を「非吸収されなかった」と誤訳したものを正しい「吸収されなかった」へ訂正するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤訳の訂正」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項17は、段落【0016】に記載の高吸水性ポリマーの吸水能の値の測定方法についての誤訳を、外国語書面の正確な翻訳に基づいて正すものであって、外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項17に係る本件訂正は、段落【0016】に記載の高吸水性ポリマーの吸水能の測定方法における誤訳を外国語書面の正確な翻訳に基づいて正すものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(8) 特許出願の際に独立して特許を受けることができるか否かについて
本件特許異議の申立は、全請求項に対してされているので、訂正事項1?17について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する特許独立要件は課されない。

(9) 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1?3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。


第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1?13に係る発明は、以下のとおりである(以下、請求項順に「本件発明1」等という。また、本件発明1、5?7、9、10、12、13をまとめて「本件発明」ともいう。)。

「【請求項1】
少なくとも1つの水相を形成する成分および少なくとも1つの脂肪相を形成する成分、高吸収性ポリマー、シリカ、少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤、および少なくとも1種の親油性有機UV遮断剤を含むO/Wエマルジョンの形態の化粧品組成物であって、
前記高吸収性ポリマーが、乾燥状態で、ポリマー自体の重量の100?1000倍の水を自然に吸収することができ、かつ架橋ポリアクリル酸ナトリウムから選択されるポリマーである、化粧品組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
高吸収性ポリマーが、水の吸収後、水中で不溶性のままであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
高吸収性ポリマーが球状粒子の形態で提供されることを特徴とする、請求項1または5に記載の組成物。
【請求項7】
高吸収性ポリマーが、組成物の全重量に対して0.03?15重量%の含有量で存在することを特徴とする、請求項1、5、および6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
親油性有機UV遮断剤が、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノンまたはアミノベンゾフェノン、アントラニル酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ビスレソルシニルトリアジン、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、メロシアニン、ジフェニルブタジエンマロナート誘導体またはジフェニルブタジエンマロニトリル誘導体、カルコンおよびそれらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
親油性有機UV遮断剤が、
サリチル酸誘導体、
ケイ皮酸誘導体、
β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、
ジベンゾイルメタン誘導体、
トリアジン誘導体、
ベンゾトリアゾール誘導体、
およびそれらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項1または9に記載の組成物。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
有機UV遮断剤が、組成物の全重量に対して0.05?30重量%の割合で存在することを特徴とする、請求項1、5?7、9、および10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1、5?7、9、10、および12のいずれか一項により定義される化粧品組成物が、角質性物質に適用されることを特徴とする、角質性物質の美容的処置方法。」


第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 令和1年6月21日付けで通知した取消理由の概要

「1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 」

2 平成30年10月2日付けで通知した取消理由の概要

「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
4.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
5.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) 」
「<1>
●理由1(新規性)、理由2(進歩性)
・請求項 1?13
・引用文献等 1、2、5」

「<2>
●理由1(新規性)、理由2(進歩性)
・請求項 1?13
・引用文献等 2、5、7」

「<3>
●理由5(明確性)
・請求項 1?13」


「<4>
●理由4(サポート要件)
・請求項 1?13」

「<5>
●理由3(実施可能要件)、理由4(サポート要件)
・請求項 1?13 」

「<引用文献等一覧>
1.特開昭63-290811号公報
2.特開平05-070322号公報
3.「CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary Fourth Edition」, 1991年, The Cocmetic, Toiletary, and Fragrance Association発行, p.558
4.「Sanwet Cosmetic Grade Polymers」のカタログ, 1991年, Hoechst Celanese社
5.「Super Absorbent Polymer SANWET IM-300 SANWET IM-1000」のデータシート, 1982年10月, 三洋化成工業株式会社
6.特開2007-153898号公報
7.「FLOCARE」のカタログ, 2008年5月, SNF COSMETICS
8.神保元二ら編集, 「微粒子ハンドブック」, 初版第1刷, 株式会社朝倉書店発行, 1991年9月1日, p.52?54
9.椿淳一郎ら著, 「現場で役立つ粒子径計測技術」, 初版1刷, 日刊工業新聞社発行, 2001年10月26日, p.3?6
10.「SYLOID(R) Silicas for Suncare Applications」のカタログ, 2014年, GRACE社
11.ジーエス・サイエンス株式会社のホームページ(http://www.gs-science.co.jp/product/cream.html)
12.株式会社イプロスのホームページ(https://www.ipros.jp/product/detail/20000212452/)
13.住友精化株式会社のホームページ(https://www.sumitomoseika.co.jp/product/detail.php?id=118) 」

3 令和1年6月21日付けで通知した取消理由に対する当審の判断
(1) 理由1、2の具体的な内容
「本件発明の課題は、本件特許明細書の段落【0003】、【0004】、【0007】、【0008】からみて、べたつく作用を低下させた、有機UV遮断剤、高吸水性ポリマーを含んだエマルジョン化粧品組成物を提供することであると認められる。
そして、訂正(合議体注:平成30年12月28日付け訂正請求による訂正)により、本件発明1は、「高吸収性ポリマーが、乾燥状態で、ポリマー自体の重量の100?1500倍の水を自然に吸収することができ、かつ架橋ポリアクリル酸ナトリウムから選択されるポリマーである」ことが発明特定事項となったところ、1500倍のような高い吸水能を示す架橋ポリアクリル酸ナトリウムから選択される高吸水性ポリマーを実際に製造し、使用することは、本件特許明細書に示されていない。
また、1500倍のような高い吸水能を示す高吸水性ポリマーについて、特許権者が平成30年12月28日に提出した意見書をみても具体的に製造し、使用できることについての説明はなく、当該意見書とともに提出した「AQUA KEEP」のカタログにも、吸水能は最大でも800倍程度の例しか記載されていない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、1500倍のような高い吸水能を示す架橋ポリアクリル酸ナトリウムから選択される高吸水性ポリマーを、実際に製造し、使用して、当業者が本件発明1を実施できるように、明確かつ十分に記載されているとはいえない。
同様に、本件の発明の詳細な説明は、1500倍のような高い吸水能を示す架橋ポリアクリル酸ナトリウムから選択される高吸水性ポリマーを製造し、使用することができるように記載されておらず、それができることが出願時の技術常識から明らかであるとする具体的な根拠もないから、当該ポリマーを用いた本件発明1について、上記課題を解決できると直ちには認めることはできない。
請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明5?7、9、10、12、13についても上記1と同じ理由が該当する。」

(2) 判断
本件訂正により、「高吸収性ポリマーが、乾燥状態で、ポリマー自体の重量の100?1000倍の水を自然に吸収することができ、かつ架橋ポリアクリル酸ナトリウムから選択されるポリマーである」ことが発明特定事項となり、高吸水性ポリマーの吸水能の上限が1000倍となった。
そして、特許権者が提示したAQUA KEEPのカタログ(平成30年12月28日提出の意見書の添付資料)に記載の吸水能が約800倍のポリマーの例(本件発明1の実施例に用いたポリマーに相当)及び技術常識からすれば、高吸水性ポリマーの吸水能が100?1000倍程度の範囲であれば、当業者はそのようなポリマーを製造・使用することができるものと認められる。
そうすると、本件訂正により、本件発明1は、当業者が実施をすることができるものとなり、また、上記課題を解決できる範囲のものとなったから、理由1、2は解消した。

4 平成30年10月2日付けで通知した取消理由に対する当審の判断
(1)理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
ア 引用文献に記載された事項
引用文献1、2、5及び7(それぞれ申立人が提出した甲第1、2、5及び7号証に対応する。)には、以下の記載がある。

(ア) 引用文献1に記載された事項
(1-1) 「1.(A)デンプンおよびセルロースからなる種類から選ばれる少なくとも1種の多糖、(B)水溶性であるか加水分解によって水溶性になる重合性二重結合を有する少なくとも1種の単量体、および(C)架橋剤を重合し、そして単量体(B)が加水分解によって水溶性になるものであるならば、その後に得られた生成物を加水分解に付すことを含む方法によって得ることができる有効なスキンモイスチャライジング量の吸水性樹脂重合体が均一に分散された少なくとも1つの水相を含むことを特徴とするスキンモイスチャライジング乳濁液組成物。」(特許請求の範囲)

(1-2) 「本発明は、特定のゲル化剤樹脂物質の、乳濁液の水相への添加によって改良されたスキンモイスチャライジング活性を有する乳濁液型の化粧スキンケア製剤に関する。」(第2頁左上欄末行?右上欄第3行)

(1-3) 「スキンケア乳濁液組成物におけるモイスチャライジング活性の顕著な増大は、特定の乳濁液系の水相に特定のデンプンまたはセルロースをベースとする吸水性樹脂を配合することによって得ることができることが今見出された。・・・最も好ましいデンプンをベースとする吸水性樹脂重合体は、デンプン-アクリレートグラフト重合体と属的に表され、かつ成分(A)多糖としての天然デンプン;成分(B)水溶性単量体としての、重合性二重結合を有しかつ(メタ)アクリル酸、その無水物およびその塩(例えば、アルカリ金属塩、最も好ましくはナトリウム塩)からなる群から選ばれる水溶性モノエチレン性不飽和単量体;および成分(C)架橋剤、例えば、N,N-アルキレン(C1?C6)ビス-(メタ)アクリルアミド(N,N-メチレンビスアクリルアミドが最も好ましい)の重合によって得ることができるものである。(メタ)アクリル酸ナトリウムを単量体(B)として利用する時には、得られた重合体は、「デンプングラフトポリアクリル酸ナトリウム」とも称す。
デンプングラフトポリアクリル酸ナトリウムの特に好適な商業的製剤は、米国の供給業者、バージニア州ポートスミスのセラニーズ・スーパーアブソーベント・マテリアルズから入手でき。数字によって同定された等級、例えば、サンウェット(SANWETR)IM-1000、IM-1500およびIM-2500で商標「サンウェット」で市販されている。前記供給業者によるこの商業的製剤は、その主成分として、次式


によって構造的に表すことができるデンプングラフトポリアクリル酸ナトリウムを有し、そしてまた微量成分として、若干の低分子量および高分子量ポリアクリル酸ナトリウムおよび若干の低分子量デンプンおよび少量の水分を含有する。」(第2頁左下欄第13行?第3頁右下欄第5行)

(1-4) 「一般に、乳濁液組成物の全重量に対して少なくとも約0.01重量%、好ましくは約0.1?約5重量%の吸水性樹脂重合体は、乳濁液組成物のモイスチャライジング活性を有効に与えるか高めるのに十分であろう。・・・吸水性樹脂重合体は、優秀なゲル化剤物質であるが、本質上水不溶性であり、水または水相への添加は化粧エレガンスの観点から有利であるとは思われない若干固まった外観を有する個々に水和された粒子のゲルまたはスラリーを生ずる。」(第3頁右下欄第18行?第4頁左上欄末行)

(1-5) 「1以上の化粧上許容可能な成分は、例えば、化粧上エレガントであるとともに多機能な製品、例えば、モイスチャライジングおよび日やけどめ活性を有するもの(本発明の好ましい態様)、モイスチャライジングおよびスキンコンディショニング活性を有するものなどを与えるために本乳濁液に配合できることが理解されるであろう。このような成分としては、希釈剤、増粘剤、安定剤、保湿剤、エモリエント、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、発臭剤、コンディショナー、補助乳化剤、乳白剤、紫外線吸収日やけどめ剤および他の通常の化粧上許容可能な添加剤の1以上が挙げられる。特定の添加剤の溶解度または混和特性に応じて、添加剤は、最も好適であるいずれかの乳濁液相に配合できる。」(第4頁右下欄第17行?第5頁左上欄第11行)

(1-6) 「皮膚柔軟性試験
本乳濁液組成物の局所適用に従ってヒトの皮膚上で得られる増大モイスチャライジング効果は、ガスベアリング電流力計(Gas Bearing Electrodynamometer)として既知の機器を使用して皮膚柔軟性を測定する方法(以下時々「皮膚柔軟性試験」と称す)で実証できる。・・・皮膚の柔軟性に対するモイスチャライザーの効果の測定は、S.ジャケス等によって・・・皮膚の表面層(角質層)のモイスチャライゼーションの程度と相関することが示されている。」(第5頁左下欄第6行?右下欄第5行)

(1-7) 「例I
陰イオン乳化剤系を有する水中油型日やけどめ乳濁液は・・・下記成分からライトクリームの形態で調製する。水相中に吸水性樹脂重合体を含有しない乳濁液は、化粧スキンケア乳濁液ベースを実証する。この化粧スキンケア乳濁液ベースに、下記例で示すように、前記樹脂重合体が配合できる。
成分 %W/W
水相:
メチルパラベン(防腐剤) 0.20
パンテチン(モイスチャライザー) 0.10
カルボマー934(増粘剤) 0.08
水酸化ナトリウム10%(中和剤) 1.00
精製水(100%w/wとする)
油相:
重鉱油 4.00
ステアリン酸、ダブルプレス(陰イオン乳化剤) 3.00
コレステロール(補助乳化剤) 1.00
セチルアルコール(補助乳化剤) 1.80
ヒマシ油(エモリエント) 1.00
パルミチン酸セチル(エモリエント) 1.20
オクチルジメチルPABA(紫外線吸収剤) 1.40
プロピルパラベン(防腐剤) 0.10
・・・
例II
例Iの水中油型乳濁液は、デンプンをベースとする吸水性樹脂重合体0.01重量%を水相に均一に分散することによって変性する。セラニーズのデンプングラフトポリアクリル酸ナトリウム製品、サンウェットIM-1000微粉砕(FG)粉末をゲル化剤樹脂物質として使用する。例Iの水酸化ナトリウム中和工程後、平均粒径50μ未満〔ヘグマン(Hegman)250?0μゲージ)〕を有する均質分散液が得られるまで、サンウェットIM-1000を高速分散装置を備えた容器中で強剪断下に加熱水相にゆっくりと加える。油相を例Iと同様に調製し、加えてo/w乳濁液を完成する。
このようにして得られたゲル化剤樹脂物質を有するo/w乳濁液を前記ゲル化剤なしの例Iのo/w乳濁液との直接比較試験においてモイスチャライジング活性に関して試験する。前記皮膚柔軟性試験から得られた下記結果は、本例のo/w乳濁液の優れたモイスチャライジング活性を示す。・・・」(第7頁左上欄第1行?第8頁左上欄)

(1-8) 「例 III
例Iの水中油型乳濁液は、例IIの方法に従うことによってサンウェットIM-1000(FG)0.1重量%を水相に配合することによって変性し、得られたo/w乳濁液は、モイスチャライジング活性に関して例Iのベース乳濁液と比較する。表示されたデータは、デンプンをベースとする吸水性樹脂重合体に起因する改良モイスチャライジング効果を示す。・・・
本例のクリーム状乳濁液組成物は、化粧スキンローションを適用する通常の方法で皮膚にすり込み、太陽保護活性を与えることに加えて、皮膚に潤いを与えかつ皮膚を柔軟化する非油状被覆物を有する皮膚を残す。」(第8頁右上欄第1行?右下欄第5行)

(1-9) 「例 IV
本例においては、非イオン乳化剤系を有する水中油型日やけどめ乳濁液ローションは、例Iの一般法によって下記成分(化学名またはCTFA名によって示す)から調製する。吸水性樹脂重合体を含有していない乳濁液を次の例でベース処方物
成分 %w/w
水相:
メチルパラベン(防腐剤) 0.225
パンテチン(モイスチャライザー) 0.1
イミダゾリジニル尿素(防腐剤) 0.2
コロイドオートミル(スキンコンディショナー) 0.4
グリセレト-7-トリアセテート(エモリエント)★ 1.0
精製水(100%w/wとする)
油相:
重鉱油 2.0
コレステロール(補助乳化剤) 1.2
オクチルメトキシシンナメート(紫外線吸収剤) 2.0
PPG-20メチルグルコースエーテルジステアレート(エモリエント&補助乳化剤) 0.4
プロピルパラベン(防腐剤) 0.15
水素添加パームグリセリドおよびセチルアルコールおよびTEA-イソステアロイル加水分解コラーゲン(第一級非イオン乳化剤)★★
1.6
セチルアルコール(補助乳化剤) 0.2
ミリスチルアルコール(補助乳化剤) 0.2
シクロメチコン(潤滑剤) 0.5
・・・
例 V
例IVの水中油型乳濁液は、サンウェットIM-1000(FG)0.4重量%を水相に配合することによって変性する。・・・別個の容器において、サンウェットIM-1000(0.4%)をグリセレト-7-トリアセテートに加えて、樹脂ゲル化剤の湿潤分散液を調製する。ヘグマンゲージで50μの平均粒径を有する樹脂ゲル化剤の均一な分散液が得られるまで、この分散液をインライン・テクマーを通しての再循環での水相の混合によって形成された渦にゆっくりと加える。水性分散液を連続混合下に75?78℃に加熱しながら容器に移す。
別個の混合容器において、鉱油および油相成分を加え、約80?82℃に加熱しながら混合して均一な油相を形成する。高速機械的分散装置を使用して、加熱された油相を加熱された水相にゆっくりと加え、均質なo/w乳濁液が得られるまで、混合を続け、冷却によって室温とする。
下記結果が、モイスチャライジング活性の比較において得られる。・・・」(第8頁右下欄第6行?第10頁左上欄)

(1-10) 「例 VI
本例においては、ローション形態の下記多相(ダブル乳濁液)シリコーン流体中水中油型スキンケア乳濁液は、下記成分(化学名またはCTFA名によって示す)から調製する。
成分 %w/w
水相:
精製水 61.17
パンテチン、80%水溶液(保湿剤) 0.10
メチルパラベン(防腐剤) 0.20
カルボマー940(増粘剤) 0.10
グリセリン(保湿剤) 2.50
アルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム(陰イオン乳化剤)
1.25
油相:
重鉱油 1.75
コレステロール(エモリエント&補助乳化剤) 1.00
パルミチン酸セチル(補助乳化剤) 0.20
PEG-22/ドデシルグリコール共重合体(乳化剤) 0.20
エチルパラベン(防腐剤) 0.10
プロピルパラベン(防腐剤) 0.15
中和剤塩基:
トリエタノールアミン 0.10
着色剤および芳香剤:
FD&CレッドNo.4(1%水溶液) 0.03
芳香油 0.30
シリコーン相:
シクロメチコン/ジメチコンコポリオール(90:10)9.50
シクロメチコン/ミメチコノール(13:87) 5.00
シクロメチコン 3.00
フェニルジメチコン 1.00
パレト-15-3(補助乳化剤) 2.00
オクチルメトキシシンナメート(紫外線吸収剤) 7.00
ベンゾフェノン-3(紫外線吸収剤) 0.50
C12?15アルコールベンゾエート(可溶化剤) 2.85
100.00
・・・
例 VII
例VIのシリコーン流体中水中油(o/w/s)型乳濁液は、均一な分散液が得られるまで、高剪断混合を使用してカルボマー添加後にサンウェットIM-1000(FG)0.1重量%を水相に配合することによって変性する。下記結果が、モイスチャライジング活性の比較において得られる。・・・」(第10頁右上欄第1行?第11頁左下欄)

(イ) 引用文献2に記載された事項
(2-1) 「【請求項1】吸水性ポリマー0.1?10重量%及び次の一般式(1)
【化1】


(式中、xは4?500の数を示す)で表わされるジメチルポリシロキサン1?20重量%を含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【請求項2】 更に紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1記載の油中水型乳化化粧料。」(特許請求の範囲)

(2-2) 「【0009】本発明に用いられる吸収性ポリマーとしては、水分を吸収する作用を有するポリマーであれば特に制限されず、例えばカラギーナン、ゼラチン、寒天、トラガントゴム、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等に由来する含水ゲルを多価金属塩の添加により安定化せしめたものが挙げられる。
【0010】更に、アクリル酸若しくはメタクリル酸〔以下、「(メタ)アクリル酸」と略称する〕、(メタ)アクリル酸のナトリウム、アンモニウム等の塩類;(メタ)アクリルアミド;N-置換(メタ)アクリルアミド、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸またはその塩、スチレンスルホン酸またはその塩、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、ビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリル酸エステル等の単独重合体またはこれら単量体を2種以上用いた共重合体の架橋体;酢酸ビニル-アクリル酸メチル共重合体鹸化物、酢酸ビニル-マレイン酸共重合体鹸化物、このハーフエステル若しくはハーフアミド、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体鹸化物、このハーフエステル若しくはハーフアミド等の架橋体;
【0011】スチレン-無水マレインナトリウム共重合体鹸化物、そのハーフエステル若しくはハーフアミド、澱粉-アクリル酸グラフト重合体、多糖類-アクリル酸グラフト重合体、澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物等が挙げられる。架橋体を形成させる方法として、上記単量体または単量体混合物を、多官能性ビニル単量体、または分子内に少なくとも2個のビニル基以外の官能基、例えばエポキシ基等を有する架橋剤と混合し、公知の方法により重合することにより適当な弾性をもつ高分子とする方法も挙げられる。また、単独または共重合体を得た後、架橋剤を公知の方法により反応させることにより、適当な弾性を有する高分子とすることもできる。
・・・
【0013】本発明に用いられる吸水性ポリマーは吸液量2以上のものが好ましく、吸液量が2未満では充分なべとつき低減効果の持続性が得られない。なお、吸液量は次の測定法により求められる。
吸液量測定法:ポリマー1.0gを、大過剰の生理食塩水に十分膨潤させた後、室温で30分間放置し、ゲル部分をろ紙でろ過して求めた重量を測定し、ポリマー1g当りの生理食塩水量(g)を吸液量とする。また、吸水性ポリマーの粒径及び形状は特に制限されないが、球状で乾燥時の平均粒径が50μ以下のものが好ましい。
【0014】吸水性ポリマーの本発明乳化化粧料への含有量は0.1?10重量%であるが、特に2?8重量%とすることが好ましい。」

(2-3) 「【0028】一方、上記の乳化化粧料に、紫外線吸収剤を更に加えると、紫外線吸収剤が汗等により流出せず、紫外線防止効果が持続する化粧料とすることができる。ここで用いる紫外線吸収剤としては、メトキシケイ皮酸オクチル(ジボダン社製パルソールMCX SA)、酸化チタン、酸化亜鉛及び前記した疎水化処理粉体、4-tert-ブチル-4’-メトキシ-ジベンゾイルメタン(ジボダン社製、パルソール1789)等が挙げられる。また製法は常法により行なえばよい。」

(2-4) 「【0030】・・・実施例1
以下の組成の乳化化粧料を常法により混合し製造した。
【0031】
成分 (重量%)
・・・
吸水性ポリマー*2 5
・・・
【0032】・・・
*2 架橋剤(エチレングリコールジグリシジルエーテル)で架橋し、水不溶性にしたポリアクリル酸ナトリウム(平均粒径5μ、吸液量約10)
(製法)A液として80%アクリル酸水溶液、255gを30%水酸化ナトリウム水溶液、280gで中和したものと、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX810(長瀬化成(株)製))、10.2g、及び過硫酸カリウム、0.8gを水20gに溶解したものを、ショ糖モノスチアリン酸エステル(リョートーシュガーエステルS-570(三菱化成食品(株)製))、10gをシクロヘキサン、1kgに分散した液に添加し、ホモミキサーで分散する。一方、B液として、1kgのシクロヘキサンを還流冷却管、温度計、窒素導入管、撹拌棒、滴下ロートを付した5lの反応釜に仕込む。この反応釜に窒素を通じ、酸素を除去した後、80±5℃に昇温し、撹拌しながらA液を滴下ロートよりB液を滴下する。滴下後更に、2時間熟成を行なう。その後共沸脱水を行ない、更にシクロヘキサンを1.5l留去して放冷する。生成したポリマービーズを90℃で減圧乾燥し当該ポリマー280gを得る。」

(2-5) 「【0038】実施例2
以下の組成の乳化化粧料を常法により混合し、製造した。
成分 (重量%)
・・・
紫外線吸収剤*11 3
・・・
【0039】・・・
*11 メトキシケイ皮酸オクチル(ジボダン社製パルソールMCX SA)」

(2-6) 「【0043】実施例3
下記に示す組成の乳化化粧料を常法により調製した。



*14 (1)式中x=10のもの
*15 実施例1と同じもの
*16 実施例1と同じもの
*17 α-モノイソステアリルグリセリルエーテル
*18 酸化チタンに対し、3%のシリコーン油中水型乳化化粧料(KF-9650cs)を用い、表面被覆処理した酸化チタン(平均粒径3μ)
*19 実施例2と同じもの
【0044】この乳化化粧料は汗によるべとつき、テカリ及び化粧くずれが少なく、しかも、これらの効果は持続するものであった。一方、紫外線吸収剤の粉体の汗による流出、かたよりは少なく、紫外線防止効果も良好であった。」

(ウ) 引用文献5に記載された事項
引用文献5には、三洋化成工業株式会社により1982年に発行された「超吸収性ポリマー」である「SANWET IM-300」及び「SANWET IM-1000」が、ポリマーデンプンとアクリル酸から製造される、内部的に架橋結合されたデンプン-グラフト-ポリアクリレートであり、イオン交換水と生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム溶液)との吸収能の違いについて、「SANWET IM-300」は、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム溶液)65倍、イオン交換水を700倍吸収すること、並びに、「SANWET IM-1000」は、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム溶液)80倍、イオン交換水を1000倍吸収することが示されている(第1頁1段落目1?7行、第1頁の表)。

(エ) 引用文献7に記載された事項
引用文献7には、架橋化されたポリアクリル酸ナトリウムからなる超吸収性ポリマーであるFlocare GB300が重量の400倍の蒸留水を吸収することができることが記載されている(第10頁)。

イ 引用文献1、2に記載された発明
(ア) 引用文献1に記載された発明
記載事項(1-7)、(1-8)、(1-9)及び(1-10)より、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明1-1」?「引用発明1-3」という。また、これらをまとめて「引用発明1」ともいう。)

(引用発明1-1)
「以下の成分からなる乳濁液に、吸水性樹脂重合体であるデンプングラフトポリアクリル酸ナトリウム製品、サンウェットIM-1000微粉砕(FG)粉末を0.01重量%又は0.1重量%配合し、50μ未満の平均粒径を有する吸水性樹脂重合体の均質分散液とした、水中油型日やけどめ乳濁液。
成分 %W/W
水相:
メチルパラベン(防腐剤) 0.20
パンテチン(モイスチャライザー) 0.10
カルボマー934(増粘剤) 0.08
水酸化ナトリウム10%(中和剤) 1.00
精製水(100%w/wとする)
油相:
重鉱油 4.00
ステアリン酸、ダブルプレス(陰イオン乳化剤) 3.00
コレステロール(補助乳化剤) 1.00
セチルアルコール(補助乳化剤) 1.80
ヒマシ油(エモリエント) 1.00
パルミチン酸セチル(エモリエント) 1.20
オクチルジメチルPABA(紫外線吸収剤) 1.40
プロピルパラベン(防腐剤) 0.10 」

(引用発明1-2)
「以下の成分からなる乳濁液に、吸水性樹脂重合体であるデンプングラフトポリアクリル酸ナトリウム製品、サンウェットIM-1000微粉砕(FG)粉末を0.4重量%配合し、50μ未満の平均粒径を有する吸水性樹脂重合体の均質分散液とした、水中油型日やけどめ乳濁液ローション。
成分 %w/w
水相:
メチルパラベン(防腐剤) 0.225
パンテチン(モイスチャライザー) 0.1
イミダゾリジニル尿素(防腐剤) 0.2
コロイドオートミル(スキンコンディショナー) 0.4
グリセレト-7-トリアセテート(エモリエント)★ 1.0
精製水(100%w/wとする)
油相:
重鉱油 2.0
コレステロール(補助乳化剤) 1.2
オクチルメトキシシンナメート(紫外線吸収剤) 2.0
PPG-20メチルグルコースエーテルジステアレート(エモリエント&補助乳化剤) 0.4
プロピルパラベン(防腐剤) 0.15
水素添加パームグリセリドおよびセチルアルコールおよびTEA-イソステアロイル加水分解コラーゲン(第一級非イオン乳化剤)★★
1.6
セチルアルコール(補助乳化剤) 0.2
ミリスチルアルコール(補助乳化剤) 0.2
シクロメチコン(潤滑剤) 0.5」

(引用発明1-3)
「以下の成分からなる乳濁液に、吸水性樹脂重合体であるデンプングラフトポリアクリル酸ナトリウム製品、サンウェットIM-1000微粉砕(FG)粉末を0.1重量%配合した、水中油型スキンケア乳濁液。
成分 %w/w
水相:
精製水 61.17
パンテチン、80%水溶液(保湿剤) 0.10
メチルパラベン(防腐剤) 0.20
カルボマー940(増粘剤) 0.10
グリセリン(保湿剤) 2.50
アルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム(陰イオン乳化剤)
1.25
油相:
重鉱油 1.75
コレステロール(エモリエント&補助乳化剤) 1.00
パルミチン酸セチル(補助乳化剤) 0.20
PEG-22/ドデシルグリコール共重合体(乳化剤) 0.20
エチルパラベン(防腐剤) 0.10
プロピルパラベン(防腐剤) 0.15
中和剤塩基:
トリエタノールアミン 0.10
着色剤および芳香剤:
FD&CレッドNo.4(1%水溶液) 0.03
芳香油 0.30
シリコーン相:
シクロメチコン/ジメチコンコポリオール(90:10)9.50
シクロメチコン/ミメチコノール(13:87) 5.00
シクロメチコン 3.00
フェニルジメチコン 1.00
パレト-15-3(補助乳化剤) 2.00
オクチルメトキシシンナメート(紫外線吸収剤) 7.00
ベンゾフェノン-3(紫外線吸収剤) 0.50
C12?15アルコールベンゾエート(可溶化剤) 2.85
100.00 」

(イ) 引用文献2に記載された発明
記載事項(2-6)、並びに、記載事項(2-4)及び(2-5)の実施例1及び2で用いた吸水性ポリマー及び紫外線吸収剤の記載より、引用文献2には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明2」という。)。

(引用発明2)
「以下の組成の乳化化粧料。



*15 架橋剤(エチレングリコールジグリシジルエーテル)で架橋し、水不溶性にしたポリアクリル酸ナトリウム(平均粒径5μ、吸液量約10)
*17 α-モノイソステアリルグリセリルエーテル
*18 酸化チタンに対し、3%のシリコーン油中水型乳化化粧料(KF-9650cs)を用い、表面被覆処理した酸化チタン(平均粒径3μ)
*19 実施例2と同じもの *19 メトキシケイ皮酸オクチル(ジボダン社製パルソールMCX SA)」

ウ 「<1> 理由1(新規性)、理由2(進歩性)について」(引用文献1を主引例とした場合)
(ア)本件発明1について
a 対比
本願発明1と引用発明1(引用発明1-1?1-3)とを対比する。
引用発明1-1の「水中油型日やけどめ乳濁液」、引用発明1-2の「水中油型日やけどめ乳濁液ローション」及び引用発明1-3の「水中油型スキンケア乳濁液」は、乳濁液型の化粧スキンケア製剤であるから(記載事項(1-1)及び(1-2))、本件発明1の「O/Wエマルジョンの形態の化粧品組成物」に相当する。
また、引用発明1の「水相」の成分、「油相」及び「シリコーン相」の成分、「吸水性樹脂重合体であるデンプングラフトポリアクリル酸ナトリウム」、「オクチルジメチルPABA(紫外線吸収剤)」及び「オクチルメトキシシンナメート(紫外線吸収剤)」は、それぞれ、本件発明1の「少なくとも1つの水相を形成する成分」、「少なくとも1つの脂肪相を形成する成分」、「高吸収性ポリマー」、「親油性有機UV遮断剤」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明1とは、
「少なくとも1つの水相を形成する成分および少なくとも1つの脂肪相を形成する成分、高吸収性ポリマーおよび少なくとも1種の親油性有機UV遮断剤を含むO/Wエマルジョンの形態の化粧品組成物である、化粧品組成物」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1-1)
本件発明1では「高吸収性ポリマー」が「乾燥状態で、ポリマー自体の重量の100?1000倍の水を自然に吸収することができ(る)」ことが特定されているのに対し、引用発明1では吸水性樹樹脂重合体の吸水能が示されていない点。

(相違点1-2)
高吸水性ポリマーが、本件発明1では「架橋ポリアクリル酸ナトリウム」であるのに対し、引用発明1では「デンプングラフトポリアクリル酸ナトリウム」である点。

(相違点1-3)
化粧品組成物として、本件発明1は「シリカ」及び「少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤」を含むのに対し、引用発明1はこれらを含まない点。

b 判断
まず、理由1(新規性)について検討するに、本件発明1と引用発明1とは、少なくとも相違点1-2、1-3において実質的に相違することが明らかであるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

次に、理由2(進歩性)について、上記相違点1-3を検討するに、引用文献1をみても、「シリカ」や「少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤」を更に含めることについての記載ないし示唆はない。また、引用文献2及び5にも「シリカ」や「少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤」についての記載は全くない。
そうすると、相違点1-3の構成をとることは、引用文献1、2及び5の記載事項から当業者であっても容易に想到し得たことではない。
そして、効果について、本件発明1は、O/Wエマルジョン型形態の化粧品組成物において、有機UV遮断剤の存在下でも、ベタつく作用を有さず、皮膚の適用時に、特に軟らかさ及びすべりの非常に優れた化粧特性を有するとの格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、5に記載された事項から当業者が容易に発明をすることできたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

(イ) 本件発明5?7、9、10、12、13について
本件発明5?7は、本件発明1の高吸収性ポリマーについて、それぞれ、「水の吸収後、水中で不溶性のままであること」、「球状粒子の形態で提供されること」、「組成物の全重量に対して0.03?15重量%の含有量で存在すること」を特定するものである。
本件発明9、10は、本件発明1の親油性有機UV遮断剤の種類を特定するものであり、また、本件発明12は、同じく有機UV遮断剤の配合量を「組成物の全重量に対して0.03?15重量%の含有量で存在すること」と特定するものである。
本件発明13は、「請求項1、5?7、9、10及び12のいずれか一項により定義される化粧品組成物が、角質性物質に適用されることを特徴とする、角質性物質の美容的処置方法」に係る発明である。
本件発明5?7、9、10、12、13と引用発明1-1?1-3とを対比すると、本件発明1と同様の上記相違点1-1?1-3の点で相違し、相違点1-3については、上記(ア)bにおける判断と同様となる。
そして、効果について、本件発明5?7、9、10、12、13は、本件発明1と同様、上記(ア)bで記載したとおり、格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明5?7、9、10、12、13は、引用文献1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、5に記載された事項から当業者であっても容易に発明をすることができたものでもないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
よって、請求項5?7、9、10、12、13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

エ 「<2>理由1(新規性)、理由2(進歩性)について」(主引例が引用文献2の場合)
(ア) 本件発明1について
a 対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2における「乳化化粧料」は油中水型乳化化粧料であり(記載事項(2-1))、本件発明1は「O/Wエマルジョンの形態の化粧品組成物」であるから、両発明は「エマルジョン形態の化粧品組成物」との限りにおいて一致する。
引用発明2の「1,3-ブチレングリコール」、「グリセリン」、「エタノール」及び「精製水」は、本件発明1の「少なくとも1つの水相を形成する成分」に相当し、引用発明2の「ジメチルポリシロキサン」、「揮発性シリコーン」及び「スクワラン」は、本件発明1の「少なくとも1つの油相(脂肪相)を形成する成分」に相当する。
また、引用発明2の「吸水性ポリマー」は、「架橋剤(エチレングリコールジグリシジルエーテル)で架橋し、水不溶にしたポリアクリル酸ナトリウム」であるから、本件発明1の「架橋ポリアクリル酸ナトリウム」である「高吸収性ポリマー」に相当する。
そして、引用発明2の「紫外線吸収剤」は、メトキシケイ皮酸オクチルであるから、本件発明1の「親油性有機UV遮断剤」に相当する。
さらに、引用発明2の「乳化剤」、「シリコーン被覆酸化チタン」、「香料」は、本件発明1の「少なくとも1つの油相(脂肪相)を形成する成分」あるいは「水相を形成する成分」のいずれかに相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明2とは、
「少なくとも1つの水相を形成する成分および少なくとも1つの脂肪相を形成する成分、高吸収性ポリマーおよび少なくとも1種の親油性有機UV遮断剤を含むエマルジョンの形態の化粧品組成物であって、前記高吸収性ポリマーが架橋ポリアクリル酸ナトリウムである、化粧品組成物」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点2-1)
本件発明1の「高吸収性ポリマー」が「乾燥状態で、ポリマー自体の重量の100?1000倍の水を自然に吸収することができ(る)」ことが特定されているのに対し、引用発明2の吸水ポリマーの吸液量は約10である点。

(相違点2-2)
化粧品組成物として、本件発明1では、「シリカ、少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤」を含むのに対し、引用発明2ではこれらを含まない点。

(相違点2-3)
本件発明1は「O/Wエマルジョン」形態であるのに対し、引用発明2は「油中水型」エマルジョン形態である点。

b 判断
まず、理由1(新規性)について検討するに、は、本件発明1と引用発明2とは少なくとも相違点2-1?2-3において相違することが明らかであるから、本件発明1は、引用文献2に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

次に、理由2(進歩性)について、上記相違点2-2を検討するに、引用文献2には、「シリカ」、「少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤」を更に含めることについて記載ないし示唆はない。また、引用文献5及び7にも、「シリカ」や「少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤」についての記載は全くない。
そうすると、相違点2-2の構成をとることは、引用文献2、5及び7の記載事項から当業者が容易に想到し得たことではない。
そして、効果について、本件発明1は、O/Wエマルジョン型形態の化粧品組成物において、有機UV遮断剤の存在下でも、ベタつく作用を有さず、皮膚の適用時に、特に軟らかさ及びすべりの非常に優れた化粧特性を有するとの格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献2に記載された発明及び引用文献5、7に記載された事項から当業者が容易に発明をすることできたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

(イ) 本件発明5?7、9、10、12、13について
本件発明5?7は、本件発明1の高吸収性ポリマーについて、それぞれ、「水の吸収後、水中で不溶性のままであること」、「球状粒子の形態で提供されること」、「組成物の全重量に対して0.03?15重量%の含有量で存在すること」を特定するものである。
本件発明9?10は、本件発明1の親油性有機UV遮断剤の化合物の種類を特定したものであり、また、本件発明12は、同じく有機UV遮断剤の配合量を「組成物の全重量に対して0.03?15重量%の含有量で存在すること」と特定するものである。
本件発明13は、「請求項1、5?7、9、10及び12のいずれか一項により定義される化粧品組成物が、角質性物質に適用されることを特徴とする、角質性物質の美容的処置方法」に係る発明である。
本件発明5?7、9、10、12、13と引用発明2とを対比すると、本件発明1と同様の上記相違点2-1、2-2及び2-3の点で相違し、かつ、相違点2-2については、上記(ア)bにおける判断と同様となる。
そして、効果について、本件発明5?7、9、10、12、13は、本件発明1と同様に、上記(ア)bで記載したとおり、格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、本件発明5?7、9、10、12、13は、引用文献2に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、引用文献2に記載された発明及び引用文献5、7に記載された事項から当業者が容易に発明をすることできたものでもなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
よって、請求項5?7、9、10、12、13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

(2)「<5>理由3(実施可能要件)、理由4(サポート要件)」について
ア 理由3、4の具体的な内容
「高吸収性ポリマーの吸水能について、引用文献5をみると、吸水能は最大で1000倍程度であり(引用文献5の「SANWET IM-1000」)、また、上記<4>の3で示したカタログにおいても、アクアキープの吸水能は最大で800倍程度である。
一方、本件特許発明1における高吸収性ポリマーは、「乾燥状態で、ポリマー自体の重量の100?2000倍の水を自然に吸収することができ(る)」ものであり、吸水能が最大で2000倍の高吸収性ポリマーを包含するところ、本件特許明細書等をみても、そのような高吸収性ポリマーを実際に製造し、使用することができることは示されていない。
それゆえ、本件特許発明のうち、高吸収性ポリマーとして、実施例で示されるような吸水能を有するもの以外のもの、特に、2000倍程度の吸水能を有する高吸収性ポリマーを用いた化粧品組成物については、当業者が実施することができない。また、本件特許明細書の実施例等の記載をもって、実施例で示されるような吸水能を有する高吸収性ポリマー以外の高吸収性ポリマーを用いても上記課題が解決できることにまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1?13を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。また、本件特許発明1?13は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」

イ 判断
上記3(2)で判断したとおりであり、本件訂正により、本件発明1は、当業者が実施をすることができるものとなり、また、上記課題を解決できる範囲のものとなったから、理由3、4は解消した。
よって、本件発明1、5?7、9、10、12、13は、特許法第36条第4項第1号又は同条第6項第1号に規定する要件を満たさないものではないから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。

(3) 「<4>理由4(サポート要件)」について
ア 理由4の具体的な内容
(ア) 「1.シリカの有無について
・・・
本件発明は、有機遮断剤を含む化粧品の感触の低下、特にベタつく作用による不快感といった欠点を有しないエマルジョン形態の化粧品組成物を提供することを解決しようとする課題とするものと認められる。
一方、本件特許明細書の実施例において、上記課題が解決したことが示されているのは、高吸収性ポリマーとともに、シリカを含む組成物のみである(実施例1及び4)。ここで、シリカは、化粧品に配合することにより、肌への使用感の向上やベタつき防止の作用を有するものであるから(この点について必要であれば、引用文献10?12を参照。)、本件特許発明が上記課題を解決する上では、必須の成分であると認められる。
しかしながら、本件特許発明1?13はシリカを含むことは特定しておらず、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、本件特許発明1?13は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものといえる。
よって、本件特許発明1?13は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」

(イ) 「2.エマルジョンの形態について
・・・
本件特許明細書には、エマルジョン形態がW/O型である化粧品組成物についての実施例は示されていないし、エマルジョン形態がW/O型である場合には、ベースである油相(脂肪相)中に存在する親油性有機UV遮断剤によるベタつく作用を、油相中の水滴中に存在する高吸収性ポリマーが防止できるとは考え難い。また、そもそもベースが油相であれば、「脂っぽいベタついた」感触となるところ、水滴中に存在する高吸収性ポリマーが当該ベースとなる脂肪相による「脂っぽいベタついた」作用までも防止できるとは考え難い。
そうしてみれば、上記課題を解決するためには、O/W型エマルジョン形態の化粧品組成物であることが必須であり、そのような特定のない本件特許発明1?13は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、本件特許発明1?13は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものといえる。
よって、本件特許発明1?13は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」

(ウ) 「3.高吸収性ポリマーの吸水能について
・・・
本件特許明細書の実施例には、高吸収性ポリマーとして、「Aqua Keep 10 SH NF」を用いたものしか示されていないし、本件特許発明の上記課題と高吸収性ポリマーの吸水能が、技術的にどのように関係しているか明らかでないから、この実施例の結果をもって、高吸収性ポリマーの吸水能が「100?2000倍」のすべての範囲、特に最大で2000倍の吸水能を有する高吸収性ポリマーを用いた場合にも、上記課題を解決することができると直ちには認められない。
よって、本件特許発明1?13は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」

イ 判断
本件訂正により、本件発明1において、シリカが必須成分となり、エマルジョンの形態もO/Wエマルジョンであることが特定された。また、高吸水性ポリマーの吸水能については、上記3(2)で述べたとおりである。
したがって、これらの理由(ア)?(ウ)は解消した。
よって、本件発明1、5?7、9、10、12、13は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。

(4) 「<3>理由5(明確性)」について
ア 理由5の具体的な内容
(ア) 高吸収性ポリマーの吸水能について
「(1)【0016】に記載の「水溶液」及び「溶液」とは、何の溶液であるか不明である。
また、水を吸収する能力を測定するために、水ではないものを用いて測定する理由が不明である。
(2)【0016】に記載の「非吸収されなかった溶液」とは、どのような溶液を意味しているのか不明である。
また、仮に、「非吸収されなかった溶液」が、ポリマーに「吸収された溶液」を意味すると解した場合、そのような溶液を「ろ過する」とは、どのような処理を行うことを意味しているのか不明である。
(3)【0016】に記載の「吸収されなかった水」とは、何を指しているのか不明である。
水溶液150gのうち、ポリマーに吸収されなかった水溶液中の水のことを意味しているのか、「非吸収されなかった溶液」(ポリマーに「吸収された溶液」)をろ過した際のろ液(水溶液)中の水のことを意味しているのか、或いは、その他のことを意味しているのか不明である。
(4)【0016】に記載の方法によれば、ポリマー0.5gが吸収し得る水は最大でも150gであるから、理論上、高吸収性ポリマー1g当たりに吸収される水は300倍よりも大きい値にならないはずであるから、本件特許発明1の「100?2000倍」の値のうち、300倍よりも大きな値はどのように測定されたものであるか不明である。
それゆえ、高吸収性ポリマーの吸水能をどのような条件で測定しているのか不明であるから、請求項1における「高吸収性ポリマーが、乾燥状態で、ポリマー自体の重量の100?2000倍の水を自然に吸収することができ(る)」との記載の数値範囲の意味するところが不明である。
よって、本件特許発明1は、明確でない。また、請求項1を引用する本件特許発明2?13についても、同様に明確でない。」

(イ) 高吸収性ポリマーの数平均直径について
「請求項2における「高吸収性ポリマーが、10μm?1000μmの数平均直径を有する粒子の形態で提供される」、及び請求項3における「高吸収性ポリマーが、100μm以下の数平均直径を有する粒子の形態で提供される」とは、どのようにして測定された値を規定しているのか、本件特許明細書等には何ら記載されていない。
一方、本件特許発明2及び3における高吸収性ポリマーは、球状粒子に限定されないところ(本件特許明細書には、「【0019】好ましくは、本発明で用いる高吸収性ポリマーは、球状粒子の形態で提供される。」と記載されており、本件特許発明2及び3における高吸収性ポリマーは、球状粒子以外の形状のものも包含すると認められる。)、例えば、引用文献8及び9に記載されるように(引用文献8の第53頁表1、引用文献9の第3頁第1行?6頁第8行を参照。)、粒子の大きさを定義する方法は多様に存在するから、本件特許発明2及び3の高吸収性ポリマーの数平均直径がどのような方法で測定された値を規定しているのかは、本件特許出願時の技術常識を参酌しても明らかでなく、請求項2及び3における上記記載の数値範囲の意味するところが不明確である。
よって、本件特許発明2及び3は、明確でない。また、請求項2又は3を引用する本件特許発明4?13についても、同様に明確でない。」

イ 判断
(ア) 高吸収性ポリマーの吸水能について
「(1)」の点について、本件訂正により、本件明細書の「水溶液」及び「溶液」との記載は「水」へと訂正されたことから、【0016】の記載は明確なものとなり、この理由は解消した。
「(2)」の点について、本件訂正により、本件明細書の「非吸収されなかった溶液」が「吸収されなかった水」へと訂正されたことから、【0016】の記載は明確なものとなり、この理由は解消した。
「(3)」の点について、平成30年12月28日付けの意見書において、「吸収されなかった水」とは「ポリマーに吸収されなかった水」を意味する旨の説明がされた。そして、【0016】に記載の「吸収されなかった水」を「ポリマーに吸収されなかった水」の意味と理解するのは不合理なことではない。
したがって、この理由は撤回すべきと認める。
「(4)」の点について、【0016】の記載の方法によると、ポリマー0.5gを水150g中に分散させて、吸水されなかった水を秤量することにより測定するとの記載の方法からは、最大でも300倍しか測定できず、300倍よりも大きな値はどのように測定されるのか不明である、という趣旨であったが、平成30年12月28日付けの意見書において、「【0016】に記載の方法は、一例に過ぎず、高吸水性ポリマーの吸水能が300倍よりも高い場合は、それに応じて加える水の量と高吸水性ポリマーの比率を変更すれば測定可能である。」と説明がされ、当該説明によって、吸水能が300倍よりも大きい高吸水性ポリマーの吸水能の測定方法も明確にできることが合理的に理解できるので、この理由は撤回すべきと認める。

(イ) 高吸水性ポリマーの数平均直径について
当該理由が通知された本件発明2、3は、訂正により削除されたので、この理由の対象となる請求項は存在しないものとなり、これらの請求項に係る不明確な点は存在しないものとなった。

5 取消理由についてのまとめ
以上のとおり、令和1年6月21日付け及び平成30年10月2日付けで通知した取消理由は、その理由がなく、これらの理由により、本件発明1、5?7、9、10、12、13に係る特許を取り消すことはできない。


第5 特許異議申立理由について
1 特許異議申立の理由の概要
(1-1) 申立理由1(明確性違反)
本件発明1乃至13は、特許請求の範囲の記載につき、特許を受けようとする発明が明確であるとは認められない。よって、 本件発明1乃至13は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は同法第113条第1項第4号に該当するので、特許を受けることはできない。

(1-2) 申立理由2(サポート要件違反)
本件発明1乃至13は、特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明に記載したものではない。よって、本件発明1乃至13は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は同法第113条第1項第4号に該当するので、特許を受けることはできない。

(1-3) 申立理由3(実施可能要件違反)
本件発明1乃至13は、これらの発明を実施することができる程度に、明細書に必要な事項を記載されているとは認められない。よって、本件発明1乃至13は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は同法第113条第1項第4号に該当するので、特許を受けることはできない。

(1-4) 申立理由4-1、4-2(甲第1号証(特開昭63-290811号公報)を主引例とする新規性進歩性違反)
本件発明1乃至13は、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当するので、特許を受けることはできない。

(1-5) 申立理由5-1、5-2(甲第2号証(特開平5-70322号公報))を主引例とする新規性進歩性違反)
本件発明1乃至13は、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当するので、特許を受けることはできない。

2 証拠方法
甲第1号証: 特開昭63-290811号公報
甲第2号証: 特開平05-070322号公報
甲第3号証: 「CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary Fourth Edition」, 1991年, The Cocmetic, Toiletary, and Fragrance Association発行, p.558
甲第4号証: 「Sanwet Cosmetic Grade Polymers」のカタログ, 1991年, Hoechst Celanese社
甲第5号証: 「Super Absorbent Polymer SANWET IM-300 SANWET IM-1000」のデータシート, 1982年10月, 三洋化成工業株式会社
甲第6号証: 特開2007-153898号公報
甲第7号証: 「FLOCARE」のカタログ, 2008年5月, SNF COSMETICS
甲第8号証: 神保元二ら編集, 「微粒子ハンドブック」, 初版第1刷, 株式会社朝倉書店発行, 1991年9月1日, p.52?54
甲第9号証:椿淳一郎ら著, 「現場で役立つ粒子径計測技術」, 初版1刷, 日刊工業新聞社発行, 2001年10月26日, p.3?6
甲第10号証: 「SYLOID(R) Silicas for Suncare Applications」のカタログ, 2014年, GRACE社
甲第11号証: ジーエス・サイエンス株式会社のホームページ(http://www.gs-science.co.jp/product/cream.html)
甲第12号証: 株式会社イプロスのホームページ(https://www.ipros.jp/product/detail/20000212452/)
甲第13号証: 住友精化株式会社のホームページ(https://www.sumitomoseika.co.jp/product/detail.php?id=118)

3 甲第1?13号証に記載された事項
甲第1、2、5、7号証は、平成30年10月2日付け取消理由で引用した引用文献1、2、5 、7であり、それぞれ第4 4(1)ア(ア)?(エ)で摘記した事項が記載されている。
甲第3号証には、サンウエット超吸収性ポリマーがデンプンがグラフトされたポリアクリル酸ナトリウムであることが記載されている(第558頁左欄中央)。
甲第4号証には、サンウエット超吸収性ポリマーが化粧品のために開発された流動性と感触に優れた高吸水性ポリマーであることが記載されている(第3頁第1段落)。
甲第6号証には、架橋化ナトリウムポリアクリレートの粒子として、Flacre GB300が本件出願前に市販されていることが記載されている(【0061】)。
甲第8、9号証には、粒子の大きさの定義又は測定原理が記載されている(甲第8、9号証全文)。
甲第10号証には、SYLOID(R)が日焼け止め防止用のシリカであり、皮膚のべたつき感を無くしたり、乾いた感覚を使用者の皮膚に与えることが記載されている(左欄上段、右欄上段、左欄中段)
甲第11号証には、グラファイトシリカを配合したクリームがべたつきがないことが記載されている(第1頁上段、中段)。
甲第12号証には、スキンケア用シリカ「サンスフェア」が使用感の向上とべたつき防止に効果のあることが記載されている(第1頁 標題及び説明)。
甲第13号証には、アクアキープが自重の数百倍の水を吸収する高吸水性ポリマーであることが記載されている(第1頁 中段)。

4 判断
(1) 申立理由1について
申立理由1(明確性違反)の趣旨は、平成30年10月2日付け取消理由の理由5と同様であり(上記第4 4(4)ア)、当該理由によって本件発明に係る特許を取り消すことができないこととなったのは、上記第4 4(4)イで述べたとおりである。
なお、本件発明6も「数平均直径」に係る発明特定事項を有しないものとなったため、本件発明6に対する申立理由1にも理由がないことは明らかである。

(2) 申立理由2について
申立理由2(サポート要件違反)のうち、シリカの有無に係る理由は、平成30年10月2日付け取消理由の理由4と同趣旨のものであり(上記第4 4(3)ア)、この理由によって本件発明に係る特許を取り消すことができないのは、上記第4 4(3)イで述べたとおりである。
申立理由2のうち、親油性有機UV遮断剤に係る理由は、要するに、本件発明は親油性有効成分を含む化粧品組成物のべたつきの問題を克服することを目的(技術的課題)とするものであるところ、本件訂正前の本件発明1?7、12、13では、親油性有機UV遮断剤が必須とされておらず、そのような技術的課題が存在しないことを根拠とするものであるが、本件訂正により、本件発明において親油性有機UV遮断剤は必須となり、この理由は当を得ないものである。
また、申立理由2のうち、その他の理由は、要するに、本件発明において「シリカ」が必須の成分とされていないことに基づくものであると理解されるところ、本件訂正によって「シリカ」が必須の成分とされたから、その他の理由も当を得ないものである。

(3) 申立理由3について
申立理由3(実施可能要件違反)の趣旨は、平成30年10月2日付け取消理由の理由3と同趣旨であり(上記第4 4(2)ア)、当該理由によって本件発明に係る特許を取り消すことができないのは、上記第4 4(2)イで述べたとおりである。

(4) 申立理由4-1及び4-2について
申立理由4-1(新規性)は、本件発明が甲第1号証(引用文献1)に記載された発明であるというものであるが、本件発明が引用文献1、すなわち甲第1号証に記載された発明でないことは、上記第4 4(1)ウ(ア)b、(イ)に述べたとおりである。

申立理由4-2(進歩性)は、本件発明が甲第1号証及び甲第2?13号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものというものである。
しかし、本件発明が甲第1号証(引用文献1)に記載された発明及び甲第2、5号証(引用文献2、5)に記載された事項から容易に発明をすることができないことは、上記第4 4(1)ウ(ア)b、(イ)に述べたとおりであり、さらに、甲第3、4、6?13には、相違点1-3に係る構成、すなわち「シリカ」及び「少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤」を含めることについて何ら記載されていないから(上記3の記載事項、上記第4 4(1)ア(エ)の記載事項)、結局、本件発明は、甲第1号証及び甲第2?13号証に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものではない。

(5) 申立理由5-1及び5-2について
申立理由5-1(新規性)は、本件発明が甲第2号証に記載された発明であるというものであるが、本件発明が引用文献2、すなわち甲第2号証に記載された発明でないことは、上記第4 4(1)エ(ア)b、(イ)に述べたとおりである。
申立理由5-2(進歩性)は、本件発明が甲第2号証及び甲第1、3?13号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものというものである。
しかし、本件発明が甲第2号証に記載された発明及び甲第5、7号証に記載された事項から容易に発明をすることができないことは、上記第4 4(1)エ(ア)b、(イ)に述べたとおりであり、さらに、甲第1、3、4、6、8?13には、相違点2-3に係る構成、すなわち「シリカ」及び「少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤」を含めることについて何ら記載されていないから(上記3の記載事項、上記第4 4(1)エ(ア)の記載事項)、結局、本件発明は、甲第2号証及び甲第1、3?13号証に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものではない。

5 特許異議申立理由のまとめ
以上のとおり、申立人の主張する申立理由1?5-2により、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。


第6 むすび
以上のとおり、請求項1、5?7、9、10、12、13に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に、請求項1、5?7、9、10、12、13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2?4、8、11は削除されたので、これらの請求項に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高吸収性ポリマーおよび有機UV遮断剤を含む化粧品組成物
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、高吸収性ポリマーおよび有機UV遮断剤を含むエマルジョンの形態の組成物に関し、化粧品分野および皮膚科学分野における、特に角質性物質をケアするまたは治療するための前記組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
日光防止組成物は、様々な濃度で、有害なUV線を選択的に吸収することができる1種または複数の親油性および/または親水性、不溶性および/または可溶性ならびに有機および/または無機の遮断剤を含む、水中油型または油中水型のエマルジョンの形態、ゲルの形態、または無水である生成物の形態でしばしば提供され、これらの遮断剤およびその量は、所望の防御指数に応じて選択される。それらの親油性の性質によって、または反対に、親水性の性質によって、これらの遮断剤は、最終組成物の脂肪相または水相にそれぞれ分布することができる。
【0003】
有機遮断剤は、日光防止配合物によく用いられる。しかし、いくつかの有機遮断剤、特に親油性遮断剤については、エマルジョン中にそれらを取り入れると、化粧品の感触の低下、特に、皮膚への適用中やその後生成物が浸透した後にベタつく作用をもたらす。このベタつく作用により、生成物を使用すると使用者が不快になり、これらの生成物が非常に暑い時間に使用されるときこの不快感はいっそう明白である。
【0004】
糖単位を有する親油性有効成分を含む化粧品組成物のベタつきの問題を克服するために、ベタつく作用を低下させることができるシリコーンエラストマーが提案されている。しかし、脂溶性遮断剤の場合には、シリコーン化合物と相溶性がないため、この解決法は想定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0 916 335号
【特許文献2】欧州特許第1 535 947号
【特許文献3】欧州特許第1 535 925号
【特許文献4】フランス特許第2 555 167号
【特許文献5】フランス特許第2 602 228号
【特許文献6】フランス特許第2 608 150号
【特許文献7】欧州特許第669 323号
【特許文献8】米国特許第2,463,264号
【特許文献9】特開平2-295912号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】1990年にElsevierに発表されたL.Brannon-PappasおよびR.Harlandによる研究「Absorbent Polymer Technology、Studies in Polymer Science 8」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の欠点を有することなく優れた化粧特性を示すエマルジョンを生成できることである。
【0008】
本出願人の会社は、有機UV遮断剤と組み合わせた高吸収性ポリマーの使用は、ベタつく作用を低下させ、さらには除去することもでき、高レベルの親油性UV遮断剤の存在下でも、皮膚への適用時に、特に軟らかさおよびすべりの、非常に優れた化粧特性を有する化粧品組成物、特にエマルジョンを生成できることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の対象は、少なくとも1つの水相および少なくとも1つの脂肪相、高吸収性ポリマーおよび少なくとも1種の有機UV遮断剤を含むエマルジョンの形態の組成物である。
【0010】
本発明の組成物は、特に局所適用を目的としているため、生理的に許容される媒体、すなわち、皮膚、爪、粘膜および(毛髪またはまつげなどの)角質繊維などのすべての角質性物質に適合する媒体を含む。
【0011】
本発明によって得られた組成物は、適用時に均質で、非常に軟らかく、ベタつかずさわやかであり、したがって使用するのに心地良いテクスチャを有するという利点を示す。
【0012】
本発明の他の対象は、角質性物質に上記で定義した組成物を適用することにある、角質性物質の美容的処置の方法である。
【0013】
高吸収性ポリマー
「高吸収性ポリマー」という用語は、乾燥状態で、ポリマー自体の重量の少なくとも20倍の水性流体、具体的には水、特に蒸留水を自然に吸収することができるポリマーを意味することが理解される。かかる高吸収性ポリマーは、1990年にElsevierに発表されたL.Brannon-PappasおよびR.Harlandによる研究「Absorbent Polymer Technology、Studies in Polymer Science 8」に記載されている。
【0014】
これらのポリマーは、水および水性流体を吸収するおよび保持する高い能力を有する。したがって、水性流体の吸収後、水性流体を含浸したポリマーの粒子は、水性流体中で不溶性のままであり、したがって、それらの別離した微粒子の状態を保持している。
【0015】
高吸収性ポリマーは、それ自体の重量の20?2000倍(すなわち、吸収性ポリマー1グラム当たりに吸収される水が20g?2000g)、好ましくは30?1500倍、さらには50?1000倍の吸水能を有することができる。これらの吸水特性は、標準温度(25℃)および圧力(760mmHg、すなわち、100 000Pa)条件で蒸留水について定義される。
【0016】
ポリマーの吸水能の値は、ポリマー0.5gを水150g中に分散させること、20分待つこと、吸収されなかった水を150μmフィルターで20分間ろ過することおよび吸収されなかった水を秤量することによって決定することができる。
【0017】
本発明の組成物に用いられる高吸収性ポリマーは、水和させると、膨潤して、10μm?1000μmの数平均直径を有する軟質のビーズを形成する粒子の形態で提供される。
【0018】
好ましくは、高吸収性ポリマーは、数平均サイズが100μm以下、好ましくは50μm以下、例えば10μm?100μmの範囲である。
【0019】
好ましくは、本発明で用いる高吸収性ポリマーは、球状粒子の形態で提供される。
【0020】
本発明で用いる高吸収性ポリマーは好ましくは、好ましくは中和されており、微粒子の形態で提供される、架橋アクリルホモポリマーまたコポリマーである。
【0021】
-例えば、Avecia社によってOctacare X100、X110およびRM100という名で販売されているもの、SNF社によってFlocare GB300およびFlosorb 500という名で販売されているもの、BASF社によってLuquasorb 1003、Luquasorb 1010、Luquasorb 1280およびLuquasorb 1100という名で販売されているもの、Grain Processing社によってWater Lock G400およびG430(INCI名:アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマー)という名で販売されているもの、または住友精化株式会社によって提供されたAqua Keep 10 SH NFなどの、架橋ポリアクリル酸ナトリウム、
-アクリルポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)によってグラフトされたデンプン、具体的には、三洋化成工業株式会社によってSanfresh ST-100C、ST100MCおよびIM-300MCという名で販売されているもの(INCI名:ポリアクリル酸ナトリウムデンプン)などのポリアクリル酸ナトリウムによってグラフトされたデンプン、
-アクリルポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)によってグラフトされた加水分解デンプン、具体的には、Grain Processing社によってWater Lock A-240、A-180、B-204、D-223、A-100、C-200およびD-223という名で販売されているもの(INCI名:デンプン/アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマー)などのアクリロアクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマーによってグラフトされた加水分解デンプン、
-Lysac社によってLysorb 220という名で販売されている、デンプン、グアーガムおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムを含むものなど、デンプン、ガムおよびセルロース誘導体に基づくポリマー、
-およびそれらの混合物から選択される吸収性ポリマーを特に挙げることができる。
【0022】
好ましくは、高吸収性ポリマーは、好ましくは数平均サイズ(または平均直径)の100ミクロン以下を有する粒子の形態、より好ましくは球状粒子の形態の、架橋ポリアクリル酸ナトリウムから選択される。これらのポリマーは、好ましくは、10?100g/g、好ましくは20?80g/g、さらには50?70g/gの吸水能を有する。
【0023】
高吸収性ポリマーは、本発明の組成物中で、活性物質として、組成物の全重量に対して例えば、0.03?15重量%、好ましくは0.05?10重量%、好ましくは0.1?5重量%、優先的には0.1?3重量%、さらには0.1?2重量%の含有量で存在することができる。
【0024】
有機遮断剤
有機遮断剤は、一般に、本発明による組成物中で、組成物の全重量に対して0.05?30重量%の割合で、好ましくは組成物の全重量に対して0.1?20重量%、さらには0.5?15重量%の割合で存在する。
【0025】
有機遮断剤は、親油性もしくは親水性の有機遮断剤またはそれらの混合物から選択することができる。
【0026】
「親油性遮断剤」という用語は、液体脂肪相に分子の状態で完全に溶解することができるあるいは液体脂肪相にコロイドの形態で(例えば、ミセルの形態で)溶解することができる任意の遮断剤を意味するものと理解される。
【0027】
「親水性UV遮断剤」という用語は、UV線を遮断し、エマルジョンの水相に分子の状態で完全に溶解することができるあるいはエマルジョンの水相にコロイドの形態で(例えば、ミセルの形態で)溶解することができる任意の媒介物を意味するものと理解される。
【0028】
好ましくは、組成物は、少なくとも1種の親油性有機遮断剤を含む。
【0029】
親油性有機遮断剤は、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノンまたはアミノベンゾフェノン、アントラニル酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ビスレソルシニルトリアジン、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、メロシアニン、ジフェニルブタジエンマロナートまたはジフェニルブタジエンマロニトリル誘導体、カルコンおよびそれらの混合物から選択することができる。
【0030】
320?400nmのUV線を吸収することのできる親油性UV-A遮断剤のうち、ジベンゾイルメタン誘導体:
-以下の式に対応する、Merck社によって「Eusolex 8020」という名で販売されている4-イソプロピルジベンゾイルメタン:
【0031】
【化1】

【0032】
-次式の、Quest社によってPongamolという名で販売をされている1-(4-メトキシ-1-ベンゾフラン-5-イル)-3-フェニルプロパン-l,3-ジオン:
【0033】
【化2】

【0034】
-次式の、1-(4-(tert-ブチル)フェニル)-3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン:
【0035】
【化3】

【0036】
-具体的にはHoffmann-La Roche社によって「Parsol 1789」という商品名で販売されているブチルメトキシジベンゾイルメタン、
アミノベンゾフェノン:
「Uvinul A+」という商品名で販売されている2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n-ヘキシル、
アントラニル酸誘導体:
Haarmann and Reimer社によって「Neo Heliopan MA」という商品名で販売されているアントラニル酸メンチル、
4,4-ジアリールブタジエン誘導体:
1,1-ジカルボキシ-(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエンを挙げることができる。
【0037】
280?320nmのUV線を吸収することができる親油性UV-B遮断剤のうち、パラアミノベンゾアート:
エチルPABA
エチルジヒドロキシプロピルPABA
エチルヘキシルジメチルPABA(ISP社からのEscalol 507)
サリチル酸誘導体:
Rona/EM Industries社によって「Eusolex HMS」という名で販売されているホモサラート、
Haarmann and Reimer社によって「Neo Heliopan OS」という名で販売されているサリチル酸エチルヘキシル、
Scher社によって「Dipsal」という名で販売されているサリチル酸ジプロピレングリコール、
Haarmann and Reimer社によって「Neo Heliopan TS」という名で販売されているサリチル酸TEA、
シンナマート:
具体的にはHoffmann-La Roche社によって「Parsol MCX」という商品名で販売されているメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、
メトキシケイ皮酸イソプロピル、
Haarmann and Reimer社によって「Neo Heliopan E 1000」という商品名で販売されているメトキシケイ皮酸イソアミル、
メトキシケイ皮酸ジイソプロピル、
シノキサート、
ジメトキシケイ皮酸エチルヘキサン酸グリセリル、
β,β-ジフェニルアクリラート誘導体:
具体的にはBASF社によって「Uvinul N539」という商品名で販売されているオクトクリレン、
具体的にはBASF社によって「Uvinul N35」という商品名で販売されているエトクリレン、
ベンジリデンカンファー誘導体:
Chimex社によって「Mexoryl SD」という名で製造されている3-ベンジリデンカンファー、
Merck社によって「Eusolex 6300」という名で販売されているメチルベンジリデンカンファー、
Chimex社によって「Mexoryl SW」という名で製造されているポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー、
トリアジン誘導体:
具体的には、BASF社によって「Uvinul T150」という商品名で販売されているエチルヘキシルトリアゾン、
Sigma 3V社によって「Uvasorb HEB」という商品名で販売されているジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、
2,4,6-トリス(4’-アミノベンザルマロン酸ジネオペンチル)-s-トリアジン、
2,4,6-トリス(4’-アミノベンザルマロン酸ジイソブチル)-s-トリアジン、
2,4-ビス(4’-アミノベンザルマロン酸ジネオペンチル)-6-(4’-アミノ安息香酸n-ブチル)-s-トリアジン、
2,4-ビス(4’-アミノ安息香酸n-ブチル)-6-(アミノプロピル-トリシロキサン)-s-トリアジン、
イミダゾリン誘導体:
ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオン酸エチルヘキシル、
ベンザルマロナート誘導体:
Hoffmann-La Roche社によって「Parsol SLX」という商品名で販売されているポリシリコーン-15などのベンザルマロナート官能基を含むポリオルガノシロキサン、
4’-メトキシベンザルマロン酸ジネオペンチル、
メロシアニン誘導体:
5-N,N-ジエチルアミノ-2-フェニルスルホニル-2,4-ペンタジエン酸オクチルを挙げることができる。
【0038】
UV-A線およびUV-B線を吸収することができる親油性広域遮断剤のうち、ベンゾフェノン誘導体:
BASF社によって「Uvinul 400」という商品名で販売されているベンゾフェノン-1、
BASF社によって「Uvinul D50」という商品名で販売されているベンゾフェノン-2、
BASF社によって「Uvinul M40」という商品名で販売されているベンゾフェノン-3またはオキシベンゾン、
Norquay社によって「Helisorb 11」という商品名で販売されているベンゾフェノン-6、
American Cyanamid社によって「Spectra-Sorb UV-24」という商品名で販売されているベンゾフェノン-8、
ベンゾフェノン-10、
ベンゾフェノン-11、
ベンゾフェノン-12、
ベンゾトリアゾール誘導体:
Rhodia Chimie社によって「Silatrizole」という名で販売されているドロメトリゾールトリシロキサン、
Ciba-Geigy社によって「Tinoguard AS」という名で販売されているブメトリゾール、
ビスレソルシニルトリアジン誘導体:
Ciba Geigy社によって「Tinosorb S」という商品名で販売されているビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、
ベンゾオキサゾール誘導体:
Sigma 3V社によってUvasorb K2Aという名で販売されている2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾル-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジンを挙げることができる。
【0039】
ジフェニルブタジエンマロナートまたはジフェニルブタジエンマロニトリルのファミリーの誘導体は、次の一般式(IV)の誘導体である。
【0040】
【化4】

【0041】
式中、R_(3)は、C_(1)?C_(2)アルキル基またはC_(1)?C_(2)アルコキシ基を表し、nは、0、1または2に等しく;
R_(4)およびR_(5)は、同一であるかまたは異なっており、-COOR_(6)、-(C=O)NHR_(6)、-(C=O)R_(6)または-CNを表す(式中、R_(6)は1?12個の炭素原子を含みシラン、シロキサンまたはポリシロキサン基を含むことができる、直鎖または分枝状のアルキル基を表す)。
【0042】
具体的には、ジフェニルブタジエンマロナートまたはジフェニルブタジエンマロニトリル誘導体のうち、制限を含むことなく、
- 2-(3,3-ジフェニルプロプ-2-エニリデン)マロン酸ジメチル
- 2-(3,3-ジフェニルプロプ-2-エニリデン)マロン酸ジイソブチル
- 2-(3,3-ジフェニルプロプ-2-エニリデン)マロン酸ビス(1,3-ジメチルブチル)
- 2-(3,3-ジフェニルプロプ-2-エニリデン)マロン酸ジネオペンチル
- (2Z)-2-シアノ-5,5-ジフェニルペンタ-2,4-ジエン酸メチル
- (2Z)-2-(3,3-ジフェニルプロプ-2-エニリデン)マロン酸エチル(トリメチルシリル)メチル
- (2E)-2-シアノ-5,5-ジフェニル-N-(3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル}プロピル)ペンタ-2,4-ジエンアミド
- 2-メチル-3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル}プロピル(2E)-2-(3,3-ジフェニルプロプ-2-エニリデン)マロン酸エチル
- (2Z)-5,5-ジフェニル-2-{[(3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル}プロピル)アミノ]カルボニル}ペンタ-2,4-ジエン酸エチル。
を挙げることができる。
【0043】
具体的には、上記ジフェニルブタジエン誘導体のうち、以下の式、
【0044】
【化5】

【0045】
に対応する2-(3,3-ジフェニルプロプ-2-エニリデン)マロン酸ジネオペンチルを使用する。
【0046】
日光防止組成物にこれらのジフェニルブタジエン誘導体を使用することが知られており、欧州特許第0 916 335号は炭素誘導体およびその調製方法を記載しており、欧州特許第1 535 947号および欧州特許第1 535 925号は、それぞれシロキサンおよびシラン誘導体を記載している。
【0047】
カルコンのファミリーの誘導体は、以下の一般式(V)の誘導体である。
【0048】
【化6】

【0049】
式中、R_(6)およびR_(7)基は、互いがそれぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、直鎖または分枝状のC_(1)?C_(12)アルキルまたはアルケニル基、直鎖または分枝状のC_(1)?C_(12)アルコキシ基または直鎖または分枝状のC_(2)?C_(20)アシルオキシ基を意味し;
pおよびqを意味する
【0050】
具体的には、カルコン誘導体のうち、示される制限なしに、
- 2’-ヒドロキシカルコン
- 4’-ヒドロキシカルコン
- 4’-メトキシカルコン
- 2’-ヒドロキシ-4-メトキシカルコン
- 2’-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシカルコン
- 2’-ヒドロキシ-4-メチルカルコン
- 2’-ヒドロキシ-3-ヘキシルオキシカルコン
- 2’-ヒドロキシ-4’-ヘキシルオキシ-4-メチルカルコン
- 2’-ヒドロキシ-4’-ヘキサノイルオキシ-4-メトキシカルコン
- 2’,4’,4-トリヒドロキシ-3,3’-ジアリルカルコン(Kazonolという名で知られている)
-2’,4’,4-トリヒドロキシ-5’-(3-メチルブト-2-エニル)カルコン(Broussochalcone Bという名で知られている)
-2’,3’,4’,6’,4-ペンタヒドロキシカルコン(Carthaminという名で知られている)を挙げることができる。
【0051】
具体的には、上記カルコン誘導体のうち、以下の式(Va)
【0052】
【化7】

【0053】
に対応する4’-ヒドロキシカルコン、
または以下の式(Vb):
【0054】
【化8】

【0055】
に対応する2’,3’,4’,6’,4-ペンタヒドロキシカルコン(Carthaminという名で知られている)を使用する。
【0056】
特に、フランス特許第2 555 167号、フランス特許第2 602 228号およびフランス特許第2 608 150号において、これらのカルコン誘導体を日光防止組成物に用いることが知られている。
【0057】
親油性有機UV遮断剤は、好ましくは、
-サリチル酸誘導体、具体的にはホモサラートまたはサリチル酸エチルヘキシル、
-メトキシケイ皮酸エチルヘキシルなどのケイ皮酸誘導体、
-オクトクリレンなどのβ,β-ジフェニルアクリラート誘導体、
-ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどのジベンゾイルメタン誘導体、
-エチルヘキシルトリアゾンまたはジエチルヘキシルブタミドトリアゾンなどのトリアジン誘導体、
-ドロメトリゾールトリシロキサンなどのベンゾトリアゾール誘導体、
-およびそれらの混合物
から選択することができる。
【0058】
本発明に従って用いることができる親水性もしくは水溶性UV遮断剤のうち、INCI名で下記に示される、以下の遮断剤、すなわち、
Chimex社によって「Mexoryl SX」という名で製造されているテレフタリリデンジカンファースルホン酸、欧州特許第669 323号および米国特許第2,463,264号に記載されているなどのビスベンゾオキサゾリル誘導体、より具体的には、Haarmann and Reimer社によって「Neo Heliopan AP」という商品名で販売されている化合物フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウムなどの320?400nmのUV線を吸収することができる水溶性UV-A遮断剤:
PABA、グリセリルPABAおよびBASF社によって「Uvinul P25」という名で販売されているPEG-25 PABAなどのp-アミノ安息香酸(PABA)誘導体、
具体的には、Merck社によって「Eusolex 232」という商品名で販売されているフェニルベンズイミダゾールスルホン酸、
フェルラ酸、
サリチル酸、
メトキシケイ皮酸DEA、
Chimex社によって「Mexoryl SL」という名で製造されているベンジリデンカンファースルホン酸、
Chimex社によって「Mexoryl SO」という名で製造されているカンファーベンザルコニウムメトスルファートなどの280?320nmのUV線を吸収することができる水溶性UV-B遮断剤、および
BASF社によって「Uvinul MS40」という商品名で販売されているベンゾフェノン-4、
ベンゾフェノン-5、および
ベンゾフェノン-9などの水溶性UV-AおよびUV-B遮断剤を挙げることができる。
【0059】
水相
本発明による組成物の水相は、少なくとも水を含む。組成物の配合形態に応じて、水相の量は、組成物の全重量に対して0.1?99重量%、好ましくは0.5?98重量%、さらには30?95重量%、さらにより良いのは40?95重量%の範囲となり得る。この量は、所望の組成物の配合形態に依存する。水の量は、すべてのまたは一部の水相を表すことができ、それは一般に組成物の全重量に対して少なくとも30重量%である。
【0060】
水相は、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールまたはイソブタノールなどの1?8個の炭素原子を有する、実質的に直鎖または分枝状の低級モノアルコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコールおよびそれらの誘導体などのポリオール、およびそれらの混合物など、少なくとも1種の親水性溶媒を含むことができる。
【0061】
脂肪相
エマルジョンの脂肪相の割合は、例えば、組成物の全重量に対して1?80重量%、好ましくは2?50重量%、さらには5?30重量%の範囲となり得る。
【0062】
指示したこの量は、親油性遮断剤の含有量を含まない。
【0063】
エマルジョンの脂肪相(または油相)の性質は決定的ではない。したがって、脂肪相は、化粧品分野および皮膚科学分野において通常どおり用いられる任意の脂肪物質を含むことができ、脂肪相は、特に、少なくとも1種の油(25℃で液体である脂肪物質)を含む。
【0064】
本発明の組成物に用いることができる油として、例えば、
-ペルヒドロスクアレンなど、動物由来の炭化水素油;
-ヘプタン酸またはオクタン酸のトリグリセリド、または、例えば、ヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、キュウリ油、グレープシード油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、杏油、マカダミア油、アララ油、ヒマシ油またはアボカド油、Stearineries Dubois社によって販売されているものまたはDynamit Nobel社によってMiglyol 810、812および818という名で販売されているものなどのカプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、ホホバ油またはシアバター油など、4?10個の炭素原子を含む脂肪酸液体トリグリセリドなどの、植物由来の炭化水素油;
-例えば、ピュアセリン油、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシルまたはイソステアリン酸イソステアリル;乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチルまたは脂肪アルコールのヘプタナート、オクタナートもしくはデカノアートなどのヒドロキシル化エステル;ジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコールおよびジイソノナン酸ジエチレングリコールなどのポリオールエステル;およびテトライソステアリン酸ペンタエリスリチルなどのペンタエリスリトールエステルなど、油または式R^(a)COOR^(b)およびR^(a)OR^(b)(式中、R^(a)は、8?29個の炭素原子を含む脂肪酸の残基を表し、R^(b)は、3?30個の炭素原子を含む分枝または非分枝炭化水素鎖を表す)などの特に脂肪酸の合成エステルおよびエーテル;
-揮発性であってもなくてもよい流動パラフィンおよびそれらの誘導体、ワセリン、ポリデセン、イソヘキサデカン、イソドデカンまたはParleam(登録商標)油などの水素化ポリイソブテンなどの、鉱物由来または合成由来の実質的に直鎖または分枝状の炭化水素;
-セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびそれらの混合物(セテアリルアルコール)、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコールまたはリノレイルアルコールなど、8?26個の炭素原子を有する脂肪アルコール;
-アルコキシ化脂肪アルコール、具体的には、oleth-12、セテアレス-12およびセテアレス-20などのエトキシ化脂肪アルコール;
-特開平2-295912号の文献に記載されているものなど、炭化水素および/またはシリコーンを部分的に含むフッ素化油。フッ素化油として、BNFL Fluorochemicals社によって「Flutec PC1(登録商標)」および「Flutec PC3(登録商標)」という名で販売されているペルフルオロメチルシクロペンタンおよびペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン;ペルフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン;3M社によって「PF 5050(登録商標)」および「PF 5060(登録商標)」という名で販売されているドデカフルオロペンタンおよびテトラデカフルオロヘキサン、またはAtochem社によって「Foralkyl(登録商標)」という名で販売されているブロモペルフルオロオクチルなどのペルフルオロアルカン;3M社によって「MSX 4518(登録商標)」という名で販売されているノナフルオロメトキシブタン、およびノナフルオロエトキシイソブタン;または3M社によって「PF 5052(登録商標)」という名で販売されている4-(トリフルオロメチル)ペルフルオロモルホリンなどのペルフルオロモルホリン誘導体;
-周囲温度で液体またくはペーストである実質的に直鎖または環式のシリコーン鎖を含む揮発性または不揮発性ポリメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーン油、具体的には、シクロヘキサジメチルシロキサンおよびシクロオエンタジメチルシロキサンなどのシクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコン);ペンダントアルキル、アルコキシもしくはフェニル基またはシリコーン鎖の末端のアルキル、アルコキシもしくはフェニル基を含むポリジメチルシロキサンであり、これらの基は2?24個の炭素原子を有するポリジメチルシロキサン;または、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニル(トリメチルシロキシ)ジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニル(メチルジフェニル)-トリシロキサン、(2-フェニルエチル)トリメチルシロキシシリカートおよびポリメチルフェニルシロキサンなどのフェニル化シリコーン;
-それらの混合物を挙げることができる。
【0065】
上記油のリストにおいて「炭化水素油」という用語は、主に炭素原子および水素原子、場合によってはエステル、エーテル、フッ素化された、カルボン酸および/またはアルコール基を含む任意の油を意味するものと理解される。
【0066】
油相中に存在し得る他の脂肪物質は、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸などの8?30個の炭素原子をを含む脂肪酸;ラノリン、蜜ロウ、カルナウバロウもしくはカンデリラロウ、パラフィン、亜炭ロウもしくは微結晶性ワックス、セレシンもしくはオゾケライト、またはポリエチレンワックスもしくはフィッシャー-トロプシュワックスなどの合成ワックスなどのワックス;またはワセリンパスタ剤である。
【0067】
これらの脂肪物質は、例えば、コンシステンシーまたはテクスチャなどの所望の特性を有する組成物を調製するために、当業者によって変わるやり方で選択することができる。
【0068】
エマルジョンは、一般に、単独でもしくは混合物として用いられる両性の、陰イオン性、陽イオン性または非イオン性乳化剤から選択される少なくとも1種の乳化剤を含む。乳化剤は、得ようとするエマルジョン(W/OまたはO/W)に従って適当に選択される。
【0069】
乳化剤は、一般に、組成物中で組成物の全重量に対して0.1?30重量%、好ましくは、0.2?20重量%の割合で存在する。
【0070】
W/O型エマルジョンについて、例えば、乳化剤として、ジメチコンコポリマー、例えば、Dow Corning社によって「DC 5225 C」という名で販売されているシクロメチコンとジメチコンコポリオールの混合物、アルキルジメチコンポリオール、例えば、Dow Corning社によって「Dow Corning 5200 Formulation Aid」という名で販売されているラウリルジメチコンコポリオール、Goldschmidt社によってAbil EM 90(登録商標)という名で販売されているセチルジメチコンコポリオール、またはGoldschmidt社によってAbil WE 09という名で販売されている4イソステアリン酸ポリグリセリル/セチルジメチコンコポリオール/ラウリン酸ヘキシル混合物などのアルキルジメチコンコポリオールを挙げることができる。W/O型エマルジョンはまた1種または複数の乳化補助剤をそこに加えることもできる。有利には、乳化補助剤は、ポリオールアルキルエステルからなる群から選択することができる。具体的には、ポリオールアルキルエステルとして、グリセロールおよび/またはソルビタンエステル、例えばGoldschmidt社によってIsolan GI 34という名で販売されている製品などのイソステアリン酸ポリグリセロール、ICI社によってArlacel 987という名で販売されている製品などのイソステアリン酸ソルビタン、またはICI社によってArlacel 986という名で販売されている製品などのイソステアリン酸ソルビタングリセリル、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0071】
O/W型エマルジョンについて、例えば、乳化剤として、非イオン性界面活性剤、具体的には、ポリオールおよび例えば、8?24個の炭素原子、さらには12?22個の炭素原子を含む飽和または不飽和の鎖を有する脂肪酸のエステルおよびそれらのオキシアルキレン化誘導体、すなわち、オキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン単位を含むもの例えば、グリセロールおよびC_(8)?C_(24)脂肪酸のエステルおよびそれらのオキシアルキレン化誘導体;ポリエチレングリコールおよびC_(8)?C_(24)脂肪酸のエステル、およびそれらのオキシアルキレン化誘導体;ソルビトールおよびC_(8)?C_(24)脂肪酸のエステル、およびそれらのオキシアルキレン化誘導体;脂肪アルコールのエーテル;糖のエーテルおよびC_(8)?C_(24)脂肪アルコールのエーテル、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0072】
具体的には、グリセロールおよび脂肪酸のエステルとして、ステアリン酸グリセリル(モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリルおよび/またはトリステアリン酸グリセリル)(CTFA名:ステアリン酸グリセリル)またはリシノール酸グリセリル、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0073】
具体的には、ポリエチレングリコールおよび脂肪酸のエステルとして、ステアリン酸ポリエチレングリコール(モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコールおよび/またはトリステアリン酸ポリエチレングリコール)、より具体的には、モノステアリン酸ポリエチレングリコール50 EO(CTFA名:ステアリン酸PEG-50)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール100 EO(CTFA名:ステアリン酸PEG-100)およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0074】
例えば、ステアリン酸グリセリルおよびUniquema社によってArlacel 165という名で販売されているステアリン酸PEG-100を含む製品ならびにステアリン酸グリセリル(モノステアリン酸グリセリル/ジステアリン酸グリセリル)およびGoldschmidt社によってTeginという名で販売されているステアリン酸カリウム(CTFA名:ステアリン酸グリセリルSE)を含む生成物などの、これらの界面活性剤の混合物を用いることもできる。
【0075】
脂肪アルコールのエーテルとして、例えば、ポリエチレングリコールおよびセチルアルコール、ステアリルアルコールまたはセテアリルアルコール(セチルアルコールとステアリルアルコールの混合物)のエーテルなどの、ポリエチレングリコールのエーテルおよび8?30個の炭素原子、具体的には10?22個の炭素原子を含む脂肪アルコールのエーテルを挙げることができる。例えば、CTFA名セテアレス-20およびセテアレス-30、およびそれらの混合物を有するものなど、1?200個、好ましくは、2?100個のオキシエチレン基を含むエーテルを挙げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0076】
具体的な実施形態によれば、組成物は、疎水性改質イヌリンから選択される少なくとも1種の乳化剤を含む。
【0077】
本発明による「疎水性改質イヌリン」という用語は、特に、疎水性鎖によって改質されたイヌリン、具体的には、疎水性鎖を前記イヌリンの親水性主鎖にグラフトすることによって改質されたイヌリンを意味するものと理解される。
【0078】
イヌリンは、本質的に直鎖のフルクタンのファミリー、すなわち、主にβ-2-1結合によって結合されている果糖単位に属する。
【0079】
イヌリンは、例えば、チコリー、ダリアまたはキクイモから得ることができる。好ましくは、本発明による組成物中で用いるイヌリンは、例えば、チコリーから得られる。
【0080】
本発明による組成物中で用いるイヌリンは、疎水性として改変される。具体的には、イヌリンは、疎水性鎖をフルクタンの親水性主鎖にグラフトすることによって得られる。
【0081】
フルクタンの主鎖にグラフトされることができる疎水性鎖は、特に、アルキル、アリールアルキル、アルキルアリールもしくはアルキレン基などの1?50個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のおよび直鎖または分枝状の炭化水素鎖、2価の脂環式基またはオルガノポリシロキサン鎖となり得る。これらの炭化水素鎖またはオルガノポリシロキサン鎖は、特に、1種または複数のエステル、アミド、ウレタン、カルバマート、チオカルバマート、尿素、チオ尿素および/またはスルホンアミド官能基、具体的には、メチレンジシクロヘキシルおよびイソホロンなど、またはフェニレンなどの2価の芳香族基を含むことができる。
【0082】
具体的には、イヌリンは2?約1000の重合度、好ましくは、2?約60の重合度および果糖単位に基づいて2個未満の置換度を示す。
【0083】
好ましい実施形態によれば、疎水性鎖は、式R-NH-CO-(Rは1?22個の炭素原子を有するアルキル基である)の少なくとも1つのアルキルカルバマート基を示す。
【0084】
より好ましい実施形態によれば、疎水性鎖は、ラウリルカルバマート基である。
【0085】
具体的には、本発明による組成物に用いることができる疎水性改質イヌリンを例示するやり方によっておよびそれが示される制限なしに、Engelhard社によってLifidrem INSTおよびCiba社によってRheopearl INSという名で販売されているものなどのステアロイルイヌリン、Engelhard社によってLifidrem INUKおよびLifidrem INUMという名で販売されているものなどのパルミトイルイヌリン、ウンデシレノイルイヌリン、およびOrafti社によってInutec SP1という名で販売されているものなどのイヌリンラウリルカルバマートを挙げることができる。
【0086】
具体的には、ラウリルカルバマートでグラフトされたイヌリンを使用し、特に、ラウリルイソシアナートをイヌリン、具体的には、チコリーからのイヌリンと反応させることによって生じる。これらの化合物の実施例として、特にOrafti社によってInutec SP1という名で販売されている製品を挙げることができる。
【0087】
本発明の組成物における疎水性改質イヌリンのレベルは、前記組成物の全重量に対して(活性物質の)0.01?20重量%、好ましくは0.01?10重量%、好ましくは0.05?10重量%、具体的には0.1?10重量%、好ましくは0.1?5重量%、さらにより好ましくは0.1?1重量%の範囲となり得る。
【0088】
既知のやり方において、本発明のすべての組成物は、親水性もしくは親油性ゲル化剤および/または増粘剤;保湿剤;皮膚軟化剤;遊離基と戦う親水性もしくは親油性有効成分、薬剤;金属イオン遮閉剤;酸化防止剤;保存剤;塩基性化剤または酸性化剤;香料;皮膜形成剤;着色材(酸化鉄および二酸化チタンなどの色素、パール剤または可溶性色素);充填剤;およびそれらの混合物などの化粧品分野および皮膚科学分野において普通の補助剤の1種または複数を含むことができる。
【0089】
これらの様々な補助剤の量は、これらの分野で考慮して通常どおり用いられるものである。特に、有効成分の量は、所望の目的によって変わり、これらの分野で考慮して通常どおり用いられるものであり、例えば、組成物の全重量の0.1?20%、好ましくは0.5?10%である。
【0090】
上記のポリマー以外の親水性ゲル化剤として、例えば、カルボポール(カルボマー)、およびPemulen製品(アクリラート/C_(10)?C_(30)-アルキルアクリラートコポリマー)などのカルボキシビニルポリマー;例えば、Seppic社によってSepigel 305(CTFA名:ポリアクリルアミド/C13?14イソパラフィン/ラウレス-7)またはSimulgel 600(CTFA名:アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート 80)という名で販売されている架橋コポリマーなどのポリアクリルアミド;ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;多糖類、特に、キサンタンガムなどのガム;およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0091】
親油性ゲル化剤として、ヘクトライトおよびその誘導体などの改質された粘土、例えば、Bentoneという名で販売されている製品を挙げることができる。
【0092】
有効成分
上記で示したように、本発明の組成物は、酸化感受性親水性有効成分の存在下で安定であり、前記有効成分を安定化することができる。本発明によれば、「親水性有効成分」という用語は、周囲温度(25℃)で少なくとも0.25%の水に溶解性を有する化合物を意味するものと理解される。さらに、本発明によれば、「酸化感受性親水性有効成分」という用語は、酸化機序によって分解されることのできる天然起源または合成起源の任意の有効成分を意味するものと理解される。このような酸化現象は、いくつかの原因、特に酸素、光または金属イオンの存在、高温またはある種のpH状態を有し得る。
【0093】
酸化感受性親水性有効成分の例として、限定を意味することなく、5,6-ジ-O-ジメチルシリルアスコルバート(Exsymol社によってPro-AAという参照名で販売されている)、d1-α-トコフェリル-21-アスコルビルホスファートのカリウム塩(千寿製薬株式会社によってSepivital EPCという参照名で販売されている)、リン酸アスコルビルマグネシウムまたはリン酸アスコルビルナトリウム(Roche社によってStay-C 50という参照名で販売されている)、フロログルシノール、酵素およびそれらの混合物などのアスコルビン酸およびその誘導体を挙げることができる。本発明の好ましい実施形態によれば、酸化感受性親水性有効成分の中でも、アスコルビン酸を用いることができる。アスコルビン酸は、任意の性質のものとなり得る。したがって、アスコルビン酸は、天然起源のもので、粉末の形態またはオレンジ果汁、好ましくは濃縮されたオレンジ果汁の形態となり得る。アスコルビン酸はまた、合成起源のもので、好ましくは粉末の形態となり得る。
【0094】
本発明の組成物に用いることができる他の有効成分として、例えば、タンパク質加水分解物およびグリセロールまたは例えばポリエチレングリコールなどのグリコールなどのポリオールなどの保湿剤;天然抽出物;抗炎症薬;プロシアニドールオリゴマー;ビタミンA(レチノール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンB5(パンテノール)、ビタミンB3(ナイアシンアミド)などのビタミン、これらのビタミン誘導体(特にエステル)およびこれらの混合物;尿素;カフェイン;コウジ酸、ヒドロキノンおよびコーヒー酸などの脱色素剤;サリチル酸およびその誘導体;乳酸およびグリコール酸などのα-ヒドロキシ酸およびそれらの誘導体;カロテノイドおよびビタミンA誘導体などのレチノイド;ヒドロコルチゾン;メラトニン;藻類抽出物、真菌抽出物、植物抽出物、酵母抽出物または細菌抽出物;ステロイド;2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(すなわちトリクロサン)、3,4,4’-トリクロロカルバニリド(すなわちトリクロカルバン)および上記で示した酸、具体的には、サリチル酸およびその誘導体などの抗菌性の有効成分;繊維などのつや消し剤;引き締め剤;およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0095】
有機日焼け止め(またはUV遮断剤)に加えて、本発明による組成物は、500nm以下、より好ましくは5nm?500nm、さらにより好ましくは10nm?100nm、好ましくは15nm?50nmの個別の平均粒度を有する金属酸化物粒子である無機UV遮断剤をさらに含むことができる。これらは、特に、チタン、亜鉛、鉄、ジルコニウムまたは酸化セリウムまたはそれらの混合物から選択することができる。それらの多少強い親油性の性質によって、または反対に、親水性の性質によって、無機遮断剤は、エマルジョンの脂肪相中にまたは水相中で、さらには、同時に両相に存在することができる。
【0096】
本発明による組成物は、UV線を吸収する少なくとも1つの基を含む不溶性有機UV遮断剤をさらに含むことができ、遮断剤は、具体的には、オキサルアニリド、ビニルアミド、ケイ皮酸アミド、ベンザゾール、ベンゾフラン、アリールビニリデンケトン、アクリロニトリルアミド、アクリロニトリルスルホンアミド、アクリロニトリルカルバマートまたはフェニレンビス(ベンゾオキサジノン)型の不溶性有機UV遮断剤から選択することができる。
【0097】
本発明の組成物中で用いることができる充填剤として、例えば、チタン、亜鉛もしくは酸化鉄などの色素および有機色素;カオリン;シリカ;タルク;窒化ホウ素;球状有機粉末;繊維;およびそれらの混合物を挙げることができる。球状有機粉末として、例えば、ポリアミド粉末、特にNylon-1またはポリアミド12などのNylon(登録商標)、Atochem社によってOrgasolという名で販売されている粉末;ポリエチレン粉末;Teflon(登録商標);Dow Corning社によってPolytrapという名で販売されているエチレングリコールジメタクリラート/メタクリル酸ラウリルコポリマーで作られたものなどの、アクリルコポリマーに基づくミクロスフェア;中空ミクロスフェアなどの発泡粉末、特に、Kemanord Plast社によってExpancelという名で販売されているミクロスフェアまたは松本株式会社によってMicropearl F 80 EDという名で販売されているミクロスフェア;東芝シリコーン株式会社によってTospearlという名で販売されているものなど、シリコーン樹脂ミクロビーズ;Matsumoto社によってMicrosphere M-100という名で販売されているまたはWackherr社によってCovabead LH85という名で販売されているメタクリル酸ポリメチルミクロスフェア;住友精化株式会社によってFlobeadsという名で販売されているものなど、エチレン/アクリラートコポリマー粉末;またはデンプン粉末、具体的には架橋もしくは非架橋トウモロコシデンプン、コムギデンプンまたはコメデンプンから形成された粉末などの天然有機物質から形成された粉末、National Starch社によってDry-Floという名で販売されている、オクテニル無水コハク酸で架橋されたデンプンから形成された粉末などを挙げることができる。繊維として、例えば、ポリアミド繊維、特に、Nylon 6(またはポリアミド 6)(INCI名:Nylon 6)から形成された繊維またはNylon 6,6(またはポリアミド 66)(INCI名:Nylon 66)から形成された繊維などあるいはポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)から形成された繊維など;およびそれらの混合物を挙げることができる。これらの充填剤は、組成物の全重量に対して0?20重量%、好ましくは、0.5?10重量%の量で存在することができる。
【0098】
もちろん、本発明による組成物に本質的に付随する有利な特性が、想定された添加により有害な影響を受けない、または実質的に受けないように、当業者は注意して、任意選択の補助剤または本発明による組成物に添加される補助剤を選択するであろう。
【0099】
本発明による組成物は、ローション剤またはセラムタイプの分散液、脂肪相を水相中で分散させる(O/W)ことによってまたは逆の場合(W/O)で分散させることによって得られるエマルジョンタイプの液体もしくは半液体コンシステンシーを有するエマルジョン、クリームもしくはゲルタイプの軟質の、半固形もしくは固形コンシステンシーを有する懸濁剤またはエマルジョン、複合(W/O/WまたはO/W/O)型エマルジョン、マイクロエマルジョン、イオンおよび/または非イオン型の気泡分散液、またはワックス/水相分散液の形態で提供することができる。これらの組成物は、通常の方法に従って調製される。
【0100】
本発明の好ましい実施形態によれば、組成物は、エマルジョン、特にO/W型エマルジョンの形態で提供される。
【0101】
さらに、本発明に従って用いる組成物は、やや液体となり得、ゲル剤、白色のもしくは着色されたクリーム剤、軟膏剤、エマルジョン、ローション剤、血清、パスタ剤または発泡体の外観を有し得る。
【0102】
組成物は、好ましくは、皮膚を考慮し、一般に3?8、好ましくは4.5?7の範囲であるpHを示す。
【0103】
本発明の他の対象は、日光防御生成物(日光および/または日焼けデバイスのUV線に対する防御)として、上記で定義した化粧品組成物の化粧品としての使用である。
【0104】
しかし、以下の実施例は、制限する性質を示すことなく本発明をより良く理解することができる。別段の記載がない限り、示された量は重量%である。
【0105】
(実施例)
(実施例1?3)保湿用O/W型エマルジョン SPF15
親油性遮断剤および高吸収性ポリマーを含む本発明による組成物(実施例1)および親油性日焼け止めおよび高吸収性ではないアクリルポリマーを含む2つの比較組成物(実施例2および3)を調製する。
【0106】
【表1】


【0107】
手順
相Aを85℃まで加熱し、次いで75℃に戻す。
【0108】
相Bをミキサーを用いて75℃で相Aに加える。
【0109】
相CをRayneriミキサーで撹拌しながら混合物(A+B)に加え、次いで、Rayneriミキサーで撹拌しながら周囲温度まで放冷する。
【0110】
同様の粘性を有する3つのクリームゲル剤を得る。
【0111】
本発明による実施例1の組成物は、脂っぽいベタついた膜を皮膚に残す実施例2および3の組成物と対照的に、適用中または生成物の皮膚への浸透後、適用においていかなるベタつく作用も有さず軟質で新鮮である。
【0112】
(実施例4および5)日光防止O/W型エマルジョンSPF30
親油性遮断剤および高吸収性ポリマーを含む本発明による組成物(実施例4)および親油性日焼け止めおよび高吸収性でないアクリルポリマーを含む比較組成物(実施例5)を調製する。
【0113】
【表2】



【0114】
手順
相Aを85℃まで加熱し、次いで75℃に戻す。
【0115】
相Bをミキサーを用いて75℃で相Aに加える。
【0116】
Rayneriミキサーで撹拌しながら、相Cを混合物(A+B)中で分散させ、次いで、相Dを加え、次いでさらに撹拌しながら相Eを加え、次いで、Rayneriミキサーで撹拌しながら周囲温度まで冷却を行わせる。
【0117】
本発明による実施例4の組成物は、適用時にネバネバした感触を皮膚に残し浸透後の粘着性の膜を残す実施例5の組成物と対照的に、適用中または生成物の皮膚への浸透後、適用においていかなるベタつく作用も有さず軟かくさわやかである。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの水相を形成する成分および少なくとも1つの脂肪相を形成する成分、高吸収性ポリマー、シリカ、少なくとも1種の親水性有機UV遮断剤、および少なくとも1種の親油性有機UV遮断剤を含むO/Wエマルジョンの形態の化粧品組成物であって、
前記高吸収性ポリマーが、乾燥状態で、ポリマー自体の重量の100?1000倍の水を自然に吸収することができ、かつ架橋ポリアクリル酸ナトリウムから選択されるポリマーである、化粧品組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
高吸収性ポリマーが、水の吸収後、水中で不溶性のままであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
高吸収性ポリマーが球状粒子の形態で提供されることを特徴とする、請求項1または5に記載の組成物。
【請求項7】
高吸収性ポリマーが、組成物の全重量に対して0.03?15重量%の含有量で存在することを特徴とする、請求項1、5、および6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
親油性有機UV遮断剤が、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノンまたはアミノベンゾフェノン、アントラニル酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ビスレソルシニルトリアジン、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、メロシアニン、ジフェニルブタジエンマロナート誘導体またはジフェニルブタジエンマロニトリル誘導体、カルコンおよびそれらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
親油性有機UV遮断剤が、
サリチル酸誘導体、
ケイ皮酸誘導体、
β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、
ジベンゾイルメタン誘導体、
トリアジン誘導体、
ベンゾトリアゾール誘導体、
およびそれらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項1または9に記載の組成物。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
有機UV遮断剤が、組成物の全重量に対して0.05?30重量%の割合で存在することを特徴とする、請求項1、5?7、9、および10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1、5?7、9、10、および12のいずれか一項により定義される化粧品組成物が、角質性物質に適用されることを特徴とする、角質性物質の美容的処置方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-06 
出願番号 特願2010-142616(P2010-142616)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 橋本 憲一郎池田 周士郎  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 吉田 知美
岡崎 美穂
登録日 2017-12-01 
登録番号 特許第6250258号(P6250258)
権利者 ロレアル
発明の名称 高吸収性ポリマーおよび有機UV遮断剤を含む化粧品組成物  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ